五等分の花嫁
らいは「おにーちゃん!朝だよ!起きてー!ご飯できたよー」 違和感に気がついたのは朝起きてからだ。 風太郎「らいは。顔に0って書いてあるぞ」 らいは「ゼロ?」 風太郎「ああ。デカデカと大きな字で」 らいは「お父さん、本当?」 勇也「あ?何も書いて…
四葉の柔らかい手が俺の手をぎゅっと握った。しっとりと汗ばんで、生暖かい。 家には俺と四葉しかいなかった。止められるのは、俺の理性だけだ。 風太郎(この解は微分方程式を用いて) 風太郎(Xの場合分けは) 四葉「ねぇ上杉さん……難しいこと考えていない…
風太郎「らいは、帰ったぞー」 風太郎「って、えっ」 五月「……お帰りなさい」 風太郎「……どうしてここにいる」 らいは「わたしが呼んだんだよ」 風太郎「らいは、どうして?」 らいは「今日五月さんとお泊り会するの」 風太郎「は?」 らいは「今日お父さん…
一花「ビーマイベイベー♪ビーマイベイベー♪アッフゥフン!」 風太郎「なにやってるんだ、お前」 一花「うわっ、びっくりした!? もう、おどかさないでよ! いるならいるって言ってくれればいいのに」 風太郎「別におどかすつもりはなかったんだが……」 一花…
風太郎「ニ乃と別れたい」 五月「!」 風太郎「はぁ……」 五月「上杉君、今すごい事口走りませんでしたか?」 風太郎「ん?もう過去問1年分解けたか?採点と解説するか」 五月「まだですが……」 風太郎「勉強に集中しろよ。そろそろ本番も近いだろ。今年こそ…
一花「付き合ってるのにキスもエッチもまだなんだ」 四葉「うん……」 一花「もうお付き合い初めてから3ヶ月くらい経つよね。デートも毎週しているのに?」 四葉「やっぱり変かなぁ」ハァ… 一花「プラトニック・ラブですな~いいんじゃない?付き合い方は人それ…
〈居間〉 とあるテレビ番組 『──ちゃんもカワイイからね、モテるでしょ』 『えーそんなことないですよ』 二乃「…………」 『結構遊んでるって話も出てますけど。ほら、最近週刊誌とかでも話題持ちきりだったじゃない』 『それはほら、デマってやつですよー』 『…
三玖「え?聞こえなかった。もう一回言って」 風太郎「実は、俺、四葉と付き合っている」 三玖「……」 風太郎「今までは、家庭教師の仕事もあったし、何より四葉が秘密にしてほしいって言ってたから黙っていたんだが」 風太郎「卒業も近いし、いつまでも、っ…
風太郎「であるから、そこは漸化式を使って得られた答えをYに代入して」 一花「あー、もう勉強疲れたー!」 風太郎「甘えたこと言うな。こうして休学したお前が卒業できるように特別授業してやってるんだから」 一花「別に勉強できなくても卒業できるし、女…
風太郎「あ、あぁ~ッ!」ドピュドピュドピューッ!←家計が火の車になる音 五月「はい、今日の晩ご飯は終わり。ごちそうさまでした」 風太郎「うぅ……お、おそまつさまでした……」 数週間前、念願の中野五月と結婚したのだが、 『裕福な家庭に育った娘が貧乏人…
らいは「おにーちゃん!朝だよ!起きてー!ご飯できたよー」 違和感に気がついたのは朝起きてからだ。 風太郎「らいは。顔に0って書いてあるぞ」 らいは「ゼロ?」 風太郎「ああ。デカデカと大きな字で」 らいは「お父さん、本当?」 勇也「あ?何も書いて…
何度試そうにもこれ以上カレンダーを捲ることが出来なくなって、そこでようやく今が何月かを理解した。 玄関から一歩外に出ればそこにはもう冬が広がっており、間もなく今年が終わってしまうという事実をぼんやりと悟る。 すっかり歩きなれてしまった通学路…
「うげっ」 「その反応は人としてどうなのよ」 チラシに挟まっていた特売情報に釣られてやって来た、日頃利用しないスーパーで知った顔に遭遇した。 時に、この知った顔という表現は俺にとってかなり厄介なものであるように思える。 なにせ、別人のくせに顔…
唐突だが二択だ。一つの選択肢は『遠回り』、もう一つは『見て見ぬふり』。 登校時間を考慮したときに前者は遅刻覚悟になるためちと厳しく、されど後者は著しく成功率が低そうだと考えるだけで分かる。 俺が何から逃れようとしているのかという問いに関して…
「上杉君、今日は学食じゃないんですね」 昼休み。いつもなら学食で伝家の宝刀『焼き肉定食焼き肉抜き』を振るっているはずの俺は、とある事情から教室でもそもそ菓子パンをかじる憂き目に会っていた。 というのも、全校生徒が入り乱れて食事をするあの場所…
「あ、上杉さん。ここでしたか」 「お、おお。四葉か」 珍しくバイトも家庭教師の予定も入っていない一日だったので、一人学校の図書室にこもって勉強していた。ここ最近、自分のためだけに使える時間がぐっと減っていたので、こういう機会は無駄に出来ない…
「どういうことだ、これ」 五つ子の家庭教師を始めてから、もうずいぶんと日が経った。途中、学年の切り替わりを挟む程度には。 着任当初には非協力的だった面々が素直に教えを乞うてくれるようになったのは、純粋に嬉しく思う。そこにやり甲斐じみたなにか…
「...」 ノートの上にシャープペンシルを投げ捨てると、風太郎はぼんやりと天井を見つめる。 ある事があってからこうする事が増えた事は風太郎にも自覚出来ていた。 『あんたを好きって言ったの』 告白、だったのは言うまでもなかった。 その場で返事なりを…