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雪乃「私も、彼女とは….でも、もう無理よ」【俺ガイルss/アニメss】

 

八幡(なんだかんだあり、俺は雪ノ下と付き合う事になった)

 

八幡(……のだが)

 

雪ノ下「……聞いているのかしら、ヒキガエル君」

 

八幡「……なんか、お前からまともに名前で呼ばれた回数の方が少ない気がする」

 

雪ノ下「あら?そうだったかしら、引きニート君」

 

八幡(付き合って何か変わったかと思えば特に変わっていない。互いの呼び方も、接し方も……)

 

雪ノ下「そんな事より、次の日曜日はちゃんと予定を明けているでしょうね」

 

八幡「舐めんなよ。俺が休日にお前と会う以外の予定があると思ってんのか?」

 

雪ノ下「そうね、聞くまでもなかったわ」

 

八幡(なのに、自分の時間だけはなくなっている……)

 

月曜日

 

八幡(昨日は疲れた……毎回、雪ノ下を満足させる為にそれなりのデートプランを提示しているつもりだが、まともに誉められた事がねえな)

 

八幡(それでいて毎週のデートだ。このままじゃ流石にデートプランの案が尽きるな……)

 

八幡(そうなると、どうなるんだろうか……失望されて、別れる、とか)

 

八幡「……はあ」

 

由比ヶ浜「あっ、ヒッキー、おはよう! どうしたの? ため息なんて吐いて」

 

八幡「由比ヶ浜か、おはよう……まあ、ちょっとな」

 

由比ヶ浜「何かあったの?」

 

八幡「別になんもねえよ。ただ陰鬱な月曜日にため息が出ただけだ」

 

由比ヶ浜「ふーん……あっ、そういえば昨日はゆきのんとデートだったんでしょ? どうだった?」

 

八幡「どうって言われてもな……」

 

八幡(相変わらず雪ノ下の毒舌を受けつつ、プラン通り回り、最後に今回のデートのダメ出しをされる)

 

八幡「まあ、普通、だな……」

 

由比ヶ浜「えー、それじゃ分かんないよ」

 

由比ヶ浜「もしかしてヒッキーが元気ないの、昨日のデートが原因?」

 

八幡「ち、ちげえよ。言ったろ、月曜日が原因だって」

 

由比ヶ浜「ゆきのんと……喧嘩したの?」

 

八幡「別に、喧嘩はしてない。ただ……」

 

由比ヶ浜「その、私で良いなら相談に乗るよ……?」

 

八幡(……相談に、か。以前の俺なら他人に頼るなんて考えなかったが、こればかりは異性の由比ヶ浜の意見が欲しいな)

 

八幡「なら……今日、奉仕部が終わった後に少し付き合ってもらってもいいか?」

 

奉仕部

 

雪ノ下「今日は、これくらいにしておきましょうか」パタン

 

由比ヶ浜「今日も依頼全然来なかったね~」

 

八幡「毎日来られても困るがな……んじゃ、帰るか」

 

雪ノ下「……! 待ちなさい、比企谷君。今日は一緒に……」

 

八幡「悪い、今日はちょっと予定があって無理だ」

 

雪ノ下「あなたに予定なんて……」

 

八幡「休日はないが平日は別だ……その、悪いな」

 

雪ノ下「その……なら、仕方ないわね」

 

由比ヶ浜「ごめん、ゆきのん。私も今日はちょっと予定あって一緒に帰れないの……」

 

雪ノ下「なら、私は部室の鍵を返しておくから、二人は先に帰りなさい」

 

八幡「ああ、またな雪ノ下」

由比ヶ浜「ゆきのん、また明日ね」

 

バタン

 

雪ノ下「……比企谷君」

 

八幡「悪いな、付き合ってもらって」

 

由比ヶ浜「気にしなくていいよ。でも大丈夫かな、ゆきのんに内緒で会って……その、ヒッキーはゆきのんの彼氏なんだし」

 

八幡「あいつについての相談だしな、話す訳にはいかないだろ」

 

由比ヶ浜「そうだけど……」

 

八幡「それに、あいつが俺が異性と二人でいるくらいで、とやかく言うような奴じゃないだろ」

 

由比ヶ浜「……なら、いいんだけど」

 

八幡「んじゃ、そろそろ本題に入るが…相談ってのは――」

 

―――

 

八幡「……って訳なんだが」

 

由比ヶ浜「うーん……ねえヒッキーそれってただの照れ隠しじゃ、ないのかな」

 

八幡「照れ隠し?」

 

由比ヶ浜「うん。本当はゆきのん、ヒッキーにそこまで想われて嬉しいんだと思うよ」

 

八幡「照れ隠しねえ……照れが隠れすぎて見たことないんだが」

 

由比ヶ浜「それはヒッキーが鈍いからだよ」

 

八幡「俺が鈍いだと……? 馬鹿言うなよ。ぼっちの観察眼舐めんな」

 

由比ヶ浜「……なら、私の想いも気づいてたの?」ボソ

 

八幡「あ? なんか言った?」

 

由比ヶ浜「ううん……別に」

 

八幡「……」

 

由比ヶ浜「と、とにかく! ゆきのんはヒッキーの事を好きなのは間違いないんだから、ヒッキーは今まで通りゆきのんと接したらいいよだよ!」

 

八幡「今まで通り、ねえ……」

 

八幡(本当にそれでいいのだろうか……)

 

八幡(だが、雪ノ下の反応が本当に照れ隠しなら、それでいい)

 

八幡「……とりあえず、お前の言う通りにしてみるわ。まっ、互いに面倒な性格なのは自覚しているしな」

 

八幡(なら、俺にできるのは隠れた照れを気長に探すだけだ)

 

由比ヶ浜「うん。きっとそれがいいよ!」

 

八幡「由比ヶ浜

 

由比ヶ浜「なに?」

 

八幡「まあ、その、なんだ……ありがと、な。相談、乗ってくれて。何か礼がしたい」

 

由比ヶ浜「気にしなくていいよ。ヒッキーの役に立てたなら私も嬉しいし」

 

八幡「だが……」

 

由比ヶ浜「うーん、なら今度一緒に遊びにいかない?」

 

八幡「なに?」

 

由比ヶ浜「ほら、文化祭の時の約束、まだでしょ?」

 

八幡「ああ、ハニトーだったな。まあ、それくらいなら……」

 

由比ヶ浜「それじゃ、今度の日曜とか、どうかな」

 

次の日、奉仕部

 

ガチャ

 

八幡「うーっす」

 

雪ノ下「こんにちは、ヒキコモリ君。今日も目が腐ってるわね」

 

八幡(本当にこれが照れ隠しなんだろうな……)

 

八幡「今日どころか明日も明明後日も腐ってるよ」

 

雪ノ下「でしょうね。そう言えば由比ヶ浜さんは?」

 

八幡「今日は三浦たちに誘われてるから行けないそうだ」

 

雪ノ下「……そう」

 

八幡「まっ、どうせ今日も依頼は来ないだろ」

 

雪ノ下「あの、比企谷君。今日は……」

 

八幡「昨日みたいに予定はねえよ」

雪ノ下「……よかった」ボソ

 

雪ノ下「……」パラ

 

八幡「……」

 

八幡(相変わらず、奉仕部で二人きりの時は会話もなく互いに無干渉で本を読む、か)

 

八幡(まあ、この時間は別に嫌いじゃないがな……)

 

雪ノ下「……」パタン

 

八幡(あれ、本を閉じた? まだ帰るような時間じゃない筈だが……)

 

雪ノ下「……ねえ」

 

八幡「なんだ? 今日はもう終わりか?」

 

雪ノ下「そうじゃない。今度の日曜日なのだけど予定は……」

 

八幡「……悪い、今度の日曜は無理だ」

 

雪ノ下「……えっ?」

 

雪ノ下「どうして?」

 

八幡「どうしてって言われてもな……予定が入っているとしか」

 

雪ノ下「あなた、休日には予定がないんじゃなかったのかしら」

 

八幡「必ずしも予定がないとは言ってないだろ」

 

雪ノ下「……どうしても、ダメかしら」

 

八幡「……デートなら前の日曜にしたばかりだろ」

 

雪ノ下「そう、だけど……でも……」

 

八幡「……また今度、必ずする。それで勘弁してくれ」

 

雪ノ下「……」

 

雪ノ下「なら、仕方ないわね……」

 

八幡「……」

 

雪ノ下「今日は……依頼も来ないようだし、終わりにするわ」

 

八幡「えっ? ああ。ならいつも通り玄関で待って……」

 

雪ノ下「いえ、いいわ」

 

八幡「えっ?」

 

雪ノ下「今日は、先に帰って」

 

八幡「あ、ああ。分かった。じゃあ、また明日な」

 

雪ノ下「ええ、また」

 

バタン

 

雪ノ下「……」

 

雪ノ下「レストランの予約、取り消さないといけないわね……」

 

雪ノ下「今回は、私がデートプランを考えてたのに……」

 

雪ノ下「比企谷君……」

 

日曜

 

由比ヶ浜「今日はありがとうヒッキー! ハニトーおいしかったね~」

 

八幡「別に礼なんていらねえよ。つーかこれ、お前への礼の分だし」

 

由比ヶ浜「でも今日は本当に楽しかったね。なんだかヒッキーと二人で遊んだの、その、久しぶりだったし……」

 

八幡「前は確か花火見にいった時か」

 

由比ヶ浜「うん。でもあの時はまさかヒッキーがゆきのんと付き合うなんて夢にも思ってなかったよ」

 

八幡「それは俺もだ」

 

由比ヶ浜「ねえ、ヒッキー、お礼ついでにもう一つ、お願いしてもいい?」

 

八幡「……お願い?」

 

由比ヶ浜「……うん」

 

八幡「……無茶なもんじゃなかったらな」

 

由比ヶ浜「ありがとう……」

 

ギュ

 

八幡「……えっ?」

 

由比ヶ浜「えへへ、ごめん……ちょっとだけ、このままぎゅっとさせて」

 

八幡「……行動してから願い言うなんて反則だろ」

 

由比ヶ浜「ねえ、ヒッキーこのままの状態でいいから聞いて」

 

八幡「願い事は一つじゃなかったのか」

 

由比ヶ浜「嫌なら、振りほどいて聞かなくてもいいよ」

 

八幡(そんな言い方されたら振りほどけねえだろ……)

 

由比ヶ浜「私ね、ヒッキーのことが好きだったんだ」

 

由比ヶ浜「ううん……違うだったじゃない、いまでも、好き」

 

八幡「……由比ヶ浜、俺は」

 

由比ヶ浜「分かってる。ヒッキーにはゆきのんがいるんだから……」

 

八幡「じゃあ、何故」

 

由比ヶ浜「好きって、それだけは言っておきたかったから」

 

八幡「……」

 

由比ヶ浜「ねえ、ヒッキー」

 

八幡「なんだ?」

 

由比ヶ浜「私がヒッキーの事、好きだって、ヒッキーほんとは気付いてたでしょ?」

 

八幡「どう、だろうな」

 

八幡「だが少なくとも、確信はできなかった。お前の好意を……」

 

由比ヶ浜「なら、どうしたら、よかったのかな……」

 

八幡「雪ノ下は、結構強引な告白だった」

 

由比ヶ浜「……」

 

八幡「それこそ、その好意を疑いようがないくらいな」

 

由比ヶ浜「……そっか」

 

由比ヶ浜「あーあ、結局、私に勇気がなかっただけかぁ」

 

八幡「……そんな事は」

 

由比ヶ浜「やっぱ、ゆきのんは凄いね」

 

八幡「……ああ、そうだな」

 

由比ヶ浜「でもこれでスッキリしたよ。好きな人に好きって言えないままなんて、やだし」

 

八幡「お前らしいな……そろそろ離れた方がいい。この辺、うちの生徒が来るとは思わんが、誰かに見られたら面倒だ」

 

由比ヶ浜「んっ、そうだね。ありがとうヒッキー。私の我がままに付き合ってくれて」

 

由比ヶ浜「それじゃあヒッキー、私こっちだから」

 

八幡「ああ、またな」

 

由比ヶ浜「うん、今日は本当にありがとう。またねヒッキー」

 

八幡「……」

 

八幡(由比ヶ浜……もし、お前が先に告白をしてきたら、俺は、どうしてたんだろうな)

 

八幡「下らない妄想だ。考えるだけ無駄だ」

 

八幡(帰りに小町に何かお土産でも買って帰るか……)

 

「比企谷君」

 

八幡「!?」

 

八幡「ゆ、雪ノ下!? な、なんでこんな所に……」

 

雪ノ下「ちょっと用が」あったのよ……そういうあなたは?」

 

八幡「お、俺は……」

 

八幡(由比ヶ浜と一緒の所は見られてないのか……?)

 

八幡「「言ったろ、用事があるって。俺もこの辺でちょっと用があったのよ」

 

雪ノ下「……そう」

 

八幡(特に聞いてこないってことは……見られてはない、ようだな)

 

雪ノ下「……」

 

八幡「んじゃ、用事も済んだし帰るわ。またな雪ノ下」

 

雪ノ下「待って、比企谷君」

 

ギュッ

 

八幡「ちょっ、急に腕掴むなよ危ないだろうが」

 

雪ノ下「用事は、終わったんでしょ?」

 

八幡「えっ? まあな」

 

雪ノ下「なら、今からなら予定はないわよね」

 

八幡「……今からどっか行くのか?」

 

雪ノ下「何か問題でも?」

 

八幡「時間が中途半端だ。またの機会でもいいだろ」

 

雪ノ下「……」

 

八幡「それにお前も用があってここに来たんだろ?」

 

雪ノ下「用なら私も済んだわ。つい、さっきね」

 

八幡「そ、そうか……」

 

雪ノ下「別に時間は取らせないわ。食事くらいなら構わないでしょ?」

 

八幡「飯か……悪い、今はあんま腹減ってねえんだ」

 

雪ノ下「そう……何か食べたばかり?」

 

八幡「ああ」

 

雪ノ下「こんな時間に? 随分と遅い昼食ね」

 

八幡「……用事があったからな」

 

雪ノ下「でも、この辺りで昼食を取れそうなお店なんてあったかしら」

 

八幡「店ならいくらでもあるだろ」

 

雪ノ下「あなたが一人で入れそうなお店よ」

 

八幡「それは……」

 

雪ノ下「それに、この辺りはスイーツを扱っているお店が多いわ。そうね、確かに『ハニートースト』なんかは人気じゃなかったかしら」

 

八幡「……!」

 

八幡「……見ていたのか?」

 

雪ノ下「なんの事かしら」

 

八幡「今日の事だ。俺の事、つけていたのか」

 

雪ノ下「『俺たち』の間違いじゃない?」

 

八幡「……」

 

雪ノ下「……」

 

八幡「なら、最初にそう言え。ちゃんと事情は話す」

 

八幡(そうだ。別に誤魔化す必要なんてなかった。全て正直に話せばこいつも納得はしてくれる筈だ)

 

雪ノ下「いえ、その必要はないわ」

 

八幡「は?」

 

雪ノ下「あなたは何も言わなくてもいい言う必要がない。だってあなたと私は共に望んだ関係なのだから言わなくても分かる筈よ」

 

八幡「お前急になに言ってんだよ……いいから俺に説明を」

 

雪ノ下「言ったでしょ?必要ないと。私とあなたは恋人同士。馴れ合い等と言う下らない紛い物じゃない。本物の関係なの」

 

八幡「ゆ、雪ノ下……?」

 

雪ノ下「何も言わなくても通じて、何もしなくても理解できて、何があっても壊れない。そんな本物の関係」

 

雪ノ下「だから私には分かるわ……」

 

雪ノ下「由比ヶ浜さん……彼女が悪いのね」

 

八幡「なんでそうなる……」

 

雪ノ下「彼女が、あなたを誘惑したのでしょ?」

 

八幡「由比ヶ浜にはただ相談に乗ってもらった時の礼をしただけだ?」

 

雪ノ下「相談? おかしいわね、あなたに悩みなんて、ましてや由比ヶ浜さんに相談するような事なんてない筈よ」

 

八幡「なんで言い切れるんだよ」

 

雪ノ下「私とあなたが本物の関係だからよ」

 

八幡「答えになってねえよ」

 

八幡「俺は由比ヶ浜にお前の事を相談した。お前の事をお前に相談しても仕方ねえからな」

 

雪ノ下「私の事? なら尚更必要ないじゃない」

 

八幡「お前の言う本物の関係ってやつか?」

 

雪ノ下「ええ、その通りよ」

 

八幡「そんな都合の良い関係なんてない。言葉なく相互理解できるなんて幻想だ」

 

雪ノ下「……どうやら彼女に、毒されてしまったようね」

 

八幡「由比ヶ浜は関係ない。なぁ、雪ノ下。お前、疲れてんだよ、きっと」

 

雪ノ下「残念よ……本当に、残念……」

 

八幡「……聞いてるのか?」

 

雪ノ下「……いいわ。今日は、帰りましょう」

 

八幡「ああ、その方がいい」

 

雪ノ下「またね、比企谷君……」フラッ

 

八幡「……またな」

 

八幡「……」

 

八幡「なんだ、あれは……」

 

八幡(俺と由比ヶ浜が一緒にいるのを見て動揺した結果、ああなった……はないな)

 

八幡(あいつは、動揺なんてしてなかった)

 

八幡(普段と全く同じ様子で、あんな言葉を自然に吐き出した。つまりあれが雪ノ下の……)

 

八幡「はあ……」

 

八幡(照れ隠しと言ってたがな、由比ヶ浜。隠されてたのは照れなんて可愛いもんじゃなかったぞ)

 

翌日

 

八幡の部屋

 

八幡(月曜日か……いつも以上に陰鬱だな)

 

コンコン

 

小町「お兄ちゃん、起きてる~?」

 

八幡「ああ。もう飯出来たのか? 今行く」

 

小町「そうじゃなくて……えっと、お客さん?」

 

八幡「は? 客? こんな朝早くにか? つーかなんで疑問形なんだよ。とりあえず帰ってもらえ」

 

小町「それが、その……あっ」

 

ガチャ

 

八幡「ちょっ、小町。いきなり開け……えっ」

 

雪ノ下「おはよう、比企谷君」

 

八幡「ゆ、雪ノ下? お、お前なんでいんの?」

 

雪ノ下「恋人が家にいるのがそんなに不思議な事かしら」

 

八幡「時と場合によるだろ……なんの用だ」

 

雪ノ下「随分な態度ね、せっかくあなたに朝御飯を作ってあげようとわざわざ来たのに」

 

小町「えっ!? 本当ですか雪乃さん!」

 

雪ノ下「ええ、良ければ小町さんもどう?」

 

小町「い、いいんですか?」

 

雪ノ下「当然よ。あなたは将来、私の義妹になるのだから」

 

小町「ありがとうございます! よかったね、お兄ちゃん! 小町、お兄ちゃんと雪乃さんがこんなにラブラブだったなんて知らなかったよ!」

 

八幡「あ、ああ……」

 

小町「ふう、ごちそうさまでした!凄く美味しかったです!よかったら今度小町にも教えて下さい!」

 

雪ノ下「そう言って貰えると嬉しいわ。比企谷君、どうだった?」

 

八幡「……旨いよ。ほんと金とれるレベル」

 

小町「もうお兄ちゃん、誉めるならもっと言い方があるでしょ……いまのポイント低いよ」

 

雪ノ下「いいのよ、小町さん。あれが彼なりの愛情表現なのは知っているわ」

 

小町「愛情表現だなんて……ほんとラブラブですね~」

 

雪ノ下「勿論よ。だって私達は本物の関係なのだから」

 

八幡「……」

 

小町「あっ、やば、そろそろ行かないと時間が……」

 

八幡「んっ、もうそんな時間か」

 

小町「二人の邪魔しちゃ悪いし、小町は先に出るね! いってきまーす!」

 

バタン

 

八幡「……」

 

雪ノ下「……」

 

八幡「……で、何を企んでる?」

 

雪ノ下「心外ね、なんのこと?」

 

八幡「付き合っていらい、一度もなかっただろ。こんな事……」

 

八幡「やはり昨日の事が原因か?」

 

雪ノ下「別に、そんな事はないわ。いずれしようとしていた事よ」

 

八幡「……なら、なぜ今日から始めた?」

 

雪ノ下「そろそろこういう事をしてもいいかと思っただけよ」

 

八幡(」これ以上言っても平行線のままだな。まあ、驚きはしたが、飯を作ってくれたのは素直に嬉しいし、それが好意によるものなら尚更だ)

 

八幡(ただ……)

 

雪ノ下「なに? さっきからジッと見つめてきて……もしかして欲じょ」

八幡「ちげーよ」

 

雪ノ下「なら良かったわ。あなたに猿のように本能にのっとられて襲い掛かられたらどうしようかと思った」

 

八幡(この様子だと、普段と一緒に見える。まさか、この毒舌に安堵する日がくるなんてな……)

 

八幡「とりあえず、俺らもそろそろ出るか」

 

八幡(昨日の事が無ければ、今のこの状況は素直に喜べたのにな……)

 

学校

 

ザワザワ

 

八幡(こいつが目立つ存在だって忘れてたな。下校時は生徒が少ないから気にしなかったが、登校時は流石に……)

 

雪ノ下「朝から騒がしいわね、何かあたのかしら?」

 

八幡「誰が原因だと思ってんだよ……」

 

八幡(しかしまずい……こうも目立ってるとあいつに見つかって……)

 

由比ヶ浜「あっ!ヒッキーにゆきのんだ。やっはろー!」

 

八幡(ダメだったか……雪ノ下の様子は……)

 

雪ノ下「ええ、おはよう。由比ヶ浜さん」

 

八幡「……あれ?」

 

由比ヶ浜「ヒッキーどうかした?」

 

八幡「いや、別に……」

 

雪ノ下「由比ヶ浜さん、気にしなくていいわ。きっとその男のことよ。朝からよからぬ事を企んでいたに違いないわ」

 

由比ヶ浜「え~ヒッキーきもい」

 

八幡「真に受けんなよ……」

 

八幡(昨日のあの感じからしたら、由比ヶ浜に出会いがしらに何らかしらのアクションを起こすと思ったが……思い過ごし?)

 

雪ノ下「ええ、本当に……気持ち悪い」

 

八幡「……」ビク

 

奉仕部

 

雪ノ下「さて、今日はこのくらいにしましょうか」

 

由比ヶ浜「また今日も依頼来なかったね」

 

八幡「ああ、そうだな」

 

八幡(結局、由比ヶ浜と雪ノ下はいつも通りか……)

 

八幡(もしかしたら、考えすぎか? いくら昨日の様子がへんだったとはいえ、あの仲のいい二人が……)

 

雪ノ下「比企谷君、先に玄関に行って待っててくれないかしら?」

 

八幡「ああ、わかった。んじゃな、由比ヶ浜

 

由比ヶ浜「うん、またね。ヒッキー」

 

バタン

 

由比ヶ浜「それじゃ私も……」

 

雪ノ下「待って」

 

由比ヶ浜「えっ?」

 

雪ノ下「あなたには話があるの……少し時間をいただいてもいいかしら」

 

玄関前

 

八幡(雪ノ下の奴、遅いな……なんかあったか?)

 

タッタタタタタ

 

八幡(なんだ? 誰か走って……あれ? 由比ヶ浜?)

 

八幡「おい、由比ヶ浜、どうかし……えっ、おま、なんで泣いんの?」

 

由比ヶ浜「ヒッキー……うぅ」

 

八幡「な、なんかあったのか?」

 

由比ヶ浜「ううっ……ご、ごめんね、ヒッキー私……さよなら」

 

ダッ

 

八幡「あっ、おい! ……行っちまった」

 

八幡(原因は……考えるまでもねえな)

 

奉仕部

 

ガチャ

 

八幡「……」

 

雪ノ下「あら、せっかちな男ね。いま鍵を閉めて出ようとしたところよ」

 

八幡「さっき由比ヶ浜とすれ違ったんだが」

 

雪ノ下「そう。彼女もついさっき帰ったところだわ」

 

八幡「なんで泣いてたんだ?」

 

雪ノ下「……」

 

八幡「……なあ、雪ノ下。何をしたんだよ」

 

雪ノ下「何もしてないわ。それよりも比企谷君、最近奉仕部に依頼が来ないと思わない?」

 

八幡「……それがどうした? 俺は今聞いているのはそんな」

 

雪ノ下「依頼が少ないなら、部員も少なくていいと思わない?」

 

八幡「お前、まさか由比ヶ浜を辞めさせたのか?」

 

雪ノ下「人聞きが悪いことを言わないで。別に辞めさしたわけじゃない」

 

雪ノ下「彼女が自主的にこの部を去っただけよ」

 

八幡「そうさせたのはお前だろ。何て言ったんだ、あいつに」

 

雪ノ下「失礼ね……私が行ったのはさっきあなたにも言った依頼数の低下と部員数の事」

 

雪ノ下「あとは、一言質問しただけよ」

 

八幡「質問……?」

 

雪ノ下「『好きな男が他の自分以外の女と恋人関係にある様子を毎日見るのは辛くない?』っと」

 

八幡「……なんで、そんな事を」

 

雪ノ下「ただの純粋な好奇心よ。彼女の辛さは私も痛感したわ」

 

雪ノ下「私の比企谷君が目の前で自分以外の異性に抱きしめられているなんて、ね」

 

八幡「……っ」

 

雪ノ下「胸が張り裂けそうな痛みだった。だから、彼女の事を疑問に思ったのよ。こんなにも辛い思いをするのに何故、この部にいようとするのか」

 

雪ノ下「私には分からないわ」

 

八幡「そんなの決まっている……お前がいたからだろ」

 

八幡「友達のお前がいたから、由比ヶ浜は……」

 

雪ノ下「その友達という関係は、人の恋人に抱きつくような泥棒猫の事を指すのかしら?」

 

八幡「俺は言った筈だ。説明させろと」

 

八幡「あの時、全部聞いていれば、こんな事にはならなかった……」

 

雪ノ下「無理よ、何を言おうとも納得できる理由がないわ」

 

八幡「あれは、あいつが過去に清算を付けただけだ。俺への想いの……」

 

八幡「それをお前は」

 

雪ノ下「なら比企谷君。もし、その過去の清算とやらの付け方がセッ○スだったとしてもあなたはそれを受け入れたの?」

 

八幡「それは……」

 

雪ノ下「受け入れられない、受け入れられるわけが無いそうでしょ? それと同じ。結局、接触方法が違っただけよ」

 

雪ノ下「それに、まるで私一人が悪者のように言うけど……悪いのはあなたもの彼女も同じよ」

 

八幡「……」

 

雪ノ下「私の恋人である比企谷君に抱きついた彼女も、それを受け入れたあなたも……」

 

八幡「……そんなの、分かってる。だが」

 

ギュ

 

八幡「……!」

 

雪ノ下「……私も、彼女とは友人関係でいたかった。でも、もう無理よ」

 

雪ノ下「私にはあなたしかいなくて、そして彼女もあなたを求めている。そんな関係が続くはずがない」

 

雪ノ下「あなたは……彼女があれで過去を清算できたと本当に思っているの?」

 

八幡「清算するしか、ないだろ。そうしないと、辛いだけだ」

 

雪ノ下「でもできないのよ。こうして一度覚えた好きな人の感触はずっと手に残り、リフレインする。清算なんてできる筈がない、むしろ、それ以上を求めてしまう」

 

八幡「それが罪だと分かっていてもか」

 

雪ノ下「ええ……もし、あのまま彼女がこの部に残り続けたら、きっとそれ以上を求める。それだけは確信できる。だって彼女は私と同じ想いを抱いた者だから」

 

八幡そんなの、どうしようもなじゃないか」

 

雪ノ下「ええ、本当にどうしようもない。みんな悪くて、みんな悪くない」

 

雪ノ下「でも、原因を突き止めるとあなた、それはあなた」

 

雪ノ下「もし、私たちのどちらか片方だけがあなたに惚れていただけなら、みんな幸せになれたのかもしれない」

 

雪ノ下「だから、こんなにも、私と由比ヶ浜さんを惚れさした、あなたが原因なのよ、比企谷君」

 

――

 

八幡(あれ以来、由比ヶ浜が奉仕部に顔を出すことはなくなった)

 

八幡(クラスでも前よりは話す回数が減った、あいつなりに気を使っているのだろう)

 

雪ノ下「紅茶、淹れたわ」

 

八幡「んっ、悪いな。雪ノ下」

 

雪ノ下「……」

 

八幡「……雪乃」

 

雪ノ下「分かればいいのよ……八幡」

 

八幡(思えば、あの時を境に俺達の距離は一気に縮まった気がする)

 

八幡(互いに名前を呼び合い、体を寄せ合い、他愛のない話で笑う)

 

八幡(これが俺達の望んでいた関係、俺達の望んでいた時間……)

 

八幡(だが、この空間にはもう、あの時と違って『三人目』を許容できる空きはない。ただ、閉鎖的で、だけど壊れることのない空間)

 

八幡(これが俺が本当に望んでいたものなのだろうか? これが俺達にとっての青春なのだろうか)

 

八幡(だとしたら、やはり間違っている)

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「雪ノ下と付き合ったはいいが、一緒に居ると疲れる……」

http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1385261964/