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いろは「やっぱり……わたしって先輩のこと」【俺ガイルss/アニメss】

 

八幡(はー疲れた)

 

ガチャ 

 

いろは「あ、先輩おかえりなさー」

バタン

 

 

八幡「……」 

 

八幡「……」スッ 

 

スタスタ 

 

トン…トン…トン… 

 

スタスタ 

 

ガチャッ 

 

八幡「……」チラ 

 

『比企谷』 

 

八幡(俺の家だな) 

 

八幡「……」バタン 

 

スタスタ 

 

トン…トン…トン… 

 

スタスタ 

 

八幡(俺の部屋だな) 

 

八幡「……」 

 

ガチャ 

 

いろは「せーんぱーい? なんでさっきすぐ閉め」 

 

バタン 

 

八幡「……」 

 

八幡(あれれ~2回も一色の幻覚と幻聴が…相当疲れてんだな俺) 

 

いろは「あのー?」ガチャ 

 

八幡(あ、現実だった) 

 

いろは「さっきから開けたり閉めたりなにやってんですか?」 

 

八幡「いや……キミが何やってんの俺の部屋で」 

 

いろは「やだなぁ~心配しなくてもベッドの下は漁ってませんって」 

 

八幡「そういう心配はしてないからね?」 

 

いろは「? ああ、大丈夫ですよ。 パソコンの中もまだなんで」 

 

八幡「だからそういう次元の心配じゃなくてね?」 

 

 

八幡「マジで何しに来たのお前…っつーかなんでいるの?」 

 

いろは「あーせーんぱぁーい! 聞いてくれますー?」 

 

八幡(うわぁ…聞くんじゃなかった) 

 

いろは「ってか立ち話もなんですし、先輩も中へどうぞ」 

 

八幡「自分の部屋に招かれるってどういうことなんですかね…」 

 

いろは「いいじゃないですかーほらほら!」グイグイ 

 

八幡「ちょっ…押すな押すな」 

 

いろは「え?」ドンッ 

 

八幡「ぶっ!」 

 

 

ドサッ 

 

 

いろは「あ、すいませんフリかと思って」 

 

八幡「……だからって押し飛ばすんじゃねぇよ。 ベッドだからよかったものの」 

 

いろは「……」 

 

いろは「……はっ! もしかして先輩誘ってます?」 

 

八幡「いや誘ってないから」 

 

いろは「そういうのはまだ早いっていうか段階すっとばしすぎっていうか誘われるにしても雰囲気とかいろいろあるのでごめんなさいやっぱムリです!」 

 

八幡「だから誘ってないから…」 

 

八幡「で?」 

 

八幡「なんでお前が?」 

 

いろは「東大に?」 

 

八幡「行けるもんなら行ってみろよ…」 

 

八幡「じゃなくて、何が目的だ」 

 

いろは「目的…っていうかその、いろいろあったんですけど」 

 

八幡「んないろいろの部分はどうでもいい。 まず結論から言え。 何しにきた」 

 

いろは「おとまりですけど」 

 

八幡「…は?」 

 

いろは「おとまりですけど」 

 

八幡「…は?」 

 

いろは「だから、おとまり、です」 

 

八幡「…は?」 

 

いろは「なんで折れないんですか…」 

 

 

いろは「お、と、ま、り! ですっ」 

 

八幡「…は?」 

 

いろは「~~!」ゲシッゲシッ 

 

八幡「いって! 暴力はやめろ暴力は」 

 

いろは「先輩が聞こえないフリするから」 

 

八幡「いや、聞こえた上で耳を疑ってんだけど…」 

 

八幡(流石に4回聞いたら間違いじゃあないな) 

 

八幡「…なんだってそんな話に」 

 

いろは「そこはどうでもいいんじゃなかったんですか?」 

 

八幡「言葉の綾だ。 結論の後はそこへ至る経緯を説明してくれ」 

 

いろは「わかりましたよー。 ただ、どこから話せばいいか…」 

 

八幡「そりゃ遡って最初からじゃね」 

 

いろは「はあ」 

 

いろは「じゃあ、まず今から16年前、それはそれはかわいらしい赤ちゃんが生まれて『いろは』って名付けられたんですけどー」 

 

八幡「はいちょっと待ってね?」 

 

いろは「なんですかーいきなり」 

 

八幡「遡りすぎだろ。 なんでお前が産声をあげたところから聞かされなきゃいけないの? 誕生秘話でもあるの?」 

 

いろは「うわっ先輩が産声とかいうと気持ちわるいですね」 

 

八幡「………」 

 

いろは「とまあ冗談はさておき」 

 

いろは「ひらたくいうと、その、あれです」 

 

八幡「どれ?」 

 

いろは「家出……みたいな」 

 

八幡「……」 

 

八幡「ああうん、出家ね。 いいんじゃない? けどお前それならうちじゃなくてどっかの寺に」 

 

いろは「いやその聞き間違いおかしくないですか? 先輩の耳おかしいんですか?」 

 

八幡「うっせ冗談だよ。 別に、マジ面倒だから考え改めねぇかなとかどうにかして今すぐ追い出せねぇかなとか考えてねぇよ」 

 

いろは「ちょっ考えダダ漏れなんですけど!」 

 

八幡(めんどくせぇ…) 

 

いろは「わかってますよー…迷惑なことくらい」 

 

八幡「なら早々にお引き取り願いたいんですが」 

 

いろは「うー……」 

 

いろは「…どうしてもダメですかー?」 

 

八幡「ダメっつーか」 

 

八幡(いや、まぁ、ダメだろ、うん。 そういうのはちゃんと親御さんの許可がないとね?) 

 

八幡(って、その親から逃げて来たんでしたっけ) 

 

いろは「せーんぱぁい…」ウル… 

 

八幡「うっ…」 

 

八幡「……」 

 

八幡「とりあえず、なに。 詳しい事情を話してみろ」 

 

いろは「えっ! じゃあ」 

 

八幡「だからって許可するわけじゃないぞ」 

 

いろは「……ちっ」ボソ 

 

八幡(ちょっと? 舌打ち聞こえてますよ?) 

 

いろは「そうですねー、ちゃんと話すと長くなるんですけど」 

 

八幡「長いのか…」 

 

いろは「いえ、まぁ、簡単に言えばただのケンカです」 

 

八幡「ほう」 

 

八幡「お前一人っ子だよな。 ってことは親子喧嘩か」 

 

いろは「はい。 今日、っていうかさっき…お父さんと」 

 

八幡(なんだろう、お父さんのおヒゲチクチクする! しね! 的なやつかな) 

 

いろは「先輩ちゃんと聞いてます?」 

 

八幡「聞いてる聞いてる」 

 

いろは「……えっと、いつもはお父さん帰り遅いんですけど、今日たまたまわたしより早く帰ってきたみたいで」 

 

いろは「制服見るなりなんか急にスカート短いだの袖がおかしいだの言い始めて」 

 

八幡(あー、よくありそうな話) 

 

いろは「その格好で学校行ってるのかーとか」 

 

いろは「あといつのまにかわたしが生徒会やってるの知ってて、そんなんじゃ学校の評判が落ちるーとか!」 

 

八幡「ああ…」 

 

いろは「ひどくないですか? 先輩? 超ひどくないですか!?」ズイッ 

 

八幡(ひぃぃ近い近い)スッ 

 

八幡「……いやまぁ、なんだかんだ心配なんじゃねぇの? 一人娘の父親としては」 

 

いろは「そうかもですけどー…」 

 

いろは「でもそれだけじゃなくて! そっからいろいろ言い合ってたら! もうあれですよ、なんかダサいーとか化粧が気持ちわるいーとか言ってきたんですよ!?」 

 

八幡「お、おう」 

 

八幡(パパさんそれは流石に失言じゃないですかね…) 

 

いろは「ガチで意味わかんなくないですか!? マジてめーになにがわかるんだっつの! って感じですよね!? あーーもーーうっざぁー!!」ドスッドスッ 

 

八幡「ちょっ痛い! やめてそれわりと痛いから!」 

 

いろは「はーっ、はーっ……ふぅ、ちょっとスッキリしました」 

 

八幡「そりゃあよかった。 …いやよくないよね? 俺サンドバッグじゃないからね?」 

 

いろは「案外先輩に向いてると思いますよ?」 

 

八幡「んなもんが適職なら一生働かねぇよ……元々働く気ないけど」 

 

いろは「まだそれ言ってるんですか…」 

 

八幡「んで、あれか」 

 

八幡「喧嘩の弾みで着の身着のまま家を飛び出してきたと。 大まかな流れとしては」 

 

いろは「そんなところです」 

 

八幡(だからってなんでうちに) 

 

いろは「だからってなんで先輩の家に? って思いますよね」 

 

八幡「」 

 

八幡「なに? きみエスパーなの?」 

 

いろは「いや思いっきり顔に書いてありますし」 

 

八幡(マジかよ……アタシってばそんな特殊なメイクしてたかしらん) 

 

いろは「……とりあえず学校の近くまできたあたりで、妹さんに会ったんです」 

 

八幡「小町?」 

 

いろは「はい。 小町ちゃんに」 

 

八幡「ほーん。 よく顔覚えてたな」 

 

いろは「そりゃあいずれー……」 

 

八幡「いずれ?」 

 

いろは「……じゃ、なくて!」 

 

いろは「むこうから声かけてきましたからね。 わたしもすぐ気づきましたけど」 

 

八幡「あー」 

 

八幡(あいつやたら、俺の周囲の人間覚えるの得意だもんなぁ) 

 

いろは「それで、」 

 

八幡「あい、大体わかった」 

 

八幡「おおかた小町に根掘り葉掘り聞かれてよくわからんうちになんだかんだうちに来させられたんだろ」 

 

いろは「ざっくりすぎですけど……一応合ってます」 

 

八幡(もうね、それで『あ、いっけなーい☆ 小町買い物に行ってこなきゃ! いろはさんお留守番よろしくです!』って出て行ったっきりなところまで読めたわ) 

 

八幡「なるほど。 そういうことなら…まぁ」 

 

いろは「…でもやっぱり迷惑ですよね。 そもそもわたし準備もなにもないですし」 

 

八幡「たぶん小町のものなら貸せるぞ」 

 

いろは「えっ?」 

 

八幡「ある意味あいつの不可抗力だかんなぁ…自分で迎え入れた以上は相応の対応を取るべきっつーか」 

 

いろは「……っていうか、いいんですか?」 

 

八幡「いや、そりゃまぁよくないとは思うし、後でちゃんとうちの親から連絡入れて許可が下りればの話な」 

 

いろは「や、それもですけど」 

 

いろは「えっと…先輩は? 嫌じゃないのかなぁーって」 

 

八幡「…は? 嫌に決まってんだろふざけんな」 

 

いろは「ひっ!」ビクッ 

 

八幡「え」 

 

いろは「………」フルフル 

 

八幡「あ、ちょっ、待って冗談! 冗談、でもないけどちがうから待って!」 

 

八幡「すまん…いやその、ね? ガチなアレじゃなくてね?」 

 

いろは「…ほんとです?」ウル… 

 

八幡(実は結構メンタルやられてるのね…威勢よかったのは最初だけか) 

 

 

八幡「あー、まぁ、あれだ」 

 

八幡「とりあえず一色、腹減ってない?」 

 

いろは「へ? おなか、ですか」 

 

八幡「親はこんな時間じゃまだだろうし。 このままじっとしててもな」 

 

いろは「えっと、や、わたしはべつに…」グゥーー 

 

八幡「……」 

 

いろは「ちがっ、いまのは!」 

 

八幡「いいお返事で」 

 

いろは「~~~っ!!」カァァ 

 

 

スタスタ 

 

 

八幡「さてどうすっかね」 

 

いろは「これ、どっか食べに行くんですか?」 

 

八幡「そのつもりだけど、別にコンビニで買うでも。 どうする?」 

 

いろは「んーじゃあせっかくですし」 

 

いろは「…ってわたし、そういえばケータイと定期しか持ってないんでした」 

 

八幡「あー」 

 

八幡(俺も持ち合わせあんまないんだよな) 

 

八幡「立て替えるのは構わないんだが、外食で2人分は若干危うい気が」 

 

いろは「え、ならやっぱりわたしはいいです」 

 

八幡「いやいや」 

 

八幡「そういうわけにもいかんでしょ。 あんな豪快に腹鳴らしといて」 

 

いろは「っ……!」ペシペシッ! 

 

八幡(顔まっかいろはす可愛いな。トマト味かなぁ。 俺キモいな…) 

 

八幡「んじゃ、コンビニでいいか」 

 

いろは「…はい」 

 

 

シャッセー 

 

 

八幡「さーて、マッ缶マッ缶」 

 

いろは「うわ出た。 先に取っちゃうんですね」 

 

八幡「食べ物を選ばない万能の飲み物だしな」 

 

いろは「え? 全然そうは思えないですけど」 

 

八幡「甘すぎて『ああもう何でもいいや…』ってなるから。 ソースは俺」 

 

いろは「それどんな食べ物にも合わないだけじゃないですか…」 

 

八幡「お前は? お茶でいい?」 

 

いろは「あっはい、ふつうに緑茶で」 

 

八幡「あとは食いもんか」 

 

いろは「ですねー」 

 

いろは(……あ) 

 

八幡(普通におにぎり、いやおむすびか。 そういやおにぎりとおむすびの違いってなんだっけ? 形だっけ?) 

 

八幡「なぁ一色はどれに…」 

 

いろは「……」ジー 

 

八幡(何見てんだあいつ) 

 

八幡(ってああ、新作スイーツコーナーね。 わかるわかる、ほぼ毎週新しいの出るもんね。 チェックしちゃうよね) 

 

八幡「おーい」 

 

いろは「あ、すいません」 

 

いろは「先輩なにか決めました?」トテトテ 

 

八幡「今まさにおにぎりにするかおむすびにするかで迷ってるとこだな」 

 

いろは「それなにが違うんですか…?」 

 

いろは「んーでも、わたしもお米系にしようかなぁ」 

 

八幡「無理すんなよ。 ほら、あっちにたくさんあるぞ? スパサラとかスープパスタとかペンネとか」 

 

いろは「だからなんで毎回パスタ限定なんですか…」 

 

八幡(え? だって女子ってみんなスパゲッティー大好きでしょ? むしろそれ以外認めてないレベル) 

 

いろは「ほんっと先輩はわたしをってか女の子をなんだと思ってるんですかねー……」 

 

八幡「わかったわかった。 で、どれ」 

 

いろは「んー」 

 

いろは「あっ、じゃあ先輩が選んでください!」 

 

八幡「えぇ……」 

 

いろは「ふふふ、抜き打ちテストです」 

 

八幡「今は放課後なんだけどなぁ…」 

 

いろは「先輩はやくはやく」 

 

八幡(つーかこういうのめっちゃ困るわ、いやマジで) 

 

八幡(ほら、好みやセンス以前にアレルギーとかあったらよくないしね? そもそもおにぎりのセンスって何って感じだしね?) 

 

いろは「あ、でもその場でわかったらおもしろくないんでわたし先に出てますね」 

 

八幡「は? え? マジで俺選ぶの?」 

 

いろは「ではではよろしくでーす」テテッ 

 

八幡「ちょっ」 

 

八幡(うせやろ…) 

 

八幡「……」 

 

八幡「……」 

 

八幡(好みなんかわからんし塩むすびでいいか) 

 

八幡(…ちなみに僕は、やわらかいなりちゃん!) 

 

店員「シャッセ」 

 

八幡(少ないような気もするが、まぁ後で小町も帰ってくるし) 

 

八幡「……」 

 

八幡「あー、すんません、ちょっと追加で」 

 

店員「ッセ」 

 

いろは「あ」 

 

いろは「先輩おっそーい」 

 

八幡「へいへい悪うござんしたね」 

 

いろは「冗談ですよー」 

 

いろは「それでそれで? わたしのちゃんと考えてくれました?」 

 

八幡「まぁ、外しちゃいないだろうな」 

 

いろは「おおーなんかえらく自信ありますね」 

 

八幡(逆にこれ嫌いだったらもうね、米の時点で間違ってるからね) 

 

いろは「あ、てか、わたし持ちますよ」 

 

八幡「あ? いいよこんくらい」 

 

いろは「でも買ってもらったのに悪いですし」 

 

八幡「いいいい、別に重くねぇし。 つーか奢ったわけじゃないぞ?」 

 

いろは「それはわかってますけどー」 

 

いろは「あっじゃあ先輩! 片方ずつ持つのはどうですか?」 

 

八幡「なんでだよ……だから重くねぇっつの」 

 

いろは「もー、そういうことじゃないのに」 

 

八幡「えーっと鍵鍵……あれ?」ゴソ 

 

いろは「わたし持ってますよ」 

 

八幡(そういや出るとき預けたんだっけか) 

 

 

ガチャ 

 

 

いろは「はいどーぞ先輩っ」 

 

八幡「おうサンキュ」 

 

いろは「あは、なんかこれ一緒に住んでるっぽくないですかー?」 

 

八幡「ぶっ」 

 

八幡「おま、怖いこと言うなよ」 

 

いろは「こわいってなんですかこわいって!」 

 

八幡「あーいや、なに、座敷わらし的なね?」 

 

いろは「それ、暗にわたしが小さいって言いたいんですかねー…」 

 

八幡「別にそういうわけじゃあ…」チラ 

 

いろは(むぅ、動揺してくれないなぁ) 

 

八幡「あっ……」 

 

八幡「いやまぁ、気にするほど小さくはないんじゃね? 知らんけど」 

 

いろは「……先輩? いまどこ見て言いました? ねぇ先輩!?」 

 

いろは「……」ムス 

 

いろは「最低。 あーいうのほんと最低ですよ先輩」 

 

八幡「俺何も言ってないんだけど…(具体的には)」 

 

いろは「目は口ほどに~ってやつです」 

 

八幡「まあまあ、腹が減っては~とも言うしな。 ほれ」ガサ 

 

いろは「それいま全然関係なくないですか…」 

 

いろは「ってぇ! なにこれどういうことですか!?」 

 

八幡「あ? なにってそりゃ塩むすびだろ」 

 

いろは「そんなの見りゃわかりますよ! じゃなくてなんでこのチョイスですか」 

 

八幡「ばっかお前、おにぎり選ぶのに塩むすび食えないやつがいるか? いないな。 つまりそれなら100%ヒットするって寸法だ」 

 

いろは「ある意味場外ホームランなんですけど…」 

 

八幡「え、塩むすび嫌だった? うまいのに」 

 

いろは「嫌とかいう問題じゃ……いやもういいです。 そうですよね先輩は」ペリリ 

 

八幡(テレビ付けとくか)ピッ 

 

いろは「……」モグモグ 

 

いろは(思ったよりおいしい…) 

 

 

『本日の天気は夜にかけて雨が降り、ところによりーー』 

 

 

八幡(あー、そういや雲行きが怪しかった気も)ガサ 

 

八幡「お茶のコップは?」 

 

いろは「あ、いえそのままで」 

 

八幡「ん」 

 

いろは「…どうも」 

 

いろは(キャップあけてくれた)クピ 

 

いろは「ぷは。 先輩はそれ、いなり寿司?」 

 

八幡「久々にな」 

 

いろは「ってか結局食べ物まで甘いとか、どんだけ甘党ですか」 

 

八幡「メシくらい甘くていいでしょ。 世の中辛いことだらけなんだし」 

 

いろは「あはっ、なんですかそれーちょっとキモいです」 

 

八幡「お、おう…」 

 

八幡(そっかキモいかぁ、うまいこと言ったつもりなんだけどなぁ……あれ、いなりがなんだか塩味に) 

 

いろは「……」ジー 

 

八幡「なに? んな見ても分けてやらんぞ」 

 

いろは「えー、あと2個もあるのにいいじゃないですか1個くらい」 

 

八幡「それ半分になっちゃうんだけど…」 

 

いろは「むむ……」 

 

 

いろは「あれ小町ちゃん? おかえりー」 

 

八幡「え?」 

 

いろは「スキありぃ!」 

 

八幡「ちょっ」 

 

八幡「おま、姑息な…!」 

 

八幡(つーか、くそっ、こんな手に…) 

 

いろは「わーい、先輩のおいなりさんいただきまぁーす」パク 

 

八幡「」 

 

いろは「へへーおいひー」モグモグ 

 

八幡(……狙ってるんだよね? 狙ってなかったらもうね、天才だね?) 

 

いろは「……?」ゴクン 

 

八幡「……」 

 

いろは「……」 

 

いろは「えっ、あ……ちっちがいますよ!? いまの、へ、ヘンな意味じゃないですからね!!?」カァァ 

 

八幡(天才だったか…) 

 

いろは「…先輩って結構ムッツリですよね」ジト 

 

八幡「おいやめろ。 否定はしないけどその目はやめろ」 

 

いろは「否定してくださいよ…」 

 

八幡(え、だって逆に年頃の男の子でそうじゃないやつとかいるの? 聖人君子なの?) 

 

いろは「ふあ…」 

 

いろは「なんか食べたら眠くなっちゃいましたぁ」 

 

八幡「食べてすぐ寝るとアレだぞお前、」 

 

いろは「牛さんになるー、ですよね?」 

 

八幡「なんだ知ってるのね」 

 

いろは「いいじゃないですかー、わたしが牛になったらかわいいですよー」 

 

八幡(乳牛いろはす……なにそれエロい。 あ、ダメだこれムッツリ越してガチな変態だわ) 

 

八幡「寝るのは構わんけど、いいのか?」 

 

いろは「へっ?」 

 

八幡(制服シワになりそうだし。 あと化粧落とすとか? 知らんけど) 

 

いろは「あ、と……」 

 

いろは「せ、先輩? もしやガマンできなくなりそうですか?」 

 

八幡「なんの話ですかねそれ…」 

 

いろは「なんだー制服ですか。 まぁ明日学校ないですし最悪クリーニングって手が」 

 

八幡(この子のほうがムッツリーニ…いや、やはりゆるふわビッチなのかな) 

 

いろは「先輩なんか失礼なこと思ってません…?」 

 

八幡「い、いや? 別に?」 

 

いろは(ほんとかなぁー…)ジー 

 

八幡(んじゃまぁ、これはしまっとくか)ガサ 

 

いろは「あれ? まだなにか買ってたんですか?」 

 

八幡「ん? あー…」 

 

いろは「…?」ゴソ 

 

いろは「えっこれ」 

 

いろは(プリン……新作コーナーの) 

 

八幡「…いや一応、なんとなく?」 

 

いろは「先輩…」 

 

いろは「もらっていいんですか?」 

 

八幡「まぁ期限も短いしな。 早めのほうがいいんじゃねぇの」 

 

いろは「…! いただきます!」 

 

いろは「~~♪ おいしいです~」 

 

八幡「そりゃよかった」 

 

いろは「おにぎりはまさかでしたけど。 おまけしてテストは合格にしてあげますっ」 

 

八幡(そういやあったなそんなの…) 

 

いろは「ちゃんと見ててくれたんですね」 

 

八幡「…別にそんなんじゃないから。 あれだ、万が一小町帰ってたら何かないと怒りそう的なね?」 

 

いろは「またまたー! 先輩照れてるんですかぁー?」グイグイ 

 

八幡「うっせ引っ張んな引っ張んな」 

 

いろは「あ、合格のごほうびにわたしが食べさせてあげてもいいですよ?」 

 

八幡「は?」 

 

いろは「ほら先輩、あーん」 

 

八幡「いやいらないから…」 

 

いろは「えー? でも甘党なんですよね」 

 

八幡「ばっかお前、メシも飲み物も甘かったから十分なんだよ」 

 

いろは「もー釣れないなぁー」 

 

八幡(…そんなん甘すぎて吐くっつの) 

 

 

『私ー、実はプライベートだとーーー』 

 

いろは「この女優さん、最近ドラマとかよりバラエティ出てますよね」 

 

八幡「あーまぁ、トークも上手いんだろうな」 

 

いろは「ですかねー」 

 

八幡「……」 

 

いろは「…帰ってきませんね」 

 

八幡「そうだな」 

 

八幡(社畜2人はともかく、小町はそろそろ帰って来ないと条例違反になっちゃうんじゃないの?) 

 

 

八幡「ちょっくら小町に電話してくるわ」スク 

 

いろは「あ、はい」 

 

 

いろは「……」 

 

いろは(おうちデート、みたい?) 

 

いろは(…えへへ) 

 

 

いろは「……」コク 

 

八幡「……」プルルル 

 

 

ピッ 

 

 

『私、小町さん。 いま千葉にいるの』 

 

八幡「なんで千葉駅まで行ってんだよ…何時だとおもってんだ」 

 

小町『まだ7時台だよお兄ちゃん』 

 

八幡「だとしてももう暗いだろ。 早くお家に帰りなさい」 

 

小町『まぁまぁー』 

 

小町『それよりそっちはどうなってるの?』 

 

八幡「どうって、どっかの誰かが招き入れた絶賛家出中の小娘がいまだ入り浸ってるよ」 

 

小町『あっはっはー。 お父さんとお母さんは?』 

 

八幡「あ? まだだけど」 

 

小町『あー帰ってるわけないかー』 

 

八幡「そりゃブラック企業にお勤めだからな。 で? 小町は何時に帰る?」 

 

小町『それがだねぇお兄ちゃん。……外見た?』 

 

八幡「外?」 

 

八幡「見てないけど……外ってお前」ガチャ 

 

八幡「ただ暗わっぷ」 

 

 

ズァーーーー!!! 

 

ゴロゴロ……ビュオオオオン…… 

 

 

バタンッ 

 

 

八幡「……」ポタポタ… 

 

小町『やばいっしょ?』 

 

八幡「……やばいな」 

 

小町『ゲリラ豪雨雷雨暴風で電車止まってるっぽくて帰れなくなったので、小町はすぐ近くのお友達の家でお世話になることにしました!』 

 

八幡「えぇ……」 

 

小町『ちなみにお父さんお母さんも今日は帰れないからよろしくって』 

 

八幡「は? 俺そんな連絡きてないんだけど?」 

 

小町「お兄ちゃんに来るわけないじゃん」 

 

八幡「……」 

 

八幡「いや待て、でもそれじゃあ」 

 

小町『小町の寝巻きとか諸々は使っていいよ! じゃあね~お兄ちゃんよい夜を』 

 

八幡「ちょっこま」プッ 

 

八幡「……」ツー ツー 

 

 

八幡「……」ピポ 

 

 

『おかけになった電話番号は、電波の届かない場所にあるかーーー』 

 

 

八幡「…あのやろう」 

 

八幡「……」 

 

 

八幡(えぇ……) 

 

八幡(なに? このラノベにありがちなお泊りイベント展開…俺ってばラブコメ主人公になっちゃったの?) 

 

 

八幡「……」ガチャ 

 

 

『臨時ニュースです。 急激に流れ込んだ低気圧に伴い、記録的な大雨とーーー』 

 

 

八幡(時折窓が鳴るとは思ってたけどここまでとは…耐震すぎるのも考えもんですよセキ○イハイムさん?) 

 

 

八幡「あー、一色? そのだな」 

 

 

いろは「……」スー スー 

 

 

八幡(わーお寝てやんの) 

 

 

八幡「…おい、おい一色」 

 

いろは「……」スー スー 

 

八幡(起きねぇし…ヨダレ垂れかけてるし)シュッ 

 

八幡「……」フキ 

 

いろは「んぅ」 

 

八幡(おっ) 

 

いろは「んふふー…」 

 

いろは「……」スゥ 

 

八幡(いや目覚めろよ…ネクロダイバー…) 

 

八幡(仕方ない、ここは108お兄ちゃんスキルのひとつ『優しくデコピン』を使うか) 

 

八幡「……」ペチコンッ 

 

いろは「ったぁ!」 

 

いろは「なにもぉー……あれ? ここは」 

 

八幡「ここは比企谷家、お前は一色いろはだ。 覚えてるか?」 

 

いろは「先輩……あ」 

 

いろは(わたしソファで寝ちゃったんだ) 

 

いろは「……はっ!!」バババッ 

 

八幡「いやボディチェックなんかしなくても別になんもしてないからね?」 

 

いろは「ぐぬぬ…そうですか」 

 

八幡(なんで若干悔しそうなんですかね…) 

 

いろは「わたし結構寝てました?」 

 

八幡「いや、小町と話してた間だから何分かだけじゃね」 

 

いろは「なーんだ。 小町ちゃんはなんて?」 

 

八幡「……それなんだけどよ」 

 

 

かくかくしかじか 

 

まるまるうまうま 

 

 

いろは「マジですか」 

 

八幡「マジじゃなかったらと何度星に願ったことか」 

 

いろは「……」スク 

 

 

スタスタ 

 

 

いろは「……」ピラ 

 

 

ゾァアアアアア…ゴロゴロドゥーーン!! 

 

 

いろは「……」シャッ 

 

 

いろは「マジですね」 

 

八幡「マジだろ」 

 

いろは「てことは…」 

 

いろは「……」 

 

 

いろは「え? ふ、ふたりきり? ですか? …先輩と?」 

 

八幡(言っちゃらめぇ! 考えないようにしてるんだから!) 

 

いろは「……」ポカン 

 

八幡「……いや、その、なんかすまん」 

 

いろは「いえ! もともと押しかけたのはわたしですし…」 

 

八幡「……」 

 

八幡「まぁ、なっちゃったもんは諦めるしかない。 とりあえずお前は家に連絡入れろ」 

 

いろは「はっはい!」 

 

八幡(あとは…) 

 

いろは「とりあえず、お母さんには友達の家に泊まるってことにしました」 

 

八幡「え……それ大丈夫? お前に仲いい同性の友達いるの?」 

 

いろは「うっさいですね! ちゃんとうちではいることになってますよ!」 

 

八幡(つまり実際は……あっ(察し)) 

 

いろは「てか先輩に友達がどうとか言われる筋合いない気がするんですけどー…」 

 

八幡「ごもっともで…」 

 

 

八幡「んじゃ先にシャワー浴びてくるから」 

 

いろは「へあっ!?」 

 

八幡「…なに驚いてんだよ。 俺だって流石に風呂くらい入るんだけど?」 

 

いろは「い、いえ…なんでもないです」 

 

八幡「んじゃ行ってくる。 喉渇いたらお茶冷蔵庫にあるから」 

 

いろは「いってらっしゃい…です」 

 

 

八幡(俺はシャワーで済ませ、それから一色用に湯を張る。 これが最善手だろうな) 

 

八幡(だって先に溜めて入ったら『え? 先輩の入ったお湯とか気持ちわる…』ってなるし、後で入ったら『え? 先輩わたしの入ったお湯飲むつもりですか気持ちわる…』ってなるしね? 詰みだね?) 

 

 

いろは(うー、わたしだけ意識してるみたい。 ふつう男の人のほうがなるはずなのに) 

 

いろは「……」 

 

いろは(やっぱり……わたしって先輩のこと) 

 

 

八幡「……」シャー… 

 

八幡(このあと一色が入るのか……やべぇよやべぇよ……今のうちに抜いとくべきですかね…いやダメですね…) 

 

 

いろは「……」ガチャ 

 

いろは「お、おふろどうもでしたぁー」ポカポカ 

 

八幡「おう」 

 

いろは「すいません寝巻き、それに洗濯まで」 

 

八幡「いやまぁ小町のだしな。 使い方大丈夫だったか?」 

 

いろは「あっはい。 てか乾燥めっちゃ速いですね」 

 

八幡「確かそこが気に入って買ったとかなんとか」 

 

いろは「……」 

 

 

いろは「えと、先輩?」 

 

八幡「ん?」 

 

いろは「……どうですか?」テーン 

 

八幡「ああロッテなら9回表で逆転されてそのまま負けちまったよ」 

 

いろは「なんでいま野球の結果聞いたと思ったんですかねー……」 

 

いろは「じゃなくて」 

 

いろは「こ・れ! 寝巻き!」 

 

八幡「ああ…そゆこと」 

 

いろは「感想は?」 

 

八幡「乾燥めっちゃ速いよな、あの洗濯機」 

 

いろは「……はい?」ニコ 

 

八幡「ちょっタイム、やり直すから待って? その鈍器しまって?」 

 

いろは「次ふざけたらおこりますんで」 

 

八幡(もう怒ってるんですがそれは) 

 

 

八幡「感想、感想ね」 

 

いろは「シンプルにどこがどうかわいくてわたしに似合ってるか言ってくれればいいんですよー」 

 

八幡「可愛くて似合ってるの前提じゃねぇか……いや否定はしないけど」 

 

いろは「えっ、ほんとですか?」 

 

八幡「まぁ」 

 

いろは「…そうですか。ま、まぁ当然ですけど」 

 

八幡(柄はたぶん可愛いよな小町のだし。 サイズもぴったりだしな) 

 

八幡(にしてもサイズ合ってよかったな。 母親の貸すことにでもなったらなんか嫌だし……ん?) 

 

いろは「どうかしました?」 

 

八幡「あ、いや」 

 

いろは「ははぁ。 さては先輩わたしに見とれちゃいましたー?」ニヤ 

 

八幡「そ、そうじゃなくてね?」 

 

いろは「いいんですよ遠慮しないで。 ほらほらー正直に言ってくださいっ」 

 

八幡「……」 

 

 

八幡「いや、小町のサイズがぴったりってお前…」 

 

いろは「」 

 

 

八幡「……」 

 

いろは「な……な……」 

 

 

八幡「待て、こんな格言がある。 『諦めたらそこで試合しゅ」 

 

いろは「うわあああぁん先輩のばかぁーー!!」ダッ 

 

八幡「あっちょっ、寝るなら歯磨きしなさい! 虫歯になっちゃうから!」 

 

いろは「うー…」シャコシャコ 

 

いろは「ほんっほ、へんふぁいっへへいはひーはいえふおへ」シャコシャコ 

 

八幡「ばっかお前、デリカシー全然ありまくりだっつの。 なんならデリカシーが服着て歩いてるのが俺まである」 

 

いろは「いぃわはんあいんえふへおー…」シャコシャコ 

 

八幡(意味わかんないんですけどーとか意味わかんないんですけどー………よく俺聞き取れるな) 

 

 

 

八幡「一色は小町のベッド使っていいらしいから」 

 

いろは「すいませんいろいろ」 

 

八幡「ちなみにトイレ1階だけど大丈夫そう?」 

 

いろは「あっはい。 場所は一応」 

 

八幡「あーいや、そうじゃなく」 

 

いろは「?」 

 

八幡「ほら、1人で行けるのか的な」 

 

いろは「先輩はわたしをどこまで子供扱いする気なんですかねー……?」ゴゴゴ… 

 

八幡「じょ、冗談だって! まぁなんかありゃ起こしていいから! んじゃ」バタン 

 

いろは「あっ! せんぱ…」 

 

 

いろは(おやすみくらい言ってほしいのに……もう) 

 

 

いろは「……」パチ 

 

 

いろは「……」 

 

いろは(トイレ…)モソ 

 

 

ジャーー… 

 

 

いろは(階段の電気どこだろ) 

 

いろは(…まいっか、降りるときもつけなかったし) 

 

 

いろは「……」トン…トン… 

 

 

いろは(ドア、ドア…) 

 

いろは「……」ガチャ 

 

 

いろは「ふあ……」 

 

 

いろは(ねむ…)モソ 

 

八幡「……」スゥ スゥ 

 

いろは「……」スゥ… 

 

いろは「……ッ!?!?」 

 

いろは(えっ? えっ!?) 

 

いろは(先輩、なんでこっちで寝て…!?) 

 

いろは「……」 

 

いろは(あ、ちがうわたしが間違って先輩の部屋に入ったんだ…) 

 

 

いろは「……」 

 

八幡「……」スゥ スゥ 

 

いろは「……」ドキドキドキ 

 

いろは(どうしよ…早く出ないとなのはわかるけど) 

 

八幡「……」スゥ スゥ 

 

いろは「……」 

 

いろは(ちょっとだけ……えい)ツン 

 

八幡「……う」 

 

いろは「…!」 

 

いろは(起きた? 起きた…?) 

 

八幡「……」スゥ 

 

いろは(まだセーフ…)ドキドキ 

 

いろは「……」 

 

いろは(えー、なんか変なテンションになってきた。 どこまで大丈夫なんだろ…) 

 

八幡「……」スゥ スゥ 

 

いろは「……」ピト 

 

いろは(バレたらやばい、かな? 先輩怒るかな) 

 

いろは(体あったか…) 

 

いろは「……」 

 

いろは(もう、ちょっとだけ) 

 

 

八幡「……」スゥ スゥ 

 

いろは「……」ギュ 

 

いろは(わー、わー…! うしろから抱きついちゃった) 

 

いろは(どっちかっていうとされたいけど、するのもいいかも?) 

 

いろは(てか先輩の背中大きい…) 

 

八幡「…ん」ゴロ 

 

いろは「へっ?」 

 

 

いろは(え、ちょっ) 

 

八幡「……」スゥ 

 

いろは「………」 

 

いろは(あ、あれー? 腕が下敷きに…) 

 

いろは(え、ちょ、全然抜けない! てか、無理やり抜いたら先輩絶対起きる!) 

 

いろは「……」 

 

 

いろは(どうしよう) 

 

 

いろは「…も、もしもぉーし」ボソ 

 

八幡「……」スゥ スゥ 

 

いろは(もう一回動いてくれれば…) 

 

八幡「……」モソ 

 

いろは(あ、動い)ペタ 

 

いろは「ひゃんっ!?」 

 

いろは「……!!」ババッ 

 

いろは(ばかばか! 先輩どこ触ってんですかぁ!)ペシペシッ 

 

八幡「うごご…」 

 

いろは(って起きちゃう起きちゃう……けど、もぉー、もぉー!) 

 

いろは「……」 

 

いろは(先輩はわたしのことどう思ってるのかな) 

 

 

いろは(めんどくさい後輩? 生意気な後輩?) 

 

いろは(かわいい…ってちょっとは思ってくれてるかな) 

 

いろは(手がかかるぶん、守りたいって思ってくれないかな) 

 

八幡「……」スゥ スゥ 

 

 

いろは(先輩に嘘や偽装は通じない) 

 

いろは(だから、たぶん先輩はほかの人より、表面にないわたしのことも知っている) 

 

いろは(本当のわたし……なんて自分でもよくわかんないけど) 

 

 

八幡「……ん」ゴロ 

 

いろは「……」 

 

いろは(あ、抜けた) 

 

いろは(名残惜しい……けど、いましかない!)スルッ 

 

 

いろは「……」チラ 

 

八幡「……」スゥ スゥ 

 

いろは(ふぅ、あぶなかったぁ~) 

 

 

八幡「……」スゥ 

 

いろは「……」 

 

 

いろは(先輩のことが知りたい) 

 

いろは(わたしのことをもっと知ってほしい) 

 

 

いろは(だからやっぱり、わたしは…) 

 

八幡「……ん」 

 

いろは(先輩……) 

 

いろは(……すき、です)チュ 

 

八幡「……」 

 

いろは「おやすみなさい…」 

 

パタン 

 

八幡「……」 

 

八幡(え? なに今の…?) 

 

 

翌週 

 

いろは「こんにちはー」ガララ 

 

 

いろは「あれ? 先輩だけ?」 

 

八幡「まぁな。 悪いが今日はもう営業終了、俺も帰るとこだ」 

 

いろは「そうですかー」 

 

 

いろは「あ、てか、この前はありがとうございました」ペコ 

 

八幡「ん? ああ、いや」 

 

八幡「それよか親父さんと仲直りできたのか?」 

 

いろは「はいっそれはもう。 むこうから死ぬほど謝ってきました」 

 

八幡「一応お前も反省しとけよ?」 

 

いろは「うっ、わかってますよー…」 

 

八幡「そういや、この前いつの間にか帰ってたな」 

 

いろは「先輩が起きる前に妹さん戻ってきたんで。 起こすのもあれでしたし」 

 

八幡「ならいいんだけどよ」 

 

いろは「ひょっとしてさみしかったですかー?」 

 

八幡「んなわけあるか…」 

 

 

八幡「つーか、ちょっと聞きたいんだけど」 

 

いろは「はい?」 

 

八幡「お前、寝てる時俺の部屋入ったりした?」 

 

いろは「えっ!?」ギクッ 

 

八幡「あーいや、なんか知らんけど途中で起きたら?のあたりに妙な感触があって、しかも微妙に濡れてたんだよ…」ソッ 

 

いろは「……さぁーー? あ、雨漏りとかじゃないですか?」 

 

八幡(雨漏りねぇ。 天気悪かったしありえなくはないが) 

 

八幡「いや、マジに座敷わらしでもいたかと思うと気味悪くてな……洗っても洗ってもこう、嫌な感じが取れんっつーか」 

 

いろは「……」 

 

いろは「は」カチン 

 

八幡「もし一色が嫌がらせでなんか仕掛けてきたならまだそっちのほうが合理的…」 

 

八幡「ってどうしたお前」 

 

いろは「べっつにー。 なんでもないですけど」ムス 

 

八幡(ちょっ、明らかに不機嫌オーラ放ち始めてません?) 

 

いろは(人の気も知らないで…気味わるいとか嫌な感じとか!) 

 

いろは「先輩、覚えてるんですか? そのときのこと」 

 

八幡「ん? あーいや」 

 

八幡「正直寝ぼけてたか、あるいは変な夢でも見たのを現実と混同したのかもしれん」 

 

八幡(ただ妙に感触やらなんやらは残ってたからなぁ。 そこがどうにも) 

 

いろは「へー、ふーん、そうですかー」 

 

八幡「……なんだよ」 

 

いろは「いえ、わたしそれの正体わかったかもなぁーって」 

 

八幡「え? マジで? なんで?」 

 

いろは「知りたいんなら教えてあげてもいいですけどー、ひとつお願いが」 

 

八幡「えぇ……」 

 

八幡(まーた面倒な…いやしかし気になるしな、聞くだけ聞いてみるか) 

 

八幡「何が望みだ」 

 

いろは「んと……また今度泊めてくれません?」 

 

八幡「……」 

 

八幡「は?」 

 

いろは「や、その」 

 

いろは「先輩のおうち、ゆっくりできるし、そこそこ楽しかったですし」 

 

八幡「はあ……いやまぁ、構わんけど」 

 

いろは「ほんとですか?」 

 

八幡「小町がいる時なら」 

 

いろは「ふふん。 決まりですね」 

 

八幡(なんだ? ソファでも気に入ったんかね) 

 

八幡「んで? 正体とやらは」 

 

いろは「あー……」 

 

 

いろは「先輩、耳かしてください」チョイチョイ 

 

八幡「いやなんでだよ。 普通に言えばよくない?」 

 

いろは「いーからっ!」グイ 

 

八幡(痛い痛い! やめて、はちまんイヤーはちきれちゃう! いやぁー!) 

 

いろは「それはですね…」スッ 

 

八幡「おま、マジで耳取れちゃったらどうすん」チュ 

 

 

 

八幡「……」 

 

いろは「……」 

 

いろは「こーんな感じじゃなかったですかー?」ニヤ 

 

八幡「…………」 

 

八幡「……ふえ?」 

 

いろは(先輩のばーか♪) 

 

 

 

 

 

 

八幡(はー疲れた)ガチャ いろは「あ、先輩おかえりなさー」バタン

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