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八幡「お前ら、よく占いなんざ信じるよな」1/3【俺ガイルss/アニメss】

 

TV『では占いでーす!』 

 

TV『本日最もよい運勢なのは、魚座のあなた! 周りから信頼が寄せられ大成功する一日となるでしょう。ラッキーパーソンは 

 

 

小町「お兄ちゃん! 見て見て、お兄ちゃんっ!」 

 

八幡「なんだよ」 

 

小町「占い! 今日小町1位だよ!」 

 

八幡「お前魚座だっけか。よかったな」 

 

小町「いやー、朝から1位だなんてラッキーだなぁー。さすが占い1位なだけあるよね」 

 

八幡「待て待て、1位だから1位になったわけじゃねぇだろ」 

 

小町「ん?」 

 

八幡「いや、だから占い1位なのはもともと占いが1位だから1位なわけで……なんだこれうまく説明できん」 

 

小町「細かいなーお兄ちゃんは。とにかく小町は今日一日1位なの! 楽しみだなぁー、何が起こるかなぁー?」 

 

八幡(幸せなやつだな) 

 

八幡「つーか小町、呑気に占いまで見てたけど、学校はいいのか? 歩きならそろそろ出ないと遅刻すんじゃねぇの?」 

 

小町「ちっちっち、今日の小町にはアシがあるのですよ」 

 

八幡「アシって中学に送迎の制度でも出来たのか?」 

 

小町「ぶっぶー。そんな、幼稚園じゃないんだから」 

 

八幡「ま、まさか小町、知らないおじさんについて行ってるんじゃないだろうな? アメあげるよとか学校まで車で送ってあげるよとか甘い話にまんまと乗せられてるんじゃないだろうな!?」 

 

小町「ちょっ、小町はそこまでバカじゃないよ!」 

 

八幡「そうか…… よかった…… 

 

小町「心配してくれるのは嬉しいけど、本気でそんな心配されてると思うと逆にちょっと傷つくよお兄ちゃん」 

 

小町「それよりさ、いつまでごはん食べてるの?ていうか着替えてすらないってさすがにマズいと思うなー」 

 

八幡「たまにはいいだろ、そんなゆとりのある休日の朝があっても。なんたってゆとり世代だしな」 

 

小町「ゆとり乙だよお兄ちゃん。そんなこと言ってるから…… 

 

小町「って、あれ? いま『休日』って言わなかった?」 

 

八幡「あん? そうだけど」 

 

小町「もーやだなー、日曜日は昨日だよ? まだ働いてもないのに月曜が憂鬱で曜日錯誤するなんて生意気だよ? お兄ちゃん」 

 

八幡「いや違うから。土曜に校内清掃やらなんやらで全校生徒が駆り出されたぶん今日が代休になったんだよ。言わなかったか?」 

 

小町「……や、やだなー。そんなもっともらしい嘘ついても小町は騙されないゾ☆」パチッ 

 

八幡「かわいいなおい。けど、これはれっきとした事実なんだゾ☆」 

 

小町「お兄ちゃんがやっても全然かわいくないよ。あとその嘘もかわいくないよ? 言い訳してないではやく準備しなさいっ!」 

 

八幡「そう言われてもな」ズズ 

 

八幡「ふー休日のコーヒーは格別にうまいな。妹のちょっとした喧騒ですら味に華を添えるようだ」 

 

小町「やだ、お兄ちゃんちょっとかっこいい 

 

小町「じゃなくてっ! はやく身支度しよお兄ちゃん。いくらなんでも小町遅れちゃうよ」 

 

八幡「は? なんで俺が休日を謳歌するのとお前が遅れるのとが関係あんだよ」 

 

小町「い、いやいや今はそういうのいいから! え? 学校お休みなんて嘘だよね?」 

 

八幡「嘘じゃねぇし。なんなら雪ノ下にでも聞いてみるか?」 

 

小町「えっ……じゃあお兄ちゃん、今日自転車で学校には…… 

 

八幡「だから休みだって。行くわけねぇだろ」 

 

小町「………… 

 

 

八幡「んで、結局アシってなんなわけ? 友達の親でも迎えに来」 

 

小町「うわぁぁぁぁん!! お兄ちゃんのバカぁぁぁぁぁいってきまぁぁぁぁす!!!」 

 

 

ガチャッ バタンッ! 

 

 

八幡(アシは俺のチャリかよ) 

 

八幡(っつーか占い1位の朝がこれか…… やはり朝のめざ○し占いは間違っている。) 

 

 

 

TV『では占いでーす!』 

 

TV『本日最もよい運勢なのは、双子座のあなた!』 

 

結衣「やたっ! 占い1位だ!」 

 

TV『恋愛運が急上昇! 好きな人には積極的にアプローチしてみて』 

 

結衣「っ!」 

 

TV『ラッキーアイテムはギリギリの服 きわどい格好に相手もタジタジに!?』 

 

結衣「…… 

 

結衣(きわどい格好で……積極的にアプローチ…… 

 

結衣(よ、よーしっ! ちょっと今日はがんばってみよう!) 

 

 

TV『ラッキーパーソンはもちろん、あなたの想い人 ひゅぅひゅーぅ爆発しろ』 

 

TV『ちょっ何言ってんだああんうるせぇやってられっかこんなモンおいバカ暴れんじゃねぇストップストップ止めろカメラ止めろ!』 

 

TV『ああ結婚したい』 

 

結衣「……」キョロ 

 

 

パカッ 

 

 

結衣「あ……ヒッキーの上履き…… 

 

結衣「…… 

 

結衣(いやいやいやいや! 変態じゃないしっ!) 

 

結衣(手紙だけ入れて 

 

 

パタン 

 

 

結衣「…… 

 

結衣(い、いやいやいや、あたしは変態じゃないし?) 

 

 

 

 

 

 

八幡(はぁ、月曜じゃなくても休日の次の学校は億劫なもんだな) 

 

八幡「……」パカッ 

 

八幡「…… 

 

八幡(やたらカラフルな手紙が入ってやがる。何の嫌がらせだよ。一応あとで見るか) 

 

八幡「よっと」 

 

 

トサッ 

 

 

八幡「……」モソモソ 

 

八幡「あ?」 

 

八幡(なんか上履き左右逆なんだけど…… 何の嫌がらせだよ) 

 

ガヤガヤ 

 

八幡(この手の手紙を読むとき、ふつうの人間ならば人目を盗むか、教室外でこっそり内容を確認する) 

 

八幡(しかしぼっちにはその必要がない。『えー何その手紙? ラブレター? おい○○ラブレターもらってんぞ!』と叫び立ててくる相手がいないためだ) 

 

八幡(流石にこの奇抜な色の手紙は堂々とまでいかないが、わずかなカモフラージュで十分だろう) 

 

 

『比歪谷くんへ』 

 

 

八幡(文字は一応女子っぽいな。それもなんとなく頭の悪そうな) 

 

八幡(っつーか誰だよ比歪谷くんって。イカサマしてる奴みたいじゃねぇか。もしこれがラブレターだったら読む前に燃やして処分するレベルだぞ) 

 

八幡(まあラブレターなんつー可能性は100%ないしな。封筒に差出人の名前が無いってことは匿名希望なんだろうけど、中身を見れば推測くらいは……)ペラ 

 

 

『ヒッキーへ 

大事なお話があります。 

お昼休みに部室まで来てください。 

こなかったらハリセンボンだからね! 

 

謎の双子座ユイユイXより』 

 

 

八幡「…… 

 

結衣「……」チラ チラ 

 

八幡「……」チラ 

 

結衣「!!」プイッ 

 

結衣「ひゅ~ひゅひゅ~ 

 

八幡「…… 

 

結衣「ひゅ~~」チラ 

 

八幡「……ジー 

 

結衣「!!」プイッ 

 

 

昼休み 部室前 

 

 

八幡(さて、このドアの向こうに謎の双子座ユイユイXさんがいるのか…… 何ヶ浜さんなんだろうな一体 

 

 

結衣(最初が肝心、最初が肝心! 勢いよく、積極的にっ!)ドキドキ 

 

 

ガララッ 

 

 

結衣「!!」 

 

 

結衣「や、やっはるぉー!」 

 

八幡「うす」 

 

結衣「………… 

 

結衣(噛んじゃったぁぁ………)ガクッ 

 

八幡「……もう一回入り直すか?」 

 

結衣「ううん……いい…… 

 

結衣(気をとりなおして! がんばれあたしっ!) 

 

結衣「えとやっはろーヒッキー」 

 

八幡「そこはやり直すのかよ」 

 

結衣「い、いちおう」 

 

八幡「んで? 大事な話だって?」 

 

結衣「うん…… てゆか、ヒッキーあんま驚かないんだね」 

 

八幡「なにを?」 

 

結衣「だってヒッキー、ラブレターなんてもらったことなさそうだし?」 

 

結衣「しかもほんとにそこに女の子がいて、しかも、それがあたしで…… 

 

八幡「いや、正直驚いた」 

 

結衣「そ、そっか」 

 

八幡(あの手紙が匿名性保ってると思ってることにな) 

 

結衣「それで……ね? 話なんだけど」 

 

八幡「ごめんなさい」 

 

結衣「あのね、あたし 

 

 

結衣「……へっ?」 

 

 

八幡「伝わらなかったか? ならはっきり言う。『断る』だ」 

 

結衣「なっ……ちょっ……!?」 

 

八幡「これでも伝わんないとかどうしろってんだよ」 

 

結衣「いやいやいや! あたしまだヒッキーに何も言ってないじゃん!」 

 

八幡「はぁ言ってなくても分かるんだよ」 

 

結衣「えっ? う、うそっ」 

 

八幡「お前、俺に告白するつもりだったろ」 

 

結衣「…… 

 

結衣「ぅえええええぇえええ!!?」 

 

結衣「どどどどっなっ……なんでっ!? なんで分かったの!?」 

 

八幡「そりゃ分かるだろ」 

 

結衣「う、うそだぁ 

 

八幡「嘘じゃねぇから」 

 

結衣(ヒッキー、知ってたの? あたしの気持ち…… しかも今日告白するってことまで…… 

 

結衣(そりゃ下駄箱に手紙入れて、人気のないとこに呼び出して、大事な話があるってちょっと告白っぽい流れだけどさ) 

 

結衣(それだけで告白なんてヒッキーは決めつけないだろうし、ここにくるまで相手があたしって分かんなかっただろうし) 

 

結衣「どうしてわかったの?」 

 

八幡「あ?」 

 

結衣「あたしが告白するって…… ヒッキー、ほんとは前からあたしの気持ち知って 

 

八幡「…… 

 

 

八幡「だってヒッキー、ラブレターなんてもらったことなさそうだし?」(裏声) 

 

 

結衣「!?」 

 

八幡「ラブレター、なんてもらったことなさそうだし?」(裏声) 

 

結衣「…… 

 

結衣「あっ!」 

 

八幡「そういうこと。さっきお前が言ったんだろ、この手紙がラブレターだって」 

 

結衣「そういえば 

 

八幡「たしかに女子からラブレターなんて貰ったこたねぇけど、ラブレターがどういうものかくらい知ってる。だからお前が何を言おうとしたのかも分かるってもんだ」 

 

結衣「うー…… 

 

八幡「ちなみにイタズラブレターを貰った経験はゼロじゃあない」 

 

結衣「へっ? イタズラブレター? なにそれ」 

 

八幡「あれだよ、モテなそうな男子に、他の男子が女子を偽って出すラブレター。言うなればドッキリだな」 

 

八幡「それ以降、俺は二度と同じ手に引っかかるまいと心に決めた。今回だってそうだ、見え透いた罠にいつまでも囚われるのも嫌なんでな」 

 

結衣「えっ? えっ?」 

 

八幡「『断る』っつったのはその張り巡らされた網を『断つ』って意味も込めてんだよ。我ながらうまく言ったなこれ」 

 

八幡「っつーわけで、掛かる前に先に抜けさせてもらうわ。じゃあな」クルッ 

 

結衣「ちょ、ちょっと待ってよ!」 

 

八幡「空気読むのもいいけど、あんまこういうのに加担しないほうがいいぞ。薄っぺらい嘘は時に肥厚な負の感情を生み出すからな」スタスタ 

 

結衣「待ってってば! ヒッキー!!」 

 

 

結衣「そーゆーの正直よくわかんないけど……ヒッキーはあたしがドッキリで告白するって思ったから断ったの?」 

 

八幡「…… 

 

結衣「あたしが……ヒッキーにそんな最低なことすると思ったの? ノリとか冗談で、ヒッキーを傷つけるようなことすると思ったの!?」 

 

八幡「それは 

 

結衣「答えてよ、ヒッキー……ちゃんとこっち見てよ」 

 

結衣「あたしは絶対にそんなことしない。したくない!」 

 

八幡「……どうだろうな」 

 

結衣「っ!」 

 

八幡「…… 

 

結衣「ほんとだもん 

 

八幡「…… 

 

結衣「ヒッキー、信じてよ。ちゃんとあたしのこと見てよ。あたしはほんとに……ヒッキーのこと 

 

八幡「…… 

 

八幡「……悪い、由比ヶ浜。それはどうしてもできない」 

 

結衣「なんで ヒッキーはあたしのこと信じてくれないの?」 

 

八幡「いや、そうじゃねぇけど」 

 

結衣「……. 

 

八幡「とにかく……今はできない」 

 

結衣「それじゃわかんないよ 

 

結衣「ちゃんとこっち見て、ちゃんと教えて! ヒッキー!」 

 

八幡「…… 

 

結衣「むーっ!」 

 

 

スタスタ 

 

 

結衣「ねー、ヒッキーってば!」ガシ 

 

八幡「っ!!」ブンッ 

 

結衣「ひゃっ」 

 

八幡「わ、悪い!」 

 

八幡「けど今は…… 本当に悪い!!」ダッ! 

 

 

タタタタ… 

 

 

結衣「……ヒッキー………うぅ…… 

 

 

八幡(すまん、由比ヶ浜、すまん!) 

 

 

八幡(……けど) 

 

 

八幡(なんでスカート超短ぇんだよ! なんでボタン3つもあいてんだよ! 上下共に微妙に下着見えてんだよ!!) 

 

八幡(ギリギリのつもりか!? 余裕でワカメちゃんだよばかやろう!  

 

 

 

TV『では占いでーす!』 

 

TV『本日最もよい運勢なのは、山羊座のあなた!』 

 

雪乃「……」ズッ 

 

TV『ふだんとのギャップに相手がメロメロ! 動物のモノマネなんてしてみてはいかが? そこで、ラッキーアイテムはなんとネコミミ!』 

 

雪乃「……」カチャ 

 

雪乃(なんとなく8chをつけてみたら今日は1位なのね) 

 

雪乃(損をするわけではないし、気分も良いけれど、これで一喜一憂して日常の行動を変化させるのは馬鹿げてるわね) 

 

雪乃「……」ズッ 

 

TV『ラッキーナンバーは ラッキーパーソンは目が腐った人ってなんですかこれ?』 

 

雪乃「……」ピクッ 

 

八幡(今日は露骨に由比ヶ浜から避けられてたな昨日の今日だし当然か) 

 

八幡(あの様子じゃたぶん部活にも来ないだろ) 

 

八幡(っつーことはだ、人気の少ない棟の部室で雪ノ下と二人きり……… 

 

八幡(あるぇー、エロそうな状況なのに全くエロさを感じないぞぉー) 

 

八幡(だって怖ぇんだもんマジで。雪ノ下ももう少し可愛気というか、茶目っ気があればないや、ありえねぇし想像すらできんが) 

 

 

ガララッ 

 

 

八幡「うす」 

 

 

雪乃「あら、ごきげんよう 

 

 

八幡(まあそうだよな、やっぱ雪ノ下ひとり…… 

 

八幡(っ!!?) 

 

八幡「………… 

 

雪乃「…… 

 

八幡「………… 

 

雪乃「……」ペラ 

 

八幡「………… 

 

 

雪乃「……比企谷くん、何を入口でぬぼーっと突っ立っているのかしら?」 

 

八幡「あ、いや 

 

雪乃「座ればいいじゃない。そこで立ったまま視界の端に入ってこられるとひどく不快だわ」 

 

八幡「ああ……悪い。座るよ」ガラッ 

 

雪乃「妙に潔いのね。何かあったの?」 

 

八幡「いや別に…… 気にしないでくれ」 

 

雪乃「別に、気にしてなんかいないわ。気に障っただけよ」 

 

八幡「悪い 

 

雪乃「……なんだか調子が狂うわね」 

 

八幡「…… 

 

八幡(いやいやいや、調子狂うのはこっちだボケ!なんて言えねぇ) 

 

雪乃「……」ペラ 

 

 

八幡(なんで平然と猫耳を装着なさってるんですかねぇ雪ノ下さん…… 

 

八幡(やべぇよやべぇよどうしちゃったの? ゆきのんならぬゆきにゃんとか言い出すつもりなの?) 

 

雪乃「…… 

 

八幡(触れるべきなのか? でも雪ノ下が自ら猫耳なんて付けるとは思えねぇし、誰かに弱みでも握られてんなら触れないほうが 

 

八幡(いや、あの雪ノ下だぞ。弱みを握られるなんてこと……万が一にあったとしてもみすみす屈服するなんざ雪ノ下らしくない) 

 

雪乃「……」パタン 

 

八幡(可能性があるとすればなんだ? 自発的な線はナシとして、誰かにやらされているとすれば) 

 

 

八幡(……そうか!) 

 

八幡(目には目を、歯には歯を、雪ノ下には雪ノ下を) 

 

八幡(陽乃さんだ 間違いない) 

 

八幡(雪ノ下がこんな奇天烈な行動に出るには、陽乃さんが絡んでいる以外にあり得ない。っつーかそうであってください 

 

雪乃「……」フゥ 

 

 

八幡(発端はわからんけど勝負でもしたのかね。いい加減、姉に踊らされ続ける妹じゃないってことか) 

 

八幡(結局は負けちまって、猫耳をつけるハメになった。まあそんなとこだろう) 

 

 

雪乃「ん……」ノビ 

 

 

八幡(けどあれだけ畏怖していた陽乃さんに挑んだんなら、それは成長なんじゃねぇの。お前はよくがんばったよ雪ノ下) 

 

八幡(それに、驚きはしたが……けっこう似合ってるぞ猫耳 

 

八幡(っつーかほら、格好だけならディスティニーランドにそんなやつらいっぱい居るし。流石に鳴きマネとかされたらドン引きだけどな) 

 

 

雪乃「……」スゥー 

 

雪乃「にゃあー……」フゥー 

 

 

八幡「おいィィイイ!!?」ガタッ! 

 

雪乃「なに? いきなり奇声を発しないでもらえる? 比奇谷くん」 

 

八幡「なんだか口頭で伝わらないディスりを感じるいやそんなのはどうでもいい! なんだよ今のは」 

 

雪乃「今の、とは一体何を指しているのかしら」 

 

八幡「とぼけんな。猫の鳴きマネしただろお前」 

 

雪乃「はぁ比企谷くん、前にも言ったかもしれないけれど、目だけでなく耳と脳みそも腐ってきているの? そんなあり得ない話を捏造するなんて」 

 

八幡「あくまでシラを切るつもりかよ 

 

雪乃「切ってないわ」 

 

八幡「切ってんだろ」 

 

雪乃「いい加減にしてくれる? 私が切るのは髪と爪とあなたとの縁くらいのものよ」 

 

八幡(こいつ…… 

 

八幡「へいへい。聞き間違いでした。悪かったよ」ガラ 

 

雪乃「わかればいいのよ」 

 

八幡(よくわかんねぇけど、触れないほうがいいっぽいな)ズーン 

 

八幡「…… 

 

八幡(実は本当に聞き間違いだったりしてな。疲れて幻聴が聞こえたとか。どんなハードワーカーだよ俺) 

 

八幡(そもそも鳴きマネ以前に猫耳つけてやがったし…… まさか、これも幻覚か?) 

 

 

八幡(……もはやそのほうが納得できるぞ。もう一回確かめて)チラ 

 

雪乃「……ジー 

 

八幡「どわぁああ!?」ガタッ 

 

 

雪乃「ちょっと、そんなに驚くことないでしょう」 

 

八幡「驚くわ!」 

 

八幡(顔あげた瞬間に目の前に顔あったらそりゃビビるっつのしかも雪ノ下の) 

 

雪乃「……ジー 

 

八幡「な、なんだよっつーかいつの間に忍び寄ったんだお前…… 

 

雪乃「癖になってるのよ。音消して歩くの」 

 

八幡「はあ……?」 

 

八幡「まあいい。で、どうかしたのか?」 

 

雪乃「どう、というと?」 

 

八幡「いやわざわざこっち来たんだから何かあんだろ」 

 

雪乃「 別に、にゃんとなく見ていただけよ?」ニャン 

 

八幡「はあ? なんだそりゃ」 

 

八幡「……ん!?」 

 

雪乃「今日の比企谷くんは表情豊かで面白いわね。あ、失礼、滑稽の間違いだったわ」 

 

八幡「待て待て待て、今のは確実に聞こえたぞ。あとそれ訂正後のほうが失礼だから」 

 

雪乃「なんのことかしら」 

 

八幡「またとぼけんのかよ…… だから、『にゃんとなく』って言ったろ今」 

 

雪乃「うわ……」スッ 

 

八幡「引くなよ! 言ったのお前だっつってんだろ!」 

 

雪乃「はぁ。何回も言わせないで。この私がそんな猫みたいな話し方をするわけないじゃない」 

 

八幡「なんで若干上から目線なんだよ」 

 

雪乃「百歩譲って私がそんな風に言ってしまったのだとしても、それは噛んでしまったからとは考えられないの?」 

 

八幡「いや、でもあんな流暢な噛み方聞いたことねぇし」 

 

雪乃「比企谷くん。そういう一方的で融通の利かない思考は社会に出てから妨げとなるのよ? 今のうちに是正すべきだと思うのだけれど」 

 

八幡「くっ 

 

八幡(猫耳つけたやつが社会がどうのと講釈垂れやがって…… しかしこうなった雪ノ下は譲らないからな。既に百歩も譲られてるし) 

 

八幡「ま、まあそうだな。噛んだだけだよな。よく考えたらお前が猫の鳴きマネなんてするわけねぇしな」 

 

雪乃「当たり前でしょう。あなたを見ているのも飽きたし、定位置に戻るわ」 

 

 

スッスッスッ 

 

 

八幡(本当に音消して移動してやがる。ますます猫みたいじゃねぇか) 

 

雪乃「……」ソワ 

 

八幡「…… 

 

雪乃「……」キョロ 

 

八幡(席に戻ったのはいいけど、なんつーか雪ノ下のやつ落ち着きがないな) 

 

雪乃「…… 

 

八幡(いつもは大人しく読書に勤しんでいるってのに) 

 

雪乃「ねぇ比企谷くん。由比ヶ浜さんは今日はお休み? 私のほうには特に連絡が来ていないのだけれど」 

 

八幡「ん? ああ、由比ヶ浜はたぶん来ねぇよ」 

 

雪乃「たぶん? 彼女から来ないと聞いたのではなくて?」 

 

八幡「あー…… 

 

八幡(昨日のことは、なんとなく伏せておいたほうがいいか) 

 

八幡「あれだ、カラオケだよ。三浦たちに半ば無理矢理って感じで。迷ってたみたいだけどあの様子じゃたぶんそっち行ったんたろうな」 

 

雪乃「なるほど、そういうことね」 

 

八幡(まあこんなとこだろ) 

 

雪乃「ふぅん…… 

 

八幡「…… 

 

八幡(そうか、雪ノ下のやつ、それで落ち着きがなかったんだな。いつの間にか大好きになってんじゃねえか) 

 

雪乃「…… 

 

八幡(あんま表情には出ないが落ち込んでるんだろうな。『今日は来ないのね……由比ヶ浜さん』みたいなこと思ってそうだ) 

 

雪乃「…… 

 

雪乃「今日は来ないのね……由比ヶ浜にゃん」 

 

八幡「はいストップ」 

 

雪乃「なにかしら?」シレッ 

 

八幡「もう無理だろ。さすがに無理だろ」 

 

雪乃「主語と目的語が抜けていては理解に苦しむのだけれど。国語しか取り柄がないのならせめてまともに話してくれるかしら」 

 

八幡「国語の成績は別に取り柄じゃねぇよ 

 

八幡「っつーか、今度こそ噛んだとかじゃなくて意図的に言ったろ。『にゃん』って」 

 

雪乃「……」ヒキ 

 

八幡「だから引くなよ! お前だお前! お前が言ったんだよ!」 

 

雪乃「?」ハテ 

 

八幡「小首かしげんな。余計かわいいだろうが」 

 

雪乃「えっ」 

 

八幡「あ…… 

 

 

八幡「ち、違う! 今のは思わず本音が口にだな 

 

雪乃「えっ」 

 

八幡「えっ」 

 

 

雪乃「……」フイ 

 

八幡(しまった何言ってんだ俺 

 

八幡「その、悪い…… 忘れてくれ」 

 

雪乃「別にかわいいと評されて文句は言わないわよ」クルクル 

 

八幡「そ、そうか。よかった」 

 

八幡(なんだよ……てっきりセクハラだなんだで罵倒されるのかと思ったぜ) 

 

八幡(今のご時世、『脚キレイだね』とか女性社員を褒めただけでセクハラ扱いされる上司がいるらしいしな。理不尽にも程があるだろあれ) 

 

雪乃「…… 

 

雪乃「あの、比企谷くん」 

 

八幡「なんだ?」 

 

雪乃「他に何か言うことはないのかしら?」 

 

八幡「は? 何かって、お前に?」 

 

雪乃「ええ。私……もとい、私の容姿というのかしら」 

 

八幡「なんだよそれ 

 

八幡(容姿ってまさか猫耳じゃねぇよな。ふつう猫耳だろうけどな。いまや触れたら最後な気がするからまあ最後に取っておくべきだな) 

 

雪乃「まさか、何もないと言うつもりなの?」 

 

八幡「いや色々あるけど、訴えるとかナシだぞ?」 

 

雪乃「何の話よそんなことしないから、あるなら言いなさい」 

 

八幡「わかったよ…… んーと」 

 

 

八幡「まあ、第一印象は死ぬほど美人だよな」 

 

雪乃「っ!?」 

 

八幡「髪が長くてサラサラで大人びてて、けどそこにぴょんとある二つ結びがなんかグッときて」 

 

雪乃「えっ 

 

八幡「顔立ちが端正な上に怖いくらい透き通った肌、おまけに細くて長い手足に収まりの良さそうな肩と腰」 

 

雪乃「あ、あのっ」カァァ 

 

八幡「非の打ち所がないってのはこういうことを言うんだろうな。まあただ唯一弱点を挙げるとすれば 

 

雪乃「ちょっと比企谷くん! そ、そういうことじゃなくて!」 

 

八幡「あん? 容姿についてだろ?」 

 

雪乃「たしかにそう言ったけれど、そういう意味ではないの!」 

 

八幡「なんか顔赤いけど大丈夫かお前」 

 

雪乃「う、うるさい夕陽が映っているだけよ」 

 

八幡(窓の外、余裕でスカイブルーなんですけど) 

 

雪乃「なんというかこう、変化したところを聞いているのだけれど」 

 

八幡「あー、そういう」 

 

八幡(くそっ褒めちぎる作戦は失敗か) 

 

八幡(変化とか一箇所しかねぇぇぇでもやだ怖い触れたくない) 

 

雪乃「…… 

 

八幡「…… 

 

八幡「そうだな、たぶん前髪をちょっと」 

 

雪乃「切ってないわ」 

 

八幡「…… 

 

八幡「するとあれか、カラーコンタクトを」 

 

雪乃「入れてないわ」 

 

八幡「…… 

 

八幡(ダメだ…… 何か、何かないか? 雪ノ下がちょっとでも変わってそうなところ!) 

 

八幡(実際そうでなくてもいい、雪ノ下が気付いていなくてもいい。何か、変化して納得できそうなところが…… 

 

 

八幡(!!)ピコーン 

 

八幡(あった! これだ!) 

 

 

雪乃「分からないかしら」 

 

八幡「いや、分かったぞ」 

 

雪乃「!」 

 

八幡「なんで気がつかなかったんだろうな、こんな大きな変化なのに」 

 

雪乃「そんなに違うかしら?」 

 

八幡「ああ。よくよく見たらびっくりだ」 

 

雪乃「そう 

 

雪乃(なんだ、見えていないだけだったのね。断腸の思いで猫耳をつけて迎えたというのに、全く触れられないからどうしたものかと思ったわ) 

 

雪乃「こういうのってギャップというものらしいのだけれど」 

 

八幡「たしかに、以前とは見違えるほどではあるな」 

 

雪乃「比企谷くんはこういう私も……その好ましいのかしら?」 

 

八幡「もちろんだ。まあ無くてもいいが、断然あったほうがいい!」キリッ 

 

雪乃「っ…… そ、そうなの」 

 

八幡「世の中の男の多くはそうだと思うぞ。あったほうが確実に有利だ。色々と」 

 

雪乃「ふ、ふぅん。比企谷くんの意見に一般性があるとは思えないけれど参考にするわ」 

 

雪乃(世の中はそんなに猫耳愛で溢れているというの!? 知らなかったわ 

 

雪乃(それにしても鈍感なのね比企谷くんは。鳴き真似までしてアピールしていたというのに。まあ、あまりに恥ずかしくて否定してしまったけれど) 

 

雪乃「とにかく、あなたはあったほうが良いと言うのよね?」 

 

八幡「ああ。男に二言はねぇ」 

 

雪乃「……そう」 

 

 

雪乃(…… 心なしか比企谷くんが格好良く見えるなんてね) 

 

 

八幡(なんかよく分からんが話が通じてるっぽいな。行ける。このまま押しきろう) 

 

雪乃「……それで?」ガタッ 

 

八幡「あん?」 

 

 

スタ スタ 

 

 

雪乃「どう思うのかしら。まだちゃんと感想を聞けてないわ」 

 

八幡「あ、ああ。そうだっけか」 

 

雪乃「……」スクッ 

 

八幡(!? あ、頭が近い) 

 

雪乃「さ、さあ近くで見てどうにゃのかしら?」ニャーン 

 

八幡「あー、うん、やっぱすげぇ胸デカくなったと思う」 

 

雪乃「…… 

 

八幡(あれ? 今こいつまた猫のマネした?) 

 

 

雪乃「……今、なんて?」 

 

八幡「えっ? その、胸が成長したって話……だろ?」 

 

雪乃「…… 

 

雪乃「ひ、比企谷くん?」ヒクッ 

 

八幡「えっ!? だ、だから、変わったところって言っただろ!?」 

 

八幡「そんでよーく観察してみて、いや、よく観察しなくても分かるぞ! 急に大きくなったよな!だよな!?」 

 

雪乃「何をぬかしているのかしら……」ゴゴゴ 

 

八幡(あ、はい。全然大きくなんかなってませんよね。分かります) 

 

八幡(いやでもこれなら雪ノ下にとっても喜ばしいことだし、プラセボで切り抜けられる可能性があった! 他に選択の余地はなかった!(錯乱)) 

 

八幡「言っただろ、無いよりあったほうがいいって! それにはお前も納得してたじゃねぇか!」 

 

雪乃「誰が胸の話なんてしていると思うのよ」ゴゴゴゴゴ 

 

八幡(ですよねぇぇぇぇ) 

 

 

雪乃「比企谷くん……アバラ一本くらい覚悟はいいかしら はい or エス?」 

 

八幡(ノーに決まってんだろ! アバラ一本とかなくしたらブレードチルドレン、元をたどればイエスだろ。イエスだけど答えはノーだよちくしょう!) 

 

雪乃「……」ゴゴゴゴゴゴゴ 

 

八幡(くそっ、この空気、もう後には退けん!) 

 

八幡(押してダメなら諦めろ?否っ! 押してダメならもっと押せ!! それが俺の座右の銘だ!!) 

 

八幡「い、いいか雪ノ下! 自分の変化なんてもんは自分が一番気づきにくいんだよ」 

 

雪乃「は?」 

 

八幡「気づきにくいからこそいつの間にか髪は伸びてるし、太るやつは体重だっていつの間にか増えてる」 

 

雪乃「何を言っているのかしら」 

 

八幡「だからお前の胸だって、お前の気づかないうちに大きくなってんだよ! もっと自分を信じてやれよ!」 

 

八幡「陽乃さんを見ろ、お前にそっくりじゃねぇか! 染色体レベルでお前の胸がデカくなるのは決まってんだよ! なんでそれが分かんねぇんだよ!!」 

 

雪乃「っ 

 

 

雪乃「そうなのかしら。私は姉さんのように 

 

八幡「ああ、なる! っつーかもうなりつつある! 俺が言ったのはそういうことだ!」 

 

雪乃「た、たしかに言われてみると、見かけ膨らみが大きくなっているような 

 

八幡「文字通り、自分の胸に聞いてみろ! さあ、手を当てるんだ雪ノ下雪乃!」 

 

雪乃「……」ゴクリ 

 

 

スッ 

 

 

八幡(よっしゃ! 勢いに押されて雪ノ下が俺の言うことに従ってる!) 

 

八幡(いける実際見た目の変化は皆無だが、元がゼロなんだ。僅かでも本人が変化を感じればそれは無限の可能性の一端に触れたも同然!) 

 

 

ペタッ… 

 

 

八幡(加えてこれまでの俺の熱弁、どれほどの説得力があったであろうか) 

 

八幡(陽乃さんを引き合いに出したのもよかった。あの人の名前を出せば雪ノ下はおそらくいやでもなんか今残念な感じの音が聞こえ) 

 

雪乃「ってそんにゃすぐ変わるわけにゃいじゃにゃい!!!!」ネコパンチ!!! 

 

八幡「にゃぶるあっ!!!」 

 

八幡「」チーン 

 

雪乃「ふん。そこでのたれ死ぬといいにゃ」 

 

 

ガララッ ピシャッ! 

 

 

八幡「…… 

 

 

八幡(ゆきにゃん……かわいかったな……ぐふっ) 

 

 

続く

 

八幡「お前ら、よく占いなんざ信じるよな」2/3【俺ガイルss/アニメss】 - アニメssリーディングパーク

 

 

 

 

八幡「毎日毎日よくもまあ占いなんざ信じるよなお前ら」

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