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八幡「やはり、俺にとって。 こんな物語は。こんな青春ラブコメは……」4/4【俺ガイルss/物語シリーズss】

 

 

俺ガイルSide 第11話 

『それでも彼の言い訳は間違っているし、彼の善意は間違っていない』 

 

 

比企谷「状況把握の時間を、頂けますでしょうか……」 

 

 

 俺はそう言う。寧ろ、そうとしか言えない状況だ。 

目の前に突然。『凛ッ!』とかってオノマトペ入りそうに登場した阿良々木先輩をどうしようか。 

どうしてやるべきか。寧ろ、俺がどうすればいいの? 

 

 静かな、それは大層静かな。なんならこのせせらぎを、リラクゼーションCDにもできるくらいの静けさの中でしたよ? 

そこに突如、金髪の幼女を連れて先輩が滑って来たんですよ? 

 

 

阿良々木「ああ、待てと言われれば僕は待つが」 

 

 

 うん。ええ。待ってくれてありがとうございます。 

なんか素直に反射して返答されるとキョドる。 

いや確かに『待って』とは言いましたが、そんな端的にストレートに待機されても。 

おい、横のお譲さん。まっすぐ見るな。見つめるな……。 

 

 何ですか?助けを求めてるの?このお嬢さんはやっぱり誘拐されているの? 

だから俺をこんなまじまじと見つめるの?阿良々木先輩、やっぱ大変な変態さん? 

 

 

比企谷「で、えっと。理解もままならぬままに質問しますが。 何しに来たんですか?」 

 

 

阿良々木「お前が遭難しているから助けに来たんだが」 

 

 

 あらあらまあまあ、こりゃまた反射的に素直な回答でした。 

直訳も直訳、Can You Help Me? を、私を手伝う事が貴方に可能ですか? 

って訳すくらいの直訳ですわ。 

 

 なんてーか。その……ねえ? 

 

 

比企谷「いや、でも。『帰った』って。言いませんでしたっけ?」 

 

 

 そう、俺が一番困惑して理解できない部分がここ。 

俺は確かに言ったはずなんだ。 

あれ?俺の記憶は改ざんでもされてるのか?怖すぎるじゃねーかよ。 

それとも何か?無意識的に俺は助けを求めてましたか? 

俺の『愛して』が、君に『助けて』と確かに聞こえたの? 

何メロドラマティックだよ。ポルノ何フィティだよ。 

 

 

阿良々木「ああ、言っていたな。由比ヶ浜から、僕は確かにそう聞いた。 でも、事実お前はここにいる」 

 

 

比企谷「いや、それはそうなんすけど。 違う違う。それ以前っすよ。なんで俺がここに居る事が分かったのかっつぅ話で」 

 

 

阿良々木「お前は帰ってないと思ったからだ。 勘。……という回答は望んでいないようだが、しかしながら。そう思ったんだ」 

 

 

 その勘、鋭すぎんだろ。鋭利すぎですよ。 

包丁だったらまな板どころか、シンクまで一刀両断しちまうんじゃねーの? 

売り物になんねーよそれ。世紀末の武器だよもう。 

 

 

阿良々木「まあ、言葉を変えて言うと、僕には分かっていたんだよ。お前が帰れない事を」 

 

 

比企谷「はあ……。超能力とか、そういうファンタジーなお話なんですか?」 

 

 

 そんなことありえない。厨二病とか言うけど、結局それは、ただの妄想癖だ。 

神々の能力とか、学園都市とか、悪魔の実とか、スタンドとか、異能力とか魔法とか。 

そんなのはあり得ない話だ。 

 

 

阿良々木「まあ、簡潔にいえばそうなるな」 

 

比企谷「でしょうね。そんなファンタジーはありえね……って。なんて言いました?」 

 

 

阿良々木「ん?いや、お前の言葉を肯定したつもりだ。 巻き込まれてしまっているのであれば隠すつもりもないし、そもそも隠す必要はないからな」 

 

 

 おいおい。ちょっとヤベーぞこれ。 

あの材木座ですら、現実と妄想の区別はついてるってのに……。いや、材木座も危ないか? 

いやいや、それよりも今だ。何故かこの先輩。阿良々木先輩の目は大変にまっすぐだ。 

直進だ。寧ろ一方通行だ。アクセラレータだ。反射はしない。 

 

 

比企谷「はぁ……。いやいや、あり得ないって言うか。なんていうかその……」 

 

 

 言葉が出てこない。なんだ?同類と思われてしまったのか。 

このおままごとに強制参加させられているのか俺は……。 

やめてくれよ。ダークリユニオンなんかに所属する気は毛頭ありませんよ?どこの漆黒の翼ですか? 

それ、クーリングオフはあるんすか?なかったら自己破産でお願いします……。 

 

 

阿良々木「まあ、信じろとは言わないが」 

 

 

 言われても信じませんが……。 

 

 

比企谷「まあ、でも。確かに勝手に帰るのは人として信じがたい事ですしね。 時間的に考えてもちょっと無理がありましたし……。 帰ってないと考える方が辻褄は合いますよね……。 コナンくんばりの名推理!阿良々木先輩やるじゃねーっすか」 

 

 

 オッケーオッケー。そう言う事にしよう。 

ファンタジックな、ファンタジスタな、そんな解答はなかったことにする。つまりは廃棄処分。 

現実的に事を考えれば、まあ確かに思いつく事ではある。 

そう言う事で、この場はお茶を濁そう。 

 

 

阿良々木「いや、それにしても。何故こんな嘘をついたんだ? 比企谷。お前に何かメリットがあるようには見えないんだが」 

 

 

比企谷「はあ……。まあ、弱酸性なんか必要ないですからね」 

 

 

阿良々木「シャンプーの話ではないのだが」 

 

 

比企谷「水をかけるとアヒルにはならないと?」 

 

 

阿良々木「それはムースだ!猫になるのがシャンプーだろ?」 

 

 

比企谷「パンダになるのは」 

 

 

阿良々木「玄馬だな。いや、クイズなんかするつもりはない。質問に答えてくれ」 

 

 

比企谷「……」 

 

 

 ほっておいてくれ。 

というのが本心だ。 

 

 何故か。 

それは、阿良々木先輩に納得してもらえるとは思わないから。 

俺が拒絶したにもかかわらず、助けに来たと豪語するこの人に。 

俺の考えを理解してもらおうとも思わないし、そうしてもらえるとも思わないからだ。 

 

 だから説明はしたくない。質問に答えたくはない。 

ああ、どう言えばいいんだろうな。国語の成績はいいはずなのにな……。 

 

 

忍「時に、根暗小僧よ」 

 

 

比企谷「うわっ! ああ、喋るんだ……」 

 

 

 ビックリしたー……。 

この子さっきからじっと見つめてくるだけだから声帯が無いのかとさえ勘違いしていた所だったのに。 

ってか根暗小僧って俺の事?え?何それ。失礼極まりないな。 

俺のどこが根暗だ。根は明るいんだ。表面上が暗いだけだ。 

 

 

 

忍「そりゃ喋るわい!なんじゃと思っておったんじゃ……。 はあ……。お前、今からどうするつもりなんじゃ?」 

 

 

比企谷「どうするって。帰るつもりっすよ。 ここに住居を作って原始生活でもするように見えるんですか?」 

 

 

忍「そんなことをしても、お前のような人間は数日と持たず、のたれ死ぬじゃろうのう」 

 

 

比企谷「うるせーよ。 まあ今すぐとはいかねーけど。別に俺は帰れないわけじゃないんだよ」 

 

 

忍「じゃがお前は、現状況では。足を挫いておるのではないか?」 

 

 

比企谷「まあ確かに。でも、軽い捻挫だぜ?痛みも引いて来たし。 そろそろ立ち上がれるくらいだ」 

 

 

 そう。俺は別に助けを求めちゃいない。 

助けてもらうまでもない。勝手に自分に力で助かれるんだ。ほっといてくれ。 

 

 

阿良々木「でも、今僕が手を差し伸べれれば。今すぐ帰れるんだろう?」 

 

 

比企谷「え?ああ、まあ……。そうっすね。例えばおぶってもらったりしてくれれば。 今から下山できますけどね……」 

 

 

阿良々木「ならば、今僕が差し伸べる手を。受けてはくれるのか?」 

 

 

比企谷「確かに断る理由はないんすけどね……。 でも、そうだとしても、俺は断る」 

 

 

 そんな大それた理由はない。 

目の前のお人よし。目の前の善人。正義のヒーローは、俺を助けに来てくれた。 

とてもありがたいことだ。 

 

 

 でも。 

 

 

 ちょっと遅いんだ。 

 

 

 その手は、その助けの施しは。 

この俺の人間が出来る前に差し伸べてほしかったんだよ。 

 

 

阿良々木「何故だ?理由はなくとも。何故なのか聞かせてくれないか。 例えばお前は僕の事が嫌いだとか。そう言う事でも構わない」 

 

 

 目の前の善人。阿良々木先輩も、つまりは人間だ。 

気にはなるんだろう、知りたくなってしまうんだろうな。 

良かれと思って差し伸べた手を、かたくなに受け取らない俺の理由を……。 

 

 

比企谷「理由はないと言いましたよ?大それた、納得のいく説明なんかできない。 俺は、助けてもらうなんて事を、ただされたくないだけなんだよ」 

 

 

阿良々木「…………」 

 

 

 いや、もうこの際言ってやる。そうすることにしてやるよ。 

俺の本心を、理解できないだとか意味が分からないだとか何とでも言えばいい。 

俺が思う事を、阿良々木先輩が求めるのなら。 

そのまま吐きだしてやる。 

 

 

比企谷「施しを受けるなんて。俺はされたくない。 だってよ。例えば、今アンタが俺を助けたとしよう。この場はそれで丸く収まるよな。 

でもさ? その後、後日に。俺が今日の事で、由比ヶ浜とか雪ノ下から罵倒されたとして。 そんとき助けてくれんのか? アンタの目の届く範囲で、たまたま俺と阿良々木先輩が出会ったから。今回助けてもらえるかもしんねーけど。 結局は『たまたま』だろ?救世主じゃねーんだから」 

 

 

阿良々木「……」 

 

 

比企谷「なあ。『今度』は助けてくれねーだろ? だって今度は何が起こるか。それにいつ起こるかさえ。俺ですらしらねーんだから。 悪いとは言わねーっすよ。それが人間だから。 手の届く範囲しか守れないのが人間。 だからそれは結局、偽善だろうが。 

ならば、俺はそんなのには頼らない。良く言うじゃん? 一度甘い蜜を吸うと、今後もそれに甘えてしまうって。 今までこういう人生で生きて来たんだ。今更誰かの手なんて借りれねーよ」 

 

 

阿良々木「……だから。だからお前は、お前の現状維持のために。 雪ノ下や由比ヶ浜に、あんな嘘まで付いたのか?」 

 

 

比企谷「そうっすよ。元々友達じゃねーんだ。ただのクラスメイト。雪ノ下に関してはそれ以下だ。 関係が破綻しようが元々繋がってすらない。 それよりも俺は、救われるという事の方が怖い。 俺はそんなに、恩を返せる力はない。分不相応な恩は貰えないんすよ」 

 

 

阿良々木「そうか。ならもしも、僕がここでお前を無理やり助けたとしても。 とどのつまり。僕は助けてなんかいないというわけか」 

 

 

比企谷「あーそうだよ。だから勝手にしてくれ。ほっておいてくれ。 俺の人生の1日分も共有してねーのに。 救世主面はしねーでくれよ」 

 

 

 そうだよ。俺は。結局俺はそういうやつなんだよ。 

異質だろうが、異様だろうが、異端だろうが。 

 

 

 俺の考えはそう言う事なんだよ。 

 

 

 

忍「あーもう煩わしいの!お前様!この根暗小僧がこう言っておるんじゃからもう帰るぞ! 孤独蜘蛛も見当たらんし。儂らの出る幕じゃあない! 儂! こいつ! 嫌いじゃい!」 

 

 

 幼女に嫌われてしまった……。 

まあ、そもそも好かれてなかったんだから0もマイナスも評価は一緒みたいなもんだ。 

 

 

阿良々木「忍。今何て言ったんだ? 孤独蜘蛛が……いない?」 

 

 

忍「ああ、そうじゃ? 儂らと会った事でそれが消滅したと考えるのが一番じゃろう。 ツンデレ娘の蟹のように神様じゃあないし、存在があやふやになったら消滅する怪異も珍しくないしのう。 じゃから、儂らの出る幕は閉じた。あとはもう儂らだけ帰るぞ!」 

 

 

 蜘蛛?何の話だよ。 

だからそんな妄想世界の話に引き込むなよ。勘弁してくれ。 

 

 

阿良々木「そうか……。うん。それなら尚更。僕に出来ることはなさそうだ。 分かった。帰るよ……」 

 

 

 諦めてくれたか……。というよりは。シラけた、という言葉が似合いそうだ。 

引かれた。と言ってもいい。 

目の前の先輩は正義の正論だ。 

 

 

 でも、ただそれだけなんだよ。 

 

 

 善意であっても、全能じゃない。 

俺を助けてくれるんなら、神様にでもなってくれよ。蛇にも何にでもお願いしてさ。 

 

 

比企谷「分かってくれてどうも。 それじゃ……。さよならっす」 

 

 

阿良々木「ああ、またな」 

 

 

 そしておもむろに。 

金髪幼女を肩車して、阿良々木先輩は崖をロッククライミングし始めた。 

まじかよこの人。某B級映画の緑巨人かよお前。 

まるでそんな構図だ。 

 

 多分あの人と喧嘩したら勝てねーんだろうな。戸塚にさえ負けそうな俺だもの。 

そもそも誰かに勝つこと自体が難しい話だけど。 

 

 まあ、だからこそ戦場ヶ原先輩と付き合えているのか。ふむふむ。 

と、俺は妙に納得してしまった次第である。 

 

 

阿良々木「あ、そうだ。比企谷」 

 

 

 そして身長ほど登った所で、先輩は不意に俺に話しかけて来た 

 

 

比企谷「まだ何か?」 

 

 

阿良々木「お前は僕に助けるなと言った。でも。 結果的に。たまたま、不可抗力で助かってしまったことに、文句はないよな?」 

 

 

比企谷「はぁ?何すかそれ。屁理屈で助けられても納得しないっすよ?」 

 

 

阿良々木「屁理屈じゃないさ。 ただ、カッコつける手前、偶発的にそうなった時に対しての正誤判定が欲しかったんだ」 

 

 

比企谷「まあ、それなら俺も文句は言えないっすね。 落し物を、偶然交番に届けてくれた人に対して、ふざけんなと思う程のひねくれ者じゃあねえっすから」 

 

 

阿良々木「そうか。それだけ聞けて良かった。じゃあ、またな」 

 

 

比企谷「ええ、さよならっす」 

 

 

 それを最後に、先輩は上まで登りきってどこかへ消えてしまった。 

いや、どこかへ。とか言ってみたけど、家に決まってた。言い換える。 

先輩は、家に帰った。多分。 

 

 

比企谷「そろそろ動けるかな……」 

 

 

 あれから数十分……くらいか? 

いや、携帯が切れてるから時間分かんねーけど……。 

とにかく、俺の足は歩ける程度には回復した。うん、これならいける。 

 

 

 しかも時間的に見てもまだ余裕はある。日の入りからそんなに経ってない。 

終電が無いという最悪の事態は回避されそうだ。千葉を舐めちゃいけない。 

 

 

比企谷「さて……と、適当に歩けば道に出るだろ」 

 

 

 1人で居るのが長いと、不思議と独り言も多くなるんだな。 

俺は思考の端々を声に出しながら、ゆっくりと立ち上がる。 

 

 

 で。ここからだ。不意にだ。いや、本当に不意。 

不意に目に入ったんだよ。何がって、崖っすよ。崖。 

ダイビングした崖。 

 

 

 確かにまあ石で出来てたりコンクリートじゃあない。土の崖。 

でも。それでもこれはヤバいんじゃないんですか? 

 

 

 俺がダイビングした崖。阿良々木先輩が滑り落ちて来た崖。 

そして、阿良々木先輩が登った崖だ。 

 

 

 

 なんとまあ、足場がくっきりと、階段みたいに残っていやがる。 

どんな脚力と握力があればこんな掘れるんだよ。匠かよ、劇的ビフォーアフターかよ。 

こりゃあもう既に、イージーモードロッククライミング……。むしろセーフティモード?ヘブンモード? 

 

 

 俺は道を探す手間無く、そこを登ればいいだけだった。 

ああ。成程な。 

 

 

 

 そりゃ確かにそうだわ。 

 

 

 

比企谷「これは助けたうちに入らねーってか。そう言いたかったのかよ」 

 

 

 確かにこりゃ助けられたなんて言えないっすわ。 

阿良々木先輩自身が、帰るために登ったわけだから。そこを俺が利用しようと不可抗力だよな。 

こんな捻くれた意見の奴に、こうも捻くれた善意を見せるとは。 

 

 

 一本取られたぜ……。なんつって……。 

 

 

比企谷「はあ。さてと、帰るか……。小町が待ってるし……」 

 

 

 逆に言えば、小町しか待ってねーけどさ。 

 

 

俺ガイルSide 第11話 

『それでも彼の言い訳は間違っているし、 彼の善意は間違っていない』 

―完― 

 

 

物語Side 第拾貳話 

『こよみボランティアその参』 

 

01 

 

山を下った場所には丁度。巡回バスのバス停があった。 

そこに、また丁度のタイミングで、総武高校行きのバスが到着した。 

だから僕は、僕と忍はそのバスに乗り込んだ。 

 

 つまり僕は今、バスで帰路についている最中である。 

 

 

忍「なんともまあ、あっさりじゃのう」 

 

 

 忍野忍。彼女は、既に僕の影に帰宅済みである。 

いや、僕の影の中が忍の家かどうか定かではないが。 

それでもまあ、就寝場所を家と言うのであれば、忍の家だ。 

 

 僕がバスに揺られる中、忍は影の中から僕に話しかける。 

 

 

阿良々木「比企谷の事か?」 

 

 

忍「それ以外に何があるんじゃ?お前様の事じゃ。 無理やり引っ張ってでも助けるんじゃと思ったが……。 まあ、あの根暗小僧なんか、あのままのたれ死んでも構わんがのう」 

 

 

阿良々木「言い過ぎだぞ、忍。 まあ、それでも僕も実際。比企谷があそこまでだとは思ってなかった」 

 

 

 そう。実際の所、僕も意外ではあった。 

あそこまで常軌を逸脱……。と言えば言い方が悪いが。 

普通とは違う考え方の人間を、僕は初めて見たからだ。 

 

 

忍「じゃから呆れて、ああもあっさり身を引いたのか?」 

 

 

阿良々木「いや、それは違うよ忍。 僕は確かにあっさり身を引いたけど。それは呆れたからではないよ」 

 

 

 そう、別に僕は呆れたとか、引いてしまっただとか。 

そう言う理由で身を引いたわけじゃあなかった。 

 

 

忍「言い訳か?」 

 

 

阿良々木「弁解だよ。忍が勘違いしているんならな」 

 

 

忍「なんじゃ?いってみい」 

 

 

阿良々木「まあ、弁解と言っても、さして大義名分や大言壮語を吐くわけじゃないけどな。 ただ、あの場所で僕のすることはなかっただけだ」 

 

 

忍「ほう……」 

 

 

阿良々木「もしも。比企谷に孤独蜘蛛が取り付いていたら。 僕は助けた。アイツが嫌がろうが。 でも、もう孤独蜘蛛はいなかったんだろ?それなら話は別だ。 別に、僕は忍野の真似事をしているつもりはないんだけど……」 

 

 

 と、僕はポロリと忍野の名前を口にした。 

まあ。ポロリ、と擬音が入るほど僕は不意ではなかったのだけど。 

 

 

 忍野メメ。アイツは、怪異については博識で、鮮明で、聡明だ。 

忍野のおかげで、僕の友人は。戦場ヶ原は、八九寺は、神原は、千石は、羽川は助かった。 

更に言えば、いや。まず言えば、そもそも僕はアイツに助けられた。 

 

 それだから。だから多少なりとも、怪異と関係を持つ僕は。 

怪異に絡んだ少年。比企谷を助けたいと思ったのだ。 

 

 

阿良々木「でも、そうじゃないから僕は。怪異としての問題はなかったのだから。 改めて、ただ1人の人間としてアイツに向き合った。 そうした上で、僕はただ。他人が嫌がる事をしたくなかっただけだ。 アイツが、比企谷が望まないのなら。僕は1人の男として、それに手は差し伸べられなかった」 

 

 

 と、カッコよく言ってしまうが、結局は諦めてしまったという事は否定しきれない。 

呆れはなくとも、諦めはあったのかもしれない。 

いや、それでも僕は、このまましっぽを巻くつもりもなければ、背中を見せようとも思ってはいないのだが。 

 

 

忍「他人が嫌がることはしたくない……か。 よく言うわ。お前様、それ迷子っこの前で同じ事言えんのか?」 

 

 

阿良々木「ん?何を言うんだ?別に言えるぞ? 八九寺の前だと僕まで噛み易くなる。なんて特殊能力はないしな」 

 

 

忍「いや、発音できるのか?という質問じゃなくてじゃのう……。 迷子っこの嫌がる事をしておらんのか?と聞いたつもりなんじゃが」 

 

 

阿良々木「おいおい。身に覚えのない濡れ衣はやめてくれよ。 比企谷もそうだったが、まるで僕が八九寺に罪になる行為をしているようじゃないか。 僕は八九寺を苛めた事はないぞ。愛でる事はあってもだ」 

 

 

忍「そうかいそうかい……。まあよいわ」 

 

 

阿良々木「何を言っているんだ? 僕は冤罪だ。潔白だ。無罪放免だ。免罪だよ」 

 

 

忍「免罪て……。 罪を許してもらっとるじゃないか。 人によっては、対象によっては罪になる行為だと。認めとるぞ?お前様」 

 

 

阿良々木「いや、そりゃあでも。 友達と手を繋いでも問題ないけど。見知らぬ人の手をいきなり握ったら問題だろ? そういう次元の話ならば、八九寺と友達じゃあなかったら罪に問われるのかもな」 

 

 

忍「手を繋ぐ…。とは、例えにしても控えめ過ぎる気がするがのう。 まあ、お前様は、妹達との、異常なスキンシップを正常と。普通、と表現するほどじゃから。 今更、儂が疑問に思うほうがおかしいのかもしれんのう」 

 

 

阿良々木「ああ、分かってくれたらいいんだ」 

 

 

忍「はあ、それにしてもこりゃあ、重傷じゃのう……。 いや、寧ろこれがお前様の正常なのかのう」 

 

 

阿良々木「所で、孤独蜘蛛についてだけど」 

 

 

忍「なんじゃ?」 

 

 

阿良々木「結局。僕は孤独蜘蛛に遭う事もなく、忍も食べる必要なく。 今回は解決したと思っていいのか?」 

 

 

忍「いいのか?と言われれば。そこに対して素直に頷けん……。 じゃが、おらんのはおらんかった。儂が存在を測れん怪異でもなかろうし……。 じゃから、そもそもあの根暗小僧の捻くれた性格が招いた。 起こるべくして起きた現実的な災難。と、言えなくもないからのう」 

 

 

阿良々木「成程な。忍野も言うように、怪異に関わるものはそれ相応の理由がある。 って。いう感じなのかな」 

 

 

忍「かもしれんし、そうじゃないかもしれん。 じゃから儂が断定できる事は、今はもう比企谷に孤独蜘蛛は付いておらんと言う事だけじゃ」 

 

 

阿良々木「解法が何であれ、糸口が何であれ、道のりが何であれ。 結果的にそれならば。いいんだが」 

 

 

忍「まあ結果という部分だけを見れば。 それはお前様の言う「良かった結果」になるじゃろうよ」 

 

 

阿良々木「そうか……」 

 

 

 そんな感じで、忍との会話を嗜んでいると。 

見知った名前の停留所に到着する。 

 

 

『次は 総武高校前 です』 

 

 

 と、電光掲示板で右から左に文字が流れる。 

それを視認して、目視してから僕は、150円を払ってバスを降りた。 

見知った、馴染んだ僕の高校に、降りる。 

 

 

02 

 

 

忍「さて、じゃあ行くかの。待っておるんじゃろう? ツンデレ娘と元委員長と、団子娘と冷血娘が」 

 

 

阿良々木「団子娘?冷血娘? ああ、由比ヶ浜と雪ノ下の事か……」 

 

 

忍「なんじゃ?間違うてはおらんじゃろ?」 

 

 

阿良々木「いや、それでも。そうだとしても既に1つ間違えているぞ? 羽川は今でも委員長だ!そもそも。世界観的にはまだ髪切ってないぞ!?」 

 

 

忍「世界観とか言うんじゃないわい! それなら尚更、儂とうぬがこうも喋っとる事の方がおかしいじゃろうに!」 

 

 

阿良々木「いや……。えっと。 ああ、そこらへん結構あやふやにしてるんだから突き詰めないでくれ」 

 

 

忍「はあ? 誰があやふやにしとるんじゃ?」 

 

 

阿良々木「僕じゃない。とだけ言っておくよ」 

 

 

03 

 

 

 とまあ、そんな具合で。 

僕と忍は、高校前で待っている4人と合流出来た。 

 

 

由比ヶ浜「あっ!先輩帰って来たー!」 

 

 

羽川「阿良々木君。おかえりなさい。 どうだったのかな?」 

 

 

阿良々木「無事助け出せた……。という結末じゃあないのは見て分かるか?」 

 

 

羽川「うん。そうみたいだね。でも多分、比企谷君には会えたんでしょ?」 

 

 

阿良々木「何故それを!?エスパーか?」 

 

 

羽川「いやいや、簡単なロジックだよ。 阿良々木君が素直に私たちの前に1人で帰って来たって事は。 つまりは何か、説明か言い訳か、はたまた愚痴でも言うつもりでしょ? そもそも、見つからなかったら多分、ここには帰ってきてないでしょうし」 

 

 

阿良々木「成程な。いや、それも本当に、羽川。お前には恐れいるよ。 お前は何でも知っているんだな」 

 

 

羽川「何でもは知らないわよ。知ってる事だけ」 

 

 

 つまりは様式美だ。 

 

 

阿良々木「まあ、結局のところそうなんだ。 比企谷には会えたけど、一緒には帰っていない」 

 

 

雪ノ下「それは……。憶測なのだけれど……。 いや、それでも有り得る分考えたくもない思考なのだけれど……」 

 

 

 そう言って、言い淀む雪ノ下の考えは。多分正しい。 

比企谷を知る彼女は、あの時。見捨てるという選択肢を選んだ彼女なら、比企谷の行動を予測できるはずなのだ。 

 

 だからこそ、彼女の思考は、概ね正しいと思えた。 

 

 

由比ヶ浜「ヒッキーは!?ヒッキーは無事なんですか!?」 

 

 

雪ノ下「落ち着いて由比ヶ浜さん。 羽川先輩も言った通り、阿良々木先輩が帰って来たのだから。無事のはずよ。 ましてこの先輩が、あれほど豪語しておいても尚。 見つからず諦めて遁走する、軟弱者であるなら話は別なのだけどね?」 

 

 

由比ヶ浜「ゆきのん……。先輩に対してその言い方は……」 

 

 

雪ノ下「あら?勘違いしないで頂戴。 私はそうじゃないとおもっているからこそよ? そうだとしたら先輩の評価は比企谷君並みに落ちてしまうのだけれど……。 と、先手を打っただけよ」 

 

 

阿良々木「それはちが……」 

 

戦場ヶ原「あら雪ノ下さん。阿良々木君を、あまり馬鹿にしないでもらえるかしら?」 

 

 

 僕の言葉は。戦場ヶ原の言葉に遮られてしまった。 

おいおい戦場ヶ原。ここで女子のトークバトルを始められても困るのだが……。 

いや、しかしでも。 

 

 戦場ヶ原が僕に対する口撃を庇ってくれた事は。 

多少なりとも意外で、やはり嬉しいものがあったのは否めない。 

 

 

戦場ヶ原「阿良々木君はね?そういう発言をされると興奮してしまう質なのよ。 だからあまり言い続けちゃうと、段々と息が荒くなっていくわよ?」 

 

 

 否。嬉しくはなかった。 

 

 

阿良々木「なってたまるか!どうして僕に変なキャラ付けを押しつけるんだ! 僕はMじゃないし、嬲られるのも焦らされるのも嫌いだ!」 

 

 

戦場ヶ原「へえー。あーそうなんだ。 あれもこれもそれもどれも。お願いしてきたのは誰だったかしらね?」 

 

 

阿良々木「あれもこれもそれもどれなんだ!?いつ何をお願いしたんだよ!僕が!」 

 

 

戦場ヶ原「まさか……。私に言わせる気?皆の前で……。 あのお願いの数々を、ここで暴露しろと。そう言っているつもりなのかしら?」 

 

 

阿良々木「何!?」 

 

 

由比ヶ浜「高校3年生って……。なんか凄い……。大人の世界だ……」 

 

 

雪ノ下「違うわよ由比ヶ浜さん。あの先輩はただ不潔で、破廉恥で、どうしようもないだけよ」 

 

 

羽川「あはは……。 立つ瀬もなければ、取り付く島もないって感じだね。阿良々木君」 

 

 

阿良々木「おい!納得するな雪ノ下! 引き笑いするな羽川! 頬を赤らめるな由比ヶ浜! そして! ニヤけながらドヤ顔で首を傾げるな!戦場ヶ原ぁ!!」 

 

 

04 

 

阿良々木「とまあ、そういう経緯と結末だ」 

 

 

 それから僕は、4人の女子に包囲される状況を、なんとか打破して。 

簡単に、簡潔に。且つ明白に語った。 

比企谷が足を挫いていた事と、1人で帰るという思いの旨を。 

 

 

阿良々木「だから僕は、一度ここに戻って来たというわけだ」 

 

 

 4人の顔は綺麗に分断されていた。 

雪ノ下と由比ヶ浜は、やはりと言わんばかりにため息交じりに肩を落とし。 

戦場ヶ原と羽川は、理解が追いつかないと言うかの如く、一歩後ろにたじろいだ。 

 

 

雪ノ下「彼らしい。と言えば聞こえは言いですが……。 やはりそんな事を」 

 

 

由比ヶ浜「何でヒッキーいつもそうなんだろう……」 

 

 

羽川「うーん。 でもさ、それはそれでいいんじゃないかな」 

 

 

戦場ヶ原「あら。何が良いのかしら。 残念だけど、今の話だけでは、比企谷君の良い部分を、私は見つけられないのだけれど」 

 

 

羽川「うーん。比企谷君の良い所。というよりも。 彼が無事で帰ってこられるのなら。良かったねと言う話かな。 何よりも私たちが危惧していたのは比企谷君の安否なわけだし」 

 

 

阿良々木「まあ、羽川の言うとおりだ。 僕が助ける隙もなく。比企谷は助かった……。と言うわけだ。 まあ、そもそもアイツは家に帰っていると言ったわけだしな」 

 

 

雪ノ下「狼少年の嘘も、真実になったように。 彼の嘘もまた。真実にする……というわけでしょうか」 

 

 

阿良々木「いや、そういうわけじゃない。 別に、今僕が言った事を。比企谷には言わないでくれと言うつもりはない。 寧ろ、今から僕がしたいのは、その逆だよ」 

 

 

由比ヶ浜「逆?」 

 

 

 そう、僕は。しっぽを巻くつもりも、背中を見せるつもりもない。 

比企谷には腹を見せて、顔を見せるつもりだ。真正面で向き合うつもりだ。 

 

 

 比企谷は言った。 

別の理由でした行為を、たまたま助かったからと言って否定はしないと言った。 

確かにあいつはそう答えてくれた。 

 

だから、それだから僕は、彼を助けるのではなく。他の方法を取ることにしたのだ。 

 

 

阿良々木「それじゃあ行こう。 電車に乗れば、まだ間に合うからさ」 

 

 

由比ヶ浜「へ? どこにいくんですか?」 

 

 

雪ノ下「成程……」 

 

 

 比企谷に間違っていると言われようとも。否定されようとも。 

なにもおかしい事はない。 

 

 

羽川「そうだね……。 彼はバスではなく、電車を使って帰るんだろうから、まだ間に合いそうだね」 

 

 

戦場ヶ原「あら、そういう話なの?横断幕とか準備しなくて平気かしら」 

 

 

雪ノ下「高校選抜の野球部員の元へ行くわけではないのですから。 そんな感動を生む物は不必要だと思いますが……」 

 

 

戦場ヶ原「あら、感動は生まれないのかしら?」 

 

 

雪ノ下「少なくとも私には……」 

 

 

戦場ヶ原「素直じゃないのね」 

 

 

羽川「貴方に言われるんだ。その台詞……」 

 

 

 そう。別に助けに行くわけじゃあない。救助も救出も施しもしない。 

ただ僕は。 

彼を。比企谷を。 

 

 

 

 友達を迎えに行くだけなのだから。 

 

 

 

物語Side 第拾貳話 

『こよみボランティアその参』 

―完― 

 

 

俺ガイルSide 第13話 

『そして彼と彼らは再会する』 

 

 

 俺はその後。 

阿良々木先輩お手製の梯子のおかげで、難なくウォーキングコースに戻れた。 

そっからはずっと一本道だ、多分。 

 

 ひとまずは、昼にヒバッチャーの阿良々木先輩と通った道を戻って山を下る。 

ウォーキングコースをさかのぼって、朝にバスを降りた場所に着いたら、今度は道路を下ればいいだけだ。 

ここで迷うような方向音痴じゃあない。 

 別に2年後の再開で片目が無くなった3刀流剣士でもなければ、仲間内で唯一20代のアイドルでもない。 

ましてや水をかければ子ブタになる格闘家でもないのである。 

 

 

 そんな俺は、それから何の障害もなく、町まで下って来れた。 

やれば出来る子、比企谷八幡。 

 

 

 

比企谷「バスはもう出てねーか……。 はあ……。千葉を舐めるなとは思ったけど。流石に24時間バスなんて東京すらねーよな」 

 

 

 ちなみに夜行バスは別。いや、まあ。あれだって24時間じゃねーし。 

しかしながらバスが駄目となると、ここからまた歩いて駅まで行かなくてはいけない。 

残金660円の財力では、タクシーなんて文明の利器のお世話になる事は出来ない。 

はあ……。足はまだ完治したわけじゃねーんだけどな……。 

迷わない事と疲れない事は全くの別問題だ。俺は既に体力ゲージが赤点滅。 

純粋に嫌だ。もう動きたくない。 

 

 

 それでも俺は駅まで歩く。俺は立ち止まらず歩き続ける。 

なんてったって俺はやれば出来る子だ。 

まあ、そうしないと本当に餓死する勢いだから歩かざるを得ない状況なだけだけど……。 

 

 だから自己暗示ばりにそう言い聞かせる。 

 

 

……。 

はあ……。この道のり、俺は絶対に許さない。 

千葉ふざけんなよ。マジふざけんな。 

高低差作りすぎだ。平地にしとけよ。しんどすぎるじゃねーか……。 

 

 某巨人のドシンさん見習え。あの黄色いデカイの。 

アイツは変なビームで山も平地にするプロだ。 

別の民族を勝手に一緒の集落に拉致するヤツでもあるんだけど……。 

 

 久しぶりに息を切らした。 

こんなの一昨日、遅刻寸前でチャリで全力疾走した以来。 

ん?一昨日?……意外と最近だった。 

 

 

比企谷「うへぇ……。やっと……着いた……」 

 

 

 気付いた時には、もう辺りは夜。 

電灯も少ない場所だし、結構な暗さの中、駅だけが強く光っていた。 

ありがとう電気。おかげで迷わず駅についたよ。文明の利器、素晴らしい。 

 

 

 後は切符を買って帰るだけ……。 

 

 

 その時である。 

端的に言えば……居たんだ。そこに彼らは居た。 

 

いや、見つけたからと言って、俺の予定に変化はないんだけどね? 

見覚えのある人が5人も集まって駅前で立っていたら気にはなる。 

 

 

 阿良々木先輩御一行だ。別になんかのツアーじゃないけど。 

 

 

阿良々木「やあ、比企谷」 

 

 

 そして俺は、その五人組に見つかった。 

いや、別に隣保制度は敷かれてねーけど……。江戸時代かっつの。 

 

 

比企谷「何してんすか?」 

 

 

 俺だって気になるわけで。 

話しかけられたら返答ついでに疑問を投げかけようと思うわけで。 

いや、本当に何? 

なんで勢ぞろいで、更に総勢10個の瞳でこっちみんの?新手の苛め?視姦プレイか? 

料金発生するんじゃねーのコレ……。440円で足りますか? 

 

 

阿良々木「何って。聞かれるまでもなく、友達を迎えに来たんだが?」 

 

 

比企谷「あ、そうっすか。んじゃまた、お疲れっす」 

 

 

 そうか。まあ、大体そんな感じだと思ってたし。 

駅前で待機なんて、待ち合わせか雨宿りか家が無いかの3択くらいだもん。 

まあまあ、それなら俺は退散しよう。居ても邪魔になるだけ。 

予定は変わりなく、小町の夕ご飯に向けて全速前進。 

 

 

由比ヶ浜「えええっ!?何でヒッキー!待ってよ!」 

 

 

 おいおい。けたたましいなお前は……。忙しいなあ由比ヶ浜。 

ドリフか新喜劇かよ。そんなお笑いみたいなリアクション取っちゃうなっての。 

公衆の面前で恥ずかしくねーのか?ホラ、めっちゃ見られてんじゃん。 

 

 まあ、でも。由比ヶ浜の全力のリアクションに、心優しい俺は今一度疑問を投げかけよう。 

スルーされるのが辛いのは俺が一番よく知っているんだから。 

スルーはやめてあげよう、うん。俺って超絶優しい。 

 

 

比企谷「なんで?」 

 

 

由比ヶ浜「なんでって……」 

 

 

比企谷「いや、友達待ってんだろ?んじゃあ俺が待つ意味ねーじゃん。 その待ち人は俺の友達じゃねーんだから」 

 

 

 共通の知り合いなんていねーしな。 

いや、もしも戸塚とか待ってるんなら寧ろ俺は最前線に立って出迎えるけど。 

 

 

雪ノ下「はあ……」 

 

 

戦場ヶ原「いえ、まあ。確かに比企谷君の友達ではないわよね。 奇特な趣味や性格じゃあ無い限り」 

 

 

羽川「ややこしくなる事言わないで……。戦場ヶ原さん」 

 

 

比企谷「でしょう?だから俺は先に帰りますよ」 

 

 

 そういえば。そもそも……。 

いや、まあ今ここで言及されないってことは、バレたんだろうな。 

雪ノ下たちについた嘘。本来帰ってるはずのやつがこの駅に居るんだもん。 

嘘だと分かるに決まっているはずだ。 

 

 それなのにここで、そこについて触れられないのは。 

もう知っているか、そもそも興味が無いかの2択。 

どっちにしろどうってわけじゃねーし。 

 

 友達じゃないんだし他人に興味持たれなくても嫌われても関係はない。 

まあ、阿良々木先輩が全部告発したんだろう。告発ってほど重々しさは皆無だけどさ。 

 

 

 

 まあ。でもだぞ?逆に考えればさ……。 

俺が先に帰ったから。そんな嘘をついたからこそ。 

だからこそ、その現在進行形で発生中のお迎えイベントが出来てるんじゃねーのか?。 

 

 俺を呼ぶか、それともやんわり断るか…。なんていう問答が不必要になったんだろうから。 

結果オーライと言えなくもない。いや、寧ろ言い切れるんじゃね? 

だとしたら感謝されてもいいくらいじゃね?俺。 

ん?いや、でもそれって俺の存在そのものが邪魔ってことだよな? 

うん…。ホっとするくらいで勘弁してもらおうかな……。 

 

 

阿良々木「うーん。じゃあ、言い方を変えよう。 僕達はな比企谷。お前を、比企谷を迎えに来たんだ」 

 

 

比企谷「はぁ!?」 

 

 

 え?なんていったんです? 

 

 

 俺を?そりゃまたなんでだよ……。 

やめろよ。そんな突拍子もない事言うから、俺まで新喜劇的にリアクションしてしまったじゃねーか。 

ホラ、皆がこっち見てんじゃんよ……。 

 

え?なんだよそれ。今日ってエイプリルフールだっけ?それとも罰ゲーム? 

 

 

阿良々木「お前の帰りを、僕たちはここで待っていたんだよ」 

 

 

 だからなんでだよ、『帰った』って言ったじゃねーかよ。 

いや、まあ帰ってなかったんだけどさ。それは隠された真実的なヤツで。そもそもアレで。 

俺の帰りを待つ意味も筋合いも理由も、何も思いつかねーんだけど……。 

 

 

由比ヶ浜「うん!ヒッキー、一緒に帰ろう?」 

 

 

比企谷「お……おう」 

 

 

 おい由比ヶ浜。ビッチスキル発動すんな。速攻トラップかお前。 

その台詞を、高校生男子に軽々しく口にするな。 

勘違いしちまうケースが後をたたねーんだから。 

 

 

比企谷「俺を待ってたんですか?何で?俺を?」 

 

 

阿良々木「理由はないさ」 

 

 

 知ってるよ。だから聞いたんだよ……。 

理由なんて見つからねーよ。お探しのページは404NotFoundだよ。 

 

 

比企谷「尚更っすよ。なんでですか?」 

 

 

阿良々木「いや。だからさ。 友達を迎えに来た事に。理由なんてないだろう?」 

 

 

比企谷「はあ? 友達って、もしかして俺の事っすか?」 

 

 

阿良々木「ん?ああ、そのつもりの発言だ」 

 

 

比企谷「はあ……」 

 

 

 おいおいおいおい。マジで言ってんのか? 

なんだよこの人……。なんだよこの先輩……。 

 

 ガチ?マジ? 

ドッキリプレートあるんならそろそろ見せてもらわないと立ち直れねーよ? 

 

 

 

 いや、でも多分……本当なんだろう。 

本当に。本当の本当に。マジでリアルにガチにモノホンに。 

良い人なんだ。良い奴なんだろう……。 

 

 俺はそう思う。 

比企谷八幡は、そう思う次第でございます……。まる。 

 

 

比企谷「でも雪ノ下。いや、由比ヶ浜はまだ分かるけど。 雪ノ下、お前が俺を迎えに来るなんてな。病気か?」 

 

 

雪ノ下「あら、この私がわざわざ出向いているのよ?感謝はされても罵倒される筋合いはないのだけれど。 それに勘違いしないで。 総意で、多数決であろうが決まった事実に。集団行動の最中なわけなのだし。 それに反する行動はとれないだけよ。 あなたは今日の活動の班員なわけなのだし。班単位での行動は順守すべきでしょう? だから別に個人的感情が含まれる事はないの。期待させてしまったのなら謝るわ」 

 

 

 チッ……。コイツにちょっとでも人間味があることを期待したのが。 

俺はそもそも間違いだった。 

 

 

比企谷「よくもまあ舌と頭が回るなお前。逆に尊敬レベルだよそれ。 まあ、大体言う事は分かってた気もするけどな……。 だってよ、だからこそ。お前がいたからこそ。 俺は『俺を迎えに来た』なんて事が。思い付かなかったんだよ」 

 

 

阿良々木「まあ、そういう事だ。 だから比企谷。それならば、これならば。この迎えは。 今こうやって差し出す手は慈悲でも救助でも何でもないわけだ。 さっき言っていたように。これなら。これだったらこの手は。 拒否しないでくれるだろう?」 

 

 

 そういって阿良々木先輩は手を差し出した。アメリカ人かよ。 

その手を受け取った瞬間、ハグまで付いてくる勢いだ。 

 

 

比企谷「ま……まあ、そっすね。 これを拒否するのは、人間としてどうかとも思いますし」 

 

 

雪ノ下「あら。比企谷君が人間を語るのには、既に遅すぎだと思うのだけれど」 

 

 

比企谷「うるせーよ、ほっとけ。 あ、でも。男と手を繋いで帰る趣味はないんで、その手は受け取らないっすけど」 

 

 

阿良々木「ああ、分かったよ……。 全く。素直じゃないな」 

 

 

 

比企谷「いや、その気がないんです」 

 

 

羽川「素っ気もないよね」 

 

 

戦場ヶ原「玄人とも言い難いと思うのだけれどね」 

 

 

言葉で遊ぶな。 

ほっとけっての……。 

 

 

   でもまあ。 

最後に手は取りませんとか言ってみたものの。変な悪あがきしてみたものの。 

それでも俺の感情は、俺自身に嘘はつけない。 

嘘付きも自分は騙せねーみたいだ。 

 

 

 

 正直に、正直いうとすればだけどさ……。 

まあ、嬉しかったんだよ。 

この善人は、正義のヒーロー、アララギン仮面は、良い人だ。 

 

 

 いやいや、勘違いしちまうってば……。本当に。 

もしかしたら俺。この人と友達なんじゃねーのかって。マジで勘違っちゃうってば。 

でも俺は、それでも俺は。そう思う事はしたくない。 

裏切られる事があるんなら、信じないことが一番だから。 

 

 

 いや、でも……。だけど。それでも。だとしても。しかしながら。However……。 

否定系の言葉を並べるだけ並べて心に武装してから思う。 

 

 

 

 今だけはそれもさ……。そんな事を信じることも。許してはくんねえかな? 

なあ、神様さん……。 

 

 

阿良々木「それじゃあ、帰ろう。比企谷。僕達の町へ」 

 

 

比企谷「まるで異世界での冒険の末、帰宅する勇者御一行っすね。その台詞」 

 

 

阿良々木「だとしたら、比企谷。お前が勇者なのか?」 

 

 

比企谷「いや、俺は序盤めっちゃ強い敵キャラで、倒して仲間になったのに。 ラスボス戦では解説するくらいしかする事が無いようなキャラっすね」 

 

 

阿良々木「ヤムチャか?」 

 

 

比企谷「寧ろクロコダイン?」 

 

 

阿良々木「それだと勇者はこの世にいないな。ってことは僕はポップか」 

 

 

比企谷「お似合いじゃないっすか」 

 

 

阿良々木「褒めているのか?」 

 

 

比企谷「アタリマエジャナイッスカ」 

 

 

阿良々木「カタコトにすると、驚くほど否定意見に聞こえるな……。 まあ、帰ろうじゃないか」 

 

 

比企谷「言われなくとも、お腹がすいたので帰りますけどね……」 

 

 

 6人で電車に乗る、まるで集団下校と言わんばかりの仲良し帰宅。 

別に好きでボッチなわけじゃねーから。嬉しくないってのは嘘になる。 

 

 

比企谷「まあ……。こんなのも。悪くねーわな……」 

 

 

 電車に乗って、酷使し続けた足に休息のひと時を与えながら天井を仰ぐ。 

リア充ってこんな毎日なんだろうな……。俺には体験入学くらいでちょうどいいけど。 

それでもまあ、独り言に呟くレベルで、悪くはない。 

 

 

由比ヶ浜「ん?何何?ヒッキー」 

 

 

比企谷「うおおっ!なんだよ由比ヶ浜。 聞いてんじゃねーよ、趣味悪ぃな……」 

 

 

由比ヶ浜「別に盗み聞きしてたわけじゃないし!」 

 

 

 

 まあね。でもやっぱり。それでもやはり。 

俺の青春は。これが日常じゃない。 

これは紛れもない非日常。 

 

 化物が出てきたりとか、そんな事はない現実的な世界のままだけど……。 

今日は日常じゃあねーんだ。 

 

 

 

 だから皆で。こうやって仲良くボランティア活動が終わって帰宅するのは。 

違う。 

 

 

 

やはり、俺にとって。 

こんな物語は。こんな青春ラブコメは。 

 

 

 間違っている……。 

 

 

俺ガイルSide 第13話 

『そして彼と彼らは再会する』 

―完― 

 

 

終章 

『やはり阿良々木暦のボランティア活動は間違っている』 

 

 

後日談、というか。今回のオチ。 

 

 あれから比企谷の生活。というより身の回りを取り巻く環境が変わったかと言うと。 

端的に言えばそれは違った。 

 

 寧ろ、何も変化はなかった。不変だ。 

まるで数学の公式のように、前日までと一片も変化なく現状維持だった。 

 

 

 確かに誤解は解けたのだから、由比ヶ浜達に嫌われたりなんて事はなかった。 

でも、だからといってあれから。 

別段、それを責めるわけでもなく、責められるわけでもなく。 

逆に、それを評価するわけでも評価されるわけでもなかったようだ。 

 

 

 つまり結局。比企谷は、いつもと変わらない日常を送り続けている。 

 

 

 

忍「ふむ。じゃが、良かったのか?お前様よ」 

 

 

阿良々木「何がだ?」 

 

 

 登校中の朝の、駄菓子屋の前。 

忍野忍。彼女は、僕の横でアイスキャンディーを頬張りながら。 

麦わら帽子で、申し訳程度の避暑をしながら話しかける。 

 

 

忍「あの根暗小僧を助けて。お前様に一体何の得があった?」 

 

 

阿良々木「違うよ。そもそもが違うんだ忍。僕は助けてなんかいない。 いや、まあでも。もしも助かったんなら。そうだとすれば。 それは比企谷が、アイツが勝手に助かっただけだ」 

 

 

忍「アロハ小僧の受け売りか?」 

 

 

阿良々木「かもな。でも、だとしても僕は間違ったことはしていないつもりだ。 損得とか、利害とか。そういうの以前にな」 

 

 

忍「確かに正解と言えずともじゃ。 まあ、間違いではなかったかも知れんのう」 

 

 

 爽やかな朝。 

アイスキャンディーを食べ終わった忍は、欠伸をしながら影に戻っていく。 

ドーナツは忙しくて当分難しいから、学校への通学路途中の駄菓子屋のアイスで勘弁してもらったのだ。 

多少不満げながら、それで納得してくれた。 

 

 

阿良々木「さてと、遅刻する前に行かなくちゃあな……。今日は日直だし」 

 

 

 駄菓子屋を後に、僕は学校へと向かう。 

 

 

ああ、それと。もう一つだけ後日談。 

オチとして、僕の話も少しだけさせてもらおう。 

あの日以来。僕の方はたった一つ。唯一だが、状況に変化がある。 

 

 

阿良々木「……ん?あれは……」 

 

 

 知った後ろ姿が目に入る。 

僕はその後ろ姿の肩を、優しく叩いて声をかける。 

 

 

阿良々木「おはよう、比企谷」 

 

 

 確か彼には、挨拶するなと言われた気もしたが。 

ここは通学路だし、それにもう挨拶してしまったし……。まあ、許して貰おう。 

 

 

比企谷「うわっ……。って、先輩っすか。 後ろからいきなり話しかけるなんて、不審者かと思いましたよ」 

 

 

 目の腐った、全てを斜めに見てしまうようなヤツ。 

 

 

阿良々木「なんで挨拶を不審者と取り違えるんだ。 お前はそんなに『おはよう』を使わないのか?」 

 

 

比企谷「そうっすね、挨拶は基本。『いってきます』と『ただいま』しかいわねーっすね」 

 

 

阿良々木「食事は無言で初めて無言で終わるのか……」 

 

 

比企谷「独り言をぶつぶつ言ってるやつになりかねないっすからね」 

 

 

阿良々木「1人で食べる事は前提なんだな」 

 

 

比企谷八幡。他ならぬ、彼の名前だ。 

 

 

比企谷「で?何の話でしたっけ?」 

 

 

阿良々木「ん?ああ、いや。別に用があったわけじゃなく、そこに居たから挨拶しただけだ」 

 

 

比企谷「そっすか」 

 

 

素っ気なくも、ぶっきらぼうでも冷たくても。 

どこか嫌な顔は見せないような、そんな奴。そんな彼。 

いつもと変わらない、比企谷八幡だった。 

 

そして僕は、肩を並べて歩き出す。 

僕は。僕と比企谷の2人は、平行に立って歩きだす。 

 

 

 そう、僕の状況で1つ変わった事。それは……。 

 

 

阿良々木「それにしても、挨拶ってアレだな……」 

 

比企谷「どれすか」 

 

阿良々木「いや、ホラ。人と人とが…………」 

 

 

 いつものように会話をする相手。 

その相手が、僕には1人、増えたのだ。  

そう、それはつまり……。端的に言うとすれば。 

 

 

比企谷「……。そんな細かいこと気にするんですか? 良い事教えましょうか? 疑問は廃棄処分。これが社会を生き抜くための知恵っす」 

 

阿良々木「まさかお前に、生き方を解かれるとはな……」 

 

 

 僕には友達が1人増えた。 

彼が、比企谷八幡が、僕にとっての友達になったのだ。 

 

 

 彼にとっては変化のない事柄だとしても。 

僕は大切にしたいと思える存在になったのだ。 

 

 

比企谷「あ、学校着いた」 

 

 

阿良々木「ああ。じゃあ僕は日直だから急ぐよ。 それじゃあ、またな!」 

 

 

比企谷「うぃっす。また今度……」 

 

 

 比企谷八幡。彼は、僕の。阿良々木暦の。 

 

 

大切な、とても大事な。友達だ。 

 

 

 

 

 

 

【俺ガイル】やはり阿良々木暦のボランティア活動はまちがっている【化物語

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