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八幡「なんだかんだで平塚先生には感謝しています」【俺ガイルss/アニメss】

 

それは俺が総武高校を卒業して20年ほどたったあとの出来事だ。

 

「平塚先生が亡くなった!?」

 

 

ある日の夜、俺は自宅にて平塚先生が亡くなったという訃報の知らせが入った。

 

なんでも酔っ払いながら

 

路上でどんちゃん騒ぎしてぶっ倒れたらたら打ち所が悪くてぽっくりと…

 

なんとも呆れる話だがなんとなくあの人らしい最期だと思う。

 

しかしそんな悠長なことを言ってられない。

 

在学時、平塚先生とは色々あったが一応恩師でもある。

 

そうとなれば急いで行かなければならない。

 

 

「あなた、平塚先生が亡くなられたって…」

 

「ああ、どうやらそのようだ。一緒に付いて来てくれるか雪乃?」

 

「勿論よ。あんな人でも一応恩師だもの。」

 

 

俺はすぐさま平塚先生の訃報を(旧姓:雪ノ下)雪乃に話した。

 

しかしさすがは妻の雪乃だ。

 

突然の訃報に動じることもなく冷静な対応を見せてくれている。

 

奉仕部時代から思うがやはり常に冷静でいてくれて心強い。

 

 

「ヒッキー!」

 

ハァ…それに比べてこいつは…

 

 

「聞いたよ!平塚先生死んじゃったんだって!?」

 

「落ち着け結衣。まずは深呼吸して冷静になれ。」

 

「それと結衣、死んじゃったとか大声で言わないの。不謹慎よ。」

 

「アハハ、二人ともごめんね…」

 

 

そこに現れたのはもう一人の妻である(旧姓:由比ヶ浜)結衣だ。

 

まあこっちは昔から騒がしいところは直っていないがまあ今更とやかく言うつもりはない。

 

つかいい加減ヒッキーはやめろ。もう結婚してんだからもっと他に呼び方あるだろ!

 

そう何度も注意してるがその度に「え?ヒッキーはヒッキーじゃん!」と直してくれん。

 

けど結衣の明るさには何度も救われたこともあるから注意に困るわけで…

 

 

「これから行くにしても子供たちはどうすればいいのかしら?」

 

「そうだな。さすがに子供連れて大所帯で押しかけるのはどうかと思うしな。」

 

「でも早く行った方がいいんじゃないかな。」

 

 

既に時刻は夜の10時を過ぎている。

 

こんな夜中に子供たちを連れ回すのは正直したくはない。

 

しかし平塚先生は俺たち三人を奉仕部という出会いの場に導いた恩人だ。

 

やはり俺たち三人はどうしても行かなければならないのだが

 

そうなると子供たちのことが心配になる。

 

さて、どうしたものか?

 

 

「先輩~!平塚先生死んじゃったって本当ですか~!?」

 

「コラいろは、不謹慎な物言いはやめなよ。」

 

 

さらにそこへ更なる俺の妻、(旧姓:一色)いろはに(旧姓:川崎)沙希が現れた。

 

肝っ玉女房の沙希と高校時代からあざとい後輩だったいろは。二人とも俺の大事な妻だ。

 

 

「ねえ、三人とも行ってきなよ。子供たちは私といろはで見ておくからさ。」

 

「え~っ!私も行きますよ~!」

 

「悪いな沙希。いろは、すまんが今回は三人だけで行かせてくれ。」

 

 

さすがは沙希というべきか。こういう時でも子供重視でいてくれるのは頼れるものだ。

 

それに比べていろは…お前はいい加減そのあざとさをどうにかしろと…

 

お前だってもう母親なんだからしっかりしてくれないと困るわけなんだが。

 

まあそんなわけで俺たちは沙希の厚意に甘えて平塚先生の下へと急いだ。

 

 

警察―――

 

 

平塚静さんのお身内の方ですね。こちらです。」

 

 

平塚先生は遺体となって警察の遺体安置所に置かれていた。

 

どうやら変死扱いされてしまったらしい。

 

一応事件性はないとのことだが病院ではなく警察というのがなんとも不憫なところだ。

 

 

「雪乃ちゃん!八幡くん!ガハマちゃん!よかった、三人とも来てくれたんだね!」

 

「みんなお待たせ~!」

 

 

そこに現れたのはやはり俺の妻(旧姓:雪ノ下)陽乃さん。

 

それに同じく俺の妻である(旧姓:城廻)めぐりさんだ。

 

ちなみに陽乃さんは親の跡を継いで政治家になった。めぐりさんはその秘書だ。

 

二人とも事務所からこっちに直行で駆けつけてくれたようだ。

 

 

「それでこちらの方は平塚静さんに間違いありませんか?」

 

そんな俺たちに警察の人たちが平塚先生の本人確認を求めてきた。

 

出来れば俺たちは平塚先生の死が嘘であればいいと願っている。

 

しかしこの場にある遺体は紛れもなく平塚先生本人だ。

 

 

「はい、間違いありません。この人は平塚静さんです。」

 

結局こう答えるしかなかった。

 

俺たちが悲しんでいることなど露知らず平塚先生の死に顔は穏やかなものだ。

 

これで死因が深酒による変死でなければ尚良いのだが…

 

 

「それでこの中に親族の方はいらっしゃいますか?」

 

そんな時、俺たちの中に親族はいないのかと聞かれた。

 

だが見渡してみるとこの場には俺たちしかいない。

 

それと平塚先生は相変わらず独身だ。結婚はしていない。

 

だから旦那や子供なんているはずもない…

 

ちなみに俺たちが呼ばれた理由は

 

平塚先生の携帯に俺たちのアドレスが真っ先に登録されていたからとのこと。

 

この場合、俺たちのアドレスが登録されて嬉しいと喜ぶべきか

 

はたまた俺たちのアドレスしか登録されてないって

 

それじゃあ先生もぼっちじゃねーかとツッコむべきか迷うわけで…

 

「前に聞いたけど静ちゃんは一人っ子でご両親はもう亡くなってるから…

それに親戚の人たちも疎遠になっているから連絡先がわからないって言ってたよ。」

 

陽乃さんは生前、平塚先生の親族関係を聞いてくれていたようだ。

 

しかしそれで解決できたわけではない。

 

このままだと平塚先生は無縁仏として処理されてしまうだろう。

 

さすがに恩師が無縁仏になるのは教え子である俺たちとしては見かねるもので…

 

とりあえずこの場は遺体確認だけ済ませて帰ることになった。

 

 

翌日―――

 

 

「ちょっと話したいことがあるんだ。平塚先生のことなんだが…」

 

翌日、俺たちは家族で話し合いの場を設けた。

 

その話の内容は平塚先生のことだ。

 

親戚と連絡が取れないこのままの状況だと平塚先生は無縁仏として処理される。

 

それならせめて俺たち家族で葬儀を開いてやるかという話し合いだ。

 

「いいと思うわ。平塚先生は私たち奉仕部の顧問だもの。」

 

「アタシもゆきのんに賛成ー!」

 

「うん、この中では私が静ちゃんと付き合い長いけど最期に葬儀くらいやってあげよっか。」

 

我が家で葬儀を開くことに雪乃、結衣、陽乃さんが賛成してくれた。

 

しかしだからと言って問題がないわけではないのだが…

 

 

「けど葬儀をやるにしても誰を呼ぶんです?私たち平塚先生の知り合い知らないですよ?」

 

「それに葬儀だってタダじゃないからね。」

 

 

そんな雪乃たちに意見するのはいろはと沙希だ。

 

まあ二人はあまり平塚先生と関わってなかったから仕方ないな。

 

だがいろはの言うように俺たちは平塚先生の知り合いなんて知らないし

 

それに沙希が指摘したが葬儀には金が掛かる。

 

さて、どうしたものか…

 

 

「一番安い家族葬でいいんじゃない?アタシたちだけで見送ってあげればいいし。」

 

家族葬で安いヤツなら20万くらいで済むらしいよ。」

 

「20万か、そのくらいなら出せなくもないが…」

 

 

「ちょっと待って。静ちゃんのお葬式を私たちで行うわけにはいかないよ。

静ちゃんって仕事は出来た方だから今や校長先生まで出世したからね。

だから仕事関係の人間は呼んでおかないと後々面倒なことになるかも…」

 

 

あの人…結局仕事一筋の人生だったのか…

 

本当に誰か貰ってやればよかったのに…もう無理だけどさ…

 

 

「姉さん、平塚先生の関係者を呼ぶにしてもどのくらいの人数が集まるのかしら?」

 

 

「そうだねぇ…仕事関係なら…

今までの教え子、同僚の先生たち、

それにPTAの役員や教育委員会の人たち、その他etc、

全部呼んだらたぶん100人くらいじゃないかな?」

 

 

100人!?

 

マジかよ。俺の葬式なんて絶対そんな人数集まらんぞ!

 

しかしこれは本当に困った。

 

100人も集まるとしたら葬式の会場は広い場所を確保しなければならない。

 

そうなると予算は100万近く…もしくはそれを超える可能性もある。

 

無理だ。いくら恩師といえどそこまでのお金は出せやしない。

 

一体どうしたらいいのかと俺たちは頭を悩ませた。

 

 

「だったら必要経費で落ちるようにしちゃうってのはどうかな~?」

 

突然のめぐりさんからの発言。

 

俺たちにはその意図がさっぱりだったが陽乃さんは瞬時にその考えが理解できた。

 

 

「めぐりが言いたいのはつまり私の政治活動に利用するってことかな?」

 

「そうですね。ここらで学校関係者の支持者も増やしたいところですから~」

 

 

なるほど、陽乃さんは県会議委員だ。

 

そんな陽乃さんが執り行うってことになれば支持層が増えるって寸法か。

 

なんだか平塚先生の死を利用してるみたいで

 

悪い気がするけどこうすれば葬式代も必要経費で落とせる。

 

一石二鳥な方法だな。

 

さて、ここで一旦みんなの採決を取りたいところだが…

 

 

「八幡、ただいま。」

 

お、帰ってきたか。

 

我が家の最年少の嫁、(旧姓:鶴見)留美が実家から帰ってきた。

 

ちなみに何で留美が実家に居たのか?別に仲が悪くて別居したってわけじゃないからね!

 

単に留美が鶴見家の親に子供を見せるために実家に戻っていただけだから。

 

まあそんなわけで留美にも平塚先生の訃報、それに我が家で葬儀を行うことを話した。

 

 

「そういうことでうちが平塚先生の葬儀を行うことになった。留美はどう思う?」

 

「うん、正直私は平塚先生とあまり関わりがないんだけど…」

 

 

留美と出会うきっかけとなった千葉村、それにクリスマス会だが…

 

そういえば平塚先生はどのイベントでも留美とはあまり関わってなかったな。

 

とくに千葉村…

 

あの時は俺たちに留美のイジメ問題を丸投げしておいて自分はさっさと寝ちまってたな。

 

今にして思えばあの態度はさすがに無責任じゃないのかと…

 

 

「でもみんなはお葬式やりたいんだよね?それなら私が反対する理由はないよ。」

 

「そっか、当日は留美にも葬式を手伝ってもらうことになる。大丈夫か?」

 

「うん、大丈夫。最期なんだから安らかに成仏してもらおう。」

 

 

留美は年下ながらこれまたしっかりした嫁さんだ。

 

そんな留美を俺はいい子いい子するように優しく撫でた。

 

しかしそうやると何故か他の嫁たちがブスッとした顔をして不満を露にする。

 

わーってるよ。全員撫でてやるからそんな顔すんなよ。

 

さて、そんなわけでさっそく俺たち一家による平塚先生の葬儀の準備が始まった。

 

 

「どうも、総武セレモニーです。 本日はお身内にご不幸、真に心からお悔やみ申し上げます。」

 

 

それから忙しくなってきた。

 

平塚先生のご遺体を業者が引き取りそこで安置することになった。

 

その業者はかつて雪ノ下家が贔屓している冠婚葬祭専門の業者さんらしく

 

陽乃さんが手配してくれた。

 

これは正直ありがたい。

 

昔からの贔屓にしている業者さんなら信頼できる。

 

 

「それでは家族葬ではなく一般葬ということですね。」

 

「そうです。そのように手配しておいてください。」

 

 

「承りました。それにしてもあの陽乃お嬢さまが随分ご立派になって。

昔はご両親に反発していたのが嘘のようですねぇ。今では充分政治家の貫禄がありますよ。」

 

 

「もう~!そんな貫禄なんて…私なんてまだまだ小娘ですよぉ~♪」

 

 

葬儀の業者と談笑しながら手配をすませる陽乃さん。

 

まあ確かに雪ノ下家とはその昔、色々とあった。

 

その諸々の経緯から俺はこんなハーレム王…

 

もといビッグダディになったが今は語るべきことではないな。

 

 

さて、いくら業者がやってくれるからといって全部を任せるわけにはいかない。

 

俺たちにだってやることが山ほどある。

 

まずは葬儀に参加する人たちに連絡を出さなければならない。

 

既に平塚先生の職場である学校には訃報が言い渡されている。

 

一応俺の方からも連絡を行っておいた。恐らく全校生徒に伝わっているはずだ。

 

これで学校側の方は問題ない。

 

県の教育委員会の方も議員である陽乃さんから話を伝えてもらっている。

 

やはり当日はお偉方が顔見せ程度には参加することになった。

 

しかし残念ながらやはり平塚先生の親類縁者には連絡が付かなかった。

 

とりあえずこれで葬儀の参列者には大体連絡は付いたはずだ。

 

やはり陽乃さんの予想していたように100人近い参列者になるようだ。

 

さて、参列者への連絡が行き渡ったところで次はお坊さんをどうするかだ。

 

平塚先生は特に信仰する宗派はないようだ。

 

それならこっちで適当に決めておくとしよう。

 

あとは…そうだ…子供たちの学校だ!

 

当日は我が家の子供たちも全員参列させなければならないから二日ほど休ませなければ…

 

しかし今回は親族の葬式ではないから忌引扱いにはならないんだよな。

 

つまり働いている俺たちも今回は有給で対応しなきゃならんわけだ。

 

貴重な有給だが…これも仕方ないか…

 

 

お通夜―――

 

 

それから翌日、納棺を済ませた夕方にお通夜が執り行われた。

 

葬儀の会場は総武セレモニーとのこと。

 

この場所を選んだ理由はこの辺りで一番広い会場を使えるからだ。

 

葬儀会場では業者が既に平塚先生を入れた棺を花祭壇の前に設置してくれた。

 

そして花祭壇には数多の白菊が平塚先生の棺の前に献花されている。

 

それに遺影もだ。

 

 

「ヒッキー、平塚先生の遺影用意できたよ。」

 

「おいおい…よりにもよってこれを遺影に使うんか…?」

 

 

俺は結衣が用意した遺影の写真を見て思わず苦笑いした。

 

何故なら遺影に使われている写真は俺たちの高校時代に撮ったものを切り抜いたものだ。

 

確かあれはタウン誌の記事を書いた時に

 

おふざけで来ていたウエディングドレス姿で撮られた遺影だ。

 

結局平塚先生が結婚式場でウエディングドレスを着る機会は一度もなかったが…

 

そういえば平塚先生と撮った写真なんてこれしかないよな。

 

けどこんなものを遺影として使わなきゃならんとは…あとで呪われたりしないよね…?

 

 

「本日はお忙しいところ、お越しいただきありがとうございます。」

 

「故人もお集まりになったみなさまに見守られまして喜んでくれていることと思います。」

 

 

それから会場に続々と参列者が訪ねてきた。

 

セレモニーの出入り口では陽乃さんとめぐりさんが参列者に挨拶をしている。

 

まずは学校関係者の同僚の先生方、それに代表の生徒たちがやってきた。

 

その次には教育委員会のおえらいさん。PTAの役員の姿まであった。

 

ちなみに近年では告別式ではなくお通夜こそが葬儀の本番扱いされている。

 

通夜の方がセレモニーの頻度がいしなにより仕事帰りの夕方ということで出席もしやすい。

 

これも世間が働きすぎる風潮が悪いんだ。やはり俺の専業主夫希望の夢は間違っていない。

 

まあそれはさておいて恐らく今日のお通夜は一番弔問客が来ると予想すべきだ。

 

 

「それじゃあこっちも準備はいいか。」

 

「ええ、私たちも準備できているわ。」

 

「うん、OKだよ!」

 

 

弔問客の受付には雪乃と結衣が対応。

 

その受付事務の裏では俺と沙希にいろはと留美が名簿の確認と香典の確認を行っていた。

 

学校のガキどもはどうでもいいとしておえらいさんにはあとで香典返ししなきゃならん。

 

そんなこんなでみんな葬儀でてんてこ舞い。

 

平塚先生の死を悼んでいる間もなく大忙しな時だった。

 

 

「八幡、うちも手伝いに来たよ~!」

 

 

そこへ現れたのはやはり俺の妻である(旧姓:相模)南だ。

 

南はつい最近出産を終えたばかりで産後の様子が著しくないので入院していたのだが…

 

 

「バカ、大事な身体なんだぞ。無理すんじゃねえ。」

 

「平気だし!うちにも出来ることがあったら言ってね!」

 

 

まったく困った嫁だ。

 

それなら、南には子供たちの世話を頼んだ。

 

まだまだわんぱくな子供たちだ。やはり大人が目を見張ってないと何をするやら…

 

しかし高校時代の無責任だった南が今の自分を見たらさぞ驚くだろう。

 

今では自分の行動に責任感を持ち、おまけに俺の妻になったんだからな。

 

お、なにやら見知った顔が現れたぞ。

 

 

「やあ比企谷、今回は平塚先生が…お悔やみ申し上げるよ…」

 

「ヒキオ、あーしらにも手伝えることがあったら言ってね。」

 

 

まず現れたのは高校時代の同級生、葉山とその嫁であるあーしさんだ。

 

二人とも俺たちと同じく高校時代の縁で結婚したそうだ。

 

それにまだ来るな。

 

 

「ハロハロ~ヒキタニくん。今回はお悔やみ申し上げるよ。」

 

「ヒキタニくん。お久っ!…ってテンションじゃやっぱダメだべな…」

 

 

また知り合いが来た。戸部とその嫁である海老名だ。

 

高校時代はベーベー言ってテンションが無駄に高かった戸部だが

 

今回は場の空気を読んで数珠を片手に平塚先生の眠っている棺に冥福を祈っている。

 

かつての戸部を知る者なら驚くべき光景だ。

 

 

「平塚先生が亡くなるなんて哀しいな。」

 

「お前は俺を置いていなくなるなよ。」

 

「だな。」

 

「それな…」

 

 

それと…確か…かつての葉山グループにいたのっぽとチビ。名前は大岡と大和だったか。

 

風の噂で聞いたがこいつらは同性愛に目覚めてホモカップルになったらしい。

 

人の愛とは複雑なものだ。

 

 

「お兄ちゃ~ん!可愛い妹で奥さんの小町ちゃんも来たよ~!」

 

「八幡、待たせてごめんね。」

 

 

さて、ゲテモノを見た後は心が洗われるような天使たちの登場だ。

 

最愛の妹である小町とさらに天使であり俺の義弟で嫁でもある(旧姓:戸塚)彩加だ。

 

小町と彩加は互いに結婚しているがそれでも二人とも俺の嫁だ。

 

けど普段は二人で暮らしているので残念。(ちなみに家は隣同士)

 

まあこれで全員揃ったようだ。お通夜の会場には既に参列者たちが着席している。

 

こうして時間通りお通夜が始まった。

 

 

「みなさま、本日はご多忙の中よくお越しくださいました。

これより故人であられる平塚静さんのお通夜を始めます。

諸事情により平塚さんの喪主を私、千葉県県議員の比企谷陽乃が務めさせて頂きます。」

 

 

まずは開式の挨拶だ。

 

これは喪主である陽乃さんが担当してくれている。

 

本来なら親族がやるべきことだが残念ながらこの葬儀の場に平塚先生の親族は不在だ。

 

なのでここは喪主であり我が比企谷家の年長者である陽乃さんが取り仕切っている。

 

 

「平塚校長先生は尊敬すべき教師であり…」

 

 

「PTAとしても各イベントをそれは盛り上げてくれて…」

 

 

「将来は平塚先生に教育委員会でもその手腕を奮ってほしく…」

 

 

弔問客による弔辞だ。

 

弔辞を行うのは平塚先生が校長を務める学校の在校生代表、

 

PTA会長、それに教育委員会のボスだ。みんな涙ぐみながら弔辞を述べている。

 

 

南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏…」

 

 

その後はお坊さんによるクソ長いお経を唱え始めた。

 

しかしこれは聞く方はさすがにダルい。

 

学生時代に受けていた退屈な理系授業を思い出す。

 

ちらほらあくびやらヒソヒソと無駄話する輩が出る始末。

 

それに…コラ!スマフォ弄るな!電源切れ!

 

あ、なんか遺影に先生がそいつらの方を睨んでいるように見える。

 

これガチで呪われるんじゃねえか…?

 

 

「それではここで焼香を行います。」

 

 

どうやらここで焼香が始まったようだ。まずは喪主である陽乃さんからだ。

 

ちなみに焼香の正しい作法をここで説明しておこう。

 

①遺族、親族(今回は双方不在のため参列者のみ)に一礼

 

②焼香台の一歩手前まで歩き、祭壇に向かい遺影や位牌を仰ぎ見て一礼。そして合掌。

 

③焼香台の右前にある抹香を三本の指で摘み、

頭を垂れるようにしたまま目を閉じながら額のあたりの高さまで捧げる。

 

④この動作を3回繰り返す。

 

⑤焼香が済んだら、もう一度合掌。再度参列者に一礼

 

⑥以上の手順が済めばくるっと回って自分の元いた席に戻る。

 

まあざっと説明するとこんな流れだ。

 

トップバッターである陽乃さんはこれまた見事に焼香を行っている。

 

さすがは政治家、手馴れたものだ。

 

めぐりさんや雪乃、それに沙希や留美に彩加も問題なくやってみせた。

 

 

「やばっ!お辞儀忘れちゃった!?」

 

 

コラ、大声でそんなこと言うんじゃない。

 

失敗しても黙ってればスルーしてくれるから!

 

それといろはと南に小町だが…

 

 

「先輩どうかしました?」

 

「八幡…目が怖いよ…?」

 

「そんな目で見て小町ポイント低いよ!」

 

 

お前ら…その派手なつけ爪はやめろと言っただろ…

 

当初はなにやら派手なアクセサリーを付けてたので注意しておいたがまさかつけ爪まで…

 

母親なんだから子供たちの手前があるだろ!

 

 

「本日のご列席、誠にありがとうございました。」

 

 

まあなんだかんだあったが陽乃さんの言葉でお通夜は締め括られた。

 

「喪主のご家族さまには会食の準備がございます。」

 

 

さて、お通夜も無事に終わり

 

俺たち家族は業者が用意してくれた会食場にて家族揃って夕飯を食うことになった。

 

本来ならこういった場は遺族たちが集まって久しぶりに集まった親戚一同で、

 

 

『○○くん、大きくなったね』  

 

『え…?○○ちゃん結婚したの!』

 

 

などと近況報告が行われたりするものだが生憎この場には俺たち一家しかいない。

 

既に参列者たちも明日は仕事なので帰宅している。

 

それに平塚先生の親類はこの葬式には参列していないのでまあ仕方のないことだ。

 

 

「見てゆきのん!お寿司だよ!」

 

「結衣、だからはしゃぐのはやめなさい。」

 

「でもこのお食事結構豪華だよね。知ってる業者に頼んで正解だよ。」

 

はしゃぐ結衣にそれを諌める雪乃。これじゃあ子供たちに示しがつかんな。

 

まあなんにせよメシが豪華なのはありがたい。

 

我が家は育ち盛りの子供たちが大勢いるからな。

 

 

「 「いだたきます!」 」

 

 

こうして食事の挨拶をしながら俺たち一家は会食…

 

といっても普通にいつもの夕飯の光景だ。

 

子供たちは我先にとエビやマグロ、ウニと高そうなモノから食い始めている。

 

つか待て。あまり行儀悪く食ってると…

 

 

「あなたたち、それ以上ボロボロ零しながら食べるとどうなるか…わかるわね?」

 

「「は…はい…」」

 

子供たち全員をビビらせる雪乃。

 

かつて総武高校に君臨した氷の女王は今尚健在のようだ。

 

あ、そうだ。忘れちゃいけなかった!

 

 

「平塚先生にもお供え物を上げなきゃいけないな。」

 

「それならこの胡瓜のかっぱ巻きにしましょう。これ誰も手つけてないみたいだし。」

 

「だったらうちもこの誰も食べそうにない納豆巻きを上げる。」

 

「ほら、静ちゃんの大好きなお酒だよ。ビール瓶一本上げるから好きなだけ飲んでね。」

 

 

俺たちの会食の席の真ん前に置かれた平塚先生の遺影。

 

その周りには雪乃が置いたかっぱ巻き、南が置いた納豆巻き

 

さらに陽乃さんが置いたビール瓶と十分な供え物になった。

 

これで平塚先生もあの世で満腹になっていることだろう。

 

 

「お寿司!お寿司!」

 

「うまうまっ!」

 

 

子供たちも美味そうにご馳走を食べている。

 

こうして子供たちが笑顔で食事できるのも平塚先生のおかげなんだな。

 

こんなこと思うのは不謹慎だがそう考えると葬式も悪くないのかも…

 

でも勘違いしないでね。

 

うちでも普段ちゃんと子供たちに美味しいモノ食べさせているからね!

 

 

「しかし俺が奉仕部に入ったあの日からもう20年以上経つのか。」

 

「思えばあなたが奉仕部に入った日から私たちの運命は変わったのかもしれないわね。」

 

「そう思うと平塚先生に感謝しなきゃだね。」

 

 

メシを食いながら俺たちは過去の想い出に浸っていた。

 

それは高校時代、

 

高校生活を振り返ってというテーマの作文で

 

青春とは嘘であり、悪である。と書いたら因縁つけられて奉仕部にぶち込まれた。

 

そしてそこで出会ったのが雪乃と結衣。

 

そして奉仕部の活動を行っていくうちに

 

彩加、沙希、陽乃、留美、南、めぐり、それにいろはとも出会いみんなと親交を深めた。

 

当時は小町しかいないと思っていた俺の理解者が

 

まさかこれほど増える事になるなんて誰が予想できた?

 

その付き合いは高校を卒業して大学生になったあとも続いた。

 

 

「けど…そんなある日…私と姉さんは雪ノ下家から強制的に結婚されそうになったわ…」

 

「本人の意思とは無関係にね…」

 

「それと同じ時期にアタシたちもヒッキーに自分の想いを伝えたんだよね。」

 

「思えば先輩にしてみればあの頃はもっとも苦しい時期だったのかもしれないですね。」

 

 

雪乃、陽乃、結衣、いろはたちが揃ってある時期のことを思い出していた。

 

それは大学生活最後の年のことだった。

 

雪乃と陽乃は雪ノ下家から望んでもいない相手との結婚を強要されそうになり

 

同時期に俺は結衣、いろは、沙希、めぐり、南、留美、小町、彩加たちから

 

想いを告げられてしまった。

 

自分がこんなにも誰かから愛されていたのはぶっちゃけ嬉しいとは思うが…

 

しかし雪乃と陽乃が苦しんでいる時に自分だけが報われていいのかと散々悩んだ。

 

それに結衣たちの想いも…

 

正直みんな俺なんかにはもったいないくらいいいヤツらだ。

 

その想いを断ればこいつらは必ず傷つく。

 

一体どうすればいいのか?俺は苦しみ追い詰められていた。

 

 

「けどこうして俺たちが夫婦になれたのも平塚先生のおかげなんだよな。」

 

「そうね、あの時平塚先生が八幡にあの言葉を贈ってくれたから…」

 

「アタシたちはヒッキーと一緒になれたんだもんね。」

 

 

その頃、俺は高校時代の恩師である平塚先生にこのことを相談した。

 

そして平塚先生はある言葉を俺に伝えた。

 

 

『決して同情なんかで相手を選ぶな。本物だけを求めたまえ。』

 

 

そう言われて思った。俺はこいつら全員に決して同情なんてしていない。

 

この場にいる誰もが俺のことを愛してくれて、そして俺もこいつらを愛している。

 

それでは本物をどうやって求めればいいのか?

 

そう思った時、俺の中で燻っていた何かが弾けた。

 

 

「そして俺はこの場にいる全員と結ばれる道を選んだ。」

 

「そうね、最初は何を考えてるのかと正気を疑ったのだけど…」

 

「でもヒッキーが決断してくれたからみんなが幸せになれたよね。」

 

確かにこんなろくでもない選択にこいつらが付いて来てくれるのか不安だった。

 

だが俺の予想に反してみんなが付いて来てくれた。

 

そしてみんなの協力で法の解釈を超えて俺は妻たちと結ばれることができた。

 

やはり俺にとってこいつらは本物なんだ。

 

ちなみにこのことを平塚先生に報告したらすんげー呆れられてたな。

 

なんか『こんなつもりで言ったんじゃないのに…』とか言ってたけど…

 

最後は私も入れろとか言ってたが先生なら他にいい人がいますよと言って断ったな。

 

確かにちょっと可哀想かなと思ったけど同情で選ぶなって言ったのは先生だからな…

 

 

「そういえば静ちゃん、生前は子供を欲しがってたね。 将来は自分の子供たちだけで野球チーム作るくらい産みたいって…」

 

「けど先生未婚だったから処女のまま死んじゃったね。」

 

「まあその先生の願いは私らが引き継いだから。」

 

「今ならチームに分けて試合出来るまでありますからね。」

 

 

ちなみに我が家には子供が20人もいる。

 

俺の嫁は雪乃、結衣、いろは、沙希、陽乃、めぐり、留美、南、彩加、小町の合計10人だ。

 

その嫁さん一人に付き、子供が二人出来たからな。だから養うのがめっちゃ大変。

 

 

「でもはるさんの長男くんを除いたら他はみんな女の子だよね~」

 

「長男くんも大きくなったらお父さんと同じくハーレム王になるのかしら?」

 

「でも既にその片鱗はありますよ。他の子たちが全員長男くんに惚れてますから。」

 

「うわ、それもう第二のヒッキー誕生じゃん!?」

 

 

マジか!

 

息子よ、父はお前を俺と同じビッグダディになってほしくないぞ。

 

出来ればお前には父のような二の轍は踏まず誠実な道を歩んでほしいが…

 

こんな大家族の大黒柱になったら専業主夫なんて絶対許されないんだぞ。

 

 

「それにしてもこれから人がどんどん亡くなっていくんだよね。」

 

「姉さん随分縁起悪いこと言うのね。」

 

 

「だってそうじゃん。 これから私たちの親が亡くなってその次は私たちの誰か… そう考えると色々と思うところがあるのよ。」

 

 

確かに陽乃さんの言う通りだ。

 

子供たちが成長していくに連れて俺たち大人は老いていく一方だ。

 

そしてそのゴール地点はこの葬儀場の棺に眠る平塚先生と同じモノになる。

 

哀しい話だがこればかりは生きとし生ける者の定めだ。仕方がない。

 

「でも僕たちの場合はこんなに家族がいるから一人になるなんてことはないですよ。」

 

「そうですね、小町たちは大家族なんですよ。孤独死なんてありえないし!」

 

 

孤独死か…

 

そういえば平塚先生って一歩間違えていれば自宅で孤独死だったんだろうな。

 

誰にも自分の死をわかってもらえずに放置されていたら…

 

たとえばの話だがもし風呂場でぽっくり死んでたらと思うとやばかったな。

 

それで一週間も放置してたら人間スープと化していたかもしれん。

 

あ、やべっ。メシ食ってる時に変なこと考えちゃいかんな。

 

 

「悪いがこの中では俺が一番先に死ぬから。」

 

「ちょっ…ヒッキーなんでそんな縁起でもないこと言うし!」

 

「そりゃ…俺は…女房の死に顔なんて見たくないからだよ…」

 

 

そう言うとみんなが静まり返った。

 

やばいな。タダでさえお通夜の後なのに場の雰囲気が本当にお通夜になってる…

 

何かちがうこと言って雰囲気変えなければ…

 

 

「何を言っているのやら、空気嫁谷くんは…私はあなたが死んだら…」

 

「そうだよ…ヒッキー…残されるアタシたちの気持ち考えてよ…」

 

「そうですよ先輩…私より先に死んじゃダメ…」

 

「本当にアンタは…せめて私と一緒に孫の顔を見るまでは死なせないよ…」

 

「八幡…お姉ちゃんを置いていったら来世で責任取って結婚だよ!」

 

「ふぇぇ~ダメだよ~死んじゃダメだよ~」

 

「八幡…私は八幡が死んだら…生きていけない…」

 

「うち…八幡のおかげでこうして真っ当になれたんだから…最期まで一緒だからね…」

 

「お兄ちゃん…そういうこと言うと…小町ポイント低いんだから…」

 

「僕は八幡の親友で…それで奥さんで…だから…グスッ…」

 

 

やばい…やばい…

 

嫁たちが一斉に泣き出してしまった!

 

わかってる。愛するお前たちと天使である子供たちのためにもちゃんと長生きするから!

 

だから泣かないで!面倒くさいから!?

 

 

「とりあえず雰囲気変えような。まあ辛気臭くしたのは俺だけど…」

 

「そうだ先輩! さっきお通夜の最中にタブレット動かしてたら懐かしい画像が出てきたんですよ!」

 

そう言っていろはがみんなの前にある画像を出した。

 

つかちょっと待ていろは。お前恩師の葬儀中になんて罰当たりなことしてんだ!?

 

「あ、これ懐かしい!アタシたちの結婚式の写真だよ!」

 

そこに写っていたのは白のタキシードを着た花婿の俺と

 

それに同じく純白のウエディングドレスを着た俺の愛する10人の花嫁たちの姿だ。

 

ちなみにこの光景を見た千葉県独身男性の大半が俺の敵に回してしまった。

 

だから俺はこの20年ほど千葉県の独身男性たちにはかなり受けが悪かったりする。

 

 

「そういえばこの時平塚先生ってどこにいたんだろ?」

 

「確か…この画像を撮ってくれたのが平塚先生じゃなかったかしら?」

 

「あ、思い出した!私が静ちゃんにこの画像撮ってくれって頼んだんだっけ!」

 

 

そういえばあの時のことは覚えてるな。

 

俺たち家族の結婚記念の写真を撮っていた時の平塚先生。

 

なんか唇から血が垂れていたがアレ何でだったんだろ?

 

 

「そういえば僕たち全員で平塚先生にブーケも渡したっけ。」

 

「アタシは優美子か姫菜に受け取ってほしかったんだけどなぁ。」

 

「あのブーケ全部静ちゃんが取ってたよね。」

 

 

今でも思い出す空に投げ飛ばされた10本のブーケ。

 

平塚先生はその全てのブーケを名キャッチャーよろしく掴み取ったが…

 

結局、平塚先生は結婚できずに亡くなってしまった。

 

うん、これはつまり花嫁のブーケ取ったら結婚できるなんてあんなの嘘のデタラメだな。

 

まあこんな思い出話もここまで。

 

みんな夕飯も食べ終わり今夜は業者が用意してくれた部屋で泊まることになっている。

 

明日は告別式、そのあとに火葬がある。

 

それと平塚先生の遺品整理などまだやることがたくさん残っている。

 

平塚先生の死を心から悼むにはまだもうちょっと先になるようだ。

 

 

さて、妻たちが子供たちを連れて部屋で寝付かせようとしている時だ。

 

俺は一人だけこっそりと抜け出して平塚先生の眠る棺の前に立った。

 

 

「なんだかんだで平塚先生には感謝しています。」

 

「こうして俺を素敵な妻たちに出会わせてくれたんですからね。」

 

「だから本当にありがとうございます。」

 

「そして安らかに眠ってください。」

 

 

俺は平塚先生の眠る棺の前で再度冥福を祈った。

 

当初、嫌々ながら入れられた奉仕部。

 

しかしそのおかげで素敵な嫁たちと出会えて幸せな毎日を送っている。

 

これも全部先生のおかげです。

 

もし来世でまた出会うことが会ったらその時はまた教師と教え子の関係になりたい。

 

え?結婚相手としてはどうかって?

 

いやいや、それはさすがにちょっとな…

 

俺には愛する妻たちがいるので出来れば来世でもこいつらと結ばれたいとまで思っている。

 

だから先生とは付き合うことは無理です。ごめんなさい。

 

 

翌日、火葬場にて平塚先生のご遺体が焼かれた。

 

そして火葬場の煙突から白い煙が空へと舞い上がった。

 

その光景はまるで平塚先生の魂が天国へと導かれるように思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平塚先生にお迎えが来ました。

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