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雪乃「……キスも、たくさん出来るでしょう?」 八幡「……」【俺ガイルss/アニメss】

 

八幡「おう」ガララ

 

雪乃「こんにちは比企谷君、由比ヶ浜さんは?」

 

八幡「ああ、今日は葉山達と31だとさ」

 

雪乃「そう」

 

八幡「ま、二人でも何ら問題ないだろ。どうせ人来ねぇし」スワリ

 

雪乃「……そうね」

 

ガタン

 

ピトッ

 

雪乃「……ふふ」

 

八幡「おい、……マジで? 今日もすんの?」

 

雪乃「仕方ないじゃない、我慢出来ないの」

 

雪乃「それにあなたも期待していたのでしょう? 由比ヶ浜さんが来ないと聞いた時から」

 

八幡「それは、まぁ……ないとは」

 

雪乃「…………」フイ

 

八幡「はぁ……はいはい」

 

八幡「俺もしたいよ、お前と」

 

雪乃「何よ、言えるじゃない」パァー

 

八幡「顔と声のトーンが一致してねぇんだけど……」

 

雪乃「比企谷君、早く」

 

八幡「急かすんじゃねぇよ……わかってるわかってる」

 

八幡(……どうして、こうなっちまったんだろうな)

 

八幡「いくぞ」

 

雪乃「焦らさないで、早く……」

 

 

ちゅっ

 

 

八幡「……ほらよ」

 

雪乃「はぁ……全然足りないわ。もっとしなさい」

 

八幡「ああ、ったく」

 

ちゅっ

 

雪乃「もっと、と言ったでしょう? 一度や二度で済むとでも?」

 

八幡「何回したいか言えばいいじゃねぇかよ……」

 

雪乃「そんなこと私にもわからないわ。満足するまでずっと離さない」

 

八幡(本当に、どうしてこうなったんだっけ……)

 

雪乃「ん」

 

ちゅっ

 

八幡「…………」

 

雪乃「比企谷君? 私とキスしているというのに、一体何を考えているのかしら」

 

雪乃「私に何をしたいの? 駄目よ、私達は唇だけの関係なのだから」

 

八幡「決め付けんなよ……ぼーっとしてただけだ」

 

雪乃「……そう」

 

雪乃「今日は気分が乗らない? そうならもうおしまいにしましょう」

 

八幡(……んだよ、そんな目しやがって)

 

八幡「いや、大丈夫だ」

 

ちゅー

 

雪乃「っ……比企谷、君……?」

 

八幡「続けるぞ」

 

雪乃「え、ええ」ドキドキ

 

ちゅっ

 

雪乃「ふぁ、う」

 

ちゅっ

 

八幡「ん……ふ……」

 

ちゅっ

 

ちゅっ

 

雪乃「……はぁ、はぁ」

 

八幡「…………」ナデナデ

 

八幡「満足か?」

 

雪乃「ええ、ありがとう」

 

雪乃「……優しいのね、あなたは」

 

八幡「何がだよ」

 

雪乃「とぼけないで」

 

八幡「……別にとぼけてるつもりはないんだが」

 

八幡「ちょっと考え事をしてた、……どうしてこうなったかってな」

 

八幡「二人してこんなになっちまった理由ってのを探してた」

 

雪乃「……私は、そんなものどうでもいいわ」

 

雪乃「あなたと一緒に居られて、キスができる……それだけでいいの」

 

雪乃(……嘘。本当はもっと)

 

八幡「そ、か」

 

八幡(……んなこと言ってっけどな、俺たち付き合ってねぇんだけど)

 

雪乃「……でも、あなたが言うなら」

 

八幡「っ」ドキッ

 

八幡「そ、そうかよ」

 

八幡「……最初にした時は、確か――」

 

――――――

――――

――

 

雪乃「今日の部活は終わりにしましょう」

 

八幡「うぃーす」

 

結衣「はーい」

 

ピロリンピロリ-ン

 

八幡「ん? 緊急地震速報……」

 

グラグラグラ

 

八幡「おいおい、もっと早く伝えろよ!」

 

八幡(結構強いぞ、立ってるのがやっとだ)

 

結衣「ぎゃー!」スッテン

 

八幡「由比ヶ浜! 派手にコケたな……大丈夫か?」

 

結衣「あ、うんへーきへーき! ……あ、ヒッキーあっち!」

 

八幡「え?」クルッ

 

雪乃「きゃっ」ツルン

 

八幡「雪ノ下!」ギュ

 

雪乃「ご、ごめんなさい」

 

八幡(さすがにこういう時はぐちぐち言わんのな)

 

八幡「気にすんな、不可抗力だし――」

 

グラグラグラ

 

八幡「っうお!」ズルッ

 

八幡(不意を突かれた……!)

 

八幡(だがまぁ不幸中の幸いだな、このまま後ろにずっこけても雪ノ下に被害は及ばない)

 

八幡(受け身が取れないのはなんだが、頭を打たなければどうということはない)

 

ズテッ

 

八幡(っでぇ!)

 

八幡(……? 声が出せない……)

 

雪乃「」ボーゼン

 

八幡「」フリーズ

 

八幡(……雪ノ下の唇、柔らけぇな)

 

結衣「う゛ぇ!? ひ、ヒッキーとゆきのんがち、ちゅーしてる!?」

 

八幡「!」

 

雪乃「!!」バッ

 

八幡「……」

 

雪乃「……」

 

八幡「………………すまん」

 

雪乃「………………許すわ」

 

結衣「の、ノーカン! ノーカンだからね!? 今のはちゅーじゃなかったよ!!」

 

――――――

――――

――

 

八幡「こんな感じ、だったよな……」

 

雪乃「ええ……」

 

八幡「……今だから言える」

 

八幡「あの時雪ノ下の唇をわりと堪能していた」

 

雪乃「……私もよ」

 

八幡「…………」

 

雪乃「…………」

 

ちゅー

 

八幡「……ん」

 

雪乃「ふふ……」

 

八幡(甘い! MAXコーヒーより甘いぞこの空間!)

 

八幡(まずい、あっはーんな瘴気に毒されてねぇか俺? 正気を保つんだ)

 

雪乃「ひきがやくん……」ギュー

 

八幡(雪ノ下が堕ちた!? ヤバい、健全な男子高校生の俺にとっては非常にやわらかい状況だッ……!)

 

八幡(やわらかい状況ってなんだよ!!!)

 

八幡(確かに雪ノ下の唇は柔らかいしちょくちょく当たる腕とかの感触も素晴らしいが)

 

八幡(それにしたってこの言い間違いはないだろ、俺もどうかしちまったのか?)

 

雪乃「んー……」ズイッ

 

八幡(あ、ダメだこりゃ)プツン

 

――――――

――――

――

 

「……き…や……」

 

八幡「……んん」

 

「比企谷! おい!」

 

八幡「は、はいっ!?」

 

八幡「……ひ、平塚先生? どうしてここに」

 

平塚「もう下校時刻は過ぎているぞ? さっさと起きろ」

 

八幡「はぁ……すみません」

 

八幡「ところで雪ノ下はどこですか? 意識がある前は一緒だったんですが」

 

雪乃「ここにいるわ」

 

八幡「うお、いたのか」

 

八幡「ていうか起こせよな……起きてたんならよ」

 

雪乃「それは無理よ、私もさっき起こされたのだから」

 

平塚「……でだ、聞きたいことがある」

 

平塚「お前達、寄り添い合って寝ていたようだが一体どういう関係なんだ?」

 

八幡(マジで? 超やべえじゃん)

 

雪乃「先生に言う必要があるとは思えません」

 

八幡(おいおいおいぃ! そんな敵意むき出しの言葉を使うなよ!)

 

八幡「……言わぬが花? みたいな」

 

平塚「なんだそれは、私が理解できないようなことをしていたとでも言うのか?」

 

八幡「あーたぶんそんな感じ……ですかね」

 

雪乃「先生とは縁のないことではないかと思います」

 

八幡(バーカーかてめぇ!! 煽ってどうすんだよ!)

 

平塚「聞き捨てならんな……何をした、是が非でも吐いてもらう」

 

八幡(くそ、こうなったら)

 

八幡「じゃあヒントを言いましょう、『魚の名前』……です」

 

平塚「魚……マグロ……、……ッ!!」

 

八幡(あれ? そっちじゃないんですけど)

 

平塚「比企谷ああああああああああああぁぁ!!!!」

 

八幡「不正解!不正解ですよ!! ……おい、逃げるぞ雪ノ下、殺されちまう」

 

雪乃「え、ええ」

 

平塚「貴様なぜ雪ノ下がマグロだということを知っているんだああああああああああああ!!!」

 

雪乃「言いがかりはやめてください平塚先生、私はマグロではありません」

 

八幡「てめぇ火災現場にガソリンぶちまけてんじゃねえよおおおおおおお!!」

 

雪乃「? どういうことかしら、私は魚類ではないし止まっていても死なないのだけれど」

 

八幡「そういう! 意味じゃ! ねぇんだよッ!!」

 

雪乃「よくわからないわ」

 

八幡「もういい! 逃げる!」ダダダ

 

平塚「待て比企谷、逃さんぞ! 貴様のそのふざけた根性を叩き直してやる!!」ダダダ

 

雪乃「…………?」

 

――――――

――――

――

 

雪乃「もしもし」

 

結衣『もしもし、ゆきのん? どうしたの?』

 

雪乃「比企谷君の連絡先を教えて欲しいのだけれど」

 

結衣『え、ヒッキーの? いいけど』

 

雪乃「彼に聞きたいことがあって」

 

結衣『ふーん、じゃあメールで送るね』

 

雪乃「ありがとう、由比ヶ浜さん」

 

雪乃「……一応聞いておくわ。マグロは魚よね?」

 

結衣『ええっ? ……そうじゃない?』

 

雪乃「そうよね」

 

(比企谷家)

 

八幡「はぁ……はぁ……」

 

小町「あ、おかえりお兄ちゃん」

 

八幡「おう、ただいま……ちょっと部屋に行かせてくれ、お兄ちゃん疲れて死にそう」

 

小町「はいはい、ご飯になったら呼ぶね」

 

八幡「あいよ……」スタスタ

 

ガチャ

 

八幡「……助かった」

 

ブーッブーッ

 

八幡「メール? どうせ宣伝――」

 

『雪ノ下です』

 

八幡「うそぉ!?」

 

『どうしても聞きたいことがあったのでメールしました』

 

八幡「明日じゃ駄目なのかよ」

 

『平塚先生の言っていたマグロとはどういう意味ですか?』

 

八幡「」

 

八幡「」

 

八幡(やだこの子頭の中ピュアッピュア!!)

 

八幡「…………どうしよう」

 

八幡(なんて返せばいいんだ……)

 

八幡(ここで『セックスの時に能動的に動こうとしない人のこと』なんて言えるかよ)

 

八幡(だが平塚先生の言っていたマグロは間違いなくこのマグロだ)

 

『あんまりいい意味じゃないぞ、それでもいいか』

 

八幡(送信、予防線を張っておくが……多分無意味だな)

 

ブーッブーッ

 

『構わないから早く教えなさい』

 

八幡(ですよねー)

 

八幡(……ここはひとつ、雪ノ下に性教育をしてやる心で)

 

八幡(…………)

 

『合体した時に相方任せにする奴のことだよ』

 

八幡(……俺のヘタレ)

 

ブーッブーッ

 

『合体とはなに? キスのことならあなた任せにはしていないけれど』

 

八幡(こいつ返信早ぇ……)

 

八幡(もう、逃げられんか)

 

『合体=性行為のこと。

マグロってのは性行してるときに自分から動かない奴のことだ。OK?』

 

八幡(送信、……あーあ)

 

ブーッブーッ

 

『嘘でしょう』

 

八幡(嘘じゃないんだなーこれが)

 

『マジなんだな、これが』

 

ブーッブーッ

 

『証拠を出しなさい』

 

八幡(そんな刑事ドラマに出てくる犯人にありがちな台詞なんて使うなよ……)

 

wikipediaに記事があるから嫁』

 

八幡(あ、やべぇ誤字った)

 

ブーッブーッ

 

『嫁? あなたはこんな時に私に求婚しているの?』

 

八幡(はぁ~ぁ…… )

 

『誤変換だよ、いいからさっさとwikipedia見ろ』

 

雪乃「………………」

 

雪乃「……比企谷君にも困ったものね」

 

雪乃「平塚先生の言葉に下品な意味を勝手に加えようだなんて」

 

雪乃「どうせ嘘よ、wikipediaにあるだなんてすぐにバレるでまかせを――」カチッ

 

雪乃「」

 

雪乃「」

 

雪乃「あ、あった……」

 

雪乃「…………………………」

 

雪乃(なに……これ……)

 

雪乃(嘘、嘘よ。wikipediaにこんな記事があるはずがないわ)

 

雪乃「」ゴシゴシ

 

雪乃「」チラ

 

雪乃(………………信じられないわ、wikipediaにこんな記事があったなんて)

 

雪乃(にしても、どうして平塚先生はこんな言葉を使ったのかしら)

 

雪乃(…………? うーん)

 

雪乃(私と比企谷君が、その、性交した……と、勘違いしたからよね)

 

雪乃(なぜそんなことを気にするのかしら? 平塚先生にとって、比企谷君が誰と関係を持とうが知ったことではないはずなのに)

 

雪乃(…………! ま、まさか……平塚先生は比企谷君の身体を狙っている!?)

 

雪乃(そんな……、ならぐずぐずしていられないわ。すぐに対策を考えないと)カチカチ

 

『比企谷君、明日は学校を休みなさい』

 

『私が一日平塚先生の様子を見るけれど、明後日以降も出来るだけ先生との接触は避けること』

 

『拒否は認めないわ、あなたの危機なのだから』

 

『それと、明日の時間割を教えなさい。部活は休みにして、まっすぐ家に帰るから』

 

『明日の授業の分の勉強をするわ。いくらあなたが危険な状況におかれているからといって』

 

『授業内容を学習しないでいい理由にはならないわ。連絡を入れるから、私の家に来ること』

 

『以上、必ず守りなさい』

 

 

八幡「どういうことだってばよ……」

 

『お、おう。わかった、明日は頼む』

 

八幡(これくらいの返答しか出来ねぇよ)

 

八幡(どうしてこうなった)

 

 

(翌朝)

 

八幡「すまん小町、今日は学校休むから送ってやれん」

 

小町「もー仕方ないなぁお兄ちゃんは……ご飯作っとく?」

 

八幡「いや、大丈夫」

 

八幡(体調はむしろ万全なんだがな……)

 

小町「そっか、じゃあいってきまーす!」

 

八幡「おう、気をつけてな」

 

八幡「…………はぁ」

 

八幡(小町にこんな嘘をつくとはな……心が痛い)

 

八幡(だがこうしないと雪ノ下に何をされるか……)

 

八幡(……ゲームでもしてよ)

 

 

(学校)

 

平塚「雪ノ下、ちょっといいか」

 

雪乃「はい」

 

平塚「……昨日はすまなかったな、マグロだなんて言って」

 

雪乃「気にしてません」

 

平塚「そうか……ありがとう」

 

平塚「もう一つ、比企谷が今日欠席したんだが理由を知らないか」

 

雪乃「……先生と顔を合わせづらかったからでは?」

 

平塚「ぐぅ……やはりそうなのか……? あいつめ、『今日は休みます』の一言だけで電話を切ったからな」

 

雪乃「先生と話したくなかったのではないでしょうか」

 

平塚「やめろ雪ノ下」

 

平塚「しかし、やはり今回の件は私のせいだからな……比企谷に対しての責任は取らなければ」

 

雪乃(……責任?)

 

平塚「……あ、もう行っていいぞ。すまなかったな」

 

雪乃「わかりました、失礼します」スタスタ

 

平塚「……むぅ、何を食わせてやろうか」

 

平塚「ラーメン、牛丼、ステーキ……居酒屋はさすがに駄目だな」

 

平塚「いっそ、私の家に招いてみるか……? 比企谷なら多少は料理の心得もあるだろうし、指導してもらうか」

 

雪乃(……! 平塚先生の家へ……?)

 

雪乃(もしや、そのまま勢いで事に及ぶつもりなのかしら)

 

雪乃(そうよ、『お詫びに君を大人にしてあげよう』的な流れで比企谷君を襲う気なのね)

 

雪乃(……させるものですか)

 

 

(ゆきのんのおうち)

 

ガチャ

 

雪乃「いらっしゃい、比企谷君」

 

八幡「……ズル休みしたのは人生初かもしれん」

 

雪乃「仕方ないわ、あなたの身の安全の為だもの」

 

八幡「先生そんなに怒ってんの?」

 

雪乃「表面上はそうでもないわ。ただ、まだ比企谷君を襲う気ではいるわ」

 

八幡「うっそ、マジ……?」

 

雪乃「……さ、入って。お茶を淹れるわ」

 

 

雪乃「どうぞ」コト

 

八幡「サンキュ」ゴク

 

八幡「……ん、いつも通りの美味さ」

 

雪乃「よかった」

 

雪乃「では比企谷君、早速だけれど勉強をしましょう」

 

八幡「そういやそうだったな」

 

雪乃「まずは数学からよ。教科書を開いて」

 

八幡「なんで数学からなんだよ、現文にしようぜ」

 

雪乃「嫌よ。ほとんど教えることがないじゃない」

 

八幡「ちっ」

 

雪乃「まず、この例題から解いてみなさい」

 

八幡「……これどうすんだっけ」

 

雪乃「直前のページに公式があるわよ? もう忘れたのかしら」

 

八幡「そもそも覚えようとしてないからな、俺は」

 

雪乃「誇らしげに言わないでくれるかしら……ほら、公式に当てはめるだけよ」

 

八幡「なんで公式って覚える必要あんの? 記号の羅列じゃん、社会に出て使うか?」

 

雪乃「口より手と頭を働かせなさい、早く」

 

八幡「へいへい……」

 

カリカリ

 

――――――

――――

――

 

雪乃「ふぅ、これで今日のぶんはおしまいよ」

 

八幡「やっとか……疲れた」

 

八幡「……雪ノ下、やけに教えるのが上手いのな」

 

雪乃「人に教えるということは、自分がその事を本当に理解していないと出来ないことよ」

 

雪乃「私はきちんと理解しているから出来て当然なのよ」

 

雪乃「……それと、比企谷君がぶつぶつ言いながらも真面目に取り組んでくれたのも理由の一つね」

 

八幡「俺の為にやってくれてるんだから、適当にしちゃマズいだろ」

 

雪乃「……あなたのそういうところ、嫌いじゃないわ」

 

八幡「どーも」

 

八幡「んで、勉強も終わったし平塚先生の話にしてもいいか」

 

雪乃「ええ」

 

八幡「あの人本気で俺を襲う気なの?」

 

雪乃「そのようね、家に連れ込んでどうとか言っていたわ」

 

雪乃「恐らく逃げ道を塞いでから襲う気なのでしょうね」

 

八幡「こ、こええ」

 

八幡「…………しかし、先生が怒った原因は間違いなく俺達にもある」

 

八幡「一発くらいやられてもいいんじゃないか、なんて」

 

雪乃(一発……? 一発、『やる』……『一回だけなら性交してもいい』……!?)

 

雪乃「駄目よ」

 

八幡「え?」

 

雪乃「却下するわ、たとえ一回だけだとしても私は許さない」

 

雪乃「たとえあなたの言うとおり、私達にも落ち度はあるかもしれないけれど」

 

雪乃「でもそれは、比企谷君が襲われていい理由にはならないわ」

 

八幡「だがこれが一番手っ取り早い解決策――」

 

ちゅっ

 

雪乃「……黙りなさい」

 

雪乃「いい加減、その人身御供になりたがる悪癖をどうにかしてちょうだい」

 

雪乃「あなたはどうせ一生ぼっちのままなのだから、利己的になるくらいがちょうどいいのよ」

 

八幡(雪ノ下……眼がマジなんですけど……)

 

八幡(ちょっと待って、たかが一発ぶん殴られるだけなのになんでこんなに必死なの?)

 

雪乃(こういうことは一回だけと言っておきなから、ズルズルと続けてしまうものよ)

 

雪乃(あの時の私達のように――)

 

――――――

――――

――

 

八幡「昨日はすまんかった」

 

雪乃「気にしないでちょうだい、あれは事故よ」

 

八幡「だけど……」

 

雪乃「……そんなに謝りたいなら、私のお願いを聞いてくれるかしら」

 

八幡「可能な範囲で」

 

雪乃「私のファーストキスを返しなさい」

 

八幡「どうすりゃいいんだよ……」

 

雪乃「簡単よ、もう一度キスをすればいいの。あなたの初めても返ってくるわ」

 

八幡「え、そういう問題?」

 

雪乃「こういうのは気持ちの問題だと思うのよ」

 

八幡「は、はぁ……。まぁ出来ないことじゃないからやってもいいが、本当にすんの?」

 

雪乃「同じことを何度も言わせないで」

 

八幡「さーせんした」

 

八幡「……いいのか? しちゃうよ?」

 

雪乃「いいから早くなさい。言っておくけれど、この一回しか許さないから」

 

ちゅっ

 

雪乃「っ」ビクン

 

八幡「……ん、これでいいんだろ」

 

雪乃「あ……」

 

雪乃「………………ええ。ありがとう」

 

八幡(……んだよ、その切なげな顔は)

 

雪乃「今日はもう……帰りましょう」

 

八幡「ああ……」

 

――――――

――――

――

 

雪乃(その後の展開はお察しの通り……)

 

雪乃(今のように中途半端な関係のまま唇を重ね続けている)

 

八幡「……雪ノ下?」

 

雪乃「ねぇ、比企谷君」

 

雪乃「私達ってどんな関係なのかしら」

 

八幡「どんな関係、なんて聞かれたらな……」

 

八幡(まず友達ではないよな。じゃあ……友達以上かな……いや、それも違うか?)

 

八幡(一番近いのがセフレなんだがそこまで深いことはしてないし)

 

八幡「……俺にもようわからん」

 

雪乃「でしょうね、私がわからないのにあなたがわかるわけがないわ」

 

八幡「おい、事実だけどそういうことを言うんじゃない」

 

雪乃「……比企谷君、その」

 

雪乃「そろそろ、終わりにしない? こんな中途半端な関係」

 

八幡「終わりにするって? じゃあこれからはどうする」

 

雪乃「比企谷君が受け入れてくれるか不安だけれど」

 

雪乃「……私はあなたと付き合いたい」

 

雪乃「手をつないだり、抱き締めたり、二人で並んで歩いたりしたいの」

 

雪乃「キスだってもっとしたい、あなたと一緒にやりたいことがたくさんあるのよ」

 

雪乃「あなたのそばに、いたいの……」

 

八幡「雪ノ下……俺は――」

 

ピリリリリリ

 

八幡(電話……!? 小町からかよ)

 

雪乃「出ていいわ、私のことは気にしないで」

 

八幡「すまん」ピッ

 

八幡「……もしもし、小町?」

 

小町『もしもしお兄ちゃん? ねぇ今どこ?』

 

八幡「地球ん中。俺宇宙飛行士じゃないから」

 

小町『真面目に答えてよお兄ちゃん』

 

八幡「別に言うまでもない所だよ、調子が良くなったし暇だったからふらっとな」

 

小町『駄目でしょ学校休んだんだから……また悪くなるかもしれないでしょ』

 

八幡「心配すんな、大丈夫」

 

小町『むー』

 

八幡「……あと、夕飯は外で食ってくるから作らなくていいぞ。んじゃ」プツ

 

雪乃「比企谷君? それで結局ご飯はどこで食べるのかしら」

 

八幡「ここ」

 

雪乃「え、え?」

 

八幡「お前の言う『やりたいこと』の中に『料理を作ってあげる』ことは入ってないのか?」

 

雪乃「……卑怯ね」

 

八幡「ぐぐ」

 

雪乃「ちゃんと言葉に出さないと夕飯抜きにするわよ」

 

八幡「そ、そんな殺生な」

 

雪乃「一言でも言えばいいのよ? 一単語でも私が理解できればよしとするわ」

 

八幡「……ぐぅ」

 

八幡「……雪ノ下、好き、だ」

 

八幡「ほら見ろ、ろくな告白になりゃしない」プイ

 

雪乃「いいのよ、それで。あなたらしいじゃない」

 

ぎゅう

 

雪乃「……さて、あなたが逃げ出さないように誓いを立てましょう」

 

八幡「ち、誓いって何だよ」

 

雪乃「浮気をしないことと私を愛し続けること……この二つを誓ってもらうわ」

 

八幡「信用ないの俺?」

 

雪乃「そういうわけじゃないけれど……」

 

雪乃「夢、というか……『誓いのキス』というのをしてみたくて……」カアァ

 

八幡「確かにそういう重いやつはしたことなかったな」

 

八幡「……あいよ、可愛い彼女の夢だもんな」

 

雪乃「ありがとう……」

 

ちゅっ

 

雪乃「幸せ……」

 

八幡(たった一回なのに心臓がフル稼働してんだけどなんなの)ドキドキ

 

雪乃「これで誓いは済ませたわ。浮気なんてしたら許さないんだから」

 

八幡「しねーよ、……多分」

 

雪乃「多分? そう、するかもしれないという事ね」

 

八幡「ああもう、しないからしないから」

 

雪乃「よろしい」

 

八幡「よし、飯作ってくれ雪ノ下」

 

雪乃「雪乃」

 

八幡「はい?」

 

雪乃「二人きりの時はお互いに名前で呼びましょう。付き合っているのだから」

 

雪乃「ねぇ、八幡?」

 

八幡「あ、ああ。……雪、乃」

 

八幡「よし雪乃、飯頼む」

 

雪乃「ごめんなさい、それは無理」

 

八幡「話が違うぞ 」

 

雪乃「一緒に作るのよ」

 

八幡「えー」

 

雪乃「出来たわね。なかなか良い手際だったじゃない」

 

八幡「お褒めに預かり光栄です……疲れた、お前人使い荒すぎ」

 

雪乃「八幡の主夫スキルのテストも兼ねていたから仕方ないことよ」

 

雪乃「私には及ばないけれど、二人で練習すればもっと上手くなるわ」

 

雪乃「それまで結婚はお預け」

 

八幡「気が早いぞ、お預けとか言っても年齢的にまだ結婚出来ないんだが」

 

八幡「……ま、お前と釣り合う人間になるまで頑張ってみるかね」

 

雪乃「い、意外だわ……八幡がそんな殊勝なことを言うなんて……」

 

八幡「なんなの? このシチュってドン引きされるような要素ないでしょ?」

 

雪乃「ね、ねぇ、さっきまでの八幡はどこに行ってしまったの?」

 

八幡「俺は俺だ……」

 

八幡「いいだろ、一度くらい似合わない台詞を言ったって」

 

雪乃「あなた、本当に比企谷八幡なの? 私が愛している八幡と随分違うようだけれど」

 

八幡「わざわざ俺に化ける奴なんていねぇよ……」

 

雪乃「冗談よ」

 

八幡「くだらないことをするんじゃない」

 

雪乃「ご飯が冷めてしまうわ。食べましょう、八幡」

 

八幡「スルーっすか」

 

雪乃「あーん」

 

八幡「!?」

 

雪乃「ほら、口を開けなさい」

 

八幡「あ、ああ」モグモグ

 

八幡「……ん、美味い」

 

雪乃「ねぇ八幡、私にも食べさせてちょうだい」

 

八幡「マジですんの?」

 

雪乃「もちろんよ、だから早く食べさせて……」アーン

 

八幡(上目遣いで口を開けている……なんだかエロい)

 

八幡「ん」

 

雪乃「ふふ、おいしい」モグモグ

 

八幡(こいつこんなにアグレッシブな奴だったっけ? 人のこと言えねぇじゃん)

 

八幡(……ま、いいか)

 

八幡「ふぅ、やっと食い終わったか……まさか全部食べさせ合うとは思わなかったぞ……」

 

雪乃「いいじゃない、一回くらいこんなことをしたって」

 

八幡「お前忘れてない? 俺これから家に帰るんだけど」

 

雪乃「え?」

 

八幡「時間的な都合でそろそろお暇したいんですが」

 

雪乃「泊まっていったら?」

 

八幡「小町がなんて言うかわかったもんじゃねぇよ」

 

八幡「一応俺は今病み上がりっていう設定なんだから小町も少しは心配してるだろ」

 

ピッポッパ

 

雪乃「もしもし、小町さん?」

 

八幡(早っ! 行動起こすの早っ!)

 

雪乃「比企谷君を私の家で預かっているのだけれど」

 

小町『えっ、本当ですか!? お兄ちゃんの様子はどうですか?』

 

雪乃「あまり良いとは言えないわね。今はベッドでぐったりしているわ」

 

八幡(大嘘だ! 一つも現実と一致してないぞ!)

 

八幡(虚言は吐かないんじゃなかったのかよお前!?)

 

八幡「ちょっ、おいおま――」

 

雪乃「駄目でしょう比企谷君、体調が悪いのだからじっとしてなさい」

 

八幡「は、はい」

 

雪乃「……というわけで、明日までここに泊めておくわ」

 

小町『すみません、うちのごみいちゃんがご迷惑をおかけします』

 

雪乃「気にしないでちょうだい、それじゃ」

 

ピッ

 

八幡「oh……」

 

雪乃「八幡、外で着替えを買ってきなさい」

 

八幡「え? 着替えねぇの?」

 

雪乃「男物の服なんてあるわけ無いでしょう、私に異性を泊めるだなんて経験はないのよ」

 

八幡「俺今財布持ってないけど」

 

雪乃「はい、お金よ。無駄遣いしないように」

 

八幡「……無駄遣いなんてしねーよ、お前の金だろ」

 

雪乃「本当かしら」

 

八幡「少しは信用しろよ、仮にも彼氏だぞ俺は」

 

雪乃「……///」

 

八幡「おいどうした」

 

雪乃「な、なんでもないわ……」モジモジ

 

雪乃(八幡が彼氏、八幡の彼女……ふふふふふ///)

 

雪乃「ほら早く行きなさい、お店が閉まったらどうするの」

 

八幡「へいへい、行ってきますよっと」

 

 

(服屋)

 

八幡「寝間着と一応シャツとズボンを買って……他に何かあるかね」

 

八幡「……こ、これは」

 

八幡「パンさんシャツ……だと……?」

 

八幡(これを買って帰ればきっと喜ぶだろうな)

 

八幡(メールでサイズを聞くか)ゴソゴソ

 

八幡(……うげっ、マジかよ携帯置いてってる)

 

八幡(どうする俺、買えば喜ばれるだろうが着られないと話にならん)

 

八幡(ここは買わずにおいて後で二人で来るという手も――)

 

『数量限定! 買うなら今!』

 

八幡(うっそーん)

 

八幡(……もう俺の勘を信じるしかないのか)

 

八幡(肩幅くらいなら記憶を頼りに合わせられるかもしれないが)

 

八幡(――抱きつかれた時の記憶から判断すると、俺の肩幅と比べてこのくらい細い)

 

八幡(とすると……こいつか……?)

 

八幡(着られなかったらしょうがない、部屋のインテリアにでもしてもらうか)

 

八幡(……心臓バクバクしてきた)

 

ガチャ

 

八幡「帰ったぞ」

 

雪乃「お帰りなさい、八幡」

 

八幡「……ほれ、お土産」

 

雪乃「ぱ、パンさんのシャツ……!?」

 

雪乃「買ってくるなら連絡してくれればよかったのに、サイズ選びはどうしたのよ」

 

八幡「携帯忘れたんだよ……。記憶と勘を頼りに選んだから着られないかもしれん」

 

雪乃「これ、私のサイズぴったり……」

 

雪乃「八幡……ありがとう……」ウルウル

 

八幡(ど、どうする……まさか泣かれるとは予想してなかった……)

 

八幡(こんな時は――)

 

(選択肢)

・頭をなでる

・抱きしめる

・キスをする

・押し倒す

 

八幡(押し倒すってなんだよ!!!)

 

八幡(最後は論外として、ここは……)

 

八幡「泣くほど嬉しいのか……そんなに好きだったんだな、パンさん」

 

雪乃「パンさんも好きだけれど……あなたがプレゼントしてくれたものだから……」

 

八幡(その服お前の金で買ったんだけどね)

 

八幡「……そうか。買ってきてよかった」ナデナデ

 

雪乃「ふぁ……」

 

八幡(想像以上の撫で心地)

 

雪乃「はちまんっ」ギュー

 

八幡(抱きつかれた……これって抱き返した方がいいよな……?)

 

八幡「……どうした」ギュ

 

雪乃「ご、ごめんなさい……自分を抑えられないの」

 

雪乃「落ち着くまでこのままでいてくれるかしら……」

 

八幡「お、おう」

 

雪乃「…………」ギュー

 

八幡「…………」ギュ

 

雪乃「……もう大丈夫よ。ありがとう」

 

八幡「気にすんな」

 

雪乃「ちょっと待って、……シャツのお礼よ」

 

ちゅっ

 

八幡「っ」ドキッ

 

雪乃「ふふ」ニコニコ

 

雪乃「お風呂の準備をしてく――」

 

つるっ

 

雪乃「きゃあ!?」

 

八幡「あぶねっ!?」ガシッ

 

つるっ

 

八幡「うおっ!?」

 

どすん

 

八幡「っつつ……」

 

八幡「すまん、俺までコケちまった」

 

雪乃「い、いいのよ。気にしないで、それより……」

 

雪乃「は、恥ずかしいからそろそろどいてくれないかしら……」

 

八幡(あ、ほんとだ押し倒してるよ俺)

 

八幡「わ、悪い」バッ

 

雪乃「いいのよ、いいのよ」カアァ

 

雪乃「失礼するわ」ダダダ

 

八幡(逃げた)

 

八幡(そういや俺ってさ、さっきの4つの選択肢を全部こなしてね?)

 

八幡(俺選んだよ? 一番上の選択肢選んだよ?)

 

八幡(ハグとキスは向こうからで押し倒したのは事故だけどさ)

 

八幡(……あいつ俺のこと好きすぎだろ)

 

――――――

――――

――

 

雪乃「八幡、お風呂出来たわよ」

 

八幡「あいよ。……入ってくるなよ?」

 

雪乃「そ、そんなことしないわ」

 

雪乃(入ってくるな、というのが冗談……つまり入っていいということ……よね)

 

雪乃(入ってこなくていいとは言われたけれど禁止はされていないわ)

 

雪乃(全く、もう。八幡たら)

 

雪乃(素直じゃないんだから……ふふふふ)

 

雪乃(付き合っているのだから一緒に入浴するくらいなんてことないわよね)

 

雪乃(一緒に入ったらどうなるのかしら?)

 

雪乃(八幡はどんな反応をするのかしら……?)

 

ホワンホワーン

 

八幡『ゆ、雪乃!? 入ってこなくていいって言っただろ』

 

八幡『おい馬鹿なんで何も着てないんだよ、水着とか着ろよ』

 

八幡『風呂場は水着で入るもんじゃないって? んなこと知ってる』

 

八幡『だけどよさすがにマズいだろ、お前が裸だと――』

 

八幡『……っ!』プイ

 

八幡『んだよ、こっちみんな』

 

ピトッ

 

八幡『――ッ! や、やめろ……くっつくな……!』

 

八幡『く、あ……はぁ……』

 

八幡『ゆき、の……雪乃っ、はぁ、はぁ……ッ』

 

 

雪乃「……///」

 

雪乃「や、やめておきましょう」

 

雪乃「学生の身で間違いを犯すわけにはいかないもの、うん」

 

八幡「ふぅ、さっぱりした」

 

雪乃「あ、ああ上がったのね」

 

八幡「……? どうした、何かあったのか」

 

雪乃「いいえ、何も? 私もお風呂に入ってくるから」

 

八幡「はいよ」

 

八幡(顔が真っ赤だったな……なにか変なことでも考えたのか)

 

八幡(まさかあいつ、ムッツリだったの?)

 

八幡(……有り得る。意外と官能小説とか持ってそうだし)

 

八幡(そもそもあいつ一人でしたことあんのかね)

 

八幡(あいつの……?)

 

八幡(ま、まずい俺の機動戦士が出撃準備を始めた)

 

カポーン

 

雪乃(八幡が浸かったお湯……)

 

雪乃(普段と同じように沸かしたのに、いつもより少し温かい気がする)

 

雪乃(これが、八幡の体温なのかしら)ブクブクブク

 

雪乃(いけない……頭の中が八幡でいっぱいに……)

 

 

雪乃(のぼせかけた……)

 

八幡「お、おう。上がったのか」

 

雪乃「どうしたの八幡、顔が赤いのだけれど。それになぜ前かがみなの?」

 

八幡「特に理由はない」

 

雪乃「不可解ね」

 

八幡「え? ないの? 無性に前かがみになりたくなる時とか」

 

雪乃「ないわ」

 

八幡「俺にはあるね、多分男ならだいたいそういう気分になる時があると思うぞ」

 

雪乃「そうなの?」

 

八幡「多分な」

 

雪乃「さ、寝ましょう」

 

八幡「それはいいんだが、俺はどこで寝ればいいんだ? 布団とかねぇの?」

 

雪乃「あると思うの? 私は一人暮らしなのよ」

 

八幡「んじゃ、ソファでも借りるか」

 

雪乃「駄目。そんなところで眠らせたくないわ」

 

八幡「じゃあどこならいいんだよ」

 

雪乃「私と一緒に寝ればいいじゃない」

 

八幡「……え?」

 

雪乃「ダブルベッドだからスペースの問題はないわ」

 

八幡「ちょっちょ、マジで?」

 

雪乃「……嫌なの? 私はあなたと一緒に眠りたいのに」

 

八幡「嫌じゃねぇけど倫理的にアレだろ」

 

雪乃「私達、交際しているのよ? 倫理的な問題もないと思うのだけれど」

 

八幡「……わーったよ」

 

雪乃「ふふ」ニコニコ

 

雪乃「じゃあ、おやすみなさい。抜け出したりしないように」

 

八幡「しねーよ、もう動きたくないし」

 

雪乃「……まだ不安」ギュー

 

八幡「お、おい」

 

八幡(背中に慎ましやかなふくらみが当たってるんですが)

 

雪乃「離れちゃだめ」

 

八幡「……はいはい」

 

八幡(やばいやばいやばい、めっちゃ興奮してきた)

 

雪乃「……鼓動が早いけれど、どうしたの?」

 

八幡「べ、別に」

 

雪乃「……。あなたの体、温かいのね」

 

雪乃「心地良い……ふふ、癖になってしまいそう」

 

八幡「そうかそうか」

 

雪乃「真面目に聞いているの? 言葉に感情が全くこもっていなかったのだけれど」

 

雪乃「……あ、ごめんなさい。眠たいのね」

 

八幡(全然眠たくありませーん)

 

雪乃「聞かなくていい、反応しなくていいから……言わせてちょうだい」

 

雪乃「私は今、最高に幸せよ」

 

雪乃「ずっと、ずっとこうしていたいの」

 

雪乃「いつまでも……あなたの側で生きていきたい」

 

雪乃「……ありがとう、私の告白を受け入れてくれて」

 

雪乃「愛してるわ、八幡……」

 

雪乃「………………」

 

雪乃「眠ってしまったのね」

 

雪乃「……おやすみなさい、八幡。また明日」

 

 

八幡(寝れるかあああああああああああああ!!!!)

 

八幡(何こいつ、重ッ! メガトン級の重さだこれ!)

 

八幡(……正直こんなに愛が深いとは思ってなかった)

 

八幡(浮気したら後ろから刺されるんじゃあないか? ……ありそう、冗談抜きで)

 

八幡(だが、しかし、まあ、うん)

 

八幡(……ここまでストレートに好意を伝えられると逃げようがない)

 

八幡(逃げる気さえも起こらない。……それは俺も彼女が好きだからだろうけど)

 

八幡(そうだな、俺も……お前を愛しているよ)

 

八幡「……おやすみ」

 

八幡「……ん、ふぁあ」ノビー

 

雪乃「」スヤスヤ

 

八幡「まだ寝てやがる……しかも思いっきり抱きつきながら」

 

八幡「動けないぞ、どうする……」

 

雪乃「」スヤスヤ

 

八幡(くそっ、振り向くことも出来ないだと!? 寝顔くらい拝ませろ!)

 

八幡(……いいや、今日も学校休むんだから寝ちまえ)

 

雪乃「ん……」モゾ

 

八幡(なんだ、起きるのか?)

 

雪乃「はち……まん……」

 

八幡(はうっ!?)

 

八幡(……今のはかなり来た、耳元で囁かれるのってこんなになるもんだったの?)

 

雪乃「すき……」

 

八幡(あかんあかんあかぁぁぁあん!)

 

雪乃「……愛してる」

 

八幡「」プツン

 

八幡「誘ってんのかおい!」グルッ

 

雪乃「えっ?」

 

八幡「は!?」

 

雪乃「…………」

 

八幡「…………」

 

雪乃「あなた起きていたの?」

 

八幡「お前起きてたのかよ!」

 

八幡「……………………」

 

雪乃「……………………」

 

八幡「お前が寝てると思ってたから動かなかったんだぞ俺は」

 

雪乃「私だって、あなたが寝ていると思ったから耳元で愛を囁いたのよ」

 

八幡「んなこと俺が起きてても出来んじゃねぇか」

 

雪乃「な、は、恥ずかしかったのよ……ピロートークみたいで」

 

八幡「どうしてそういう発想になるんだよ」

 

雪乃「あなたこそ囁きくらいで興奮してどうするのよ」

 

八幡「そういうのって思ったよりヤバいんだっての」

 

雪乃「ならやってみなさい」

 

八幡「……言ったな」

 

八幡(あれ? これって誘い受け?)

 

八幡「……雪乃」ボソッ

 

雪乃「!!」ドキッ

 

八幡「好きだ……もう、お前しか見えない……」

 

八幡(視界的な意味で言えばその通りなんですけどねー。近すぎ)

 

雪乃「はぅ……」ドキドキ

 

八幡「ふぅー」

 

雪乃「ひやぁん!?」ビクン

 

八幡「どうした、耳に息をかけただけだが」

 

雪乃「ひ、卑怯よ……」

 

八幡「ふぅー」

 

雪乃「ふぁあ!」ビクン

 

八幡(なにこれ楽しい)

 

八幡「悪かったって……」

 

雪乃「ふん」ブッスー

 

八幡「どうしたら許してくれるんですかね」

 

雪乃「……昨日から不満に思っていることがあるのだけれど」

 

雪乃「八幡、あなた私のことを全然名前で呼んでくれないじゃない」

 

八幡「そうだったか?」

 

雪乃「そうよ、昨日と今日合わせて3回しか呼ばれていないわ」

 

八幡「なんで数えてるんだよ」

 

雪乃「数えるほどしか呼んでくれていないからよ」

 

雪乃「……と、いうことで。今後私を呼ぶ時は必ず名前で呼ぶこと」

 

雪乃「『お前』や『こいつ』などは一切禁止します」

 

八幡「えー」

 

雪乃「嫌なの? どうして?」

 

八幡「あ、いや……なんつーか」

 

八幡「……恥ずかしい、というか、呼びにくいというか」

 

雪乃「恋人の名前を呼ぶことがそんなに恥ずかしいことなの?」

 

八幡「俺にとってはな……」

 

雪乃「すぐに慣れるわ。だから私のことは雪乃と呼びなさい、いいわね?」

 

八幡「お、おう」

 

雪乃「約束よ、……」

 

ちゅっ

 

雪乃「……ここまでしたんだからちゃんと守りなさい」

 

八幡「わかったよ……雪乃」

 

雪乃「よし」

 

雪乃「……それじゃ、私は欠席の連絡を入れてくるから」

 

雪乃『……なので、今日はお休みしたいのですが』

 

平塚「そうか、わかった」

 

雪乃『それと、比企谷君は今日も欠席するとのことです』

 

平塚「了解した。……が、なぜそれを君が言うんだ?」

 

雪乃『ああ、比企谷君は今私の家にいるんです』

 

平塚「なぬぅ!?」

 

平塚「どどどどういうことなんだ、説明したまえ」

 

雪乃『昨日体調不良にも関わらず無謀にも外出してそのまま倒れた比企谷君を偶然拾ったんです』

 

雪乃『かなり具合が悪そうだったのでそのまま一泊させただけですが……まさか病気をうつされるとは思いませんでした』

 

平塚「バカだろ……あいつ……」

 

平塚「では今日の部活は休みだな。由比ヶ浜に言っておこう」

 

雪乃『すみません』

 

結衣「それじゃ、二人揃ってダウンしてるってことですよね。ゆきのんの家で」

 

平塚「ああ、そうなる」

 

結衣「……そうだ! お見舞いに行きましょうよ!」

 

平塚「お見舞いか……」

 

平塚「すまんな由比ヶ浜、私は今日仕事が少ないから久しぶりにラーメン屋巡りをしようと思っているんだ」

 

結衣「ラーメンならあたしが今度奢りますから! ね!」

 

平塚「ぐ、しかし」

 

結衣「ラーメンばっかり食べてると太りますよ」

 

平塚「ぐおおぉ!」

 

平塚(ま、まずい……太ってしまうと男受けが悪くなる! そうなるとますます行き遅れてしまう!!)

 

平塚「わ、わかった……ラーメン、ちゃんと奢ってくれるんだろうな」

 

結衣「はい! もちろん!」

 

平塚(くっそぉ……由比ヶ浜なんぞに乗せられるとは……!)

 

雪乃「ねぇ見て、八幡」

 

八幡「それは……昨日買ってきたパンさんのシャツか」

 

雪乃「……どう、かしら」

 

八幡「なんていうか、新鮮だな」

 

八幡「たまにはこんな雪乃も……悪くない」

 

雪乃「ありがとう……」テレテレ

 

ぎゅうー

 

八幡「……雪乃さ、俺に抱きつくのがそんなに好きなの?」

 

雪乃「ええ、温かいから」

 

雪乃「それに……」

 

ちゅっ

 

雪乃「……キスも、たくさん出来るでしょう?」

 

八幡「……誘ってんの?」

 

雪乃「そう思うならそうなんじゃない? いいわよ、何をしても」

 

八幡「ったく」

 

ちゅっ

 

八幡「ん、れろっ……」

 

雪乃「っ!? う、むぅ……」

 

八幡「ちゅ、ふ……んくっ」

 

雪乃「んん、――っ!」

 

八幡「ぷはっ」

 

雪乃「はぁ、はぁ……舌を入れるなんて……変態よ」

 

八幡「いいじゃねぇか、人間はみんな変態なんだよ」

 

雪乃「私は変態じゃないわ……あなたと一緒にしないでちょうだい」

 

八幡「と言いつつ興奮している雪乃であった」

 

雪乃「そ、そんな、こと……」

 

八幡「……もう一度してやろうか」ボソッ

 

雪乃「――!」ゾクゾクッ

 

雪乃「あ、あ……」

 

雪乃「後でにしてちょうだい、昼食の支度があるからっ」ダダダ

 

八幡「……逃げたか」

 

八幡「飯の後が楽しみで仕方ないぞ、どうしたんだ俺」

 

八幡「というわけで飯はカット」

 

八幡「早速続きをしようじゃないか、雪乃」

 

雪乃「ちょ、ちょっと待って……次にされたら腰が抜けてしまいそうだから……」

 

雪乃「ベッドの……上で……」

 

八幡「おいそれはまずい、確実になし崩し的に間違いを犯すことになるぞ」

 

雪乃「いいわ」

 

八幡「!」

 

雪乃「八幡になら……何をされたって……」

 

八幡「」プツン

 

八幡「よっと」

 

雪乃「きゃっ! は、八幡……こんな抱き方、恥ずかしいわ」

 

八幡「お姫様抱っこくらい気にすんな、ベッドまで運ぶだけだ」

 

八幡「……たっぷり可愛がってやるよ」

 

雪乃「は、はちまん……」ゾクゾク

 

ドサ

 

雪乃「は、八幡」

 

八幡「ん、どうした」

 

雪乃「その、ほ、本当に……するのかしら……」

 

八幡「さぁ? そんなもん俺の気分で決める」

 

八幡「だがどんなことになっても文句は言うなよ、何されてもいいってさっき言っただろ?」

 

雪乃「っ……」

 

八幡「……ま、するとしてもそんな乱暴にはしねぇよ」

 

八幡(嫌われたくないし)

 

八幡「ほら顔出せ、キスするんだろ」

 

雪乃「あ、……ん」

 

八幡「ん」チュッ

 

雪乃「………………」

 

八幡「なんだ、その不満げな顔は」

 

雪乃「さっきのキスをしなさい」

 

八幡「さっきのって? どういう風にすればいいんだ?」

 

雪乃「し、舌を、入れて……いたじゃない」

 

八幡「あぁ、それで?」

 

雪乃「あの、あ、あなたの舌で、私の口の中を滅茶苦茶にして……ほしいの……」

 

八幡「……雪乃、今のは『ディープキスしろ』だけで済んだ問いだぞ」

 

雪乃「え、……あっ」カアァ

 

八幡「だがまぁ俺好みの答えだったからいいんだけどさ」

 

八幡「……したいんだろ? ほら」

 

雪乃「えぇ……」

 

ちゅっ

 

八幡「じゅる、くちゅ……んくっ」

 

雪乃「ふぁ、ん!」ビクン

 

八幡「れろっ、じゅぷっ」

 

雪乃「……っ、ぁ」ビクビク

 

八幡「う……ん、ちゅうぅぅぅ」

 

雪乃「んっ!、んぅぅ―――!」

 

八幡「……ふぅ」

 

雪乃「あ……う……」クタッ

 

八幡「あーあー、マジで腰砕けてやんの」

 

雪乃「だ、って、激し……すぎて」

 

八幡「ちょっとくらい激しい方が来るだろ? 腰に」

 

雪乃「それにしたって……っ」

 

八幡「まぁいいじゃん、今ので雪乃の乳首ビンビンになってるんだし」クリッ

 

雪乃「んひぅ!」ビクン

 

八幡「……もしかして、雪乃ってMなのか?」

 

雪乃「ち、ちが……」

 

八幡「違うのか? 俺はMだと思うんだけど」

 

八幡「キスしてる時とか、今みたいに乳首いじってる時とか……滅茶苦茶悦んでんじゃねぇかよ」

 

八幡「違うってんなら証明してみろ、乳首こねくり回すけど喘ぐんじゃねぇぞ」

 

雪乃「……くっ」

 

クリクリ

 

雪乃「あぁっ!」ビクン

 

八幡「くくっ……初っ端から反応してやんの」

 

雪乃「や、あ……」

 

八幡「何か言ったか?」クリクリ

 

雪乃「ふやぁっ!」

 

八幡「楽しい……超楽しい、雪乃をいじめんのってこんなにスカッとするもんだったんだな、くくっ」

 

雪乃「ひ、どい……!」

 

八幡「おいおい、俺は雪乃が望んでいるサービスをしているだけだが」

 

雪乃「こんなの、こんなのっ……わたしは望んでなんかっ」

 

八幡「雪乃は自分の体が悦んでいるのがわからないのか……?」クリクリ

 

雪乃「んっ! んんんんっ……!」

 

八幡「どうした、……我慢なんてしなくていいんだぞ?」

 

八幡「限界なんだろ? いいよ、イッちまえよ……ほら」ギュニッ

 

雪乃「ああぁぁああああぁ―――――ッ!」ビクンビクン

 

八幡「…………」ニヤニヤ

 

雪乃「ひぃ、あ、……はあ、はあ」

 

八幡「随分気持ちよさそうだったじゃないか」

 

雪乃「こ、この、けだものっ」ポカポカ

 

八幡(全然痛くないんですねーこれが)

 

八幡「……嫌いになったか」

 

雪乃「! ……そんなことないわ。ただ、少し怖かった」

 

八幡「そ、か」

 

八幡(……こりゃ本番するのはもっと先だな)

 

八幡「俺も悪かった、雪乃が可愛くてついやりすぎちまった」

 

雪乃「そういうことを言っておけば私が水に流すと思っているんでしょう?」

 

八幡「いやいや、真実。バリ真実」

 

雪乃「……///」

 

雪乃「と、特別に、今回の件は不問に処します」

 

八幡「すまんな」

 

雪乃「あと、今のようなことをまたしたいなら……私の許可を得てからにすること」

 

雪乃「嫌ではなかったし、まぁ、気持ちよかった……から」

 

八幡「じゃあ今からしていいか?」

 

雪乃「ダメ」

 

八幡「えー、なんでだよ。気持ちよかったんだろ?」

 

雪乃「今はそういう気分じゃないのよ」

 

八幡「ならどういう気分なんだ」

 

雪乃「……キス。キスがしたいわ」

 

八幡「本当にキスが好きなんだな……雪乃は」

 

雪乃「……ええ。大好きよ」

 

八幡「仕方ないな、雪乃の気が済むまでやってやる」

 

平塚「まったく比企谷め、私のラーメンを返せ」

 

結衣「まぁまぁ、そしたら今度ヒッキーに奢らせればいいじゃないですか」

 

平塚「それは駄目だ。いくら比企谷が相手でも病人から金を巻き上げるなんて行為は出来ないさ」

 

平塚「……お、来たな」

 

小町「お待たせしましたー」

 

小町「いやー、すみません……兄がこんなにおバカさんだとは思ってませんでした」

 

平塚「全くだ、奴のせいで私の予定が潰れてしまったんだからな」

 

結衣「まだラーメンのことを引きずってるんですか平塚先生……」

 

平塚「いいだろう、恨み言の一つや二つくらい比企谷は言われ慣れているだろうからな」

 

平塚「私が少し愚痴ったところでさしたる影響はあるまい……さて」

 

平塚「全員揃ったことだし、行くとするか」

 

結衣「はい!」

 

小町「ほぇー……でっかいマンションですねぇ」

 

平塚「雪ノ下め……私もこんな家に住みたかった……」

 

結衣「ゆきのんの部屋の番号は……っと」ピッピッ

 

結衣「…………」

 

結衣「うーん、出ませんね」

 

平塚「どうする、この扉が開かないと雪ノ下の部屋まで行けないぞ」

 

小町「……あ、人が来ましたよ」

 

平塚「扉を開けたな、よし……行くぞ」

 

タッタッタッ

 

小町「ここですか? 雪乃さんの部屋って」

 

結衣「そうだよ、……インターホン鳴らすね」

 

ピンポーン

 

結衣「……」

 

平塚「……出んぞ、もしかして留守なんじゃないか?」

 

小町「いや、それはないんじゃないんですか? 二人共病気なんですし」

 

結衣「」ガチャ

 

平塚「あ、開けた!? 由比ヶ浜、まさかお前ピッキングでもしたのか!」

 

結衣「違いますよ! 鍵がかかってなかったんです!」

 

小町「ともかくこれで入れますね」

 

結衣「お、おじゃましまーす……」

 

小町「ごみいちゃーん、お見舞いに来たよー!」

 

平塚「返答もできないほど体調が悪いのか……?」

 

平塚「それともやっぱり留守なんじゃ……」

 

平塚「しかし靴はあるんだよな、どうしたというんだ」

 

小町「……? こっちの部屋から何か聞こえるような」

 

結衣「この部屋? ……よーし」

 

ガチャ

 

結衣「ヒッキー、ゆきのん! お見舞いに――」

 

八幡「じゅるるる、ん、ちゅく」

 

雪乃「ふぁ、く……」

 

雪乃「は、はちまん、わたし……」

 

八幡「ん? どうした」チュー

 

雪乃「あ、あ……もう、だめ、だめなのっ」

 

八幡「ふ……、イきそうなのか? さっきからキスだけで何回イッてんだよ」

 

雪乃「仕方ないじゃない……気持ちいいんだもの、んんぅっ」

 

八幡「しょうがないな……ちょいと激しくするからな」

 

雪乃「ちょ、まって……」ゾクゾクッ

 

八幡「待つと思うか?」チュ

 

結衣「」

 

平塚「」

 

小町「」

 

八幡「ちゅう、ん、じゅ……ずるるるるっ」

 

雪乃「――――! ん、んんんぅぅうう!」ビクンビクン

 

八幡「……うわ、あっけな」

 

雪乃「は、ひ……ぁぅ……」

 

平塚「比企谷」

 

雪乃「はげし、すぎ……るわ……」ハァハァ

 

八幡「んなこと言われてもこのくらいしないとイかないだろーが」

 

八幡「それになんだかんだ言ってもイカされるのが癖になってんだろ?」

 

平塚「おい、比企谷」

 

雪乃「そ、そんなこと」

 

八幡「あるんだよな、雪乃はドMだし」

 

雪乃「う、ぅ……」ゾクゥ

 

平塚「比企谷ァアアッ!!」

 

八幡「うぇえ!?」

 

雪乃「!?」

 

八幡「平塚先生、由比ヶ浜……小町まで!? なんでここに」

 

雪乃「……ピッキングでもしたんですか? 平塚先生」

 

平塚「私がそんな技術を持っていると思うのか? ……鍵が開いていた」

 

八幡(そういえば昨日服を買って帰ってきた時に鍵を閉めた記憶がないな……)

 

八幡「それはいいとして、どうしてここに来たんですか」

 

平塚「お前たちのお見舞いに来てやったんだよ……」

 

結衣「あうあう……」プシュー

 

小町「」ボーゼン

 

平塚「私達は純粋にお前たちを心配していたのに……それなのに」

 

平塚「どういうことか……説明してもらおうじゃないか、比企谷ァ!!」

 

八幡「仮病使いました」

 

雪乃「元はといえば先生が八幡を襲おうとしていたからです」

 

平塚「……は? 私が、比企谷を?」

 

雪乃「適当な理由をつけて八幡を自宅に招き、逃走経路を断絶した上で事に及ぶつもりだったのでは?」

 

平塚「私がそんなことをするはずがないだろう!」

 

八幡「いや、ぶっちゃけ一発くらいやられるんじゃないかと思いますけど」

 

雪乃「日頃の八幡への扱いが招いた結果です」

 

小町「……ん?」

 

小町「雪乃さん、今お兄ちゃんのこと……名前で……」

 

雪乃「ええ、八幡と呼んだけどそれが何か?」

 

結衣「」ポワーン

 

八幡「小町、実は俺たち付き合ってるんだ」

 

雪乃「そういうことよ」

 

平塚「……いつからだ」

 

八幡「昨日からですけど」

 

平塚「ズル休みしといてなにしてくれてんだこのスッタコがぁああ!!」

 

雪乃「平塚先生、落ち着いてください」

 

雪乃「それに先生にだって落ち度はあります。八幡は先生を怖がって私のところに泣きついてきたんです」

 

八幡「違うだろ! お前がうちに来いってメールを送ってきたから――」

 

雪乃「八幡、私を呼ぶ時は名前で呼べと言ったでしょう」

 

八幡「ぐ……すまん」

 

八幡「ぶっちゃけビビってたのは本当なんですけどね」

 

平塚「」ワナワナ

 

小町「ひゅー、暑苦しーい」

 

結衣「」ボーゼン

 

平塚「……と、とにかく! 私が比企谷を襲うと考えた理由を聞かせろ」

 

結衣「」ハッ

 

雪乃「……二日前、私と八幡は部室で仲良く眠ってしまいましたね」

 

雪乃「それを見た平塚先生が不自然な問いをしました。添い寝をしているとは一体どういう関係なんだ、と」

 

八幡「埒が明かないと思って魚の名前がどうとかの問題を出したら、先生がいきなり暴れだしたんだよな」

 

平塚「ぐぬぬ

 

雪乃「そうね、そしてその時先生が呟いた『マグロ』という単語……これの意味が気になって調べました」

 

結衣「だからわざわざヒッキーにメールしようとしたの!?」

 

雪乃「ええ。検索した結果、今の意味のマグロは、……まぁいかがわしい意味だった」

 

雪乃「それで気づいたんです。平塚先生が私と八幡の関係を気にしていた理由が」

 

雪乃「……平塚先生、あなたは八幡を性的な目で見ていますね?」

 

平塚「どういう……ことだ……」

 

八幡(え、何言ってんの俺の彼女さんは? どうやったらそんな結論に到達すんの?)

 

平塚「私は比企谷を性的な目でみてなんかいないぞ」

 

八幡「……! お、おいちょっと待て雪乃」

 

八幡「雪乃がしばしば言っていた『平塚先生に襲われる』ってのは」

 

八幡「平塚先生が俺とズッコンバッコンしたいんだろう、ってことを言ってたのか?」

 

雪乃「……? ズッコンバッコンとはなんのこと?」

 

八幡(そういえばこの子めちゃピュアだったね、忘れてた)

 

八幡「セックスの擬音」

 

雪乃「そ、そうなの///」

 

雪乃「こほん。……そうよ、私は八幡の言うように考えていたわ」

 

八幡「俺はてっきりぶん殴られることかと思ったんだがな……」

 

雪乃「あなたの貞操を守るために仮病を使わせてしまったけれど、余計なお世話だったのかしら」

 

平塚「そうだ、余計なお世話だ」

 

八幡「いや、そうでもないだろ。ズル休みしたお陰で雪乃と一緒になれたんだからな」

 

雪乃「八幡……」

 

ぎゅうー

 

平塚「何やってんだおんどりゃあああああああぁああああぁ!!」

 

結衣「うわぁ……すっかりラブラブだね」

 

小町「お兄ちゃん、雪乃さんとはどこまで行ったの?」

 

八幡「Bまで」

 

小町「うそぉ!? てっきり小町はまだAだと思ったよ」

 

雪乃(Bまで? A? ……なんのことかしら?)

 

小町「ちなみにさ、キスでイかせるのもAだからね?」

 

八幡「Bだな」

 

結衣「小町ちゃん! えっちい話はやめようよ!」

 

八幡「ビッチが純情ぶってるんじゃねぇよ」

 

結衣「だからあたしはビッチじゃないし!」

 

雪乃「八幡、なでてちょうだい」

 

八幡「あいよ」ナデナデ

 

雪乃「ん、ふ……」ホワホワ

 

小町「ひゅーひゅー」

 

平塚「なんなの……この空間……」

 

――――――

――――

――

 

八幡「……どうして俺が正座させられているんだ」

 

雪乃「さあ……?」

 

八幡「雪乃も正座しろよ、共犯じゃないか俺たち」

 

雪乃「座らなくていいと言われたから」

 

平塚「比企谷」

 

八幡「……なんすか」

 

平塚「説明してもらうぞ、どうしてこうなったのか」

 

八幡「別にいいっすけど殴らないのが身のためですよ、雪乃が怒りますから」

 

平塚「」イラッ

 

結衣「せ、先生落ち着いて」

 

小町「で、お兄ちゃん! きっかけはなんだったの?」

 

八幡「……地震だ」

 

小町「地震?」

 

結衣「えぇ!? もしかして、アレが原因なの!?」

 

八幡「そういや由比ヶ浜、お前もいたな。ちょうどいいから説明してやれ」

 

結衣「う、うん……」

 

結衣「その、そのね、地震で転んだヒッキーとゆきのんがはずみでちゅーしたの」

 

小町「ほうほう」

 

平塚「偶然を装って唇を奪う……か。なかなか有用な策かもしれん」

 

八幡「それで、翌日にもう一回した」

 

平塚「!?」

 

小町「お兄ちゃんったらだいたーん♪」

 

八幡「待て小町、言い出したのは雪乃からだ」

 

結衣「うっそぉ!?」

 

雪乃「///」

 

平塚「なん……だと……」

 

八幡「あの時は『ファーストキスを返せ』なんていう口実で迫ってきたな」

 

八幡「返してやった後に凄く切なそうな表情をしてたのは黙っておいてやるか」

 

結衣「声に出てるよ! まるで黙れてないよヒッキー!」

 

雪乃「な、何言ってるの八幡!」カアァ

 

八幡「あーごめんついうっかり」

 

小町「うわー、棒読みだー」

 

八幡「そして二人してキスにハマってしまってな、由比ヶ浜がいない時は毎日してたと言っても過言じゃない」

 

結衣「……ゆきのん」

 

雪乃(視線が痛いわ……)

 

八幡「そして二日前、由比ヶ浜がいないのでその日もちゅっちゅしていたわけだが」

 

八幡「妙にヒートアップしちまって意識がなくなるまでし続けたみたいでな。実際その時の記憶がない」

 

雪乃「激しかったわ……」ポワーン

 

八幡「え、覚えてんの?」

 

雪乃「ええ、もちろん。押し倒されて徹底的に唇を弄ばれたわ」

 

結衣「」プシュー

 

小町「うわー」

 

平塚「お前たち学校内でそんなことをしてたのか……」プルプル

 

八幡(その反応をするのってちょっと遅くない?)

 

八幡「で、二人仲良く眠ってたところを平塚先生に見つかった」

 

八幡「ところで平塚先生。あの時出した問題の答え、わかりました?」

 

平塚「……今分かったよ、鱚だろ」

 

八幡「正解です。接吻と魚の鱚がかかっているそのままの簡単な問題でした」

 

八幡「えー、ちなみに平塚先生は一度マグロと誤答しています。何を考えていたんでしょうねぇ」

 

平塚「おのれ比企谷ァ!」グワッ

 

雪乃「先生?」ニコッ

 

平塚「ほ、本当に怒った……ぐぬぅ」

 

小町(お兄ちゃんちょっと調子乗ってる)

 

八幡「そして雪乃の提案でズル休みして今に至る、というわけだ」

 

八幡「説明終わったから足伸ばしていい? そろそろ限界迎えそうなんだけど」

 

雪乃「いいわよ八幡、あとでほぐしてあげる」

 

八幡「サンキュ」

 

平塚「おい比企谷! 誰が足を崩せと――」

 

雪乃「」ニコニコ

 

平塚「……なんでもない」

 

八幡「じゃあ後は質問タイムにするか、答えれる範囲で答えるぞ」

 

小町「はいっ!」

 

八幡「小町どうぞ」

 

小町「二人きりの時の雪乃さんはどんな感じですか?」

 

八幡「もうね、ヤバイよ。超くっついてくる」

 

八幡「事あるごとに抱きついてきたりキスしてくるんだぜ」

 

雪乃(事実だから何も言えないわ)///

 

八幡「口調はそんなに変わらないけど暴言はさっぱり言わなくなったな」

 

平塚「そうかそうか」イライラ

 

結衣「きゃ~、きゃ~///」

 

八幡「俺と居ると超幸せそうなんだよ、そういやこんな話が――」

 

雪乃「八幡っ! やめて、やめて恥ずかしい……」

 

八幡「というわけでやめとくか。次の質問どうぞー」

 

結衣「は、はいっ」

 

八幡「よし、カマトトビッチ」

 

結衣「ひどすぎっ!?」

 

結衣「ゆ、ゆきのんの服……なんだけどさ」

 

平塚「パンさんのシャツか……雪ノ下のイメージとはかけ離れたファンシーなものだが」

 

八幡「俺が買った」

 

小町「ほほう……」

 

雪乃「着替えを買いに行かせた時に見つけたらしくて……なんの断りもなく買ってきたわ」

 

八幡「勘で選んだらサイズがドンピシャでな、雪乃は泣いて喜んだ」

 

雪乃「~~っ!」ポカポカ

 

平塚「そうか」イライラ

 

八幡「感極まったのか抱きつかれたり買ってきた礼としてキスされたりしたぞ」

 

小町(さすがの小町もこれには唖然とします)

 

八幡「いいぞ雪乃。上手いじゃないか、肩叩き」

 

雪乃「なら次は頬でも叩いてあげましょうか」

 

八幡「すみませんでした」

 

雪乃「惚気はほどほどにしなさい、あそこでうずくまっている先生が見えないの?」

 

八幡「あ……」

 

平塚「」チーン

 

八幡「とは言うけどな、雪乃も結構遠慮なく惚気てるぞ」

 

平塚「」シクシク

 

結衣「あー! 先生が泣いてる!」

 

小町「平塚先生元気出してください、きっと先生にもいい相手がいますよ」

 

平塚「…た……って……」

 

平塚「私だって惚気けたいんだ! お前たちに旦那を自慢したいんだ!」

 

八幡「まだいないじゃないすか」

 

雪乃「やめなさい八幡」

 

平塚「それなのにお前たちときたらそんな私に幸せアピールしまくりやがって! ふざけるな!」

 

雪乃「平塚先生」

 

雪乃「……嘆いているだけでは何も変わりませんよ、私達を羨んでも先生を選んでくれる男性は現れません」

 

雪乃「私達が一緒になれたのは、お互いが歩み寄ったから……行動を起こしたからです」

 

雪乃「待っているだけで異性と結ばれるわけがありません。……先生なら行動が出来るはずです」

 

平塚「雪ノ下……」

 

平塚(……正論すぎる、ぐうの音も出ない)

 

平塚(しかし妙にムカつくな……彼氏持ちの余裕がにじみ出ていてイラッとする)

 

平塚「そうか、……そうだよな」

 

平塚「……帰るぞ」

 

結衣「え、もう帰るんですか?」

 

平塚「邪魔したな、ズル休みはもうするなよ」

 

雪乃「心得ています」

 

平塚「私は、私のやり方で……いい男を捕まえてみせる。やってみせるさ」スタスタ

 

八幡(なんか燃えてるよこの人)

 

結衣「お邪魔しましたー……」トテトテ

 

小町「お兄ちゃん、避妊はしっかりしてね」

 

雪乃「えっ///」

 

八幡「待て小町、まだしない。まだしないぞ」

 

小町「じゃ、先にお家帰ってるね」

 

八幡「おい小町、……もう一泊していい?」

 

小町「駄目だよお兄ちゃん! ズル休みしたバツとして今日と明日はは小町デーにするからね!」

 

八幡「なんだよ小町デーって……」

 

小町「ご飯用意しておくからちゃんと帰ってくるんだよー」トコトコ

 

八幡「お、おう」

 

雪乃「……」

 

八幡「……」

 

八幡「……行ったな」

 

雪乃「八幡、本当に帰るの?」

 

八幡「ああ。……小町も大事だからな」

 

雪乃「そうね、……そうよね。変なことを言ってごめんなさい」

 

八幡「まあ待て、すぐに帰るわけじゃない」

 

八幡「……晩飯の時間ギリギリまでいてやるよ」

 

雪乃「!」パアァ

 

八幡「じゃ、続きするか」ガバッ

 

雪乃「きゃっ! は、八幡……?」

 

八幡「邪魔が入ったろ? まだしたりないんじゃないかと思ってな……」

 

雪乃「う、うう」ゾクゥ

 

八幡「……くくっ」

 

平塚「由比ヶ浜ァ! ラーメン食いに行くぞ!」

 

結衣「えぇーっ!? 旦那さん作るために何かするんじゃなかったんですか!?」

 

平塚「それは明日からだ! 腹の虫とはらわたが煮えくり返っていて今はそれどころじゃない」

 

平塚「私は今すごくイライラしているのだよ、あのリア充ぼっち共のせいでなぁぁあ!!」

 

結衣「先生! 落ち着いて!」

 

平塚「こんな精神状態で男なんか探せるかバーロイ! 私の奢りだ、行くぞぉ!」グイッ

 

結衣「いたっ! 先生引っ張らないで!」

 

平塚「バーカ! バーカ! 比企谷のバーカ! 爆発しろ!!」ダダダダ

 

結衣「ぎゃああああああああ!!!」ズルズル

 

小町「大変だなー、結衣さん……」

 

八幡「……んじゃな」

 

雪乃「あの、えっと、……よかったらまた」

 

八幡「ああ、また来るよ」

 

八幡「……なんだよ、そんな顔すんじゃねぇよ。来るって言ってるだろ」

 

雪乃「だって、いつ来るかわからないんでしょう……?」

 

八幡「いつ来てもいいように準備しててくれ」

 

雪乃「…………」ウルッ

 

八幡「わかった、わかったよ。……次の土日に泊まりに来る。それでいいか?」

 

雪乃「……ありがとう」ニコッ

 

八幡「まぁ、平日だって部室で会えるだろ? 寂しくないよな」

 

雪乃「寂しいだなんて、失礼ね」

 

八幡「そういう顔してるぞ」

 

八幡「じゃ、……今度こそ――」

 

ちゅっ

 

雪乃「――」

 

八幡「ゆ、雪乃……?」

 

雪乃「………………待ってる、から」

 

八幡「……ああ。待っててくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

雪乃「比企谷君とのキスにはまってしまったわ」

http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1388635538/