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シンジ「アスカにもしものことがあったら」 アスカ「ぜんっぜんへーきよ」【エヴァss/アニメss】 

 

シンジ「アスカ、健康診断の結果、どうだった?」 


アスカ「今日はまだ答えが出ないって言われたわ。精密検査するんだって」 

シンジ「え? そうなの? 僕は問題ないって通知だったけど・・」 

アスカ「どーせ、あんたのことなんてどうでもいいから、テキトーにやったんじゃないの?」 

シンジ「えぇー? それじゃ、健康診断の意味ないじゃないか。平気だとおもうけどなぁ・・」 

アスカ「なにそれ。それじゃ、あたしになんか問題があるって言いたいわけ!? バカシンジ!」 

シンジ「ちっ、ちがうよ! そういう意味じゃなくて・・・」モゴモゴ 

アスカ「じゃあどういう意味よ!」 

シンジ「し、心配してるだけだよ! アスカにもしものことがあったら、僕は・・」ショボン 

アスカ「ちょ、ちょっと、なに、いきなり・・」オロオロ 

シンジ「アスカは、大切なとm 

ミサト「また夫婦喧嘩~? 仲がいいことでっ!」 

シンジ・アスカ「ミサト(さん)!」 

アスカ「だ、だれが夫婦よ!(つかアンタ今友達とかいうつもりだったんじゃないの!?)」 

シンジ「そうですよ! いきなり何言うんですか!(アスカ、その話はもういいじゃない)」 

ミサト「まぁまぁ。そうやって一緒に怒ってると、否定してる意味ないわよん? 

アスカ、えっと、ちょっちいいかしら?」 

アスカ「なによ?」 

ミサト「んー、まあ、その、ちょっち、話があるから、私の部屋まできてちょーだい」 

アスカ「はぁ? あたしこれから帰るつもりなんだけど。今じゃダメなの?」 

ミサト「んー、だから、ここじゃ話せないって言ってるじゃない。女の子同士の話なのよ」 

アスカ「はぁ? 女の子ぉ?」 

シンジ「ミサトさん、それはさすがに・・あ、でも最近はアラサーも女子っていうか・・」 

ミサト「シンジ君、その発言は全アラサー女子を敵に回すわよ。あなたはもう何もしないで」 

シンジ「は、はい・・っ・・(なんだろういきなり背筋がゾクゾクした!)」 

アスカ「わーったわよ、すぐに済むんでしょうね?」 

ミサト「すぐよ、すぐ。シンジ君、ちょーっちアスカ借りるから、寂しいと思うけどまっててネ♪」 

アスカ「それはあたしのセリフでしょ!」 

シンジ「え?」 

アスカ「あっ」 

ミサト「ニヤニヤ」 

アスカ「ち、ちが、シンジ、いいから、待ってなさいよね! ほらミサトすぐいく!」 

ミサト「ちょ、引っ張らないでよアスカぁ~」 

シンジ「・・なんだったんだろう・・?」 

ミサト「おまたしっ」 

リツコ「連れてきたわね」 

アスカ「なんなのよもう」プスー 

リツコ「いきなりお怒りじゃない。なにしたのよ?」 

ミサト「愛し合う男女を引き裂いちゃったもんだから、怒ってるのよ」 

リツコ「? ああ、シンジ君?」 

アスカ「いい加減にしないと、本気で怒るわよ」 

ミサト「じょ、じょーだんじゃないのぉ。ゴホン。まあ、こんな冗談を言ってないと、ちょっと言いづらいのよ」 

アスカ「いきなり真面目な顔してなに? 似合わないわよ」 

ミサト「ひっどいいいぐさねぇ! ま、詳しくは、リツコから話すわ」 

リツコ「医療部から、アスカに通常とは異なる所見が見られているという報告が上がっているわ。 重ね重ねになるけど、あなたが健康診断で話した内容をもう一度確認させてもらうわね」 

アスカ「どーぞ。手短にね」 

リツコ「わかってるわ。・・あなた、最近体調が芳しくないときがあると報告しているわね」 

アスカ「えぇ、そうよ。・・なんだか、ちょっと、前とは違う感じがするんだけど」 

リツコ「具体的には、胸に痛みがあるってことよね? 間違いない?」 

アスカ「そうね」 

リツコ「息苦しかったり、動悸がするときがたまにある」 

アスカ「・・まあ、そうよ」 

リツコ「どんな時に多いの?」 

アスカ「家にいるときが、多いかな」 

リツコ「詳しく教えてもらえるかしら?」 

アスカ「・・家に、一人でいるときよ。それがなに?」 

リツコ「・・なるほどね・・」 

アスカ「な、なんなのよ? はっきり言ってよ。不安になるでしょ」 

リツコ「・・これは真面目な質問だから、あなたをちゃかしていうわけじゃないの。それを踏まえて答えて」 

アスカ「なによ?」 

リツコ「シンジ君と一緒にいる時に、なったことはある?」 

アスカ「・・多分ないわよ」 

リツコ「やっぱり、ね」フム・・ 

リツコ「アスカ、あなた、最近EVAとのシンクロ、難儀する時がない?」 

アスカ「!!」 

ミサト「・・・図星、って顔ね」 

アスカ「な、なんのこと? あたしは別に・・」 

リツコ「・・・・・・・・」 

アスカ「黙ってないで、なんか言ってよ! ここまで聞かれて、結果はまた後日、ってのはやめてよね」 

リツコ「アスカに隠してもしょうがないからズバリ言うわ。あなた、A10神経系に異常が出ています」 

アスカ「・・・・え・・・・?」 

リツコ「A10神経は、人の喜びを司る神経。EVAのシンクロにも使われているのは知ってるわよね?」 

アスカ「うん・・」 

リツコ「その神経に、僅かな異常が見られるの。通常であれば、一人でいることで寂しいと感じても、体に不調は現れない。 けれど、今はA10神経に異常が発生している。それで、脳が不安を曲解して身体的異常が発生しているのよ」 

アスカ「・・そ・・んなこと・・」 

ミサト「つまり、どういうこと?」 

リツコ「A10神経は、喜びによって活性化する。今のアスカの場合、A10神経が活性化している状態では、なんら問題がないわ。 ただし、非活性化状態の時に限ってだけ、体に異常が出てしまうようになっているのよ」 

ミサト「シンジ君となんの関係があるのよ?」 

リツコ「・・察してあげなさいよ」 

ミサト「えぇっと・・? 要するに、シンジ君が一緒だとアスカは嬉しいから、元気ってこと?」 

リツコ「まぁ、そういうことなんじゃないかしら。これからは、なるべく一緒にいるようにして頂戴」 

アスカ「・・・ば、ばっかじゃないの!? そんなことあるわけ・・な・・い・・・」 

ミサト「アスカ! どうしたの? 苦しいの?」 

アスカ「は・・ぁっ・・・くっ・・なにこれ・・・今まで・・こんな・・・っ」 

リツコ「アスカ、この錠剤を飲んで。少しは気が楽になるわ」 

アスカ「ングッ・・・は。ぁ、つ・・・うう・・」 

ミサト「アスカ・・・」 

リツコ「麻薬に似た成分が入っていて、強制的に少しだけA10神経を活性化させる効果があるわ。 睡眠導入効果もあるから」 


アスカ「・・きゅ・・うに・・眠気・・が・・」 

ミサト「すごい即効性ね。・・・リツコ、アスカは・・・」 

リツコ「脳に物理的に何かが発生してるわけじゃないのは確かよ。 おそらく、心の問題。・・だから、しばらくは見守ってあげるしかないんじゃないかしら・・」 

ミサト「・・なるべく、アスカとシンジ君を一緒にしてあげれば、アスカはつらい目に会わないで済むのかしら」 

リツコ「そうね。本人は否定するでしょうけど・・事実、アスカがシンクロテストで好成績を出している時は、 必ずシンジ君と一緒に参加しているわ。 シンジ君と別々に参加したときは、A10神経接続すらスムーズにいかない時がある」 

ミサト「大丈夫なの?」 

リツコ「医療部からの報告では、ふとした拍子で治る可能性もあるし・・」 

ミサト「まったく治らない可能性もある、ってことか・・・」 

リツコ「・・・・」 

シンジ「扉が開いてたから、つい盗み聞きしちゃった・・・ ・・あんまりよく聞こえなかったけど・・・アスカが、僕といないとつらい思いをしちゃうってことなのかな・・? だったら、一緒にいてあげなくちゃ・・・!!」 


 ミサト家 アスカの部屋 

アスカ「・・ン・・・」 

シンジ「アスカ、だいじょうぶ?」 

アスカ「・・シン・・・ジ? まぶっ・・し・・」 

シンジ「よかった。起きたんだね」 

アスカ「えっと・・?」 

シンジ「アスカの部屋だよ。なんか、リツコさんとの問診の途中で寝ちゃったとかで、ミサトさんが一緒に送ってくれたんだ」 

アスカ「・・そう・・やっと、目が慣れてきたわ・・」 

シンジ「はい、お水」 

アスカ「・・・ん・・気が利くじゃない・・・・って?」 

シンジ「どうしたの?」 

アスカ「あんた、なんでここにいるわけ? ここ、あたしの部屋でしょーが!」 

シンジ「め、目覚まし時計は投げちゃダメだ! ミサトさんからアスカの体調がよくないからそばにいてくれっていわれたんだよ!」 

アスカ「ホントにぃ~!? あたしの寝こみを襲おうとか考えてたんじゃないでしょうね! ケガラワシイ!」 

シンジ「そんなことするわけないじゃないか・・ほら、水零しちゃうから、飲んで」 

アスカ「ちっ・・コクコク・・ふぅ・・」 

シンジ「元気そうでよかったよ」 

アスカ「全然へーきよ。・・ミサトは?」 

シンジ「なんか、また急に仕事が入ったとかで・・晩御飯を食べてすぐNERVに戻っちゃった」 

アスカ「・・そう。今、何時?」 

シンジ「夜の9時だよ」 

アスカ「だいぶ寝てたみたいね・・・」 

シンジ「うん。ちょっと、心配したよ」 

アスカ「ちょっとだけぇ!?」 

シンジ「と、とっても心配したよ!」 

アスカ「フフン、どーだか・・」 

シンジ「(嬉しそうだ・・)」 

アスカ「晩御飯、食べた?」 

シンジ「ううん。まだ」 

アスカ「ミサトと一緒に食べなかったの?」 

シンジ「アスカと一緒に食べようと思って、まだ食べてないんだ」 

アスカ「!? あ、アンタバカぁ? 別に、一緒に食べなくちゃいけない決まりなんてないでしょ!」 

シンジ「でも、一緒に食べたほうが嬉しいし、楽しいじゃないか」 

アスカ「それは・・その、ソウカモ・・って、別に、一食ぐらい一緒じゃなくても全然平気よ!」 

シンジ「そうだけどさ・・一度そうしようって思ったら、なんか途中で食べちゃうのもったいなくて。 せっかくだから、一緒に食べようよ」 


アスカ「あんたがそこまでいうなら、別にいいわよ・・」 

シンジ「(照れてるアスカってかわいいなあ・・)」 

アスカ「なに顔じろじろ見てんのよ? なんかついてる?」 

シンジ「う、ううん! 大丈夫だよ。それじゃ、ご飯温めてくるから!」 

アスカ「はいはい。着替えてから行くから、今度は勝手に入るんじゃないわよ」 

シンジ「わかってるよ、アスカ」 
 パタン 
アスカ「・・もう・・ばかしんじ・・・」ニコ 


 ミサト家 ダイニング 


シンジ・アスカ「ごちそうさまでした」 

シンジ「美味しかった?」 

アスカ「まぁまぁね(なんで、シンジのご飯ってこんなに美味しいの・・?)」 


シンジ「そっか。今度は、アスカの好きなもの作ってあげるね。なにがいい?」 

アスカ「・・アンタ、どっかに頭でもぶつけたの? 昨日と態度が違いすぎない?」 

シンジ「え? そ、そうかな・・?」 

アスカ「優しすぎるっていうか、なんか気を使ってるっていうか・・」 

シンジ「そ、その・・アスカ、体具合悪いのかなって・・思って・・ほら、健康診断の結果も・・」 

アスカ「なによ、病人扱いで優しくしたってわけ?」 

シンジ「ち、違うよ・・その、大丈夫だった? ミサトさんに連れてかれてたけど・・」 

アスカ「ぜんっぜんへーきよ。なんら問題ないわ」 

シンジ「そう・・(僕には隠すつもりなんだ・・)」 

アスカ「(シンジと一緒にいないとダメな病気だなんて、言えるわけないでしょうが・・!)」 

シンジ「お風呂、入れるよね?」 

アスカ「だから、病気とかじゃないってば」 

シンジ「そっか。すぐ、準備するから」 

アスカ「40秒で支度しなさいよ!」 

シンジ「む、無茶だ~!」 

アスカ「(ドタバタ駆けていったわね・・) ふぅ・・とりあえず・・シンジといれば症状が出ないみたいね。 しばらくは、なるべく一緒に行動するしかないか・・・ って、なんで、ちょっと嬉しがってるのよ、アタシ・・?」 

 朝 教室 

トウジ「お、お二人さーん、今日も仲良く夫婦でご出勤やな?」 

ケンスケ「おはよう、二人とも」 

ヒカリ「おはよう!」 

レイ「おはよう、碇君、2号機パイロット」 

シンジ・アスカ「おはよー、って、だれが夫婦(だ)よ!?」 

トウジ「めっちゃハモりながら言われても、全然説得力ないで」ニシシ 

ケンスケ「トウジ、それはわかっててもいっちゃだめだよ。生暖かく見守ってあげないと!」 

アスカ「あんたら、一回実力行使してやらないと、わからないのかしらね・・?」ボキボキ 

ヒカリ「ア、アスカ、落ち着いて!」 

レイ「2号機パイロット。あなた、そう言いながら、顔がとてもうれしそうだわ」 

アスカ「なっ!? あんた、何言ってんのよ! そんなわけないでしょ! だ、だれがこんなヤツと・・!」 

 キーンコーンカーンコン・・ 

シンジ「アスカ、もうすぐHR始まっちゃうよ。席に着かないと」 

アスカ「ちっ、命拾いしたわね・・・」 


 昼休み 屋上 

トウジ「ひゅー、今朝はホンマに危なかったわ・・シンジ、すまんな」 

シンジ「トウジ、ほどほどにしないと。そのうちホントにアスカに鉄拳制裁を食らっても知らないよ」 

トウジ「お前らがはっきりせんからやろ・・」 

ケンスケ「そうだぜシンジ~。実際のところ、どうなんだよ?」 

シンジ「どうって?」 

トウジ「女の子と共同生活!」 

ケンスケ「発生するラッキースケベ!」 

トウジ・ケンスケ「「芽生える二人の愛情!」」 

シンジ「????」 

トウジ「ホンマ、お前はニブチンやな。だから、好きなんか、って聞いとるんやなんか」 

シンジ「好き、って、僕が!? アスカを!?」 

ケンスケ「そりゃそうだろ。別に、嫌いなわけじゃないんだろ?」 

シンジ「そりゃあ、もちろん、嫌いなわけないよ」 

トウジ「その時点で凄いわ。あんな暴力暴言ワガママ女、どこがええんや? そこがようわからん」 

シンジ「あれは、ただテレてるだけだよ。アスカは他人に優しくするのに慣れてないだけなんだ」 

ケンスケ「おぉー・・まるで彼氏のような発言! 実はもう付き合ってるんじゃないのかぁー?」 

シンジ「違うって・・僕とアスカはそういうんじゃなくて・・なんていうかその・・家族? みたいな・・」 

トウジ「家族、やと・・」 

ケンスケ「付き合うを通り越して結婚したか。まさに夫婦じゃないか」 

シンジ「だーかーらー・・そういうんじゃないんだってば! トウジにだって妹さんがいるでしょ? 僕とアスカは、兄弟みたいな関係だってことだよ」 

トウジ「そうは見えへんけどなぁ・・」 

ケンスケ「まぁ、シンジがそう思ってるならそれでいいんだけどさ。 
向こうは学園の大人気美少女なんだぜ。シンジがはっきりしないと、他のやつにとられちゃうかもよ?」 

シンジ「えっ? それって・・」 

トウジ「シンジ、ごめんね・・アタシ、この人と付き合うことにしたの・・・ヨヨヨ」 

ケンスケ「悪いな、碇・・・お前がはっきりしなくて助かったぜ。アスカは俺が幸せにすr」 
シンジ「やめてよ!」 

トウジ「わわ、じょ、冗談やないか!」 

ケンスケ「そ、そうだぜシンジ。そんな大声あげなくても・・」 

シンジ「ご、ごめん。でも・・(アスカが誰かと一緒にいるのを想像したら、すっごいムカッとした・・なんだろう・・)」 

トウジ「まぁ、ワシはあまりオススメせんけど、後悔せんようにな」 

ケンスケ「おぉー、さすが、彼女がいる人は違うなぁ」 

トウジ「だ、だれが彼女や! ドアホ! いいんちょはそういうんとはちゃうわ!」 

ケンスケ「誰も委員長なんて言ってないだろ?」 

トウジ「うぐっ・・・ぐぬぬ・・・」 

シンジ「(・・アスカが、他の人と付き合ったり・・なんて・・そんな・・)」 


 昼休み 教室 

ヒカリ「アスカ、なんか最近具合わるそうね? だいじょうぶ?」 

アスカ「へ? あ、へ、平気よ!(シンジが教室にいないだけで、少し苦しく感じるわ・・)」 

ヒカリ「授業中は平気そうなのに・・お昼休みだけ、なんか辛そう。なにかあったの?」 

アスカ「だから、平気だってば。ヒカリは心配性ねぇ」 

ヒカリ「・・友達のことだもの。心配するよ。・・なにかあったなら、いつでも言ってね!」ニコ 

アスカ「ありがと、ヒカリ。相談したくなったら、連絡させてもらうわね」 

ヒカリ「うん。望むところよ!」 

アスカ「まーったく、彼氏できてから、ずいぶん余裕があるわねぇー?」 

ヒカリ「かっ、れし、って、なんのこと?」オロオロ 

アスカ「今更隠さなくたっていいでしょ。・・ね、ちょっと聞きたいんだけど」 

ヒカリ「な、なに?」 

アスカ「普段は二人でどういうことをしているの?」 

ヒカリ「ど、どういうことって?」 

アスカ「ほら、デートとか、どこいってるのかなって・・」 

ヒカリ「え、あ、そういうこと?」 

アスカ「どういうことだと思ってたのよ・・」 

ヒカリ「う、ううん! なんでもない! そ、そうね・・たまーに、学校帰りにお散歩したりとか・・」 

アスカ「ふーん・・」 

ヒカリ「お休みの日も、一緒にお買いものしたりとか・・」 

アスカ「買い物かぁ。あとは?」 

ヒカリ「え、映画みたり、とか?」 

アスカ「ふんふん」 

ヒカリ「あとは・・その・・なんていうか・・一緒にいれば、楽しいから・・別に、なんでも・・」 

アスカ「あぁー、はいはい、聞いた私がバカだったわ。オノロケごちそーさま」 

ヒカリ「アスカが言えって言ったんじゃない!」 


アスカ「ごめんごめん。・・ふーん。手、つないだり?」 

ヒカリ「」コクコク 

アスカ「キス、しちゃったり?」 

ヒカリ「えっ、その、それは」コク 

アスカ「あー、もう、なんか自分で聞いといてなんだけど、ちょっとイライラしてきたわ」 

ヒカリ「ひどぉ・・でも、アスカだって、碇君と・・」 

アスカ「なんでそこでシンジの話になるのよ!」 

ヒカリ「だって、凄く仲良さそうで、ちょっと羨ましいぐらいだよ。 
私たちなんて、まだ全然、なんか、何話していいのかわからなくて、無言だったり・・・ 無言じゃ悪いなと思って、お互い無理やり話をするんだけど、会話が続かなかったり・・ アスカと碇くんって、いつも楽しそうにお話してるから、うらやましいなって思ってるの」 

アスカ「はぁ~? あたしとシンジが楽しそうに話してる? まっさかぁ・・」 

ヒカリ「・・・・アスカ、聞いてみたいことがあったんだけど・・」 

アスカ「なによ?」 

ヒカリ「アスカって、碇君のこと、ホントのところはどう思ってるの? 誰にも言わないから、教えて?」 

アスカ「・・そーねぇ。まあ、便利な同居人、ってところかしらね。料理もそこそこうまいし・・ 暇なときは遊び相手になるし?」 

ヒカリ「好き、じゃないの?」 

アスカ「ば、バカ言わないでよ! そんなんじゃないわよ! シンジのことなんか・・っ・・」 

ヒカリ「アスカ?」 

アスカ「(なにこれ・・ちょっと・・苦しくなってきた・・・)」 

ヒカリ「アスカ、だいじょうぶ!?」 

シンジ「アスカ!」 

アスカ「っ」ビクッ 

シンジ「アスカ、大丈夫? 具合、悪くない?」 

アスカ「なんでアタシが具合悪くなるのよ!」 

ヒカリ「(あれ? 急に元気になった・・?)」 

シンジ「その・・なんか、アスカが具合悪くなったんじゃないかって、なんとなく、思って・・」 

アスカ「とんだ見当違いね。あたしのどこが具合悪そうに見えるわけ? ぜーんぜん、ピンピンしてるでしょ」 

シンジ「そっか・・よかった。僕の勘違いで」 

アスカ「・・アタシが具合悪くなってそうな気がしたからって、飛んできたわけ? 態々走って?」 

シンジ「う、うん。ごめんね。食事の邪魔しちゃったかも」 

アスカ「ホントよ。・・でもまぁ、せっかくだから、そこにいなさいよ」 

シンジ「うん、そうするね。委員長、邪魔じゃないかな?」 

ヒカリ「うん、私は、平気だけど・・・アスカ、さっきちょっと具合悪s」 

アスカ「シンジ! 今日のお弁当、ちょっと味付けがこすぎるんじゃない!?」 

シンジ「え、そうかなぁ? いつも通りだよ」 

アスカ「ちゃんと味見してんのぉー?」 

シンジ「してるよー」 

ヒカリ「(アスカ、何か隠してるのかしら・・?)」 

 放課後 教室 

レイ「碇君。今日は、NERVで定期連絡がある日よ」 

シンジ「あ、そうだったっけ? ありがとう、綾波。教えてくれて」 

レイ「いえ。忘れないように伝えてくれって、言われていたから。それじゃ」 

シンジ「綾波、せっかくだから一緒に・・」 

アスカ「シンジ、なにやってんのよ? 今日はNERVの日でしょ?」 

シンジ「うん。だから、綾波も一緒に行こうと思って、さそってたんだ」 

アスカ「ふーん・・」 

レイ「・・どうかしたの? 2号機パイロット」 

アスカ「別に! エコヒイキと一緒に行きたいなら、勝手にすれば!」 

シンジ「あ、アスカ? どういうこと?」 

アスカ「・・・っ・・・(また・・・なんで・・?)」 

シンジ「アスカ! どうしたの?」 

アスカ「なんっ、でも、ない!(シンジと一緒にいるのに苦しくなってるじゃないの・・!)」 

シンジ「なんでもなくないよ! 苦しそう・・大丈夫? どっか辛い?」 

アスカ「ほっ、とい、てよ! もう、先、いくから!(苦しい・・・胸が痛いよ・・・)」ダッ 

シンジ「アスカ! 綾波、ごめん、アスカ具合悪いみたいだから!」 

レイ「私は別にかまわないわ」 

 ガラッ 

シンジ「もういない・・・どこいっちゃったんだよ・・アスカ・・・!」 


 NERV本部 ミサトの部屋 

リツコ「シンジ君と一緒にいても、体調が悪くなった?」 

アスカ「・・そうよ・・一緒にいれば平気だっていうから、無理して一緒にいたっていうのに! 大損じゃないの! ・・っ・・・」 

リツコ「ほら、これ、睡眠導入効果がないものも作っておいたわ。何錠か渡しておくから、具合が悪くなったらすぐ飲むのよ」 

アスカ「・・ングッ・・ふぅ・・・もう・・・なんなのよ、この体・・・!」 

ミサト「リツコ、思い当たる節はある?」 

リツコ「・・まさか、ここまでとはね・・・」 

ミサト「どういうことよ?」 

リツコ「アスカがA10神経系に異常をきたしているのは事実よ。ただし、具合が悪い時にもう一つ欠乏しているものがあることがわかったわ」 

アスカ「・・なによそれ・・」 

リツコ「シンジルフィン」 

アスカ「はぁ?」 

ミサト「なにそれ・・? シンジルフィン?」 

リツコ「そうよ。シンジ君と一緒にいることで、アスカの脳内で分泌されている成分のこと。 A10神経に分泌されている神経伝達物質の一つよ」 

アスカ「・・あほらし・・・」 

リツコ「アスカ。私は大真面目で言っているわ」 

アスカ「・・はん、で、それがどうだっていうのよ?」 

リツコ「あなたの意志はともかくとして、あなたの体は、シンジ君からの愛情を受けていると感じれば活性化し、 シンジ君の愛情が他人に注がれていると感じたり、シンジ君から嫌われていると感じると痛みを感じるの」 

アスカ「はぁぁ!? それじゃまるで、あたしが・・・!」 

リツコ「だから、あなたの意志とは無関係に、と言っているでしょ。 シンジルフィンは言ってみればアスカが感じる、シンジ君からの愛情よ。 そばにいて安心すれば、消費量と供給量が一致し、体が不調をきたすことはない。 より愛情を注がれていると感じれば活性化し、あなたの体の調子はよくなるでしょう。 逆に、シンジ君が他人に好意を持っていると感じたり、自分のことを嫌いなんじゃないかと思えば・・」 


ミサト「体調が悪化する?」 

リツコ「その通り。今日も、なにかあったんじゃないの?」 

アスカ「あ、あるわけ、ないでしょ!」 

ミサト「アスカ。あなたのための思って聞いているの。アスカが苦しんでいるのを、助けたいのよ」 

アスカ「・・・ちょっと、考えさせてよ。・・ぜんっぜん、わかんない・・・」 

リツコ「・・そうね、確かに、あなたには考える時間が必要かもしれないわね・・。 

好きでもない相手から愛されないと普通に生きていけないなんて・・」 

アスカ「・・・・とない」 

リツコ「え?」 

アスカ「・・なんでもない・・」 

リツコ「調査によると、あなたのシンジルフィンの蓄積量は最大で1000。 
1時間一緒にいないと、10減るイメージよ。 睡眠時には変動がないから、大体1日シンジ君といないと160ずつ減るイメージね」 

アスカ「・・どうすると、増えるわけ?」 

リツコ「一緒にいれば基本的に変動はしないわ。 
あとは、あなたがどう感じるかという問題であって、愛されていると強く感じれば、 いきなり1000まで充填される場合もある。 もちろん、逆もまた然りよ。 
シンジ君から嫌われていると感じたり、シンジ君のことを嫌おうとすると、 急激な降下が発生するわ。 
あなたの場合、急激な降下が発生した場合に体に変調をきたしているようね」 

アスカ「冗談・・でしょ・・」 

リツコ「事実よ」 

ミサト「アスカ・・今日の定期連絡会は休んでいいわ」 

アスカ「この状態であたしが休んだら、よけいシンジが心配するでしょ! 普通に出るわよ」 

ミサト「無理しちゃだめよ?」 

アスカ「・・・・無理なんて、してないわ。なにか追加でわかったら、教えて。 
あと、このことは、絶対に、絶対の絶対に、シンジには言わないで」 

ミサト「約束するわ」 

リツコ「あなたがそう望むのであれば、仕方がないわね。 
ただ、もう、あなたはシンジ君の愛情なしでは生きていけないの。 それを、忘れないで」 

アスカ「うるっさいわね! そんなこと・・・いきなり言われても、わかんないわよ・・!」 


 NERV本部 作戦部 会議室 

ミサト「以上で定例報告は終わりです。何かある方はいますか? ・・・・では、解散」 

シンジ「・・・・・」 

ミサト「んーっ! 終わった終わったぁ・・っと」 

シンジ「・・・ミサトさん、ちょっと、いいですか」 

ミサト「シンジ君? どうしたの?」 

シンジ「・・その、二人だけで、相談があるんです」 

ミサト「なぁにぃ? 二人だけなんて、おねーさんドキドキしちゃうわぁー」 

シンジ「真面目な話なんです!」 

ミサト「! 茶化してごめんね。後で私の部屋に来てもらえる?」 

シンジ「はい・・・」 

アスカ「・・なにをコソコソやってんのよ、あの二人は・・・っ・・・・ング・・ぷはぁ・・ (こんなことでシンジルフィンが減るわけ・・・!? 
この調子じゃ、すぐになくなっちゃいそうね・・・)」 

 NERV本部 ミサトの部屋 

 コンコン 

ミサト「どうぞぉ~」 

シンジ「失礼します」 

ミサト「ちょっち汚れててごめんね」 

シンジ「・・ちょっち・・? い、いやまあ、それはいいんです。ミサトさん」 

ミサト「どしたのー? なんか飲む? ・・あれ、このウーロン茶いつのだっけ・・」 

シンジ「だ、大丈夫です。・・その、アスカの件で・・」 

ミサト「!・・・アスカが、どうかした?」 

シンジ「ごめんなさい。その・・聞いてしまったんです。アスカの体のこと」 

ミサト「・・・・・・」 

シンジ「アスカの具合が悪くて、その・・僕が一緒にいないと、体調が悪くなるってこと」 

ミサト「なら、一緒にいてあげて。 
ただ、私はあなた達に、無理してお互いを意識してほしいとは思ってないわ。 
無理に好きでもない相手から好かれようとすることも、無理に好きでもない相手に愛情を示すことも・・ 生きるためだとはいえ、そんなことは強要されたくないもんね」 

シンジ「ミサトさん・・」 

ミサト「シンジ君は優しいから、アスカのためを思って、無理にあの子に優しくしようとか考えているんじゃない? それって、とても優しくて、とても残酷なことだわ。 

アスカのプライドの高さはシンジ君だって知っているでしょう? あの子が、自分のためだとはいえ、嘘をついてまであなたに愛情を注がれていると知ったら、どう思うかしら?」 

シンジ「ミサトさん、僕は・・・僕は、無理なんて、していません!」 

ミサト「じゃあ、あなたは、アスカのことを・・異性として、好きなの?」 

シンジ「・・まだ、わかりません。 でも、今日、思ったんです。 アスカがほかの人と一緒にいるのはいやだって・・ もし、僕以外の人と、手をつないだり、楽しく過ごしていたら、僕はきっと・・哀しいって」 

ミサト「その言葉を聞いたら、アスカ、元気になるかもね?」 

シンジ「・・そうなのかな・・ 自信ないですよ。 アスカはかわいいし、頭もいいし、元気で、ちょっとイバってるけど本当はとっても優しくて・・」 

ミサト「ふふ」 

シンジ「え? な、なにか、変なこと言いました?」 

ミサト「ううん。かわいいな、って思っただけ」 

シンジ「は、はあ!?」 

ミサト「この調子なら、シンジ君がいつも通りアスカと接するだけで、アスカはどんどん元気になれそうね」 

シンジ「でも、今日、具合が悪そうでした・・・」 

ミサト「そうだったの・・なにか、あったの?」 

シンジ「綾波がNERVの連絡会があるって教えてくれたから、一緒にいこうって誘ったんです。 そしたらアスカが怒りだして・・・」 


ミサト「シンジ君」 

シンジ「はい?」 

ミサト「どうして、アスカが怒ったかわかる?」 

シンジ「・・綾波のことが、あまり好きじゃないから・・?」 

ミサト「ちっがうわよ。まあ、ある側面ではそれもあっているのかもしれないけど・・」 

シンジ「じゃあ・・その、やきもち・・やいた、とか。ま、まさか、そんなことないですよね。 
アスカが綾波にやきもちをやくなんて・・そんな・・・」 

ミサト「・・ホントにこの子達は・・・」ハァ 

シンジ「ミサトさん、僕は本気で悩んでいるんです!」 

ミサト「ごみんごみん。・・シンジ君。これは、私からのお願いなんだけど」 

シンジ「なんですか?」 

ミサト「もし、アスカがとっても苦しそうにしていたら・・助けてあげてほしいの」 

シンジ「あたりまえじゃないですか! 僕は、そのためにミサトさんに・・」 

ミサト「キスしてあげてほしいの」 

シンジ「・・・・へ?」 

ミサト「抱きしめて、キスしてあげて」 

シンジ「き、き、キス!? な、な、なんでですか!?」 

ミサト「リツコによると、身体の触れ合いや、キスのような愛情を感じやすい行為によって、アスカは元気を取り戻すそうよ」 

シンジ「そ。そうなん、ですか・・」 

ミサト「まぁ、アスカがよっぽど具合悪そうにしている時だけでいいけどね。 さすがの私も、普段からチュッチュイチャイチャされたら、うちに帰りづらいしね?」 

シンジ「で、できませんよ! そんなこと!」 

ミサト「いざって時は期待してるわよ、シンジ君♪」 

シンジ「・・・が、頑張ります・・・けど・・・そんな・・・」ブツブツ 


 NERV本部 女子トイレ 

アスカ「・・・・なんなのよもう・・・いたた・・ (変なこと色々考えたせいで・・・大分蓄積が減ってる気がする・・ ここまで症状が出るとなると、シンジルフィンの話、あながちただの冗談じゃないみたいね・・)」 

レイ「どうしたの、2号機パイロット」 

アスカ「・・アタシ今、機嫌悪いわよ」 

レイ「碇君が心配していたわ」 

アスカ「バカシンジに心配されるようじゃ、終わりね」 

レイ「具合が、悪いの? 医療室へ行った方がいいわ」 

アスカ「シンジのせいよ」 

レイ「碇君の・・・せい?」 

アスカ「笑っちゃうでしょ。アタシ、シンジがいないと生きていけないんだって。 シンジが、いないと、生きて・・いけないんだって・・」 

レイ「・・・2号機パイロット・・・?」 

アスカ「・・アタシ・・どうしたらいいの・・・」 

レイ「・・・」ナデナデ 

アスカ「そんなこと言われたって・・わかんないわよぉ・・・」 

レイ「大丈夫。あなたは碇君にとっても大切なひと。 それは、私にとっても大切ということと一緒。 私にできることなら何でもするわ」 

アスカ「・・エコヒイキ・・・」 

レイ「今は、泣いていいわ」 

アスカ「な、泣くわけないでしょ! あんたなんかの前で!」 

レイ「じゃあ、話だけでも聞かせて」 

アスカ「ど、どうしても、聞きたいわけ?」 

レイ「そうね」 

アスカ「じゃ、じゃぁ・・・話すけど・・場所、変えましょ」 

レイ「わかったわ」 


 NERV本部 パイロット休憩室 

レイ「そういうことだったの」 

アスカ「・・もう、わけわかんなくて・・・」 

レイ「あなたは、碇君のことをどう思っているの?」 

アスカ「・・あたしは、よく、わからなくて・・でも、シンジを失うのは嫌なの・・ そばにいてほしいし・・・ほかの人と仲良くしてほしくない・・・」 

レイ「そう・・つらかったわね」 

アスカ「・・うん・・・って、アタシ、なんでアンタなんかにこんなこと話してんだろね・・ もともと、どっちかっていえば、好きじゃなかったのに・・」 

レイ「誰にだって、誰かに話を聞いてほしいときはあるわ」 

アスカ「・・・あんた、意外と、優しいのね・・」 

レイ「あなたが碇君にとって大切な人だから」 

アスカ「あ、っそ。・・でも、嬉しい。ありがとう・・って、え?」 

レイ「なに」 

アスカ「アタシが、シンジにとって大切って、どういう意味?」 

レイ「そのままの意味よ」 

アスカ「す、好きってこと?」 

レイ「わからないわ」 

アスカ「あ、そ・・」ガックシ 

レイ「ただ、あなたのことを気にかけて、今の碇君は行動している。 あなたが心配だから、あなたを元気づけるために・・・」 

アスカ「そんなこと、なんでわかるのよ?」 

レイ「碇君に聞かれたの。あなたを元気づけるためにどうしたらいいかって。結構前だけれど他の人にも相談してるって言ってたわ。あなたのためになんでもしてあげたいんだって」 

アスカ「・・あの、バカ・・・」 

レイ「あなたは、碇君のことが好きなの?」 

アスカ「・・どう思う?」 

レイ「私に聞かれても困るわ。ただ、私は、碇君といるとぽかぽかする。あなたは、どうなの」 

アスカ「アタシは・・シンジと一緒にいると・・・嬉しい・・かも」 

レイ「なら・・」 

マリ「それって、好きってことだにゃ」 

アスカ「あ。あああ、あんた! いつからそこにいたのよ!」 

マリ「最初からいたよー。お二人さんが後から入ってきてこそこそ始めたから、出るに出られなくなったんじゃん!」 

アスカ「き・・聞いてたの・・?」 

マリ「もちろん。バッチリと! 姫のわんこ君に対するあつぅーい思いの丈を、ぎっしり聞かせてもらったにゃー」 

アスカ「だ、だれかに言ったりしたら・・・許さないからね・・!」 

レイ「落ち着いて。平気よ。この人は、そういうことはしないわ」 

マリ「ありゃ? なんか、私ってば結構信頼されちゃってる?」 

レイ「この人は、あなたのためを思ってくれている。そんな気がするわ」 

マリ「ありゃー、私のほとばしる母性愛が、にじみ出ちゃったのかにゃー?」 

アスカ「・・・で、どうなのよ・・」 

マリ「うん? いうわけないでっしょ! この私が、姫の幸せを願ってやまないこの私が、わんこ君と姫の仲を応援してばかりのこの私が!」 

アスカ「あんた、言葉を並べるたびにどんどんうさんくさくなっていってるわよ」 

マリ「えぇー? 残念・・本気なのに・・・しっあわっせはぁ~♪」 

アスカ「突然歌い始めるし・・・なんなのよ、こいつ・・」 

アスカ「・・なんか、ほっとしたわ。ありがとう。エコヒイキ・・・ううん、レイ」 

レイ「! ・・いえ・・」 

マリ「ありゃりゃー? お友達、増えたのかな?」 

アスカ「うっさい!」 

マリ「ふふふ。・・姫は、今の素直な気持ちをわんこ君に伝えたらいいと思うよー」 

アスカ「・・そんなこと、できるわけないでしょ・・どう思ってるかも、ちゃんとわかってないのに・・」 

マリ「失うのが怖いからって、いつまでたっても手を伸ばさないままでいたら、最後につらいのは自分なんだよー」 

アスカ「・・・・・」 

マリ「失う怖さを乗り越えて一歩踏み出すこと!人はそれを、勇気と呼ぶのだ! 勇気の鈴が、リンリンリーン♪」 

アスカ「勇気・・か・・」 

マリ「不思議な冒険ルンルンルーン♪」 


 NERV本部 通路 
シンジ「(・・ミサトさんはああいっていたけれど・・ 結局僕は、自分でもよくわかってないんだよな・・ アスカは、生意気で、いじっぱりで、いつも僕のやることなすことケチつけて・・・ でも・・・)」 

  ドンッ 

マリ「うにゃっ」 シンジ「わっ」 

マリ「ててて、ありゃー、わんこ君かぁ」 

シンジ「マリさん? すみません、ちょっとぼーっとしていて・・」 

マリ「姫のことでも考えてたのかにゃー?」 

シンジ「え!? な、なんでわかるんですか?」 

マリ「ありゃ、図星かぁ。姫もわんこ君も、ほんっとにじれったいなぁ・・」 

シンジ「え?」 

マリ「こっちの話! ってか、マリさん、じゃなくてマリちゃん、って呼んでっていってるでしょぉー?」 

シンジ「い、いや、だって・・・」 

マリ「わんこ君のいけず!」 

シンジ「い、いけず?」 

マリ「あちゃー・・ジェネレーションギャップ・・ 
   まぁ、いいや。わんこ君、姫が探してたけど、連絡、なかった?」 

シンジ「いえ・・特に連絡はありませんでしたけど・・」 

マリ「ふむぅん・・ まったくぅ。 ・・・・・・」 

シンジ「マリ・・ち・・さん?」 

マリ「よし。 お姉さんがひと肌脱いじゃうかにゃ・・」 

シンジ「え?」 

マリ「・・わんこ君もさ、大変だよね」 

シンジ「なんですか? 突然・・」 

マリ「姫もさー、あー見えてお子様だからさ、ワガママはひどいし、気分屋だし・・ 正直、一緒にいると疲れるよね?」 

シンジ「い、いや、僕は・・」 

マリ「いいっていいって。姫には内緒にしとくから! ぜーんぶゲロっちゃっていいんだよ。 ゲコゲコ」 

シンジ「アスカは・・・」 

マリ「いっつもわんこ君の悪口ばっかりいってさ。 ばかしんじ~、とかさ。 
あんた、なにやってんのよ!とかさ。 毎日言われる身になってほしいよねぇ。 
さすがのわんこ君もかわいそうだにゃーって、皆思ってたんだよ」 

シンジ「ぼ、僕は・・」 

マリ「いっそのこと、姫とは別居して、私と一緒にくらそっか? こーみえて私、歌うまいよ!」 

シンジ「いえ・・その・・」 

マリ「(スルーされた・・) わんこ君には、もっといい人がいると思うんだよにゃー。 あんなのじゃなくて。もっと年上でオトナの・・」 

シンジ「マリさん!」 

マリ「おぉっと、なにかにゃ?」 

シンジ「突然、どうしたんですか? アスカのこと、悪くいうのはやめてください!」 

マリ「悪口なんて言ってないよー。 全部事実でしょー? わんこ君だって、そう思ってる」 

シンジ「確かに・・・アスカは、わがままだし、気分屋だし、毎日バカにされるけど・・ でも、本当は優しくて・・ その・・なんていうか・・・」 

マリ「ありゃりゃー? まるで、自分のカノジョの悪口を言われたみたいな怒り方だにゃー?」 

シンジ「ち、違いますよ! そんな・・・」 

マリ「ふふっ。冗談冗談! さっきのも含めてじょーだん!」 

シンジ「ええっ? も、もう・・なんなんですか?」 

マリ「ただ、私は二人ともだーいすきなだけだにゃー♪ 
・・あのね、シンジ君。 アスカはね、とっても辛い病気なんだ。 
救ってあげられるのは、キミだけなの。 もちろん、救うのも救わないのも、キミ次第だよ。 
でもね、私はキミに、救ってあげて欲しいと思うんだ~。 これは、私のわがまま」 

シンジ「え・・? え?」 

マリ「えへへ。じゃあね、わんこ君! きーみは誰のわんこ君~ ネールフそれとも、あ~の子ぉ~♪」 

シンジ「・・マリ・・さん・・??」



  数日後 
 ミサト家 リビング 

シンジ「・・ミサトさん、遅いね」 

アスカ「そ、そうね」 

シンジ・アスカ「・・・・」 

アスカ「(・・やばい・・)」 

シンジ「(・・やばい・・)」 

アスカ・シンジ「(何を話していいのかわからない!!!)」 

アスカ「・・え、っと」シンジ「あの」 

アスカ「な、なに?」 

シンジ「ア、アスカこそ。どうしたの?」 

アスカ「な、なんでも、ない・・」 

シンジ「そ、そう」 

アスカ「(な、なんでこんなに緊張してるの!?!?)」 

シンジ「(い、いつも何話してたっけ!? ええと・・ええと・・・!)」 

アスカ「あっ、お、おふろ!」 

シンジ「あ、うん! そ、そうだね! いれないと!」 

アスカ「た、たまには、私がやるわよ?」 

シンジ「いや、そんなの、悪いよ!」 

アスカ「いっつも、シンジには、色々・・やってもらってるし・・」 

シンジ「あ、あたり・・まえだよ。だって・・」 

アスカ「・・だって・・?」 

シンジ「あ、アスカが・・よろこんd」 

ミサト「とわっだいまぁ~」 

アスカ・シンジ「!!!!!」 

ミサト「いやぁ~。今日も疲れちゃったわぁ~・・って、アレ? 二人とも、ひきつった笑顔なんて浮かべてどうしたの? 
まさか、ケンカ~? やめなさいよ、痴話げんかなんて」 

アスカ「ち、ちがうわよ! ね、シンジ!」 

シンジ「う、うん! そうですよ、ミサトさん! 僕たち喧嘩なんてしないですよ!」 

ミサト「んん~?? ナニナニ、どうしたの? 二人とも様子が変よ?」 

アスカ「・・・べ、別に、変じゃないし!」 

シンジ「そ、そうですよ! いつも通りですよ! ね、アスカ!?」 

アスカ「そ、そーよ! いつも、仲いいし・・」ジッ 

シンジ「そ、そうですよ・・」ジッ 

アスカ・シンジ「(じーっ)」 

ミサト「えーっと、なに見詰め合ってるの?」 

アスカ・シンジ「うわぁっ!」 

アスカ「ななな、なによシンジ! なにか用ならとっとと言いなさいよね!」 

シンジ「あああ、アスカこそ、なんか言いたいことがあるなら早くいいなよ!」 

ミサト「・・はぁ。まぁ、仲がいいのがわかったわ。着替えてくるから、シンちゃん晩御飯とビールよろしくね♪」 

シンジ「は、はい・・・」 

アスカ「そ、それじゃあたし、お風呂洗ってくるから・・」 

シンジ「え? ホントに、いいの?」 

アスカ「た、たまにはね! あたしだって、お風呂洗ったり、ご飯作ったり、できるんだから・・」 

シンジ「そ、そうだよね。アスカは、なんでも上手くできそうだよね」 

アスカ「そう、かな・・」カァッ 

シンジ「う、うん・・・」 

アスカ・シンジ「・・・・」 

アスカ「い、いってくるね」 

シンジ「うん。ありがとう、アスカ」 

アスカ「ま、まっかせなさいよ!  ~♪」 

シンジ「(か、かわいい・・・)」 


 その夜 ミサトの部屋 

 コンコン 
ミサト「ふぁーい。あいてるわよん♪」ゲプー 

アスカ「・・入るわよ、ミサト」 

ミサト「珍しいじゃない、アスカ」 

アスカ「・・お酒、飲んでるの?」 

ミサト「ちょっちね。・・でも、大丈夫よ。まだ全然飲んでないから」 

アスカ「さっきゲプーって聞こえたわよ」 

ミサト「可愛い家族に冷静なアドバイスができる程度には、正気を保ってるつもりよ」 

アスカ「どーだか・・」 

ミサト「ま、座って。汚いところだけど」 

アスカ「汚いのは知ってるから、別にいいけど。・・じゃ、失礼するわ」 

ミサト「息をするように毒を吐くわね・・なんか飲み物持ってきましょうか? 長くなりそうな気がするから」 

アスカ「・・ううん。大丈夫」 

ミサト「そ。必要だったら持ってきてね」 

アスカ「わかったわ。・・・それでね、ミサト」 

ミサト「うん?」 

アスカ「・・あの、私のね、友達の、ヒカリ、っていうんだけど。・・その、最近、とっても悩んでるみたいなの」 

ミサト「シンジ君が委員長って呼んでるコね」 

アスカ「そう。・・その、ヒカリには、鈴原って彼氏がいるんだけど。 ヒカリは、どうやら、とってもその人のことが大切みたいなのよ」 

ミサト「素敵なことじゃない」 

アスカ「そう・・なのかな。 でもね、最近とっても不安に思うことがある・・んだって」 

ミサト「どんなこと?」 

アスカ「・・それを聞く前に、ミサトに聞きたいんだけど、ミサトは、中学のころ彼氏とかいた?」 

ミサト「んー。残念ながら、いなかったわ。私は、セカンドインパクトの関係でしばらく中学校いけてなかったし・・ 好きな人はいたけど、全然。ちょっと話しただけで舞い上がってたわ」 

アスカ「意外ね。グイグイいくタイプに見えるけど」 

ミサト「まぁ・・不器用なのよ、私って」 

アスカ「ふーん・・ヒカリが気にしているのはね、もっと未来のことなの」 

ミサト「未来?」 

アスカ「中学校を卒業して、高校を卒業して、大学を卒業して、社会人になって・・・ それでも、中学のころに付き合っていた人と一緒にいる人って、ほんの一握りじゃない?」 

ミサト「んー、まぁ、確かに、そうね」 

アスカ「・・もし、今お互いに気持ちを伝えて・・それで、もし、もしもよ? 付き合う、ってことになっても・・」 

ミサト「いつかは離れ離れになってしまう?」 

アスカ「可能性が、高いわけよね。 
だったら、まだ、今の関係のままでいて・・ 高校とかになってから、伝えたら、ずっと一緒にいられるんじゃないかって・・ どう思う?」 

ミサト「難しい質問ね・・・ 
そういう悩みって、本当にいくつになってもあるものよ。 

恋愛のタイミングっていうのかな・・ すごく難しいことだと思う」 

アスカ「・・悩んでも全然答えがでなくて・・」 

ミサト「そうなのよね・・ 好きな人の行動で一喜一憂して。 
つまんないことで落ち込んで。 些細なことで凄く元気になって。 
恋愛って、本当にもろ刃の剣だなって思うわ」 

アスカ「今でも?」 

ミサト「もちろん。今でもよ」 

アスカ「・・そっ、か」 

ミサト「何が正解か、私に言うことはできないけど、言えることがあるとすれば、 やらなかった後悔は取り戻せないけれど、やってしまった後悔は取り戻せるわ。 

たとえばもし、今2人が付き合いだしたとして、なんらかの理由で別れてしまったとしても、 その間に培った二人の思い出がなくなることはないの。 
だから、何かの拍子で元に戻ることだって0ではないのよ。 
お互いが、お互いを大切に思う限りね」 

アスカ「・・・伝えたほうが、いいと思う?」 

ミサト「私の個人的な意見を言わせてもらえば、伝えたほうがいいと思うわ。 伝えればよかった、って思うより、絶対にいいはずよ」 

アスカ「そう、よね」 

ミサト「あと、もう一つ言わせてもらうとすれば・・ 中学校の時分で、EVAなんてのに乗って、世界を救って、お互いの命を助けあって、 
一緒に暮らして、笑って、泣いて・・・ そんな風に一緒に過ごした人は、世の中にあなた達しかいないわ」 

アスカ「・・・・! あ、あたしはヒカリの・・・!」 


ミサト「自信を持っていいのよ、アスカ。 あの子は、本当にそういうところにニブくて、勇気がなくて、自信がなくて・・・ だけどとっても優しい人よ。 
私より、アスカのほうが詳しいと思うけど」 

アスカ「・・・・そう、よね」 

ミサト「一生の伴侶にするなら、優しい男じゃないとダメよ。 大体人気があるのはちょっと斜に構えたような男だけど、 あーいうのはホントだらしなくてだめなんだから」 

アスカ「それ、加持さんのこと言ってるの?」 

ミサト「ち、違うわよ! 一般論、一般論!」 

アスカ「・・ありがと、ミサト。フラれたら、慰めてよね」 

ミサト「フラれるって・・そんな・・いえ、やめときましょう。 もし結果がわかったら、連絡頂戴ね」 

アスカ「うん。ありがと! すっきりしたわ」 

ミサト「お役にたてて光栄よ。 おやすみなさい、アスカ」 

アスカ「おやすみ!」 

  ガラッ 

ミサト「(・・・・・・・・・やっぱり、ダメよね・・こんなこと・・)」 


 NERV本部 ミサトの部屋 

リツコ「降りたいですって? あなたが元々の発端じゃないの」 

ミサト「ほんっとーにごめん! ・・でも、ちゃんと恋してる二人を見たら・・ 私がやってることってなんてひどいことなんだろう、って思ったのよ」 

リツコ「でも、結果から言えばあなたの後押しがあったから、ここまで二人が意識しあうようになったわけでしょ?」 

ミサト「きっと、時間の問題だったわ。 私が見れていなかっただけで、二人とも本当にお互いのことばっかり考えているみたいだもの」 

リツコ「今から全部なかったことにするのは難しいわよ。 NERVのほぼ全職員がベットしてるんだから」 

ミサト「・・うへぇ・・・われながら罪悪感がハンパなくなってきたわ・・」 

リツコ「面白半分で人の恋路を賭け事になんかするからよ」 

ミサト「だってぇ・・あんまりじれったいもんだから、1年ぐらいはこのままなんじゃないかなーって思ったんだもん・・」 

リツコ「・・まぁ、もう状況は終盤よ。あとはあの二人がどうするか、ということだけだと思うわ」 

ミサト「そうね。・・問題は・・・」 

リツコ「沈黙を保っている碇司令、か・・・」 


 NERV本部 総司令室 

ゲンドウ「冬月。現在の状況を教えてくれ」 

冬月「セカンドチルドレン5割。サードチルドレン1割。現状維持3割、その他1割だ」 

ゲンドウ「そうか。・・分が悪いな、シンジ」 

冬月「あのいつもの調子を見ていれば、こうならざるをえないか」 

ゲンドウ「・・引き続きモニターを頼む。・・おそらく、近いうちに決着するだろう」 

冬月「わかっている。・・・碇、一つだけ聞きたいのだが」 

ゲンドウ「なんだ」 

冬月「なぜこんな大げさなことをする?」 

ゲンドウ「・・すべてが終わったら話そう」 

冬月「今はまだ、その時ではない・・・と、いうことか」 

ゲンドウ「・・・・・」ニヤ 

 NERV本部 総司令室 

ミサト「・・葛城ミサト、入ります」 

シンジ「碇シンジ、入ります」 

 シャッ 


ゲンドウ「・・・・」 

ミサト「お待たせして申し訳ありません」 

ゲンドウ「かまわん・・・頼みがあって呼ばせてもらった」 

ミサト「なんでしょうか」 

ゲンドウ「第2新東京市で初号機を使い、テストをしてもらいたい」 

ミサト「テスト・・ですか。どのようなテストでしょうか」 

ゲンドウ「詳細は冬月から説明する」 

冬月「内容は、広大なエリアを使用したEvaの兵装使用実験だ。新たな兵装のコンペティションも同時に行われる予定だ」 

ミサト「第2新東京市で行う理由は、機密保持でしょうか」 

冬月「察しがいいな。その通りだ。EVAも擬装して行う」 

ミサト「期間について教えていただけますか」 

冬月「急ですまんが、明後日から1週間だ」 

ミサト「承知いたしました」 

シンジ「あのっ!」 

冬月「どうした、サードチルドレン」 

シンジ「・・あの、そのテストは、初号機だけなんでしょうか」 

冬月「そうだ」 

シンジ「2号機は・・アスカは、一緒では、ないんでしょうか」 

冬月「今回のテストは初号機だけだ」 

シンジ「・・い、一緒に、同行、することは・・できませんか」 

冬月「どういう意味かね?」 

シンジ「ミサト・・さん、アスカの・・ことは・・」 

ミサト「副司令。彼は、セカンドチルドレンの体調を慮っています」 

冬月「その件は聞いている。しかし、それだけのために今回の予定を変更することはできない」 

シンジ「・・そう・・・ですか・・」 

冬月「本部の防衛が手薄になってしまうことも避けたい。理解できるな?」 

シンジ「・・はい・・・・」 

ゲンドウ「以上だ。何か質問はあるか」 

ミサト「いえ、ありません」 

シンジ「・・・・・・・・・・・いえ・・・」 

ゲンドウ「では、頼む」 

ミサト「失礼いたします」 

シンジ「失礼、します」 

 シャッ 

ゲンドウ「・・助かる」 

冬月「碇。言い辛い気持ちは理解するが、私に自分の不都合な仕事だけを押し付けるのはやめてもらいたいな?」 

ゲンドウ「・・・・・」 

冬月「まぁいい。・・これがお前が用意した、最後の切り札・・と、いうわけだな」 

ゲンドウ「・・・これで決着がつかなければ・・・・強引な策をとるしかあるまい」 

冬月「(すでに十分強引だと思うが・・)」 

 ミサト家 リビング 

ミサト「と、いうわけで、しばらく留守番お願いね、アスカ」 

アスカ「・・・・・・」 

シンジ「アスカ・・・」 

 クルッ 

アスカ「一人で自由に過ごせるなんて、ひっさしぶりー!」 

シンジ「アスカ、すぐ、帰ってくるからね」 

アスカ「ば、ばっかじゃないのぉー? なんで、そんな、私が、寂しがってるみたいな・・」 

ミサト「アスカ、なるべく予定は前倒しするつもりだから。・・その、もし、具合がわるくn 

アスカ「そんなに都合悪く、具合悪くなったりないわよ! たった一週間でしょ! あー、自由っていいわぁー!」 

ミサト「(アスカ、泣いてるのかしら・・)」 

シンジ「アスカ」 

アスカ「な、なによ!?」 

シンジ「顔、見せてよ」 

アスカ「・・・いや」 

シンジ「泣いて・・るの?」 

アスカ「な、泣くわけないでしょ! なんで、あたしがバカシンジと会えないだけで泣くのよ!」 

シンジ「・・・アスカ、帰ってきたら、聞いてほしいことがあるんだ」 

アスカ「!」 

シンジ「今、言ってもいいんだけど、言ったら・・・一週間、辛くなりそうだから・・」 

ミサト「シンジ君・・」 

アスカ「・・ミサト」 

ミサト「ん、ちょーっち、ビールを切らしてたのを思い出したわ。買ってくるから、二人ともいい子にしてるのよん♪」 

アスカ「・・ありがと」 

シンジ「ミサトさん・・」 

ミサト「・・・・ごめんね。二人とも」 

 パタン 

 クルッ 

アスカ「・・・シンジ」 

シンジ「アスカ・・・ほら、やっぱり、泣いてるじゃないか」 

アスカ「バカね、あくびよ、あ・く・び!」 

シンジ「そっか」 

アスカ「そーよ」 

シンジ「アスカも一緒に行けるように、お願いしたんだけど・・・無理だったよ」 

アスカ「そ。まあ、任務じゃしょうがないわよ」 

シンジ「・・あのね」 

アスカ「戻ってくるまで、何も言わないって決めたんでしょ。だったら、あたしは待ってるわ」 

シンジ「・・・そう、だね」 

アスカ「ただし、帰ってきたら、言いなさいよね。待っててやるから」プイッ 

シンジ「ありがとう。・・ついたら、電話、するね」 

アスカ「いーわよ別に。忙しいだろうし・・こっちだって、NERVの通常業務はそのままなんだから」 

シンジ「ご飯とか、どうするの? 作り置きしておこうか?」 

アスカ「あんたねー。アタシを誰だと思ってんのよ! 料理ぐらいちゃっちゃとできるんだから!」 

シンジ「でも、一人分作るのって、結構大変だよ?」 

アスカ「ヒカリでも呼ぶわ」 

シンジ「そっか。そうだね」 

アスカ「・・ちゃんと、無事で帰ってきなさいよね」 

シンジ「大丈夫だよ。ただのテストみたいだから」 

アスカ「・・そ。なら、いいけど」 

シンジ「・・・ありがとね、アスカ」 

アスカ「なによ、いきなり」 

シンジ「心配してくれて、うれしいよ」 

アスカ「あ、あったりまえでしょ! あんたがいなくなったら・・」 

シンジ「いなくなったら?」 

アスカ「内緒よ!」 

シンジ「ふふ。じゃあ、帰ってきたら、聞かせてね」 

アスカ「もー、なんなのよその余裕! あたしが想像してたのと、全然違うし!」 

シンジ「え? 想像って?」 

アスカ「うっるっさっいわねー! いちいちそんなこと聞かないでよ!」 

シンジ「ご、ごめん!」 

アスカ「・・もう・・・ホントにバカシンジなんだから」 

シンジ「それ、どういう意味?」 

アスカ「だーかーらー!」 

シンジ「冗談、冗談だよ!」 

アスカ「チッ・・もう、バカ」 

シンジ「・・うん」 

アスカ「お土産、いーっぱい買ってくるのよ」 

シンジ「そうするよ。なにがいいかな?」 

アスカ「何でもいいわよ。あんたのセンスに任せるわ」 

シンジ「アスカが喜びそうなもの、頑張って探すよ」 

アスカ「期待しないで待ってるわよ」 

シンジ「うん」 

アスカ「・・・・・・ん!」 
シンジ「ん? どうしたの?」 

アスカ「ほら、手、だしなさいよ!」 

シンジ「うん・・・?」 

 ギュ・・キュ 

シンジ「!」 

アスカ「ゆびきり、してよ」 

シンジ「え、う、うん」 

アスカ「ほら、早く・・」 

シンジ「えと、なにを、約束すれば、いいの?」 

アスカ「なんで今のタイミングでそれを聞くのよ!? あんたってホントムードだいなし!」 

シンジ「わわ、お、落ち着いて! きゅ、急だったから!」 

アスカ「早くしてよ!」 

シンジ「え、えと、じゃあ、お土産いっぱいかってきます」 

アスカ「・・・・・もういいわ・・・・」 
 ガックシ 

シンジ「えぇー・・」 

アスカ「期待したあたしがバカだった・・・」 

シンジ「ご、ゴメン・・・」 

アスカ「もう・・帰ってきたら、リベンジするわよ!」 

シンジ「わ、わかったよ!(よくわかんないけど・・・)」 

アスカ「まったく・・!(どうして、無事で帰ってくるとか、気の利いたことが言えないわけ!? このバカ!)」 

シンジ「でも・・・アスカの手、あったかいね」 

アスカ「!!!!!」 

シンジ「やわらかくて・・・・なんか、凄く、可愛いね」 

アスカ「あ、あ、あ、あんたバカぁ!?」カァッ 

シンジ「うわっ、 いきなりひっこめないでよ!」 

アスカ「いきなりなのはあんたでしょ! そ、そういうのは、ちゃんと、心の準備させてから言いなさいよ!」 

シンジ「え、えぇ? そうなの?」 

アスカ「そ、そうよ! ・・・はい、準備したから、もう一度言いなさい!」 

シンジ「えぇー?」 

アスカ「「えぇー?」じゃないわよ! ほら、とっとと言う!」 

シンジ「アスカの手、あったかいねー」 

アスカ「そっちじゃないだろ! バカ!」 

シンジ「え、えと・・・やわらかくて、可愛い、ね?」 

アスカ「/////」 

シンジ「ハッ(か、可愛い、とか、何言ってるんだ僕!)」 

  ギューッ 

アスカ「頑張って・・・きてよね」 

シンジ「う、うん・・・アスカも、元気でね」 

アスカ「・・・一週間ぐらい、なんてことないわよ・・」 

シンジ「そう、だよね。すぐだよね・・・」 

アスカ・シンジ「・・・・・・・」 

 ギュッ 

ミサト「・・・・おねーさんは、とっても嬉しくて、ちょっぴり切ないわよ、二人とも・・・」 

 翌日 
 NERV本部 ミサトの部屋 

リツコ「司令はいったいなにがしたいのかしらね」 

ミサト「・・さぁ? あの二人を幸せにしたいんじゃないの? それにしては、今回のは逆効果だと思うけど。 あたしがいうのもなんだけど、もうおせっかいよね。ただの。 あの2人は、ちゃんと色々考えてるわ」 

リツコ「ベット状況は依然アスカ優勢だけど、あなたならどうする?」 

ミサト「私は、もう・・」 

リツコ「もしもの話よ」 

ミサト「多分、シンジ君ね」 

リツコ「へぇ・・・信じられないわ」 

ミサト「なにそれ? 冗談?」 

リツコ「違うわよ。なにか、あったの?」 

ミサト「まぁね。 ・・今回のことは、私が引き起こしたことだから、私がけじめをつけないといけないと思ってる。 アスカやシンジ君に嫌われても仕方ないわ。 でも、あの2人の気持ちにキズをつけることだけは、絶対にしたくないの」 これは、終わりじゃなくて、大切な始まりなのよ。二人にとっては」 

リツコ「なるほど、ね」 

ミサト「だから、お願い。これからも、色々手助けしてあげてほしいの」 

リツコ「わかってるわ。 アスカの身体に関しては、ちゃんと最後まで面倒見るつもり。 シンジルフィンなんてひどい嘘だと思ったけれど、今のアスカは本当に体調がシンジ君の愛情に左右されているわ」 

ミサト「やっぱり、そうなのね・・・」 

リツコ「えぇ。私たちではモニタリングすることは不可能よ。あそこまで信じ込んでいると、何があってもおかしくないわ」 

ミサト「私の、せいね・・・」 

リツコ「私も、少し仕込が過ぎたと反省してるわ。 こんなことになるなんてね・・・プラシーボ効果のようなものだと思われるけれど」 

ミサト「どうしたら、いいのかしら」 

リツコ「・・2人が幸せになれれば・・・」 

ミサト「アスカは、シンジ君の愛情を常に受けられるわけだから・・・」 

リツコ「治る治らないはわからないけれど、アスカの体調が左右されることは少なくなるでしょうね」 

ミサト「身から出た錆よ。必ず、あの2人を幸せにしてみせるわ。傷つけることなく・・・」 

リツコ「可能な限り協力するわ」 

ミサト「・・ありがとう・・・リツコ・・」 

リツコ「(私は、あなたの変化にも驚いてるわよ、ミサト・・・)」 


 NERV本部 駐車場 
ミサト「ほいじゃ、いってくるわねん♪」 

シンジ「いってきます」 

レイ「気を付けて、碇君、葛城三佐」 

マリ「二人とも、一番危険なのは往復の車内だにゃー! 安全運転!」 

アスカ「・・・・・」 

シンジ「アスカ・・・」 

アスカ「なーにシケたツラしてんのよ」 

シンジ「・・・いつもだろ?」 

アスカ「・・ふふ、そうね」 

シンジ「待っててね」 

アスカ「! ・・そのつもりよ」 

 ジッ 

ミサト「シンジ君、行くわよ」 

シンジ「はい!」 

アスカ「(・・・・・あとは、あたしの体がどれだけ持つか、か・・・)」 

 

1日目 
 ミサト宅 アスカの部屋 

アスカ「ふーん。結構面倒なことやってんのね?」 

シンジ『そうなんだよー。色んな武器を試してるんだけど、一日中的に向かって撃ってるだけっていうのも結構飽きるし・・』 

アスカ「あ、そ」 

シンジ『アスカは、どう?」 

アスカ「べっつにー。今まで通りよ。特別なことなんてなにもない、素晴らしい毎日よ」 

シンジ『なんかとげがあるなぁ・・』 

アスカ「・・・あんたもいないし、つまんないのよ」 

シンジ『へ!?』 

アスカ「ふふ。びっくりした?」 

シンジ『そ、そりゃ、びっくりするよ!』 

アスカ「よしよし。今のでだいぶ満足したわ」 

シンジ『も、もう・・・』 

アスカ「もう1時間・・か。いい加減ベッドでゴロゴロしながら電話するのにも疲れてきちゃったから、切るわよ」 

シンジ『うん・・』 

アスカ「なーに、寂しそうな声だしてんの? たった1日しかたってないわよ?」 

シンジ『さ、寂しくなんか、ないけどさ!』 

アスカ「アタシは寂しいけど」 

シンジ『うぐっ』 

アスカ「ふふふ。ホントにあんたって単純ねー! ひっかかりやすすぎ!」 

シンジ『もう、アスカぁ・・・』 

アスカ「ま、ちゃっちゃと終わらせて帰ってきなさいよ。掃除洗濯、全部自分でやるの面倒なんだから」 

シンジ『なるべく早く、帰るよ』 

アスカ「はいはい。・・それじゃ、おやすみ」 

シンジ『おやすみ、アスカ』 

 プツン 

アスカ「・・・・はぁ・・・・ な、なんで電話越しだとこんなに恥ずかしいことがスラスラ言えるのかしら・・・ われながら不思議でしょうがないわ・・・」 

2日目 
 NERV本部 パイロット休憩室 

マリ「ほんでほんで、どうなの? 姫」 

アスカ「なにがどうなのって?」 

マリ「わんこ君との話に決まってるでしょぉー?」 

レイ「ぽかぽかしているの?」 

アスカ「あんたたち・・・大体、ぽかぽかって・・・」 

マリ「いいからいいから!」 

レイ「早くして」 

アスカ「レイまで・・・ べ、別に、普通よ。 帰ってきたら、なんか、言うって言ってたけど」 

マリ「おぉー・・・」 

レイ「ぽかぽかするのね」 

アスカ「まぁ・・何言われるか、わかったもんじゃないけど」 

マリ「姫、目はいやそうなのに、口元がニヤニヤしすぎだにゃ」 

レイ「元気そうでよかったわ」 


アスカ「もう・・・ 本当は、不安なんだから。あんまり茶化さないで」 

マリ「ゴメンゴメン。そうだよね。 打率9割9分9厘でも、もしもってことがあるもんね?」 

レイ「具合は、どうなの?」 

アスカ「・・・正直言うと、あんまり、よくないわ」 

マリ「わんこ君と電話してるんでしょ? それでもダメなのかにゃ?」 

アスカ「もちろん、電話してる間は大丈夫なんだけど・・」 

レイ「それ以外は辛いのね」 

アスカ「そう、かも。・・・2日目でこれじゃあ、先が思いやられるわね・・・」ハァ 

マリ「わんこ君が早く帰ってくるように、女三人、姦しく依頼するしかないね!」フンス 

アスカ「あたしたちが依頼してどうにかなるわけないでしょ。 司令の命令でいってんのよ?」 

レイ「私からもお願いしてみる」 

アスカ「レイ・・ありがたいけど、大丈夫よ。 たかだか一週間いないぐらいでどうにかなっちゃうわけないでしょ」 

レイ「でも・・」 

アスカ「これは、勝負なの。 私と、シンジの。 負けるわけにはいかないのよ」 

マリ「まーた、そんなこといって・・・ 無理してカッコつけてもしょうがないにゃ」 

アスカ「うっさいわねぇー! 人が覚悟決めてるんだから、茶々入れないでよ!」 

マリ「どーどー。ま、そういうところも、姫のかわいいところだけどにゃ! 回りくどすぎて、見てる方は疲れるんだよぉ~」 

レイ「彼女がそれでいいと決めたなら、私たちは見守るべきだわ」 

マリ「ま、それもそっか。・・・・姫、頑張るんだよ! 100%ゆーうきぃ~♪」 

アスカ「まったく・・・でも、ありがとう、二人とも・・・ (あと5日間・・・なんとか、耐えてみせるんだから・・・ やるわよ、アスカ!)」 


4日目 

 NERV本部 リツコの部屋 

リツコ「・・・アスカ」 

アスカ「なによ・・」 

リツコ「薬のペースが早すぎるわ。我慢しろとはいわないけれど・・・ 大丈夫なの?」 

アスカ「平気よ、こんなの」 

リツコ「顔色もすぐれないわよ」 

アスカ「・・きてるから、そっちのせいよ」 

リツコ「蓄積値は、既に500を切っているわ。理論上で言えば、あと2日で危険領域です」 

アスカ「あ、そ。理論上、でしょ。全然平気よ。 昨日は、忙しくて電話できなかったけど、今日は大丈夫だって言ってたし」 

リツコ「そう・・なら、いいけれど」 

アスカ「薬、大目にもらえる?」 

リツコ「それは構わないけれど、いい? わかっていると思うけれど、薬は飲み過ぎてもいけないのよ?」 

アスカ「わかってるわよ。・・ちゃんと、コントロールするから」 

リツコ「ちゃんと、辛くなったらいうのよ」 

アスカ「了解してるわ」 

リツコ「はい、これ。一応、3日分渡すわよ」 

アスカ「ありがと。・・感謝してるわ。 こんな体になってもなんとかやっていけてるのは、リツコのおかげだと思うから」 

リツコ「・・・・アスカ・・・」 

アスカ「じゃ、また来るわね」 

リツコ「ええ。・・お大事にね」 

 シャッ 

リツコ「・・なるほど、皆、成長してるのね・・・ 私も、頑張らせて、もらうわよ」フフッ 


5日目 
 第2新東京市  EVA兵装実験特別管理区域 

ミサト「・・・なんですって?」 

マコト「一部の兵装が予定通りに届かないという連絡がありました。 この出張、もう少し延びそうですね」 

ミサト「・・・なんとかならないの?」 

マコト「さんざん要望しましたが、3日延長を2日延長まで短縮するのが精いっぱいでした」 

ミサト「・・そう。短縮要望は引き続きお願い」 

マコト「了解しました」 

ミサト「シンジ君、聞こえるかしら?」 

シンジ『はい、ミサトさん』 

ミサト「申し訳ないけれど、少し予定が延びることになったわ」 

シンジ『え? ・・その、帰れない、ってことですか?』 

ミサト「そうなるわね。アスカにも連絡しておいて」 

シンジ『ま、待ってください! ミサトさん! そんな・・・アスカが・・・』 

ミサト「これは命令よ」 

シンジ『・・・そんな・・・』 

ミサト『シンジ君。私たちも、可能な限り、努力するわ。だから、お願い。アスカを・・頼みます』 

シンジ「! ・・・わかりました」 

その夜 
ミサト宅 シンジの部屋 
アスカ「・・そ。3日だっけ?」 

シンジ『うん。ごめんね、アスカ』 

アスカ「・・もう、延びない?」 

シンジ『たぶん、大丈夫だと思う』 

アスカ「・・ほんとに?」 

シンジ『うん。それ以上のびるようなら、帰ってくるから』 

アスカ「頼むわよ。もう、部屋が・・荒れちゃってるんだから・・」 

シンジ『アスカ、大丈夫? 具合、悪そうだよ』 

アスカ「なにいってんの? 全然、平気だし・・ねえ、シンジ」 

シンジ『どうしたの?』 

アスカ「ちょっと、今日、疲れちゃった・・・切っても、へいき?」 

シンジ『アスカ? 具合、悪いの? ねえ、アスk」プツン 

アスカ「・・・・・くぅ・・・・」スンスン 
アスカ「・・・シンジの香りがする・・・・ シンジ・・・早く帰ってきて・・・ ングッ・・・・ぷはっ・・・どうしちゃったんだろ・・・前みたいに・・・効かない・・・」 

 Pipipi 
アスカ「・・バカシンジ・・・心配しすぎ・・よ・・・」 
 Pi! 

シンジ『アスカ!』 

アスカ「もー、疲れたって、言ったでしょ?」 

シンジ『本当に、無理してないね? 嘘だったら、僕、許さないからね』 

アスカ「・・なに、真剣な顔しちゃってんのよ・・」 

シンジ『真剣になるにきまってるだろ! アスカの体のことじゃないか!』 

アスカ「あ、あたしの体のことで、どうして、あんたが・・・」 

シンジ『アスカ、ちゃんと答えて』 

アスカ「・・・少し、しんどい」 

シンジ『少しじゃないだろ?』 

アスカ「・・少しよ」 

シンジ『僕って、そんなに頼りない?』 

アスカ「そういうわけじゃないけど・・」 

シンジ『アスカには、無理させたり、嘘をついてほしくないよ』 

アスカ「・・ホントに、平気だってば。 あたしだって、あんたからの言葉、楽しみにしてるんだから。 そんな簡単に、くたばるわけないでしょ」 

シンジ『信じるよ、アスカ』 

アスカ「もちろんよ。・・本当にどうにもならなくなったら、ちゃんと連絡するから」 

シンジ『約束だよ。・・・指、出して』 

アスカ「? ディスプレイに出せってこと?」 

シンジ「そう。・・うん、そうそう。 ゆーびきりげんまん♪」 

 

アスカ「(・・・シンジ・・・)」 

シンジ『嘘ついたら針千本のーますっ、ゆびきった! はい、アスカ。これで、嘘だったら、ショルダーニードル1000本の刑だからね』 

アスカ「なによそれ! ・・・ばっかじゃないの!?」 

シンジ『少し、元気でた?』 

アスカ「だから、元から・・・ 
    ううん。ありがと、シンジ」 

シンジ『うん。無理しちゃ、ダメだからね』 

アスカ「わかってるわ。じゃ、おやすみなさい」 

シンジ『おやすみ、アスカ』 

  ピッ 

アスカ「・・・・もう少し・・・もう少し頑張れば、シンジに会えるんだから・・・」 


7日目 
 ミサト宅 アスカの部屋 

アスカ「・・・・・・」 

マリ「姫、だいじょうぶ?」 

レイ「・・ごはん、食べているの?」 

アスカ「・・・ん・・・? 二人とも、いつの間に来たのよ・・・?」 

マリ「さっき。念のためスペアキーを借りといてよかったにゃ」 

レイ「・・顔色が悪いわ」 

アスカ「・・・平気平気・・・全然・・・平気・・」 

マリ「平気じゃないじゃん! 無理しすぎだよ!」 

アスカ「・・・だって・・・シンジに、待ってるって・・・約束・・したんだもん・・・」 

レイ「だからって、あなたがこんな調子じゃ、碇君だって困ってしまうわ」 

アスカ「・・・シンジ、いつ帰ってくるのかな・・・」 

マリ「明後日だって、聞いてるけど」 

アスカ「・・早く会いたい・・・会いたいよ・・」グス 

レイ「・・・アスカ・・・・・」ギュ 
アスカ「・・シンジぃ・・・」 
マリ「・・これは、思いのほか重症だにゃ・・・恋する乙女病・・・」 
アスカ「・・・・ゴホッ」 

マリ「姫?」 

アスカ「うう・・・いた・・い・・・」 

レイ「どうしたの、アスカ? 苦しいの?」 

アスカ「・・・体がいた・・く・・・て・・苦しい・・・どうなってんのよ・・あたしの体・・・」 

マリ「アスカ! レイ、早く、連絡を!」 

レイ「ええ!」 

アスカ「・・・死んじゃうの・・? あたし、死んじゃう・・?」 

マリ「バカいってるんじゃない! しっかりして! シンジ君、すぐ戻ってくるから!」 

レイ「・・えぇ、すぐに! お願いします!」 

マリ「ほら、元気出してよ! アスカ!」 

アスカ「・・・シンジに・・言えなかった・・なぁ・・・」 

マリ・レイ・シンジ「アスカ!」 

アスカ「!?」 

 バタン 

シンジ「アスカ!」 

マリ・レイ「・・・え?」 

アスカ「・・・え・・・・?」 

シンジ「アスカぁっ!」 

 ギュウッ・・・ 

アスカ「・・・え・・・・? え?」 

シンジ「ごめん・・・ごめんね。遅くなって・・・」 

アスカ「・・・なん・・・で・・?」 

シンジ「アスカ。そんなことより今は、君のことだよ。 元気になって、欲しいんだ」 

アスカ「・・・シンジ・・・」 

シンジ「目、とじて・・」 

マリ・レイ「・・・・おぉ」 

アスカ「・・ん・・・」 

シンジ「アスカ・・・」 

  ・・・チュッ 

マリ「・・でてよっか」 

レイ「そうね・・」 

 パタン 

シンジ「・・・少し、元気、でた?」 

アスカ「・・うん・・・おかえり・・・シンジ」 

シンジ「よかった。・・それじゃ、改めて、言うね。 僕は、アスカが、大好きです。 これからも、ずっと、一緒にいてください!」 

アスカ「・・・一緒にいるだけで、いいの?」 

シンジ「手つないだり・・笑ったり、泣いたり・・・その、キス、したり・・・ 僕の人生をあげるから、アスカの人生を、僕にください。 一生、大切に、します」 

アスカ「・・・それって、プロポーズしてんの?」 

シンジ「うん。結婚して、欲しい」 

アスカ「あんたバカぁ・・? 中学から付き合って結婚した人なんて、どれだけいると思ってんのよ」 

シンジ「他人のことなんて、関係ないよ。僕は、今、これからもずっとアスカと一緒にいたいって、そう思うだけだよ」 

アスカ「・・・信じて、いいの? あたし、本気にするわよ」 

シンジ「うん。約束、する」 

アスカ「あたし、あんたがいないと死んじゃうんだからね」 

シンジ「ずっと一緒にいれば、いつも元気なアスカだよね?」 

アスカ「そのために、結婚しようとか、いってんじゃないわよね?」 

シンジ「アスカの病気が治っても、ずっと一緒だよ」 

アスカ「・・私のこと、本当に、好きなんだよね?」 

シンジ「好きだよ、アスカ」 
  チュッ 
アスカ「////」 
シンジ「////」 


アスカ「よ、よくもまぁ、ここまで照れくさい言葉を、並べられるわね・・・」 

シンジ「自分でも、驚いてるかも。 
    ・・・なんか、アスカと離れて過ごしてたから、アスカを目の前にしたら、我慢できなくて・・」 

アスカ「・・・バカシンジ。・・もっと、ぎゅってして」 

シンジ「うん」 

 ぎゅうっ 

アスカ「・・・ぽかぽか、するかも」 

シンジ「ぽかぽか、するね」 

アスカ「・・ね、シンジ。私のこと、どれぐらい、好き?」 

シンジ「えぇー? 難しいなぁ」 

アスカ「いいから、思いついたの答えてよ」 

シンジ「そうだなぁ・・上司を説得して出張から戻ってくるぐらいに、好き?」 

アスカ「なにそれ・・・なんか所帯じみてるわね・・・」 

シンジ「イマイチかな・・」 

アスカ「だいぶね。まあ、今回は・・・とっくべつに、許してあげるわ」 

シンジ「アスカは? アスカは、どれぐらい・・好き?」 

アスカ「・・あたしは・・・」 

シンジ「うん」 

アスカ「あなたと結婚しないと死んじゃうぐらい、好きよ」 


おわり 


1か月後 
 NERV本部 特大フロア 

 ピピーガー 
ミサト「えー、皆さん、それでは、新郎新婦の登場です! 暖かな拍手で、お迎えください!」 

パチパチパチパチ 

マヤ「うわぁ、アスカすごくキレー!」 

シゲル「おお、シンジ君も意外とさまになってるなー」 

マコト「シンジ君からかっこいいプロポーズしたって話だからな、意外だよ。 おかげで、食堂年間無料パスをもらえたけどな!」 

リツコ「・・・アスカ、本当に、良かったわ」 

マリ「・・おぉー・・姫が、本当にお姫様みたいだにゃー! そこにシビれるぅ、憧れるぅ! 幸せそうで、ホントに、よかった」 

レイ「碇君・・アスカ・・・ぽかぽか・・してる・・・」 


 NERV本部 特設式場 檀上 

アスカ「バカシンジ、あんた、歩くの早過ぎよ!」 

シンジ「う、う、ごめん」 

アスカ「あーもう、あの時の、やたら凛々しいシンジはどこいっちゃったわけ? 詐欺よ詐欺、結婚詐欺!」 

シンジ「そんなぁ・・」 

アスカ「まったくもう・・なんで、NERV職員全員の前で、結婚式の真似事しなくちゃいけないわけ!?」 

シンジ「父さんがどうしてもやってほしいって・・・」 

アスカ「司令がぁ? ・・どこにいるのかしら・・・もう・・なんでアタシがこんな・・・」 

シンジ「でも、アスカ、とっても綺麗だよ」 

アスカ「っ・・! い、いっとくけど、この一か月で、あんたのそういうセリフにも慣れたんだからね! ぜーんぜん、平気なんだから!」ソワソワ 

シンジ「そっか。・・じゃあ、これからは言うのやめとこうかなぁ・・」 

アスカ「・・・我慢しないで、言いなさいよ、バカ」 

シンジ「わかってるよ、アスカ」ニコニコ 


NERV本部 初号機ハンガー 

ゲンドウ「・・NERV職員すべてを巻き込んだ騒動の渦中にいたのは、シンジとセカンドチルドレンだ。 我々の息子が、自分の意中の女の子に思いを告げ、これから添い遂げようとしているぞ。 NERV職員全員に、不本意ながらもその恋の行方を見守られ、そしてみんなに祝福されている。 ここには、大勢の人間の暖かい気持ちが、渦巻いているぞ。 ユイ。そのままでいいのか? 親しくもない友人の色恋沙汰にまで首を突っ込んでいたお前が、 シンジの晴れ姿を見なくていいのか? 妻になる女性がどんな女性だか、見なくていいのか?」 

初号機「・・・・・・」 

ゲンドウ「これから、式の真似事をおこなうそうだ。 
     戻ってきたらどうだ、ユイ」 

初号機「ォォ・・・ン」 

ゲンドウ「待っているぞ」 


1時間前 
 NERV本部 特設式場 

ミサト・リツコ「・・アスカ」 

アスカ「・・ミサトにリツコ・・・ありがと、色々と」 

ミサト「ごめんね、アスカ」 

リツコ「本当に、ごめんなさい」 

アスカ「本当は、ぶっちぎれるところなんだろうけど、今日という日に免じて許してあげるわ」 

ミサト「・・ありがとう」 

リツコ「・・もう、平気なの?」 

アスカ「ぜーんぜん。・・ホントに、恋の病ってやつだったのかしらね。 まあ、あのバカのことで気をもんだりすることはあるけど・・・ 
あんなに苦しくなったりはしないわ。 われながら、単純だったのかな・・・ ラムネ一つで元気になったり、ね?」 

リツコ「そういってくれると、助かるわ」 

アスカ「まあ、次はないけどね」 

ミサト「わかってるわ。・・ホント、幸せそうで、うらやましい限りよ」 

アスカ「まだ私たちガキだから、どうなるかわからないけどね。 でも、シンジが言ってくれた言葉は本当だと思うし・・ 
私が、今、あの人と一緒にいたいっていうのも、本当の気持ちだと思うわ」 

ミサト「ふふ。14歳の女の子の言葉とは、思えないわ。 とっても大人っぽくて、素敵よ、アスカ」 

リツコ「まさか、先をこされるとはね・・」 

アスカ「真似事よ、真似事! 結婚式は、ドイツでこれ以上ないぐらい盛大にやるんだから!」 

ミサト「楽しみにしてるわ」 

リツコ「ちゃんと、呼んでくれる?」 

アスカ「もっちろんよ。 私たちをずっと生暖かく見守ってくれた皆を、全員呼ぶわ! 
お城をたてられるぐらいのご祝儀、期待してるからね!」 


NERV本部 特設式場 

ミサト「新郎、碇シンジ」 

シンジ「はいっ」 

ミサト「あなたは、病める時も、健やかなる時も、使徒の迎撃をする時も、妻が不条理な暴力を振るってきたときも、彼女を愛することを誓いますか?」 

アスカ「ちょっとミサト! なにいってんのよ!」 

ミサト「シンジ君に聞いてんでしょ。アスカは黙ってなさいよ」 

アスカ「・・・あとで覚えてなさいよ・・・」 

シンジ「えぇと、はい、誓います!」 

ミサト「おk」 

アスカ「おkじゃないわよ! おkじゃ! ちゃんとやんないとホントにはっ倒すわよ!」 

ミサト「な、慣れてないんだから、仕方ないでしょ!」 

シンジ「二人とも、皆、見てますよ」 

アスカ・ミサト「・・くっ・・・」 

ミサト「コホン。失礼。・・・では、新婦、式波・アスカ・ラングレー」 

アスカ「はい」 

ミサト「あなたは、病める時も、健やかなる時も、シンクロテストをしている時も、夫が他の女性と二人きりで食事をしている時も、彼を愛することを誓いますか?」 

アスカ「浮気したら殺すわ」 

シンジ「う、浮気なんてしないよ!」 

ミサト「・・こほん。えー、と・・」 

アスカ「ミィサァトォ・・・」 

ミサト「ご、ごみんごみん。き、緊張しすぎて、変な笑いを取ろうとしちゃうのよ!」 

アスカ「司令に頼んで減俸してやる」 

ミサト「うう、義理の娘の力恐ろしい・・・」 

シンジ「いい加減、ちゃんとやってくださいよ、ミサトさん」 

ミサト「ごほん。えぇと、病める時も、健やかなる時も、彼を愛することを誓いますか?」 

アスカ「はい、誓います」 

シンジ「・・アスカ・・・」 

アスカ「へへ、照れるわね」 

ミサト「お二人は、我々NERV職員全員の前で、結婚の契りをかわしました。 
    何人たりとも、この二人の仲を裂くことはできません。 
    ・・・では、指輪の交換を」 

アスカ「・・はい、お願い、シンジ」 

シンジ「う、うん・・・」 

 スッ 

アスカ「えへへ。似合う?」 

シンジ「とっても、似合うよ」 

ミサト「(ガチで羨ましい)」 

シンジ「・・はい、お願い、アスカ」 

アスカ「うん・・よっと・・」 

 スッ 

シンジ「おそろい、だね」 

アスカ「あったりまえでしょー」 

ミサト「・・それでは、誓いのキスを」 

シンジ「・・アスカ。これからも、一緒だからね」 

アスカ「聞き飽きたわよ、ばか」 

  チュッ 

 パチパチパチパチ 

ミサト「ご結婚、おめでとー!」 

NERV職員「おめでとぉぉぉ!」 

シンジ・アスカ「ありがとーーー!!!!」 

??「かわいい子ね」 

ゲンドウ「・・・・遅かったな」 

ユイ「着替えに、手間取って」 

ゲンドウ「・・・・そういうことでは、ない」 

ユイ「なになにー? 泣いてるの? 普通そういうのは、娘をとられるお父さんの役目よ」 

ゲンドウ「目に埃が入っただけだ」 

ユイ「そう。ずーっと、見てたわ。皆のことを」 

ゲンドウ「そうか」 

ユイ「・・・ただいま」 

ゲンドウ「おかえり、ユイ」 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジ「僕と結婚しないと、アスカが死んじゃう・・・?」

https://viper.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1355580392/