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いろは「先輩!いろは大好きって言ってください!」【俺ガイルss/アニメss】

 

いろは「せんぱぁーい、人参食べて下さーい」

 

八幡「そんなのガキじゃねーんだから自分で食えアホ後輩」

 

奉仕部の依頼で知り合った後輩である一色が、勝手に俺のベストプレイスで食べるようになってから一ヶ月と半月程度が立った。

 

突然押しかけてきて、先輩一緒にお昼ご飯食べましょう、だなんてなにか企んでる様にしか思えなかったので、最初は屋上とかトイレとかあちこちへひたすら逃げていたのだ。

 

が、一色の脅し(あえて内容は言わないでおく)に負けてしまい諦めることにした。

 

なんでそんなに一緒に昼飯を食べようとするかな。

 

相手が俺じゃなかったら、思わせぶりな態度で勘違いして告白し振られる所までが1セットだな。

 

失恋のスペシャリストである俺だからこそ、勘違いせずなんとかなっている訳だ。

 

そんな事を考えながら、黙々と食事をしていると一色が話しかけてきた。

 

いろは「先輩なんか話振ってくださいよー」

 

八幡「は?ぼっちにそういうコミュニケーション能力求めんなよ」

 

いろは「はぁ...。これだから先輩はぼっちなんですよ。大体こんな可愛い後輩が、一緒にお昼ご飯を食べようって言ってるんですよ?普通喜んで会話を盛り上げようとする所なんじゃないですか?」

 

一色は、自信満々に胸をはって喋る。

 

八幡「自分で可愛いとか言っちゃうあたり、流石生徒会長様だな」

 

いろは「う、うるさいです!とーにーかーく、なんでも良いから話題作りしてくださいよ」

 

一色も俺みたいなぼっちに大分無茶振りしてくるな。

 

大体、なぜぼっちとまともにコミュニケーションを取ろうとするのかが理解出来ない。

 

他人とのコミュニケーションが取れない故のぼっちであって、コミュ力があってぼっちだなんて名乗るのは単に性格が悪いやつだ。

 

その点、逆説でコミュ力のないぼっちである俺は、聖人君子の様な性格をしていると言っても過言では無い、Q.E.D.証明終了。

 

いろは「また、一人脳内で気持ち悪い事考えてますよね?顔がにやけてますよ」

 

八幡「や、そんなわけ無いし、顔もにやけてないから」

 

俺、ってそんな表情に出やすいのか...?

 

どうりで漫画とか読んでると、周りから人がいなくなる訳だ。

 

一色はため息をつきながら、まだ喋りかけてくる。

 

いろは「で、なんか話題思いつきました?」

 

だーかーら、ぼっちにコミュニケーション(以下略)。

 

ま、そんなこと言っててもこいつは許してくれるわけないので、適当に話題を探すか。

 

八幡「じゃあ、お前最近部活どうなんだ?」

 

いろは「ようやく出した話題がそれって...まぁいいですけど。生徒会も忙しいんで、毎日って訳じゃないですけどちゃんと部活には出てますよー」

 

八幡「そうか」

 

いろは「そこでそうか、しか返せないから先輩はぼっちなんですよ」

 

余計なお世話だっての。

 

俺は別に、リア充共みたいに延々と同じ様な話がしたいわけじゃないからな。

 

多くのリア充は、ひたすら中身の無い会話を、あー分かるーとか私もそう思うーとか適当な言葉でを続けているが、俺はそんなことしたくないね。

 

つーか、普通の会話をする相手ですら小町や戸塚と戸塚、さらに言えば戸塚とか以外ほぼいないに等しいけどな。

 

しかし、仮にも振られた相手がいるのに、こいつは部活出てて気まずくないのか。

 

なんて考えていると、一色がまるで俺の考えを読み取ったかのように喋り出した。

 

いろは「あ、それと葉山先輩の事なら問題無いですよー。また後輩先輩同士仲良くしましょう、ってなりましたから」

 

八幡「そりゃ良かったな。でも、ナチュラルに俺の心を読むのはやめような?」

 

考えが読まれてるとか、もしかしてこいつはエスパーかなんかなのか、エスパー一色なのか?

 

いろは「別に心を読んだわけじゃないですよ。なんとなく、先輩はこの事を気にかけてくれてるような気がしたんですよ。案外、そういう所の気配りは先輩の癖に出来ますし」

 

なんだ、エスパー一色じゃなくて良かったわ。

 

流石に、上半身裸で黒のパンスト重ね履きしてるシュールなこいつなんてみたくないしな。

 

八幡「先輩の癖にって所は余計だっつーの。第一、俺ほど気配りが出来るやつはなかなか居ないぞ?中学の時の修学旅行なんかも、気を使って気配を消すどころか単独行動とるまであるね」

 

いろは「それ、単純に一緒に行動取ったら嫌がられるからじゃないんですか...」

 

一色はうわぁ、といった表情でドン引きしていた。

 

八幡「うるせぇ、別に俺が好きでやってるんだからいいじゃねぇか」

 

こんなアホみたいなやり取りを暫く続けていると、キーンコーンカーンコーンと気が抜ける様な予鈴がなる。

 

八幡「さて、教室へ戻るか」

 

いろは「そうですね、戻りましょうか。先輩はきっと名残惜しいでしょうけどね」

 

八幡「別にそんな訳あるか。むしろどっちかっつーと、お前がここに来ない方がせいせいするっての」

 

いろは「全く先輩はまたそういうこと言っちゃって。本当捻デレなんですからー」

 

誰だよ念デレなんて言葉教えたの...間違いなく小町だろうけど。

 

いつの間にか小町と仲良くなってるとか、怖すぎるんだよこいつ。

 

八幡「余計なお世話だアホ。じゃあな」

 

いろは「はい、また明日」

 

なんだか最近俺はぼっち力が下がった気がする。

 

俺のぼっち力は、53万どころかスカウターがぶっ壊れるまであったはずなんだがな。

 

そんな事を考えながら教室まで歩いていった。

 

急がないと五限が始まるな。

 

朝からの憂鬱な四限までの授業が終わり、ようやくお昼休みになったわけだが、いつも通りベストプレイスには一色がいた。

 

いろは「せんぱーいっ!こんにちは!」

 

八幡「おっす。しかし、お前本当あざといな。大体、よくも懲りずに毎日居るもんだよ」

 

つい、挨拶とともに皮肉が出る。

 

この程度、この仮面の生徒会長様にとってみれば対したことは無いだろうけど。

 

いろは「そんなあざとくないですよー。それにお昼ご飯を、どこで食べても私の勝手じゃないですかー」

 

八幡「はいはい、あざといあざとい」

 

ある意味ここら辺までが、俺と一色のいつもの挨拶である。

 

いろは「あれ、先輩珍しく今日はお弁当なんですね」

 

一色の視線は、俺が手にぶら下げている、弁当箱に注がれていた。

 

八幡「あぁ、なんかうちの母親が珍しく休みらしくてな。たまにはね、って言って作ってくれたんだよ」

 

いろは「あー先輩のお母さん忙しいんでしたっけ?」

 

八幡「まぁそうだな。俺が小さい頃から、親父と一緒に社畜ロードを歩んでるよ。養ってもらってるから文句は言えないがな」

 

本当にうちの両親は毎日毎日よく働くよ。

 

おかげ様で俺は専業主夫を目指したいと思う様になったぜ。

 

専業主夫万歳!

 

養ってもらうの万歳!

 

アホな事を考えていると、一色が覗き込んできた。

 

いろは「ご両親が忙しいと、小さい時の先輩は寂しく無かったんですか?」

 

八幡「ま、寂しくは無かったな。小町も居たから。遠足のお弁当とかも適当に買ってきたやつだったけど、そっちの方が美味しいし」

 

いろは「美味しいとは言え、遠足行く時に買ってきたお弁当ってのは、友達に見られるとからかわれそうですね。あ、でも先輩はその心配ないから、関係無いんでしたごめんなさい」

 

八幡「お前全部謝る気ないよね?」

 

いろは「あはは、ばれちゃいました?」

 

全く、あざとい事この上ない...。

 

因みに、小町は何故かお弁当を作ってもらってたが、親父が作ってたのでそんな食べたいとは思わなかった。

 

いろは「でもそうなると、お母さん手作りのお弁当だなんて嬉しいんじゃないですか?」

 

八幡「別に特段嬉しくはないな。あんまり馴染みが無いから、新鮮な感じはあるけどよ」

 

そう言うと、一色はぶつぶつなにかいいながら考え事を始めた。

 

いろは「そっか...お弁当作ってくるもありかな...うーんでも受け取ってくれるかな...いやなんとしてでも受け取らせなきゃ...そしたらまずは小町ちゃんにメールして...」

 

なんかブツブツ言ってると、悪巧みしてそうで怖いなこいつ。

 

八幡「おい、考え事も良いが飯食わないと次の授業遅れんぞ」

 

いろは「あっ、そうでした!生徒会長が授業遅刻じゃまずいですしねー」

 

この後一色とくだらないやりとりをしながら、残りの昼休みの時間を過ごした。

 

土日休みも開けて、学生にとっての敵、月曜日を迎えていた。

 

退屈な授業を四限まで受け昼飯を確保すべく、ベストプレイスに行く前に購買へ行こうとすると、教室を出た所で一色に道を塞がれた。

 

八幡「一色、どうしたんだ?」

 

いろは「先輩、今日はまっすぐあの場所へ行ってください」

 

一色が俺だけに聞こえるように囁く。

 

八幡「や、そしたら俺昼飯ないんだけど」

 

そう言うと、一色は盛大な溜息をつき何時ものトーンで話しはじめる。

 

いろは「察しが悪いですねー、本当。取り敢えず、いつもの場所へ行って下さい!」

 

さっきまでひそひそ話で話していた意味はあったのかよ。

 

とはいえ、ああ言われたら仕方ないのでベストプレイスに向かう。

 

自販機によってマッ缶ぐらい買っていって問題無いだろう。

 

しかし、一色はどういつもりであんなこと言い出したんだ?

 

俺がベストプレイスに着くと、既に一色は居た。

 

いろは「先輩遅いですよ!なんで私より先に行ってたのに私が先に着くんですか!」

 

プリプリと一色が怒っている。

 

取り敢えず、言い訳しときますか。

 

ま、普通に飲み物買ってただけだから言い訳もなにも無いが。

 

八幡「俺はマッ缶買ってたんだよ。それとほれ、つい間違って買っちまったんだが飲むか?別に間違っただけだし要らないなら良いけどよ」

 

そう言って一色にミルクティーを渡す。

 

いろは「全く...先輩はこういうのがずるいんだから...しかも...私の好きなやつだし...」

 

一色がにへら、となりながら小声でなにかぼそぼそ言っている。

 

八幡「おい、いらないのか?」

 

いろは「いやいやいや、折角間違えて買ってしまったみたいですし、貰いますよ!ありがとうございます!」

 

一色は一層にへらにへらとしながら受け取った。

 

八幡「なんかお前日本語変だぞ、流石ゆるふわビッチだな」

 

いろは「そんなことないですよー!それとゆるふわビッチとか関係ないじゃないですかー!」

 

何故か、にへらにへらしてるのが収まっていないまま一色は叫ぶ。

 

八幡「一色、なんかお前にへらってしててちょっとキモいぞ」

 

いろは「いや、キモいとか先輩が言わないでくださいよー。先輩の方が百倍キモいんで。キモ谷先輩ですから」

 

一言言っただけでこの様だよ...。

 

八幡「キモ谷とかお前は俺が中学二年の時のクラスメートか。大体、ちょっと声かけただけで、あんなあだ名付けられるとか俺どうやって生きていけばいいんだよ...」

 

いろは「もう、先輩って人は勝手に自爆して凹まないでくださいよ...。折角お弁当作ってきたのにあげませんよ」

 

一色は上目遣いでこちらを見てくる。

 

普段なら上目遣いであることにうわ、あざといあざとい、と言う所だが一色の言葉にびっくりして言葉がでなかった。

 

今、お弁当作ってきたって言わなかったか?

 

いやいや、ありえないだろあの一色いろはが俺に弁当作ってくるとか。

 

もしかして、俺のこと好きなのなんじゃね?

 

...そんなわけないな、クールになれ比企谷八幡

 

百歩譲っていたずらだろう。

 

まぁ、取り敢えず一色に真意を確かめるのが一番か。

 

八幡「もしかして、昼飯買わなくていいって言ったのはお弁当作ってきてくれてたからか?」

 

これで勘違いとかだったら笑えるな、今更黒歴史の一つや二つ怖くないけど。

 

いろは「本当、先輩って鈍いですよねー。ま、そこが先輩らしいですし別にいいですけど。はい、先輩の分ですよ!」

 

そう言って一色が、可愛らしい布に包まれたお弁当箱を手渡す。

 

黒歴史自体は回避出来た様だ。

 

が、この後の行動次第では黒歴史になる可能性は十二分にあるぞ。

 

ここで弁当を貰ったからと勘違いするのは三流、多分好かれてないんだろうなと思うのは二流だ。

 

きっと好きな男が出来た時用の練習台なんだな、という思考に辿り着けたらもう一流と呼んで申し分ないだろう。

 

それなら俺みたいなのに弁当作ってくる理由も納得できるし。

 

八幡「なんつーか悪いな。ま、多分誰かまた好きな男が出来た時の予行練習なんだろうけど。俺は勘違いもしないし、味見役には最適だよな」

 

そういうと一色は、はぁこいつなにも分かってねーぜ、みたいな顔をした。

 

いろは「先輩がそういう人だってのは分かってましたけど...はぁ本当にこの人は...。そういうことにしときます。ま、先輩は練習台なんでちゃんと感想聞かせてくださいよ!」

 

なんでこいつあからさまにトーンダウンしてるんだ。

 

別にたいして気にしてない風だから良いけどさ。

 

いつも通りの位置へ座り貰った弁当箱を開ける。

 

二段に分かれている弁当箱の中には、綺麗に彩られた三色そぼろのご飯が一段、卵焼きや唐翌揚げ、ハンバーグなどのおかずが入ったものが一段だった。

 

見た目は凄い綺麗だな。

 

でも練習台ってことは、セ尻アみたいにゲロマズな可能性があるわけか...。

 

だかそんな心配は杞憂に終わり、予想してたより遥かに美味かった。

 

いろは「せ、先輩美味しいですか?」

 

八幡「おう、悪くは...いや美味いぞ」

 

素直に感想を言うのも少々気恥ずかしいが、練習台とはいえ折角作ってくれたんだし、せめて感想ぐらいはきちんと伝えるのが筋ってもんだろう。

 

適当に濁したりしたら、小町にぶっ飛ばされそうだ。

 

いろは「本当ですか!?良かったですー!」

 

弁当箱を開けてから、ずっとこちらを不安げに見ていた一色が、小さくガッツポーズを作りながら叫ぶ。

 

一人で喜びながら飯を食べる一色を余所目に、俺はすぐ食べ終わってしまった。

 

八幡「一色、ご馳走さん。その、サンキューな」

 

いろは「さっきも聞きましたけど、美味しかったですか?」

 

やはり、まだ不安なのか一色が再確認してくる。

 

練習台だしここはちゃんと答えなくちゃな。

 

八幡「おう、えっと...美味かったぞ」

 

いろは「先輩にそう言って貰えるなら作った甲斐ありました!」

 

なんだか嬉しそうに一色は言った。

 

いくら俺みたいな男でも、作ったものを褒めてもらえれば嬉しいのだろうか。

 

八幡「弁当箱は明日洗って返すわ」

 

流石にこれ以上何かさせると後が怖いし。

 

何かにつけて生徒会に借り出されそうだ。

 

いろは「いや、先輩さえ良ければ明日も作ってくるんで良いですよー」

 

八幡「いや、それは流石になぁ...」

 

いろは「別に好きでやってるんで大丈夫ですよ。あ、でも好きとは言っても先輩のことじゃないですしまだちょっと無理なんでごめんなさい」

 

八幡「いやなにも言ってないのに勝手に振るなよ...。それと、もうわざわざ練習台になる必要もないくらい、その、美味いから問題ないと思うが」

 

いろは「な、なんか先輩がそんなに褒めてくれるなんて珍しいですね」

 

一色がややどもりながら言った。

 

八幡「ま、美味いもんは美味いしな。お前がお弁当屋だったら毎日買いにいくレベル」

 

いろは「え、本当ですか!?」

 

一色はやや興奮気味に近付いてきた。

 

いやいや、なんでそんな近付いてくるんだよ、ドキドキしちゃうじゃん。

 

八幡「お、おう本当だから取り敢えず落ち着け、な?」

 

いろは「あ、ごめんなさいちょっと取り乱しました!」

 

ハッとした様子で後ろに下がっていく。

 

あぶねー、中学の時の俺だったら告白して振られてるわ。

 

いや振られちゃうのかよ、当たり前だけど。

 

いろは「あ、で、やっぱり明日からもお弁当作ってきますよ。毎日お弁当を二人分作るのを続けられるか、っていう練習にもなりますしー。もし、先輩が負い目を感じるなら今度なにかお願い聞いてくださいよ」

 

落ち着いた一色は特有のゆるふわ口調に戻っていた。

 

なにかお願い聞くぐらいであの弁当を食べられるなら悪くないか。

 

どうせこれが無くても、こいつのお願いなんて聞く羽目になるんだしな。

 

なぜか知れないけどこいつのお願いは断れないんだよな、断れないお願いの仕方をしてくる、ってのもあるけど。

 

小町にやや似てる、ってのも断れない理由の一つか?

 

あくまでも、ややってところがポイントだ。

 

八幡「分かった、じゃあ適当に考えとけ」

 

いろは「ぜーったい忘れないでくださいよ!」

 

八幡「へくしゅん!」

 

いろは「先輩さっきからくしゃみ連発してますけど風邪ですか?」

 

八幡「いや、アレルギー性鼻炎だ。この時期は花粉共の猛攻が激しくてな」

 

いろは「あーご愁傷様です。アレルギー性鼻炎なら薬とかは飲まないんですか?」

 

八幡「あんまり好きじゃないんだよ。苦々しいのは人生だけで十分だ」

 

いろは「なにカッコイイこと風にお子様なこと言ってるんですか...」

 

八幡「流石にジョークだっての。単純に、薬は飲みすぎると効かなくなる恐れがあるらしい、って言われて以来症状が辛い時ぐらいしか飲まないんだよ」

 

いろは「あ、じゃあ薬がダメならヨーグルトとかヤクルトとかどうですか?効くとか友達が言ってましたよ」

 

八幡「両方共一年程試したが効かなかったな。因みに青汁は母親が試してたが、割と効果あったみたいだ。俺は苦いから飲まないけどな」

 

いろは「先輩って本当お子様...」

 

八幡「うるせぇ。まぁ、ヤクルトとか見たな不安定なもの以外で、薬に頼らない対処法はあるにはあるらしい。レーザー治療というやつがな」

 

いろは「レーザー治療...?鼻を消し飛ばしたりするんですか?」

 

八幡「そんなわけあるかっての。あくまで鼻の粘膜を焼くだけだ。ほれ、ネットで検索すると出てくるぞ。( http://www.makuhari-ent.com/operation-001.html )結構簡単&保険が効いて費用も割と安い、みたいだしなにより幕張だから近い」

 

いろは「じゃあ、受けてくれば良いじゃないですかー」

 

八幡「...親がそんなの面倒だから自分でなんとかしろって言ってるんだよ(痛くないとは言われても怖いっての)」

 

いろは「レーザーが怖いのを隠そうとしても顔に出てますよー。本当先輩ビビりですね」

 

八幡「ば、ばっかじゃねーのそんなわけじゃねぇし!」

 

いろは「はいはい、そうですね。あ、そういえば生物の先生が花粉症の新薬が来年度の春から出るって言ってましたね」

 

八幡「え、どんな薬だ?」

 

いろは「んーと、あ、これですね( http://www.torii.co.jp/release/2014/140117_1.html )スギ花粉のエキスを飲むだけで症状が改善する、って先輩にはうってつけじゃないですか!」

 

八幡「それが使える様になったら試してみるのもありか」

 

いろは「それまでマスクでもしてれば良いんじゃないですか?」

 

八幡「いや、それはちょっとな...」

 

いろは「なんでマスクはダメなんですか?もしかして、不審者に間違われたりとかしました?」

 

八幡「...」

 

いろは「なんか真面目にごめんなさい」

 

次の日の昼、約束通り一色は弁当を作ってきてくれていた。

 

昨日と同じく、かなり手の込んだ弁当で美味かった。

 

八幡「ご馳走さん。えーっと...その今日も美味かった」

 

いろは「はい、お粗末様でした。それは良かったです」

 

一色はニコニコしながら、俺が差し出した弁当箱を受け取った。

 

八幡「本当悪いな。なんか飲み物買ってくるけど何がいい?」

 

いろは「じゃあ、お言葉に甘えてミルクティーでお願いします」

 

八幡「本当、お前ミルクティー好きなんだな」

 

この一言は、なんとなく言っただけだったんだがやぶ蛇だったらしい。

 

いろは「あ、やっぱり先輩私の好きな飲み物覚えててくれたんですね。この間も買ってきてくれましたし」

 

八幡「こ、この間のは偶然だ」

 

慌てて誤魔化す様に飲み物を買いに行く。

 

よく考えたらそんな慌てなくても良かったはずだが、柄にもなくなんだがつい慌ててしまった。

 

飲み物を買って戻ると、一色がウトウトしていた。

 

ここで寝られても困るし目を覚まさせなきゃな。

 

八幡「おい、一色飲み物買ってきたぞ。それと寝るならせめて教室行け」

 

いろは「ふぇ?.........わ、私とした事がうっかりしてました!」

 

ふぇってなんだよ、超絶あざといな。

 

ウトウトしていただけなので、一色の意識が覚醒するまでにそんなに時間はかからなかった。

 

寝ぼけ気味の一色に、買ってきたミルクティーを渡し、時間を確認すると昼休みが終わるまで20分ほどある。

 

八幡「おい、眠いんなら教室で寝とけ」

 

そう声を掛けると、一色が一人で何か考え込んでいて様子が変だ。

 

八幡「どうしたお前?体調悪いのか

 

いろは「あ、ぜぜぜ全然そんなことないですよ!そ、それよりこないだのお願いの約束覚えてます?」

 

八幡「覚えてるがなにか見つかったのか?」

 

そう返すと、一色は十秒ほど躊躇ってからお願いの内容を言ってきた。

 

いろは「あ、あのっ!私なんかすっごく眠くて、それでえっと、その...ひ、膝枕してもらえませんか!」

 

八幡「は?」

 

What?

 

この子なに言っちゃってるの?

 

八幡「いやあの、どういう意味だそれ?もしかしてドッキリとかそういうやつか?」

 

いろは「ち、ちちち違いますよ!ただ、教室へ戻って寝るのもクラスメートに隙を見せるみたいで嫌ですし、ここならあんまり人が来ないですから!かといってアスファルトに直接寝るのも嫌だから、丁度横にいた先輩の膝かしてもらおうと思っただけですから、勘違いしないでくださいよ!」

 

顔を真っ赤にしながら早口で捲し立ててきた。

 

八幡「わ、分かった分かった。弁当作ってもらってる訳だし、それくらいは構わないけどよ。でも誰かに見られたらどうすんだよ?」

 

いろは「ここはあんまり人通りませんし大丈夫です!取り敢えず、単純に眠いだけですから本当に早くしてくださいよ!」

 

八幡「お、おう」

 

そう返事をしながら一色が寝やすい様に体制を整える。

 

やばいやばい、勘違いはするなと言われてるとはいえ大分緊張するって!

 

ぼっちの俺にはこんなやばいこと無理だっての!

 

いろは「じゃ、じゃあ先輩お膝失礼しますね」

 

一色の頭が俺の膝の上に倒れこんでくる。

 

なにこれ、なんか凄いいい匂いがしてやばい気がするぞ。

 

そりゃ、小町にねだられて膝枕をしたことくらいならあるけどさ、でもまさか異性の後輩を膝枕することになるとは思わないじゃん?

 

あとあと、気持ち悪かったんで責任取って下さいとか言われないかな大丈夫かな。

 

余程一色は疲れていたのか、いつの間にか寝そうになっていた。

 

そんな一色の表情を見ていると、つい小町にしていた様に頭を撫でてしまった。

 

八幡「す、すまん!小町にやってたからつい撫でちまった!」

 

いろは「ふわぁ...。そのまま撫でて下さいよ先輩ー。なんか凄くよく眠れそうな気がしますー」

 

一色がやや寝ぼけている感じで囁く。

 

え、いいの許されるのか?

 

もう仕方ないと覚悟を決めて、言われた通り撫で続ける。

 

一色の寝息みたいなのが聞こえてきた。

 

すぐ寝てしまったようだ。

 

しかし、こいつの髪さらさらだな。

 

ついもう必要ないとは分かっていても、無意識に頭を撫でてしまう。

 

こうしているとだんだん意識がぼーっとしてきて...なんだか俺も眠くなって...きた...。

 

.........ん?

 

ふと目を開けると、目の前には一色の顔がある。

 

そして、なんか滅茶苦茶肩とか膝とかが痛い。

 

いやまておい...今何時だ!?

 

慌てて時計を確認する。

 

まずい、俺まで寝ちゃったせいで寝過ごしたな!

 

八幡「おい、一色起きろ!」

 

いろは「ふわぁ...。あれ先輩の顔なんで.........あ、待ってください今何時ですか!?」

 

八幡「もう五限が終わるまで十分程度だ!」

 

俺はともかく生徒会長の一色はまずいだろ...。

 

いろは「あーもう!なんで先輩起こしてくれないんですか!」

 

そりゃ怒りますよねー、俺だって逆なら怒るもん、こういう状況になることがまずあり得ないけど。

 

八幡「いや、すまん俺もつい寝ちまった」

 

これはやらかした感あるな、マジで。

 

いろは「...はぁ、もう諦めましょう。眠くなった私も悪いですし。それより、もう五限は間に合わないみたいですし諦めて六限から行く方向で行きましょう」

 

八幡「まぁ、途中から入るのも気まずいし丁度いいか」

 

この後、二人で十分程度の他愛ない話をしてクラスへ戻った。

 

因みに俺は殆どのクラスメートに、特に気にもされなかった。

 

マイエンジェル戸塚たんに、どうしたの?と心配そうに尋ねられただけだったが、ぶっちゃけこれだけで俺は死ぬ程嬉しいね。

 

翌日の昼に聞いた話だと一色は保健室へ行っていた、と上手く誤魔化せたみたいだ。

 

戸塚との話をすると先輩気持ち悪いです、と普通にドン引きされたがな。

 

お昼寝事件があった日から二日後、俺はクラスの列の後ろで、体育館の床へ直接座っていた。

 

そう、今日は三学期の生徒総会だっのだ。

 

前々から一色を始めとする生徒会執行部がこの生徒総会に向けとある計画を進めていたようで、昼飯を食べている間愚痴を聞くことは多かった。

 

とはいっても計画の内容は話せないみたいだったので、単純な愚痴ばかりだったが。

 

本来なら愚痴を聞いているだけなんて耐えられないが、あいつが生徒会長になった責任の一端は俺にもあるので愚痴ぐらいは、と思い聞いていたのである。

 

昨日の昼は準備が順調に終わっているのか、結構ご機嫌だったのを覚えている。

 

が、しかし多くの場合物事はなかなか上手くいかないものである。

 

現に今、生徒総会はやじや罵声が飛んでいる中、副会長が一人で質疑応答に答えている、いう酷いものになっている。

 

何故こうなったのかを簡潔に説明すると、一色が進めていた計画というのは、生徒会組織(部活動や委員会)が現状活動しずらいものとなっており、生徒会則を変えることで活動しやすくする、といったものだった。

 

しかし、執行部側の言葉が足らなかったのか、それとも生徒側の意識の低さなのか、或いは両方なのか原因はなんとも言えないが、執行部側の生徒会則変更案を理解出来ていないであろう生徒が、訳の分からないことを言い出した。

 

それに便乗して一部の生徒が空気を煽り、全体の空気が完全に執行部が悪いというものになっていた。

 

なにかしたい気持ちはあったが、自分に出来る策がなにも思い浮かばなかった。

 

いつもの俺のやり方で解決する問題じゃない。

 

なんで俺はあんなやり方しか知らないんだ。

 

八幡「くそっ、肝心な時に俺は...」

 

下手にでていっても揉め事を大きくするだけだ、と思いひたすら我慢していた。

 

俺が歯痒い思いをしている中、二年の中から大きな声で話しはじめたやつらがいた。

 

モブ1「結局、こんな揉めてるのなんて全部会長のせいだよな。一年なんかがでしゃばるからだろ」

 

これに便乗していくつのかのグループが同じ様な事をわざと大きな声で話し始めた。

 

副会長の横に立つ一色の様子を見ると、泣くのをひたすら堪えているだけだった。

 

その瞬間、俺の堪忍袋の緒が切れた。

 

執行部の議長に見える様に立ちあがり、意見を前で述べたいという意識表示の為手を上げる。

 

周りの生徒はざわつき、質疑応答用の演台にいた副会長は唖然としている。

 

一色はもう泣いてしまいそうな表情でこちらを見た。

 

議長から指名を貰って演台の前までスタスタと歩き、生徒側からは見えない様に一色の頭にポンと手を置く。

 

八幡「よく頑張ったな、あとは任せろ」

 

一色にしか聞こえない様に囁いた。

 

さて、一色に上級生らしいとこ見せてやるか。

 

演台のマイクの前へ立ち、大きく息を吸う。

 

さぁ、ショータイムだ!

 

八幡「なぁお前ら、こんな事してて楽しいか?」

 

俺が話を始めると会場が一気に静かになった。

 

良かった、これなら話をしやすいな。

 

八幡「てめぇらがやってるのは単なる弱い者イジメだぞ。気がついてるか?執行部が立場があって何も言えないのに良い事に好き勝手言いやがって。第一、執行部側の意見を理解出来てんのか?おい、お前に聞いてんだよ。そこのお前にだよ」

 

そう言って、先程一色の批判を大声でしていた生徒を見る。

 

モブ「いやあの、えっと...」

 

八幡「小声で何か言っても聞こえねぇんだよ。もっと大きな声で言えよ。大声だせねぇなら首を縦か横に振れ」

 

モブは首を横に振る。

 

八幡「そうか。じゃあ、さっきまでやじ飛ばしてた連中に聞くけどてめぇらは理解出来てんのか?ちゃんと理解した上で批判してんだろうな?」

 

そう言うと更に体育館の中の空気が一気に重くなる。

 

八幡「俺は、ここまで騒ぎが大きくなるまで止められなかった。だが、敢えて自分の事を棚上げにして言わせてもらおう。やじ飛ばしてる奴の、周りの連中はおかしいとは思わなかったのか?別に、今回の案生徒の不利益になるような事ではないよな?」

 

八幡「結局、やじ飛ばしてやつなんて執行部に刃向かってる俺カッコイイ程度にしか思ってないんだろ。そんなクズは少し黙ってろよ。そして、執行部側の言ってる事を理解してから発言しろ。周りもなにが正しいのかぐらいてめぇで判断しろよ。言いたい事は以上だ」

 

指輪の魔法使いみたいには格好良くいかないもんだな。

 

俺自体ある意味魔法使い候補生みたいなもんだけど。

 

しかし、滅茶苦茶緊張した。

 

全校生徒の前で喋るとかぼっちの俺にはレベルが高いっての。

 

だが、俺がでしゃばった意味が多少なりともあったのか、この後生徒総会は紛糾することもなく無事、生徒会案の承認を終わりを迎えた。

 

一色も顔色は悪いものの、ちゃんと歩けていたので大丈夫だろうとは思う。

 

だか翌日、この時に感情だけで動いた事を改めて後悔することになる。

 

生徒総会の次の日の朝、登校している最中に俺はチャリであるにも関わらず、総武校生がやたらにっち見てくる。

 

ま、昨日は全校の前であんな啖呵きったんだ、当たり前の反応だ。

 

が、ぼっちの俺には関係ないな。

 

他人なんか気にする必要もない。

 

だが、教室に入っても視線をやたら浴びるのは多少堪えるな。

 

自分の席に座ると、戸塚がトテトテと寄ってきた。

 

戸塚「八幡、昨日は格好良かったよ!僕、なんにも出来なくてごめんね...」

 

八幡「いやいや、戸塚はいるだけで癒されるからそれで良いんだよ」

 

戸塚「そ、それなら良いんだけど」

 

あああああ戸塚可愛いいいいいなんで男なんだああああいっそ女にいいいいい。

 

はっ、駄目だ真理の扉が見えた気がしたぞ今。

 

朝から戸塚に話しかけてもらえるというラッキーなイベントはあったが、いつも通り授業を受け気が付くと四限が終わった。

 

正直、一色の事が多少気掛かりだったのでいつもより急ぎ気味で、ベストプレイスへ向かう。

 

だが、いつもなら来るはずの一色が十分待っても来なかった。

 

昨日の後処理をしていて忙しいのかもしれない。

 

わざわざこちらから出向いて探す必要はないだろう。

 

が、もしかしたら一色は俺の分の弁当を持っているかもしれない。

 

折角作って貰ったのに、購買で済ましてしまうのも勿体無いな。

 

だから、あくまで不本意であるが弁当の為に一色を探しに行くとしよう。

 

別に一色の様子が気になっているからとかそう言うわけではない。

 

念の為、ベストプレイスで五分程待ってから生徒会室へ向かった。

 

だが、生徒会室は空だった。

 

では、恐らく教室で食べているのだろう。

 

もしかしたら、昨日の事もあって俺と食べるのが面倒になったのかもしれない。

 

それならわざわざあいつの所へ必要も無いだろう、そう判断してベストプレイスへ戻る。

 

しかし、なんだろう胸騒ぎがする。

 

そして、その予感は的中していた。

 

葉山&戸部「「ヒキタニ!」」

 

ベストプレイスで座ってぼーっとしていたら、後ろから息を切らした葉山と戸部がやってきた。

 

八幡「そんなに息を切らしてどうしたんだ、お前ら」

 

少し呼吸を整えてから葉山が喋り出す。

 

葉山「時間がない。簡潔に用件だけ言おう。いろはがクラスメートと君の事で喧嘩した」

 

戸部「それで教室を飛び出ていっちまったんだと」

 

八幡「...ッ!」

 

まさか、そんなことになるとはな。

 

俺としたことがうっかりしてたな。

 

二ヶ月以上一緒に飯を食べてるんだ、幾ら人目に付かないベストプレイスとは言えど噂にはなるか。

 

更に昨日のアレで、なにか言い掛かりでも付けられて文句を言われたってところかな。

 

噂話が回ってくる友人がいないから、完全にその可能性を失念していた。

 

葉山「昨日何も出来なかった俺たちが言うのも筋違いかもしれない。だが、いろはを任せられるのは君しかいない!頼む、どうかあいつを助けてやってくれ!」

 

助ける、ねぇ。

 

こんな俺に何が出来るんだか。

 

八幡「期待して貰ってるとこ悪いが俺が行っても何の役にも立たねーよ」

 

戸部「いんや、そんなことねーべ。寧ろ、ヒキタニ君じゃないと駄目だ」

 

戸部がそう言うと葉山も力強い声で語り始めた。

 

葉山「あいつはきっと皮を被り続けて生きてきた。けど、君はその皮をぶち破って接してきた。あいつの、一色いろはの一番近くにいられるのはお前しかいないんだよ、比企谷!」

 

白馬の王子様なんて葉山の方がよっぽど似合うっての。

 

八幡「俺が行った所で余計面倒起こすだけだよ...」

 

そう言った時、戸部がやや格好つけた喋り方で語りかける。

 

戸部「全く、ヒキタニはしゃーないやつだべ。そんなに動きたくないなら動く理由でも作るしかねーな。いろはすが教室を飛び出たのはヒキタニのせいだべ?なら責任取るべきだろ、ヒキタニ!」

 

戸部、お前ってやつは本当いい奴なのかもしれないな。

 

結局、俺の自己満足になるかもしれないし、一色に余計な負担をかけることになるかもしれない。

 

でも、もし一色に対して俺に出来ることがあるならやるべきなのかもしれない。

 

八幡「...そう言われたら俺はあいつの所に行くしかないな。あいつがどこにいるかは分かるか?」

 

葉山「恐らく、サッカー部の部室だ。昼休みは誰も使わないからな」

 

八幡「そうか、その悪いな二人とも」

 

そう言ってから、俺はサッカー部の部室がある部室棟へ駆け出す。

 

葉山「頑張ってこい、比企谷」

 

葉山がなんかボソッと言っていたが気にしてもいられない。

 

そして、サッカー部の部室へ辿り着き、勢い良く扉を開けた。

 

いろは「誰...ですか?」

 

微かに震える声で一色は問いかける。

 

八幡「俺だ。比企谷八幡だ」

 

いろは「あーあ、一番会いたくない人が来ちゃいましたねー」

 

一色は物が乱雑に積まれている部室の奥にある椅子に腰掛けていた。

 

八幡「こんなとこで何してんだよ」

 

一色は座っていた椅子から立ちあがりながら喋り始めた。

 

いろは「いやーちょっと教室にいると居心地悪くてー」

 

軽い調子で一色は言う。

 

八幡「まぁ、事情は葉山達から聞いた」

 

いろは「あー...もしかして先輩責任感じてます?いや別に私が教室を出たのは自分の不甲斐なさを感じたからですよ」

 

八幡「でも、俺も関わってるんだろ」

 

いろは「いや...その揉めた相手に先輩の事悪く言われて...それで...ぐすっ...うわあああああああん」

 

一色はついに泣き始めてしまった。

 

気の抜けた授業開始のチャイムがなっているが、今日は許してもらおう。

 

どうせ、俺は気にも止められないんだし関係無いかもしれないが。

 

泣かれても、対処出来るわけじゃないので泣き止むまで待つか。

 

十分ほどずっと一色は泣いていたが、だんだん落ち着いてきた。

 

八幡「落ち着いたか?」

 

いろは「先輩、取り乱してしまいましてすみません」

 

そう言って笑みを浮かべた。

 

一色「なんか、泣いてるのを見られたとか恥ずかしいですね。誰にも話さないでくださいよ、先輩」

 

八幡「あぁ、気にすんな。どうせ、俺には話をする相手も居ないしな」

 

一色は俺の言葉にクスッと笑った。

 

いろは「そうですね、天涯孤独のぼっちですもんね」

 

八幡「いや、別に俺にはほら...戸塚とか戸塚とか戸塚とか小町がいるし」

 

いろは「それほぼ、戸塚先輩オンリーじゃないですかそれ...」

 

凄まじくドン引きされた。

 

八幡「そんなことよりさ、お前さえ良ければ少し話をしないか?どうせ五限も始まっちまったし」

 

いろは「先輩からそんなこと言うなんて珍しいですね...。でも、私も先輩とお話したいですし、是非お付き合いしますよ」

 

八幡「ここじゃなんとなくあれだし、どうせならいつもの場所へ行かないか?」

 

いろは「そうしましょうか」

 

二人で並んでベストプレイスまで歩く。

 

無言なのが微妙に気まずい。

 

そして、ベストプレイスまで辿り着くと二人で腰掛けた。

 

俺の用件はたった一つだけだ。

 

八幡「なぁ、もうお前は俺に関わるな」

 

一色はわけが分からない、という顔をしている。

 

いろは「どういう意味ですか、先輩?」

 

八幡「言葉通りの意味だっての。お前に関わられても困るんだよ」

 

すまんな、葉山と戸部。

 

お前らはなにか期待してたみたいだけど、俺にはやっぱり白馬の王子様なんての向いてねーよ。

 

八幡「今まで一緒に昼飯食べてたのは、あんまりにもうるさいからだっての。食費浮くから貰ってただけだ。生徒会関連でもこき使われるなんてごめんだし、昨日あんなことしたのも気紛れだ。それに俺がお前みたいなのと一緒にいても面倒にまきこまれるだけだ」

 

これだけ言えば流石に一色も愛想を尽かすだろう。

 

そう思い、一色の様子を見ようと下を向いていた顔を上げた。

 

俺の予想では、一色が泣いたり、怒ったりしているかと思ってた。

 

だが

 

一色いろはは俺に向かって

 

微笑みかけていた。

 

目があったのが合図であるかの様に、微笑みかけたまま一色は口を開く。

 

いろは「嘘だと分かっててもそんだけ言われると流石にキツイですよ、先輩。だーかーらー、私も容赦無しで言いたいこと言わせてもらいますね」

 

そう言うと一色は手を上にあげた。

 

パシン!

 

上から振り下ろされた、一色の小さな手のひらが俺の頬を勢いよくはたく。

 

いろは「私を舐めるのも大概にしてくださいよ、先輩。私がそんな弱い女に見えますか?私は先輩をずっと見てきたんです、どんな事を考えてるのかぐらい分かってます。先輩が優しいのも知ってます。だからこそ。敢えて言います!私は先輩に守られるだけの人間なんて嫌です!先輩が居ないなんて嫌です!一色いろはは、先輩の隣っていう本物が欲しいんです!」

 

いろは「あなたが好きです、先輩!」

 

いろは「葉山先輩に告白したのも私なりのケジメです。偽物の、形だけの気持ちであることに気づかされたんです。そして、柄にも無く真剣に、先輩の事を欲しいって思ってしまったんです」

 

そこで一呼吸置いてから一色は続ける。

 

いろは「それに、いくら罵倒されても涙を流しながらだと何も説得力がありませんよ」

 

慌てて自分の頬を触る。

 

久々に俺の頬はしっとりと濡れていた。

 

この時気付いた。

 

ああ、俺もこいつの事-

 

八幡「なぁ、一色。さっきは色々言って悪かった。忘れてくれ、とは言わん。けど、もう一回俺の話を聞いてくれるか?」

 

一色はクスッと笑ってから、先輩は本当仕方ない人ですね、とでも言いたげにうなづいた。

 

八幡「俺は恋愛なんてものはわからない。昔、恋愛だと信じてたものは単なる勘違いだったし、今でもそれはトラウマだ。今、この場でお前に言われたことも半信半疑だ。けど、俺は...」

 

もしかしたらこれから先凄く苦労するだろうし、一色を傷付けるたろう。

 

俺だって傷付く事はあるだろう。

 

けど、後悔はしたくない。

 

八幡「俺は、お前の事を信じたいと思った!」

 

我ながら締まらない台詞だとは思う。

 

けど、これが俺の精一杯だ。

 

いろは「それは付き合ってくれる、ってことでいいんですか?」

 

一色は泣きそうな、でも嬉しそうな表情をしながら俺に尋ねて来た。

 

八幡「お、おう。その通りだ」

 

いろは「ようやく...本物が手に入ります...」

 

一色は笑いながら泣いていた。

 

俺も泣いているかもしれない。

 

けどそんなことより、今は凄く気分が良かった。

 

八幡「なぁ、あざとい後輩」

 

いろは「なんですか、臆病な先輩?」

 

八幡「これからも宜しくな」

 

いろは「こちらこそです、先輩!」

 

EDpart1 完

 

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なにかしたい気持ちはあったが、自分に出来る策がなにも思い浮かばなかった。

 

いつもの俺のやり方で解決する問題じゃない。

 

八幡「くそっ、肝心な時に俺は...」

 

下手にでていっても揉め事を大きくするだけだ、と思いひたすら我慢していた。

 

俺が歯痒い思いをしている中、二年の中から大きな声で話しはじめたやつらがいた。

 

モブ1「結局、こんな揉めてるのなんて全部会長のせいだよな。一年なんかがでしゃばるからだろ」

 

モブ2「私もそうだと思うー。なーんか生意気よね」

 

これに便乗していくつかのグループが同じ様な事をわざと大きな声で話し始めた。

 

副会長の横に立つ一色の様子を見ると、泣くのをひたすら堪えているだけだった。

 

ふと、クラスの先頭の方にいた葉山と目が合う。

 

葉山、お前に白馬の王子様役ってのはピッタリだよな。

 

雪ノ下と由比ヶ浜には怒られるかもしれんが、流石にこのまま放っておくと気分が悪い。

 

俺は周りに気づかれる様に大きな音を立て、その場で立ち上がった。

 

生徒の目が俺へと注がれる。

 

由比ヶ浜がこちらに気付き泣きそうな顔になった。

 

雪ノ下の表情は...ここからじゃ見えないか。

 

さて、やることちゃっちゃとやりますかね。

 

だが、俺が口を開く前に先に喋り始めた奴がいた。

 

いろは「先輩!わざわざ先輩が傷付く必要は無いです!私の問題ですから、私に解決させてください!」

 

そう叫び、一色はマイクを持った。

 

いろは「皆さん、私の力不足で混乱させてしまい本当にごめんなさい。一年生でまだまだ足りない部分はあっても、私は生徒会長です。皆さんの不利益になる様な提案はしていないです。きっと認識の齟齬があるだけだと思うんです。ですから、もう一度だけ話を聞いてもらえませんか?」

 

一色がそう言うと、拍手が起きた。

 

話を聞くぞ、という意思表示だろうか。

 

先程まで一色の事を悪く言っていた奴らは、バツの悪そうな顔をしていた。

 

いつの間にか一色も強くなったんだな。

 

なんか生徒総会中に無駄に立ちあがっただけとか、めちゃくちゃはずい奴だよね。

 

俺のことだけど。

 

一色は執行部案をもう一度丁寧に話し始めた。

 

今度こそきちんと理解してもらえた様で無事承認され、生徒総会は閉会となった。

 

ま、良かったのかもしれん。

 

教室へ皆が戻る中、俺は後ろから声をかけられた。

 

いろは「先輩!」

 

八幡「どうした?」

 

いろは「放課後時間ありますか?お話したいことがあるんですよー」

 

一色のやつそう言って仕事押し付ける気じゃないだろうな...。

 

ま、今日ぐらいは手伝ってやっても良いか。

 

八幡「構わないぞ。それじゃあ、また後でな。あと...そのまぁお疲れさん」

 

いろは「じゃあ、いつもの昼の場所でお願いします!」

 

HRが終わりベストプレイスへと向かう。

 

よく考えたらなんでベストプレイスなんだ?

 

生徒会関係無くね?

 

まぁ、行けば分かるか。

 

俺がベストプレイスについてから五分後、一色は現れた。

 

いろは「先輩、遅くなってすみません!」

 

八幡「五分ぐらいしか待ってないし大丈夫だ。で、何の用なんだ?」

 

そう言うと一色は黙り込んでしまった。

 

こちとら由比ヶ浜の追求回避してまで来てるのに、人呼んでおいて何がしたいんだこいつ。

 

八幡「おい、一色?」

 

いろは「あ、すみません!」

 

そういってから一色は一息つき、話じめた。

 

いろは「先輩、昨日はありがとうございました」

 

八幡「俺はなんもしてねーぞ。ただ、全校の前で恥かいただけだっての」

 

いろは「いえ、先輩がいたからこそ私は勇気を振り絞れたんですよ」

 

一色はまっすぐな瞳で言った。

 

いろは「生徒総会だけじゃなくて、葉山先輩に告白したのもですよ?私は先輩に勇気を貰えたから、馬鹿みたいに恋をしてる振りをする私と決着を付けられたんです」

 

八幡「い、いや別に俺がなんかしたわけじゃねぇだろ」

 

ぶっちゃけ、こんな展開予想してなかったせいで激しく動揺している。

 

いろは「いいえ、そんなことないですよ。でも、きっと先輩は優しいから誰でも助けてしまうんですよね。私はその優しさを独占したいとは言いません。でも、助けて貰った分私は先輩を支えたいです」

 

いろは「先輩の隣にずっと居させてください」

 

一色はそう言ってから抱きついて来た。

 

いやいや、えっと告白みたいな台詞言われたんだけど、どうする俺!

 

柔らかいしいい匂いするしヤバイって。

 

あ、わかったドッキリかこれ。

 

何処かで、戸部とかこいつの手下が録画してて俺を笑いものにする、的なやつだな。

 

あーまんまと引っかかるとこだったわーマジあぶなかったわー。

 

と、戸部みたいなノリで思考していると、一色が赤い顔で抱きついたまま上目遣いでこっちを見た。

 

いろは「先輩、何か言ってくださいよー」

 

八幡「え、えっと...上目遣いがあざといな」

 

そう言うと、一色はため息をつきながら腕を離した。

 

いろは「...はぁ。きっと先輩の事だからドッキリとかイタズラとか思われてるんでしょうねー」

 

八幡「...違うのか?」

 

いろは「やっぱ、先輩に遠回しな表現じゃダメですね」

 

そう言って、一色は俺の首に首を回し...

 

一色が唇が俺の唇に触れる。

 

いろは「ファーストキスですよ、先輩」

 

流石に、これの意味するところが分からない訳じゃないが...。

 

いろは「で、先輩は返事はくれないんですか?」

 

八幡「まぁ、そのなんだ。俺はお前の弁当は美味いと思うし、一緒にいるのも...苦じゃない。けど、付き合うとかそういうのはやっぱり無理だと思うぞ。俺はそもそもぼっちだかはいろは「で、先輩は私の事嫌いなんですか?」

 

八幡「き、嫌いじゃないです」

 

一色の迫力に思わずビビってしまった。

 

いろは「じゃあ、良いじゃないですか。私と付き合ってくださいよ。先輩はもしかしたら、嫌われ者の俺と付き合ったら私に迷惑かかるとか考えてるのかもしれませんけど、私はそんなのに負けません。それに...先輩を裏切ったりしませんから」

 

もう一度一色は俺の目をじっと見つめてきた。

 

八幡「...俺は見ての通り目は腐ってるし、多少捻くれてる」

 

いろは「ええ、多少じゃなくて相当捻くれてますね」

 

一色は少し笑いながら言った。

 

八幡「それにヘタレだ」

 

いろは「十分理解してます」

 

自分でも顔が赤くなっていくのが分かる。

 

八幡「それでも良ければ俺とつきあってくれ」

 

いろは「絶対離しませんからね!」

 

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いろは「先輩!いろは大好きって言ってください!」

 

八幡「え、なんだって?」

 

いろは「だーかーらー私にいろは大好きって言ってくださいよ!」

 

八幡「え、いろはす大好き?」

 

いろは「なんでそう言いながら、いろはすのみかん味がパッと先輩のポケットから出てくるんですか!」

 

八幡「いや、親父が利根コカコーラボトリング(株)の優待株主だからな。なんかダンボールに入ったコカコーラの色んな飲み物が大量に送られてくるんだよ。」

 

いろは「あ、だから大好きな彼女の名前と似てる飲み物を貰ってきた訳ですね!」

 

八幡「え、なんだって?」

 

いろは「」

 

八幡「どうしたんだ、一色?」

 

いろは「もう先輩なんか嫌いです!もう知りません!」

 

八幡「すまんすまん、からかい過ぎた」

 

いろは「ぜーったい許しませんよ!先輩が私の事いろはって呼んでくれない限り許しません!」

 

八幡「いや、それは...な?」

 

いろは「あ、先輩私の事下の名前で呼ぶの嫌なんですね!私の事嫌いなんですね!私だって先輩の事なんて......別にそうやって頭なでなでされても許してなんかあげ......あぅ」

 

八幡「いろは、ごめんな」

 

いろは「...じゃあお詫びに今日デート連れて行ってくださいよ?そしたら許します」

 

八幡「人が多いから嫌なんだが...」

 

いろは「全く、わがままな人ですね。じゃあ、先輩の家でお家デートでも良いですよ」

 

八幡「あー小町いるけどいいか?」

 

いろは「小町ちゃんなら構いません!」

 

八幡「よし、じゃあ行くか」

 

いろは「あ、あと先輩その...ゴニョゴニョ」

 

八幡「ったく仕方ねーな、ほれ」チュ

 

副会長「なんだあのバカップル...」

 

書記「比企谷先輩が迎えに来たと思ったらなんかいちゃいちゃして帰りましたけど...」

 

副会長「しかもその上、本人達は自分の影で上手く隠してるつもりなのかもしれないが、キスしてるの見えてるぞ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

八幡「後輩と」いろは「先輩と」八幡&いろは「「二人の空間」」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1411261272/