アニメssリーディングパーク

おすすめSSを当ブログで再編集して読みやすく紹介! 引用・リンクフリーです

いろは「でも….今日は先輩と二人がいいので….」【俺ガイルss/アニメss】

 

いろは「ふりでいいんでお願いしますよー」

 

八幡「なんでそんなことしなきゃいけないんだよ?」

 

いろは「わたし、男の人からデートを誘われたりするんですよ」

 

八幡「だろうな」

 

いろは「やけに簡単に認めますね……もしかして、わたしのこと可愛いって言いたいんですか? ごめんなさい。あざとすぎて無理です」

 

八幡「お前に言われたくねえな…」

 

八幡「いいから話進めろよ」

 

いろは「えっーと、1つ上の先輩にデートに誘われてるんですよ」

 

いろは「けど、わたしはその人に興味がなくて… でも、サッカー部の先輩なんであんまり無下にはできなくて」

 

八幡「まあ、今後に関わってくるしな」

 

いろは「一応、遠回しに断ってるんですけど気付いてないみたいで、いついく?みたいな感じでしつこくって」

 

八幡「いるよなそういうやつ、女の「また今度ね」なんて永遠と来ないのにな」

 

いろは「だから、不本意ですけど先輩に彼氏役やってもらって、諦めてもらおうかと」

 

八幡「不本意って言っちゃったよ……そういうのは葉山に頼めよ」

 

いろは「もちろん考えましたけどねー。でも、サッカー部の人のことだから言いづらいんですよ」

 

八幡「それで俺にくるのかよ…」

 

いろは「だって先輩、ちょろ…優しいですし」

 

八幡「俺はちょろくねえよ」

 

八幡「まあ、あれだ。自分でなんとかしろ」

 

いろは「な、なんでですか」

 

八幡「俺にそういうのは向いてねえよ」

 

いろは「わかってますけど……」

 

八幡「わかるなら言うなよ……」

 

いろは「でも、先輩にもメリットありますよ?」

 

八幡「どんなだよ…… なんならデメリットしか浮かばないまである」

 

いろは「演技とはいえ、こんな可愛い後輩と付き合えるんですよー?」

 

八幡「自分で言うなよ…… 俺には妹さえいればいいんだよ」

 

いろは「そんなこと言ってるから、先輩は友達が少ないんですよ」

 

八幡「とにかく、この話はなしだ。俺はもう行くぞ」

 

いろは「ちょっと待って下さいよー」

 

八幡「葉山に頼め、あいつならうまくやるだろ」

 

いろは「もー、強情ですね」

 

八幡「じゃあな。早く部室に行かないと雪ノ下に罵倒されるんだよ」

 

いろは「それでも……」

 

八幡「あっ?」

 

いろは「それでも、俺は……」

 

いろは「俺は、本物がほしい……」

八幡「おい、やめろ」

 

いろは「なんでですかー? わたしの想いを伝えただけですよ?」

 

八幡「俺は、って言ってたじゃねえか……いや、演技なんだから偽物だろうが」

 

いろは「昔のわたしなら、相手の気持ちを考えないでデートの誘いを受けて、適当に接してたと思うんです」

 

いろは「でも、いまはそういうの嫌なんです」

 

いろは「それはきっと、本物がいいってことなんだと思うんです」

 

八幡「……」

 

いろは「こんな風になったのは先輩のせいなんですから責任とってください」

 

八幡「あー、わかったよ。うまくやれるかわかんねえけどな」ガシガシ

 

いろは「やっぱり先輩はちょ……優しいですね」

 

八幡「だから、ちょろくねえよ」

 

いろは「じゃあ、さっそく今日からお願いしますね」

 

八幡「今日からって、なにすんだよ?」

 

いろは「先輩はそういうの疎いからわからないでしょうけど、カップルは一緒に帰ったりするんですよ」

 

八幡「疎くねえから、縁がないだけだから。まぁ、一緒に帰るだけならいいぞ」

 

いろは「じゃあ、校門の前で待ち合わせいいですよね?」

 

八幡「わかった。部活が終わったら行く」

 

いろは「あっ、奉仕部の2人には内緒にしてくれませんか?」

 

八幡「別にいいけどなんでだよ?」

 

いろは「雪ノ下先輩怒りそうだし……」

 

八幡(雪ノ下……お前、どんだけ怖いんだよ……)

 

八幡「由比ヶ浜なら怒らないで力になってくれるんじゃないか?」

 

いろは「結衣先輩は話は聞いてくれるでしょうけど、このやり方は認めてくれませんよ」

 

八幡「なんで?」

 

いろは「先輩って、鋭いのか鈍いのか、よくわかんないですね」

 

いろは「とにかく、内緒でお願いしますよ!」

 

八幡「わかったよ。じゃあ奉仕部行ってくるわ」

 

いろは「終わったらちゃんと来てくださいよー? わたし、先輩がくるまで、ずっと……ずっと……待ってますから……」

 

八幡「健気な後輩アピールはいいから……あざとすぎるぞ」

 

 

部室

由比ヶ浜「ヒッキー、遅いし!」

 

雪乃「珍しいじゃない。あなたがこんなに遅れるなんて」

 

八幡「悪い、ちょっと用事があってな」

 

由比ヶ浜「用事ー? なにかあったの?」

 

八幡「まあ、いろいろとな」

 

由比ヶ浜「いろいろってなんだし!」

 

八幡「そんなに気になるのかよ……お前、どんだけ俺のこと好きなんだよ」

 

由比ヶ浜「ち、違うし! べ、べつにヒッキーなんて好きじゃないし!」カァァ

 

八幡(冗談じゃないですか……そんな顔を真っ赤にして否定しなくても……)

 

雪乃「さすがナルヶ企君。自意識過剰ね」

 

八幡「だから、なんで昔のあだ名知ってんだよ」

 

雪乃「どうせ、比企谷くんのことだし、平塚先生に呼び出されてたのではなくて?」

 

八幡「まあ……そんなところだな……」

 

雪乃「なんか含みのある答えね……もしかして、一色さん?」

 

八幡(!)

 

八幡「ああ、ちょっと相談を聞いてたんだよ」

 

雪乃「一色さんに甘いのではなくて? 生徒会長なんだから自立させないと」

 

八幡「そうだな……気をつける」

 

八幡「……」ペラペラ

 

雪乃「……」ペラペラ

 

由比ヶ浜「……」ピコピコ

 

雪乃「もう、こんな時間ね……この辺にしておきましょうか」

 

由比ヶ浜「じゃあ、ゆきのん。一緒に平塚先生に鍵返しに行こうよ!」

 

雪乃「一人で大丈夫なのだけれど……」

 

由比ヶ浜「ゆきのん、私と一緒だと嫌なの……?」

 

雪乃「嫌ではないわ……ただ、その……恥ずかしいじゃない……」///

 

由比ヶ浜「ゆきのん、かわいい!」ギュー

 

八幡(こいつら、俺がいるの忘れてんのか?)

 

由比ヶ浜「じゃあねヒッキー!」

 

雪乃「また明日ね」

 

八幡「おお、じゃあなー」

 

由比ヶ浜「そうだ、ゆきのん。また勉強会しようよー。前に行ったマリンピアのカフェでさ」

 

雪乃「そうね、今度行きましょう」

 

八幡(俺は無視ですか、そうですか)

 

 

校門前

八幡(もうサッカー部終わってるな……あっ、いた)

 

サッカー部員「いろはちゃんは可愛いね!」

 

いろは「そんなことないですよー?」

 

サッカー部員「そうかな?いろはちゃんがサッカー部にいると疲れが吹っ飛ぶよ!」

 

いろは(わたしは、あなたと話すと疲れますけどね……あっ)

 

いろは「せんぱーい!」

 

八幡(笑顔で手を振らないでくれますかね。勘違いしそうになるじゃないですか)

 

八幡「悪い、遅くなった」

 

いろは「ほんとですよー。待ちくたびれましたよ!」ギュ

 

八幡(腕に抱きつかれても……あざといからなあ……)

 

いろは「じゃあ部員先輩、お疲れ様でしたぁー」

 

サッカー部員「あ……うん……」トボトボ

 

八幡(背中が泣いてるな……)

 

いろは「先輩、行きましょう!」

 

八幡「おお、行くか」

 

いろは「……」

 

いろは「なんで止まってるんですか?」

 

八幡「なんだよ?駅まで行くんだろ?」

 

いろは「そうですけど……」

 

八幡「後ろ乗れよ。待たせたし、乗っけてく」

 

いろは「……」

 

八幡「おい」

 

いろは「……ごめんなさい。付き合ってるのはあくまで演技なので本気にされると困ります」

 

八幡「はいはい……ほら荷物載せろ」

 

いろは「……先輩もあざといですよ」

 

いろは「じゃあ、お願いしまーす」ギュ

 

八幡「いや、抱きつく必要ないだろ」

 

いろは「いいじゃないですか、そういう気分なんですから」

 

八幡「どんな気分だよ……」

 

いろは「そうだ、ご飯食べて帰りません?」

 

八幡「まあ、いいぞ」

 

八幡(小町には、後でメールしておくか)

 

いろは「どこ行きましょうか」

 

八幡「サイゼだな」

 

いろは「はぁ……先輩、わたしはいいですけど、他の女の子に言ったらフラれますよ」

 

八幡「なんでだよ。うまいだろ?」

 

いろは「そういうことじゃなくてですね……サイゼは安いイメージあるから、それがマイナスですね。お金ないんだな、とか思われるんじゃないですかね?」

 

八幡「結局は金か……」

 

いろは「お金と外見で判断するの簡単ですしね」

 

八幡「さて着いたぞ」

 

いろは「先輩は意外と安全運転なんですねー、もっと段差あるところとか走ると思ってましたよ」

 

八幡「いや、後ろにお前を乗せてたし」

 

いろは「優しさアピールですか? 確かに優しい人は好きですけど……」

 

八幡「わかったから。ほら、いくぞ」

 

いろは「いやー、美味しかったです。ごちそうさまでした」ペコリ

 

八幡「おう」

 

いろは「そうだ、明日はわたしがお弁当作ってきますよー」

 

八幡「ん? 奢ったことなら気にしなくていいぞ」

 

いろは「奢ってもらってお返しもしないのはちょっと……」

 

八幡「意外と律儀だな。女なんて奢ってもらうのが当然だと思ってるんじゃないのか?」

 

いろは「そういう人もいますし、わたしもそう思ってましたけど、一方的に奢ってもらうだけとか、そういうのはもう嫌です」

 

八幡「そうか……なら、頼む」

 

八幡「行くか」

 

いろは「ですね。だいぶ遅いですし」

 

八幡「あれ?乗らないのか?」

 

いろは「いまは歩きたい気分なんです」

 

八幡「遅いし、早く帰ったほうがいいだろ?」

 

いろは「先輩は女心がわかってないなあー」

 

八幡「なんだよそれ……じゃあ、ほら」

 

いろは「えっ?」

 

八幡「鞄かせよ。前かごに入れてやるから」

 

いろは「……」

 

八幡「なに、固まってんだよ」カバンヒョイ

 

いろは「やっぱり、先輩はあざといです……」

 

 

駅前

いろは「それじゃあ先輩、ありがとうございました!」

 

八幡「おお、じゃあなー」

 

 

次の日 昼休み

葉山「比企谷くん」

 

八幡「なんだよ」

 

 

海老名「はやはちキタァーーーーーーー!」ブハァ

 

三浦「擬態しろし」フキフキ

 

 

葉山「いろはが生徒会室に来てほしいって」

 

八幡(弁当か)

 

八幡「ああ、わかった」

 

 

生徒会室

八幡「って、空いてねえし……」

 

いろは「すみません遅れましたー」

 

八幡「騙されたかと思ったぞ……」

 

いろは「生徒会室の鍵借りに行ってたんですよ。そしたら部員先輩に捕まって……」

 

八幡「昨日のあれで、まだ諦めないとかメンタル強すぎだろ」

 

いろは「でも、先輩と食べる約束してる、って言ったら、簡単に解放してくれましたけどね。多少は効いてるんじゃないんですかね?」

 

いろは「さあ、先輩がおまちかねのお弁当ですよ」

 

八幡「……」

 

いろは「どうしたんですか?じっとお弁当見つめて」

 

八幡「なんか、ハートマークが描かれてるんだけど」

 

いろは「ときめいちゃいました?」

 

八幡「こんなことでときめくほどピュアじゃねえから」

 

いろは「おいしいですかー?」

 

八幡「なんだ、その……普通にうまいぞ」ガシガシ

 

いろは「ほんとですかー? そうだ、後学のためにも詳しく教えてくださいよ」

 

八幡「あれか、葉山のために作るのか? だったら大丈夫だろ、彩りもいいし、盛りつけも丁寧で、味もいいしな」

 

いろは「……特にどれがおいしいですか?」

 

八幡「玉子焼きだな、この味付けは好きだ。まあ、葉山が好きかわかんねえけどな」

 

いろは「そうですか……甘めが好きなんですね」

 

八幡「だから葉山が好きか知らんぞ」

 

いろは「先輩は、鋭いのか鈍いのか、ほんとによくわかんないですね」

 

八幡「ごちそうさん

 

いろは「あっ、お弁当箱は回収しまーす」

 

八幡「ちゃんと洗ってから返すぞ?」

 

いろは「大丈夫ですよ。明日も使いますし」

 

八幡「明日もって……いいのか?」

 

いろは「付き合ってるなら一緒にお弁当は欠かせないじゃないですか?」

 

八幡「しかしなあ……大変だろ?」

 

いろは「わたし、料理得意なんで大丈夫ですよー」

 

八幡「そういう問題じゃないだろ」

 

いろは「先輩がいらないって言っても、作ってきますからね?」

 

八幡「わかったよ。じゃあ、明日も頼む」ガシガシ

 

いろは「今日も放課後、校門前で待ち合わせでいいですよね?」

 

八幡「ああ、部活終わったら行く」

 

いろは「今日は遅くならないでくださいね?」

 

八幡「わかったよ。なるべく早くする」

 

 

放課後 奉仕部

八幡「……」ペラペラ

 

雪乃「……」ペラペラ

 

由比ヶ浜「……」ピコピコ

 

 

由比ヶ浜「そういえばさヒッキー、昼ご飯どこで食べてたの?」

 

八幡「……なんでだよ」

 

由比ヶ浜「なんか彩ちゃんが捜してて、いつものとこにいないの? って聞いたら、いなかったって言ってたから」

 

八幡「……まあ、ちょっと材木座に捕まってな」

 

由比ヶ浜「あー、中二かあ……」

 

雪乃「まだ書いているのね……」

 

八幡「そ、そうみたいだな」

 

雪乃「あなたからちゃんと言ったほうがいいのではなくて? 才能がないと」

 

八幡「なんで俺なんだよ。雪ノ下のほうが向いてるだろ、そういう事は」

 

雪乃「あなた、私をなんだと思ってるのかしら……」

 

八幡「暗くなってきたな」

 

雪乃「ええ、今日はこの辺にしておきましょうか」

 

由比ヶ浜「もうこんな時間なんだ…… じゃあ、ゆきのん。一緒に行こう?」

 

雪乃「今日もなのね……」

 

由比ヶ浜「二人のほうが楽しいじゃん!」

 

雪乃「……そうかもしれないわね」

 

由比ヶ浜「! ゆきのーん!」ギュウー

 

雪乃「苦しいわ……由比ヶ浜さん……」テレテレ

 

八幡(ここはリリアン女学園かよ)

 

 

駐輪場

いろは「せーんぱい!」ポフ

 

八幡「ん?一色か」

 

いろは「先輩、反応が薄すぎますよー」

 

八幡「だってあざといし……それになんか慣れたしな」

 

いろは「えー、もう倦怠期ですかー?」

 

八幡「たった1日で倦怠期になんのかよ……」

 

八幡「ってお前、まだジャージじゃねえか」

 

いろは「部活終わって、片付けしてたら先輩を見かけたんで、一言、声掛けようかなって」

 

八幡「じゃあ、もう少し掛かるのか」

 

いろは「片付けは終わったんで、あと着替えるだけなのですぐですよ」

 

八幡「あいよ。校門で待ってる」

 

いろは「了解であります!」ビシッ!

 

八幡(あざといなあ……)

 

いろは「そうだ、コーヒー飲みに行きません?」

 

八幡「まぁいいけどよ、どうした?」

 

いろは「んー、付き合ってるなら、帰り道に二人でどこか寄り道とか定番じゃないですかね?」

 

八幡「いや、付き合ったことないからわからん」

 

いろは「でも、妄想とかしないんですか? そういうこと」

 

八幡「ま、まあ……するけど」

 

いろは「その妄想だと、どこいくんですか?」

 

八幡「……自宅とか」

 

いろは「……ごめんなさい。いくらなんでも自宅は無理です」

 

八幡「素で引くなよ……布団に丸まって叫びたくなるだろ」

 

八幡「いいから着替えてこいよ」

 

いろは「じゃあ先輩、またあとで」

 

八幡「おお、またあとでな」

 

いろは「自宅で一緒に布団で丸まりたいなんて変態ですね。すいませんそこまでの心の準備はまだ出来てないです」

 

 

校門前

八幡(今日は寒いな)ボー

 

由比ヶ浜「あれー?ヒッキーなにしてんの?」

 

八幡(ビクッ)

 

雪乃「あなた、先に帰ったのではなくて?」

 

八幡「……ちょっとな」

 

由比ヶ浜「もしかして、私達の事待ってたの?なんか、そういうのいいかも……」

 

八幡「違うから」

 

由比ヶ浜「……」ジー

 

八幡「なんだよ」

 

由比ヶ浜「なんか、やなかんじ」

 

雪乃「あなたが校門の前にぬぼーと立っていたら、なぜか警察に連絡したくなるわね」

 

八幡「俺を不審者扱いするな」

 

雪乃「だって、目が腐っているもの。そう見えても仕方がないわ」

 

八幡「目だけで判断するのか?これだから道を聞いただけで通報される住みにくい国になるんだ」

 

雪乃「あなたの目はそれだけ腐っているということよ」

 

いろは「あ、あれー? 雪ノ下先輩と結衣先輩じゃないですか……」

 

雪乃&由比ヶ浜「!」

 

由比ヶ浜「あっ……いろはちゃん、やっはろー……もしかして、ヒッキーはいろはちゃん待ってたの?」

 

雪乃「由比ヶ浜さん、それは違うんじゃないかしら? どちらかといえば、待ち伏せしてた可能性のほうが高いわ」

 

八幡「今度はストーカー扱いかよ……」

 

雪乃「さっきも言ったでしょう? あなたは目が……

 

いろは「そうですよ。先輩はわたしを待ってくれてたんです」

 

雪乃&由比ヶ浜「!」

 

八幡「お、おい、一色……」

 

いろは「さっき先輩に、このあとコーヒー飲みに行きませんかって誘ったんです」

 

由比ヶ浜「いろはちゃんから誘った……?」

 

雪乃「どういうことかしら……?」

 

いろは「いつも先輩には助けていただいているので、そのお礼です」

 

由比ヶ浜「そ、そうなんだ……」

 

いろは「ええ、では失礼し……

 

雪乃「どこに行くのかしら?」

 

いろは「え、えっと……マリンピアのカフェです」

 

雪乃「そうなの? 昨日、由比ヶ浜さんとそこに行こうと話していたのよ」

 

由比ヶ浜「そうだ……そうだね! いろはちゃん、私達も一緒に行ってもいいかな?」

 

いろは「……」

 

雪乃「一色さん?」

 

いろは「え、えっーと、だ、大丈夫ですよ」

 

由比ヶ浜「良かった! じゃあ、行こう!」

 

いろは「……先輩、混んでいるかもしれませんし、先に行って席をとっておきましょう

雪乃(なぜ、一色さんは自転車の荷台に乗ったのかしら……あの自転車、比企谷くんのよね……)

 

八幡「ん?ああ、そうだな。じゃあ、先に行ってるわ」

 

由比ヶ浜(なんでヒッキーはいろはちゃんに何も言わずに自転車に乗るの……)

 

いろは「でわ、雪ノ下先輩、結衣先輩、またあとでー」

 

由比ヶ浜(……いろはちゃん、ヒッキーに抱きついてる)

 

雪乃&由比ヶ浜(羨ましい……)

 

移動中

いろは「はぁ……やっちゃいました……」

 

八幡「俺を誘ったなんて言えばな。なんかあるなって思われたかもな」

 

いろは「あー、そっちですか?」

 

八幡「そっちって、他にねえだろ」

 

いろは「まあいいですけど……」

 

八幡「わざわざ疑われるようなことしなきゃ良かったのに」

 

いろは「……ちゃんと言ったのに邪魔されたから、負けたくないなって思ったんですよ」

 

八幡「よくわかんねえな」

 

いろは「先輩は鈍いから一生わかりませんよ」

 

 

マリンピア カフェ

いろは「席が空いていて良かったですねー」

 

八幡「おお、そうだなー」

 

いろは「……」

 

八幡「なんだよ」

 

いろは「なんで隣に座るんですか?」

 

八幡「雪ノ下と由比ヶ浜は隣同士がいいだろ? あいつらが来てから移動するの面倒だしな」

 

いろは「……そうですか。どうなっても知りませんよ」

 

八幡「どうにもならないから安心しろ」

 

いろは「先輩、いつか刺されますよ」

 

八幡「おお、きたか」

 

雪乃&由比ヶ浜「……」

 

八幡「どうしたんだよ?」

 

由比ヶ浜「なんで、いろはちゃんの隣に座ってるの……?」

 

雪乃「……テーブル席なのだから、向かい合わせに座るのが普通なのよ?」

 

八幡「いや、知ってるから。お前らは隣同士がいいと思ってよ」

 

由比ヶ浜「なら、私達が来てから移動すればいいじゃん」

 

八幡「面倒だろうが」

 

雪乃「……」

 

由比ヶ浜「……そっか」

 

雪乃「……」

 

由比ヶ浜「……」

 

八幡(なんだこの雰囲気……小町助けて……)

 

由比ヶ浜「あのさ……さっきのはなんだったの?」

 

八幡「あー、それはな……」

 

雪乃「二人乗りは違反なのよ?」

 

八幡「なんだよ、そのことなら一色が言っただろ?席を取りにいったんだよ」

 

由比ヶ浜「だからって、二人乗りしなくても………」

 

いろは「自転車で二人乗りしたほうが楽だからそうしたんです」

 

雪乃「生徒会長が二人乗りなんてしていたら周りに示しがつかないわ」

 

いろは「……そうですね。反省します」

 

雪乃「ええ、そうしてもらえる? あなたは生徒会長としての自覚が足りないわ」

 

いろは「……」

 

八幡「雪ノ下、もういいだろ」

 

雪乃「……一色さんを生徒会長として推した人はどうかしてたんじゃないかしら?」

 

いろは「先輩は関係ないです!!」

 

雪乃「でも、いまのあなたの仕事ぶりではそう言われるのは仕方ないわ」

 

いろは「……」

 

雪乃「悔しい? でも、事実なのよ」

 

雪乃「あなたは甘えてるだけ、違うかしら?」

 

いろは「そんなこと……」

 

雪乃「否定できるの? 私には自分ではなにもせずに周りに甘えてるようにしか見えないのだけれど」

 

由比ヶ浜「ゆ、ゆきのん、もうそのへんで…」

 

八幡「雪ノ下!」

 

雪乃&由比ヶ浜&いろは「!」

 

由比ヶ浜(こんなに怒ってるヒッキーは初めて見た……)

 

八幡「一色は、一色なりによくやってる、それに自覚なんてものは簡単にできねえだろ」

 

雪乃「……一色さんに甘すぎるわ。だから調子に乗って甘えるのよ」

 

八幡「甘え上手なのが一色の持ち味だ。それでいいじゃねえか」

 

雪乃「……それじゃあ成長しないじゃない!」

 

八幡「そんなことねえよ、一色は前より成長してる」

 

いろは「!」

 

八幡「クリスマスイベントだって最後はうまくまとめただろ」

 

雪乃「それは私達が協力したからでしょう?」

 

八幡「いや、一色がはっきりと方向性を決めたからうまくいったんだ」

 

八幡「それに進路相談会の時にも、自分から周りに指示してた」

 

八幡「少しずつだけど、生徒会長として仕事してると思うぞ」

 

雪乃「……まだ足りないわ」

 

八幡「かもな。でも、成長はしてるし、ただ甘えてるわけじゃないだろうが」

 

由比ヶ浜「ゆきのん……」

 

雪乃「わかったわ……一色さん、少し言い過ぎたわ、ごめんなさい……」

 

いろは「い、いえ……大丈夫です……」

 

由比ヶ浜「そ、そうだ! なにか頼もうよ!」

 

いろは「ですね! なにも頼んでなかったですもんね」

 

由比ヶ浜「ゆきのん、なに頼む?」

 

雪乃「そうね……」

 

 

八幡(その後はさっきまでの雰囲気が嘘のように会話が弾んだ)

 

八幡(一色はパンさんグッズが欲しいらしく、ディスティニーランドに行きましょうと誘われた。お前、あそこでフラれたの忘れたの……?)

 

八幡(パンさんグッズが欲しいという話に雪ノ下が食いついて、パンさんトリビアを話し、一色を軽く引かせていた。雪ノ下は年パスがあるからディスティニーで買ってきてやるらしい)

 

八幡(そして、由比ヶ浜はディスティニーかぁ……と小声で呟くと、じっと俺を見つめてきた。……ちゃんと誘いますから、いつになるかわからないが)

 

由比ヶ浜「ゆきのん、そろそろ帰る?」

 

雪乃「そうね……もうこんな時間だし」

 

由比ヶ浜「じゃあ、駅行こうか」

 

雪乃「由比ヶ浜さんはバスでしょう?」

 

由比ヶ浜「駅からもバスあるから大丈夫だよー。いろはちゃんは?」

 

いろは「わたしも電車なので、ご一緒してもいいですかー?」

 

由比ヶ浜「大丈夫だよー!」

 

八幡「んじゃ、俺は小町が待ってるしこのまま帰るわ。また明日な」

 

由比ヶ浜「うん、また明日ね!」

 

雪乃「ええ、また明日」

 

いろは「……先輩」トトトッ

 

八幡「ん? 駅行くんじゃないのか?」

 

いろは「明日もお弁当ありますからねー?」

 

八幡「そうだったな……」

 

いろは「今日と同じ生徒会室に来てくださいね?」

 

八幡「わかった。飲み物買ってから向かう」

 

いろは「それじゃ先輩、お疲れ様ですー」

 

八幡「おお、また明日な」

 

 

翌日 昼休み 生徒会室

いろは「先輩遅いですよ!」

 

八幡「悪い、自販機が混んでたんだよ」

 

いろは「まー、昼休みですしねー」

 

八幡「ほらよ」

 

いろは「ミルクティーですか? ありがとうございます。ちょっと待ってくださいね」

 

八幡「いや、金はいいぞ、昼飯代が浮いて金が余ってるから」

 

いろは「でも……」

 

八幡「まぁ、昼飯代として受け取ってくれ」

 

いろは「……ありがとうございます」

 

八幡「……」モグモグ

 

いろは「そういえば先輩、よくわたしがミルクティー好きだってわかりましたね」

 

八幡「お前みたいなキャラはミルクティーが好きって相場が決まってんだよ」

 

いろは「なんですかそれ……先輩はマックスコーヒーですか、甘党なんですね」

 

八幡「千葉県民なら水みたいなもんだろ」

 

いろは「それだと、千葉県民の大半は肥満になりますよ」

 

城廻「失礼しまーす」

 

八幡「!」

 

いろは「めぐり先輩、どうしたんですか?」

 

城廻「比企谷くんが一色さんと昼休みに生徒会室で会うって言ってたから、生徒会の仕事かなって思って手伝いにきたの」

 

いろは「あ、ありがとうございます……でも、もう仕事は一段落したので大丈夫です」

 

城廻「そうなんだ。一色さん、仕事速いね!」

 

いろは「いえいえ、そんなことは……」

 

城廻「わたしは遅かったから、一色さんはすごいよ」

 

城廻「比企谷くんもありがとね。一色さんのこと助けてくれて」

 

八幡「ま、まあ、仕事ですから……」

 

城廻「そういえば、ミルクティーおいしかった?」

 

いろは「えっ」

 

八幡「……」

 

城廻「飲み物買いに行ったら、比企谷くんが飲み物買っててさ」

 

城廻「一色さんに買ってあげるのなにがいいか悩んでたから、一色さんはミルクティーが好きだって教えてあげたんだ」

 

いろは「……そうだったんですか、おいしかったですよ」

 

城廻「良かったぁ…… 勘違いだったらどうしようと思ってたんだ。比企谷くん、すごい悩んでたよー」

 

いろは「先輩でも悩むことあるんですね」

 

八幡「……まあな」ガシガシ

 

城廻「じゃあ、そろそろ戻るね」

 

いろは「いつも気にかけてくれてありがとうございます」

 

城廻「ううん、なにかあったらいつでも言ってね?」

 

いろは「ありがとうございます」

 

城廻「比企谷くん、一色さんをよろしくねー」

 

八幡「よろしくされても困りますよ」

 

城廻「でも、そう言いながら助けてあげるでしょ?」

 

八幡「どうですかね?」

 

城廻「君はそういう人だよ。もう少し素直になればいいのに」

 

八幡「……自分では素直なつもりなんですけどね」

 

八幡「俺らもそろそろいくか」

 

いろは「ですねー」

 

八幡「弁当ありがとな」

 

いろは「いえいえー。それで今日の放課後なんですけど」

 

八幡「校門前でだろ?わかってる」

 

いろは「えっーと……奉仕部に行くって話だったんですけど……もしかして、わたしと帰るのが楽しみになっちゃいました? 」

 

八幡「……奉仕部に何の用だ?」

 

いろは「先輩に彼氏のふりしてもらってることをお話ししようかと」

 

八幡「いいのか?」

 

いろは「昨日、雪ノ下先輩と結衣先輩と話してて、黙ってるのはフェアじゃないなって思ったんです」

 

八幡「そうか……」

 

いろは「先輩もきてくださいね? 修羅場が待ってますから」

 

八幡「一気に行く気が失せたぞ」

 

由比ヶ浜「ヒッキーが昼休みに生徒会の仕事を手伝ってた?」

 

雪乃「ええ、城廻先輩がそう言っていたわ」

 

由比ヶ浜「ヒッキーはいろはちゃんに甘いなぁ……」

 

雪乃「比企谷くんの方が甘やかされてるらしいわ」

 

八幡「なんでそうなるんだよ」

 

雪乃「一色さんにお弁当を作ってもらっているようね」

 

八幡「!」

 

由比ヶ浜「それって……」

 

八幡「詳しい話は一色が……」

 

雪乃「あなたに聞いているのよ、答えなさい」

 

由比ヶ浜「私は……聞きたくないかも……」

 

雪乃「由比ヶ浜さん……」

 

由比ヶ浜「ヒッキーからも、いろはちゃんからも聞きたくないよ……」

 

八幡「……」

 

由比ヶ浜「ごめん。祝福できなくて……」

 

八幡「由比ヶ浜……お前なんか勘違いしてるぞ」

 

由比ヶ浜「えっ?」

 

八幡「……という訳なんだよ」

 

雪乃&由比ヶ浜「……」

 

八幡「なんだ、その……黙ってて悪かったな……」

 

由比ヶ浜「……ヒッキー、いろはちゃんに甘すぎ」

 

雪乃「そうね……付き合う気がないのなら、そんな回りくどい事をせずに 、一色さんが本人に伝えるべきよ」

 

由比ヶ浜「あのさ……私が同じこと頼んだら、ヒッキーは助けてくれた?」

 

八幡「それは……」

 

由比ヶ浜「きっと屁理屈言って、そのやり方では助けてくれなかったよね」

 

八幡「……そうだろうな」

 

由比ヶ浜「でも、いろはちゃんなら助けてあげるんだ……」

 

八幡「……」

 

由比ヶ浜「どうして、そんなにいろはちゃんに甘いの?」

 

八幡「そんなこと……」

 

雪乃「そんなことないなんて言わないわよね? 私も、あなたが一色さんに甘いと思うのよ?」

 

八幡「……甘いんだとすれば、それは小町と似てるからかもな」

 

 

部室前

いろは「……」

 

由比ヶ浜「小町ちゃんと?」

 

八幡「なんか似てるだろ? 外見じゃなく性格とか」

 

由比ヶ浜「なんとなくわかる気がする……」

 

雪乃「つまり、一色さんが妹みたいだと? 」

 

八幡「まあ、そんなところだな」

 

由比ヶ浜「そ、そうなんだ。てっきり、好きなのかなって」

 

八幡「なんでだよ……一色は俺がどうにかできる相手じゃねえよ」

 

八幡「それに、あいつは葉山が好きだし、俺のことは都合のいい先輩ぐらいに思ってるだろうからな」

 

由比ヶ浜「そんなことないと思うけど……」

 

いろは「……」ガラガラ

 

八幡&雪乃&由比ヶ浜「!」

 

由比ヶ浜「い、いろはちゃん……」

 

いろは「……結衣先輩、雪ノ下先輩、黙っててすみませんでした」

 

雪乃「いえ、大丈夫だけれど……」

 

いろは「遅いかもしれませんけど、部員先輩にはちゃんと自分の気持ちを伝えようと思います」

 

八幡「いいのか?」

 

いろは「これ以上、先輩に迷惑をかけたくないですから」

 

八幡「別に迷惑なんて……」

 

いろは「それに……妹さんと重ねられても困りますし……」

 

八幡「……聞いてたのか」

 

いろは「だから……もういいんです」

 

いろは「先輩の妹なんて、絶対、嫌ですから」

 

八幡「……」

 

いろは「先輩は、都合のいい先輩だからいいんですよ。こんなヤバイ目してるお兄ちゃんなんて嫌ですね」

 

雪乃「一色さん……」

 

いろは「まぁ、葉山先輩の妹なら喜んでなりますけどねー」

 

由比ヶ浜「いろはちゃん、もういいから……無理しないで」ギュウ

 

いろは「む、無理なんて……してないです……」ポロポロ

 

由比ヶ浜「気付いてあげられなくて、ごめんね……」

 

いろは「な……なんのことですか……」

 

いろは「わたしは……ただ……」

 

いろは「先輩の事を……利用してただけなんですから……」

 

いろは「それじゃあ、失礼しますね……」

 

八幡「おい、一色……」

 

いろは「……先輩、ありがとうございました」

 

八幡「……」

 

雪乃「いいの?」

 

八幡「なにがだよ」

 

雪乃「追いかけなくて」

 

八幡「そういうのは、葉山の仕事なんだよ」

 

由比ヶ浜「ヒッキー、なに言ってんの⁉」

 

八幡「これでいいんだよ。それに、一色に甘いって言ったのはお前らだぞ」

 

由比ヶ浜「そうだけど……」

 

八幡「なら、もういいだろ」

 

雪乃「わかったわ。私は、もうなにも言わないわ」

 

八幡「ああ、そうしてくれ」

 

由比ヶ浜「ゆきのん、いいの?」

 

雪乃「比企谷君が、自分の意思で解決するべきよ」

 

由比ヶ浜「そうだね……」

 

由比ヶ浜「……暗くなってきたね」

 

雪乃「そうね……今日はこの辺にしておきましょう」

 

八幡「じゃあ、悪いけど先に帰るぞ」

 

雪乃「ええ……お疲れ様」

 

由比ヶ浜「また明日ね……」

 

 

校門前

八幡「……」

 

八幡「帰るか……」

 

 

比企谷家

八幡「ふぅ……」

 

小町「あれー? お兄ちゃん、今日は早いんだね?」

 

八幡「……まぁ、ちょっとな」

 

小町「なにかあったの?」

 

八幡「いや、大したことじゃない」

 

小町「……」ジー

 

八幡「なんだよ?」

 

小町「お兄ちゃんの事なんて小町には全てお見通しだよ? あ、今の小町的にポイント高い!」

 

小町「ほらほら、話してみなよ。小町が聞いてあげるから」

 

八幡「いや、本当に大したことないから大丈夫だぞ」

 

小町「お兄ちゃんの大丈夫は信用出来ないなー」

 

八幡「俺の信用なさすぎだろ……」

 

小町「だって、ごみいちゃんだもん。仕方ないよ」

 

小町「また喧嘩したくないし、今日は引いてあげるよ」

 

八幡「そうしてくれると助かる」

 

小町「でも、いつでも話聞いてあげるからね? なんかあるなら頼ってね?」

 

八幡「小町……」

 

小町「今のは、優しい妹アピールだから」

 

八幡「そうですか……」

 

 

翌日 昼休み

八幡「……」モグモグ

 

戸塚「八幡!」

 

八幡「よっ」

 

戸塚「うん、よっ」

 

八幡(天使だ……)

 

戸塚「なんか久しぶりだね、ここで八幡が食べてるの」

 

八幡「最近、忙しくてな」

 

戸塚「そっかぁ……って八幡、あんまり食べてないね?」

 

八幡「……えっ」

 

戸塚「パンが2つも残ってるよ? 昼休みも結構時間経ってるのにまだ食べてないの?」

 

八幡「……」

 

戸塚「八幡?」

 

八幡「いや、考え事しててな」

 

戸塚「どうしたの?」

 

八幡「大丈夫だ。大したことじゃないから」

 

戸塚「そう……?」

 

八幡「1つ食うか? テニスやったから腹減ってるだろ?」

 

戸塚「いいの? ありがとう」

 

戸塚「……」モグモク

 

八幡「……」モグモグ

 

戸塚「……八幡」

 

八幡「ん?」

 

戸塚「僕のこと頼ってね」

 

八幡「……おう」

 

 

放課後 奉仕部

八幡「……」ペラペラ

 

雪乃「……」

 

由比ヶ浜「……ヒッキー」

 

八幡「なんだよ?」

 

由比ヶ浜「いろはちゃんと仲直りできた?」

 

八幡「いや、会ってないし。それに仲直りとか、喧嘩した訳じゃないだろ」

 

由比ヶ浜「違うの……?」

 

八幡「ただ依頼が終わっただけだ。それ以上の事はなんもねえよ」

 

由比ヶ浜「そっか……」

 

 

校門前

八幡「……」

 

八幡「さて、帰るか」

 

 

翌日 昼休み

葉山「比企谷君、ちょっといいかな?」

 

八幡「なんの用だ」

 

葉山「昨日、うちの部員がいろはをデートを誘ったんだが、いろはがきっぱり断ってね」

 

八幡「行きたくないなら、断るのは普通のことだろ」

 

葉山「以前のいろはなら、行きたくない誘いでも当たり障りのないようにしてたよ」

 

八幡「けど、そうすることで勘違いしたままの奴だっている。相手の為にも明確に断るのは、そう悪いことじゃないだろ」

 

葉山「そうかもしれない。でも、いろはがはっきりと断るのは意外だったんだよ」

 

葉山「だから、君の影響かなって思ってね」

 

八幡「……俺は人に影響を与えるような人間じゃねえよ」

 

葉山「そんなことないよ。君は、君が思ってる以上に周りに影響を与えてる。いい意味でも、悪い意味でもね」

 

八幡「もういいだろ。俺は行くぞ」

 

葉山「引き留めてごめん。比企谷君、いろはのこと宜しく頼むよ」

 

八幡「お前が面倒見てやれよ、喜ぶぞ」

 

葉山「どうかな、今は君を頼ってると思うけどな」

 

八幡「そんなこと、あるわけねえだろ」

 

葉山「君は悪意には敏感だけど、好意には鈍いんだね」

 

 

放課後 校門前

八幡「一色……」

 

いろは「……」

 

八幡「……部活終わったのか?」

 

いろは「はい……」

 

八幡「そうか」

 

いろは「……お先に失礼します」

 

八幡「……お疲れ」

 

 

比企谷家

八幡「……」

 

小町「お兄ちゃん……電気もつけないでどうしたの?」

 

八幡「小町……話聞いてくれるか……?」

 

小町「……いいよ。聞いてあげる」

 

八幡「……ていう事があってな」

 

小町「お兄ちゃんは逃げてるだけだよね」

 

小町「小町ちょっと怒ってるからね。自分の気持ちを隠すために小町を使うのは許さないよ」

 

八幡「……すまん」

 

小町「次はないからね」

 

小町「それで、どうやって一色さんと仲直りするかだけど」

 

八幡「いや、仲直りしたいとか言ってないけど……」

 

小町「はぁ……まだそんなこと言うの? じゃあ、どうしたいの?」

 

八幡「自分でもよくわからん」

 

小町「……お兄ちゃんはさ、拒絶されるのが怖いから、わからない振りをしてるんでしょ? 本当は一色さんと仲直りしたいんじゃないの?」

 

小町「素直になりなよ。一色さんはお兄ちゃんの事を受け止めてくれるよ」

 

八幡「会ったこともないのによく断言できるな」

 

小町「女の勘てやつだよ!」

 

八幡「信用できねえ……」

 

小町「女の勘は結構当たるもんだよ?」

 

小町「お兄ちゃんは、一色さんと一緒にいて楽しかったんでしょ?」

 

八幡「……退屈ではなかったな」

 

小町「面倒くさいなぁ……小町にならいいけど、一色さんには素直な気持ちを言うんだよ?」

 

小町「お兄ちゃんの捻デレが誰にでも通用するわけじゃないんだからね」

 

 

翌日朝 比企谷家

八幡「さてと……」

 

小町「お、お兄ちゃん……? どうして制服着てるの……?」

 

八幡「いや、学校行くんだよ」

 

小町「今日は土曜日だよ? 学校休みじゃないの?」

 

八幡「ちょっと用があってな」

 

小町「えっ」

 

八幡「なんだよ」

 

小町「お兄ちゃんがこんなに早く行動に移すなんて信じられない……」

 

八幡「……行ってくる」

 

 

グラウンド

戸部「あれー? ヒキタニくんじゃん。どしたん?」

 

八幡「……一色いないか?」

 

葉山「いろはなら生徒会室に行ったよ」

 

八幡「わかった。練習中、悪かったな」

 

葉山「休憩中だったし大丈夫だよ」

 

八幡「そうか……じゃあ、行くわ」

 

葉山「比企谷君」

 

八幡「なんだよ」

 

葉山「いろはのこと、宜しく頼むよ」

 

八幡「……ああ、善処する」

 

 

生徒会室

八幡「一色いるか?」

 

いろは「……どうしたんですか? 今日は土曜日ですよ」

 

八幡「……礼を言いにきた」

 

いろは「えっ?」

 

八幡「3日間だけだったけど、お前と一緒にいて楽しかったよ」

 

八幡「ありがとう」

 

いろは「……突然なんですか」

 

八幡「ちゃんと言えてなかったからな」

 

いろは「わたしが妹さんに似てるから楽しかったんですよね? 先輩はシスコンみたいですし」

 

八幡「……本当はお前と妹を重ねてなかったんだ」

 

いろは「……じゃあなんであんなこと言ったんですか?」

 

八幡「あのときはそう思ってたんだ」

 

八幡「……でも本当は、お前だから優しくできたんだ。お前と一緒だから楽しかったんだよ」

 

いろは「……そんなの信じられないですよ」

 

八幡「お前と会わなくなってから、昼飯は美味くねえし、帰りなんて無意識の内にお前を探してるんだ」

 

八幡「自分でも気付かないうちに、お前と一緒にいる事が楽しみになってたんだ」

 

いろは「……たった3日間でそんなになるなんて、先輩はちょろすぎますよ」

 

八幡「かもな」

 

いろは「今日の先輩はおかしいです。やけに素直だし……」

 

八幡「まぁ、たまには素直に気持ちを伝えるのも悪くねえだろ」

 

いろは「……なら、わたしも素直になります」

 

八幡「おう……?」

 

いろは「先輩は顔はそこそこいいけど、ヤバイ目してるから台無しだし」

 

いろは「性格なんて捻ねくれてるし、ときどき意識高い系みたいなよくわかんないこと言うし」

 

八幡「素直すぎだから……」

 

いろは「でも、わたしにとっては、優しくて頼りになる先輩なんです」

 

いろは「そして……わたしの……」

 

いろは「わたしの、大事な人です」

 

八幡「……そうか」

 

いろは「……先輩、顔真っ赤ですよ?」

 

八幡「お前もだろ」プイッ

 

八幡「……なぁ」

 

いろは「はい?」

 

八幡「これからは演技とかそういうのじゃなくてよ……」

 

いろは「は、はい……」

 

八幡「お、俺と……」

 

いろは「……」ゴクリ

 

八幡「一緒に帰ったり、飯食ったりしてくれないか?」

 

いろは「……は?」

 

 

月曜日 放課後 奉仕部

いろは「先輩、遅いですよ」

 

八幡「ああ、悪い……えっ」

 

八幡「……お前、なんでここにいるの?」

 

いろは「由比ヶ浜先輩と雪ノ下先輩に、今回のことを報告しに来たんですよ」

 

由比ヶ浜「ヒッキー、いろはちゃんと仲直りできて良かったね!」

 

雪乃「一色さん、この男に脅迫されたのなら、無理せず相談するのよ?」

 

八幡「脅迫って……普通に話しただけだぞ」

 

雪乃「あら、話せるなんて優秀じゃない」

 

八幡「俺を猿扱いするな」

 

由比ヶ浜「どんな話をしたの?」

 

いろは「先輩が許して欲しいって泣きながらお願いしてきたんですよ。なので、仕方なく許してあげたんです」

 

由比ヶ浜「えっ……ヒッキーが泣いてたの……?」

 

八幡「いや、泣いてないから」

 

いろは「顔は真っ赤でしたけどね」

 

八幡「……それはお前もだろ」

 

いろは「先輩、帰りなんですけど本屋寄りませんか?」

 

八幡「本屋なら俺も行くつもりだったから、別に構わないぞ」

 

由比ヶ浜「えっ」

 

雪乃「……」

 

八幡「なんだよ?」

 

由比ヶ浜「ふ、二人で帰るの?」

 

いろは「先輩に泣きながらお願いされたんですよ」

 

八幡「だから、泣いてねえから」

 

由比ヶ浜「お願いしたのは否定しないんだ……」

 

雪乃「……私も本屋に行く用事があるのだけれど」

 

いろは「そうなんですか?」

 

 

いろは「でも、今日は先輩と二人がいいので、また今度じゃダメですか?」

 

由比ヶ浜「えっ」

 

雪乃「えっ」

 

いろは「すみません。そろそろ、生徒会に行かないと……」

 

雪乃「一色さん、待っ……」

 

いろは「でわ、失礼します」

 

由比ヶ浜「行っちゃった……」

 

雪乃「……」ジー

 

由比ヶ浜「……」ジー

 

八幡「俺を睨むな……俺は無実だ」

 

校門前

いろは「すみません。待たせちゃいました?」

 

八幡「まぁ、10分ぐらいな」

 

いろは「……」ベシ

 

八幡「な、なんだよ」

 

いろは「いま来たとこって返すべきだと何回言えば分かるんですか?」

 

八幡「素直に言って、なにが悪いんだよ?」

 

いろは「……先輩は正直になるところが間違ってるんですよ」

 

移動中

いろは「先輩、手が寒いです……」

 

八幡「手袋はどうしたんだよ?」

 

いろは「忘れちゃって……」

 

八幡「自販機で温かいやつ買ってやるから、もう少し我慢しろ」

 

いろは「……先輩じゃ仕方ないか」

 

八幡「なにがだよ」

 

いろは「今のは黙って手を繋ぐのが正解ですよ?」

 

八幡「そんな行動して、受け入れてもらえるのはイケメンに限るだろ」

 

いろは「いやぁ……いくらイケメンでも好きじゃないなら、さすがに嫌ですよ」

 

八幡「顔じゃないのか?」

 

いろは「違いますよ。好きな人にされるのがいいんです」

 

八幡「なるほどな」

 

いろは「そもそも、好きな人以外と手を繋ぐとかありえませんよ」

 

八幡「じゃあ、俺が手を繋ぐのは不正解じゃねえか」

 

いろは「……先輩、殴っていいですか?」

 

いろは「ここまでくると、鈍いってよりもヘタレですね」

 

八幡「なんでそうなるんだよ……」

 

いろは「この前だって、最後の最後に一緒に帰ろうとかヘタレるし」

 

いろは「もっとこう……男らしく言うべきじゃないですかね」

 

八幡「なんだそれ……じゃあ、なんて言うのが正解だったんだよ?」

 

いろは「わたしに言わせますか……ヘタレすぎますよ……」

 

いろは「まぁ、先輩から言ってもらうのを待ってたら、一生待たないといけない気がしますから、私から言ってあげますよ」

 

八幡「……?」

 

いろは「先輩!」

 

八幡「な、なんだよ」

 

いろは「先輩のことが好きです!」

 

いろは「わたしと……」

 

 

いろは「付き合ってください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

いろは「付き合ってください」 八幡「はぁ?」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1429014471/