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千棘「まさか…鶫がダーリンのことを…」 鶫「お嬢!違います!私は別に奴のことなど…」【ニセコイss/アニメss】

 

鶫「最近、一条楽と接する機会が少なくなっている気がする」 

 

鶫「まあ、あれでも一応お嬢の恋人なんだ。私から少し歩み寄ってみるか」 

 

鶫「…あの男のことなどなんとも…なんとも思っていないんだがな!」 

 

鶫(って、なぜ私はこんなムキになっているんだ!) 

 

鶫「……まず何をすればいいか」 

 

 

鶫「宮本様に相談してみよう」 

 

鶫(他の者に知られてはまずいから、人のいない場所で話すことにするか) 

 

――――――――――――――――― 

 

休み時間 屋上 

 

 

るり「それで、2人きりで相談って何?」 

 

鶫「はい。実は最近、ある人と関わることが少なくなっている気がするんです」 

 

鶫「その人とはまあまあ、いや少々、そこそこ仲良く…仲良く? しようという程度には接している、と思うんですが…」 

 

るり「その言い方からして、元々微妙な関係の人でしょ;」  

 

鶫「い、いえ、そんなわけでは…」アセアセ 

 

るり「今更関わりが減ったからって、誰かに相談するほどでもないような…」 

 

鶫「と、とにかく!今よりもその人と親しくなりたいんです!!」 

 

るり「…なるほど。あんまりいい関係じゃなかった人と、仲良くなれる方法を知りたいと」 

 

鶫「はい。教えてもらえませんか?」 

 

るり「別に、教えるのはいいんだけど…なんで私に相談したの?」 

 

鶫「え?」 

 

るり「私以外にも、こういう相談にのってくれる人はいるはずよ?あんたが護衛してる千棘ちゃんとか――」 

 

鶫「そ、それはお嬢にこのようなことを聞いて、困らせてはいけないと思いまして;」 

 

るり「(立場的に嫌だったのね…)それじゃあ一条君とかは?言うときは結構いいこと言うし」 

 

鶫「あ、ああああんな男に相談しても分からないですよ!絶対!」 

 

るり「……舞子くんや橘さんはd」 

 

鶫「論外です」 

 

るり「即答か」 

 

るり「じゃあ、小咲はどうなの?」 

 

鶫「…正直、小野寺様か宮本様、どちらに相談すればいいか考えました」 

 

るり「どちらにって…小咲にも声かけて聞けばよかったじゃない」 

 

鶫「今回はあまり他人に知られたくない相談だったので、最初から1人だけに聞こうと決めていたんです」 

 

鶫「そして宮本様は、小野寺様に何かアドバイスしている事が多いので、私の悩みにもなにか答えてくれると考えて、あなたに相談しました」 

 

るり(あれが時々説教だということには気づいてないのね)ベツニイイケド 

 

るり「まあ、私に聞いた理由はよく分かったし……いいわ。ちゃんと教えてあげる」 

 

鶫「ほ、本当ですか!!」 

 

るり「そこまで考えて聞いてくれたなら、私もそれに答えてあげないとね」 

 

鶫「ありがとうございます! それで、私は何をすればいいんでしょうか?」 

 

るり「やっぱり一緒にいる時間をつくるべきね」 

 

鶫「一緒にいる時間?」 

 

るり「ざっくり言っちゃうと、その人と2人きりになれってことよ」 

 

鶫「ああ、なるほ……………どぅお!?」 

 

鶫「む、無理無理無理無理!無理です無理です!無理です無理です無理、です無理!!」 

 

るり「落ち着きなさい;何がそんなに無理なの?」 

 

鶫「そ、それは、私が(一応)仲良くしていると思っていても、相手は私の事を快く思っていないかもしれないんですよ!?」 

 

るり「考えすぎだとは思うけど…まあ相手からすれば正直とまどうかもしれないわね」 

 

るり「でも、一緒にいるって一番大事なことだと思うけれど?」 

 

鶫「一番大事なこと、ですか…?」 

 

るり「そ。話したり、2人で何かやってみたり、どこかに出かけたり…」 

 

るり「その人といる時間を増やすだけでも、今より仲良くなれるはずよ?」 

 

鶫「し、しかし…」 

 

るり「しかしって……その人と仲良くなれないまま、次第に会う機会も無くなって疎遠に…なんて嫌でしょ?」 

 

鶫「!-――――それは、絶対に…嫌です」 

 

るり「うむ、よくぞ言った」 

 

鶫「助言ありがとうございます、師匠!」 

 

るり「師匠って…いやあんな台詞言った私も私か;」 

 

鶫「……」 

 

鶫(一条楽と、会えなくなったら…) 

 

鶫(なぜ私は今、それを嫌だと思ってしまったんだ…) 

 

鶫(奴はお嬢の恋人なんだ) 

 

鶫(そして私とあいつは、クラスメイトであり、恋人の部下であり、本来は敵のはず…それなのに―――) 

 

るり「どうしたの?急に黙りこんで」 

 

鶫「いっ、いえ、何でもありません。今回は私の相談にのっていただいて、宮本様にはとても感謝しています」 

 

るり「そう、それじゃあ今度お高いお菓子でも御馳走になろうかしら」 

 

鶫「はい!それでは後日、アメリカ発祥の有名高級スイーツをお取り寄せいたしましょう!」 

 

るり(冗談で言ったのに…) 

 

るり「あ、もうすぐ次の授業が始まるわね」 

 

鶫「そうですね…お時間をとらせてしまってすみません、教室に戻りましょう」 

 

るり「いいわよ別に…そういえば、ずっと気になってたんだけど」 

 

鶫「?」 

 

るり「その仲良くなりたい人って、誰のこと?」 

 

鶫「え!?い、いや、それはその、相談相手と言ってもさすがにそこまでは…;」 

 

るり「へー、そっかー、悩みを聞いてあげた私にも言えない人なのか―」 

 

鶫「は、はい…」 

 

るり「ふーん、それじゃあさっきの悩み…」 

 

るり「みんなに、言っちゃおうかなー?」 

 

鶫「」 

 

るり「やっぱりこういう悩みって、他の人の意見も聞いた方がいいと思ったのよ」 

 

鶫「い、いえ、宮本様の意見が充分参考になっているので…」アセアセ 

 

るり「鶫さんのことだったら、千棘ちゃんが一番親身になって聞いてくれるだろうし」 

 

鶫「で、ですからお嬢を困らせたくないと先ほど…」アセアセ 

 

るり「小咲は自分より相手の事を考えるタイプの子だから、私より一生懸命考えてくれるでしょうね」 

 

鶫「え、えっと…」ダラダラ 

 

るり「橘さんも協力してくれたら、お悩みのその人が誰なのか分かるかもしれないわね」 

 

鶫「あう…」ダラダラ 

 

るり「舞子くんは…ちょっとふざけてるけど、結構鋭い時があるから、聞いただけで大体分かっちゃうんじゃない?」 

 

鶫(ひぃっ)ゾワッ 

 

るり「一条くんなんて、クラスメイトが悩んでるなんて知ったら、一番心配するかもね」 

 

鶫(ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ)ゾワワッ 

 

るり「まあ、鶫さんが誰のことで悩んでるのか言ってくれたら、このことは誰にも言わないって約束するけど」チラッ 

 

鶫(ど、どうする鶫誠士郎!?) 

 

鶫(いま宮本様に全部言わなければ皆に知られてしまう!) 

 

鶫(知られたら最後、相手が一条楽だと知られ、奴に対する心情を疑われ…) 

 

鶫(周囲に後ろ指を指されながら学生生活を送ることになる!) 

 

鶫(それどころか、お嬢の恋人を気にかけていることが組織の耳に入り、私が始末される可能性も!?) 

 

鶫(いや、始末されるだけならまだいい、最悪の場合…) 

 

――――――――――― 

 

 

千棘『まさか…鶫がダーリンのことを…』 

 

鶫『お嬢!違います!私は別に奴のことなど…』 

 

千棘『じゃあ……なんでそれを最初に、私に相談しなかったのよ…?』 

 

鶫『そ、それは…』 

 

千棘『私から…楽の事奪おうとしたの…?』 

 

鶫『ち、違います!信じてください、お嬢!』 

 

千棘『…鶫は、私を信じて…グスッ…なかったの?……私…あんたの、こと…信じてた、のに……ヒッグ…』 

 

 

――――――――――― 

 

鶫(私自身がお嬢を失望させ、悲しませてしまう…。それだけは絶対に…!) 

 

鶫(そして、なにより…) 

 

鶫(一条楽本人に知られることだけは、絶対に阻止せねば!!) 

 

鶫(どんな経緯であれ、あの男に全てを知られた瞬間、私は恥ずかしすぎて死んでしまう!!!)/// 

 

るり(?あの子、今何を考えてるのよ…) 

 

鶫(…しかし、相手が一条楽だということを、誰にも言いたくないという気持ちもある) 

 

鶫(どうする―――――) 

 

 

鶫「……宮本様」 

 

るり「なに?」 

 

鶫「先ほどの質問、私が親しくなりたいという相手についてですが…」キッ 

 

るり「……」 

 

鶫「それはお嬢の恋人である、一条楽のことです」 

 

るり「…まあ教えられないわよね、別にいいわ。さっきのは冗談で、誰かに言うなんて事も絶対しないけど――」 

 

鶫・るり「「…………え?」」 

 

るり「まず答えるとも思わなかったし、それに鶫さんが親しくなりたい人って、一条くんなの…?」 

 

鶫「宮本様が先ほどおっしゃっていた、他の方々にも言うという話は、全て冗談…?」 

 

るり「…」 

 

鶫「…」 

 

「「・・・・・・・・・・」」 

 

鶫「うがあああああああああああああああああああああ!!!!!」ガンガンガンガンガン 

 

るり「つ、鶫さん!?どうしたの急に!?」 

 

鶫「なぜ私は!さっきの話を!冗談だと!気づかなかったんだ!!」ガンガンガンガンガン 

 

るり「待って、待って鶫さん!それ以上壁に頭打ちつけたら……」 

 

鶫「だいたい!最近の私は!この生活に!うつつをぬかして!」ガンガンガンガンガン 

 

るり「急に自虐入りだした…というか、ホントにやめて…壁とアンタの頭が持たない…」 

 

鶫「こんな!!体たらくで!!お嬢を!!お守りするなどと!!」ガンガンガン… 

 

鶫「はうっ…」 

 

バタッ 

 

るり「つ、鶫さん? ―――つぐみさぁぁーーーーーん!!!」 

 

 

キーン コーン カーン コーン 

 

 

るり「…授業始まっちゃった」 

 

るり「…まず、保健室に連れていこう…」 

 

また長くなっちゃった 眠い 

 

――――――――――― 

 

……ぐ………み……… 

 

…………つぐ……み…… 

 

つぐ…み………つぐみ…! 

 

 

?『…つぐみ!鶫!』 

 

鶫『………ん…?』 

 

?『良かった…目が覚めたんだな』 

 

鶫『…!一条、楽…』 

 

楽『ずっと眠ってたから、心配したんだぞ』 

 

鶫『…貴様に気を遣われる筋合いはない』 

 

楽『へいへい、そーでしたか』 

 

鶫『…しかし、なぜ私は眠っていたんだ?』 

 

楽『……』 

 

鶫『確か…宮本様と話があるからと屋上へ行って、それから…』 

 

鶫(一条楽と親しくなる方法を聞いて…その後何が…?) 

 

鶫『…そういえば宮本様の姿が見当たらないな。一条楽、貴様何か知らないか?』 

 

楽『……』 

 

鶫『おい、一条楽…』 

 

楽『……』 

 

鶫『貴様…なぜさっきから喋らないんだ!?』 

 

楽『……』 

 

鶫『~~!それ以上口を閉ざしているなら、無理やりにでも』 

 

楽『鶫』 

 

鶫『!…な、なんだ』 

 

楽『悪い』 

 

鶫『…は?』 

 

楽『俺、もうすぐ行かなきゃならないんだ』 

 

鶫『…何のことだ?一体どこに行くというんだ?』 

 

楽『お前が目覚めてくれてよかったよ…』 

 

鶫『何を言ってるんだ!説明しろ一条楽!!』 

 

楽『俺…みんなと会えてよかった…鶫とも、会えてよかったよ』 

 

鶫『!』 

 

楽『最初はいきなり襲いかかってきたり、本気で殺しに来るときもあってかなりヤベぇ奴だと思ってたけど』 

 

楽『毎日学校で話したり、夏休みにみんなで海に行ったり…』 

 

楽『一緒に過ごしているうちに、お前も、千棘や小野寺や橘みたいな、普通の女の子なんだって思うようになった』 

 

鶫『き、貴様何を言って…』/// 

 

楽『でも…もう皆と過ごしていた時間も、終わっちまった…』 

 

鶫『えっ…』 

 

楽『もう…時間がない』 

 

鶫『さっきから一体何を…!』 

 

鶫(一条楽が…私から離れていく……!) 

 

楽『鶫、今まで…ゴメンな』 

 

鶫『ま、待て!待ってくれ!!』 

 

楽『俺が…お前に対して、変なこと言ったり…余計なことしちまったから、……それに怒って…殴ったりしたんだよな?』 

 

鶫『ち、違う!アレは怒ったわけではなく…』 

 

楽『…お前と……過ごした時間は…短かった……けれど、……俺は、すげえ…楽しかったよ………』 

 

鶫『わ、私も…』 

 

楽『………こんなことに…………なる…なら、もっと……いっしょに………いたか…った……な…………―――――』 

 

鶫『…行くな、行くな……行かないでくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』 

 

―――――――――― 

 

保健室 

 

 

鶫「はぁ…はぁ…はぁ…」 

 

鶫(今のは…夢…?) 

 

るり「鶫さん、大丈夫?」 

 

鶫「み、宮本様! …ええ、大丈夫、です…」 

 

るり「本当に?すごくうなされていたから心配したわよ…」 

 

鶫「そ、そうでしたか…」 

 

鶫「しかし、なぜ私は保健室に…?」 

 

るり「ああ、それは――――」 

 

 

~説明中~ 

 

 

鶫「~~~~~~~~~~!!」/// 

 

るり「その…本当に言うとは思わなかったから…ひどい冗談を言って、本当にごめんなさい…」 

 

鶫「いえ…いいんです…冗談だと見抜けなかった自分の非です」/// 

 

るり(説明したらまた暴走するんじゃないかと不安だったけど…これならもう大丈夫そうね) 

 

るり「…いや、まさか仲良くなりたいという相手が一条くんだとは思わなかったわ」 

 

鶫「他の方には言わないで下さいね!言わないで下さいよ!? 絶 対 に ! ?」 

 

るり「わ、分かったからそんな鬼気迫る顔で詰め寄るのはやめて…;」コワイ 

 

 

るり「さすがにここまで聞いて、おまけに怪我までさせた私が、それを言いふらす権利なんてないわよ」 

 

鶫「そ、そうですか…ありがとうございます」 

 

るり「それで、どうするの?」 

 

鶫「へ?」 

 

るり「『へ?』じゃなくて、どうやって一条くんと2人きりになる時間をつくるのよ?」 

 

鶫「そ、それはまた後日n」 

 

るり「そうやって先延ばしにしていたら、結局一条くんと仲良くなれないでしょ?今日からやるのよ、今日から」 

 

鶫「そ、そんな急に言われても…」 

 

るり「…じゃあ以前聞いた、ずぶ濡れになったあと更衣室のロッカーに2人で隠れる状況を無理やり」 

 

鶫「今すぐに考えてみます!!」/// 

 

鶫(やはり呼び出した方が2人になりやすいか…) 

 

るり「どうするか決まった?」 

 

鶫「はい、まずあの男を――」 

 

るり「ストップ」 

 

鶫「え?」 

 

るり「私はどう2人になるか考えてとは言ったけど、それを聞くつもりはないわ」 

 

鶫「宮本様…」 

 

るり「相手が一条くんと知った以上、あの子のチャンスを奪いかねないし…」ボソッ 

 

鶫「?どうされましたか?」 

 

るり「いいえ、なんでもない。そうだ、鶫さんも目覚めたことだし、私は皆に報告しないとね」 

 

鶫「!そういえば、私の事はお嬢になんとお伝えしてますか!?」 

 

るり「あー…千棘ちゃんや他の皆には『ちょっとした不注意で頭ぶつけて気絶したから保健室に連れてった』って言っておいたわ;」 

 

鶫「ちょっとした不注意…?」 

 

るり「じゃあ報告とか含めて私も授業出たいから、また後でねー!」ビュン! 

 

鶫「ああ!お待ちください宮本様!私もすぐに―――――っ!?」ズキッ 

 

鶫「痛っ…!」 

 

鶫(思ったよりも、傷が深かったようだな。……今は安静にしているか) 

 

鶫(…さっき見た夢は、一体何だったんだろう…?) 

 

 

休み時間・保健室 

 

 

鶫(……) 

 

 

タッタッタッタッタッ…… 

 

 

鶫(…?) 

 

タッタッタッ… 

 

 

ガラッ 

 

千棘「鶫!!大丈夫!?」 

 

鶫「!お嬢…」 

 

千棘「よ、よかったぁ…」 

 

鶫「ご心配をおかけして、申し訳ありません……私はどう責任を取ればいいのか…」 

 

千棘「別にいいわよ、鶫も無事目を覚ましたことだし…」 

 

千棘「それに、責任だとかそんなことまで考えないの。私とあんたの仲じゃない!」 

 

鶫「お嬢…ありがとうございます」 

 

千棘「まあ、お詫びしたいって言うなら、今度なんかおごってよ!それでチャラってことで!」 

 

鶫「はい!では、たい焼きなどいかかでしょうか?先日、中身のあんこが美味しいと評判のお店を見つけまして――」 

 

千棘「ご、ごめん。私クリーム派だから、あんこはちょっと…」 

 

鶫「あっ、そ、そうでしたか…」(しまった!以前聞いていたのに、何故お嬢の好みを忘れていたんだ私は!) 

 

小野寺「つ、鶫さん…?」ガラッ 

 

鶫「お、小野寺様!」 

 

小野寺「るりちゃんから聞いたんだけど…本当に大丈夫なの?」 

 

鶫「ええ。急に体を動かさなければ、特に問題はありません。小野寺様も、私のことを心配してくれるとは…」 

 

小野寺「私や千棘ちゃんだけじゃないよ。鶫さんが倒れたって聞いたとき…」 

 

小野寺「一条くんや橘さんや舞子くん、クラスのみんなも心配してたんだよ」 

 

鶫「!そうでしたか…しかし、私のせいで皆を…」 

 

千棘「……」ツカツカ… 

 

千棘「…鶫」 

 

鶫「はい?なんですかおじょ…」 

 

千棘「えいっ」グニィ 

 

鶫「!?ふぉ、ふぉひょう!?いっひゃいなんでひゅは!?」 

 

千棘「あっははははは!鶫ったら変な顔!しかも変な声出てる!」 

 

鶫「も、もうおやめくりゃはい…」 

 

小野寺「…くっ……ぷぷ……っ!」プルプル 

 

鶫「おにょひぇらひゃまも、わりゃっひぇにゃいでとみぇへくらはい!!」 

 

千棘「―――あー面白かった。鶫ったら必死に抵抗しちゃって…ぷぷぷ」 

 

鶫「もう笑わないでください…。どうして急にあんなことを」 

 

千棘「私さっき、責任なんか感じなくてもいいって言ったわよね?」 

 

鶫「!」 

 

千棘「小咲ちゃんの言うとおり、アンタが倒れたって聞いて皆心配してた」 

 

千棘「でもそれを知って、アンタは自分が迷惑をかけたんだとか、悪い方に思い詰めたらダメでしょ!」 

 

小咲「私もそう思う。鶫さんは、みんなに対してすごく悪い事したわけじゃないんだし…」 

 

小咲「それに、大切に思ってる人に何かあったとき…、心配するのは当たり前の事なんだよ」 

 

鶫「お嬢、小野寺様…しかし…」 

 

千棘「あーもう!それなら命令よ!今後マイナス思考になるの禁止!もしこれが全然できなかったら、もう口聞かないからね!」 

 

鶫「そ、そんな!」 

 

小野寺「千棘ちゃん、さすがにそれはやりすぎなんじゃ…」 

 

千棘「これ位しないと多分治らないわよ。いい、鶫?」 

 

鶫「は、はい…善処します」 

 

小野寺「そういえば、皆来るの遅いね…」 

 

鶫「皆?」 

 

千棘「楽たちの事よ。授業終わってから様子を見に行こうって話になったの」 

 

小野寺「千棘ちゃん一番心配してて、授業抜け出しそうになってたからね」 

 

千棘「こ、小咲ちゃん!それ言わない約束だったでしょ!」/// 

 

鶫「お嬢、それほど私の事を…っ」ウルウル 

 

千棘「だーもうっ!この話は終わり終わりっ!あー早くみんな来ないかなー!!」/// 

 

 

お待ち下さい楽様~!> 

 

だ、だからくっつくなってば!///> 

 

良いじゃありませんか、私と楽様の仲ですし♪> 

 

鶫のお見舞いだっつーのに引き止めすぎなんだよ!> 

 

桐崎さんがいない今だからこそ、楽様といるこの時間を堪能したいんですよ~> 

 

もっと時と場合を考えてくれ!!> 

 

まあ!そうすれば私と2人でいる時間を楽しんでくれるというのですか!?> 

 

ち、違うって!!///> 

 

 

るりちゃ~ん、やっぱり俺達もああいうのやってみない?> 

 

ふんっ> ゴスッ 

 

ぐふぉぉ…冗談なのに…> 

 

ここまでに何回言ってるのよ;> 

 

これで…4回、目…> 

 

 

千棘・小野寺・鶫「………」 

 

 

ガラッ 

 

 

楽「や、やっと着いた…鶫、だいじょう」 

 

千棘「てぇいっ!」バギッ 

 

楽「ぶっ!?な、なんだよ急に!?」 

 

千棘「別にぃ…」ムスー 

 

万里花「楽様に対して酷いじゃありませんか桐崎さん、恋人だというのにいきなり殴るだなんて…」 

 

千棘「だいたいアンタも、私がいない間に楽をたぶらかさないでよ!」 

 

万里花「あら、バレてましたか?」 

 

小野寺「保健室の前までずっとやってたからね…」 

 

楽「ったく、…鶫は?」 

 

鶫「……貴様、お嬢と付き合っていながらあんな…」ギロッ 

 

楽「え、えーっと、ものすごく元気そうでよ、よかったですねー、鶫さん…?」 

 

鶫「…なにか、言うことは?」ゴゴゴ 

 

楽「色々ごめんなさい許して下さいお願いします」 

 

集「楽~、あんまり女の子を怒らせるなよ~♪」ボロッ 

 

るり「アンタが言うな」 

 

鶫「…そういえば宮本様、先ほどおっしゃっていた、私の『不注意』というのは…?」 

 

小野寺「え?鶫さんは覚えてないの?」 

 

鶫「? 何がですか?」 

 

万里花「私たちは、『鶫さんが急いで教室に戻ろうとしたら、バナナの皮で足を滑らせ、壁に頭をぶつけて気を失った』と聞きましたよ?」 

 

鶫「…………は?」 

 

千棘「もう、鶫ったら時々変に抜けた所があるんだから」 

 

楽「今時バナナで足を滑らせるってなぁ…」 

 

小野寺「それで壁にぶつかって気絶した…って、すごく急いでたんだね」 

 

集「小野寺、論点そこじゃない」 

 

楽(ちょっとズレてる小野寺もかわいい…) 

 

鶫「……宮本様、少しこちらへ」 

 

るり「な、ナンデショウカー鶫サン?」アセアセ 

 

楽・千棘・小野寺・万里花「?」 

 

集「~♪」 

 

鶫(なぜ私がバナナの皮ごときでコケる人みたいになってるんですか!?)ヒソヒソ 

 

るり(じ、事実を言ったらもっと心配かけるだろうから、主に怪我については抑えたつもりなんだけど)ヒソヒソ 

 

鶫(別の意味で大怪我してるんですよ!)ヒソヒソ 

 

るり(これ以外にまともな言い訳をつくれなかったのよ;) 

 

るり(第一、屋上の壁に大きなヒビ、そこに頭を大怪我したアンタがバタンキュー。こんな状況、デタラメな表現入れなきゃ隠し通せないって)ヒソヒソ 

 

鶫(うぐっ、た、確かに…;) 

 

るり(というか、皆があの言い訳を普通に信じるとは思わなかったわ…) 

 

小野寺「ね、ねえ…2人で何話してるのかな?」 

 

鶫・るり「「なんでもない!!」です!!」クワッ 

 

小野寺「!(ビクッ) ふ、2人とも顔怖いよ…;」 

 

万里花「それにしても、まさか鶫さんほどの丈夫な方が寝込むだなんて思いませんでしたわ」 

 

鶫「ふん…貴様、それはお嬢の護衛である私への軽蔑か?」 

 

万里花「軽蔑なんてしておりません。あなたが倒れたと聞いたとき、正直私も驚きました。」 

 

鶫「……」 

 

万里花「ここに来るまで、あなたが本当に無事なのか…道中不安でいっぱいでして…」 

 

鶫「……本音は?」 

 

万里花「楽様との愛でいっぱいでしたわ♪」 

 

楽「ちょ、橘ぁっ!!」/// 

 

千棘・鶫「…………」ゴゴゴゴゴゴゴゴ 

 

楽「違う違う違う!!橘はああ言ってるけど俺は別n」/// 

 

千棘「デレデレするんじゃない!!」ドガァッ 

 

楽「ぐはぁっ!な、なんでだぁ・・・」 

 

万里花「…まあ、心配していたというのは事実です。あなたの様子を見て、ほっとしています。」 

 

鶫「…戯言を」 

 

万里花「…私に対する態度からして、期待はしていませんでしたが」 

 

鶫「……その心遣いくらいは、受け取ろう…」ボソッ 

 

万里花「?」 

 

鶫「~~っ!なんでもない!」/// 

 

万里花「……ふふふ、そうですか♪」 

 

 

集「楽、正直言うと殴られ損だったな♪」 

 

楽「言うな…余計つらい…」 

 

 

キーン コーン カーン コーン 

 

 

千棘「え!?嘘、もう休み時間終わり!?」 

 

万里花「来たばかりだというに、どうしてこんなに終わるのが早いのでしょうか…?」 

 

小野寺(まあ、一条くんたちは大分遅れて来たからね…;) 

 

集「やっべ…次の授業の担当、遅刻に超厳しいんだった!」 

 

楽「おい!皆急ぐぞ!」 

 

ワーワー、バタバタ… 

 

鶫「!…待て、一条楽!」 

 

楽「鶫!?わりーけど今は…」 

 

鶫「貴様とお嬢の事について、大事な話がある。貴様はここに残れ」 

 

楽「俺と千棘の…?つっても、また後で来たときに聞くから…」 

 

千棘「何してんのダーリン!?早く行くわよ!」 

 

楽「わ、分かってるって;」 

 

鶫「…残らなかった場合、―――――――」 

 

鶫「―――クロード様に…『ある事』を報告する、と言ったら?」 

 

楽「!」ピクッ 

 

小野寺「一条くん…?」 

 

千棘「ちょっと!時間ないのに何突っ立ってんの!」 

 

楽「千棘、小野寺…悪い、先行っててくれ」 

 

千棘「え?」 

 

小野寺「…一体、どうしたの?」 

 

楽「鶫が…俺と話がしたいって」 

 

千棘(!ま、まさか…!?) 

 

千棘「……小咲ちゃん、行こっ!」タッ 

 

小野寺「え…千棘ちゃん?」 

 

 

あら!?お二方、楽様はどちらへ!?> 

 

あいつのことは気にしないで!!> 

 

私は楽様と一緒にいたいんです~!> 

 

橘さん!急がなきゃ本当に怒られちゃうよ!?> 

 

うぅ~(;_;)> 

 

 

楽「…さて、俺とハニーについての話、だっけ?」 

 

鶫「………」 

 

楽「あそこまで言って俺を引き止めるくらいだから、スゲー情報知ってるんだろ?」 

 

鶫「………」 

 

楽「しかも俺1人残すってことは、やっぱりここで俺を…そうだな?」 

 

鶫「………」 

 

楽・鶫「「………」」 

 

楽(――――――ヤバい) 

 

楽(ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい) 

 

楽(話って何!?やっぱ俺とアイツのこと!?『ある事』って何!?っていうかあのメガネに報告!?) 

 

 

楽(俺と桐崎はニセの恋人。初めは、誰かにバレるんじゃないかと冷や冷やしていた) 

 

楽(けど、怪しまれても必死に恋人のフリをし続け、俺たちに訪れた危機を何度も回避してきた) 

 

楽(目の前で演じる事も心苦しかった小野寺への誤解も解け、俺のジレンマも無事解決) 

 

楽(俺に猛アタックする橘が転入してきてからというもの、あいつの演技も迫真になっている…気がする) 

 

楽(よほどのことがない限り、俺達の関係がバレることはないだろう―――――と思った矢先に) 

 

楽(なんで…どうして…どうやって情報を…!?) 

 

楽(俺たちの関係が『ある事』だとしたら、あのメガネの耳に入った瞬間、俺の命はない!) 

 

楽(両方の組織に伝われば、全面戦争で街が吹き飛ぶ!!) 

 

楽(そもそも呼び出した本人である鶫は、本来向こうに雇われている凄腕のヒットマン…) 

 

楽(呼び出した理由…おそらく、鶫が聞いた情報を俺に確認し、俺を仕留めるつもりだ) 

 

楽(へっ、でもそう簡単にボロはださねぇぞ。今までどれ位あいつといたと思ってる?) 

 

楽(そこらで聞いた程度の情報じゃ、嘘だなんてバレるわけ……――っ!) 

 

楽(待て、やっぱりダメだ!そういえばこいつ、事あるごとに変な物持ってきて俺たちをはめようとしてただろ!)オオモトハアノメガネダロウナ… 

 

楽(1歩誤ればそこから死亡ルート確定、そして手をかけられて……終わり……?) 

 

楽(…………) 

 

楽(嫌だぁぁぁぁぁ!!俺まだ成人すらしてないのに!こんな中途半端なところで終わるとか―――!!) 

 

楽(あぁ…小野寺、俺のこと忘れないでいてくれるかな……) 

 

楽(って、何死ぬ前提で話を進めてるんだ俺!小野寺に告白できないまま逝去とか、一生どころか生まれ変わってもずっと後悔する!) 

 

楽(お願い神様~~!!もう玉砕確実になってもいい!せめて小野寺に告白するまで俺を生かせてくれぇぇぇぇぇ!!) 

 

 

神「……」 

 

楽(!か、神様!) 

 

神「……」カキカキ 

 

楽(もしかして、本当に俺を…!) 

 

スッ… 

 

神(集)『ガンバレ♪』テヘペロ 

 

楽(ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!) 

 

楽(……) 

 

楽(そういえば鶫のやつ、さっきから黙り込んでるような…?)チラッ 

 

鶫「……」 

 

楽「――――鶫。もう1度聞くけど…俺と千棘の関係で、話があるんだよな…?」 

 

鶫「……」 

 

楽「…;」ドキドキ 

 

鶫「…あれは」 

 

楽「…!」ゴクリ 

 

鶫「嘘、なんだ…」 

 

楽「――――――え?」 

 

楽「大事な話があるって…嘘?」 

 

鶫「……」コク 

 

楽「…ここに残らなかったら報告するっていうのも…嘘?」 

 

鶫「……」コク 

 

楽「…なんで、そんな嘘を…?」 

 

鶫「そ…それは…」 

 

鶫「…貴様と…ふ、2人きりに、なりたかった、から… ///」 

 

楽「……」 

 

鶫「…… ///」 

 

楽「な…な…」 

鶫「?」 

 

楽「なにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!??」 

 

鶫「!?」ビクッ 

 

楽(嘘…嘘ってことは、俺まだ死なないで済むってこと!?) 

 

楽(このまま生きていられるってこと!?あいつとは恋人を演じ続けるだろうけど…) 

 

楽(俺にはまだ、小野寺に告白するチャンスがあるってことか……!?) 

 

楽(うおおおおおまさかの生存ルートぉ!俺の夢もまだ終わってないんだぁぁぁ!!)ブワッ 

 

楽(神様…じゃない、仏様ありがとうございます!!この恩は一生忘れません!!)キラキラ 

 

楽(あ!小野寺に告白する時も成就お願いします、仏様!!) 

 

鶫(…あいつは一体何をしているんだ;) 

 

鶫(話があると言ったのは嘘で、2人になりたかったと告げた瞬間、急に叫んで…) 

 

鶫(そして今、泣きながら上を向いて祈っている…?) 

 

鶫(まさか…まさか―――) 

 

鶫(――――――私と2人きりになることを喜んでいるというのか!? ///)カアァァ 

 

鶫(い、いや…そんなはずはない。第一、奴はお嬢の恋人なんだ…) 

 

鶫(私も私だ。なぜ奴がそう考えていると思う…。そう、敵であるはずの一条楽が私と―――)ホワンホワン… 

 

楽『鶫、まさかお前から誘ってくれるとはな』 

 

鶫『別に、貴様をこんなことに誘うために、あんな嘘をついたわけでは… ///』 

 

楽『でも、お前と一緒になれる時間ができて、俺はスゲー嬉しい』 

 

鶫『し、しかし、貴様にはお嬢がいるのだろう…こんな嘘をつくような私といなくても―――』 

 

楽『俺は今、お前と一緒にいたいんだよ、鶫…』 

 

鶫『! 一条、楽―――――』 

 

鶫(だ・か・ら!私は何を考えているんだぁぁぁぁぁ!! ///)グワングワン 

 

楽「そ、そうだ!おい鶫!」 

 

鶫「ひ、ひゃいっ!?」 

 

楽「お前、なんであんな嘘ついたんだよ…!?」 

 

鶫「…し、仕方ないだろう!あの状況で貴様を引き止める手段があれしかなかったんだから…!」 

 

楽「その理由を聞いてみりゃ、2人きりになりたかったから…って、なんなんだよ!?」 

 

楽「やろうと思えば幾らでも出来るような、大した事でもねーのに!」 

 

鶫(!大した事…ないだと…?) 

 

鶫「~~!私は嘘をついてでも、今貴様と居たかったんだ!それの何が悪い!!」 

 

楽「そんなことの為だけに、俺の命に関わりかねない話を引き合いにするなんて、ふざけてんのか!」 

 

鶫「ふざけてなどいない!重要な話としか考えず、私の嘘と見抜こうともしなかった貴様も貴様だ!!」 

 

鶫「大体、貴様はいつも無頓着で―――――っ!」ズキッ 

 

楽「!?ど、どうした鶫!?」 

 

鶫「―――…い、いや、なんでもない。少し興奮しすぎただけだ…」 

 

楽「そ、そうか…?」 

 

鶫「……今、落ち着いて考えてみれば、確かにあれは度が過ぎた嘘だったな…」 

 

鶫「ただの私のわがままで、貴様の気を大分悪くしてしまったようだ…すまない……」 

 

楽「……」 

 

鶫「……」 

 

楽「―――確かに、2人になりたいっていう理由だけで、笑えねぇ嘘ついたことに腹が立ったのは本当だ」 

 

鶫「…っ」 

 

楽「でも、お前に謝られるほど、俺は怒ってねーよ。俺も、さっきは強く言い過ぎた」 

 

鶫「!」 

 

楽「だから、謝る代わりに1つ…約束してくれ」 

 

鶫「約束…?」 

 

楽「俺と2人で話がしたくなったら、その時に絶対嘘なんてつくな」 

 

楽「俺もできるだけ、お前と話す機会を作るから…」 

 

鶫「………分かった。約束しよう…」 

 

楽(あんな嘘をついてまで…鶫は、俺と2人きりにになりたがっていた) 

 

楽(多分、あいつは誰にも言えないような、そんな悩みを持ってるに違いない) 

 

楽(なんで千棘や小野寺じゃなく、俺を選んだのかはよく分かんねーけど…) 

 

楽(アイツはそれだけ真剣に悩んでるんだ。俺はそれに、しっかり答えなきゃいけねぇんだ…!) 

 

 

鶫(――――私は馬鹿だ) 

 

鶫(いや、大馬鹿者だ…) 

 

鶫(なぜあの時、あいつが私といることを望んでいるなんて、一瞬でも思ったんだ…) 

 

鶫(そんなことあるわけないだろう。奴には、本当は奴に勿体ないくらいの魅力がある…お嬢の恋人だ) 

 

鶫(そいつに、私が酷い嘘をついたのは事実だ。あれほど声を荒げるのも無理はない) 

 

鶫(対して私は、自分の非を認めようとしなかった) 

 

鶫(そして、一条楽に負い目を感じさせてしまった。奴にとって、余計な約束まで作らせてしまった) 

 

鶫(…もっとこの男と一緒にいたい、なんて考えるのはやめよう。そう、今まで通りでいいんだ…) 

 

鶫(こんな迷惑なわがままは、今回だけにしよう―――――)グッ… 

 

楽「―――それで、具合はどうなんだよ?」 

 

鶫「…貴様ごときに心配されるほどではない」 

 

楽「お前…『気を悪くしてすまない』とか言った相手にかける言葉か?」 

 

鶫「…ふん」 

 

楽「まあいいや…。橘も言ってたけど、お前が倒れるだなんて珍しいな。しかもバナナの皮で転ぶなんて…;」 

 

鶫(まだそれを信じているのか…;) 

 

楽「そういや、宮本と一緒だったらしいけど、2人で一体何してたんだよ?」 

 

鶫「……貴様には関係のないことだ」 

 

楽「別に関係なくはないだろ」 

 

鶫「…どうしてそう私に構うんだ?」 

 

楽「お前が2人でいたいとか言い出したからだろ!」 

 

鶫「そうは言ったが、今はそんな事話したくはないんだ!」 

 

鶫「――――っ!!」ズキィン! 

 

楽「お、おい!本当に大丈夫か!?」 

 

鶫「(さっきよりも、痛みが…)き、気にするな…!ぐっ…」ズキズキ 

 

楽「お前まさか、さっき言い合ってた時も……ちょっと見せてみろ!」グイッ 

 

鶫「おい!気にするなと言っただろう!」 

 

楽「目の前で苦しんでる奴をほっとけるわけねぇだろ!」 

 

鶫「っ!このお節介が…」 

 

楽「ああ、勝手に言ってろ!」 

 

鶫(…どうしてこいつは、他人に対してこんなに気遣ってやれるんだ…) 

 

鶫(身勝手で、そして下らない考えを持った、こんな私にすら―――――) 

 

楽「~~!」アセアセ 

 

鶫(……) 

 

鶫(だ、ダメだ!近づかれるとやはり落ち着かない! ///) 

 

鶫(それに時々、奴が怪我の様子を見ているはずなのに……か、顔を、見られてるようで… ///) 

 

楽「ん…?おい、お前顔赤いぞ…?」 

 

鶫「んなっ!? ////」カァァァ 

 

楽「うわっ!やっぱ赤くなってるって!もしかして熱でもあんのか!?」 

 

鶫「ち、違う!これはただ…」 

 

ピトッ 

 

鶫「"$%&'()=~|`{+*}<>_-^\@[;:],./\!?!?!?!? /////」ボンッ 

 

鶫(い、いいいいいい今、いちいち、いちいちいち一条楽の、ひ、ひ、ひひひひ額が… /////) 

 

楽「鶫!お前スゲー熱あるぞ!?やっぱり無理してたんじゃ…」 

 

鶫「う、うるさいうるさい!!全部貴様のせいだぁ!! ///」 

 

楽「なんで!?」 

 

楽「…ったく、さっきからなんなんだよ…」ブツブツ 

 

鶫「~~ ///」 

 

鶫「貴様、最初は慌てていたようだが、大分手慣れているな」 

 

楽「家の奴らが時々、抗争で傷ついて帰ってきてたからな。自然と身に付いたんだろ」 

 

楽「えっと、包帯は確かあの棚に…」 

 

鶫「……」 

 

鶫(―――不思議だ) 

 

鶫(普段は素っ気ない態度しか見せず、口も悪く知性や運動能力も突出していない男なのに) 

 

楽「……」ゴソゴソ 

 

鶫(こうして奴と2人でいると、なんと例えるべきか…) 

 

鶫(そう…とても温かく、心地良いものに包まれている気分だ) 

 

鶫(この気持ち…悪くない。むしろ、もっと感じていたい―――) 

 

鶫「……♪」クスッ 

 

楽「?何がおかしいんだ?」 

 

鶫「!!?」 

 

鶫「い、いつからそこに!? ///」 

 

楽「さっき包帯取りに行って、今戻ってきたところだよ。ほら、包帯巻くぞ」 

 

鶫「い、今はダメだ! ///」バサッ 

 

楽「え!?なんで急に布団被るんだよ!?それじゃ頭に巻けないだろ!?」グイグイ 

 

鶫「やめろ触るな!この地獄耳!!変態!!! ///」モゾモゾ 

 

楽「そこまで言うか普通……」 

 

 

楽「―――――これでよし、と」 

 

鶫「…礼は言わんぞ」 

 

楽「せめてもう少しくらい素直になってくれよ;」 

 

鶫「では素直に言おう。貴様に感謝の言葉を述べるくらいなら、自分の喉を潰す方がましだ」キリッ 

 

楽「そこまで嫌か!?」 

 

鶫「ふん…」 

 

鶫「……本当は、貴様に借りなど作りたくはなかったが…」 

 

楽「借りなんてそんな…。俺は別に、そこまでのことはしてねーし…」 

 

鶫「………」 

 

鶫「………ありが…とう ///」 

 

楽「え?」 

 

鶫「この借りは、いつか、その…必ず、返すから、な… ///」 

 

楽「…?お、おう…」 

 

鶫「~~/// そ、それだけだ!さっさとここから出ていけ!」 

 

楽「あんな嘘で呼び止めた癖に、急に出ていけって…」 

 

鶫「うるさい!!もう何も言うな! ///」 

 

楽「あー、わかったわかった。大人しく出ていくっての」 

 

鶫「~~///」 

 

楽「……」ピタッ 

 

楽「…鶫」 

 

鶫「何だ!さっき大人しく出ていくと―――」 

 

楽「―――――あんまり、無理すんなよ」 

 

鶫「!」 

 

楽「じゃあ、また次の時間にな」 

 

 

ガラララ… パタン 

 

 

鶫「…一条楽」 

 

鶫(……)トクン… 

 

鶫(あいつといると、胸が苦しくなる…) 

 

鶫(もっと、一緒にいたいと思ってしまう…) 

 

鶫(もっと、話したいと思ってしまう…) 

 

鶫(もっと…あいつと――――――) 

 

鶫(結局、私は午前の授業を全て欠席し、授業中は保健室でずっと横になっていた) 

 

鶫(…あいつの言葉を真に受けたわけではない。決してな! ///) 

 

鶫(授業の合間は、お嬢たちが私の様子を見に来ては、他愛もない会話を楽しんだ) 

 

鶫(しかし…一条楽…) 

 

鶫(お嬢たちとの会話中、どんなに話が盛り上がっても…) 

 

鶫(どうしても奴の事が、頭から離れなかった…) 

 

鶫(……) 

 

鶫(もう少しだけ、自分のわがままに付き合うか…) 

 

 

キーン コーン カーン コーン 

 

 

鶫「!そういえば、もう昼休みになるのか」 

 

鶫「これだけ時間が経てば、ある程度動いても傷が痛むことはないだろう」 

 

鶫「さて、昼食はどうするべきか…」 

 

 

鶫「今日は時間の許す限り、一条楽と接することにしよう」 

 

鶫「昼食はいつもお嬢たちと一緒にいたが、今回は…そうだな」 

 

鶫「…い、一条楽の、弁当を、食べさせてもらう、とか… ///」 

 

鶫(な、何故私が照れなければいけない!) 

 

鶫(大体、弁当を食べるくらい何の問題もない行為だ。意識する必要も…) ホワワン 

 

 

楽『ど、どうだ?味の方は…?』 

 

鶫『あ、ああ…決して不味くは、ないぞ…』 

 

楽『良かった、鶫が褒めてくれるなんて…。頑張って作った甲斐があったよ』 

 

鶫『ほ、褒めてなどいない!それに、まだ味付けがなっていないぞ!』 

 

楽『そ、そっか…。 !それじゃあ、鶫も手伝ってくれ!』 

 

鶫『なっ!?何を突然…』 

 

楽『お前料理上手いだろ?この料理に足りない部分をもっと教わりたいんだよ!』 

 

楽『頼む!手伝ってくれたら、お前の好きな物作って御馳走するから!!』 

 

鶫『し、仕方ないな…。貴様の手作り料理、期待してるぞ―――』 

 

 

鶫(ぬわああああああああああああああああ ///)ガリガリガリガリ 

 

 

鶫「はぁ…はぁ…」 

 

鶫「くそっ…最近の私は、どうも変な考えが頭をよぎる…;」 

 

鶫「それも一条楽…あの男との事ばかりだ」 

 

鶫「いくら距離を縮めたいからと言って、そこまでの関係など全く望んで…」 ホワンホワン 

 

 

鶫『だ、ダメだ!』 

 

楽『何がダメなんだよ?今ここにいるのは俺とお前だけだろ?』 

 

鶫『いくら貴様と親しくなったとはいえ、こんなことまでするなんて…』 

 

楽『もしかして、俺とは嫌なのか…?』 

 

鶫『い、嫌ではないし、むしろ…ひゃんっ!?』 

 

楽『嫌じゃねーなら、どうしてそんなに拒むんだよ?』 

 

鶫『それは…貴様は、お嬢と愛し合っているんだろ…?こんなことは私よりもお嬢とする方が…』 

 

楽『……』 

 

鶫『んっ、ふぁっ…き、貴様聞いて―――』 

 

楽『今、お前といたいから…それじゃダメなのか?』 

 

楽『もちろん俺は、千棘を愛してる。でも、俺は鶫のことも…愛してるんだ』 

 

鶫『なっ…!こ、この…浮気、者ぉ……ぁん』 

 

楽『幻滅したよな…。でも、千棘一筋だったはずの俺に近づいたのは、鶫だろ?』 

 

鶫『そ、そんな…邪な考えで…近づいた…わけ、ではっ…』 

 

楽『お前が、可愛すぎるのが悪いんだよ』 

 

鶫『ふぇっ!?』 

 

楽『その声とか、時々見せてくれる笑顔とか、スゲー可愛くてたまらないんだ』 

 

楽『今こうして、俺の一々に反応してくれる鶫も…』 

 

鶫『か、かわいく、なんか…、あっ…』 

 

楽『愛してるよ、ハニーも…お前も。そして、これからもずっと愛し続けてやる』 

 

鶫『ずっ、ずる…いぃ…。私……もぉ……―――――』 

 

 

鶫(ЁΔ∀БΓ∂ДΘ∃ЖΛ∫ЙΞ∮ЛΠ∇~~~~!!!!)バスンバスン 

 

鶫「――――――――――ふぅ」 

 

鶫「ようやく落ち着いた…。さて、教室に戻るとしよう」 

 

 

――――――――――――― 

 

昼休み 教室 

 

 

集「おっ!今日の楽の弁当唐揚げじゃん!」 

 

楽「ふっふっふ、今日の唐揚げは一味違うぜ!」 

 

集「ほ~う?楽の事だから、さぞかし有名な地鶏を贅沢に…」 

 

楽「甘い、甘いぞ!もちろん食材も大事だが、俺がただ食材に頼る人間だと思ったか!?」 

 

集「思ったけど?(冗談)」 

 

楽「な゛!?…ふ、ふん!それは誤りだぞ集…どんなに良い食材を使っても、作り手の腕がなっていなければ意味がない!」 

 

楽「作り手の腕と食材が調和することで、初めて『本当に美味い料理』が出来るんだ!!」 

 

楽「そして俺は!毎日の情報収集と、毎晩の試行錯誤の末……ついに、『本当に美味い唐揚げ』を完成させたんだ!!」 

 

万里花「まあ、私に食べさせるためにそれほどの苦労を…。これも、私に向けられた楽様の愛の形なんですね…!」 

 

万里花「楽様からの愛、私が全て受け止めて差し上げましょう!!」バッ 

 

楽「うおおおい橘!勝手に弁当取るな!」 

 

万里花「是非! 是 非 !私に食べさせて下さいまし!」キラキラ 

 

楽「分かった、分かった;橘にも唐揚げ1個やるから、早く弁当返してくれ!」 

 

万里花「1個と言わずに、全て!いえむしろお弁当丸ごと!!」 

 

楽「せめて作った本人にも食わせてくれよ!!」 

 

ギャーギャー 

 

鶫「…………何を騒いでいる貴様ら」 

 

楽「」 

 

集「あ、誠士郎ちゃんお帰り~」 

 

楽「えーっと、その…鶫さん、いつからそこに?」 

 

鶫「貴様が橘万里花に対して、弁当を返すよう言った時には、既に教室に着いていた」 

 

鶫「それで?貴様ら2人はなぜ弁当でそんなに騒いでいた…?」ゴゴゴ 

 

楽「こ、これはだな、そう…別に俺は、橘となにかやましいことがあったわけではなく…;」 

 

万里花「もう楽様ったら~、そのような嘘をおっしゃらなくてもよろしいのですよ?」 

 

万里花「楽様の『 愛 』が込められたお弁当を、今から頂くのですから♪」 

 

鶫「!」ピクッ 

 

楽「愛なんて言ってないし、そもそもお前がそう捉えてるだけだろ!」 

 

楽「だから鶫、これは勘違いなんだよ!それに今回は、ハニーも怒ってるわけじゃねーし!」 

 

楽(あれ?そういえば、こういう時に千棘から感じるいつもの殺気を感じないような…)チラッ 

 

千棘「つ…作り手の、腕が、なってないと…」orz 

 

小野寺「意味が……ない…」orz 

 

るり「アンタたち真に受けすぎでしょ;」 

 

楽(…俺、調子に乗ってなんつー事言ってるんだ;) 

 

楽(後で2人の誤解を解かないとな…) 

 

鶫「……」 

 

万里花「あら、珍しいですわね。桐崎さんも鶫さんも声を荒げず、手もあげないだなんて…」 

 

楽「千棘は今あんなんだから分かるが…。鶫もどうした?まだどこか悪い所でも…」 

 

鶫「…一条楽」 

 

楽「!な、何だ…?」 

 

鶫「橘万里花の話を聞けば、貴様は今日の弁当、相当手を込んでいるらしいな…」 

 

楽「ま、まあな」 

 

鶫「だから…その……」 

 

楽「…?」 

 

鶫「貴様の弁当を…わ、私にt」 

 

ガラッ 

 

女子A「あ、鶫ちゃん!戻ってきたんだ」 

 

鶫「え!?は、はい…?」 

 

女子B「グミちゃん戻ってきたら、屋上に来てほしいって先生たちが言ってたよー」 

 

鶫「屋上……、っ!」 

 

女子B「あと、るりちゃんも一緒にだって」 

 

るり「私も行くんだ…;」 

 

鶫「し、しかし…別に今じゃなくても…」 

 

女子A「でも先生たち、ちょっとヤバい感じだったから、すぐ行った方がいいかもね」 

 

るり「…鶫さん、すぐ済ませるよ」ガシッ 

 

ビュンッ 

 

鶫「み、宮本様!?ちょっ、ちょっと待ってくださいぃぃぃぃぃ……」 

 

楽「……」 

 

集「楽、残念だったな」ニヤニヤ 

 

楽「は?なんで今俺が残念そうに見えたんだよ?」 

 

集「あ~、そっかぁ~。そうなのかぁ~」ニヤニヤ 

 

楽「なんなんだよ…」 

 

万里花「さて楽様、今こそ私にお弁当を」 

 

楽「まず俺の弁当を返してくれ!」 

 

 

屋上 

 

副担任「――――うん…先生女子には優しいんだよ。優しいんだけど…」 

 

先生A「屋上の壁に巨大なひび割れ…2人がいる時に一体何があったんだい;」 

 

鶫「そ、それは…」 

 

るり「その壁に頭をぶつけてしまって…」 

 

先生B「偶然頭をぶつけて、ここまで壊れるなんてあり得ないでしょうが!」 

 

先生C「まあ、呼び出したのは今回の件もあるのですが…。最近、鶫さんの処遇について少し話し合いがありまして」 

 

先生A「君は以前から、学校の備品を壊してはこちら側で注意を受けている…そうだね?」 

 

鶫「は、はい…」 

 

先生B「正直言っちゃうと、また壊したのかと事務員さんからも苦情が来てるの」 

 

鶫「うっ」ドキッ 

 

先生A「こういう事を何度も起こされると、相応の処分も考えなければならないんだ」 

 

先生A「停学か、最悪の場合退学になる可能性も…」 

 

鶫「!」 

 

鶫(そんなことになれば、学校でお嬢の護衛が出来なくなってしまう!) 

 

鶫(それに、クラスの皆様と一緒にいる事も…) 

 

鶫(一条楽とも…会えなくなる…?) 

 

副担任「そ、その件に関しましては、私から本人に言い聞かせますので…」 

 

るり(なんてその場しのぎな説得…) 

 

先生A「…分かった。今回に関しては厳重注意としよう」 

 

先生A「今後このようなことは二度と起こさないように。もし起きたら…いいね、鶫さん?」 

 

鶫「………はい…」 

 

先生C「それでは2人とも、もう戻っても大丈夫ですよ」 

 

先生B「ごめんなさいね。せっかくのお昼休みに呼び出しちゃって…」 

 

 

るり「はあ、やっぱり長かった…」 

 

鶫「すみません宮本様。私のせいでこのような事に巻き込んでしまって」 

 

るり「壁壊すようなこと言った私も同罪よ。気にしないの」 

 

鶫「宮本様…」 

 

鶫「―――しかし、今度問題を起こしたら退学もあり得るなんて…」 

 

るり「そこまで問題にされてるって…アンタどんだけ前科あったのよ;」 

 

るり「まあ、私もそれを知ってたら、あんな冗談言わなかったかもね…」 

 

鶫「いいんです…私の普段の行いが招いた結果なので」 

 

鶫「あっ!この事もお嬢たちには内緒にしていてください!!」 

 

るり「…また、心配かけたくないから?」 

 

鶫「身勝手だとは思いますが、それが私の心情です」 

 

るり「………今度は私でもフォローできないかもよ」 

 

鶫「…構いません」 

 

るり「!そうだ、私部活のミーティングがあるんだった」 

 

鶫「えっ!?大丈夫なんですか!?」 

 

るり「少し遅めに予定されてたから、急げばなんとかなるわ」 

 

るり(本当はちょっと面倒だけど、出ないともっと面倒になるのよね…) 

 

るり「というわけで鶫さん、また後で!」ダッ 

 

鶫「は、はい…」 

 

鶫(…もう、こんな時間か) 

 

鶫(皆、既に昼食を済ませているだろうな…) 

 

鶫(……) 

 

 

万里花『楽様の『 愛 』が込められたお弁当を、今から頂くのですから♪』 

 

 

鶫(~~~!何を考えているんだ私は ///) 

 

鶫(……しかし) 

 

鶫(あの弁当、食べてみたかったな…)ハァ… 

 

 

楽「―――ここにいたのか」 

 

鶫「!? 一条楽!貴様、何故ここに!?」ジャキッ 

 

楽「いきなり銃向けんなよ!」 

 

楽「何故ここにって…俺はただ、呼び出されてたお前のことを探してたんだよ」 

 

鶫「……探してた、だと?」 

 

楽「ああ、お前が教室に戻ってきたとき、橘との事に怒らないで…いや怒ってたんだろうけど」 

 

楽「その後急に、俺の弁当を気にしてただろ?」 

 

鶫「!き、気にした覚えなんてないぞ! ///」 

 

楽「いや、してただろ。さすがに俺もあれは不自然だって思ってさ」 

 

楽「いつもならあの後、俺が何言っても殴りかかってくるってのに」 

 

鶫「貴様…言わせておけば人を暴力だけの輩みたいに…」ゴゴゴゴ 

 

楽「だから、さ――――」 

 

スッ… 

 

楽「――――俺の弁当、食べてみないか?」 

 

鶫「!」 

 

鶫「し、しかし…貴様も既に食べ終わったのでは…」 

 

楽「全部は食ってねーよ、ほら」パカッ 

 

鶫「―――あ」 

 

鶫(弁当箱の中に、ご飯と唐揚げが……) 

 

楽「さすがに、おかず全部を残すのは無理だったし」 

 

楽「千棘や小野寺、橘や集にも分けちまって、あんまり残らなかったけど;」 

 

鶫「……」 

 

楽「理由はよく分かんねえけど、俺の弁当のこと気にしてたみてーだし」 

 

楽「メシ食う前に呼び出されたから腹減ってるだろうと思って、鶫の分もとっておこうかと…」 

 

鶫「……」 

 

楽「…やっぱ俺の勘違いだったかな。悪い、余計なことしちまって」 

 

楽「この弁当の残り、自分で始末するよ」 

 

ガシッ 

 

楽「!?」 

 

鶫「……わざわざ、私のために残してくれたんだろう?」 

 

鶫「その…食べさせて、もらうぞ」 

 

楽「えっ…?」 

 

鶫「…た、食べると言ってもこれは仕方なくで、別に腹が空いてるわけでは」 

 

グゥ~ 

 

楽「……」 

 

鶫「~~ ///」 

 

楽「……プッ」 

 

鶫「わ、笑うな! ///」 

 

楽「クッ……わ、悪い…。でも……ぷはははっ!」 

 

鶫「笑うなと言っている! ///」ジャキン 

 

楽「わ、悪かったから、すぐに銃向けんなって!――…プフッ」 

 

鶫「~~!もう許さん!覚悟しろ一条楽!! #」ガチャッ ガチャガチャン 

 

楽「ま、待て鶫!今俺を襲ったら弁当もただじゃすまねぇぞ!?」 

 

鶫「私はヒットマンだぞ!貴様の体だけ蜂の巣にすることなど朝飯前だ! #」 

 

楽「は、蜂の巣!?」 

 

楽「そ、そんなことより、結局弁当は食うのか?食わないのか?」アセアセ 

 

鶫「食べるに決まってるだろ!貴様の『愛』が込められた弁当だからな!」 

 

楽「……は?」 

 

鶫「―――――!?」 

 

鶫(のわああああああああああああああああああああ) 

 

鶫(私は…怒りに任せてなんという発言をおおおおおおおおおお!?) 

 

楽「お前、急になんだよ、あ、愛って… ///」カァァ 

 

鶫「こ、これは…橘万里花の言葉をそのまま引用しただけだ!断じて私の言葉ではない!!」 

 

鶫「いいか!これ以上は絶対に追究するなよ!? ///」 

 

楽「わ、分かった…」 

 

鶫「で、では…その…」 

 

楽「お、おう」 

 

鶫「い、いただきます…」 

 

楽「…め、召し上がれ…?」 

 

鶫「…なぜ疑問なんだ」 

 

楽「気にするもんでもねーだろ…いいから、早く食えよ」 

 

鶫「あ、ああ…」ドキドキ 

 

楽「……」ドキドキ 

 

鶫「……っ」 

 

パクッ 

 

鶫「……」モグモグ 

 

楽「……」 

 

鶫「……」モグモグモグ… 

 

楽「……」 

 

鶫「…………」 

 

楽「…鶫?」 

 

鶫「…………」 

 

楽「その…食べてみてどうだったか、感想を聞きたいんだけど…」 

 

鶫「―――――」ポロッ 

 

楽「え゛」 

 

鶫「うっ…うぅ…」ポロポロ 

 

楽(泣いてる―ーーーっ!?) 

 

楽「ど、どうした!?泣くほど不味かったか!?」 

 

鶫「グスッ……ち、違う…」ポロポロ 

 

鶫「…凄く…ヒック……美味しいんだ……」 

 

楽「いや、でも」 

 

鶫「何も……言うな…。このまま、食べさせて…くれ…」ポロポロ 

 

楽「…ああ…」 

 

パクパク… 

 

モグモグ… 

 

鶫「―――――御馳走様、でした」 

 

楽「その、悪いな…。大したおかず残せなくて」 

 

鶫「いや…別にいい」 

 

楽(…あの後、鶫は黙って俺の弁当を食べ続けた) 

 

楽(途中までは何故か泣いたまま食ってたけど、食い終わる頃にはもう泣き止んでいた) 

 

楽(どうして泣いていたのか俺はずっと気になったけど、詮索しねー方がよさそうだな…) 

 

鶫(―――何故だろう) 

 

鶫(一条楽が、私の為に弁当を残しておいたと言った時、今までよりも嬉しく感じた…) 

 

鶫(いや以前からあいつの行為に対して、決して嬉しいと思う場面など無いに等しかったが ///) 

 

鶫(…そして、奴の残した弁当を口にした時、私は…―――――) 

 

楽「――――そ、それじゃ食い終わったんだし、教室に戻ろうぜ!」 

 

鶫「…ああ」 

 

楽「急がねーと、次の授業始まっちまうからな。先生が来たら、鶫が戻ったって報告を…」 

 

鶫「一条楽」 

 

楽「!な、なんだ…?」 

 

鶫「弁当、とても美味しかった」 

 

鶫「それと、私の為に残してくれて」 

 

鶫「―――――ありがとう」ニコ 

 

楽「えっ…」 

 

鶫「~~そ、それじゃあ、先に教室に戻るぞ! ///」ダッ 

 

楽「あっ!おい鶫!」 

 

楽「って、もういねーし!足速すぎだろ…」 

 

楽「ったく……今日のあいつ、なんか色々と変だぞ;」 

 

楽「今まで、俺に向かって礼を言うことなんて全然無かったのに」 

 

楽「それに…」 

 

 

鶫『―――――ありがとう』ニコ 

 

 

楽(さっきの、あいつの笑顔…) 

 

楽「…可愛かったな」 

 

集「何が可愛かったって?」 

 

楽「うおおお!?…ってなんだ集かよ」 

 

楽(あれ? 集の奴なんで着替えて…?) 

 

集「次の授業体育なのに、着替えないで一体どこ行ってたんだよ?」 

 

楽「」 

 

集「…!さっきの授業の分含めて、ハンバーガー1つよろしくな♪」 

 

楽「…はい」 

 

 

5時限目(体育) 外 

 

 

楽「あち~」ダラダラ 

 

楽「……あち~」ダラダラ 

 

集「まだ夏入ってないのに、何度も何度も暑いだなんて…」 

 

集「だらしがないぞ~楽クン♪」 

 

楽「キモいからその口調やめろ!」 

 

集「悪いわるい。まあ確かに、予報でも今日はかなり暑いって言ってたから無理もないけど」 

 

楽「昼飯食った後に、炎天下で体育…しかもこの日に限って授業担当不在」 

 

楽「それと体力づくりを理由にグラウンドの走り込みとか、俺を殺す気か…」 

 

集「その代わり、休憩多め+水分補給も自由だそうだぜ」 

 

楽「正直、こんな授業でなければ休憩なんて…」 

 

集「そして!今この授業は、なんといっても目の保養に最適なのだ!」 

 

楽「はあ…?」 

 

集「まず楽よ、お前は体育着をどう思う?」 

 

楽「どう思うってなんだよ…」 

 

集「ふむ、質問を変えよう。楽、小野寺の体育着姿をどう思う?」 

 

楽「かわいい」 

 

集「汗をかきながら一生懸命走ってる小野寺は?」 

 

楽「凄くかわいい」 

 

集「汗を拭きながら水を飲む小野寺は…」 

 

楽「色っぽい」 

 

集「体育の授業で汗ばんだ体育着姿の小野寺」 

 

楽「可愛い。たまらない。ヤバい」 

 

集「そういうことだ」 

 

楽「……なるほど」 

 

集「俺たち男子が休憩してる間、女子が走っている」 

 

集「女子が休憩している時は、男子が走る」 

 

集「俺たちは今日、ちょっとセクシーな女子の体育着姿を思う存分拝めるのさ♪」 

 

集「ほら、あそこにいる男子も夢中になってるぞ」 

 

 

<イイ… 

 

<オレホントコノクラスデヨカッタ… 

 

<ガンプクガンプク 

 

 

楽「同性とはいえ、あそこまで必死な連中はちょっと引くな…;」 

 

集「おっ、向こうに小野寺が(嘘)」 

 

楽「どこだ!?」バッ 

 

集(今のお前も同レベルだぞ…楽) 

 

 

集「そういえば意外だったなー」 

 

楽「何が?」 

 

集「誠士郎ちゃんのこと。結構な怪我したのに、今日の体育出るなんて思わなかったよ」 

 

楽「え?そうなのか?」 

 

集「ああそっか、楽は遅刻して知らなかったもんな」 

 

楽「……まさか1日に2度も授業に遅刻するなんて」orz 

 

集「そう落ち込むなって」 

 

楽「馬鹿野郎!公務員を目指す俺にとっては遅刻も致命的n」 

 

集「ほら、あそこに誠士郎ちゃんが」 

 

楽「聞けよ!!」 

 

はっ…はっ…はっ…はっ…> 

 

 

集「……すごいな」 

 

楽「ああ、怪我してもああやって体力づくりに励んで」 

 

集「違うぞ楽」 

 

楽「え?」 

 

集「も~っとよく見ろ」 

 

楽「…?」 

 

 

はっ…はっ…はっ…> 

 

 

集「…な!」 

 

楽「?何が…?」 

 

集「楽、正直に言っていいんだぜ…。実は気づいてるんだろ?」 

 

楽「いや、マジでわかんねーんだけど…」 

 

集「…誠士郎ちゃん、今走ってるよな?」ヒソヒソ 

 

楽「まあ、そうだな…」 

 

集「走ってる時にさ…」ヒソヒソ 

 

楽「……」 

 

集「…揺れてるんだよ」 

 

楽「」ブーーーッ!! 

 

 

……?> 

 

 

集「それも相当…」 

 

楽「き、急に何言いだすんだよ! ///」 

 

集「おやおや、揺れてるって言っただけなのに、楽はなんで顔赤くしてるのかな~?」 

 

楽「な、なんでって別に何も…」チラッ 

 

 

はっ…はっ…> 

 

ポョン… 

 

 

楽「///」 

 

集「気づいたな、あの逸材の凄さに」ニヤリ 

 

楽「ち、違っ… ///」 

 

集「ホントは小野寺や桐崎さんもそういう目で見てただろ?そうだろ?」 

 

楽「そういう目ってなんだよ!?」 

 

楽「大体、目の保養だとか、ゆ…揺れてるだとか ///」 

 

楽「別に俺は、女子のそういう姿でいちいち反応するような奴じゃ…」 

 

集「あ、小野寺――」 

 

楽「えっ!?」バッ 

 

集「―――――たちはまだ走ってるな」 

 

 

鶫「………」 

 

楽(なにこのデジャヴ) 

 

楽「つ、鶫さん…どうしてハニー達より先に走り終わってるんでしょうか…?」 

 

鶫「代理の先生から、授業に出てもいいが周回数は減らしておけと言われたからな」 

 

鶫「授業の初めに出席すると報告した後そう決められたのだが…貴様は聞いていなかったのか?」 

 

楽「そうそうそうなんだよ!俺聞いてなかったからてっきり周回数同じかと思っちゃって…」 

 

楽「しかも皆で走らねーで、1人で走ってたから何があったのかなーと」 

 

鶫「私が怪我をしているから、並走せずにすぐ済ませて休んだ方が良いというお嬢たちのご厚意によるものだ」 

 

鶫「一度は断ったが、万が一の事も考えてな」 

 

楽「そ、そうっすかーははは…」 

 

鶫「さて、一条楽よ…私からも質問したいことがある」 

 

鶫「私が走っている間、貴様のいる方から視線を感じた」 

 

楽「あ、そうだ集ー俺たちもそろそろ走る準備を」 

 

鶫「そして先ほど、貴様は……私のどこを見ていた?」 

 

楽「おーい集ー、どこ行ったー?一緒に走ろうぜー」 

 

鶫「気づいてないと思っているのか?」 

 

楽「ショーガネーナー、ヒトリデハシルトスルカー」 

 

鶫「答えろ、そして正直に言え」 

 

楽「ヨーシキョウハアツイケドガンバルゾー」 

 

鶫「答えない場合『一条楽は体育着姿で走る女子に興奮する変態』という報告をクラス全員に」 

 

楽「走ってる時に胸見てましたごめんなさい本当に勘弁してください」○| ̄|__ 

 

鶫「……」 

 

楽「……」ダラダラ 

 

鶫「……変態」 

 

楽「うっ」グサッ 

 

鶫「…ま、まあ時間はかかったが、正直に答えたんだ。今回は、見逃してやろう」 

 

楽(…あれ?) 

 

鶫「ほら、もう男子が走る番だぞ。さっさと行け! ///」 

 

楽「?…おう」 

 

 

タッタッタッタッ… 

 

 

鶫(…分かってる) 

 

鶫(あの男はお嬢の恋人。他の女に目移りするようであれば、私が制裁を加えなければならない) 

 

鶫(それが…私自身に向けられていたとしても…) 

 

鶫(なのになぜ私は、今の奴の行為に怒らなかったんだ…?) 

 

鶫(…胸を見られていた事に関してはとても恥ずかしいが ///) 

 

楽(ホント、なんなんだ今日のあいつは…)タッタッタッ… 

 

楽(急に2人になりたいとかいう理由で嘘ついたり、素直に礼言ったり) 

 

楽(さっきもぶん殴られると思ったら特に何事もなかったし…) 

 

楽(………まさか) 

 

楽(―――――頭を怪我したせいでおかしくなったのか!?) 

 

楽(そうだ…いつものあいつなら俺にあんな態度をとるわけがない)タッタッタッ… 

 

楽(保健室でも思ったけど、本来あいつにとって俺は敵なんだ) 

 

楽(俺に対して当たりがきついのも、俺の事をあんまり良く思っていないからだし…) 

 

楽(あれ?じゃあ昼休みの時に銃向けたり、さっき質問されたときに脅迫まがいな事してきたのは?) 

 

楽(普段なら当たり前(?)だが、鶫がおかしかったらそんな行動も取らないはずだ) 

 

楽(怪我するとそんな中途半端に態度が変わるものなのか…?) 

 

楽(あー全然分からん!走りながら考えても何も出てこねー!) 

 

集「どうした楽?」ボロッ 

 

楽「いやお前がどうした!?」 

 

集「いや~、『観察』してたらるりちゃんに気づかれてたみたいで、向こうが走り終えた瞬間に…」 

 

楽「自業自得だろ…」 

 

集「そんなことはいいんだよ。楽、待ちに待った2つめの楽しみ方だぜ♪」 

 

楽「待ってねーし、お前も懲りねえな」 

 

集「今女子たちは各自水分補給をしている。そして楽、あそこで小野寺たちが」 

 

楽「さっきみたいにフェイントかけるなよ…?」ギロッ 

 

集「もうしねえって!ほら、向こうで休んでるぞ?」 

 

 

つ、疲れたぁ…> 

 

お疲れ、小咲> 

 

お疲れぇ…あついぃぃ> 

 

千棘ちゃん、大丈夫…?> 

 

 

楽「おおお…」 

 

 

楽(タオルで汗を拭いたり、少し乱れた髪を直す仕草…) 

 

楽(こう意識して見てると一段と可愛く見える…!) 

 

楽(そして、しっとり濡れた体育着と、露出した肌へと滴る汗…) 

 

楽(この距離からでも、俺の脳内にある小野寺のイメージと重なって…) 

 

楽(スゲー、目の保養どころじゃねえ…反則すぎるだろ!!) 

 

楽「集…」ポン 

 

集「ん?」 

 

 

楽「体育着いいな!」b 

 

集「…だろ?」 

 

 

―――!> 

 

?――っ!> 

 

ドドドドド… 

 

 

……?> 

 

 

楽「……」ボロッ 

 

集「……」ボロッ 

 

楽「集…」 

 

集「楽、何も言うな。全部俺が悪い」 

 

楽「いや…俺も夢中になりすぎたんだ。お前だけが悪いわけない」 

 

集「楽…お前と親友でよかったよ…」 

 

楽「ああ…俺もだ」 

 

楽(あの後、俺たちが『観察』してることに気づいた千棘と宮本が、猛スピードでこちらに向かってきた) 

 

楽(そして走っている最中にも関わらず、俺と集は猛烈にひどい目にあった) 

 

楽(具体的に言えば、俺は千棘からケダモノと言われた挙句、無数の蹴りを喰らい) 

 

楽(集は宮本から…多分ものすごい悪口であろう言葉の数々を浴びせられた後、無茶苦茶に殴られた) 

 

楽(ちくしょう集め…俺より体力あるから先に行くとか、無駄に腹立つこと言いやがって #)タッタッタッ… 

 

楽(…そういえば鶫は、小野寺たちと一緒にいなかったな) 

 

楽(集から聞いた話によると、休憩中は先生が付き添ってるらしいけど) 

 

楽「―――――!あれって…」 

 

 

鶫さん、大丈夫?> 

 

はい、ご心配なく…> 

 

そう、良かった。でももし何かあったら、すぐに先生に知らせてね> 

 

っ…分かりました。少し、お水をいただきます> 

 

 

楽(鶫の奴…やっぱり無理してるんじゃ…) 

 

 

んっ… > 

 

…ぷはっ> 

 

 

楽(っ!)ドキッ 

 

楽(…って、何が『ドキッ』だ俺!?なんで今一瞬でもあいつの―――) 

 

楽(―――あいつの水飲んでる姿に、反応するなんて…) 

 

 

おい楽!前、前!> 

 

楽「え、前って―――――」 

 

 

ゴッ 

 

 

―――保健室――― 

 

 

楽「――――ん…」 

 

楽「んん!?」ガバッ 

 

先生D「あら一条君、気がついた?」 

 

楽(なんで俺保健室にいるんだ!?さっきまで体育の授業で走ってて…) 

 

楽(…ああそっか、あの後不注意で壁に激突したのか) 

 

楽(まさか、気絶するほど強く当たるとは思わなかったが;) 

 

先生D「暑くてボーッとしてたのかな?お昼は暑さで体調崩す子も多かったし」 

 

楽「あ、いえ、今回は単に俺の不注意で、そういうわけでは…」 

 

先生D「それならいいけど…。くれぐれも熱中症には気を付けてね?」 

 

先生D「まだ夏に入ってないけど、熱中症が原因で突然倒れちゃう子までいるんだから…」 

 

楽「はい、気をつけます。でももう大丈夫なので、この辺でs」 

 

先生D「ああ、起きたところ申し訳ないんだけど、今6時間目の途中なのよ…」 

 

楽「えっ」 

 

先生D「一応担当の先生に休むと言っておいたけど、やっぱり授業に出る?」 

 

先生D「でもあの先生、男子にちょっときつく当たる人だからねえ…」 

 

先生D「前に、授業遅れてきた男子生徒に対して、授業でやってもいない問題を振ったらしいよ」 

 

楽「…あっ」 

 

先生D「授業終わったら今度は遅刻の理由を聞いたり、本当はサボってたんじゃないかって何かと疑うらしくて…」 

 

先生D「まあそれでも授業に出たいというなら、ちゃんと休んでた証明として私がメモを渡すけど」 

 

楽「大人しくここで休んでます…」 

 

先生D「そう?それならいいわ」 

 

楽(多分、あの先生(副担任)のことだろうな…) 

 

楽(…今日の授業、遅刻2回に欠席1回) 

 

楽(普段の俺じゃありえねー悪態だな…;) 

 

 

キーン コーン カーン コーン 

 

 

楽「……」 

 

 

先生D『それじゃあ悪いけど、私用事があって席を外さないといけないの』 

 

先生D『もし授業が終わっても具合が悪かったら、まだ保健室にいてもいいからね』 

 

 

楽「―――まあ、特に居る理由もないし、さっさと教室に戻るか…」 

 

 

コンコン 

 

 

楽(! 誰だ?保健室に何の用だ?) 

 

楽(そうか小野寺か!倒れた俺のことを心配してお見舞いに!!) 

 

楽(…いや、普通に考えたら、恋人という事になってる千棘が真っ先に来るだろうな) 

 

楽(あいつはあいつで、以前俺が風邪ひいた時に気を遣ってくれたからな…。…妙に優しくて怖かったが) 

 

 

誰かいませんか?……失礼します> 

 

 

楽「この声…!」 

 

 

ガラッ 

 

 

鶫「!い、一条楽!?」 

 

楽「やっぱり鶫か。…つーかなんでそんなに驚くんだよ?」 

 

鶫「返事がないから誰も居ないと思っただろ!?いるなら返事をしろ!」 

 

楽「そんなに怒鳴らなくてもいいだろ;それで、何しに来たんだ?」 

 

鶫「…替えの包帯を取りに。それと先生方に、傷の状態も診てもらえと言われてな」 

 

楽「そっか。…でも保健室の先生は用事があっていねえぞ」 

 

鶫「返事がなかった時点で察していた」 

 

鶫「…そんな簡単な事も出来ず、壁にぶつかる程度で倒れる情けない輩がいるとは思わなかったが」 

 

楽「ぐっ……壁を壊して頭を怪我した挙句、先生に呼ばれて注意受けたヒットマンが人のこと言えるか!」 

 

鶫「なっ、貴様何故それを!?」 

 

楽「お前が呼び出しくらうなんて、それぐらいしか理由が――」 

 

 

楽「―――え!?マジで!?」 

 

鶫「!貴様、私を騙したな!!」 

 

楽「お前が勝手に騙されただけだろ!」 

 

楽「呼び出された理由って、本当にそれだったのか…」 

 

鶫「私自身も情けない話だと思っている」 

 

鶫「今度、また同じようなことがあれば―――」 

 

楽「あれば…?」 

 

鶫「……修理代を自分で出して、修理も手伝うようにと注意された」 

 

楽「じ、自腹って…どんだけ備品壊せばそんな注意受けるんだよ」 

 

鶫「私も、そんなことを言われたのは初めてだ」 

 

楽「むしろ一生言われることも無い気がするんだが…;」 

 

鶫「……」 

 

鶫(言えるわけない…本当のことを言えば、貴様は…) 

 

楽「? どうした?」 

 

鶫「…っ。いや、別に」ゴソゴソ 

 

鶫「そういえば、貴様はこの後どうするつもりだ?」 

 

楽「この後?」 

 

鶫「もうすぐHRが終わる。お嬢と一緒に帰るつもりか?」 

 

楽「当たり前だろ。それに、本当はお前じゃなくてハニーが来るんじゃねえかと思ってたけど」 

 

鶫「…貴様という男はその程度の存在だということだな」 

 

楽「ひでえ事言ってくれるな…自分で否定しきれないのがまた情けない…」 

 

鶫「……すまない」 

 

楽「は?」 

 

鶫「さすがに、今のは言い過ぎたな…。それに、お嬢は貴様が倒れた時とても慌てていた」 

 

楽「!千棘が…」 

 

鶫「小野寺様曰く、私が今朝倒れた時と同じように…居ても立ってもいられないご様子だった」 

 

楽「…そっか。あいつ、そんなに心配してたのか」 

 

鶫「…わ、私も…」 

 

楽「…?」 

 

鶫「~!なんでも、ない… ///」 

 

鶫「―――しかし、残念だな」 

 

楽「なにが残念なんだよ」 

 

鶫「お嬢は急用ができて、HR後にすぐ帰らなければならなくなった」 

 

鶫「本当は私も同行する予定だったが、無理をするなと引き止められてしまって…」 

 

楽(あいつもギャングの令嬢として大変だな…) 

 

楽「あれ?ってことは俺1人で帰ることになるのか?」 

 

鶫「そういうことだ。せっかくの恋人同士の時間が潰れてしまったようだな」 

 

楽「そ、そうだなー残念だなーアハハハ」 

 

楽(真実を知らないこいつの前じゃ、迂闊に素の反応は出せないな;) 

 

鶫「―――さて、用も済んだし私は先に失礼するとしよう。HRも終わっている頃だ」 

 

楽「傷は診てもらわなくていいのか?」 

 

鶫「もし居たらの話だからな。私もそこまでする必要性を感じなかったし」 

 

楽「ふーん……つーか、本当に包帯取りに来ただけかよ。せめて俺の心配ぐらい…」 

 

鶫「っ ……」スタスタ 

 

楽「無視はさすがにきついぞ!?」 

 

鶫「……」ピタッ 

 

楽(俺…無視されるようなこと言ってたのか…?) 

 

鶫「……」ツカツカ… 

 

楽「……?」 

 

鶫「…………」ジー 

 

楽「な、なんだよ…」 

 

楽(無視かと思ったら急に見つめてきて…今日の鶫、やっぱり変だぞ…) 

 

鶫「…………」ジー 

 

楽「………」 

 

楽(ち、近い… ///) 

 

鶫「……」クスッ 

 

楽「!」 

 

楽「どうしたんだよ?無視の次は見つめてきて、今度はいきなり笑って…」 

 

鶫「いや、なんでもない。…怪我、大事にならなくて良かったな」 

 

楽「? ああ…」 

 

鶫「…貴様はまだここに居るのか?」 

 

楽「…まあ、な。もう少しだけ横になってるよ…」 

 

鶫「そうか…。それじゃあ、また明日…」 

 

楽「…おう、じゃあな」 

 

 

ガラララ… パタン 

 

 

楽(なんか、変な空気のまま鶫と別れちまったな;) 

 

楽(……ホント、今日あいつに何があったんだ?) 

 

鶫「はぁ…」ズーン… 

 

鶫「あの場で考え直したとはいえ、なぜ最初にあんな行動をとってしまったんだ;」 

 

鶫「幾らなんでも一条楽を無視するなんて…」 

 

鶫「…私だって心配したのに、あいつが無頓着すぎるから………じゃなくて!!」 

 

鶫「接する機会が増えても、私がこんな態度じゃ関係が良くなるわけないじゃないか!」 

 

鶫(…しかし、今考えてみると…) 

 

鶫(あの後に一条楽と、み…見つめ合うだなんて ///) 

 

鶫(それに、あいつの顔が赤くなってるのを見て、嬉しく…) 

 

鶫(い、いや!あれはあくまで一条楽の体調を確認しただけだ!) 

 

鶫(お嬢の恋人に万一のことがあってはならないと考えて…)ホワンホワン 

 

 

楽『鶫、今日も可愛いな』 

 

鶫『か、可愛くないと何度も言っているだろう! ///』 

 

楽『そんなこと…――っ!』 

 

鶫『ど、どうした!?』 

 

楽『悪い、今日は朝から調子が良くないんだ…。鶫、ちょっと…看てもらえないか?』 

 

鶫『むぅ…貴様がそう言うのなら、仕方、ない…』 

 

 

鶫(ぬおおおおおおおおおおまたかあああああああああああああああ ///) 

 

 

鶫「と、とにかく、今日はあと1回だけ奴との接触を図ろう!」 

 

鶫(これで終わり!これで終わりにするんだ!) 

 

鶫(これで、終わりに…) 

 

鶫(……っ) 

 

 

夕方・一条家屋敷 

 

 

楽「ただいまー」 

 

ヤクザ達「「「おかえんなさい坊ちゃん!!!」」」ザザ゙ッ 

 

楽「…ただいま」 

 

楽(相変わらず大げさな迎え方だな…)キライジャナイケド 

 

竜「坊ちゃん、アレはどうでしたか?」 

 

楽「え?アレって?」 

 

竜「弁当っすよ弁当!特に鶏の唐揚げのこと!」 

 

竜「一際美味いもん作りたいと聞いて、あっしが昨晩取ってきた鶏肉!」 

 

竜「それを使って坊ちゃんが作った唐揚げ、嬢ちゃんやお友達は気に入ってやしたか!?」 

 

楽「おう、激ウマだってよ。…俺も食ったけどマジで美味かった。ありがとな、竜」 

 

竜「………」 

 

楽「?竜…?」 

 

竜「―――良かった…。そいつは…よがっだぁ…」ウルウル 

 

楽「泣いてる!?」 

 

竜「う゛ぅ…坊ちゃんも、嬢ちゃんも、お2人のお友達も…喜んでぐれでぇ゛…」 

 

ヤクザ1「よかったっすね、兄貴…。俺たちも、嬉しいっす…」グス… 

 

ヤクザ2「苦労した甲斐ありやしたね…自分、それ以上の笑顔をもらいやした…っ」 

 

ヤクザ3「俺、鶏肉食うの我慢してよかった…!」ポロポロ 

 

楽「ま、待てって皆!そんな泣くほどのことでもねえだろ!?」 

 

竜「いいえ坊ちゃん!あっしらは組長や坊ちゃんが幸せになってくれる事が、1番の喜びなんでさぁ!」 

 

ヤクザ2「そして坊ちゃんの彼女やお友達が喜ぶのは坊ちゃんの幸せ!」 

 

ヤクザ1「つまり俺たちにとっても1番の喜びに変わりねえっす!」 

 

竜「よっしゃ野郎共!今日は祝いじゃあ!!いつもの感謝も込めて坊ちゃんに御馳走振る舞うぞぉ!!」 

 

 

「「「 うおおおおおおおおおおおおおお!!! 」」」 

 

 

 

 

楽「……主役が、この空気に、置いてけぼりなんだけど…」 

 

 

外 

 

 

<ヤロウドモー!ヒロマノソウジダー! 

 

<サカナガタリネーゾ!トッテコーイ! 

 

<バカ!ボッチャンサケノメネーダロウガ! 

 

 

鶫(……) 

 

鶫(―――よし、一旦状況を整理しよう) 

 

鶫(私は放課後すぐに帰宅し、一条楽の家に訪れることに決めた) 

 

鶫(お嬢の計らいで、今日の護衛任務はクロード様が一任されるそうだ) 

 

鶫(そして、お嬢がビーハイブと友好関係にある組織のパーティーへご出席のため、組織の殆どの人間は不在) 

 

鶫(組織間のいざこざは起こらないだろうと考え、一条楽の家へ来たものの―――) 

 

 

おい!何つまみ食いしとんじゃ!> 

 

ス、スンマセン!> 

 

ぼ、坊ちゃん、ここはあっしらに任せて…> 

 

いいって別に…> 

 

<おう、こりゃあ何の騒ぎだ? 

 

<組長!! 

 

<坊ちゃんのお祝いっす! 

 

<ほう…おめー何かめでてぇ事でもあったのか? 

 

<そんな大した事じゃ… 

 

 

鶫(……) 

 

鶫(…この場に私がいるべきではないな) 

 

鶫(ここは引き返すとしよう。今日一日のわがままもこれで終わりだ―――)ザッ… 

 

 

ピタッ 

 

 

鶫(――本当に、終わりでいいのか…?) 

 

鶫(…何を考えている、鶫誠士郎。ここまで好き勝手に行動しておいて、まだ未練があるのか) 

 

鶫(そもそもお嬢を差し置いてあの男に近づくなど、部下としてあるまじき行為をしているんだぞ) 

 

鶫(……それなのに、それなのになぜ…!) 

 

 

ガララッ 

 

 

楽の父「ん?誰だ?うちの前で何してんだ?」 

 

鶫「!」 

 

鶫(確か、集英組の組長…一条楽の父親…!) 

 

楽の父「…その制服…、おめーさん、楽のダチか」 

 

鶫「い、いえ!私は…」 

 

楽の父「うちの連中から、恋人の嬢ちゃんと一緒に何人も来ては、うちで色々楽しんでいってるとは聞いてたが…」 

 

鶫「し、しかし、今日ここに来る用事があったわけではなく…」 

 

楽の父「…おめーは確か、向こうの…ビーハイブの嬢ちゃんの連れだったな」 

 

鶫「! 私の事、ご存知でしたか…」 

 

楽の父「楽から軽く…な。他のモンは知らねえが、初めはあいつの命もぶんどる気だったらしいじゃねえか」 

 

鶫「……今ここで、貴方の命を奪うことも出来るんですよ」ザッ 

 

楽の父「そう身構えんな。ここで俺を殺したら、あいつらがでけえ騒ぎ起こして街が吹き飛んじまう」 

 

楽の父「おめーも、おめーの方の嬢ちゃんも…それは望んでねえだろ?」 

 

鶫「……」 

 

楽の父「…本来は敵同士だから、こういう頼み事はしねえ方がいいかもしれねーが…」 

 

鶫「…?」 

 

 

楽の部屋 

 

 

楽「―――――はぁ、なんかスゲー疲れた;」 

 

楽「まさか、竜たちに泣くほど喜ばれるとは思わなかったぜ…」 

 

楽(俺が欲しいって言った食材……相当苦労して手に入れたらしいからな) 

 

楽(けど嬉しさのあまり宴会するなんて…いくらなんでも大げさだろ;) 

 

楽(………) 

 

――――――――――― 

 

楽『千棘や小野寺、橘や集にも分けちまって、あんまり残らなかったけど;』 

 

楽『理由はよく分かんねえけど、俺の弁当のこと気にしてたみてーだし』 

 

楽『メシ食う前に呼び出されたから腹減ってるだろうと思って、鶫の分もとっておこうかと…』 

 

 

鶫『うっ…うぅ…』ポロポロ 

 

楽『ど、どうした!?泣くほど不味かったか!?』 

 

鶫『グスッ……ち、違う…』ポロポロ 

 

鶫『…凄く…ヒック……美味しいんだ……』 

 

――――――――――― 

 

楽(―――本当は、俺だけ食ってねえんだ) 

 

楽(…なんて言えねーよな、これだと) 

 

楽の父「おい楽、いるか?」 

 

楽「? なんだよ親父」 

 

楽の父「今、おめーの知り合いが家に来てんだよ」 

 

楽「知り合い?」 

 

楽の父「知り合いっつーか、おめーの同級生だな」 

 

楽「誰だろ…?俺、ちょっと見てくるわ」 

 

楽の父「ああ悪いが、もうそこまで連れて来ちまってるよ」 

 

楽「はあ!?なんで勝手に!?」 

 

楽の父「今、宴会の準備してるあいつらとうっかり会っちまったら、また盛り上がって面倒になっちまうからな……」 

 

楽の父「鉢合わせる前にうちに上げて、用が済んだらバレねえように帰してやるのが得策だと思ったんだよ」 

 

楽「……まあ…正直俺も、今のあいつらが俺の友達と会ったら困るからな」 

 

楽(弁当の唐揚げでこんな祝い事をする家だとは思われたくねーし;) 

 

楽(つーか最近は突然やるから、宴会する理由すら知らねえ奴だっているからな…) 

 

楽「……分かったよ。部屋に上げてくれ」 

 

楽の父「はっはっは、そういう頼みごとを断れねえ所は、俺に似てるんだな」 

 

楽「うるせえ ///」 

 

楽の父「さて―――――ほら、入ってきていいぞ」 

 

楽(つーか、本当に誰だ?俺の家に来る事情でもあったか?) 

 

 

 「し、失礼します…」 

 

 

楽「………」 

 

鶫「………」 

 

楽「……なあ」 

 

鶫「………何だ」 

 

楽「お前……本当に鶫か?」 

 

鶫「っ!」カチン 

 

 

バギッ 

 

 

楽「……そこまで思いっきり殴んなよ…」ヒリヒリ 

 

鶫「貴様の質問が失礼極まりなかったからだ」 

 

楽「そりゃいきなり変な質問して悪かったけど…今日のお前、やっぱ変だぞ」 

 

鶫「…何がだ?」 

 

楽「急に俺と2人になりたいとか、俺の弁当食ってる途中で泣いて、食い終わったら素直に礼言って…」 

 

楽「今日だけ態度が大分違う気がするんだよ…」 

 

鶫「そんな気がするだけだろう。貴様が気にしなければいい話だ」 

 

楽「いつもとやることが違うから、なんか、その…」 

 

鶫「………」 

 

鶫「そんなに…」 

 

楽「……?」 

 

鶫「―――――そんなに……いつもの私じゃないのが…嫌、なのか――?」 

 

楽「……それは…」 

 

鶫「……」 

 

楽「――――嫌って、わけじゃねえよ……ちょっと、戸惑うけど……」 

 

鶫「………」 

 

鶫「……」フッ 

 

楽「え?」 

 

鶫「そうか、少し安心した」 

 

楽「なんだよ急に…まさか」 

 

鶫「『いつもの私が嫌いではない』…」 

 

鶫「つまり、貴様自身がお嬢や私に殴られるような行為をする、駄目な人間だという自覚が少しはあったということだな」 

 

鶫「そして、まさか貴様が…いつも殴られても嫌ではない、というマゾ発言もするとは」 

 

鶫「私が思っていた以上に、貴様はどうしようもない存在だったようだ」 

 

 

楽「………あんなこと言って損したよチクショウ」orz 

 

鶫「淡い期待をした貴様が悪い」 

 

楽(………やっぱり…鶫は…) 

 

 

<坊ちゃーん!ちょっとこっちへ来てもらえやすかー!? 

 

 

楽「!おう、今行くー」 

 

楽「―――用が済んだらさっさと帰れよ…」 

 

鶫「…ふん」 

 

楽「はあ……ホント、何しに来たんだよ…」 

 

タッタッタッタッ… 

 

鶫「………」 

 

 

鶫(またやってしまったああああああああああああああああああ) 

 

鶫(あれだけ保健室の件を反省したのに何をやっているんだ私は!!) 

 

鶫(今の雰囲気で憎まれ口を叩いても、あいつの気分を害するだけだろう!) 

 

鶫(そもそも奴は私に対する心情を吐露したのに、私は素直に答えてないじゃないか!!) 

 

鶫(今まで一条楽を邪険に扱っていた自分がこれほどまで憎いとは…!) 

 

鶫(………)ハア… 

 

 

―数分後― 

 

 

ガラッ 

 

 

楽「――ったく、別にいつもの格好で良いっつってんのに…」 

 

楽「って、お前まだいたのかよ」 

 

鶫「……ああ」 

 

楽「………さっきは、あんな事言ってたけどよ…」 

 

鶫「っ!」 

 

楽「俺の事、そんなに嫌だったのか…?」 

 

鶫「………えっ?」 

 

楽「はっきり言うと、お前の…鶫の考えてることなんて、俺には全然分かんねえ」 

 

楽「今何を考えてるのか、あの時はどう思ってたのか…見当すらつかねえ時がある」 

 

楽「今日の態度も…頭を怪我したせいだと思ったり、あのメガネ…クロードがそういう任務でも与えたのかと思った」 

 

鶫「……」 

 

楽「いつも何考えてるか分かんねえけど、少なくとも俺は嫌われてはねえんだって、思ってた…思いたかった…」 

 

楽「でも、さっきの言葉を聞いたき………俺、本気でショックだった」 

 

鶫「!」 

 

楽「お前が嘘ついて、俺と保健室にいる時に約束したよな」 

 

楽「俺と2人で話したくなったら、絶対嘘つくなって」 

 

鶫「……ああ」 

 

楽「だからあれも、本心…なんだよな」 

 

鶫「…っ」 

 

楽「集とかは俺を…人の考えてることとか、そういうのに鈍い奴だって言ってる。俺も今、自分をそうだと思った」 

 

楽「いつかは分からねーけど…いや、最初に会ってからずっとだよな…」 

 

楽「鶫は、俺のこと―――」 

 

 

バッ 

 

 

鶫「~~~!」 

 

楽「―――鶫…」 

 

楽「なんで…土下座してんだ?」 

 

鶫「~~~~~!!」 

 

鶫「すみません…!すみません…!」 

 

楽「え!?なんで急に謝る!?」 

 

鶫「私の質問に真面目に答えてくれたのに、酷い事言ってすみません…」 

 

鶫「いつも、嫌っていると思い込むような態度をとって…すみませんでした…」 

 

楽「お、おい、鶫…」 

 

鶫「そして、今日は…色々と迷惑をかけて………」 

 

 

 「ごめんなさい!!!」 

 

 

楽「……」ポカーン 

 

鶫「~~~!」 

 

楽「そ、その…なんて言えばいいか分かんねーけど…まず、顔上げてくれよ;」 

 

鶫「………ああ」 

 

鶫「……っ」ウルウル 

 

楽「!」ドキッ 

 

鶫「…どうした…?また私がなにかひどい事を…」 

 

楽「ち、違う違う違う!まず、落ち着いて話そう、な!」アタフタ 

 

 

<坊ちゃん、どうしやした!? あっしら今すぐ部屋に駆けつけて… 

 

 

楽「何でもない!何でもないから部屋に来るなー!!」 

 

 

楽「―――――なるほど、そういうことか」 

 

鶫「………余計な誤解を生んで、すまなかった」 

 

 

鶫(あの後、私は一条楽と、今日の私の態度について話した) 

 

鶫(私の態度がどこか変わっていたことに対し、奴は最初に、今朝の頭の怪我が原因だと考えていたそうだ) 

 

鶫(当然そんな事はない。午前中、保健室の先生に聞いたところ、外傷以外特に異常はないと診断されたのだから) 

 

鶫(奴もその可能性が低いと考えていた為、これを聞くとすぐに納得した) 

 

鶫(……まだバナナで転んだ事を信じているようだが) 

 

 

鶫(次に、クロード様からの任務で接近していたという推測。私の立場からすればそう思われても不思議ではないだろう) 

 

鶫(そんな任務は引き受けていない、むしろお嬢のおかげで今日の任務を休ませてもらったんだと説明した) 

 

鶫(一条楽は最初こそ疑っていたが、お嬢に電話をかけて証明すると、この話を信じたようだ) 

 

鶫(……ちなみに電話に出たお嬢は、とても嬉しそうにしていた。本人曰く、あまりパーティーには乗り気でなかったようだ;) 

 

鶫(最後に、私自身が今日1日の態度を変えていた理由を尋ねられ……私はこう答えた) 

 

 

鶫『…一条楽への接し方について、私自身疑問を抱いた』 

 

鶫『一応はお嬢の恋人であるはずなのに…私は、貴様に対し過激な行動をとっている…』 

 

鶫『それを改めなければならないという考えに至ったので、今日は出来る限り態度を変えようと試みたんだ』 

 

 

鶫(私自身もこの答えは無理があると思った…しかし、奴はこれを信じたようだ) 

 

鶫(……奴との約束を破ってしまって悪いが、『もう少し接する機会を増やしたかった』という本当の理由を言わなかった) 

 

鶫(何故そうしたかったかを聞かれると分かっていたからだ) 

 

鶫(……無論、それを答えるのも恥ずかしい ///) 

 

 

楽「――ぶっちゃけると、今日の鶫はちょっと怖かったな」 

 

鶫「…何故だ?」 

 

楽「そりゃ…お前らしくない行動とったと思ったら、急にいつもと同じような反応しだすからさ」 

 

鶫「……私が何か企んでいると?」 

 

楽「まあ、そんなとこだな。あと…」 

 

楽「――――鶫が、何か悩んでんじゃねえかなと思ってた」 

 

鶫「!……私、が?」 

 

楽「…今朝の保健室で、嘘ついて俺だけ呼んだだろ?その理由がまだよく分かんねーから…」 

 

楽「他の誰にも言えないくらい、深刻な悩み事があるんじゃねえかと思ったんだ」 

 

楽「お前だったら普通、ハニーや小野寺とかに相談するはずだからな」 

 

楽「あいつらに心配かけたくねえと思ったから、きっと俺を相談相手にしたんだって…」 

 

 

鶫「……プッ」 

 

楽「な、何だよ?」 

 

鶫「いや、貴様はどうしようもないくらいお人好しだと、改めてよく分かった」 

 

楽「んだよ、わりーかよ…」 

 

鶫「…いや、感謝する」 

 

楽「……へ?」 

 

鶫「そこまで、私に心配をかけてくれたという事が……素直に…嬉しいんだ」 

 

楽「……そう言われると、こっちが調子狂うんだっての」 

 

鶫「そうか……では貴様を殴るか貶した方が良いのか?」 

 

楽「結構です;」 

 

楽「まあ、これでこの話は終わりにして、……いつまで俺の家に用があるんだ?」 

 

鶫「いつまで…?」 

 

楽「親父も言ってたけど、これからうちの奴らが宴会しようって張り切ってるからさ…」 

 

楽「厄介になる前に、すぐに用済ませて帰った方が良いだろ?」 

 

鶫「……」 

 

楽「おい、鶫…」 

 

鶫「……貴様、何か勘違いしているな」 

 

楽「何が?」 

 

鶫「私の用件は、その宴会に出席するという事だぞ?」 

 

楽「……」 

 

鶫「……」 

 

楽「………マジ?」 

 

鶫「…ああ」 

 

楽「………大マジ?」 

 

鶫「ああ」 

 

楽「………本当に、大マジ?」 

 

鶫「しつこいぞ!本当だと言っている!」 

 

楽「…………」スクッ 

 

 

ダッ ガラララッ ビュンッ 

 

 

鶫「……あいつ、急にどうしたんだ?」 

 

楽「親父ィーーーーーーーーーー!!!」ダダダダダダダダ 

 

楽の父「おう楽か、一体どうしt」 

 

楽「なに平気であんな嘘ついたんだよ!?」バン! 

 

楽の父「嘘?俺がおめーにどんな嘘をついたと」 

 

楽「あいつに用作らせたのって親父だろ!!」 

 

楽の父「……おお、そうだったな。こりゃうっかり」 

 

楽「うっかりで済む話じゃねえだろ!?今竜たちと会ったらあいつが…」 

 

楽の父「そこは大丈夫だ。話はもうつけてきてっからな」 

 

楽「は…?」 

 

鶫『宴会に、出席…ですか?』 

 

楽の父『おう、おめーも聞こえてるとは思うが、今うちの連中が宴会の準備中でな』 

 

楽の父『あいつは…楽はこういうのにあんま乗り気じゃねえんだよ』 

 

楽の父『だからあいつの相手をする、同じ年ぐれえの奴が欲しいなって時に…丁度おめーさんが来たわけだ』 

 

鶫『私が、あの男の…一条楽の相手をしてくれと…?』 

 

楽の父『そういうことだ。』 

 

鶫『……私だけ屋敷の中におびき寄せて、不意を突こうと企んでいるのでは…?』キッ 

 

楽の父『…ま、おめーさんならそう考えるだろうな。だが、あいつらはおめーを楽のダチだと思ってるはずだ』 

 

鶫『………』 

 

楽の父『今は宴会の事しか考えてねえし、あいつらをまとめてる俺も、ついさっき宴会をやると聞いたんだ。俺が企む暇もねえさ』 

 

楽の父『もちろん、寝首を掻こうとする人間も、これっぽっちもいやしねえ』 

 

鶫『しかし…』 

 

楽の父『そういや…あいつらがいつか話してたな』 

 

楽の父『あの嬢ちゃんの他にも……愛人がいるとかなんとか』 

 

鶫『』ゴブフッ 

 

鶫(あ、ああああ愛人!?一条楽の………愛人!!??) 

 

鶫(誰だそんな噂を流した不届き者は!?) 

 

鶫(なぜ私が、あんな男の愛人などに……)ホワンホワン 

 

 

楽『やべ……俺、大分酔ってるな…』 

 

鶫『全く…あれほど考えて飲めと言ったのに…少し横になっていろ』 

 

楽『鶫の言うとおりだな…。わりーけど、一緒に寝てくれないか?』 

 

鶫『なっ!?き、貴様にはお嬢がいるだろう!!なぜ私が…』 

 

楽『鶫と一緒に飲んでるうちに、こうなっちまったんだ…。お前が責任とって、夜まで付き合ってくれよ…』 

 

鶫『し、しかし…うぅ…』 

 

 

鶫(ほわあーーーーーーーーーーっ!!! ///)ガリガリガリガリ 

 

楽の父『―――まあその話は置いといて、だ。ちょいと時間がありゃあ楽と……聞いてるか?』 

 

鶫『は、はいぃ!!』ビクッ 

 

楽の父『こっちの勝手でわりーが、あいつと軽く話してるだけで良いんだ』 

 

鶫『……』 

 

楽の父『この話、受けてくれねえか?』 

 

鶫『…………』 

 

鶫『……………………分かり…ました』 

 

 

楽の父「―――ってわけで、向こうも引き受けてくれたんだ」 

 

楽「言いてえ事は色々あるけど……別に俺は宴会が嫌なわけじゃねーよ!」 

 

楽の父「うちは男所帯で、おめーと同世代の奴がいねえだろ。おめーが退屈しねえようにと思って、あの小娘に声かけてみたんだよ」 

 

楽の父「それに、嫌じゃねえとは言うけどよ…おめー実は宴会に飽きてきたんじゃねーのか?」 

 

楽「」ギクッ 

 

楽の父「最近はおめーに彼女が出来たってことで、何かあったらとにかく祝いたがるからな」 

 

楽(今日に至っては弁当を喜んでくれたっていう理由だしな…;) 

 

楽の父「またいつもみてえに始まりの挨拶でもして、飲み食いして、歌った後はず~っとだるそうに座ってんだろ?」 

 

楽「うぐっ」 

 

楽の父「暇をつぶすくれえの相手ならいた方が、いいとは思うけどな…」 

 

楽「……分かったよ…不本意だけど…その話に乗ってやるよ…;」 

 

楽の父「おう!それでこそ俺の息子だ!」 

 

楽「俺は組を継ぐなんてまっぴらごめんだけどな…」 

 

楽の父「まだ宴会まで時間があるだろうから、あいつは家でゆっくりさせてやれ」 

 

楽「はいよ」 

 

楽の父「――――おっと、あと1つ言い忘れてた」 

 

楽「まだあんのかよ…?部屋戻りたいから早く言ってくれ」 

 

 

楽の父「まさか…おめーにあんな愛人まで出来てるとはな」 

 

楽「」ブーーーーーーッ!!! 

 

楽の父「女をはべらせるのは別に構わねえが、絶対泣かすんじゃねーぞ」ニヤニヤ 

 

楽「もういいから黙っててくれ!! ///」 

 

 

<ハッハッハッハッ… 

 

 

楽「あの親父、最後になんつー置き土産を…」 

 

楽「なんで鶫が俺の………あ、愛人なんて ///」 

 

楽(………愛人…か…) 

 

楽(いやいやいやいや!だから!俺には小野寺という心に決めた人がいるんだっての!しっかりしろ俺ー!) 

 

 

楽の部屋 

 

 

鶫「―――それで、宴会が始まるまでこの家でくつろげと…?」 

 

楽「ああ。結構時間あるから、遠慮しねえでくれって言ってた」 

 

楽「使いてえなら家の設備も使っていいってよ。…大したもんねーけど」 

 

鶫(……そうは言っても、何をして時間をつぶすか―――――) 

 

 

 

鶫(―――今日は走ったからか、大分汗をかいてしまったな) 

 

鶫(設備を利用してもいいと言っているんだ。それなら…)スクッ 

 

楽「どうした?」 

 

鶫「……改めて貴様の父親に挨拶に…。さっきは社交辞令すら言えなかったからな」 

 

楽「元々は敵対組織だってのに、律儀な奴……」 

 

鶫「今は貴様とお嬢が付き合っているんだ。おかしくはないはずだろう」 

 

楽「…余計な詮索すんなよ」 

 

鶫「無論、そんなことをするつもりはない。あとは、設備を利用できる時間の確認でも」 

 

楽「だから自由に使っていいって…」 

 

鶫「事情によっては夜遅くなるかもしれないからな。招待された側と言えども、迷惑のかからないようにしなければ」 

 

楽「本当にしっかりしてるな…」 

 

鶫「貴様が客人としての礼儀を知らないだけだろう。行ってくる」ガラッ 

 

スタスタ… 

 

楽「……去り際にきついこと言うなぁ;」 

 

 

廊下 

 

 

鶫(―――やはり集英組の組長だ…。今後の組織の関係についてとても良い考えをお持ちになっている) 

 

鶫(……あの男も少しは見習ったらどうなんだ) 

 

 

鶫「―――失礼」 

 

ヤクザ1「おう、例のお友達かい。どうした?」 

 

鶫「今日、こちらでお風呂を利用したいのですが…」 

 

ヤクザ1「風呂?丁度良かった!今沸いたところなんだよ、すぐに入ってくれ!」 

 

鶫「い、いえ、別に今すぐに入るとは…」 

 

ヤクザ1「そ、そうかい…」シュン… 

 

ヤクザ1「坊ちゃんのお友達が来たと聞いて、すぐに沸かしたんだが…残念じゃ」(´・ω・`) 

 

鶫「(うっ;)………そ、そうですね!今すぐ入らせていただきます!」 

 

ヤクザ1「おおそうか!遠慮せずにゆっくり浸かってくれよ!!」パアアア 

 

鶫(しまった!余計断りづらくなってしまった;) 

 

鶫(てゆうかヤクザってこんなに表情豊かなのか……?) 

 

 

脱衣所 

 

 

ヤクザ1「―――タオルも遠慮せず使ってくれよ。じゃ、俺はこれで」 

 

スーッ カタン 

 

鶫(結局このまま入る事になってしまった…ご丁寧に浴室の電気まで点いている;) 

 

鶫(……まあ遅かれ早かれ入浴するんだから、特に問題はないか)パチ 

 

…… 

 

鶫(………?)パチ パチ 

 

鶫(脱衣所の電気が点かない…?) 

 

 

<あっ、嬢ちゃーん、言い忘れとったけど、脱衣所の明かりの調子がちょっと悪いんじゃ 

 

<入れっぱなしにしとけば、勝手に点くはずだからそのままにしといてくれ 

 

<せっかく来てくれたのに…変な手間かけて悪いねぇ 

 

 

鶫「いえ、大丈夫です」 

 

鶫(…このまま点くまで待つわけにもいかないな。風呂に入ってしまおう) 

 

ヌギヌギ 

 

鶫(どこかに、服を入れておく籠などがあるはず…)ゴソゴソ 

 

鶫(!……これか) 

 

パサッ 

 

鶫「しかし、ここの組織はいい加減すぎやしないか。私達ビーハイブのように設備の点検を怠らずに…」ブツブツ 

 

 

ガラッ… 

 

 

浴場 

 

 

鶫(ふむ…思ったよりも広いな) 

 

鶫(ポーラに誘われて行ってみた銭湯とやらに比べれば狭いが…それでも十分な広さだ) 

 

キュッ   ジャー 

 

鶫(しかし、まさか一条楽の家で行う宴会へ、私が招待されるとは…) 

 

鶫(家の前まで来て正解…だったのか?) 

 

キュッ 

 

鶫(……)ゴシゴシ 

 

鶫(普段の私なら、1人でこの家に訪れる事なんてありえなかったのに…) 

 

鶫(不思議だが、少し……嬉しく思っている) 

 

鶫(……!)ピタッ 

 

鶫(……)ジー 

 

 

鶫(皆なぜ私の体を羨むのだろうか……。私には理解できない…) 

 

―――――――――― 

 

鶫『――――――貴様は……私のどこを見ていた?』 

 

 

鶫『答えろ、そして正直に言え』 

 

 

鶫『答えない場合『一条楽は体育着姿で走る女子に興奮する変態』という報告をクラス全員に』 

 

楽『走ってる時に胸見てましたごめんなさい本当に勘弁してください』 

 

―――――――――― 

 

鶫(―――だから胸なんて…要らないのに… ///) 

 

鶫「……」ゴシゴシ 

 

鶫「……」 

 

鶫「………」ウトウト 

 

 

 

鶫「っ!」ハッ 

 

鶫(いかんいかん!人様のお風呂場でうたた寝するなど…!) 

 

鶫「………」ゴシゴシ 

 

鶫(しかし、今日は一段と疲れた気がする…) 

 

鶫(普段慣れないことをしたせい、なのか……?) 

 

鶫(………) 

 

鶫「………」ウトウト… 

 

 

ドタドタ… 

 

<イツモオイテルハナハドコニヤッタ! 

 

<アレハキョウツカエネェトイッテタダロウ! 

 

<オイ!マタツマミグイカ! 

 

<オレ、ヒルクッテナクテ… 

 

 

楽「―――――暇だ」 

 

楽(宴会の準備で皆忙しいし、手伝おうとしたら今日はする必要ないとか言うし) 

 

楽(鶫は親父に挨拶に行ったまま、戻ってこねーし…マジで暇だ) 

 

楽(――あ、そうだ) 

 

楽「誰か居ないか―?」 

 

ガラッ 

 

ヤクザ2「お呼びっすか坊ちゃん?」 

 

楽「ああ、ちょっとな」 

 

楽「鶫の…今来てる俺の友達なんだけど、見かけたら客間へ案内してやってくれねえか?」 

 

楽「さすがに宴会の時間まで俺の部屋に居させる…ってわけにもいかねーし…」 

 

ヤクザ2「…………」ダラダラ 

 

楽「?」 

 

ヤクザ2「あ、あぁーそうっすよね;それじゃあ見つけ次第、案内しとくので…」 

 

ヤクザ2「そ、そうだ坊ちゃん!もう風呂が沸いてるはずなんで先に入っといたらどうですか!?」 

 

楽「風呂?なんだよ突然」 

 

ヤクザ2「今日はお友達も来てるんで、あんま格好悪い所は見せたくないでしょう?」 

 

ヤクザ2「早めに体洗って、しっかりめかし込んどいた方が良いっすよ?」 

 

楽「別に友達の前で着飾るなんて…」 

 

ヤクザ2「坊ちゃんくらいの年の子って、意外とそういうの気にしてるんすよ」 

 

楽「マジで!?」 

 

ヤクザ2「マジっす!」 

 

楽「よし、入ろう!」ガタッ 

 

ヤクザ2「はい!!」 

 

ヤクザ2(よ、良かった…) 

 

ヤクザ2(坊ちゃん、客間のこと正直に言えなくて…スンマセン;) 

 

 

脱衣所 

 

 

楽(べ、別に同学年の女の子が気にしてるからって、入るわけじゃねーんだからな!例えば小野寺とか!) 

 

楽(……まあどうせ暇だし、さっさと入ろうとは思ってたけどな) 

 

楽(冷静に考えて、うちの奴の前であんな必死な姿見られたと思うと… ///) 

 

 

楽「…あれ?スイッチ入ってんのに電気点いてねーじゃん」 

 

ヤクザ1「ああ坊ちゃん、そこの電気まだ調子わりぃみたいですよ」 

 

楽「そうなのか?つーか、こういうのはすぐ直しとけよ」 

 

ヤクザ1「すんません…今日直す途中で急に宴会をやると聞いて、誰も手つけらんなくなっちまって…」 

 

 

<おい何しとんじゃ!さぼっとらんでこっち手伝わんか! 

 

 

ヤクザ1「あ、兄貴!すぐ行きます! では坊ちゃん、俺はこれで失礼するんで…」 

 

楽「おう、無理すんなよ」 

 

楽「……ま、準備はもうあいつらに任せて、ゆっくり入るとするか」 

 

ヌギヌギ 

 

楽(うちの脱衣所、電気点いてねーと結構暗いな……) 

 

楽(でも、籠は確か………この辺にあったはず…)ポイッ 

 

パサッ 

 

楽「よし、入った」 

 

楽(さすがに何年も使ってると、こういう物の場所は完璧に覚えてるな)フフン 

 

ガラッ… 

 

 

浴場 

 

 

「………」 

 

楽(! 向こうに誰かいる…まさかサボりか?) 

 

楽「おい!皆準備してるのに何一人で風呂に――」 

 

「――!?」ガバッ 

 

楽「はいってん……だ…………よ………」 

 

鶫「…………………」 

 

楽・鶫「「○×▲□☆◎$&◆~~~~~~~~~~!!!」」 

 

鶫「い、いいいい一条楽!!なな、なんで貴様がここにいる!? ///」 

 

楽「ち、ちょっと待て……それはこっちの台詞だ! ///」 

 

鶫「私は風呂が沸いたから、客人である私も入ってくれと言われて入ってただけで…!」 

 

楽「俺だって風呂沸いてるって聞いて、やることもねーしとりあえず入ろうと…!」 

 

鶫「私が入っているとは聞かなかったのか!?」 

 

楽「そもそも誰か入ってるなんて一言も聞いてねーし知らなかったぞ!?」 

 

楽「つーかお前、親父に挨拶しに行くとか言ってたじゃねーか!?」 

 

鶫「その後この家の者に会って、風呂に入らないかと言われて…」 

 

鶫「断りづらくなったので入ると言ったら、流れでそのまま風呂に入って、それで……今ここで体を洗っていたんだ!」 

 

鶫「そもそも籠の中に私が脱いだ服があったはずだ!それで確認できるだろ!!」 

 

楽(しまった!暗いからって籠自体見てなかった;) 

 

楽「だ、脱衣所の電気が点かなかったから、暗くて籠が見えなかったんだよ!」 

 

鶫「風呂の明かりを頼りにすれば見つかるはずだ!!」 

 

楽「風呂側からじゃ光が届かねー所にあんだよ!籠の位置は俺がはっきり覚えてる!!」 

 

楽「そういうお前だって体洗ってたって言うけど、風呂の方から音なんて全然してなかったぞ!」 

 

鶫「ぐぬぅ……あ、あれは疲れていたから途中で寝てしまって――――」 

 

鶫「……」 

 

楽「……」 

 

鶫「………一条楽」 

 

楽「……なんだ、鶫」 

 

鶫「このまま言い争っていても埒があかない。そうだろう?」 

 

楽「ああ…ここは」 

 

楽・鶫((どちらか先に、この浴場から離脱するしか……!!)) 

 

ヤクザ2 <坊ちゃーん!籠ん中にあった服、洗濯するんで全部回収しときやしたー! 

 

ヤクザ2 <ああそれと、坊ちゃんには今日いいもん着て欲しいんで、着替え持ってくんの遅くなるかもしれねえっす! 

 

ヤクザ2 <なので坊ちゃんはゆっくり湯船に浸かってて下せぇー! 

 

 

楽・鶫「」 

 

 

~数分後~ 

 

 

鶫「……」 

 

楽「……」 

 

鶫「…ここまでの間」 

 

楽「!」 

 

鶫「私達は、何も見なかった」 

 

楽「……ああ。そして、何も言わなかった」 

 

鶫「……」コク 

 

楽・鶫「「…………着替えが来るまで、ゆっくり待とう」」 

 

 

パッ 

 

 

鶫「……脱衣所の電気が点いたようだ;」 

 

楽「今さらかよ!!」 

 

鶫(一応2人とも、タオルを用意していたから隠せてはいるが…) 

 

楽(風呂に男女2人って色々とまずい…) 

 

鶫「……… ///」 

 

楽「……… ///」 

 

ペタ…ペタ… 

 

ストン 

 

鶫「……おい、一条楽」 

 

楽「ん?」 

 

鶫「なぜ…そんなに距離を取る」 

 

楽「そ、そりゃお前の事だから、あんま近付くと怒るだろうなー…と;」 

 

鶫「………もう少し寄れ。そうしないと話しづらいだろう…」 

 

楽「え…?」 

 

鶫「ずっと黙っているのも気まずいから、話そうと言ってるんだ!だからもう少し近くに座れ! ///」 

 

楽「わ、分かった分かった!」 

 

ペタペタ… ストン 

 

楽「こ、これで良いか… ///」 

 

鶫「ああ……もし隣に座ったら貴様を殴っていただろうな」 

 

楽「一個空けて正解だった…」ゾクッ 

 

楽(林間学校や銭湯で女湯に入っちまったことはあったけど…) 

 

楽(こういう形で女の子と一緒に風呂に入るなんて… ///) 

 

 

鶫(…自分から言い出しておいて…今さら恥ずかしくなってきた… ///) 

 

鶫(いやいやいやいや、そう意識するな!いつも通り、いつも通りにしていれば…) 

 

 

楽(見ないように……見ないように… ///)バシャー 

 

鶫「…… ///」ゴシゴシ 

 

楽「…… ///」キュッ   ジャー 

 

鶫「…………」 

 

楽「…… ///」 

 

鶫「……一条楽」 

 

楽「っ!?」ビクッ 

 

鶫「そんなに驚くな;今日は、その…色々と、すまなかった…」 

 

楽「…は?」 

 

鶫「いや…学校で怪我の手当てをしてくれたり、私の分だけ弁当を残してくれたり…」 

 

鶫「そして今も、こうして貴様の家で世話になっている」 

 

鶫「貴様には…大分迷惑をかけてしまったな」キュッ   ジャー 

 

楽「そんな気にすんなよ。怪我人がいたら誰だって心配するだろ?」キュッ 

 

楽「学校でも言ったけど…弁当もそんなに大したもんは作ってねーし…」 

 

鶫「……」 

 

楽「家に上げたのも、親父が勝手に提案した事だ。急な提案だから、俺はスゲー文句つけたいけど…」 

 

楽「断っても良かったんだぜ?つーか、いつものお前なら断ると思ってたんだけど…」 

 

鶫「……断る理由がなかったからな」 

 

楽「ふーん」ゴシゴシ 

 

鶫「貴様の父親は、『息子が宴会に飽きるだろうから話し相手が欲しかった』と言っていたぞ」 

 

楽「…別に、俺はそういうの居なくても平気なんだけどなー」 

 

鶫「……そうか」 

 

 

鶫「気が変わった、やはりこの後すぐ帰るとしよう」 

 

楽「ごめん嘘。全然平気じゃない。退屈で死にかける。だから残ってくれ頼む」 

 

鶫「冗談だ。今更頼みごとを断るなんて出来ないしな」キュッ 

 

楽「よ、良かった…」ホッ 

 

鶫「最初から居てほしいと素直に言えばいいだろ」 

 

楽「俺だって面子ぐらい保ちたいんだよ;」 

 

鶫「…元々貴様に面子なんてあったのか?」 

 

楽「失礼だなてめぇ!!」 

 

鶫「ふん。私のように何事にも物怖じしない心構えがあれば、話は別だがな」 

 

楽「……風呂で鉢合わせした時はスゲー焦ってたくせに」 

 

バシャッ 

 

楽「冷たっ!?いきなり何すんだよ!」 

 

鶫「~~っ、うるさい! ///」 

 

鶫「! 一条楽、貴様のシャンプーを貸してもらえないか?」 

 

楽「えっ!?」 

 

鶫「? どうした、貴様も無いのか?」 

 

楽「い、いや、その… ///」 

 

鶫「……手を伸ばすだけで十分届くだろう ///」 

 

楽「そ、そうだよな…ほら」スッ 

 

鶫「…ん、すまない」 

 

楽「つーか、お前頭怪我してただろ。頭洗って大丈夫なのか?」 

 

鶫「傷口に直接当たらないようにしているから、多少は問題ない」 

 

楽「ならいいけど…」 

 

鶫「お嬢との仲はどうなんだ?」ワシャワシャ 

 

楽「ハニーと?もちろんラブラブだぜ」キュッ  ジャー 

 

鶫「…お嬢から『体育の時に変な目で見られた』と聞いたぞ」 

 

楽「」ギクッ 

 

鶫「恋人同士なのだから、お嬢を幻滅させるような行為はあまりしないでもらいたい」 

 

楽「り、了解……;」 

 

楽「そういや、お前と一緒に住んでる…ポーラは今、何してんだ?」 

 

鶫「? なぜ貴様があいつを心配する必要がある?」 

 

楽「いや、あいつの事だからメシ代わりにお菓子食ってるかと思うと…」キュッ 

 

鶫「……一概に否定できないのが情けない;」 

 

楽「一応、電話で遅くなるって伝えといた方がいいんじゃねえか?」 

 

鶫「それもそうだな。その際にまず手洗い、うがいをしたか確認をとり…」 

 

鶫「冷蔵庫にあるレタス・トマト・トウモロコシを使い、簡単なサラダを作らせるようにして」 

 

鶫「冷凍室で保存していたご飯があるはずだから、それをレンジで解凍させて食べる事を指示し」 

 

鶫「お風呂は40℃程度に沸かし、入浴後はコーヒー牛乳やイチゴミルクでなく、普通の牛乳を飲むよう言い聞かせ…」 

 

 

楽(………顔洗ってよっと)グシグシ 

 

 

鶫「雑誌を読まないで今日の授業で出された宿題や予習・復習を済ませるように…」 

 

鶫「緊急の任務が入らなければ、翌日学校に遅れないよう最低でも12時を回らないうちに寝ること」 

 

鶫「そしてこれが全部出来なかったら……明日からおやつ抜きにする!」 

 

キュッ   ジャー 

 

鶫「……と、言っておかなければな」 

 

楽「本当に子どもみてーだな;」 

 

鶫「私もあいつの生活態度には困っている…」 

 

鶫(彼女を躾けるのに協力してくれる者がいればいいのだが……)ホワンホワン 

 

 

鶫『ポーラ、またピーマンを残して…』 

 

ポーラ『ああ、ごめんなさい黒虎。残念だけど、私もうお腹いっぱいで食べれないわ~♪』 

 

鶫『ご飯三杯おかわりしておきながらなんて白々しい…!』 

 

鶫『大体肉詰めにしたはずなのに、器用に取り除いて肉だけ食べるな!!』 

 

ガチャッ 

 

楽『ん?……おいおい、またポーラが野菜残したのか?』 

 

鶫『一条楽!貴様からも何か言ってやってくれ!』 

 

ポーラ『ふん、誰がなんと言っても、私はそんなもの食べる気なんて…』 

 

楽『じゃあ、今日予定してたハンバーグはやめて外で食うか。…近くのサラダバーにでも』 

 

ポーラ『今すぐ食べるからそれだけはやめろぉ!』ガツガツ 

 

鶫『………すまないな。いつも手間をかけさせて』 

 

楽『気にすんなよ。俺とお前の仲だろ』ギュッ 

 

鶫『へっ!? ///』 

 

楽『ずっと、鶫とこういう生活するってのも…悪くねえな』 

 

鶫『わ、私と…ずっと……! ///』 

 

 

ポーラ『~♪』ニヤニヤ 

 

 

楽(―――顔洗っちまったし、ついでにこのまま髪も洗うか……) 

 

楽「鶫、シャンプー返してくれねえか?」 

 

鶫「」ジャー 

 

楽「……鶫?」 

 

鶫(また…何を考えているんだ… ///)ジャー 

 

楽「おーい、つぐみ―?また無視か―?」 

 

鶫(しかもなんで…こいつといる事ばかり… ///) 

 

楽「……使ってねーならもう勝手に使うぞ」 

 

楽(えーっと、確か俺が顔洗う前…この辺りにあったはず…)スッ 

 

楽(…? あれ、無い?違う場所に置いたのか……?)ゴソゴソ… 

 

 

むにゅっ 

 

鶫「!!!!???? !?!?!?!?」 

 

楽「え」 

 

鶫「ひっ…き、貴様…」 

 

楽「な、なんか…今……柔らかいものが」 

 

鶫「言うなああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!! ///」 

 

 

バギィッ 

 

 

楽「…………」ヒリヒリ 

 

鶫「~~~~! ///」 

 

楽「……つ、鶫…その…」 

 

鶫「黙ってろ! ///」 

 

楽「…あ、あれはシャンプーがどこにあるか探してただけで……;」 

 

鶫「黙れと言っている!! ///」 

 

楽「っ!」ビクッ 

 

鶫「貴様は何も触っていなかった!そして私は何も触られなかった!」 

 

鶫「それでいいな、一条楽!? ///」 

 

楽「い、いや…だけど…」 

 

鶫「口答えしたら最期、貴様は地獄を見ることになるぞ!それでもいいか!? ///」 

 

楽「わ、わかったわかった!何も言わねぇし、何も聞かねぇから落ち着いてくれ!!」 

 

鶫(い……一条、楽に……) 

 

鶫(……む、胸を……触られた……) 

 

鶫「~~~っ!! ///」カァァァ 

 

 

~数分後・湯船~ 

 

 

楽(見ないように見ないように見ないように見ないように見ないように… ///)チャプ… 

 

鶫「……」チャプ… 

 

楽「…… ///」 

 

鶫「…せめて…目ぐらい合わせてくれ」 

 

楽「…………あ、ああ……」 

 

鶫「…… ///」 

 

楽「…… ///」 

 

鶫(き、気まずい…;何か話題を……) 

 

鶫(………さっきの事が頭に残って、話すことすらできない ///) 

 

鶫(奴が意図的にやったことではないにしろ、その…―――) 

 

鶫「」ボフンッ! 

 

楽「!?」 

 

鶫「~~ ///」 

 

楽(鶫…スゲー顔赤くなってる……) 

 

楽(……俺も、人のこと言えねーけど… ///) 

 

楽(………) 

 

楽(さっきのって多分……いや、絶対そうだよな…) 

 

楽(その……鶫の…… ///) 

 

楽(うおおおおなんて事考えてんだ俺!ただでさえ女の子と風呂入ってるという無茶苦茶ヤバいシチュエーションなのに!!) 

 

楽(そ、そうだ!こういう時小野寺の事を考えれば…―――!) 

 

 

楽(…って駄目だ!それこそ入浴中の小野寺を想像しちまう!! ///) 

 

楽(こうなったら、今までの高校生活を振り返って気を紛らわせて…――) 

 

 

~~高校1年・林間学校~~ 

 

キョーコ『…あれ?なんだよつぐみ、男装なんてしてる割にいい体してるじゃないか』 

 

鶫『え!?』 

 

キョーコ『ちょっと触らせろ!』 

 

 

キャーキャー 

 

 

女子生徒A『わーホントだ、胸おっきー!!』 

 

女子生徒B『なんでこんな肌スベスベなの~!?』 

 

鶫『いや…ちょ…まっ…キャアア~ ///』 

 

 

 

楽(ブフッ) 

 

鶫「―――! おい、一条楽!一体どうした!?」 

 

楽「…へ?どうしたって…?」ツー 

 

鶫「気づいてないのか!?貴様鼻血が出てるぞ!」 

 

楽「…っ!」バッ 

 

鶫「なぜ急に鼻血など……とにかく私が診てやるから、大人しく…」 

 

パシャパシャ… 

 

楽「~~~っ! ///」ズザザザザ 

 

鶫「おい!診てやると言ってるのになぜ離れる!?」バシャバシャ 

 

楽「ちょ、ちょっと…」 

 

 

~~高校1年夏休み・楽の家~~ 

 

集『ズバリ!!誠士郎ちゃんのバストは少なくともE以上…!!答えは如何に…!!』 

 

 

鶫『そ…そ…』 

 

鶫『そんなにあるわけないだろう…!?? ///』 

 

嘘発見器『』ギャリギャリギャリギャリギャリギャリ 

 

千棘『つぐみーーーーーー!!?』アンタイツノマニ…!! 

 

鶫『もーーーーーーーーー!!! ///』 

 

 

 

~~高校1年夏休み・海~~ 

 

万里花『えいっ!』ガバッ 

 

鶫『ギャア!!?貴様何を…あっ!アッハハハハハハ!』 

 

万里花『むっ…やはり私より大きいですわね。けしからんすわ』ウソジャナカッタンデスネ 

 

千棘『あっホントだ、何この弾力!あんたスゴイわねつぐみ…!』 

 

鶫『やっ…!お嬢まで…ひっ…!?キャハハハハハハ… ///』ヤ…ヤメ… 

 

楽(グハッ)ドクドク… 

 

鶫「っ!さっきよりひどくなってるぞ!!何か深刻な病気にでも…」バシャバシャ 

 

楽「な、なってない!なってないから今は近付かないでくれ! ///」 

 

鶫「―――まさか、単にチョコレートの食べ過ぎとは…;そうなるまでに一体いくつ食べたんだ…?」 

 

楽「は、はは……。貰いもののチョコがどんな味するかと思って一口食ったら、止まんなくなって…」 

 

鶫「今夜の宴会で、貴様の家の者たちが作った料理が出るというのに…無計画な男だな」ハァ… 

 

楽「返す言葉もねぇや……;」 

 

 

鶫(本気で心配して損した…) 

 

鶫(…しかし、もしここで一条楽に万が一の事があったら、私が……) 

 

鶫(い、いやいや!それはこいつがお嬢の恋人だからするのであって、別に私が看護したいというわけでは… ///) 

 

 

楽(なんとか誤魔化せた…。つーか、あの迷信を信じるとは思わなかったけど…;) 

 

楽(……くそっ、さっきの回想のせいで余計に意識しちまう…! ///) 

 

鶫「…… ///」 

 

楽「…… ///」 

 

 

楽・鶫((また気まずい空気に……)) 

 

鶫(これ以上の沈黙はさすがにきつい…何でもいいからとにかく話さなければ) 

 

楽(話題…何か話題……そ、そうだ!鶫がさっき俺の事心配してくれたから、礼を言っとかないと!) 

 

 

鶫「ええっと…一条楽…」 

 

楽「あの…鶫……」 

 

鶫「き、今日は…いい天気だな」 

 

楽「……あ、ありがとな」 

 

鶫「明日の天気は…ど、どうなるんだろうなー…?」 

 

楽「あんなに…俺を気遣ってくれて……」 

 

 

鶫(ありがとう……?何の事だか分からんが返事はしなければ…!) 

 

楽(鶫の奴、何で急に天気の話をすんだよ?……いや、ここはあいつの話に合わせねーと…) 

 

 

鶫「あ……ああ、どう…いたしまして?」 

 

楽「……そうだなー…な、なんか今日は特に、暑かったらしいしな…?」 

 

鶫「別に……貴様に礼を言われるほどの事は、してない…ぞ?」 

 

楽「あ、明日も……結構暑くなるんだろう、な……?」 

 

 

楽・鶫(なんだこれ……) 

 

ヤクザ1 <着替え持ってきやしたー! 

 

楽・鶫(! 救いの手が!!!) 

 

鶫「い、一条楽!早く上がって私の着替えを持ってきてくれ!」 

 

楽「お、おう!悪いな鶫、お前が先に入ってたのに」 

 

鶫「そんな事気にするな。貴様に裸を見られるよりもはるかに……」 

 

鶫「~~~っ! ///」 

 

楽「自分で言って恥ずかしがるな! ///」 

 

鶫「う、うるさい!いいから早く上がれ!! ///」 

 

楽「わ、分かったよ… ///」ザバー 

 

タタタタ…   ガラッ 

 

 

鶫「――これで、やっと一息つけるな……」 

 

鶫(全く…あいつが風呂に入ってきてから、時間がもの凄く長く感じた…) 

 

鶫(その間、殆どドキドキし続けて…… ///) 

 

鶫「い、いや、今は何も考えるな!シャワーで頭でも冷やそう!」ザバー 

 

鶫「…タオルは……もうすぐ上がることだし、奴も居ないんだ。もう必要ないだろう」 

 

キュッ   ジャー 

 

鶫「……ふぅ」 

 

鶫(あとは、奴が着替えを持って脱衣所に戻ってくるのを待てばいいんだ……)チラッ 

 

鶫「…? 入り口になにか落ちている…」 

 

キュッ 

 

ペタペタ   ヒョイ 

 

鶫(なんだ、タオルか……恐らく一条楽のものだろう) 

 

鶫(…一条楽が、使った……) 

 

鶫「……あとで本人に渡さなければ… ///」 

 

鶫(全く、あいつもここまで慌てる必要―――) 

 

ドタドタドタドタ… 

 

ガラララッ 

 

楽「鶫!!!もう少しで着替え用意できるって―――――」 

 

鶫「」 

 

楽「」 

 

 

楽の部屋 

 

 

鶫「……」 

 

楽「……」チョコン 

 

鶫「今から2つだけ…質問しよう。まず、なぜいきなり戸を開けた?」 

 

楽「…その…早く、伝えた方が良いと思って……あと、気が動転していて……」 

 

鶫「………そうか。ではもう一つだけ質問を…」 

 

楽「……」 

 

鶫「単刀直入に言おう。見たか、それとも見てないか」 

 

楽「…見てません」 

 

鶫「しかし貴様が戸を開けた時、目の前に私が」 

 

楽「見てません」 

 

鶫「その時私はタオルを」 

 

楽「見てません」 

 

鶫「………」 

 

楽「……」 

 

鶫「…貴様がそこまで言うのなら、信じるとしよう」 

 

鶫「貴様は見ていなかった。だから、この件についてはもう追究しない」 

 

楽「」ホッ 

 

 

鶫「ところで一条楽…」 

 

楽「な……何だ?」 

 

鶫「少し…私の悩みを聞いてほしい」 

 

楽「あ、ああ……別にいいけど……」 

 

鶫「実は最近、また胸が大きくなってきてしまって」 

 

楽「おいちょっと待て」 

 

鶫「なんだ?私の悩みを聞いてくれるのではなかったのか?」 

 

楽「いきなりそんな悩み事ふっかけんなよ!それに男の俺に言ってどうすんだよ!?普通同性に話すモンだろ!!」 

 

鶫「言っておくがこれは本題ではないぞ。こっちも気にはしているが…」 

 

鶫「お嬢や他の女性だと、胸の事を話すとすぐに羨ましいと返され、一悶着あって… /// …その後の本題をまともに聞けないんだ;」 

 

鶫「逆にそういうのが分からない男性であれば、何か良い意見が出ると思ったのだが…」 

 

楽「それなら俺以外にも、お前がよく話してて相談できる男なんて―――」 

 

 

クロード…今でも鶫を男だと思っている 

 

集…この手の相談についてまともな回答をする気なし 

 

その他…そもそも上の2人(と、俺)以外の男と話している場面を殆ど見ない 

 

 

楽「………」 

 

鶫「……いないだろう?私もそれを分かってて貴様に相談したんだ」 

 

楽「……もっと男子でまともな親友作るべきだったな…」 

 

鶫「なぜ貴様が後悔する…;」 

 

楽「分かったよ、俺でよけりゃ聞いてやるよ…」 

 

楽「…それで、その…… ///」 

 

鶫「ああ…また、む、胸が…お、大きく、なって…きて… ///」 

 

楽「なんで急に恥ずかしがるんだよ… ///」 

 

鶫「さっきは必死に恥を抑えていたのに、貴様が急に止めたせいでまた恥ずかしくなってきたんだ!! ///」 

 

鶫「次は絶対に止めるなよ!?止めたら今度はタダでは…」ゴゴゴゴ 

 

楽「もう止めねぇからいちいち脅迫すんな!」 

 

 

楽「―――で、それが分かったきっかけは?」 

 

鶫「…一昨日、新しく買った下着が入らなくなってしまって…」 

 

楽「マジか……いや、服着てなくてアレなら確かに…… ///」 

 

鶫「先ほど言ったように、お嬢たちは羨ましいと仰っているのだが、私自身はそんなに良いとは思わないんだ」 

 

鶫「ヒットマンとしての任務を行う際も邪魔になるし、普通に生活する時も不便なことばかりだし、それに…」 

 

楽「…?」 

 

鶫「……こんな私に、女としての魅力なんて無いのに……」 

 

楽「………」 

 

楽「もしかして、それが本題なのか……?」 

 

鶫「……? ああ、そうだが…」 

 

楽「……お前、まだそんな事考えてんのかよ…」ハア… 

 

鶫「そ、そんな事とは何だ!」 

 

楽「お前がどう思ってるかはともかく…クラスの女子が羨ましいって言ってんだろ?」 

 

楽「クラスで、お前が美人でスタイルも良くてモデルみたい、っていう話をよく聞くし…」 

 

楽「他の奴から見たら、魅力は十分あるってことだぜ?」 

 

鶫「し、しかし…」 

 

楽「それに鶫が女だって分かってから、男子からも相当人気だし…ラブレターまで貰ってたじゃねぇか」 

 

鶫「だが、私はヒットマンだから…」 

 

楽「ヒットマン云々以前に、鶫は女の子なんだろ?」 

 

楽「…最初に言ってた、その…体の悩みとかは、正直何とも言えねーけど… ///」 

 

楽「俺は、その……鶫は、スゲー魅力のある女の子だと思う。だから、もっと自信を持ってもいいと思うぜ?」 

 

鶫「――っ!」 

 

鶫「……」 

 

楽(あー……我ながらなんつー台詞を… ///) 

 

鶫「……そうか」 

 

鶫「貴様がどう思ってるかは別として…」 

 

楽「なんで別にすんだよ!せっかく俺がフォローしてやってるのに…!」 

 

鶫「先ほどの貴様の言葉には………感謝する」 

 

楽「!」 

 

鶫「貴様の言うとおり、一人の…女としての自分に、自信を持ってみるとしよう」 

 

楽「……おう!」 

 

鶫「さて一条楽、話は変わるが…」 

 

楽「おう!」 

 

鶫「貴様は先ほど言っていたな、『服着てなくてアレなら確かに』と…。これは一体なんの事だ?」 

 

楽「―――おう?」 

 

鶫「いや、私が『下着が入らなくなった』と言った後、貴様が返した台詞に違和感を感じてな」 

 

鶫「私の考えすぎかもしれないが、念のため聞いておこうと思ったんだ」 

 

楽「……」 

 

鶫「先ほど私の悩みについて真剣に答えてくれたんだ。この質問にも真剣に答えてくれると非常にありがたい」 

 

楽「………」 

 

鶫「……貴様が言わないのなら、私が予想してみよう…」 

 

楽「…………」 

 

鶫「その予想が正しいか否か……貴様には正直に答えてもらいたい」 

 

鶫「……私は、信 じ て い る ぞ ?一条楽よ…」 

 

楽「……………」 

 

鶫「ここまでで…何か言いたい事はあるか?」 

 

楽「……正直に言ったら許してくれるか?」 

 

鶫「一体何を許してほしいかは知らないが…許してやらなくもないぞ?」ニコニコ 

 

楽「直接見ると想像以上だった」 

 

鶫「ほう、何がだ? #」ニコニコ 

 

楽「E以上のm」 

 

 

バチィーーーン 

 

 

鶫「今日から貴様のことは『変態』と呼ぶことにしよう。この件もお嬢たちに…」 

 

楽「や、やめてくれ!見ちまったことも、嘘ついたことも謝るから!マジで許してくれ!!」 

 

鶫「黙れ!少々探りを入れてみたが、貴様も最初から本当のことを言っていればいいものを…」 

 

楽(引っかかった俺が言うのも難だが、あの相談が探りなんて無理矢理すぎるだろ;) 

 

楽「……そ、そうだ!さっき悩み聞いてやっただろ?それでチャラに……」 

 

鶫「出来るかぁ!貴様本当は謝る気なんてないだろう!?」 

 

楽「いやあるって!本当に悪かった!この通り!!」パン!! 

 

鶫「……………」 

 

楽「……;」 

 

鶫「…………1つ」 

 

楽「……へ?」 

 

鶫「今後、私がする要求を1つだけ、必ず聞いてもらう」 

 

鶫「そしてその要求に応えてくれたら、この件は水に流すとしよう」 

 

楽「いや、急にそんな事言われても…」 

 

鶫「文句でもあるのか変態」 

 

楽「全くありませんそれでお願いします」 

 

鶫「―――そうだ、ポーラに連絡しなければならなかったな。電話するから少し席を外すぞ」 

 

楽「お、おう…(別にここで電話してもいいけどな;)」 

 

ガラッ   スタスタスタ… 

 

楽(ったく…鶫が家に来てから、色々と起こりすぎだっての…) 

 

楽(風呂で鉢合わせするわ、急に相談受けるわ、何か1つ要求聞くことになるわ…。) 

 

楽(…いや、最後は完全に俺が悪いけど;) 

 

楽(そもそも親父があんな提案してからこんなことが―――) 

 

―――――――――― 

 

楽の父『それに、嫌じゃねえとは言うけどよ…おめー実は宴会に飽きてきたんじゃねーのか?』 

 

楽の父『またいつもみてえに始まりの挨拶でもして、飲み食いして、歌った後はず~っとだるそうに座ってんだろ?』 

 

―――――――――― 

 

楽(――――ずっと暇になるよりはマシだろうけど、これじゃ逆に落ち着けねぇよ;) 

 

楽(鶫も…あれを引き受けたとはいえ、この後も何か起こり続けたら、うちにいるのを嫌がるだろうし…) 

 

楽(最悪、頼みを断って途中で居なくなるんじゃ…) 

 

楽(………) 

 

楽(……これ以上は何も起こらないでくれ!今日だけでも話し相手がほしいんだ!!宴会の場で学生一人は超キツイ…!) 

 

楽(………嫌がると言えば、俺に対する態度を変えてた理由をアイツに聞いたとき―――) 

 

―――――――――― 

 

鶫『…一条楽への接し方について、私自身疑問を抱いた』 

 

鶫『一応はお嬢の恋人であるはずなのに…私は、貴様に対し過激な行動をとっている…』 

 

鶫『それを改めなければならないという考えに至ったので、今日は出来る限り態度を変えようと試みたんだ』 

 

―――――――――― 

 

楽(――――ああ言ってたけど、あれってつまり…) 

 

楽(『鶫は俺のことを嫌ってない』って思ってもいい、のか…?) 

 

 

楽「……さすがに都合良く考えすぎか…;」 

 

ガラッ 

 

鶫「全くポーラの奴…アレを言わないとどうして言うことを聞かないんだ…」 

 

楽「……『全部やらないとおやつ抜き』か?」 

 

鶫「ああ、それまで散々嫌だと言っていたのに、おやつ抜きと聞いた瞬間―――」 

 

 

ポーラ『アンタは私の保護者か!何だよ家事できるからって母親面しやがって!』 

 

ポーラ『~~っ!ちくしょう!やればいいんだろやれば!?』 

 

ポーラ『やってやるよこのデカ乳主婦がぁ!絶対仕返ししてやるから覚えてろよぉ!!(泣)』 

 

 

鶫「―――と言って電話を切られてしまった」 

 

楽「そんなに嫌がってたのか……」 

 

楽(しかも返しの言葉がデカ乳主婦って…それ悪口になってねーだろ;) 

 

鶫「……一度再会した時は、私のことを腑抜けただの、緩んでいるだのと言っていたが…」 

 

鶫「こっちに来てからというもの、ポーラの方が緩んでいるようにしか思えん」 

 

楽「年相応になったせいで逆に厄介になってるような…いや、それ以下に…」 

 

鶫「ああ…。あいつとチームを組んでいた頃が懐かしく思える……」 

 

楽(苦労してるんだな…;) 

 

楽「…つーか、お前さぁ」 

 

鶫「何だ?」 

 

楽「なんで俺の部屋に戻ってきたんだ?」 

 

鶫「……は?」 

 

楽「いや、うちの奴らに客間に案内するよう言っておいたんだけど…」 

 

鶫「先ほど何人かすれ違ったが、誰も声をかけてこなかったぞ。私が電話中だったからかもしれんが…」 

 

楽「おかしいな…。おーい、誰か手空いてねぇか?」 

 

ガラッ 

 

ヤクザ1「坊ちゃん、呼びやしたか?」 

 

楽「ああ、準備中にわりーけど、こいつを客間に連れてってくれねぇか?」 

 

ヤクザ1「え?」 

 

楽「…え?」 

 

鶫「…え?」 

 

ヤクザ1「坊ちゃん、もしかして誰からも聞いてねえっすか……?」 

 

楽「いや、何をだよ?」 

 

ヤクザ1「今言ってた、その…客間のほうなんすけど―――――」 

 

 

客間 

 

 

ぐちゃあ… 

 

 

楽「」 

 

鶫「」 

 

ヤクザ1「ご覧のとおり、人を入れるどころか足の踏み場すら無くなっちまって…」 

 

楽「なんでこんなゴミ屋敷みたいになってんだよ!?」 

 

ヤクザ1「その…竜さんから広間の掃除をしろと言われて…。最初は何がどこにあったか、1個1個整理してたんすけど…」 

 

 

竜『おそぉーーーーーい!!!あと5分でまっさらにしろぉ!!!』 

 

 

ヤクザ1「…って言われてからは、他の空いてる部屋に全部ぶち込むことになって、丁度客間も空いてたもんで……」 

 

楽(あー、だからさっきの奴は客間って聞いて焦ってたのか…) 

 

ヤクザ1「どうしやすか?さすがに全部は無理でも、横になれるぐれぇには出来ますけど…」 

 

楽「…お前はどうするんだ?」 

 

鶫「へっ?」 

 

楽「いや、『へっ?』じゃなくて…今日はもう空いてる部屋ねーんだぞ?」 

 

楽「こいつの言うとおり、客間も…普段は空いてる部屋も、全部同じ状態になってるんだ。やっぱ少しどけてもらうか?」 

 

鶫「…………いや、いい」 

 

楽「…だってよ」 

 

ヤクザ1「そ、そうっすか?でも…準備の間はどこで待つんですかい?」 

 

鶫「…私は―――」 

 

 

楽「いいのか?」 

 

鶫「ああ」 

 

楽「……本当に、いいのか?」 

 

鶫「…ああ」 

 

楽「…… ///」 

 

鶫「……何だ。急に顔を赤くして」 

 

楽「い、いや……その…」 

 

楽「鶫のことだから、てっきり自分で客間を整理して待つと思ってたから…」 

 

鶫「…人の家に上げてもらって、勝手に部屋のものを漁るのは良くないだろう」 

 

楽「そ、そうだよな……」 

 

楽「だけど、あそこで『俺の部屋にいたい』ってのはちょっと… ///」 

 

鶫「! ///」カァァァ 

 

楽「…… ///」 

 

鶫「~~っ! ///」プイッ 

 

楽(蒸し返さない方が良かったか…;まあ本当は、仕方なくこっちにいるんだろうけど……) 

 

楽(いつか自分の部屋に(小野寺を)誘う体とか考えてたけど、まさかこんな事になるとはなぁ;) 

 

楽(…じゃなくて!!また2人きり!?しかも俺の部屋で!?) 

 

楽(……風呂の件があったせいか、鶫のこと変に意識しちまう…///) 

 

楽(それに、今まで女子の部屋に呼ばれたことはあれど、女子を部屋に呼ぶ(?)事なんてなかったから心の準備が…)アセアセ 

 

楽(いやいやいや!風呂入るまでは普通に部屋で話してたじゃねぇか!…少しだけ;) 

 

楽(そ、それに鶫がここにいるのは、あくまで宴会の準備が終わるまでなんだ!) 

 

楽(一緒にいると言っても、何か話していればすぐに宴会の時間になる!そう、いつも通りに……?) 

 

楽(アイツといつも、どんな事話してたっけ…;) 

 

楽(こ、この際何でもいい!とにかく色んな話題振って気持ちを切り替えねーと!)ウカオオオ 

 

鶫(……) 

 

鶫(あいつは…一条楽は今、何を考えているのだろう…) 

 

鶫(恐らくお嬢の事だろう……やはり、私といるよりも…) 

 

ズキッ 

 

鶫(っ!) 

 

鶫(―――傷の痛みじゃ、ない……?) 

 

鶫(…何を考えているんだ私は…。…恋人同士、好きな相手の事を想うなんて当然だろう…) 

 

ズキ……ズキ…… 

 

鶫(…っ。なのに、何故だ…………) 

 

鶫(なぜ、こんなにも……胸が苦しくなる……) 

 

ズキッ 

 

鶫(…なぜ、私は…) 

 

鶫(あいつに…一条楽に……) 

 

鶫(私の事を、考えてほしいなんて…) 

 

鶫(私の、ことを………!) 

 

ズキィ 

 

楽「~~っ!」ウグググ 

 

鶫「…………」 

 

 

鶫「一条楽」 

 

楽「!?」ビクッ 

 

鶫「貴様…もしかして……」 

 

楽(え!?俺、なんか今マズいことしたか!?) 

 

鶫「お嬢の事を、考えていたのか……?」 

 

楽「え、あ……」 

 

 

楽「そ、そうそう!結局あいつとは今日、体育の後に顔合わせられなかったからなー!」 

 

楽「俺が気を失った時は保健室に来てくれると思ってたけど、残念だったな~」 

 

楽「ハニーが来てくれれば、多分…いや絶対!すぐに立ち直れたのに!」 

 

鶫「………っ」ズキッ 

 

楽「まぁ、向こうも急ぎの用だったからしょうがねぇよな。あーあ、俺も誘ってほしかったぜ」 

 

楽「さっき電話した限りじゃあいつも暇してたみてーだし、あっちにも出てみたら意外と楽しいかもなー」 

 

楽「ついでにそこへ集まった人たちに、俺たちのラブラブっぷりでも見せつけて……これはさすがに恥ずかしいか;」 

 

鶫「…っ!」ズキズキ… 

 

楽「こ、こっちも今日は宴会だけど…あ、そうだ!千棘はこっちの方が新鮮で楽しめるんじゃねぇかな!?」 

 

楽「あいつがどう言うかわかんねーけど、俺の部屋で一緒に待つってのも良いかも…」 

 

楽「ま、まぁハニーと一緒だったら、俺はなんでも楽しめるからな!!」 

 

鶫「…………」 

 

楽(大分勢いに任せて話しちまったけど、出来る限りこの話で緊張を解いて…;) 

 

楽「まあ今日は都合が合わなくて残念だったな。また今度――」 

 

鶫「…………め……か…」 

 

楽「…え?」 

 

鶫「…私じゃ……駄目、なのか…?」 

 

楽「な、なに言って…」 

 

スッ… 

 

楽(っ!? き、急に近付いて…っ! ///) 

 

鶫「……ここには今、私と貴様以外…誰も居ない」 

 

楽(……?) 

 

鶫「そして、貴様の目の前には、私がいるんだ……」 

 

 

鶫「だから、今は」 

 

鶫「今だけは」 

 

 

鶫「私を」 

 

 

鶫「私だけを、見てほしい…」 

 

楽「え……なっ……」 

 

鶫「…………」 

 

楽「そ…その……」 

 

鶫「……」スクッ 

 

楽「!」 

 

鶫「すまない。少し向こうの様子を見てくる」 

 

楽「えっ!?ちょっと待っ…」 

 

鶫「……一条楽」 

 

楽「っ」 

 

鶫「さっきの言葉はもう、忘れてくれ…」 

 

楽「へ……?」 

 

 

ガラッ 

 

スタスタスタ…… 

 

 

楽「…なんだったんだ……?」 

 

 

鶫(私は、何をしているんだ…) 

 

鶫(お嬢が……お嬢が愛する…) 

 

鶫(そして、お嬢を愛する……あいつを……) 

 

鶫(一条楽を、求めるなんて―――!) 

 

鶫「………」 

 

鶫「今は、あいつと顔を合わせたくない……」 

 

 

調理場 

 

 

竜「―――! どうした嬢ちゃん、悪いけどまだ準備中だぜ?」 

 

鶫「……その…何か、お手伝いしようかと思いまして…」 

 

竜「いやいや!坊ちゃんの大事な客なんだから、ゆっくり待ってていいんだよ!」 

 

鶫「しかし、皆さんが急いで準備して下さっているのに、ただ待っているわけにもいきません」 

 

鶫「私にもできる事があれば、何なりと仰ってください」 

 

竜「…………」 

 

鶫「…?」 

 

竜「坊ちゃんたら……本当に、い゛い゛お゛どもだぢを゛持って゛………」グスッ… 

 

ヤクザ2「やっぱり、坊ちゃんは世界一幸せな男っす……!」ポロポロ 

 

ヤクザ3「涙も食欲も止まんねぇ………」ポリポリ 

 

ヤクザ4「テメェ、こんなときにつまみ食いすんな!!」 

 

鶫(一条楽の周りもなにかと凄いな…;) 

 

 

竜「そんじゃ、丁度料理作るところだったんだ。嬢ちゃんは料理できるか?」 

 

鶫「ええ、家ではよく作っています」 

 

竜「そりゃ良かった!作ったらきっと、坊ちゃんも喜ぶだろうなぁ!」 

 

ヤクザ4「……実は坊ちゃんの為に料理を…?」 

 

鶫「ち、違います!」 

 

竜「オイ、もしそうだとしても、この嬢ちゃんを困らすようなこと言うんじゃねえ!」 

 

鶫「だからそうじゃありませんって!! ///」 

 

鶫「私がここで料理するのは手伝うためであって、決してそういう理由では……」ホワンホワン 

 

 

楽『―――ごちそうさん。今日の飯も美味かったぜ、鶫』 

 

鶫『別にお世辞なんて言う必要ないぞ』 

 

楽『お世辞じゃねーよ。お前が作ってくれる料理、俺は好きだぜ』 

 

鶫『なっ!? ///』カァァァ 

 

楽『そうだ!この料理のレシピ教えてくれよ!今度一緒に作ろうぜ!』 

 

鶫『…き…貴様が、そう言うのなら……』 

 

鶫「」プシュー 

 

竜「………何か変なこと言ったか?」 

 

ヤクザ達「さぁ…?」 

 

鶫「『何でもいいから作ってくれ』と言われても…一体何を作ればいいんだ……?」 

 

鶫(こういう時は食材を見て考えよう。……牛肉、人参、大根、じゃがいも、卵……他にも色々…) 

 

鶫(むう………これだけ多いと逆に迷ってしまう;) 

 

鶫「…鶏肉!そうだ、あれを使って……」 

 

竜「うおおおおおう!ちょっと待ったああああああああ!!」 

 

鶫「はいぃっ!?」ビクッ 

 

竜「ああっ!驚かせてスマン! それと、悪いが鶏肉だけは使わんでくれねぇか?」 

 

鶫「ど、どうしてですか?」 

 

竜「その…坊ちゃんから『他の奴に触らせるな』と言われたもんで;」 

 

ヤクザ3「前々から坊ちゃんは料理が上手かったっすけど、最近は食材にも拘るようになって…」 

 

ヤクザ4「最近はその鶏肉で唐揚げを作ってらして、学校で彼女さんや友達に見せてやる! とかおっしゃってたような…」 

 

鶫「!」 

 

―――――――――― 

 

楽『さすがに、おかず全部を残すのは無理だったし』 

 

楽『千棘や小野寺、橘や集にも分けちまって、あんまり残らなかったけど;』 

 

楽『学校でも言ってたけど……弁当も、そんなに大したもんは作ってねーし…』 

 

―――――――――― 

 

鶫(あいつ…大したものじゃないと言っていたのに…!) 

 

 

<兄貴ー!ただいま獲ってきやしたー! 

 

 

竜「! よーし、持ってこーい!お前らもアレの準備せい!」 

 

ヤクザ達「「「おーっす!!!」」」 

 

鶫「…?」 

 

 

鯛「」デン 

 

マグロ「」ズン! 

 

 

 

鶫(デ、デカい……;) 

 

ヤクザ2「今日の魚は中々デカいっすね」 

 

竜「まぁ2ヶ月前に捌いたヤツに比べりゃ、こんなのちっせぇモンだがな」 

 

鶫(これよりも大きい魚がいたのか!?) 

 

竜「さーて、時間もねぇしさっさと済ませるか!」ギラリ 

 

竜「……!……!」 

 

鶫(すごい…あんなに綺麗に…) 

 

ヤクザ2「毎度毎度、兄貴のあの包丁さばきには驚かされるぜ」 

 

ヤクザ4「そういや以前、坊ちゃんが風邪ひいたとき作ってた兄貴のお粥は絶品だったな」 

 

ヤクザ3「竜の兄貴に料理させたら、兄貴の右に出る奴なんかいねぇ!」 

 

竜「#」 

 

ヤクザ3「……; 坊ちゃん以外!」 

 

鶫「………」 

 

ヤクザ4「? どうした嬢ちゃん?」 

 

鶫「いえ……やはり、私が手伝っても良いのでしょうか?」 

 

ヤクザ達「?」 

 

鶫「…私よりも料理の上手い人が作っていると知って、私の料理を皆さんに食べさせる自信が無くなってしまって…」 

 

竜「………」 

 

鶫「すみません。引き受けておいて勝手かもしれませんが、やはり料理は」 

 

竜「いや、作れ」 

 

鶫「!」 

 

竜「あっしだって坊ちゃんには敵わねえ。それに、こいつらが言ってたお粥も、結局坊ちゃんには食わせなかった」 

 

鶫「……なぜですか?」 

 

竜「その日、坊ちゃんの彼女と、仲の良い女の子のお友達がお見舞いに来ててな…。2人とも坊ちゃんの為にお粥を作ってたんじゃ」 

 

ヤクザ4「そのお友達、確か愛人だと聞いて」 

 

ヤクザ2「ちょっと黙っとれ」 

 

竜「……あんだけ坊ちゃんの事を思って作ったものを邪魔するなんて、あっしには出来ねぇ」 

 

竜「食べる人への愛情も大事なんじゃ。嬢ちゃんだって、分からねぇわけじゃねぇだろ?」 

 

鶫「………」 

 

竜「料理が上手い下手ってのも重要だが、誰かのために一生懸命作るってのはもっと大事だ!嬢ちゃんも遠慮せずに作ってくれ!!」 

 

竜「それに、こういうのは坊ちゃんが1番分かってるはずだからな!!」 

 

鶫「……はい!!」 

 

鶫(皆が…一条楽が喜んでくれるなら、何か作ってみるか……!) 

 

鶫(しかし、奴の好きなものも嫌いなものも知らないで、一体何にすればいいのやら…;)ムムム… 

 

鶫(………そうだ!アレだ!) 

 

 

大広間 

 

 

「今日は坊ちゃんの幸せを祝って、こうして宴会を開くことになった!!」 

 

「どうしても外せん用事で来れなかった奴もいたが、大方は坊ちゃんの為にと集まってくれたこと…感謝する!!」 

 

 

「「「「「うおおおおおおおおおおーーーーーっ!!!!!」」」」」 

 

 

鶫「幸せを祝って、か……。そもそもこれは何の祝いだ?」 

 

楽「…………弁当を、友達に喜ばれたお祝いに」 

 

鶫「……平和な組織だな」 

 

楽「何とでも言ってくれ;」 

 

 

楽(つーか何だよ…。鶫の奴、あれから宴会が始まるちょっと前に帰ってきて、何事もなく話してくるぜ…) 

 

楽(あの後、あんなこと言った理由を考えてた俺が馬鹿みてぇじゃん) 

 

 

「―――――さて、今日はなんと……坊ちゃんのご友人がこの宴に出席しとるぞーっ!!」 

 

 

「「「「「うおおおおおおおおおおーーーーーっ!!!!!」」」」」 

 

鶫「…宴会になるといつもこんな雰囲気なのか?」 

 

楽「9割9分はこうだな」 

 

鶫「残りの1分は何だ?」 

 

楽「血と硝煙の匂い」 

 

鶫「すまない…」 

 

楽「謝るな、余計悲しくなってくる…;」 

 

 

「このご友人なんだが、本当に良い子でなぁ……」 

 

「坊ちゃんと彼女さんの事、よう見守ってくれとるらしいし、さっきは宴会の手伝いをしたいと言ってくれた!」 

 

「坊ちゃんに、こんなに良いお友達がいるなんて…グスッ……俺達、超感激っす!!」 

 

 

「「「「「おおおおおおおおおおお~~~~~っ!!!!!」」」」」ボロボロボロ…… 

 

 

鶫「……」 

 

楽「……その、悪かった」 

 

鶫「謝る必要などない。それに、ある程度予想は出来ていた;」 

 

楽「そ、そうか…」 

 

 

ヤクザ5「おっ!そうだ!」 

 

「? どした?」 

 

ヤクザ5「俺がついさっき聞いた話なんだが……」 

 

ヤクザ5「確かその子、坊ちゃんとマジの愛人らしいぞ!!」 

 

 

「「「「「ええええええええぇぇぇーーーーーっ!!!??」」」」」 

 

 

鶫「」 

 

楽「」 

 

 

ヤクザ1「そ、そうなんっすか坊ちゃん!?」 

 

ヤクザ2「急に女連れてきたからまさかとは思ってましたが…」 

 

ヤクザ3「この年で美人な彼女に加え、愛人もいるなんて……やっぱり坊ちゃんは器がでけえ人だぁ…」 

 

ヤクザ4「自分も、実はそういう間柄なんじゃないかと……」 

 

楽「待て待て待て待て待て待て!!皆落ち着けって!!」 

 

鶫「そ、そもそもどこでそんな話を!?」 

 

ヤクザ5「ああ、それは俺が魚を獲ってきた帰りに―――――」 

 

???『うわっ!でかっ!!』 

 

ヤクザ5『はっはっは!驚いたか嬢ちゃん?悪いがこいつは客人を招いての宴会用だから、分けてくれっつっても無理な話だぜ?』 

 

???『そこまでひもじい思いはしてないわよ。…ところで、客人って?』 

 

ヤクザ5『ああ、うちに坊ちゃんのお友達が来ててな。どうやら男っぽい格好した女の子らしいが…それがどうした?』 

 

???『……!あら、その子って確か―――』 

 

ヤクザ5「―――って、赤いマフラーをしてる銀髪の女の子が言ってたもんだから…」 

 

鶫・楽(ポーラああああああああああ!!) 

 

鶫「貴方その人に騙されてるんですよ! ///」 

 

ヤクザ5「いやいや、嬢ちゃんが作った料理を坊ちゃんが美味そうに食べてたって話とかも聞いたし…」 

 

楽(ぐぅ…食ってたのは事実だし、説明するにも鶫の家に入ったことを言わなきゃならねぇ…。こいつらの事だから…;) 

 

鶫(恐らく、私の家にあがるほど深い間柄になっている、としか受け取られないだろうな;) 

 

ヤクザ1「坊ちゃん達が否定しねぇってことは、やっぱり…」 

 

楽「い、いや!確かに飯は食ったけど、俺たちがそんな関係になるわけねーだろ!!大体… ///」 

 

楽(あ、あれ…?そういえばさっきから竜がいないような…) 

 

 

ドドドドドドドドドド 

 

 

竜「ぼっちゃあああああ~~~~~ん!!」 

 

楽「り、竜!まず最初にお前から言っといた方が…」 

 

竜「おめでとうごぜえやぁす!!!」バサッ 

 

楽「ブッ!? は、花束……?」 

 

竜「恋人だけじゃなくて、まさか本当に愛人まで作っとるなんて……」ジーン… 

 

楽「いやだから!あの話はガセで別に」 

 

竜「よぉーしお前ら!宴会は一旦切り上げろ!そして広間を豪勢にしろ!!愛人の誕生をもっと祝うんじゃーっ!!!」 

 

 

「「「「「おおおおおおおおおおーーーーーっ!!!!!」」」」」 

 

 

楽「お、おい鶫…このままだとマジでヤバいことに…」 

 

鶫「…………あい…じん……」 

 

楽「……鶫?」 

 

鶫「あいじん…あいじん………もっと、いわう……ふへへへ………」フラフラ 

 

楽「…………」 

 

楽「誰か助けてくれぇーーーーーーーーーーーっ!!!」 

 

 

十数分後 

 

 

楽「……………」ゲッソリ 

 

鶫「…さっきは取り乱してすまなかった;」 

 

楽「ああ……いや、もう……なんでもいいや…」 

 

 

「―――それじゃあ、今日いらっしゃってる坊ちゃんのお友達から、挨拶と乾杯の音頭を!」 

 

 

鶫「なっ!?」 

 

 

パチパチパチパチ… 

 

 

楽「ほら、皆期待してるぞ」 

 

鶫「し、しかし、私はこういう表舞台に出たことなんて殆ど…」 

 

楽「早く行かねーと、あいつらの期待値が更に上がってくぞ」 

 

 

「頑張れよー!」「一言ビシッと頼むぜ!」「やっぱり坊ちゃんと何かあるんじゃ…」 

 

 

楽「鶫、早く…」 

 

鶫「うぅ…」 

 

鶫「えーっと、その…」 

 

鶫「ほ、本日はー、お日柄もよく……」 

 

鶫「……こ、このような…祝宴に、私を招待、して、いただき……」 

 

 

「「「「「…………」」」」」 

 

 

鶫「…あぅ…… ///」 

 

鶫「かっ、かんぱーーーーーーーーーーい!!! ///」 

 

 

「「「「「かんぱぁーーーーーーーーーい!!!!!」」」」」 

 

 

楽「……皆ノリ良いなぁ;」 

 

楽「つーか、俺いつもの挨拶してねぇじゃん!? もしかして飛ばされた!?」 

 

 

<オマエラ、キョウハエンリョスンナヨ! 

 

<ゴチニナリマース! 

 

<テメェオレノブンカッテニトンジャネェヨ! 

 

 

楽「えぇー…、みんなもう食ってるし…;」 

 

 

ガヤガヤ…… 

 

 

楽「お前、何だよさっきの挨拶は…」 

 

鶫「あ、ああいうのには慣れていないんだ! ///」 

 

楽「潜入任務とかやってんだろ?そういう時はどうしてたんだよ?」 

 

鶫「…他の者が会場で挨拶などをしてる間、私がその裏で任務を済ませているからな」 

 

楽「ヒットマンがそんなんでいいのか…?」 

 

鶫「世の中には適材適所という言葉があってだな…;」 

 

 

<集英組・本日の夕食(宴会用)> 

 

ご飯(白飯)・鯛の姿造り・マグロの刺身、カブト焼き 

 

豚の角煮・肉じゃが・玉子焼き・大根の味噌汁・きんぴらごぼう 

 

鶫「……宴会にしては、魚を除いて割と質素だな」 

 

楽「あーそれは…皆が宴会やりすぎてやりくりが出来なくなるから、あんま贅沢すんなって親父が言ったんだよ」 

 

楽「まぁ変に高い食材使わなけりゃ量が多いだけで済むし、魚とかなら自分たちで獲ってこれるからな」 

 

鶫「…ちなみに先月は何回宴を開いた?」 

 

楽「………最低でも、2桁は…」 

 

鶫「……よくそれで財源が尽きないな;」 

 

楽「俺も不思議に思ってるよ;」 

 

竜「―――お二人とも!もう召し上がってる所っすか?」 

 

楽「今から食うところ。この鯛食ってもいいか?」 

 

竜「どうぞどうぞ!今日獲れた奴は中々のモンですぜ!ほら、嬢ちゃんも遠慮しねぇで!」 

 

楽「2ヶ月ぶりの鯛か。いただきます!」 

 

鶫「(2ヶ月前にもこれを…?)い、いただきます……」 

 

パク…… 

 

楽「おおっ!超うめー!!」 

 

鶫「!美味しい……!」 

 

竜「ああ……坊ちゃんたちの笑顔が見れるなんて、あっしらは幸せ者じゃ……」ポロポロ 

 

楽「お前は今日何回泣くんだよ!?」 

 

鶫「……;」 

 

楽「この角煮やわらけー…タレも程よい甘さで、すげー食べやすいぜ」モグモグ 

 

鶫「ああ。今度作るときの参考になるな」 

 

楽「教えてもらえばいいじゃんか」モグモグ 

 

鶫「それでもいいんだが、まずは自分の腕でどこまで美味しく作れるか試したいんだ」 

 

楽「そっか…」 

 

楽「でも鶫が作ったものなら、きっとスゲー美味いんだろうな!」 

 

鶫「なっ!? ///」ボッ 

 

鶫「き、貴様に言われても嬉しくないっ! ///」 

 

楽(だよなぁ…あんまり良いように思われてねーし;) 

 

鶫(一条楽がああ言ってるということは…) 

 

鶫(ここに出ている私の作った料理を口にしたら、アイツは… ///) 

 

 

<サケハモウチョットアトニシロヨー! 

 

<ギクッ 

 

<ア、アニキ!コイツモウフタアケテマス! 

 

<テメェ、ナンデヌケガケシテヤガル!? 

 

<ヒィィィ、スンマセン!! 

 

 

楽「つーか、こういう形でお前と飯食うなんて思いもしなかったぜ」 

 

鶫「私もだ。あんなことを頼まれていなかったら、貴様などとは一生なかっただろうな」 

 

楽「…今日は少し態度変えてるって言ってたけど、その言い方も結構きつくねぇか?;」 

 

鶫「本人に言った以上、あの時ほど変える必要もないからな」 

 

楽「うちにあがってきた時に涙目で土下座してたくせに…」ズズ… 

 

鶫「!!」 

 

バシッ 

 

楽「ぶっ!? く、食ってる時に背中叩くなよ!!」ゲホッゲホッ 

 

鶫「き、貴様が急にその話を持ち出すからだろう!? それはもう口に出さないでくれ!! ///」 

 

楽「わかったわかった、誰にも言わねぇから;」ズズ… 

 

楽「……」モグモグ… 

 

鶫(………)チラッ 

 

鶫(まだ、手をつけていないか…) 

 

鶫「しかし、一度にこれほど多くの和食を見るとは思わなかったな」 

 

鶫(和食と判断していいのか分からない品もあるが…) 

 

楽「俺も正直驚いたぜ」 

 

鶫「? 何度もこのような宴を催しているのなら、驚くことではないはずだぞ?」 

 

楽「それは…前回はコロッケ・豚カツ・エビフライと油もんばっか並んで、前々回は汁系づくしで…」 

 

鶫「一体どうすればそんなにいくつも似た料理が出るんだ;」 

 

楽「俺が知りてぇよ;」パクッ 

 

楽(! このきんぴらもいいな。今度作り方聞いてみるか)モグモグ 

 

 

<オーイ!ハヤクソノカブトヲコッチニマワセー! 

 

 

楽「!」 

 

 

<イッタイドコデトマッテヤガル!? 

 

<モ、モウスコシ… 

 

<テメェハトリスギダ!ホカノヤツガクエナクナルダロ! 

 

 

楽「――なんか向こうにヤバいものが見えるんだが;」 

 

鶫「…気にするな。しかし宴といえど、あれは少々騒ぎすぎではないか?」 

 

楽「き、今日は客がいるからいつもより気分が良いんだろ…多分;」 

 

楽(アレを見てなんで冷静でいられるんだよ!?普通驚くだろ!?) 

 

鶫(あんな料理が本当に出るとは…。私も最初、調理場で見た時は驚きを隠せなかった;) 

 

楽「……」ズズズ… 

 

鶫「………」 

 

楽「? どうした鶫? あんまり箸進んでねーけど」 

 

鶫「いや、別に…」 

 

楽「そっか。メシは遠慮しないでいいからな。食ってくれた方が竜たちも喜ぶし」 

 

鶫「あ、ああ…」 

 

鶫(―――やっぱり気づいてない。それどころか口にする気配すらない!) 

 

鶫(これ以上待たずに『私がこれを作った』と自分で言うべきか?) 

 

鶫(いやいやいやいや!自分から言うなんて恥ずかしすぎるわ!! ///) 

 

鶫(それに、待っていれば一条楽は必ず口にするだろうし…しかし、もし食べてからの反応が悪かったら…) 

 

鶫(どうする…?) 

 

 

 

鶫「い、一条らk――」 

 

竜「お待たせいたしやしたぁっ!」 

 

 

ドスンッッ! 

 

 

楽・鶫「!?」 

 

竜「本日の目玉、マグロのカブト焼きっす!」 

 

楽(でっか!!こんなのウチで初めて出たぞ!?) 

 

鶫(…これほど斬新で豪快な料理があるとは;) 

 

竜「本当は一番最初に坊ちゃんたちに食べてもらう予定だったんすけど、他の奴がすぐに手出しちまったもんで…」 

 

竜「けど!1番美味い所はちゃんと残ってるんで、是非召し上がってくだせぇ!」 

 

 

<アニキー!ソロソロサケダシテモイインジャナイッスカー? 

 

 

竜「おう!すぐに準備せい! …というわけで、あっしはここで失礼いたしやす!」 

 

楽「お、おう…(どういうわけだよ!)」 

 

鶫「あ、ありがとうございます…」 

 

楽(つーか食えって言われても、どこから手つければいいか分かんねぇよ;) 

 

鶫(美味しいと勧められてしまったが、この見た目からして不安を拭えない…) 

 

 

「「…………」」 

 

 

楽「なぁ、鶫」 

 

鶫「なんだ、一条楽?」 

 

楽「俺、実はこういう料理を前にするのも、実際に食うのも初めてなんだ」 

 

鶫「奇遇だな、私も初めてだ」 

 

 

<サケダー! 

 

<ノマセロー!! 

 

<ダマラッシャイ!!! 

 

<ヘ、ヘイ… 

 

 

楽「みんな酒に夢中になってるな」 

 

鶫「ああ、そうだな」 

 

楽「その間にもう食べたってことにしないか?」 

 

鶫「奇遇だな、私も同じことを考えていた」 

 

楽「!? ま、マジか…。すぐに断られると思ったんだけど」 

 

鶫「勘違いするな。私自身、得体のしれないものを迂闊に口にしたくないだけだ」 

 

楽「得体のしれないって…; みんな『美味い』って言ってたから多分大丈夫だろ?」 

 

鶫「それなら貴様が先に食べればいいだろう。なのになぜ食べたことにしようと提案した?」 

 

楽「そ、それは…あいつらが大人だから美味いと感じてて、まだ俺には美味さが分からねーかと思ったからで…」 

 

鶫「…そうか、そういう逃げ方もあったか」 

 

楽「逃げ方って言うなよ!?つーかお前も最初から…」 

 

鶫「!? そ、そんなことよりコレはどうする!?さすがにそのまま残しておくとバレるぞ?」 

 

楽「心配すんな。しばらくすりゃ竜たちは酔っちまうから、変に怪しむことはないと思うぜ」 

 

鶫「念のために、身を少し減らしたおいた方が良いのでは?」 

 

楽「なるほど…。よし、適当なところを箸で取り除いて……」ツマミ 

 

鶫「早く済ませておく必要がある。私も加勢を……」ツマミ 

 

 

ガラッ 

 

 

楽の父「わりぃわりぃ、知り合いからの飲みに行く誘いを断るのに時間かかっちまったぜ;」 

 

楽(お、親父ぃーーーーー!?)ココニイナイトオモッタラ… 

 

竜「親父!先に宴を始めさせてもらい感謝いたしやす!!」シュバッ 

 

楽の父「これは楽の為のモンだろう?俺の事は気にしなくていいんだよ」 

 

楽の父「! ほう、こいつは良いモン食ってんじゃねーか」 

 

楽・鶫「っ!」ギクッ 

 

竜「今日の夕方獲れたマグロでさあ!相当な美味ですぜ!」 

 

竜「あっ!坊ちゃんたちは今召し上がるところで?」 

 

楽「い、いや……もう…とっくに食べちまってな…」 

 

竜「? お2人とも、今さっき箸で取ったばかりじゃないんすか?」 

 

楽(しまったぁーっ!誤魔化そうと思って箸で身を取り始めたところだった!) 

 

楽(しかも全然酔いが回ってないし、これじゃ絶対誤魔化せねぇ!) 

 

鶫「ち、違うんです…」 

 

楽(!) 

 

鶫「い…一条さんは、『まだ食べていない』と本当のことを言ったら、竜さんが傷つくのではないかと思って嘘をついたんですよ」 

 

竜「! そ、そうだったんすか坊ちゃん!?」 

 

楽「え? ま、まぁ…そう……そうなんだよ!」 

 

竜「そこまであっしの事を気遣ってくれるとは……さすが坊ちゃん!!」ブワッ 

 

楽「お前はいい加減泣くなよ!」 

 

楽(鶫、フォローサンキューな!)グッ! b 

 

鶫(なに、2人とも助かるためだ。これくらいのこと――)グッ! b 

 

竜「グスッ……っと、失礼。しかし!これは坊ちゃんを喜ばせようと思って作ったもの!」 

 

竜「あっしとしては、坊ちゃんに今すぐ召し上がっていただきたい!そして、今ここでご感想を聞かせてくだせぇ!」 

 

楽(あ、詰んだ) 

 

楽「……」チラッ 

 

鶫(……すまない、これ以上はさすがに無理だ) 

 

楽「」 

 

竜「あと…せっかくなんで、嬢ちゃんもそれを召し上がったら、感想を聞かせてほしいなー…と思ってるんすけど…?」 

 

鶫(あ、私も詰んだ) 

 

楽の父「そうだな。俺も楽たちがどんな反応をするか見てから食わせてもらうぜ」 

 

楽(そしてこの親父は余計な事を……! #) 

 

楽・鶫((…………)) 

 

楽(覚悟を決めるか…) 

 

鶫(ああ、もう逃げ道はない) 

 

楽・鶫((いくぞ!!)) 

 

楽・鶫((うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!)) 

 

 

パクッ 

 

 

楽「……」 

 

鶫「……」 

 

竜「……」 

 

楽の父「……」 

 

楽「う、うめぇ……」 

 

鶫「……今までに食べた事ない、とても良い味です…」 

 

竜「な…な…」 

 

楽・鶫「?」 

 

竜「な゛ん゛と゛い゛う゛あ゛り゛か゛た゛き゛お゛こ゛と゛は゛~~~!!!」 

 

楽「……」 

 

鶫「……」 

 

楽の父「ほう、相当美味いみてぇだな。どれ、俺も向こうで一杯やってる奴らと食うとすっか」 

 

楽の父「おい竜、泣いてねぇで俺の分も用意してくれ」 

 

竜「へ、へい……ただいま……」グスッ 

 

楽(泣きすぎててなんか反応する気も起きねえ…;) 

 

鶫(今度お嬢に作ってさしあげるか…)モグモグ 

 

 

~十数分後~ 

 

ヴオー!ヌオー!グオオー! 

 

 

鶫(先ほど一悶着あって忘れていたが……) 

 

楽「お前らー!あんま飲みすぎんなよー!」モグモグ 

 

鶫(また言うタイミングを逃してしまったー!!) 

 

鶫(というかここまで時間が経ってしまったら、食べてもらうものも完全に冷めてしまってるではないか!) 

 

鶫(何をやっているんだ私は…余計言いにくくなってしまったぞ…)ハア… 

 

楽「? 鶫? ため息ついてどうしたんだ?」 

 

鶫「なっ、なんでもない!ちょっと席を外すぞ!」ガタッ 

 

楽「え? お、おう…」 

 

 

ガララッ   バタンッ 

 

 

楽「……」 

 

 

~廊下~ 

 

鶫「なんで私はあんなことをすぐ口に出せないんだ!?」 

 

鶫「ただ食べてもらうだけなのに!食べてどう思ったかを聞くだけなのにどうして!!」 

 

鶫「どうして―――」 

 

楽『そ、そうそう!結局あいつとは今日、体育の後に顔合わせられなかったからなー!』 

 

楽『ハニーが来てくれれば、多分…いや絶対!すぐに立ち直れたのに!』 

 

楽『まぁ、向こうも急ぎの用だったからしょうがねぇよな。あーあ、俺も誘ってほしかったぜ』 

 

楽『ついでにそこへ集まった人たちに、俺たちのラブラブっぷりでも見せつけて……これはさすがに恥ずかしいか;』 

 

楽『こ、こっちも今日は宴会だけど…あ、そうだ!千棘はこっちの方が新鮮で楽しめるんじゃねぇかな!?』 

 

楽『ま、まぁハニーと一緒だったら、俺はなんでも楽しめるからな!!』 

 

鶫「……」 

 

鶫(考えてみれば、今の私は何をやっているんだ) 

 

鶫(その時の感情に振り回されて、朝から他の方々に迷惑をかけ続けて…) 

 

鶫(一条楽にも、学校にいる時だけでなく家にも押しかけるような事をしてしまった) 

 

鶫(そして、お嬢の恋人であるあいつに……なぜ私を気にかけてほしいと思っているんだ?) 

 

鶫(……) 

 

鶫「……集英組のボスからの頼みを断るわけにはいかない」 

 

鶫「しかし余計な事は聞かないべきだな。奴とは先ほどのような他愛もない会話を続けていればいいんだ」 

 

楽「鶫、大丈夫か?」ガラッ 

 

鶫「ぬわぁっ!?」ビクッ 

 

楽「うおっ!?部屋の前にいたのか!? …わりーな、驚かせちまって」 

 

鶫「い、いや…貴様に悪気があったわけではないからな」 

 

楽「悪気なんてあるわけねーだろ。 ……なあ」 

 

鶫「…?」 

 

楽「えっと、その……」 

 

鶫「なんだ一条楽。言いたいことがあるならハッキリと言え」 

 

楽「わ、分かったよ。えっと――」 

 

楽「鶫が、作ってくれた料理…すぐに食えなくて…悪かった……」 

 

鶫「なんだ、随分と口に出しづらい事かと思ったが、そんなことか――――― ――――――――は?」 

 

 

鶫「貴様、今なんと…」 

 

楽「だから…お前が作った料理、さっきまで全然食わなくて悪かったって…」 

 

鶫「いつ作ったものを?」 

 

楽「…今やってる宴会の準備の時に」 

 

鶫「何の料理を?」 

 

楽「…肉じゃがを」 

 

鶫「いつ分かった?」 

 

楽「…鶫が、時々俺の方に視線向けてた時、から」 

 

鶫「……」 

 

楽「……」 

 

鶫「はあああああああああああああああああああ!?!?!?!?!?」 

 

楽「!?」ビクッ 

 

鶫「貴様ぁぁーーー!!なぜそこまで気づいていながら手をつけようともしなかったんだぁ!!? #」ガシィッ 

 

楽「ぐふぅっ!? そ、それには深い訳があって――」 

 

鶫「今すぐ吐け!!さもなければこのまま締め上げるぞ!! #」ギリギリ… 

 

楽「やめてくれ今すぐ言うマジでやめて全部言うからやめてくださいお願いします!!」 

 

鶫「……」パッ 

 

楽「ゲホ、ゲホッ…祝いの最中に死ぬなんて縁起でもねえ…」 

 

鶫「それで? 手をつけなかった理由はなんだ!?」 

 

楽「ま、まず……あんなに視線向けられてたら、なんかすげー食いづらくなっちまってな…」 

 

鶫「そ、そんな気になるほど見てはいないぞ!!」 

 

楽「お前はそう思ってるかもしんねーけどバレバレだったぞ; あれはチラ見どころかガン見だったな」 

 

鶫(そんなに分かりやすかったのか…)ズーン 

 

鶫「ま、待て!『まず』と言っているということは、他にも理由があるのか!?」 

 

楽「まあ……もう一つ、な」 

 

鶫「言ってみろ。言っておくが嘘は通じないからな」 

 

楽「嘘なんてつかねーよ。…その、なんだ……」 

 

楽「もし料理を食って、俺が褒めたとしても…お前は嫌がるんじゃないかと思って…」 

 

鶫「え…?」 

 

鶫「なぜ私が嫌がると思ったんだ?」 

 

楽「いや、俺が時々かわいいとか言ったり何かしら褒めたりしたら、思いっきり否定したり殴ったりするから…」 

 

鶫(…あ) 

 

楽『お――――なんだそのリボン。似合ってんじゃん。かわいいよ』 

 

鶫『…!!なっ…』 

 

鶫『かわいくなんてない…!! ///』 

 

楽『でも鶫だったらその気になりゃ、どんな奴でも手が届きそうな気がするけどな!』 

 

鶫『なっ…!! ///』カアアア 

 

鶫『貴様に何が分かるかーーー!!! #』 

 

ド カ ア ァ ァ ン !! 

 

楽『え~~!!? なんで~!!?』 

 

 

鶫(こいつと初めて会った頃から、私は今まで……) 

 

楽「さっきも褒めたのに『言われても嬉しくない』とか言ってたし…」 

 

楽「だから、さっきみてぇにに嫌がるんじゃないかって―――」 

 

鶫「ち、違うんだ!」 

 

楽「―――へ?」 

 

鶫「それは…貴様から褒められると反応に困るというか、突然口に出すから驚くというか…」 

 

鶫「私自身が、そんな風に言われるとは思ってなかったから…」 

 

鶫「そもそも貴様の言うタイミングがおかしいし、何故私が出るのか分からない時もあるし…」 

 

楽「なんかハッキリしねぇ…つーかやっぱり俺が悪い感じに聞こえるんだけど;」 

 

鶫「と、とにかく!」 

 

楽「!」 

 

鶫「本当は…その…」 

 

鶫「褒められる事、自体は……嬉しい…ぞ… ///」 

 

楽「そ、そうなのか?」 

 

鶫「あ、ああ… ///」 

 

楽「じゃあ…なんで褒めた時に俺を殴ったりするんだよ?」 

 

鶫「うっ、それは…いわゆる……」 

 

楽「いわゆる…?」 

 

鶫「―――――照れ隠し…」 

 

楽「ああ!なるほどー!照れ隠しかーそうかそうかー」 

 

楽「――って、そんなバイオレンスな照れ隠しがあってたまるかぁーーーーーっ!!」 

 

鶫「う、うるさい!さっき言っただろう!?反応に困ると!」 

 

楽「反応に困るからって殴んなよ!殴っちまうとしてももっと手加減してくれ!」ボウリョクハンタイ! 

 

鶫「そ、そうだな…、私の行動は明らかに間違っていた……;」 

 

鶫「迷惑をかけてしまって……本当に、すまなかった……」 

 

楽「い、いや…これから気を付けてくれればいいって;」 

 

鶫「……善処する…」 

 

鶫(非があるのは私自身なのに、どうして一条楽に対してムキになってしまうんだ…) 

 

鶫(今日一日態度を改めるはずが、これではほとんど変わらないじゃないか!!) 

 

楽(さすがに今のは、強く言い過ぎちまったかな…) 

 

楽(こっちが痛い思いしてるとはいえ、今までの事を『本当は嬉しい』って本心を言ってくれたのに;) 

 

楽「………」 

 

鶫「………」 

 

楽「そ、そろそろ戻ろうぜ!長く席外してると竜たちが心配するだろうし…;」 

 

鶫「―――もう少し、」 

 

楽「え?」 

 

鶫「もう少しだけ、私のわがままに付き合ってくれないか?」 

 

楽「…まぁ、あいつらも飲んでるし、少しぐらいなら大丈夫か」 

 

鶫「……ついてきてくれ」 

 

 

調理場 

 

 

楽「――それで、ここに何の用があるんだ?」 

 

鶫「……改めて、食べてもらおうかと思って…」 

 

楽「何を――って、最初のその話から大分脱線してたな…」 

 

楽「でも、それなら戻って食った方が良いんじゃねぇか?」 

 

鶫「さすがに冷めたものを食べさせるわけにはいかないだろう」 

 

 

カチッ  ボッ 

 

 

楽「つーか、宴会始まるまで居なかったのはこれ作ってたからか」 

 

鶫「招待されたとはいえ、何か手伝った方が良いと思ってな」 

 

楽「………」 

 

鶫「どうした?」 

 

楽「いや、実は食わなかった理由が他にもあって――」 

 

鶫「安心しろ、毒など入っていない」 

 

楽「言ってないのになんで分かった!?」 

 

鶫「私と貴様の本来の立場を考えればすぐに分かるさ」 

 

楽「そ、そうだよな……」 

 

鶫「まあ、最初に会った時ならためらわず入れているだろうな」 

 

楽「それ俺にとっては冗談にならねぇから;」 

 

楽(…って、『最初に会った時なら』? それじゃ今は…?) 

 

鶫「さて、これで温まったはずだ」 

 

楽「おお…美味そう…。さて、箸は……」カチャ 

 

鶫「………」 

 

楽「よし、それじゃ早速頂くと――」 

 

鶫「一条楽、その箸を貸してほしい」 

 

楽「は?なんで急に」 

 

鶫「いいから貸してくれ」 

 

楽「?……ほい」 

 

鶫「ん……」 

 

鶫「……」フー フー 

 

楽(ああ…温まってるかどうか確認したかったのか) 

 

 

スッ… 

 

楽「?」 

 

鶫「あ……あーん ///」 

 

楽「」 

 

楽「鶫、お前急にどうしちまったんだ!?」 

 

鶫「う、うるさい!私がこんなことしておかしいか!? ///」 

 

楽「おかしいと思うっての!普段のお前からしたら絶対やらなそうなことだし…」 

 

鶫「いいから!食べるのか、食べないのか!?」 

 

楽「そりゃ…た、食べるけど……」 

 

鶫「それなら…早くしろ…」 

 

楽「お、おう…」 

 

鶫「……///」 

 

楽「あ、あーん……///」 

 

 

パクッ 

 

 

楽「……」モグモグ 

 

鶫「ど、どうだ?」 

 

楽「……美味い、スゲー美味い…!」 

 

楽「前食った肉じゃがより美味くなってるぜ!毎日食べたいくらいだ!」 

 

鶫「!」 

 

楽(しまった!さっきの話で『反応に困る』って言ってたじゃねえか!!) 

 

楽(つーかそのライン全然分かんねえよ!どういう状況でどこまで言うのがOKなんだよ!?) 

 

 

鶫「そ、そうか。そんなに、良かったのか… ///」 

 

楽(――あれ?今までと違う反応…?) 

 

鶫「ありがとう、そこまで言ってくれるなんて…」 

 

鶫「とても…嬉しいよ… ///」 

 

楽「なっ!?お、俺は、食べてみて感じたことを口に出しただけで… ///」 

 

楽「それより、さっきからどうしたんだよ?食べさせてきたり、素直に礼言ったりして… ///」 

 

鶫「…礼を言ったのは、さっきの話を聞いて、殴らないようにしようと思ったからだ」 

 

楽(……あの話、意外と気にしてくれてたんだな) 

 

鶫「た、食べさせようとしたのは―――」 

 

鶫(私が、貴様に食べさせたかったから……なんて、目の前で言えるわけないだろおおぉーーーっ!! ///) 

 

楽「したのは…?」 

 

鶫「――――そ、そう!今日一日貴様への態度を改めると言っただろう!その一環だ!!」 

 

楽「いや、だからってあそこまでする必要はねぇだろ!?」 

 

鶫「何を言う!貴様はお嬢の恋人だろう? もし二人が結婚するとなれば私も――」 

 

鶫「………」 

 

楽「……?」 

 

鶫「のおおおおおおおおーーーーーーーーっ!!!! ///」ブンッ ガシャーン! 

 

楽「食器がぁーーーっ!?」 

 

鶫(私がお仕えしているお嬢がもし一条楽と結婚したら、私は一条楽にも仕えるということに……! ///) 

 

楽「今度はどうした!?」 

 

鶫「な、何でもない!本当に何でもないぞ!」 

 

楽「そ、そうか…; とりあえず、割れた食器を早く片づけねーと…」 

 

鶫「! すまない…。 私が全部処理して、後日弁償を…!」 

 

楽「いいって別に。俺も手伝うし、弁償しなくても大丈夫だよ。あ、新聞紙取りに行くわ」 

 

鶫「し、しかし…」 

 

鶫(また、迷惑をかけてしまった…) 

 

 

~数分後~ 

 

 

楽「―――さて、片づけも済んだし、さすがにそろそろ戻らねえとな」 

 

鶫「………」 

 

楽「鶫?」 

 

鶫「っ! あ、ああ。余計な時間を取らせてしまったな…」 

 

楽「……なあ鶫」 

 

鶫「な、なんだ?」 

 

楽「今日はもう、難しい事は考えなくていいと思うぜ?」 

 

鶫「…は?」 

 

楽「いや、今日は学校で怪我したから、放課後の任務を休ませてもらってるんだろ?」 

 

楽「お前は千棘の事をスゲー大事に思ってるけど、アイツだってお前のことを気遣って休ませてくれたんだしさ…」 

 

鶫「!」 

 

楽「千棘の方はあのメガn…クロードに任せて、お前はゆっくり休んだ方がいいって」 

 

楽「まあ、親父が変な頼み事しちまってそんなに休めてねえかもだけど;」 

 

鶫「……そうだな。私も気を張りすぎていたのかもしれない」 

 

鶫「貴様の言うとおり、今日はお嬢のご好意を素直に受け取らねばな」 

 

楽「――よし!そんじゃ、早く戻ろうぜ!」 

 

鶫「ああ」 

 

 

タッタッ… 

 

 

鶫「一条楽」 

 

楽「ん?なんだ?」 

 

鶫「今の私は、貴様に迷惑をかけていないだろうか?」 

 

楽「…お前が考えてるほど、迷惑なんかじゃねぇよ。むしろ、今日退屈しねぇのは鶫のおかげだと思ってるぜ?」 

 

鶫「そうか…」 

 

鶫「―――私のおかげ、か…」 

 

楽「なんか言ったか?」 

 

鶫「いや、何でもない。―――ふふっ」 

 

楽「?」 

 

 

~広間~ 

 

 

楽「わりぃ!大分席外しちまってたな!」 

 

竜「あ~、ぉかえりなせぇおふたりしゃあ~ん」フラフラ 

 

楽「うぐっ!酒くせっ!!」 

 

鶫「うっ!」 

 

楽「竜、お前スゲー量飲んでるだろ!」 

 

竜「へぇ?ぃゃぃゃ、そんなに飲んでいやせんょぉ~」 

 

楽「さっきから呂律回ってねえからな!?」 

 

ヤクザ1「ああお帰りなさい坊ちゃん。竜の兄貴なんですが、坊ちゃんが戻ってこないと言ってずっと飲んでいやして…」 

 

ヤクザ2「このまま酔い潰れるかと思ったら、急に『戻ってくるまで待つ』とか言い出して今こんなことに…」 

 

竜「ょっしゃ~~、坊ちゃん達も戻ってきたことだし、全員でのみなぉすぞぉ~~」 

 

楽「……親父は?」 

 

 

<おやじー、坊ちゃんが呼んでますよー 

 

<オウ、イマイクゼ 

 

 

楽の父「――で、どうした楽?」 

 

楽「広間、ちょっと水浸しにしても大丈夫か?」 

 

楽の父「ああ『アレ』か。怪我しない程度に頼むぜ」 

 

鶫(…『アレ』?) 

 

竜「――へっくしょい! …というわけで、そろそろ組員の出し物披露としゃれ込むかぁ!」ズブヌレ 

 

「「「「「おおおおおおおおーーーーーーっ!!」」」」」 

 

 

楽「………」モグモグ 

 

鶫「―――1つ聞きたい。『アレ』もいつもの事なのか?」 

 

楽「いや、普段は飲みすぎないよう注意してるから、いわゆる奥の手だ」 

 

鶫「そ、そうか…;」 

 

鶫(何事もなかったかのように再開しているが、そんなに酷いのか…?) 

 

 

―出し物披露― 

 

 

ヤクザB「すんません坊ちゃん…。あれからずっと練習してきたんすけど…」グスッ 

 

楽「いいって。また次の機会があるから、その時に成功させりゃいいからさ」 

 

ヤクザB「は、はい!ありがとうごぜえやす!!」ガシッ 

 

楽「ちょ、お前の手すごいヌルヌルするんだけど;」 

 

ヤクザD「どうっすか!この動物たちと一緒に練習した俺の曲芸は!?」 

 

楽「可愛いなあ…」 

 

鶫「ああ、すごく可愛い…」 

 

ヤクザD「あのー、芸の方は…?」 

 

ヤクザA「でもこいつら、一体どこから連れてきたんだよ?」 

 

 

ニャーニャー  ワン!ワン!  ピョピョピョ 

 

 

ヤクザD「連れてきたっつーか、なんか勝手についてきちまったみたいで…」 

 

楽(チクショウうらやましい) 

 

ヤクザD「知り合いに空き地貸してもらって、そこで飼ってたんすけど、実は最近都合が悪くなって…」 

 

竜「じゃあこいつらは一体どうs――」 

 

楽「俺たちの学校で飼う!」 

 

鶫「賛成!!」 

 

竜「よし解決!!!」 

 

ヤクザD「え…えっと…あ、ありがとうございます!」 

 

竜「さあ坊ちゃん!そろそろいつものヤツ、お願いしやす!!」 

 

楽「お、もう俺の番か」 

 

 

<イヨッ!マッテマシタ! 

 

<ミンナー!ジュンヒバデキテルカー! 

 

<メシクッテルバアジャネェ 

 

 

鶫(なんだ?『いつものヤツ』? 一条楽がそれほど得意とする芸でもあるのか…?) 

 

 

~♪ ~~~♪ ~~♪ 

 

 

<ヒューヒュー! 

 

<イツキイテモサイコーッス! 

 

<イヨッ!ミライノサブチャン! 

 

 

鶫(……コイツ、歌上手かったのか…) 

 

※演歌限定 

 

 

楽「―――ふぅ、今日一日の疲れが全部吹っ飛んだ気がするぜ」 

 

鶫「……こんな長所があるとは想像もつかなかったな」 

 

楽「そうなのか?」 

 

鶫「ああ」ベツノイミデナ… 

 

 

竜「さーて、そろそろお開きとする―――その前に!!」 

 

楽・鶫「?」 

 

竜「今日特別にお越しになってる坊ちゃんのご友人…鶫誠士郎ちゃんにも何か披露してもらおうと思うんだが…お前らはどう思う!?」 

 

 

<サンセイ! 

 

<ダイサンセイ!! 

 

<ミテミタイッス! 

 

 

竜「それじゃ、今ここで披露してもらいやしょおおおーーー!!」 

 

 

「「「「「おおおおおーーーーーっ!!」」」」」 

 

 

楽「……;」チラッ 

 

鶫「」 

 

竜「そんじゃ、早速だけど―――」 

 

鶫「ち、ちょっと一条…さんとお話しする時間を下さい」グイッ 

 

竜「え? …ああ、どうぞ」 

 

楽「え?」ズルズル 

 

鶫(どういうことだ一条楽!私はそんな話聞いてないぞ!)ヒソヒソ 

 

楽(悪い…あいつらヒートアップすると時々余計なおせっかいとかしちまうんだよ;)ヒソヒソ 

 

鶫(おせっかいで客人に無茶振りするか普通!?)ヒソヒソ 

 

楽(悪気はないんだ…。お前にも楽しんでもらおうと思ってああ言ったんだろうし;) 

 

楽(ちょっとだけで良いから、ウチの余興に付き合ってくれないか?) 

 

鶫(む、無理だ!!こういう場で人を楽しませる類の特技なんて持ってないし…) 

 

楽(この際普通のことでも何でもいいから!―――そうだ、歌だ!) 

 

鶫(歌?) 

 

楽(ああ。歌なら余程のことでもない限り盛り上がるし、一通り歌えばすぐに終わる!) 

 

鶫(……そういうものなのか) 

 

楽(こうしてワイワイやってる時ほど、歌で失敗するなんてことは無いからな。それで頼む!) 

 

鶫(わ、分かった…。これ以上の得策も浮かばないだろうし、すぐに済ませたいしな;) 

 

竜「―――さあ!ご本人の準備が出来たようなので、歌っていただきやしょう!」 

 

 

パチパチパチパチ… 

 

 

鶫(本当に大丈夫なのだろうか…。うう、今になって緊張が ///) 

 

竜「それでは、ミュージックスタート!!」 

 

鶫(ええい、もうヤケだ!当たって砕けろ!!) 

 

鶫「――――!」 

 

 

鶫「ふぅ…」 

 

鶫(お、終わった…) 

 

 

楽「………」 

 

竜「………」 

 

ヤクザ達「「「………」」」 

 

楽の父「――ったく、まさかこんな時間に電話が来るたぁ思わなかったぜ」ガラッ 

 

楽の父「まあ話は宴会の後で…って、一体なんでぇこの静けさは?」 

 

 

鶫「あ、あの…」 

 

楽「なんか…あたり一面に綺麗な花畑が咲いてて、そこからさわやかな風が吹いていたような…」 

 

鶫「―――へ?」 

 

 

 

ポーラ「ただいまー」ガチャ 

 

ポーラ「あーあ、やっと学校から開放されたわ…」 

 

ポーラ「まったく…どうして学校に抜き打ちテストなんていうものがあるのかしら?」スタスタ 

 

ポーラ「おかげで点数が悪いからって追試くらうわ基準点取れるまで学校に残されるわで散々よ…」ドサッ 

 

ポーラ「というわけで~なんか甘いもの作りなさいよ黒虎~」 

 

 

シーン… 

 

 

ポーラ「………」 

 

ポーラ「黒虎?まさかまだ帰ってきてないの?」 

 

ポーラ(でも黒虎の学校の鞄はここにある…。一度は家に戻ってきて、買い物にでも出かけたか…) 

 

ポーラ「―――って、もうすぐ夕食の時間じゃない!買い物でこれは長すぎるでしょうが!!」 

 

ポーラ「も~、連絡もなしにどんだけ時間かけてんのよ…。私疲れてお腹減ってるのに…」 

 

ポーラ「……!」ピーン 

 

ポーラ「黒虎から連絡もないしー、これじゃいつ帰ってくるかも分からないわよねー」 

 

ポーラ「仕方ないわねー待ってる間クッキーやアイスでも食べて待ってますかー♪」 

 

ポーラ「いつもは『ご飯の前にお菓子なんて食べるんじゃない』とか言ってくる小言のうるさい奴も居ないし、思う存分食べられるわ~♪」 

 

ポーラ「えーっと、確かクッキーはこの棚の奥に―――」ゴソゴソ 

 

 

ブゥゥン…ブゥゥン… 

 

 

ポーラ「ん?電話?こんな忙しいときに一体誰が…」 

 

ポーラ「…黒虎から?多分いつ帰ってくるかの連絡ね」ピッ 

 

ポーラ「もしもし?あんた今どこにいるの?……なんかいつもより歯切れ悪いじゃない…」 

 

ポーラ「まぁいいわ…。それで、いつ帰ってくるの?……え?すぐには帰れない?」 

 

ポーラ「………ふーん。そうなると食事は私が自分で作らなきゃいけないのね」 

 

ポーラ「心配いらないわ。近くのスーパーで惣菜でも買えば済むk―――え?」 

 

ポーラ「いや、別に私が作る必要なんて……え!?お風呂!?……」 

 

ポーラ「ち、ちょっと黒虎、一旦止めて私の話を………………」 

 

ポーラ「………それを聞いて『はいわかりました』って素直に動くと思う? ♯」 

 

ポーラ「居候の身とはいえ、そこまで指図される筋合いはないわよ!料理や風呂はまだ良いとして、それ以外は私の自由でしょ!?」 

 

ポーラ「………はあぁぁぁ!!?」 

 

ポーラ「アンタは私の保護者か!何だよ家事できるからって母親面しやがって!」 

 

ポーラ「~~っ!ちくしょう!やればいいんだろやれば!?」 

 

ポーラ「やってやるよこのデカ乳主婦がぁ!絶対仕返ししてやるから覚えてろよぉ!!(泣)」 

 

 

ブツッ ツー…ツー… 

 

 

ポーラ「うぅ…ライバルに主導権握られるなんて屈辱…」グスッ 

 

ポーラ「………………」 

 

ポーラ「……外の空気でも吸ってこようかしら」スクッ 

 

 

~~外~~ 

 

 

ポーラ「――まぁ、余計な事をして楽しみを奪われるよりは、大人しく従ってた方が良いわね」 

 

ポーラ「とりあえず、作れと言われた野菜をどうにかして食べずに処理する方法を考えなきゃ…」 

 

ポーラ「生ゴミで捨てたら後ですぐバレるから、すり潰して土にでも埋めるとか…?」 

 

ポーラ「知ってる人間におすそ分けと見せかけて全部譲るって方法もあるわね。ただ口の堅い人間じゃないと後が怖いか…;」 

 

ポーラ「それに、確か『ご飯中にお菓子は食うな』とは一言も言ってないから、少しくらい食べても問題は……ん?」 

 

ポーラ「何あれ?数人がかりでなにかを運んでるようだけど…」 

 

ポーラ「………いや、まさかそんな、ねぇ…」 

 

ポーラ「うわっ!でかっ!!」 

 

ポーラ(てゆうかこの魚デカすぎでしょ!?日本人ってみんなこういうのが好きなの!?) 

 

ヤクザ5「はっはっは!驚いたか嬢ちゃん?悪いがこいつは客人を招いての宴会用だから、分けてくれっつっても無理な話だぜ?」 

 

ポーラ「そこまでひもじい思いはしてないわよ。…ところで、客人って?」 

 

ヤクザ5「ああ、うちに坊ちゃんのお友達が来ててな。どうやら男っぽい格好した女の子らしいが…それがどうした?」 

 

ポーラ「……!あら、その子って確か―――」 

 

 

ヤクザ達「「「ええぇーーーーーっ!?そ、そうだったんすかぁーーーっ!?」」」 

 

ポーラ「本当よ。本人たちはバレると恥ずかしいからって大勢には言ってないみたいだけど」 

 

ヤクザ5「そんな情報聞いたら、ここで時間食ってる暇なんてねぇ!急いでこいつらを届ねえと…!」 

 

ヤクザ6「よぉーし!屋敷まで全力で走るぞおおぉーーーっ!!」 

 

「「「おおおおおおおおおおぉーーーーーーーーーーっ!!!」」」 

 

 

ドドドドドドドドドドドド… 

 

 

ポーラ「……さて、黒虎に軽い仕返しも済んだことだし、帰ってご飯にでもしようかしら」 

 

ポーラ「その後は…まぁその時になって考えればいいか」スタスタ 

 

 

~宴会お開き~ 

 

 

ガヤガヤ… 

 

<マダタクサンアマッテル… モグモグ 

 

<クイイジノハッタヤツメ 

 

<オメーハハヤクサラアライシロ! 

 

<ヨイガアサクテテアイテルヤツハネルジュンビジャー! 

 

 

鶫「つ、疲れた…」 

 

楽「わりーな。結局宴会中は休めなくなっちまって…」 

 

鶫「いや、最後の歌の時は除くとして、怪我のことも忘れるくらいには息抜きできた」 

 

楽「そっか。良かったな」 

 

鶫「貴様のあの一言のおかげだ」 

 

楽「ああ、『今日はもう難しい事は考えなくていい』ってやつか?」 

 

鶫「……まあ、貴様がそうだと思うならそうなのだろう」 

 

楽「(…?)つーか、怪我は今どうなんだ?朝痛がってた割に今は全然そう見えねーんだけど…」 

 

鶫「ああ、今は鎮痛剤で抑えている。本当は必要ないのだが、今日1日はと念押しされてしまってな」 

 

楽「…薬が必要かどうか、個人が決められるほど浅い傷じゃねーだろ;」 

 

鶫「この痛みを耐える忍耐力が無ければ、いざという時任務に支障をきたしてしまうと考えたんだがな…」 

 

楽(それは忍耐というよりやせ我慢だ!) 

 

楽「…それで、その薬っていつ飲んだんだ?」 

 

鶫「ここに来る前に一度服用した。寝る時間には効いているだろうし、予備も持ってきてある」 

 

楽「…ならいいけどよ…」 

 

鶫「なぜ貴様が心配する?」 

 

楽「いや、怪我人なんだからそりゃ心配するっての。」 

 

鶫「……そうか」 

 

鶫(…なぜ先ほどの一条楽の返答に少し残念だと思ったんだ、私は…?) 

 

楽「そういや、鶫はこの後どうするんだ?」 

 

鶫「この後?」 

 

楽「もう今日は遅いだろ?今日っつーか、もう12時すぎちまってるけど…」 

 

楽「明日は学校も休みなんだし、……泊まってくか?」 

 

鶫「……いや、もう少ししたら家に帰る予定だ。ポーラがどうしているか不安だからな」 

 

楽「ああ、そうだったな…;」 

 

鶫「もし電話通りの事が出来ていなかったら、勉強時間などを設けて習慣化させなければ…」ゴゴゴゴゴ 

 

楽「マジで母親みてーだな」ボソッ 

 

鶫「なにか言ったか?」 

 

楽「いやー、別に何も?」 

 

竜「おっと、お二人ともここにいらしたんですか」 

 

楽「ん?どうした竜?」 

 

竜「実はさっきの宴会中、ウチに電話がかかってきたんすけど…」 

 

楽「電話?」 

 

竜「親父が出てほしいと言ってたようで、親父が代わって話を聞いたところ―――」 

 

 

楽の父『ああ、嬢ちゃんなら今ウチに来てるが、それがどうかしたのか?』 

 

楽の父『……嬢ちゃんを泊めてほしい?アンタあの嬢ちゃんの何だってんだい?』 

 

楽の父『―――――なるほど。だけどそれを本人に確認しなくても良いのか?』 

 

楽の父『え?もう伝えてある?嬢ちゃんからの返事は?』 

 

楽の父『……ま、お宅の事情には深くつっこまないでおくか。分かった、うちに泊めてやろう』 

 

楽の父『……あいつも隅に置けねえ奴だな』ニヒヒ 

 

 

竜「――って、『ほわいとふぁんぐ』とか言う女の子から、『同居人を泊めてほしい』と電話が…」 

 

楽・鶫(ま た ポ ー ラ か) 

 

鶫「ま、待ってください!私は確認なんて知りませんよ!?」 

 

竜「なんか、『メールで確認を取った』と言ってたらしくて…」 

 

鶫(メール!?)ピッ 

 

 

---------------------------- 

     〇月×日pm 11 : 52 

 

From : ポーラ 

 

 

坊やの家に泊まれ 

そして一緒に寝ろ 

 

あわよくばキスでも 

○○でもいいからなんでもしろ 

 

---------------------------- 

 

 

鶫(いつの間にこんなものを…!)ダシモノヒロウノトキカ… 

 

竜「それで、もう返事が来てるから大丈夫だと…」 

 

鶫「私はそもそも返信なんてした覚えは――」 

 

楽の父「ああ、その話か」 

 

楽「親父!なんですぐに言わなかったんだよ!?」 

 

楽の父「オメーらが楽しんでる最中に話すのは良くねえと思ってな…それと返事については――」 

 

ポーラ『そっそれは、えーっと…私たちのルールでは、1分以内に返事が来ないときは『了解』を意味してるの!』 

 

楽の父「――とか言ってたから、とりあえずウチに泊めるって言っといたんだが…」 

 

鶫「そんなデタラメなルール、聞いたことも作ったこともありません!!」 

 

楽(また適当な言い訳を…;) 

 

楽「――つーか、泊める!?鶫を!?」 

 

楽の父「ああ、そうするって今言ったじゃねえか」 

 

楽の父(まあ実は俺が頼み事したとき、ここに泊まるんじゃねえかと思って軽く準備してたんだがな)ヒソヒソ 

 

楽(『実は』じゃねーよ!高校に入ってから余計な事情ばっか持ってきやがって!)ヒソヒソ 

 

楽の父(今のうちに色々と経験しといた方が、これから良い人生歩めるかもしれねぇぜ?)ヒソヒソ 

 

楽(無茶苦茶な経験させといて何言ってんだ!! #)ヒソヒソ 

 

楽の父(…と、まあその話は置いといて) 

 

楽(置くなよ!!! #) 

 

楽の父「とりあえず、いま一度嬢ちゃんに確認するぜ?ウチに泊まるか、それとも自分ちに帰るか、な」 

 

鶫「……」 

 

楽「別に帰ってもいいんだぜ?そもそも本人の意志を無視して無理矢理泊めさせるなんて、おかしい話だろ」 

 

鶫「…………」 

 

鶫「泊まっていく」 

 

楽「な?そうだよな?お前がウチに泊まるだなんて絶対―――」 

 

楽「え?」 

 

鶫「今晩は、この家に……泊まらせてください…」 

 

楽「え……ええええええええええーーーーーっ!!??」 

 

楽の父「おおそうかそうか、遠慮しねぇで明日までゆっくりしていきな」 

 

楽の父「さて、話もついたことだし、俺もそろそろ横になるか」 

 

竜「お休みなさい、親父!」 

 

 

ヤクザ達「「「お休みなさい!」」」 

 

 

楽「お休み…じゃなくて!!鶫、お前本当に泊まるのか!?」 

 

鶫「本当だ。しかし、なぜ私が泊まると言ってそこまで驚く必要がある?」 

 

楽「いや、さっきまでは帰るって言ってただろ!」 

 

鶫「私の気が変わっただけだ。それとも、私がこの家で一晩過ごす事が、貴様にとって何か不都合でも?」 

 

楽「べ、別にそういうわけじゃねーよ…泊まるなんて意外だったから」 

 

鶫「そんなに意外か?」 

 

楽「そりゃ、普段の俺に対する態度だったらありえねぇと、思って、な…」 

 

鶫「…まぁ…一理あるな…」 

 

楽(それに、これ以上否定すると千棘との関係とかで変に疑われそうだし、何も言わねぇ方がいいか…;) 

 

竜「お二人とも、さぞお疲れでしょう。片付けはあっしらに任せて、今夜はもうお休みなさってくだせえ」 

 

鶫「いえ、一泊するお礼として私もお手伝いを…」 

 

楽「ああ、俺も手伝うよ。準備の時は何もしてやれなかったし…」 

 

竜「いやいやいやいや!!無理に手伝わなくてもいいんすよ!?それに全部片づけると相当遅くなりますし…」 

 

楽「そうか?けど、食器運びくらいなら俺たちも手伝うぜ。他はみんなに任せるよ」 

 

竜「いいんすか?あっしらは助かりますが…」 

 

楽「いいって。俺なんて準備の時は何もしてなかったし」 

 

鶫「待て一条楽。先ほどの俺『たち』とは、まさか私も入っているのか…?」 

 

楽「? そうだけど、それがどうかしたか?」 

 

鶫「私は最後まで手伝うつもりだぞ。貴様のように柔ではないから、少し睡眠時間が削れても支障は無いからな」 

 

楽「お前怪我してるのに無茶すんなよ;そもそも手伝う事自体おかしいけど…」 

 

楽「それに、明日帰ってから千棘が心配するかもしれないだろ」 

 

鶫「むう…確かにお嬢に不安を与えてしまうのは良くないな…」 

 

楽「だろ?ほら、とっとと終わらせるぞ」カチャカチャ 

 

鶫「…仕方ないな」 

 

 

~数十分後~ 

 

 

楽「け、結構時間かかったな;」 

 

鶫「数もそうだが、広間にあんな散乱していたとは…」 

 

ヤクザA「すんませんでした…。しかも騒ぎ疲れて寝ちまった奴もいたもんで…」 

 

楽(茶碗を大事そうに抱えながら寝てたやつもいたからな)カイシュウシタケド 

 

ヤクザB「寝巻と布団の用意できやしたー!」 

 

楽「サンキュー。悪いけど、鶫を案内してやってくれ」 

 

ヤクザB「了解っす!そんじゃこちらへどうぞ」 

 

鶫「はい。皆さんもお忙しい中、ありがとうございます」 

 

ヤクザB「いやいや、お二人ともこんな時間まで手伝ってくれて助かりやした」ア、コッチデス 

 

鶫「それでは先に失礼するぞ、一条楽」 

 

楽「おう、お休み」 

 

鶫「! あ、ああ…///」 

 

楽「……?」 

 

 

< キガエモヨウイシテアルンデ… 

 

< ナルベクサイズガアエバイインデスガ… 

 

 

楽「気のせいか?なんか鶫の顔が赤くなってたような…」 

 

楽(まあ、今日は色々あったからな。体調崩してないかちょっと心配だけど) 

 

楽「…!」ブルッ 

 

楽「お茶飲みすぎたか…?ちょっとトイレに;」 

 

 

< ニモツハヘヤノオシイレニイレテクレレバイインデ 

 

< ワカリマシタ。…ン? 

 

 

ジャー バタン 

 

楽「ふー、スッキリした。さて、俺もそろそろ部屋に戻って――」 

 

 

ええええぇぇぇーーーーーーーーーーっ!? 

 

 

楽「!?」ビクッ 

 

楽「今の声…鶫か?向こうから声が聞こえたけど…」 

 

楽(あれ?確かこっちって…) 

 

 

~楽の部屋~ 

 

 

鶫「な ん で こんなことになっているんだぁぁぁーーーっ!!!」 

 

楽(やっぱり俺の部屋からだったか;それで、布団が2組あるってことは…) 

 

鶫「案内された先が貴様の部屋とは、一体どういう事だ一条楽!?」 

 

楽(ですよねー。嫌な予感はしてたけど) 

 

楽「いや、どういう事って言われても理由は1つしかねーだろ」 

 

鶫「こんなことに理由なんてあるわけ――――」 

 

鶫「他の部屋が物であふれて使えない」 

 

楽「正解」 

 

鶫「いや待て、一応横になれるスペースがあると言っていたから、私だけならそこで横になれば…」 

 

楽「何十分か居るくらいなら良いだろうけど、一晩はさすがに無理があるだろ」 

 

鶫「だ、大丈夫だ!あんな環境、私くらいになれば気にも留めないからな!」 

 

楽「寝てる時にあんな…山?から何か落ちてきたり、崩れてきたらどうすんだよ」 

 

鶫「た、たとえ寝ていてもすぐに察知して回避してみせるさ!だからもう…」 

 

楽「…お前、そんなにここで寝るのが嫌か?」 

 

鶫「あ、当たり前だろう!?男女が同じ部屋で寝るなど、何も起こらなかったとしても倫理的に問題があるだろう!」 

 

楽(あれ?そういう意味で言ってたのか?) 

 

楽「…いや、そうかもしんねーけど、そこまでして危険な場所に移動して怪我でもしたら…」 

 

鶫「え…?」 

 

楽「と、とにかくだ!同じ部屋で寝るのが嫌だって言うなら、俺が別の場所に移る!」 

 

鶫「はぁ!?ここは貴様の部屋だろ!?それに貴様が言うように、部屋にある物が落ちてきたらどうするんだ!?」 

 

楽「…お前がそれを心配してるなら、廊下で雑魚寝でもしてるよ」 

 

鶫「いや、しかし…」 

 

楽「つーか、珍しいな。鶫が俺の心配をするなんて」 

 

鶫「なっ!?そ、それはお嬢の恋人に怪我でもされたら色々と困るからであって個人的には… ///」 

 

楽「……?」 

 

鶫「…正直、心配している… ///」 

 

楽「……そ、そうか…」 

 

鶫「………」 

 

楽「………」 

 

楽(な、なんかまた変な空気になってる…;) 

 

楽「じ、じゃあ俺部屋出るから、今日はもう――」 

 

鶫「―――待て」 

 

楽「え?」 

 

鶫「……さっきはああ言っていたが………」 

 

鶫「貴様が良ければ、一緒の部屋で寝ても……」 

 

鶫「私は…構わないぞ…… ///」 

 

楽「なっ… ///」 

 

鶫「……… ///」 

 

楽「そ、それって――」 

 

鶫「勘違いするな!!お互い余計な気を遣うくらいなら、最初からこうしておけば良かったと思っただけだ!! ///」 

 

鶫「それに、敵とはいえ集英組の子息に自宅の廊下で雑魚寝なんてさせるわけにもいかないし、それに…」 

 

楽「お、落ち着け。色々と考えて決めてくれたってのは分かったから;」 

 

鶫「そ、そうか?分かってくれればそれで良いんだそれで」フフン 

 

楽(急に調子戻りやがって…;) 

 

鶫「それで……貴様はどうなんだ?」 

 

楽「ああ、それは…その…」 

 

 

楽「鶫がいいって、言うなら…俺も、別に…いいぞ……」 

 

楽「その、鶫と一緒に…寝ても…… ///」 

 

鶫「…そ、そうか」 

 

鶫(『一緒に…寝ても』…) 

 

鶫(『 一 緒 に 寝 て も 』?) 

 

 

 

鶫「ぬ゛あ゛あ゛ああ゛あ゛ああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああ゛あ゛!! ///」バタバタバタバタ 

 

楽「!?ど、どうした鶫!?」 

 

鶫「ち、違う!あれはおそらく『同じ部屋で寝る』という意味で言ったのであって、決して私が思うような……」 

 

鶫「のああああああああああああああああああああああああああ!! ///」ゴロゴロゴロゴロ 

 

楽「な、なんだ一体!?お前が思うようなってどういう…」 

 

鶫「それを聞くなあぁぁぁぁっ!!! ///」ドガァッ! 

 

楽「なぜ殴る!?」 

 

鶫「す、すまない…。急に取り乱してしまって」ハァハァ 

 

楽「いや、それよりなんで俺は殴られたのか知りて―んだけど…?」ヒリヒリ 

 

鶫「貴様が一緒に寝るなどとまぎらわしい言い方をするからだ!変な意味で考えてしまっただろうが!! ///」 

 

楽「まぎらわしいって何が……!!」 

 

楽「バッ、ちげーよ!俺がそんな意味で言うわけねーだろ!! ///」 

 

鶫「そ、そうだろうな!お嬢と付き合っている貴様が私に向かって言うなどおかしいからな!」 

 

鶫(うぅ…。なぜこう自分で否定すると空しくなってくるんだ…) 

 

楽「そ、そうそう!俺はハニー一筋なんだから、今度から言い方には気をつけないとな!」 

 

楽(つーか、さっきの言葉で何も疑われなくて良かった…。もしバレたら朝日すら拝めなくなってたかもしれねぇ…;)ブルブル 

 

 

楽「とにかく、今日はもう寝よーぜ。今日のこと振り返ってたら急に疲れが…」 

 

鶫「そうだな…確かに今日は色々あったな」 

 

鶫(屋上の壁に頭を何度もぶつけて、それが原因で午前中は保健室で休むことになり、昼休みは一条楽に弁当を分けてもらい…) 

 

鶫(お嬢のご厚意で今日一日任務を休ませてもらった矢先に、一条楽の家に招待されて…) 

 

鶫(この町に訪れてから様々な出来事があったが、今私が置かれているこの状況なんて、本来あり得なかったのかもしれない…) 

 

鶫(それも、きっかけは…)チラッ 

 

楽「? どうした?」 

 

鶫「…いや、もう寝よう… ///」フイッ 

 

楽「???」 

 

鶫「…なぜ最初に隣り合わせになっていることに気づかなかったんだ私は…;」 

 

楽「しょうがねーだろ。少し広くても1人部屋だから布団2組でギリギリなんだよ」 

 

鶫(一緒の部屋でも大丈夫だと言っていたが、ここまで近いとは… ///) 

 

楽「じゃあ、明かり消すぞ」 

 

鶫「…ああ」 

 

 

カチ カチ カチ 

 

 

楽(あ、そうだ…)コソコソ 

 

 

スーッ… 

 

鶫(………?) 

 

 

~数分後~ 

 

 

スーッ… 

 

ガッ 

 

ドサッ 

 

鶫「!~~~っ!! ///」ボスッ 

 

楽「わ、悪い!足下よく確認してなかったから…」 

 

鶫「いいから早くどけ! ///」ボスッボスッ 

 

楽「分かった、分かったから枕で叩くなって!」 

 

鶫「~~! ///」 

 

 

コトッ 

 

 

楽「――よし」 

 

鶫「………」 

 

楽「………」 

 

鶫「……一条楽」 

 

楽「うおっ!?」ビクッ 

 

鶫「…そんなに驚く必要もないだろう;」 

 

楽「いや、もう寝たのかと思ったら、急に声かけてくるもんだから…」 

 

鶫「……今日は、色々とすまなかった」 

 

楽「…急に改まってどうした?」 

 

鶫「…学校であった事も、この家であった事も、貴様には一日中迷惑をかけたと思ってな」 

 

楽「気にすんなって。俺だって今日の宴会は、鶫が居てくれて良かったと思ってるし」 

 

楽(うちの連中以外の知り合いがいてくれて、退屈しなかったってことだけどな;) 

 

鶫「…そうか」 

 

楽「ただ、俺に対する態度を変えてみようと言ってた割に、そんな変わってなかったような…」 

 

鶫「貴様、もう一度最初から言ってみろ」 

 

楽「それだよ!なんでいちいち脅すような言い方するんだよ!!」 

 

鶫「あっ…その、すまない…」 

 

楽「謝られたらそれはそれで調子狂うんだが…」 

 

鶫「# それじゃあ一体どうしろというんだ!」 

 

楽「いや、だから―――」 

 

 

――数分後―― 

 

 

楽「なんか、レベルの低い言い合いをしてた気がする…」 

 

鶫「奇遇だな、私もそんな気がしていた…」 

 

楽「…まあ、なんつーか…」 

 

鶫「……そうだな…とりあえず今やるべき事は…」 

 

 

二人『寝よう』 

 

 

鶫「なぜこんな当たり前の考えに至らなかったのか…」 

 

楽「考えねぇ方が良いぞ。たぶん余計寝れなくなっちまうから…」 

 

鶫「そうだな…やめておこう」 

 

楽「それじゃあ、今度こそ寝るぞ」ゴソッ 

 

鶫「ああ。私に寝首をかかれないよう気を付けるんだな」 

 

楽「なにそれこわい」 

 

鶫「冗談だ」 

 

楽「お前が言うと冗談にならねーよ!」 

 

鶫「一条楽」 

 

楽「…なんだよ、もういい加減に――」 

 

 

鶫「おやすみ」 

 

楽「……おう、おやすみ」 

 

 

鶫「………」 

 

楽「Zzz…」 

 

鶫(こうして一条楽のそばに居ると、不思議と安心する) 

 

鶫(私は、心のどこかで、これを……っ!)ズキッ 

 

鶫(しまった…鎮痛剤の効果が切れて痛みが…)ズキズキ 

 

鶫(荷物は押入れにあるから、押入れ側に寝ている一条楽を避けて取りに行かねば…) 

 

鶫(明かりは近くに置いておいた携帯を使って…)ゴソゴソ 

 

鶫(――これか)パシッ 

 

 

パッ 

 

 

鶫(? 枕元に何か置いてある…?) 

 

鶫(消毒液に、ガーゼ、包帯、タオル、水の入ったペットボトル、痛み止め…) 

 

鶫(まさか、あの時に取りに行って…)チラッ… 

 

楽「Zzz…」 

 

鶫「予備があるから、痛み止めは本当に必要なかったのだがな;」 

 

鶫(……いや、これはありがたく受け取ろう) 

 

 

鶫「あ、これ即効性なのか」フツウニヒツヨウダッタ… 

 

 

鶫(―――さて、痛み止めも飲んだことだし、今度こそ寝なければ) 

 

楽「う~ん…」ゴロン 

 

鶫「っ!」ビクッ 

 

楽「へへへ…」Zzz 

 

鶫(ビックリした…。コイツは今一体どんな夢を見てるんだ…?) 

 

楽「Zzz…」 

 

鶫「………」 

 

 

ゴソゴソ 

 

 

楽「……Zzz」 

 

鶫「今日は、ありがとう…一条楽」ボソッ 

 

鶫(立場上、私がこんな事をしてはいけないのかもしれない) 

 

鶫(それに明日になれば、またいつも通り接することになるだろう) 

 

鶫(お嬢をお守りする身として、お嬢の恋人であるコイツのことを見守…監視する立場に戻る) 

 

鶫(だから、今日は…) 

 

鶫「……おやすみ」 

 

 

鶫(一条楽のそばで、ゆっくり眠りたい…) 

 

 

 

一方、一条家の屋敷外… 

 

 

ポーラ「あの2人が今夜どうなるのか、面白いことになりそうだと思って見に来たのに…」 

 

ポーラ「なんで添い寝までいって何もしないのよおおおおおおおおおおっ!!」 

 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

鶫「安価で一条楽との距離を縮める」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1400684824/