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キョン「俺はお前の作った弁当が食いたいんだ」 ハルヒ「っ!」【涼宮ハルヒの憂鬱ss/アニメss】

 

ハルヒ「第一回SOS団お弁当対決よ!」

 

ハルヒ「というわけで明日は各自お弁当を作ってきなさい」 

 

みくる「ふぇ? お、お弁当ですかぁ?」 

 

キョン「何が『というわけ』なのか全くわからん。もっとちゃんとした説明をしろ」 

 

ハルヒ「どこがわからないって言うのよ。一を聞いて十を知るくらいの気概を持ちなさい。古泉君!」 

 

古泉「はい。つまりこういうことでしょう」 

 

古泉「涼宮さんはふと団員の食生活が気になった。特に僕や長門さんは一人暮らしですしね」 

 

古泉「そこで各自にお弁当を作らせて日頃の栄養バランスをチェックしようと考えた。そんなところでしょう」 

 

ハルヒ「さすがは古泉君! 副団長だけあって団長の意思がよくわかってるじゃない!」 

 

古泉「恐縮です」 

 

キョン「なんであれだけの説明でそんなに詳しいことがわかるんだ」 

 

古泉「日頃の訓練の賜物ですよ」

 

キョン「まぁ理由はわかった。しかし何故わざわざ対決なんだ?」 

 

ハルヒ「だってその方が面白いじゃない」 

 

キョン「それだけかよ!」 

 

ハルヒ「だって考えてもみなさいよ。みんなでお弁当を広げて見せ合うだけじゃ何の面白みもないじゃない」 

 

キョン「俺はそれでも一向に構わんと思うんだが」 

 

ハルヒ「ダメよ。それに緊張感を持たせとかないとあんたなんて冷凍食品だらけのお弁当を持ってくるに違いないもの」 

 

キョン「ぐ……」 

 

ハルヒ「というわけで改めて、明日は第一回SOS団お弁当対決よ!」

 

キョン「おい古泉。お前料理なんてできるのか?」 

 

古泉「まぁ人並みにはできますよ。一人暮らしですし料理を含む家事全般のスキルは嫌でも身につくものです」 

 

キョン長門、お前は?」 

 

長門「今はできない」 

 

キョン「今は……ね。朝比奈さんは料理上手いですし問題ないですよね」 

 

みくる「え? うん、一応得意な方だとは思うけど……」 

 

キョン「夏にプールに行った時のお弁当も朝比奈さんが作ったものでしたもんね」 

 

古泉「涼宮さんと朝比奈さんは問題ないようですし、後は我々次第ということになりますね」 

 

キョン「やれやれ……」 

 

古泉「大丈夫ですか? あなたのお弁当の出来があまりに酷いと涼宮さんのご機嫌を損ねるかも知れませんよ」 

 

キョン「んなこた知らん。一応作っては来てやるからそこだけは安心しろ」

 

 

キョン宅 

 

キョン「はぁ……弁当作りねぇ。面倒だがハルヒがああ言った以上自分で作らなきゃならんよなぁ」 

 

キョン「あ、母さん。明日の弁当は自分で作るから。いやちょっとした事情があってさ……」 

 

■古泉宅 

 

古泉「さて、何から手をつけましょうかね」 

 

古泉「涼宮さんのことです。普通のお弁当では満足しないでしょう」 

 

古泉「では、久しぶりにアレを作りましょうか」 

 

長門宅 

 

長門「食材は揃えた。栄養学、調理スキル、フードデザインのデータをインストール開始……」 

 

長門「……インストール完了。調理を開始する」 

 

■朝比奈宅 

 

みくる「うーん、普通のお弁当でいいのかなぁ……」 

 

みくる「と、とりあえず作らなくちゃ! 悩んでて出来ませんでしたぁなんてことになったら大変!」

 

 

--翌日の昼休み 

 

ハルヒ「さて、みんなお弁当は持ってきてるでしょうね?」 

 

古泉「ええ、もちろんです」 

 

長門「持ってきた」 

 

キョン「持ってきてるぞ」 

 

みくる「も、持ってきてますよぉ」 

 

ハルヒ「では、まず今日の審査員を紹介するわ!」 

 

キョン「審査員? お前がやるんじゃないのか?」 

 

ハルヒ「だってあたしもお弁当持ってきてるもの。あたしが審査員も兼ねるんじゃ不公平でしょ?」 

 

キョン「お前も作ってきてたのか」 

 

ハルヒ「言ったでしょ。これはSOS団のお弁当対決なの。団長のあたしが不参加なんてありえないじゃない」

 

ハルヒ「じゃあ改めて審査員の紹介! みんな入ってきて!」 

 

キョン「森さん! 鶴屋さん! 朝倉まで!」 

 

ハルヒ「この3人が今日の審査員よ!」 

 

森「よろしくお願いしますね」 

 

鶴屋「なんか美味しい物食べれるって聞かされたから来てみたっさー」 

 

朝倉「ふふっ。みんなの料理がどれほどのものかとても楽しみだわ」 

 

古泉「これは……!」 

 

長門「……気をつけて」 

 

キョン長門?」 

 

長門「敵は手ごわい……」

 

ハルヒ「じゃあまずはあたしのお弁当からね! はい!」 

 

森「ご飯、鶏の照り焼き、卵焼き、茹でたブロッコリにミニトマトですか」 

 

鶴屋「さっすがハルにゃん。お弁当の三原色はきっちり押さえてきてるねぇ」 

 

朝倉「まるで料理本の見本になりそうなくらい綺麗な出来栄えね」 

 

ハルヒ「ふふーん。じゃあ早速試食してちょうだい!」 

 

森「ではいただきますね」 

 

鶴屋「いただきまーす」 

 

朝倉「いただきます」

 

森「……」 

 

鶴屋「……」 

 

朝倉「……」 

 

キョン(なんだ……? 料理を口にした途端3人の目の色が変わったぞ?) 

 

鶴屋「うーん、ちょーっとお肉が固いかなー」 

 

ハルヒ「えっ」 

 

森「そうですね。火を通しすぎて肉汁が出切ってしまったせいでしょう」 

 

朝倉「ブロッコリも茹で過ぎね。食感も悪いし、何より茹で過ぎるとビタミンCが壊れてしまうわ」 

 

森「それと全体的に湿気でベトベトしています。ちゃんと冷ます前に蓋をしてしまったのでしょうね」 

 

鶴屋「卵焼きなんだけどあたしはもうちょっと甘い方が好きかなー」 

 

朝倉「でもまぁそれは好みの問題だし、このおかずの中では唯一及第点に届く出来なんじゃないかしら」 

 

森「同感です。きっと作り慣れていらっしゃるのでしょう」 

 

ハルヒ「……」

 

キョン(なんて厳しい審査員どもだ……) 

 

古泉(お三方とも料理に関してはプロ級の腕前を持つ方々ですからね) 

 

長門(甘く見ていると痛い目を見る。覚悟しておいた方がいい) 

 

みくる(ひえぇ、怖いですぅ) 

 

キョン(なんかテレビでこんなんやってるよな) 

 

古泉(あぁ、ちょい厳判定員のあれですね) 

 

キョン(それだ。なんかあれを生で見てる気分だ) 

 

古泉(同感です。僕としては涼宮さんがこれで閉鎖空間を生み出したりしないことを願うばかりですよ)

 

鶴屋「じゃあハルにゃんのお弁当の点数を発表しまーす! ちなみに各自10点満点だからね!」 

 

森「7点です」 

 

鶴屋「6点!」 

 

朝倉「あたしも6点」 

 

鶴屋「全員合わせて19点!」 

 

森「全体的に手馴れてる感はあります。しかしそれが故に細かいところが甘いのが残念でした」 

 

鶴屋「普通のお弁当、って感じかな。見た目通りで可もなく不可もなくって感じ」 

 

朝倉「森さんも言ったけどもう少し細かいところまで気を配って欲しかったかな。ちょっと残念」 

 

ハルヒ「~~ッ!」

 

ハルヒ「次っ! みくるちゃん!!」 

 

みくる「は、はいぃ~」 

 

ハルヒ「いいこと! あいつらを見返すようなお弁当をドドーンと出してやんなさい!」 

 

みくる「は、はぅ~」 

 

ハルヒ「ほら! シャキっとしなさい!」 

 

みくる「あ、はいっ!」 

 

ハルヒ「あの審査員ども……あたしのお弁当を酷評してくれた罪は重いわよ……覚悟しなさい」

 

鶴屋「ほっほーう、これがみくるのお弁当かい?」 

 

朝倉「3種類のサンドイッチと鶏の唐揚げ、後は付け合せのパセリね」 

 

森「彩りは悪くないですね。品数は少ないながらも綺麗に見せようとする努力が伺えます」 

 

朝倉「色々気になることはあるけれどまずは食べてみたほうがいいわね」 

 

森「ではいただきましょうか」 

 

鶴屋「いっただきまーす」 

 

朝倉「いただきます」 

 

森「……」 

 

鶴屋「……」 

 

朝倉「……」 

 

みくる「ひぅ……」

 

朝倉「サンドイッチの具はタマゴサラダとツナキュウリ、それにハムレタス……」 

 

森「全体的にカロリーが高いですね」 

 

朝倉「ですね。マヨネーズを使い過ぎだと思います。それに揚げ物をプラスするのはちょっと……」 

 

鶴屋「でも味は悪くないね。むしろ美味しいっさ」 

 

朝倉「ええ。確かに美味しいわ。唐揚げもきっと二度揚げしてるのね。お肉の旨味を逃がしてない」 

 

森「そうですね。味のレベルは高いです。ただ栄養バランスにはちょっと問題ありかと思います」 

 

鶴屋「確かに箸休めというか、もうちょい口直しできるようなあっさりしたものが欲しいかもねー」 

 

みくる「や、やっぱりパセリを添えただけじゃダメですかぁ?」 

 

森「パセリを添えるのは彩りを良くするという面では効果的ですよ」 

 

朝倉「でも裏を返すと添えられた程度の量のパセリでは栄養バランスは整えられないわ」

 

鶴屋「では! みくるのお弁当の点数を発表しまーす!」 

 

森「8点です」 

 

鶴屋「あたしも8点っさー」 

 

朝倉「あたしは7点」 

 

鶴屋「合計23点! お、結構高得点いったねー」 

 

みくる「よ、よかったですぅ」 

 

森「でもお昼にこれだけのカロリーを摂取するのですから朝や晩の献立には気をつけてくださいね?」 

 

みくる「は、はい! 気をつけましゅ!」 

 

キョン(噛んだな) 

 

古泉(噛みましたね) 

 

長門(間違いなく噛んだ)

 

ハルヒ「くっ……み、みくるちゃんに負けたのは悔しいけどこれはこれでいいわ!」 

 

ハルヒ「残りの3人! 気合入れていきなさいよ!」 

 

キョン「今から気合を入れてももう作って来ちまってるんだが」 

 

ハルヒ「あの毒舌審査員どもが黙りこむくらいの気合を入れてお弁当を出しなさいってことよ!」 

 

キョン「また無茶をおっしゃる……」 

 

ハルヒ「次! 有希!」 

 

長門「わかった」 

 

鶴屋「さぁ! ご開帳ー!」 

 

ハルヒ(おでんくさい!) 

 

キョン(おでんくせえ!) 

 

古泉(なんというおでん臭……) 

 

みくる(おでんの匂いがしますぅ)

 

朝倉「……長門さん? これは何かしら?」 

 

長門「お弁当」 

 

朝倉「このタッパーから溢れそうなほど盛られたおでんが?」 

 

長門「そう」 

 

森「彩りは……言うまでもありませんね」 

 

鶴屋「あははっ。ぜーんぶ真っ茶色さー」 

 

朝倉「そもそもお弁当としての体をなしていない気がするのだけれど……」 

 

森「まぁ細かいことは食べてみてからにしましょう」 

 

鶴屋「いただくにょろよー!」 

 

朝倉「……いただきます」 

 

森「いただきます」

 

鶴屋「んん! なにこれ! すっごい美味しいよ!」 

 

森「ええ……塩加減、出汁の染み具合、煮込み時間……全てが完璧としか言いようがありません……」 

 

朝倉「……長門さん? これって誰かのレシピを元にしてない?」 

 

長門「している」 

 

森「それは特に問題ないのでは?」 

 

鶴屋「別にオリジナリティを求めてるわけじゃないからねー」 

 

朝倉「あたしの思い違いじゃなければ、これってあたしが作ったおでんと同じ味な気がするんだけど」 

 

長門「そう。あなたの作ったおでんを忠実に再現した」 

 

朝倉「やっぱり。そりゃ美味しいに決まってるわよ。だってあたしのが元になってるんですもの」

 

森「しかしやはり彩りが……茶色一色に染められているのは気になりますね」 

 

鶴屋「うーん。蓋を開けた瞬間、教室中に漂うおでんの匂いも気になるっさー」 

 

朝倉「しかもこの量……とてもじゃないけど一人じゃ食べきれないわ」 

 

長門「ならば皆で分ければいい」 

 

朝倉「えっ」 

 

長門「私は最初この企画を聞いた時、5人がそれぞれ別の人間の作ったお弁当を試食しあう事を想定していた」 

 

長門「だから多めに持ってきた。多人数で食事をする場合多めに作るというのが定説」 

 

鶴屋「確かに。みんなでつつき合うならちょっと多いくらいの方がいいっさね」 

 

森「一理ありますね。ならば量については問題なし、と」

 

鶴屋「んじゃ! 長門っちのお弁当の点数を発表するよ!」 

 

森「7点です」 

 

鶴屋「8点!」 

 

朝倉「5点ね」 

 

鶴屋「全部足して20点! みくるに続いて20点超えだー!」 

 

朝倉「ま、あたしの模倣だから美味しいのは当然として、もう少しお弁当らしい見栄えにしてほしかったかな」 

 

ハルヒ「お、おでん一品のお弁当よりあたしのお弁当の方が下だって言うの?!」 

 

森「おでん一品というのがお弁当としてどうなのかという問題はあります。彩りもよくありません。が――」 

 

森「それを差し引いても味が素晴らしいです」 

 

鶴屋「うんうん! とっても美味しかったっさー!」 

 

鶴屋「それにみんなで分け合うってことを前提にして作ったんならおでん一品でも十分だと思うにょろよ」 

 

ハルヒ「くっ……!」

 

ハルヒ「次っ! 古泉君! 行きなさい!」 

 

古泉「アイアイマム」 

 

森「ふぅん。古泉のお弁当ね」 

 

古泉「言っておきますが……自信作ですよ?」 

 

森「あら、言うわね。じゃあ期待させてもらうわよ」 

 

朝倉「試食前から火花が散ってるみたいだけど、開けちゃっていいかしら?」 

 

古泉「ええ、どうぞ」 

 

朝倉「じゃあ遠慮無く……って、こ、これは……!」 

 

森「……!」 

 

鶴屋「おかずは肉じゃが、ワカメとキュウリの酢の物、それと……ウサギさんのリンゴ……」 

 

朝倉「しかもご飯の上には桜でんぶで描かれた大きなハート……」 

 

古泉「コンセプトは『恋人の手作り弁当』です。味もそれなりのものだと思いますよ?」

 

森「……お弁当に煮物を入れるのはとても良いですね。冷めても味があまり落ちませんから」 

 

朝倉「しかもちゃんとおかず同士の味が混ざらないようアルミカップで区切ってあるわ。これも好印象」 

 

鶴屋「見た目もかわいいし。食べるのがもったいないくらいにょろー」 

 

朝倉「しかもこれ、かなり作り慣れてるわね……」 

 

鶴屋「あ、あははー。古泉君がこんなお弁当を作ってるのを想像するとちょっとあれな感じもするっさねー」 

 

森「と、とりあえず食べてみましょうか」 

 

朝倉「そ、そうですね。いただきます」 

 

鶴屋「いっただっきまーす」

 

森「この肉じゃがのお肉は……豚でも牛でもない……まさか、ラム肉?」 

 

古泉「ええ。ラム肉は意外と肉じゃがに合うんです。もちろん料理酒につけて臭みを取ってから入れています」 

 

朝倉「お肉がすっごい柔らかい。これもお酒につけてあったからね」 

 

鶴屋「酢の物もしっかり水切りしてあって全然水っぽくないよ!」 

 

朝倉「そうね、三杯酢かしら? 酸味と甘みがしっかり味ついてる」 

 

森「しかもこの桜でんぶ……市販のものじゃないわね。ここまで手のこんだものを作ってくるなんて……」 

 

古泉「言ったでしょう? 自信作です、と」

 

鶴屋「よっし! じゃあ古泉君のお弁当の点数を発表するよー!」 

 

森「9点です」 

 

鶴屋「10点!」 

 

朝倉「9点」 

 

鶴屋「合計28点! 凄いよ古泉君! この面子にこれだけの高得点を出させるなんてさ!」 

 

古泉「恐縮です」 

 

森「手作りの桜でんぶにラム肉を使うという一工夫入れた肉じゃが。素晴らしいです」 

 

朝倉「ウサギさんのリンゴも塩水につけて変色を防いでいる。細かいところまで気が効いているわ」 

 

鶴屋「ありゃ? 2人とも高評価なのに満点じゃないのはなんでにょろ?」 

 

森「欲を言えばですが、肉じゃがの味付けが少し濃いと感じましたので」 

 

朝倉「あたしも。桜でんぶでご飯が進むから肉じゃがはもう少し薄味でも良かったんじゃないかと思うわ」

 

ハルヒ「……」 

 

キョン「どうしたハルヒ。口を開けたままぼんやりしてるとアホの子みたいだぞ」 

 

ハルヒ「う、うっさい! 最後はあんたの番よ! 言っとくけど最下位は罰ゲームだからね!」 

 

キョン「現在お前が最下位なんだが……」 

 

ハルヒ「あ、あたしがあんたに負けるわけないじゃない! ほら、とっととお弁当出しなさい!」 

 

キョン「へいへい」 

 

鶴屋「キョン君のお弁当かー。いやぁ古泉君のあんな凄いのを見せられた後だから正直採点厳しくなるよー」 

 

キョン「まぁその辺はなるようにしかなりませんよ」 

 

朝倉「あら、達観してるのね」 

 

キョン「いいからさっさと試食に移ってくれ。これでも結構ドキドキしてるんだ」 

 

森「では、開けますね」

 

森「……」 

 

鶴屋「……」 

 

朝倉「……」 

 

キョン「……?」 

 

鶴屋「あの……これは、なにかなー?」 

 

キョン「あぁ、それは鴨肉のソテーに野菜のジュレソースをかけたものです。ちなみに鴨肉はジビエですよ」 

 

朝倉「こ、こっちはコブサラダよね?」 

 

キョン「あぁ。ただ普通のドレッシングじゃ面白くないからブルゴーニュ風のソースで和えてみた」 

 

森「こっちはエビピラフですよね? でもちょっと変わった香り……」 

 

キョン「えぇまぁエビピラフなんですが、ちょっとサフランを入れてパエリアっぽく仕上げてみました」 

 

鶴屋「これは、コロッケ? だよね?」 

 

キョン「いえ、オランダ風のクロケットです。中のラグーも今回は結構上手くできたと思いますよ」

 

キョン「えっと、食べないんですか? も、もしかして見た目が食欲をそそらないとか?」 

 

森「い、いえ。そんないことありませんよ! いただきます」 

 

鶴屋「い、いただきます!」 

 

朝倉「いただきます……!」 

 

森「凄い……ジビエのクセが全然気にならないこのジュレソースの絶妙な味……」 

 

鶴屋「クロケットだっけ? これ凄いよ! 口に入った瞬間ソースがジュワーって!」 

 

朝倉「このコブサラダのソース……なんなのこれ……! こんなの初めて!」 

 

森「ピラフも美味しい! もしや日本米じゃない? でないとこんなにパラッとした食感になるはずがない!」 

 

長門(朝倉スマイルが出た……!) 

 

古泉(森スマイルが出ましたよ……!) 

 

みくる(つ、鶴屋さんの八重歯が光りましたぁ!)

 

森「これは、お弁当というレベルを超えていますね。いや、いい意味でですよ?」 

 

鶴屋「こんな料理、家でも食べたことないっさー!」 

 

朝倉「悔しいけど……美味しいわ。とっても美味しい」 

 

森「栄養バランス。も彩りも完璧です」 

 

鶴屋「古泉君に続いてとんだダークホースが出てきたもんさねー」

 

鶴屋「こほん! ではキョン君のお弁当の点数を発表するにょろ!」 

 

森「10点です」 

 

鶴屋「10点にょろ!」 

 

朝倉「10点しかつけられないわね」 

 

鶴屋「3人合わせて30点! ついに満点が出たよ! やったねキョン君!」 

 

みくる「き、キョン君? どこであんな料理を覚えたんですかぁ?」 

 

キョン「えっと、一時期、ちょっとの間ですけど外国料理にハマってたんですよ。それで色々覚えたんです」 

 

古泉「あなたにそんな特技があったなんて機関の事前調査では全く情報にありませんでしたよ?!」 

 

キョン「材料費がバカにならないからやめろってお袋に言われて以来全然やってなかったからな。無理もない」 

 

ハルヒ「……」 

 

キョン「どうしたハルヒ。口を開けたままぼけっとしてるとアホの子みたいだぞ」 

 

ハルヒ「……」

 

ハルヒ「あたしの、負け?」 

 

キョン「まぁ、そうなるな」 

 

ハルヒ「し、審査員の人選を間違ったわ! きっとそれが敗因よ!」 

 

鶴屋「おーっとそれは聞き捨てならないなぁハルにゃん」 

 

朝倉「涼宮さん、あなたの敗因は『慢心』よ」 

 

ハルヒ「っ!」 

 

森「恐らくですが、涼宮さんが本気で料理に取り組めばもっと高得点を取ることができたでしょう」 

 

鶴屋「でもハルにゃんは自分が負けるわけがないって思って手を抜いた。ズバリそれが敗因だと思うね」 

 

ハルヒ「……」 

 

古泉「……! 森さん……」 

 

森「……えぇ。わかってるわ」

 

古泉(たった今、閉鎖空間が発生しました。かなりのスピードで拡大しているようです) 

 

キョン(負けたからイラついて神人でも暴れさせようってか? 全く単純というかなんというか) 

 

古泉(とりあえず僕と森さんは現場に向かわなければなりません) 

 

古泉(涼宮さんのフォロー、お任せしても宜しいですか?) 

 

キョン(断るって選択肢はどうせないんだろ? なんとかするからお前は行って来い) 

 

古泉(ありがとうございます。重ねてよろしくお願いします)

 

古泉「すみません。急にバイトが入りましたので僕はこれで失礼します」 

 

森「私もそろそろ仕事に戻らなければならないので……失礼しますね」 

 

ハルヒ「……もういい! 今日は解散! 放課後も今日は活動無しだから来なくていいわ!」 

 

キョン「おいハルヒ」 

 

ハルヒ「何よ!」 

 

キョン「罰ゲームがまだだぞ」 

 

ハルヒ「ふん! そうよね勝ったのはアンタだもんね。なんでも好きな罰ゲームを言いなさいよ!」 

 

キョン「まぁそういきり立つなよ」 

 

ハルヒ「うっさい! 何よ! メイド服着てポニーテールでお茶でも汲めばいい?!」 

 

キョン「それも捨て難いが今はそれよりやってほしいことがある」 

 

ハルヒ「何よ。さっさと言いなさいよ」

 

キョン「明日から俺のために弁当を作ってきてくれ」 

 

ハルヒ「はぁ?」 

 

キョン「それが俺の望む罰ゲームだ。文句あるか?」 

 

ハルヒ「あ、アンタの方が料理上手いんだから自分で作ればいいじゃない!」 

 

キョン「俺はお前の作った弁当が食いたいんだ」 

 

ハルヒ「っ!」 

 

キョン「今日はなんだかんだで昼メシ抜きになっちまったしな。最初に見たお前の弁当が脳裏から離れないんだ」 

 

ハルヒ「し、仕方ないわね。罰ゲームだし、いいわよ! アンタにお弁当を作って来ればいいのね!」 

 

キョン「あぁ。できれば今日以上に旨そうなのを頼むぜ」 

 

ハルヒ「ふん。言われなくたってそうしてあげるわよ」

 

 

--翌日 

 

古泉「さて、今回はどんな魔法を使ったのでしょうか?」 

 

キョン「何の話だ」 

 

古泉「昨日発生した閉鎖空間ですが、僕と森さんが現場に向かう途中で突然消えてしまったそうです」 

 

古泉「あなたがうまくやってくださったのではないのですか?」 

 

キョン「さぁな。俺はハルヒに罰ゲームを言い渡しただけだ。特別なことはやっちゃいねえよ」 

 

古泉「もしかしたら、その罰ゲームの内容が今回の涼宮さんの目的だったのかも知れませんね」 

 

キョン「罰ゲームを受けることが目的ってか?」 

 

古泉「そういうことではありません。昨日あなたは涼宮さんにどんな罰ゲームを言い渡したんですか?」

 

キョン「『俺のために弁当を作って持ってこい』と言った」 

 

古泉「それです。もしかしたら涼宮さんは最初からあなたにお弁当を作るきっかけが欲しくて今回のような企画を立てたのかも知れませんよ」 

 

キョン「バカ言え。あれは団員の健康管理がどうとか言う名目だったはずだろ。お前が言ったんじゃねえか」 

 

古泉「あくまで名目上は、ですよ。僕がどう答えてもきっと涼宮さんはそれが当たりだったかのように言ったのではないでしょうか」 

 

キョン「……」 

 

古泉「ところで、個人的にあなたにお聞きしたいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」 

 

キョン「……言ってみろ」 

 

古泉「涼宮さんは今日あなたにお弁当を持ってきたんですよね?」 

 

キョン「お前の質問はいつもいつも趣味が悪いな」 

 

古泉「すみません。知的好奇心が旺盛なもので。で、どうだったんですか? 美味しかったですか?」 

 

キョン「…………旨かったよ」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

ハルヒ「第一回SOS団お弁当対決よ!」

https://hibari.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1307886606/