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成幸 「なら…うちに来ないか?」 文乃「へぇえ……?///」【ぼく勉ss/アニメss】

 

………………唯我家

 

カリカリカリ……

 

文乃「……できた!」

 

文乃「成幸くん、採点お願いしてもいい?」

 

成幸 「ああ、任せとけ」

 

キュッキュッ……キュッ……

 

成幸 「……ふんふん……うん……おお」

 

成幸 「すごいぞ、古橋。満点じゃないか。初めてじゃないか?」

 

文乃「ほんとに!? ケアレスミスもなし!?」

 

パァアアアアアア……!!!

 

文乃「やったー! やったよ成幸くんっ!」 ギュッ

 

成幸 「っ……」 (う、嬉しいのはわかるが、古橋……!)

 

成幸 (急に両手を握るのはやめてくれ……!!) カァアアアア……

 

成幸 「ふ、古橋っ」

 

文乃「? なぁに、成幸くん?」

 

成幸 「……ち、近い。あと、手……」

 

文乃「……?」

 

ハッ

 

文乃「わぁ!」 パッ

 

文乃「ご、ごめんね、成幸くん。数学で満点なんて、びっくりして、嬉しくて……」

 

文乃「つい……」

 

成幸 「あ、ああ。気持ちはわかるし、分かってくれればいいよ……」

 

文乃「………………」

 

成幸 「………………」

 

ドキドキドキドキ……

 

文乃「あっ、あの……――」

 

 

「――――……ウォッホン!!」

 

 

文乃「……!?」 ビクッ

 

文乃「み、水希ちゃん……?」

 

水希 「………………」

 

ジトーーーッ

 

水希 「……まじめに勉強してると思ったから、少し目を離したらこれですか?」

 

水希 「もう試験までそう日にちもないんでしょうから、」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

 

水希 「もう少しまじめに勉強した方がいいと思いますよ?」

 

文乃「た、たしかにその通りなんだよ……ごめんね、成幸くん」

 

文乃 (うぅ……相変わらずすごい圧だよ、水希ちゃん……)

 

成幸 「い、いや、俺の方こそ、ごめんな……」

 

成幸 (怖え……。一体何に怒ってるんだ、水希の奴……)

 

水希 (まったく、油断も隙もあったもんじゃないんだから)

 

水希 (目を光らせてないと)

 

和樹 「……なぁなぁ、母ちゃん。頼むよー」

 

葉月「わたしからもお願いー。おーねーがーいー」

 

花枝 「そんなお金はないの。これで我慢しなさい」

 

水希 「……? こら、和樹、葉月。またわがまま言ってるの?」

 

水希 「お母さん内職で忙しいんだから、邪魔しないの」

 

葉月&和樹「「はーい……」」 ショボーン

 

文乃「……? わっ、小さくてかわいいクリスマスツリーだね」

 

文乃「そっか。もうクリスマスの季節かぁ……」

 

葉月「……そうなの。小さいの」 ショボーン

 

和樹 「テーブルに置くようなやつだよ。飾り付けとかできない……」 ショボーン

 

成幸 「……あー、飾り付けとかしたいのか。俺も小さい頃憧れたなぁ」

 

成幸 「兄ちゃんが働いてお金稼げるようになったら買ってやるから、今はこれで我慢しな」

 

葉月「うん……」

 

文乃「クリスマスツリー……」

 

ハッ

 

文乃「……ねえ、成幸くん」

 

成幸 「うん?」

 

文乃「もし良かったら、なんだけど……」

 

 

………………翌日 唯我家

 

葉月「わぁああああああああ!!!」

 

和樹 「うおーーーーーーー!!!!」

 

葉月&和樹 「「大きいクリスマスツリーだぁ!!!」」

 

キラキラキラ……

 

成幸「……ふぅ。持ってくるだけで一苦労だったな」

 

文乃「おつかれさま、成幸くん。車でも出せたら良かったんだけど」

 

成幸 「いやいや、そんな贅沢は言えないよ。それより……」

 

成幸 「いいのか? あのツリー、借りちゃって……」

 

文乃「いいのいいの。もう十年くらい物置から出してなかったし」

 

文乃「……お母さんが亡くなってから、出したことなかったし」

 

成幸 「あっ……そ、そうか……」

 

文乃「……ん、ごめんね、変な話して」

 

文乃「もう使ってないから、使ってくれた方がきっとツリーも嬉しいと思うし」

 

成幸 「……おう。ありがとな、古橋」

 

葉月「わー、飾り付けもいっぱいはいってるー!」

 

和樹 「兄ちゃん、文姉ちゃん、一緒に飾り付けしようぜ!」

 

成幸 「……そうだな。じゃあ、やるか、古橋」

 

文乃「うん! よーし、久しぶりにやっちゃうぞー!」

 

ワイワイワイ……

 

葉月「この大きなお星様は、てっぺんね。兄ちゃん、つけて」

 

成幸 「よしきた。任せとけ」

 

成幸 「……よいしょっ、と。おお、様になるな」

 

文乃「ふふ……」 (成幸くん、いいお兄ちゃんだなぁ……)

 

文乃 (……なつかしい)

 

文乃 (昔、わたしも、お母さんとお父さんと、三人で飾り付けしたなぁ……)

 

文乃 (お父さん、そういうセンスがないから、お母さんとふたりでダメだししたりしたっけ)

 

文乃 (ふふ……)

 

成幸 「……ん」

 

成幸 (古橋、なんか……笑ってて、楽しそうなのに……なぜか、)

 

文乃「………………」

 

成幸 (“寂しそう” ? に、見えるような……)

 

成幸 (そういえば……)

 

成幸 「……なぁ、古橋。今年のクリスマスは、お父さんとパーティか?」

文乃「……ううん。お父さん、クリスマスは研究室の忘年会なんだって」

成幸 「なっ……」

 

成幸 「あのお父さん、またそんなこと言って……!」

 

文乃「あっ、ち、違うんだよ? わたしが、忘年会の方に行ってって言ったんだよ」

 

文乃「お父さんは、忘年会は欠席しようかなって言ってくれたんだけど……」

 

文乃「……お父さんの仕事の邪魔になりたくないから。だから、行ってって言ったんだ」

 

成幸 「ん、そうか……。なんか、ごめん。いきなり、お父さんのこと悪く言いそうになって……」

 

文乃「……ううん。そうやって、わたしのことで怒ってくれるのは、嬉しいよ」

 

文乃「でも、わたしは大丈夫だよ。もうお父さんと仲直りできたし。気にしないで」

 

成幸 (……俺は短絡的すぎる。てっきり、また古橋が寂しい思いをするのかと思って、頭に血が上ってしまった)

 

成幸 (っていうか、研究室もクリスマスなんかに忘年会を入れるなよ……)

 

成幸 (俺は絶対、大学進学しても、クリスマスは家に帰って家族と過ごすぞ)

 

成幸 (……いや、そんなことは今はどうでもよくて)

 

文乃「わっ、葉月ちゃんも和樹くんもきれいに飾り付けしてるねぇ。わたしも負けられないな」

 

成幸「………………」

 

成幸 「……なぁ、古橋。もしよかったらなんだけどさ、」

 

文乃「うん?」

 

成幸 「クリスマス、うちに来ないか?」

 

文乃「へ……?」

 

ボフッ

 

文乃「へぇえ……?///」

 

 

………………夜

 

成幸 「……ってことで」

 

成幸 「母さん、水希、頼む! クリスマスパーティ、古橋を呼んでもいいか?」

 

花枝 「まぁ……まぁまぁ……」 パァアアアアアア……!!!

 

花枝 「文ちゃんをクリスマスに誘ったの!? まぁ……」

 

花枝 「いいに決まってるでしょ! よくやったわ、成幸!」

 

成幸 「え? ああ、うん……」 (よくやったってなんだ? まぁ、賛成してくれてよかったけど……)

 

成幸 (問題は……)

 

水希 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

 

成幸 (こっちだよなぁ……)

 

葉月「ねぇねぇ、姉ちゃん見て見て!」

 

和樹 「クリスマスツリー! きれいだろ。文姉ちゃんが貸してくれたんだ!」

 

水希 「うん、とってもきれい」 ニコッ 「ふたりとも飾り付けがんばったのね。えらいえらい」 ナデナデ

 

葉月&和樹 「「えへへ~」」

 

水希 「………………」

 

水希 (……葉月も和樹も嬉しそうだわ。悔しいけど、古橋さんのおかげ、だよね)

 

水希 「……いいよ」

 

成幸 「ん……?」

 

水希 「いいよ。古橋さん呼んでも。きっと、葉月と和樹も喜ぶだろうし」

成幸 「ほ、本当か!?」 パァアアアアアア……!!!「ありがとう、水希!」

 

水希 「……べつに、わたしにお礼言うことないと思うけど」

 

花枝 「……ふふっ」

 

水希 「なに、お母さん?」

 

花枝 「べつに~」 クスクス 「なんだかんだ、あんたも文ちゃんのこと大好きだもんね」

 

水希 「なっ……」 カァアアアア……「そ、そんなわけないでしょっ! べつに、古橋さんのことなんて……」

 

水希 「………………」

 

水希 「……嫌い、では、ないけど」 プイッ

 

花枝 「ふふ」

 

花枝 「文ちゃんが来るなら、クリスマスパーティ、気は抜けないわね」

 

花枝 「水希。特別に牛肉の購入を許可します。ローストビーフを作ってちょうだい」

 

葉月「牛肉!?」  和樹 「ローストビーフ!?」

 

水希 「いいの?」

 

花枝 「もちろんよ。文ちゃんが来るとなっては手は抜けないわ。気合い入れてごちそう作るわよ、水希」

 

水希 「……ま、まぁ、そうね。美味しいごちそうを山ほど用意して、唯我家の女のすごさを見せてあげないと」

 

水希 (……古橋さんって、本当に美味しそうにごはん食べてくれるから、作りがいがあるんだよね)

 

水希 (えへへ。ごちそう用意したら、どんな顔して食べてくれるかな。美味しいって言ってくれるかな)

 

水希 「……?」

 

ハッ

 

水希 (い、いけないいけない。あの女は、お兄ちゃんによりつく悪い虫)

 

水希 (たとえどんなに良い人でも、気を許しちゃダメなんだから)

 

水希 「………………」

 

水希 (……まぁ、でも)

 

水希 (ごちそうは、たくさん食べてもらおうっと。えへへ、何作ろうかな)

 

花枝 (水希ったら、表情コロコロ変えて、なんだかんだ楽しそうじゃない)

 

花枝 (本人は否定するけど、ほんとは文ちゃんのこと大好きなのよね)

 

クスクス

 

花枝 (でも、そっか……古橋さん、クリスマスは忘年会なのかぁ。まぁ、お付き合いもお仕事の内だものね)

 

花枝 (でも今の古橋さんだったら、忘年会が終わってすぐ、家に駆けつけそうなものだけど……)

 

花枝 「………………」

 

花枝 「……いけるかしら」 ボソッ

 

成幸 「? 母さん、何か言ったか?」

 

花枝 「……ううん。なんでもない。文ちゃんに喜んでもらうには、どういしたらいいか考えてただけよ」

 

成幸 「はは。あいつは食いしん坊だからな。食べ物山ほど用意すれば喜ぶよ」

 

花枝 「………………」

 

成幸 「……母さん?」

 

花枝 「あんたさ、もう少し女心ってものを勉強したら?」

 

成幸 「古橋みたいなことを母親に言われた!?」

 

………………古橋家

 

零侍「文乃」

 

文乃「……? なぁに?」

 

零侍「いや……」

 

零侍「……クリスマスは唯我さんの家に伺うのだろう。失礼のないようにな」

 

文乃「わかってるよ。ちゃんとするよ」

 

零侍「美味しい美味しいと、人様の家で食い意地を張らないようにな」

 

文乃「わかってるよ! それが年頃の娘に言うこと!?」

 

零侍「す、すまん……」

 

文乃「あ、いや……そんな、本気で怒ってるわけじゃないから、気にしないで……」

 

零侍「そうか……。すまない。私も、冗談のつもりだった」

 

文乃「……うん。わかってるよ。大丈夫」

 

零侍「………………」

 

文乃「………………」

 

文乃 (……気まずい、けど)

 

文乃 (嫌じゃ、ない。お父さんが、必死で、がんばって、わたしと会話をしようとしてくれてるって、わかるから)

 

クスッ

 

零侍「……ん、どうかしたか?」

 

文乃「ううん。あのね、お父さん。クリスマスツリー、成幸くんに貸したって言ったじゃない」

 

零侍「ああ」

 

文乃「成幸くんの弟妹ちゃんたちと一緒に飾り付けもしたんだよ。そしたらね……」

 

文乃「……そうしたら、思い出したんだ。昔、三人でクリスマスツリー、飾り付けしたこと」

 

零侍「………………」

 

文乃「……えへへ。すごく楽しかったなぁ、って。それだけ」

 

零侍「……ああ。私も、楽しかったと思うよ。なつかしいな」

 

文乃「うん」

 

零侍「………………」 スッ 「……今年のクリスマスも、楽しんできなさい」

 

ポンポン

 

文乃「……うん!」

 

………………

 

零侍「……はぁ。我ながら、本当に……なんというべきか。不器用だな」

零侍「……まぁ、いい。今日明日で気を許せるわけもない」

 

零侍「文乃が受け入れてくれるなら、私は、私に出来る範囲で、会話を続けなければ」

 

prrrrrr……

 

零侍「ん……? 電話?」 (こんな時間に、なんだ? 研究室からか?)

 

零侍「……!?」

 

ピッ

 

零侍「……古橋ですが」

 

零侍「ええ。おかげさまで、一応、順調ではあるかと……」

 

零侍「……え?」

 

零侍「は、いや、しかし……私は……」

 

零侍「……わ、わかりました。そうさせていただきます。はい……はい。では、失礼します」

 

零侍「………………」

 

零侍「……な、なんてことだ」

 

 

………………クリスマス当日 唯我家前

 

文乃「………………」

 

ドキドキドキドキ……

 

文乃 (服装、よし。髪型、よし。プレゼント、よし。うん、完ぺき……だと思う)

 

ドキドキドキドキ……

 

文乃 (い、いつも勉強教わりに来てる成幸くんの家とはいえ……)

 

文乃 (さすがに、余所様の家庭のクリスマスパーティに参加するのは緊張するなぁ……)

 

文乃 (それに……)

 

 

―――― 『クリスマス、うちに来ないか?』

 

 

文乃「はうっ……」

 

カァアアアア……

 

文乃 (あ、あくまで家庭のクリスマスパーティにお呼ばれしただけだから!)

 

文乃 (だから……)

 

ドキドキドキドキ……

 

ガラッ

 

文乃「……!?」

 

成幸 「お、いたいた。来てたなら入ればいいのに。どうしたんだ?」

 

文乃「な、何もないよ。えへへ……」

 

文乃 (きみのことを思い出してドキドキしてたんだよ!)

 

文乃 (……なんて、口が裂けてもいえないよ)

 

文乃 (……っていうか、うるかちゃん、りっちゃん、違うからね! これは、ただの……)

 

文乃 (ただの、クリスマスパーティだからね!)

 

成幸 「? どうした? 早く入れよ」

 

文乃「あ、うん! お邪魔します」

 

パンパンパン!!!

 

文乃「わっ……」

 

葉月&和樹 「「文ねーちゃん! メリークリスマス!!」」

 

文乃「葉月ちゃん、和樹くん」 ニコッ 「メリークリスマス!」

 

成幸 「ごめんな、古橋。ふたりがお前のこと驚かせたいって言ってたからさ……」

 

文乃「ううん。クラッカーの音なんて久々で、少しびっくりしたけど、」

文乃「こうやって出迎えてくれるの、すごく嬉しいよ。ありがとう、葉月ちゃん、和樹くん」

 

葉月&和樹 「「えへへ~」」

 

成幸 「さ、上がってくれ。水希と母さんが、古橋が来るからって大はりきりで作ったごちそうが待ってるぞ」

 

葉月「そうそう! すごいごちそうなの!」 ギュッ

 

和樹 「文姉ちゃんも絶対すごいって言うぞ!」 ギュッ

 

タタタタ……

 

文乃「わっ、わわわっ……」

 

ガラッ

 

花枝 「あら、文ちゃん。いらっしゃい」

 

水希 「……こんにちは、古橋さん」

 

文乃「どうも、こんにちは。お邪魔してます……って」

 

キラキラキラ……!!!!

 

文乃「す、すごい……!!」 パァアアアアアア……!!!「ほんとにすごいごちそうだぁ~~!!!」

 

水希 「べっ、べつに……そんな、大したお料理じゃないですよ」

 

水希 「古橋さんがいつもお料理を美味しそうに食べてくれるから、ついつい気合い入れて作っちゃったとかじゃないですから!」

 

和樹 「? なんだ、姉ちゃん? 新手のツンデレってやつか?」

 

葉月「姉ちゃんも文姉ちゃんのこと大好きなのね!」

 

水希 「なっ……///」 ボフッ 「べ、べつに、そういうのじゃないもん……」

 

花枝 「ふふ……。さ、成幸も文ちゃんも、席について。お料理が冷める前にいただきましょう」

 

文乃「あ、はい!」

 

花枝 「……じゃ、いただきましょう。いただきます」

 

 『いただきます!!』

 

文乃 「どれも美味しそう……。どれからいただこうかな……」

 

水希 「……ん、では、これからどうぞ」

 

文乃「? これって……ローストビーフ?」

 

水希 「……牛肉なんか滅多に買えないから、作るの初めてですけど」

 

水希 「食べてみてください」

 

文乃「うん。じゃあいただくね」

 

パクッ……モグモグ……

 

文乃「………………」

 

水希 「……ど、どうですか?」

 

文乃「……ふにゃ~、美味しい~~~~!!」

 

文乃「お肉がすっごくやわらかくて、ソースとよく合うよ! 本当に美味しいよ、水希ちゃん!」

 

水希 「そ、そうですか。それなら、よ、よかったです……」 プイッ

 

和樹 「? 姉ちゃん、顔赤いぞ?」

 

葉月 「文姉ちゃんに美味しいって言ってもらえて嬉しいのねー」

 

水希 「ち、ちがうわよ! そんなのじゃないんだから……」

 

成幸 「いやー、しかし、ほんとにどれも美味しいな……」 モグモグ

 

成幸 「水希みたいな妹がいて、俺は本当に幸せ者だなぁ……」

 

水希 「も、もうっ。お兄ちゃんったら……///」

 

花枝 (兄の発言に照れる方を恥ずかしいと思ってほしいところだけど……)

 

花枝 (……まぁ、しょうがないわね。水希だものね)

 

文乃「でも、ほんとにどれもこれも美味しいよ」

 

文乃「いいなぁ、成幸くん。わたしも水希ちゃんみたいな妹ちゃんがいてくれたらなぁ……」

 

水希 「……え?」

 

文乃「へ?」

 

葉月 「……文姉ちゃん。いい方法があるわ」

 

文乃「?」

 

和樹 「文姉ちゃんが、兄ちゃんの嫁に来たら、姉ちゃんは文姉ちゃんの妹になるぞ!」

 

文乃「っ……//」

 

成幸 「なっ……///」 ボフッ 「ば、ばかなこと言うんじゃない!」

 

水希 「………………」 ギリッ (……悔しい)

 

水希 (古橋さんが姉になるのを想像して、それもアリかな、なんて思っちゃう自分が、悔しい……!)

 

成幸 「ほら、せっかくのごちそうが冷めちゃうぞ。どんどん食べろ」

 

葉月&和樹 「「はーい」」

 

………………食後

 

文乃「……はふぅ」

 

文乃「本当に美味しかったよ。ごちそうさまでした。お母さん、水希ちゃん」

 

花枝 「お粗末様でした。文ちゃんは本当に美味しそうに食べてくれるから、作りがいがあるわぁ」

 

花枝 「……ね? 水希?」

 

水希 「っ……」 プイッ 「ま、まぁね。美味しく食べてくれるから、嬉しいことは嬉しいかもね」

 

文乃「えへへ……。ありがと、水希ちゃん」

 

水希 「べつに……」 プイッ

 

文乃「あ、そうだ。あのね、クリスマスプレゼント持ってきたんだよ」

 

和樹 「クリスマス」  葉月 「プレゼント!?」

 

文乃「うん。えっと……」 ガサゴソ 「……はい、葉月ちゃんと和樹ちゃんには、クリスマスブーツ」

 

文乃「お菓子がたくさん入ってるよ。一気に食べちゃダメだよ」

 

葉月&和樹 「「ありがとう!! 文姉ちゃん!!」」

 

成幸 「……悪いな、古橋。プレゼントなんて用意させちゃって」

 

文乃「ううん。気にしないで。クリスマスパーティにお呼ばれしたんだから、これくらいは当然だよ」

 

文乃「あと、水希ちゃんには、これ」

 

水希 「えっ……わ、わたしにもあるんですか?」

 

文乃「もちろん! はい、保湿クリーム。これわたしのお気に入りなんだ~」

 

水希 「あ、ありがとうございます……」 (すごく高そうなやつ……っていうか……)

 

文乃「わたしが使ってるやつと同じだよ。おそろいだね!」

 

水希 「っ……/// そ、そうですね……」

 

文乃「あと、お母さんにも。どうぞ。水希ちゃんと同じ保湿クリームです」

 

花枝 「私にも? なんか、気を遣わせちゃったみたいね。ありがとう」

 

文乃「いえいえ。気にしないでください。こちらこそ、こんな素敵なパーティにお招きいただいて、ありがとうございます」

 

水希 「……じゃあ、わたしからも」

 

文乃 「へ?」

 

水希 「プレゼントです。どうぞ」

 

文乃 「えっ……? わ、わたしに……? 用意してくれたの?」

 

水希 「……はい。いつも、兄と葉月、和樹がお世話になってますから。ツリーも、ありがとうございました」

 

文乃 「あっ……」 パァアアアアアア……!!! 「ありがとう、水希ちゃん!」

 

文乃 「開けてもいい?」

 

水希 「……は、恥ずかしいので、おうちに帰ってから開けてください。大したものじゃないので」

 

文乃 「うん。わかった! 開けるまで楽しみだよ~」

 

水希 「大したものじゃないから、そんなに期待しないでください……」

 

花枝 (……うんうん。水希とも良い感じじゃない。いいことだわ)

 

花枝 (文乃ちゃん、本当に良い子だし、まじめな話、本当に嫁に来てくれないかしら……)

 

水希 (お母さん、またろくでもないこと考えてる顔してる……)

 

水希 「……ケーキも作ってあるんです。持ってきますね」

 

文乃「ケーキ!?」 キラキラキラ……!!!!

 

文乃「はぁああ……水希ちゃんが作ったケーキ。絶対美味しいやつだよ……」

 

ジュルジュル

 

文乃「楽しみだね、成幸くん!」

 

成幸 「あ、ああ。よだれ垂れてるぞ、古橋……」

 

水希 「……ちゃんとしたオーブンなんてないですから、なんちゃってケーキですよ」

 

水希 「そんなに期待しないでくださいね」

 

トトト……

 

葉月 「わたしたちもケーキ作り手伝ったの!」

 

和樹 「かーちゃんがフルーツ使う許可もくれたから、豪華なフルーツケーキだぜ!」

 

文乃「本当に? 楽しみだなぁ~」

 

ピンポーン

 

成幸 「? インターフォン? 誰だろう?」

 

花枝 「……あら。来たわね」 クスッ 「私が出るからいいわ」

 

成幸 「? なんだろう。何かの配達かな?」

 

 

  「……お邪魔します」

 

成幸 「? 男の人の声……? お客さんか?」

 

文乃「……!?」 (こ、この声……まさか……!?)

 

ガラッ

 

零侍 「あ……こ、こんばんは」

 

文乃「お父さん!?」

 

葉月 「へぇ?」  和樹 「文姉ちゃんのお父さん?」

 

文乃「な、何で成幸くんの家にお父さんが来るの!?」

 

零侍 「なぜ、とはまたご挨拶だな。忘年会が終わったから来たのだが……」

 

文乃「そういうことじゃないよ!? お父さんが来るなんて聞いてないよ!?」

 

零侍 「聞いてない……?」 チラッ 「……やりましたね、唯我さん」

 

花枝 「ふふ。これくらいのサプライズはいいでしょう?」

 

零侍 「……まぁ、そうかもしれませんね」 フッ

 

零侍 「唯我さんに誘われたんだ。忘年会が終わったら、家に来ないかと」

 

零侍 「お言葉に甘えてお邪魔したのだが……嫌だったか? 文乃」

 

文乃「っ……」

 

文乃「嫌とか、そういうのは、ない……っていうか……」

 

プイッ

 

文乃「嫌なわけないじゃない。お父さんが、来てくれたんだもん。嬉しいよ」

 

零侍 「そ、そうか……」

 

花枝 「ふふっ♪」

 

成幸 「……俺にくらいは教えておいてくれてもよかったじゃないか、母さん?」

 

花枝 「あんた、文ちゃんにバラしちゃいそうだから。敵を欺くにはまず味方から、ってね」

 

成幸 「……はぁ。母さんが楽しそうで俺は嬉しいよ」

 

零侍 「あー……はじめまして。文乃の父の、古橋零侍です。こんばんは」

 

葉月 「こんばんは! 双子の姉、葉月でーす!」 和樹 「双子の弟、和樹でーす!」

 

葉月&和樹 「「文姉ちゃんの父ちゃんめっちゃイケメンだー!!」」

 

零侍 「あ、ああ、どうも? ありがとう?」

 

文乃 「……イケメンではないと思う」 ボソッ

 

零侍 「……何か言ったか、文乃」

 

………………

 

零侍 「む……このケーキは、本当に……美味しいな」 モグモグ

 

文乃 「本当だよ。すごく美味しい」 ジーーッ 「お父さんがいなければ、もっとたくさん食べられたのにな」

 

零侍 「……その言い方は、冗談でも傷つくぞ」

 

文乃 「あ、ご、ごめんね。うそだよ?」

 

零侍 「……すまない。今のも冗談だ」

 

文乃 「………………」

 

零侍 「……そう怒るな。私が悪かったよ」

 

文乃 「……べつに。怒ってないし」

 

水希 「………………」 (古橋さんのお父さんって言うから、どんなすごい人かと思ったけど……)

 

水希 (少し暗い雰囲気だけど、普通の人だな……)

 

零侍 「あ……水希さん、だったかな?」

 

水希 「え? あ、はい」

 

零侍 「ケーキ、とても美味しいよ。ありがとう」

 

水希 「あ……ありがとうございます。そんな、大したものじゃないですけど……」

 

水希 「……ん、そういえば、あのクリスマスツリー」

 

零侍 「うん?」

 

水希 「貸していただいて、ありがとうございます。おかげで、葉月と和樹も大喜びで……」

 

葉月 「ああいう大きなツリーに飾り付けするの夢だったの!」

 

和樹 「めちゃくちゃ楽しかったんだ!」

 

零侍 「……そうか。それはよかった。ずっとしまっていたものだから、使ってくれるなら、逆にありがたい」

 

成幸 「……なぁ、古橋」 コソッ

 

文乃 「? なぁに?」 コソッ

 

成幸 「お父さん、来てくれてよかったな」

 

文乃 「ん……ま、まぁね。お父さんも楽しそうだし、良かったんじゃない?」

 

成幸 「そんなこと言って、古橋」 クスッ 「お前も楽しそうだぞ?」

 

文乃 「なっ……」 カァアアアア…… 「そ、それは、元々、この家にいるのが楽しいだけで……」

 

文乃 「べ、べつに、お父さんがいるかいないかなんて関係ないもん」

 

成幸 「ふふ、そうかよ」

 

 

―――― 『うちのお父さんが そういう人だからかなぁ……』

 

―――― 『今日はお父さんが家にいるから…… あんまり帰りたくなくて』

 

 

成幸 (……古橋、お前は気づいてないかもしれないけどさ)

 

成幸 (お父さんが怖くて、お父さんがいる家に帰りたくないって言ってた頃に比べたら、)

 

 

―――― 『べ、べつに、お父さんがいるかいないかなんて関係ないもん』

 

 

成幸 (“いてもいなくてもいい” ってことは、すごいことだぞ)

 

成幸 (まだぎこちなくて、仲良しとは言えないかもしれないけど、)

 

クスッ

 

成幸 (お父さんと、ちゃんと、父娘に戻れたんだな)

 

零侍 「む……」

 

零侍 (……唯我くんと、文乃。何やら楽しそうにコソコソ話している)

 

零侍 (ふむ……)

 

………………玄関前

 

文乃 「今日はお招きいただいて、ありがとうございました」 ペコリ

 

成幸 「そんなに改まらなくていいよ。お前にはいつも世話になってるしさ」

 

零侍 「私からも。本当にありがとう、唯我くん。とても楽しかったよ」

 

成幸 「はい。お父さんも来られて良かったです。ふるは――文乃さんも、嬉しそうでしたし」

 

文乃 「なっ……よ、余計なこと言わないでいいよ、成幸くん!」

 

成幸 「ははは……」

 

零侍 (……うむ。やはり)

 

零侍 「あっ、しまったな。大学に忘れ物をしてしまった」

 

零侍 「すまない、文乃。先に家に帰っていてくれ。私は一度大学に戻ってから帰る」

 

文乃 「それはいいけど……。もう遅いし、明日じゃダメなの?」

 

零侍 「今日必要なものなんだ」

 

零侍 「すまない、唯我くん。とても厚かましいお願いだとは思うのだが、娘を家まで送ってあげてくれないか?」

 

成幸 「もちろん、いいですよ」

 

文乃 「えっ……でも、さすがに悪いよ。寒いし……」

 

成幸 「夜道は物騒だしな。もう夜も遅いし、いいから送らせろよ」

 

文乃 「……うん。ありがと、成幸くん」

 

零侍 「……ちなみに、帰りはかなり遅くなる。間違いなく日をまたぐ。2時以降の帰宅になる」

 

文乃 「そんなに遅くなるの?」

 

零侍 「ああ。もう一度言う。唯我くん。私の帰宅は間違いなく日をまたぐ。帰宅は2時以降だ」

 

零侍 「もし万が一早く帰宅してもそのまま寝室に直行してそのまま寝るだろう。だから何の心配もいらない」

 

成幸 「え……? あ、はい……」 (何で俺に言うんだ……? っていうか心配って何だ……?)

 

文乃 「じゃあ、わたしたち行くね。お父さんも気をつけて大学行ってね」

零侍 「ああ」

 

零侍 「……行った、か」 (……まったく。手くらい繋いだらいいものを。文乃のやつ、本当に楽しそうだ)

 

零侍 「……いかんな。ガラにもなく、唯我くんに嫉妬しているのか、私は――」

 

花枝 「――あら? いいと思いますよ? 年頃の娘さんのお父さんですもんね」

 

零侍 「……!? ゆ、唯我さん。いらっしゃったのですか……」

 

花枝 「ナイスアシストですね、古橋さん?」

 

零侍 「……アシストできているか、分かりませんが。娘の恋の応援くらいは、できるかなと」

 

花枝 「せっかく相手のお父さんがご厚意を向けてくれてるのに、うちの息子はニブいですけどね」

 

花枝 「成幸がもう少し恋心を分かってくれればいいんですけど」

 

零侍 「彼のそういうまじめなところに、好感を憶えます。それは美徳だと、私は思います」

 

花枝 「だといいんですけどね」 クスッ

 

零侍 「………………」

 

零侍 「あ、あの、唯我さん……」

 

花枝 「?」

 

零侍 「今日は……いえ、いつも、うちの娘がお世話になっています。本当に、ありがとうございます」

 

零侍 「この間のことも……本当に、どうお礼を言ったらいいか……」

 

花枝 「気にしないでください。息子が勝手にやったことがほとんどですから」

 

零侍 「……とはいえ、大人として、このままでは、あまりにも情けないと思います」

 

零侍 「なので、あの……もし、ご迷惑でなければ……」

 

零侍 「お礼と言うと、浅ましいですが……今度、一緒にお食事でも、と……」

 

花枝 「お食事? 私とですか?」

 

零侍 「は、はい……」

 

花枝 「……ふふっ」

 

零侍 「……?」

 

花枝 「いいですよ。ぜひ」

 

零侍 「!? ほ、本当ですか!?」

 

花枝 「うそなんかつかないですよ」

 

零侍 「あ……そ、それは、そうですよね」

 

零侍 「……では、また。その……電話をします」

 

花枝 「はい。待ってます」

 

零侍 「………………」

 

零侍 「……では、また」

 

花枝 「ええ。古橋さん、お気をつけて。それから……」

 

零侍 「?」

 

花枝 「メリークリスマス」 ニコッ

 

零侍 「あっ……」 ドキッ 「め……メリー、クリスマス」

 

………………

 

文乃 「えへへ、今日は本当に楽しかったなぁ……」

 

成幸 「“美味しかったなぁ” の間違いじゃないのか?」

 

文乃 「むっ……成幸くん? きみは、わたしのことを、ただの食いしん坊だと思ってないかい?」 プンプン

 

成幸 「冗談だよ。悪かった」

 

文乃 「ふーん、だ」 プイッ

 

文乃 「………………」

 

クスッ

 

文乃 「……ふふ」

 

成幸 「? どうかしたか?」

 

文乃 「ううん。楽しくって仕方なくてさ」 ニコッ 「怒るフリもできないよ」

 

成幸 「っ……」 ドキッ (そ、その笑顔はいくらなんでも反則だろ……)

 

文乃 「……ねぇ、成幸くん」

 

成幸 「お、おう。なんだ?」

 

文乃 「はい、これ」

 

成幸 「へ……? これ……プレゼント?」

 

文乃 「うん。成幸くんへのプレゼントだよ」

 

文乃 「さっき渡したら良かったんだけどね……えへへ」

 

文乃 (……なんか、みんなの前で渡すのが恥ずかしくて……なんて言えないよね)

 

成幸 「……あ、ありがとう。嬉しいよ」

 

成幸 「えっと……その……俺も」 ゴソッ 「……プレゼント」

 

文乃 「へ……?」

 

文乃 「あっ……ありがとう」 カァアアアア……

 

成幸 「俺も、さっき渡したらよかったんだけど……」

 

成幸 (みんなの前で渡すのが恥ずかしかった……なんて言えるわけないよな)

 

文乃 「……ふふ。なんか、わたしたち、似たもの同士だね」

 

成幸 「……だな」

 

文乃 「………………」

 

ドキドキドキドキ……

 

文乃 (……ああ、もう。否定することも、難しいよね)

 

文乃 (こんなの、ずるいよ……だって……)

 

文乃 (――好きにならないわけ、ないじゃない)

 

文乃 (……ごめんね。りっちゃん、うるかちゃん)

 

文乃 (正々堂々、明日、ふたりに、ちゃんと言うね)

 

文乃 (わたしが、唯我くんのことが好きだって、ふたりに言うね)

 

文乃 (だから、今日だけは許して)

 

文乃 (ふたりから嫌われちゃうかもしれないけど……)

 

文乃 (今日、いま、このときだけは……)

 

文乃 「……ねえ、唯我くん」

 

成幸 「ん?」

 

文乃 「わたし、初めてなんだ。こんな風に、男の子とふたりで、クリスマスを過ごすって」

 

成幸 「へ……?」

 

カァアアアア……

 

成幸 「い、いやいや、さっきまで俺の家族とお父さんと一緒だっただろ?」

 

文乃 「うん、そうだね。でも、今はふたりきりだよ?」

 

成幸 「いや、まぁ……それは、その通りだけど……」

 

文乃 「………………」

 

成幸 「………………」

 

ドキドキドキドキ……

 

文乃 「……ねえ、唯我くん。わたしが今、何を考えてるか、わかる?」

 

成幸 「えっ……?」

 

成幸 「そ、そんなの、わかるわけないだろ」

 

文乃 「……うん。そうだよね。成幸くんは成幸くんだもんね」

 

成幸 「……?」

 

文乃 「じゃあ、それが分かるようになるまで、女心の授業は続くよ、成幸くん」

 

成幸 「!? 女心が分かれば、お前が今何を考えてるかも分かるようになるのか……すごいな、女心の授業……」

 

文乃 「わたしの授業は半端を許さないからね。覚悟しておいてね」

 

成幸 「……ああ、分かってるよ。お前が単位をくれるまで、お前の授業を受けないとな」

 

成幸 「はぁ。単位修得まで、どれくらいかかることやら」

 

文乃 「そうだね。がんばらないとだよ、成幸くん」

 

文乃 「……高校を卒業しても、単位を与えられなかったら、補習は続くからね」

 

成幸 「うへぇ。女心って大変だな……」

 

成幸 「でもまぁ、お前が付き合ってくれるなら、がんばって補習を受けるとするよ」

 

文乃 「ふふ……」

 

クスッ

 

文乃 「今の、言質とったからね。成幸くん」

 

 

………………幕間1 「TOMODACHI」

 

文乃 「お、おう……」

 

文乃 「すごいセンスだね、水希ちゃん……」

 

文乃 「でかでかと 『TOMODACHI』 と刺繍されたエプロンとは……」

 

………………

 

水希 (古橋さん、プレゼント開けてくれたかなぁ。気に入ってくれたかなぁ)

 

水希 (ふふ……)

 

キラン

 

水希 (……まぁ、認めてあげないこともないですが、)

 

水希 (まずは清く正しく、お兄ちゃんのお友達から始めてもらわないとね……ふふふ……)

 

水希 「………………」

 

水希 (……来年のクリスマスプレゼント用に、『KOIBITOMIMAN』 エプロンも作っとこうかな)

 

 

………………幕間2 「オマケ」

 

零侍 「……ゆ、唯我さん?」

 

花枝 「ごめんなさいねぇ、古橋さん。外食に行くって話をしたら……」

 

葉月 「こんばんは! 文姉ちゃんのお父さん!」

 

和樹 「ついてきちゃいました!!」

 

花枝 「お母さんだけずるいって言われてしまって……」

 

零侍 「あ、いえ……構いませんよ。葉月さんと和樹くんにもお礼をしなければなりませんから」

 

零侍 「葉月さん、和樹くん、何が食べたい? 私が何でも食べさせてあげよう」

 

零侍 (……まぁ、落胆していないと言えばウソになるが)

 

花枝 「あら、良かったわね、葉月、和樹」

 

葉月 「うーん、うーん……」 和樹 「何がいいかな……」

 

零侍 「……うむ」

 

零侍 (唯我さんの嬉しそうな顔が見られただけで、良し)

 

零侍 (しかし、まぁ……) ハァ (唯我くんのニブさは、間違いなく母親譲りだな)

 

 

………………5年後

 

文乃 「で、今現在、これだけ大きくなったわたしの胸を見て、どう思う?」 タユン

 

成幸 「へ……?」

 

成幸 「バカにしてたって……べつに、そんなことないだろ……」

 

成幸 「あと、胸の大きさなんて……そんな……」

 

文乃 「ふふん。そんなおぼこみたいな反応したって無駄だよ」 ムギュッ

 

文乃 「文乃お姉ちゃんは全部お見通しなんだからね」 ムギュムギュ

 

成幸 「お、お姉ちゃんてお前……何年前の話だよ……」

 

成幸 「あとお前、その……さっきから、胸が、当たってるんだけど……」

文乃 「わ・ざ・と。当ててるに決まってるでしょ」

 

成幸 「……お前な。そういうの、はしたないからやめろって」

 

ジトッ

 

成幸 「まさかお前、俺以外の男にも、同じようなことしてるんじゃないだろうな?」

 

文乃 「……!? 他の男の子に? す、するわけないじゃん! 成幸くんのえっち!」

 

成幸 「……お前の恥ずかしがるポイントがまるで分からないよ」

 

文乃 「あっ……は、話を逸らそうったってそうはいかないよ?」

 

ムギュウムギュッ

 

文乃 「正直、成幸くん、付き合い始めた頃は、わたしのおっぱいに関しては色々あきらめてたよね?」

 

成幸 「胸に関して諦めるってどういうことだよ」

 

文乃 「わたしのおっぱいが小さいから、りっちゃんのおっぱいを揉みたいとか思ってたよね?」

 

文乃 「あの、最終的にIカップ寸前まで成長したハザード級のおっぱいを」

 

成幸 「思ってねーよ! 恋人と共通の友達のおっぱい揉みたいとかただのダメ野郎だろそれ!」

 

文乃 「えっ? じゃあうるかちゃんの健康的な日焼け跡おっぱい?」

 

成幸 「お前ほんと俺のことなんだと思ってるんだ?」

 

文乃 「……ふーん。じゃあ、成幸くんは、わたしのおっぱい以外はどうでも良かった、と?」

 

成幸 「……いや、それを肯定しても、俺、お前のおっぱい目当てで付き合ったことにならないか?」

 

文乃 「……当時のわたしのAカップおっぱいには何の価値もなかった、と?」 ゴゴゴゴゴ………

 

成幸 「そんなこと一言も言ってないよな!?」

 

文乃 「じゃあ、質問を変えるけど、」

 

ムギュッ

 

文乃 「今現在、きみの恋人のおっぱいは、Fカップですが、それに関して何かコメントは?」

 

成幸 「コメントって……」

 

カァアアアア……

 

成幸 「……えっと、その……どんなお前も魅力的だけど……」

 

成幸 「……とても、その……よろしいと、思います、です……」

 

文乃 「よろしい」 フフン

 

成幸 「………………」

 

成幸 (得意げな顔がムカつく……。どうでもいいとか言うと拗ねるくせに……)

 

成幸 (まぁ、でも、そんなところもかわいいけど……)

 

文乃 (……なんてことを考えてる顔だね。あれは)

 

ニヤリ

 

文乃 (まったく。成幸くん、かわいいのは、照れながらも正直に答えてくれるきみの方だよ)

 

成幸 「……ったく、お前が胸のコンプレックス爆発させたせいで時間食っちまったじゃないか」

 

成幸 「新婚旅行の行き先、今日中に決めるって約束なんだから、早く探さないとだぞ」

 

文乃 「わかってるよー、だ。しっかり者の旦那さんを持ててわたしは幸せ者だなー」

 

成幸 「……ほんっと、調子いい女になったよな、お前」

 

クスッ

 

成幸 「俺も、お前みたいな美人でおっぱいの大きい嫁さんもらえて幸せ者だよ」

 

文乃 「えへへ……」

 

成幸 「午後からは結婚式の最終打ち合わせもあるんだからな?」

 

文乃 「うん! えへへ……」

 

成幸 「? どうした?」

 

文乃 「……ううん。結婚式、楽しみだなぁ、って」

 

成幸 「……まぁ、そうだな」

 

文乃 「えへへ。幸せにしてね、成幸くん!」

 

成幸 「おう!」

 

………………

 

………………古橋家

 

文乃 「えへへ……えへへへへへ……」

 

文乃 「ふにゅ……」

 

パチッ

 

文乃 「……ん……う?」

 

文乃 「あれ……成幸くん……?」

 

文乃 「………………」

 

ハッ

 

文乃 (……夢!? えっ、ちょっと待って……夢!?)

 

文乃 (わ、わたし……夢を見てた……?)

 

文乃 「………………」

 

スカッ

 

文乃 (……あ、うん。わかってたけどね。うん。胸、こうだよね。これがわたしの胸だよね)

 

ズーン

 

文乃 (っていうか……) カァアアアア…… (わたし、なんて恥ずかしい夢を見てしまったんだろう……)

 

 

………………一ノ瀬学園

 

うるか 「おっはよー! 文乃っちー!」

 

文乃 「あ、お、おはよ、うるかちゃん」

 

文乃 「………………」 ジーーーーッ

 

うるか 「? どったの? あたし、なんか変?」

 

文乃 「………………」

 

文乃 (……うん。相変わらず、筋肉質ながらもやわらかそうなおっぱいがふたつ)

 

文乃 (でも、夢の中のわたしは、もっと大きかった……)

 

うるか 「ふ、文乃っち? そんなに見つめられると、恥ずかしいよ……///」

 

文乃 「……ふふっ」

 

文乃 (なんだかわからないけど、少し勝った気分だよ……!)

 

文乃 (それと同時に、とんでもない虚しさを感じるよ……)

 

成幸 「……? 朝っぱらから何やってるんだ、あのふたりは」

 

理珠 「なんだか分かりませんが、関わらない方がいいと思います」

 

 

………………放課後

 

理珠 「……はぁ? 胸が大きくなる夢を見た?」

 

文乃 「……うん」

 

文乃 (恥ずかしいけど、笑い話になるかなと話してしまった……)

 

うるか 「へぇー。文乃っちのおっぱいが大きくなる夢ねー……」

 

うるか (……もし、文乃っちのおっぱいが大きくなったら、きっと完全無欠の超絶美女のできあがりだよね)

 

うるか (そうなったら……) ジーッ

 

成幸 (……そういう話は女子だけのときにしてくれないかな……)

 

うるか (……きっと成幸も、文乃っちのこと大好きになっちゃうよね)

 

うるか 「だ、ダメだよ! 文乃っちはおっぱい大きくなっちゃ!」

 

文乃 「ダメ!? 禁止されるようなことなの!?」

 

うるか 「文乃っちにもひとつくらい欠点がないとダメだよ! じゃないと……」

 

うるか (成幸が文乃っちのこと好きになっちゃうかもしれないし!!)

 

文乃 「……さりげなくわたしの胸が小さいことを欠点扱いされた」 ズーン

 

成幸 「ほ、ほら! アホな話してないで、さっさと勉強に戻るぞ。受験生だろ」

 

理珠 「その通りですよ。胸が大きくなる夢なんて、文乃の潜在的な欲求が表れただけのことでしょう」

 

理珠 「取るに足らないことですよ」

 

文乃 「………………」

 

ムギュッ

 

成幸 「なっ……///」

 

理珠 「な、なぜ無言で私の胸を鷲づかみするのですか!? 文乃!」

 

文乃 「“取るに足らないこと” ……?」

 

ギラリ

 

文乃 「そんな悪いことを言うのはこの胸かー! この凶悪なおっぱいなのかー!?」 ムギュムギュムギュウ

 

理珠 「や、やめてください! 成幸さんもいるんですよ……っ」

 

うるか (……成幸がいないとこでなら揉んでもいいのかな? 今度やってみよ)

 

成幸 「お、落ち着け、古橋! 緒方の胸を揉んでもお前の胸は大きくならないぞ!?」

 

文乃 「何でそこで全力で煽りに来るのかな成幸くん!?」

 

………………

 

文乃 「……ごめんなさい。取り乱しました」

 

理珠 「いえ、こちらこそ、取るに足らないことというのは言いすぎでした。ごめんなさい」

 

成幸 「……うん。俺も空気読めないことを言って悪かったよ」

 

うるか (胸ねー。水泳選手的にはあんまりないほうがいいんだけど……)

 

うるか (それを言ったらまた文乃っちが暴れ出しそうだからやめとこーっと)

 

うるか 「ん、そういえばさ、リズりん。さっきなんか変なこと言ってなかった?」

 

理珠 「はい?」

 

うるか 「文乃っちのセンザイテキナヨッキューがどーの、とか……」

 

理珠 「ああ……。潜在的な欲求の表出ですか」

 

理珠 「……最近、受験勉強の合間に心理学の勉強をしているのですが、読んだ本に出てきたんです」

 

理珠 「“即物的すぎる夢は、当人の潜在的な欲求を示している場合が多い”」

 

うるか 「???」

 

理珠 「……オホン。うるかさんに分かりやすいように、簡単な言葉に直すと、つまり……」

 

理珠 「夢に出てきたことが、本人が望んでいることだ、ということです」 

 

うるか 「夢がそのまま本人の望むもの……」

 

うるか 「……つまり、文乃っちはおっぱい大きくなりたいってこと?」

 

理珠 「……身も蓋もない言い方をするとそうなりますが、」

 

文乃 「………………」 ズーン

 

理珠 「今度こそ文乃の目が死んでしまったので、それ以上はやめてあげてください」

 

うるか 「えー、でもそれって面白いね!」

 

文乃 「……面白い? わたしが胸が小さいことで悩んでるのがそんなに面白いかー!!」

 

うるか 「ど、どうどう、文乃っち。そうじゃなくてさ……」

 

うるか 「夢に出てきたことをその人が望んでるってコトなんでしょ?」

 

うるか 「文乃っち、夢の中で、おっぱいが大きくなること以外に、何かなかったの?」

 

文乃 「えっ……」

 

文乃 「……あ」

 

 

―――― 『午後からは結婚式の最終打ち合わせもあるんだからな?』

 

 

文乃 「……っ」

 

うるか 「お、なんかあったのー? 教えてよー」

 

文乃 「だ、ダメ! ダメだよ! 絶対言えないよ!」

 

理珠 「? どうしたのですか、文乃。そんなに顔を真っ赤にして」

 

理珠 「胸が大きくなったこと以上に恥ずかしいことなのですか?」

 

文乃 「わたしがとんでもなく恥ずかしいやつみたいな目でみるのはやめてくれないかな!?」

 

うるか 「えーっ、じゃあいいじゃん。教えてよ~」

 

文乃 「………………」 (い……言えるかー!!)

 

 

―――― 文乃 『いやー、実はふたりの好きな人と結婚する夢を見たよ』 

―――― 文乃 『それがわたしの望みなんだとすると、今日からわたしたちライバルだね!』

 

 

文乃 (そんなこと言えるかーーーーーーー!!)

 

成幸 「……ったく。ほら、そろそろいい加減にしろよ」 スッ 「古橋も話したくないみたいだし」

 

文乃 「あっ……成幸くん……」

 

うるか 「えーっ! 文乃っちのガンボーが知りたいのにー」

 

成幸 「ダメだ。今から十五分後に英単語の確認テストをするぞ」

 

うるか 「へ!? 十五分後!? じ、時間ないじゃん! 早く勉強しなきゃ!」

 

成幸 「緒方も。十五分後に古文の活用の穴埋めテストするからな」

 

理珠 「は、はい! 今日こそ完ぺきにしてみせます!」

 

成幸 「古橋は、今日はひたすら計算だな。そろそろインテグラルとは友達になれそうか?」

 

文乃 「えっ、あ、う、うん。まだ殴り合いをしてる真っ最中かな……」

 

成幸 「存外熱血な友達の作り方だな。ま、いいや。不定積分の練習問題を繰り返しやっておいてくれ」

 

文乃 「うん!」

 

成幸 「気を抜くなよ。そろそろ積分三角関数が同居を始めるからな」

 

文乃 「……あんまり考えたくない、けど……」 グッ 「がんばるよ。成幸くん!」

 

成幸 「ああ、その意気だ」

 

 

………………

 

文乃 「………………」

 

カリカリカリカリ……

 

 

―――― 『わかってるよー、だ。しっかり者の旦那さんを持ててわたしは幸せ者だなー」』

 

 

文乃 (……わたしの胸が大きくなくても)

 

文乃 (わたしたちが結婚式を間近に控えた恋人同士じゃなくても)

 

文乃 (きみがしっかり者であることは、変わらない)

 

文乃 (……ねえ、りっちゃん、うるかちゃん。そして、成幸くん)

 

 

―――― 『夢に出てきたことが、本人が望んでいることだ、ということです』

 

 

文乃 (……わたしは、それを望んでもいいのかな)

 

文乃 (わたしは……)

 

文乃 (きみを、好きになっても、いいのかな……)

 

 

 

 

元スレ

成幸 「クリスマス、うちに来ないか?」

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