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留美「八幡、一緒にお風呂入ろう♪背中流してあげる」 【俺ガイルss/アニメss】

 

ピンポーン

 

小町「……はい」ガチャ

 

静「こんにちは小町くん」

 

小町「平塚先生お久しぶりです」

 

静「…比企谷はあいかわらずなのか?」

 

小町「ええ…8年前からずっと…」

 

静「……そうか」

 

 

十年前

 

修学旅行の一件から奉仕部の仲は悪くなり、小町とも不仲になり、そのまま和解されず時が流れた…

 

誰が言い出したのか八幡が雪ノ下や由比ヶ浜に見放されたという妙な噂が流れ、文化祭の一件の事もあり、一気に噂広まってしまった

 

『最低ヤロー学校くんじゃねえよ』

 

『[ピーーー]』

 

修学旅行後の奉仕部の空気と小町との不仲により精神的に弱っていた八幡には耐えきれなかった。

八幡の事を悪く思っていなかった者もいたが、圧倒的な人数差で守りきれなかった。

かろうじて高校は卒業した八幡だが、それ以来部屋に引きこもってしまった。

これにはあの日以来あまり八幡と会話していなかった小町もただ事ではないと気づいた。

小町は受験に失敗して総武高に行っていない。八幡は家では表面上平気なふりをしていたため、八幡が学校でどんな仕打ちを受けていたか気づいていなかったのだ。

小町は話にくそうにしている奉仕部の二人から修学旅行の事とその後の学校での態度を聞きだした。

 

 

8年前

 

小町「なんですかそれ…最終的にお兄ちゃんに任せたくせに後になってから非難するなんて、自分勝手じゃないですか!!」

 

小町「長い間お兄ちゃんと部活やっていたら、どんな方法を使うかわかっているはずでしょ!本気で告白したわけじゃないとわかっていながら…そんな…」

 

小町「あの状況でお兄ちゃん以外の解決案あったんですか!?」

 

雪乃「そ、それは…」

 

結衣「でもヒッキーが…」

 

小町「まだ自分たちが悪くないと言いますか!自己保身ばかりでお兄ちゃんの事全く考えてない…こんな人たちを小町は…お兄ちゃんに…」

 

結衣「こ、小町ちゃん…」

 

小町「行動しなかった人とろくに考えもしなかった人にお兄ちゃんを非難する資格はありません!!」

 

小町「そもそも見た目がチャラ男と腐女子がどうやったら恋人同士になれると思うんですか! 由比ヶ浜さんなんでこんな無謀な依頼を受けようといったんですか!そんなに脈があるように見えたんですか!」

 

結衣「そ、それは……今思えば全くなかったかも…」

 

小町「空気を読むことがあなたの特技だったんじゃなかったんですか!それはどこにいったんですか! 奉仕部をなんでも解決できる便利屋かなんかと幻想抱いていたんじゃないですか!」

 

結衣「うう…」

 

雪乃「言い過ぎよ…小町さん」

 

小町「あなたもですよ雪ノ下さん!最初乗り気じゃなかったくせにあっさり由比ヶ浜さんの意見に流されて甘すぎじゃないですか!」

 

雪ノ下「っ!!」

 

小町「逆にお兄ちゃんにはつらく当たって…奉仕部は魚の捕り方を教える部であって与える部じゃなかったはずです!その理念はどこにいったんですか!」

 

雪乃(もう…私達を名前で呼んでくれないのね)  

 

小町「流されるだけの人形が…」

 

雪乃「っ!?」

 

小町「お兄ちゃんが言うとおり最初から、そんな自分本位な依頼受けなければよかったんですよ! 相模さんの依頼で軽々しく依頼を受けてひどい目にあったの忘れたんですか!!」

 

結衣「そ、それは…」

 

雪乃「………言い返す言葉もないわ」

 

小町「依頼を受けない方がいいと忠告したお兄ちゃんの言葉は聞かず、あげく受けることに賛成だったあなたたちはろくに何もできず代わりに依頼を片付けたお兄ちゃんを否定した… どんだけ身勝手なんですかあんたたちは!!」

 

結衣(小町ちゃんのいうとおりだ…アタシ勝手に依頼を引き受けてばっかで…一度も自分で解決したことなかった… いつもヒッキーがなんとかしてくれて…それに甘えてばっかりで…)

 

小町「しかも…お兄ちゃんが学校でつらい目にあっていても助けようとしなかった…

噂を否定したり、奉仕部の依頼の事を話したりすれば状況は変わったはずなのに…」

 

雪乃「そ、それは…」

 

小町「最低です…もう顔も見たくありません!二度と連絡してこないでください!!」

 

雪乃「ま、まって!!」

 

結衣「ヒッキーに会わせて!お願い小町ちゃん!」

 

小町「まあ最低なのは小町もですけどね………事情を詳しく知らなかったくせにお兄ちゃんを無視したり、冷たい態度をとっていたし」

 

小町「でも最初に原因をつくったのはあんたたちだ!!」

 

「「!?」」

 

小町「返してよ…」

 

結衣「小町ちゃん………」

 

小町「小町のお兄ちゃんを返してよ!!あんたたちと関わらなければ小町のお兄ちゃんこうならなかった!! ボッチでシスコンで数学苦手でひねくれたお兄ちゃんのままで!けして部屋に引きこもって、妹の私が入っただけで怒鳴りつけるような人にならなかった!!」

 

雪乃「比企谷くんが!?」

 

結衣「あのヒッキーが小町ちゃんにそんな態度とるなんて…信じられない」

 

小町「そのヒッキーって呼び方やめろ!小町のお兄ちゃんが引きこもりになってバカにしているのか!!」

 

結衣「ち、ちがっ…」

 

小町「もう二度と顔も見たくない!!お兄ちゃんは小町がずーと守っていきます!!!」ダッ

 

雪乃「小町さん!」

 

結衣「うう…ごめんヒッキー…ほんとにごめん…」グスッ

 

雪乃(私のせいで一人の人生が…いや二人の人生を狂わせてしまったのね………なにが世界を変えるよ…人を一人救うどころか不幸にして、自信過剰にもほどがあるわ!あのころの私!)

 

雪乃(私と由比ヶ浜さんは取り返しもつかないことをしてしまった…それは償うことも権利さえない…ごめんなさい比企谷くん…ごめんなさい…)

 

 

現代

 

静「比企谷に渡してくれないか」つマックスコーヒー一ダース

 

小町「…いつもすいません」

 

静「比企谷に会って話をしたいが、やっぱり入れてくれないだろうな…」

 

小町「無理ですね…妹の私でさえ中に入ろうとするだけで怒鳴るので、この家でお兄ちゃんの部屋に自由に出入りできるのはカマクラだけです」

 

静「………」

 

小町「あの町から引っ越す時もそれは大変でした…」

 

静「できれば小町くん。雪ノ下と由比ヶ浜を比企谷に会わせてやってくれないか?」

 

小町「愚問ですね。そんなこと許すはずないじゃないですか。謝って罪悪感を減らしたいだろうけどそうはさせませんよ。 それに意味がない。お兄ちゃんを拒絶しておいて後から自分から近づくなんて都合良すぎです」  

 

小町「っていうか、小町あの二人を見たら何するかわかりませんから」クスッ

 

静「…っ」ゾクッ

 

小町「平塚先生…」

 

静「な、なんだね小町くん?」

 

小町「あの二人にこの場所教えてないですよね?」

 

静「もちろんだ…いくらあの二人が元教え子とはいえ…比企谷がああなったのもあの二人の言葉と態度が始まりだったからな… 小町くんの許可なしにあの二人に教えたりしないさ」

 

小町「………そうですか」

 

静「陽乃は雪ノ下たちに愛想尽きたみたいでな。おそらくこの場所を知っているが二人に教える気は全くないようだ。むしろあの二人に罪は一生消えないよ…と、いっていた」

 

小町「陽乃さんが…」

 

小町(昔のお兄ちゃんに匹敵するぐらいシスコンの陽乃さんが雪ノ下さんに見限るなんて…)

 

小町(どんな悪い状況でも楽しむあの人でさえお兄ちゃんの事を考えてくれてるんだな…)

 

静「陽乃からの伝言だ。あの子の姉である私の顔なんて見たくないだろうけど、もし何かあったら言ってね!協力するから。もちろんあの子達には一切教える気はないから安心してね、だと」

 

小町「………」

 

静「私の理想では比企谷が元気になって、雪ノ下達が謝って、二度とこうならないようにより深い絆で結ばれるのがいいんだがな…」

 

小町「平塚先生…そんなのありえませんよ」

 

静「………」

 

小町「現実は優しくない……現実は全く優しくない…」

 

小町「そんな平塚先生が思い描くような未来予想図は絶対ありえませんよ」

 

小町「平塚先生には恨みはありません。在学中お兄ちゃんを庇っていたようですし…」

 

小町「でも時々思うのですよ…平塚先生がお兄ちゃんを奉仕部になんか入れなければと」

 

静「!?」

 

小町「お兄ちゃんが奉仕部に入っていなかったらこんな結末にならなかっただろうと、どうしても!どうしても!思ってしまうのです!」

 

小町「この私の苦しみわかりますか!!」

 

静「す、すまない!もう二度とこんなことはいわない…」

 

小町「………」

 

静「戸塚はどうしてる?」

 

小町「三日前きてくれましたよ。お兄ちゃんの部屋で話を聞いてくれていました」

 

静「そうか…すごいな戸塚は」

 

小町「全くです。あの人が女性だったらほんとよかったのに…あの人ならお兄ちゃんを安心してまかせられるのに…どうしてこううまくいかないんでしょうね…」

 

静「そろそろ私は帰るとするか…小町くん何かあったらいつでも言ってくれたまえ」

 

小町「…はい。気をつけて帰ってください」

 

静「またくるよ」バン

 

比企谷母「…平塚先生帰ったの?」

 

小町「……うん」

 

比企谷母「もうすぐ、ミヤネ屋で引きこもりの事いうみたいだからテレビ見にいきましょう…」

 

『この番組はホーリーナイトメア社の提供でお送りします』

 

小町「………」

 

比企谷母「………」

 

比企谷母「当時は八幡がここまでひどい引きこもりになるなんて思ってもいなかったわ………あの子なんだかんだ言っても大体のことは一人でやってきたし、学校もあまり休まず通っていたから…」

 

比企谷母「大学生になれば適当にほっぽりだして一人暮らしさせようとさえ思っていたのに……それなのにこんなことになるなんて…」

 

小町(お母さんはお兄ちゃんが完全に引きこもってから、1ヶ月もしないうちに会社をやめ、専業主婦になった…)

 

小町(お兄ちゃんの様子があまりに異常だったからか? それとも小町が泣いてばかりいたから心配になったのか? おそらく両方かな…)

 

小町(普段からお兄ちゃんをないがしろにしていたお母さんやお父さんもこんな状態のお兄ちゃんを追い出して一人暮らしさせようとしなかった…)

 

小町(息子への愛情は一応あったのか…それとも一人にさせると事件を起こしかねないから目の届く場所におきたかったからかもしれない…)

 

比企谷母「十年前…八幡がそんな目にあっていたなんてほんと知らなかったわ…あの子何も言ってくれなかったから…私たちも聞こうとしなかったけど…」

 

小町「………」

 

比企谷母「結局…八幡が高校卒業した後まで気づけなかった…

ほんと私達って小町ばかりに構って、息子をどれだけないがしろにしていたか思い知ったわ…」

 

小町「お母さん…」

 

比企谷母「八幡が変わったのは高校卒業後…まるで別人のように変わってしまった」

 

比企谷母「あの頃は思いもしなかったわ。八幡が私たちにあんな冷たい目で見るようになるなんて…あんなに大事にしていた小町にさえ、そんな目で見た時は目を疑っていたわ。

あんなシスコンだった八幡がこんな変わってしまうなんて…」

 

小町「あのころはそんな日がくるなんて思ったことなかったよ… どんなに小町がワガママ言っても本気で怒った事がないお兄ちゃんが…」

 

比企谷母「いま、この家で八幡が普通に接しているのはカマクラだけだもんね…カマクラにだけには冷たい眼差し向けないし、ネコだからなのかもしれないけど…」

 

小町「お兄ちゃんいつも部屋に引きこもって全然小町と話してくれなくなった。 私が部屋に入ろうとするとすごく怒るし…昔はあんなじゃなかったのにきっともう私のことなんか好きじゃなくなっちゃったのよ」

 

母「人は変わってしまうのね…」

 

小町「うう…」グスッ

 

母「時間に流されたり…何かに押しつぶされたりして…」

 

小町「小町が…小町があの時お兄ちゃんを支えてあげられていたら、こうならなかったかもしれないのに…」グスッ

 

母「悲しいけれど私たちにはどうすることもできないわね…時や運命に逆らえる者なんていやしないから…」

 

小町「そんなことない!絶対お兄ちゃんを元に戻して見せる!それでもダメだったら、小町がお兄ちゃんを一生守る!!」

 

母「小町…」

 

ピンポーン

 

母「今日は来客が多いわね…」

 

小町「…小町が出てくる」

 

小町「…はいどちらさまですか?」

 

?「…八幡いる」

 

小町「え~と…お兄ちゃんの知り合いですか?」

 

小町(すごくキレイな人だな…大学生くらいかな? なんでこの場所を知ってるんだろう? でもどこかで見たことあるような…)

 

留美留美…鶴見留美…十年前キャンプの時、八幡に救われた」

 

小町「…留美ちゃん!? あのときの…どうやってここに?」

 

留美「平塚さんという人に教えてもらった」

 

小町(あの人が…どうする…お兄ちゃんに会わせるべきか追い返すべきか…)

 

留美「お願い八幡に会わせて!」

 

小町(この子さっき救われたといった…つまりあの時の出来事の真相に気づいているということかな…? なら…)

 

小町「わかった。入っていいよ留美ちゃん…でも平塚先生に聞いていると思うけど、お兄ちゃん部屋から全く出てこないから話できないかもしれないけどそれでもいい?」

 

留美「うん。私は八幡にあの時のお礼を言いたくて…」

 

小町「ありがとう留美ちゃん…お兄ちゃんは二階の奥の部屋だから」

 

留美「八幡」コンコン

 

八幡「…だれだ」

 

留美「私だよ鶴見留美。八幡にお礼をいいに来たの。開けてくれる」

 

八幡「……聞き覚えがない声だな…まあいい、カギは開いてる入ってきていいぞ」

 

留美「…ありがとう」

 

留美(なんて感情がこもってない声…よほどつらい目にあったんだね)

 

留美(私は八幡のおかげで救われた。だから今度は私の番!八幡は私が救ってみせる!)ガチャ

 

留美「!?」

 

八幡「やあ、こんにちはちょうどお祈りをしていたところだよ」

 

留美(これが八幡の部屋……なんて薄暗い部屋なの。怪しげな証明とロウソクの明かりで照らされてはいるけど、カーテンは締め切っているし…)

 

留美(それにあの像は何…? 大きさは人間サイズくらい…? でも全く見たことない…手作りかな?)

 

留美(部屋の半分が祭壇になっている。妙な装飾をされた柱が四本もあるし…他にもいろいろ飾られている…)

 

留美(ベッドや本棚が見当たらない…改造して祭壇にしたのかも…)

 

留美(部屋に引きこもって、怪しい宗教を創り出したと聞いていたけど…ここまでとは思ってなかった)

 

八幡「ごらんこれはマッカン様というんだ。この世の者に癒しと潤いを与えるマックスコーヒー。 そのマッ缶をたくさん集めて、それを元に作り上げたのがこのマッカン様の像だ。安らぎと幸運を呼ぶお守りだよ」

 

八幡「優しさと癒やしの波動がビンビン伝わってくるだろう。苦い人生にすばらしい甘みと愛をくれるメシアだよ」

 

八幡「考えてみるがいい、兄弟。なんと私たちの毎日は不安と恐れに支配されているだろう」

 

八幡「いつの間にか消え去る昨日、なにひとつ見えない明日、そして、なすすべもなく流されるだけの今日… そんな中で日々私達を守り、力強く支えてくれるのがこうした人の祈りがこもった、神聖なアイテムなんだよ」

 

八幡「さあ兄弟よ。私とともに祈りを捧げて心の平安を取り戻そうじゃないか!真の癒やしと安らぎはすぐそこに!マッカン様とともにある!!」

 

留美「………八幡」

 

留美(こんなになるまで追いつめられていたんだね八幡………心に深い傷を負って不安定になって…支えが必要になるほど… 自分が大好きだったもの、いまだ信じられる物を心の拠り所にして宗教にまでしてしまうなんて…)

 

留美(私も八幡の心の支えになりたい!戸塚さんや材木座さんという人みたいに…いやそれ以上に! 女の私にだってできることはきっとある!私はけして見捨てたりしないよ八幡…私は願望も理想も押しつけたりしない…今の八幡の姿や考えを全て受け止めてみせる)

 

留美(だって…私は八幡のことが……)

 

留美「八幡、私もお祈りしていい?」

 

八幡「ああ、もちろんだ兄弟。共に祈ろうじゃないか」

 

留美(兄弟…私、女なんだけど)

 

留美「………」スッ

 

留美(手を合わせて祈ろう…八幡が元気になりますように…)

 

八幡(熱心に祈っているみたいだな。感心感心)

 

八幡(なんとなくだがこいつボッチだった時期があるな…いろいろ聞いてこないでまずはお祈りするとはボッチの空気わかってんじゃねえか)

 

八幡「まあ、とりあえずこれ飲めよ」つマッ缶

 

留美「ありがとう」

 

八幡「自己紹介する、俺は比企谷八幡。マッカン教の教祖だ。で、おまえは?」

 

留美「鶴見留美。十年前、八幡のおかげで救われた」

 

八幡「はっ、十年前?何言ってんだ?俺はおまえと会った覚えなんかねえぞ?」

 

留美(やっぱり忘れてる…無理もないか十年前だしね…それに高校時代の後半かなりひどい目にあっていたと平塚先生がいっていたし、豆腐メンタルだったら不登校か自殺してもおかしくないレベルだったらしい…)

 

八幡「おまえは材木座に紹介されてここに来たマッカン愛好会の会員じゃないのか?」

 

留美「…ちがうよ。私は八幡にあの時のお礼をいいにきたの」

 

八幡「……悪いが帰ってくれ。お前が誰だか知らないが、俺の事はほっといてくれ…」

 

留美「ほっとけないよ!いまこうして私が普通に生きていられるのも八幡のおかげ!十年前、キャンプで八幡が私を救ってくれたおかげなんだから!」

 

八幡「…十年前……キャンプ……」

 

留美「思い出して、あの時みんなからはぶられて孤立していた小学生…それが私だよ」

 

八幡「…………まさか…ルミルミ……か?」

 

留美「そうだよ、私がその鶴見留美。やっと思い出してくれた…八幡」

 

八幡「あ、ああ…」

 

八幡(まじかよ…あのルミルミがこんなに美人になっているとはな……どうりでボッチの空気が読めると思った)

 

留美「私、八幡に会いたかったの。あの時のお礼を言いに行こうと思ったら、どこに住んでいるのかわからなかったし…人に聞いて行ってみたら引っ越していなかったし、ずっと…ずっと会いたかった…」

 

八幡「そうか………わざわざこんな遠い所までわりいな…だが、俺は何もしてねえぞ。あれは…」

 

留美「ううん、そんなことない。あの時はすぐ気づかなかったけど、あの日から嫌な目に合わなくなったし、それで八幡のおかげだとわかって…」

 

八幡「………」

 

留美「だからお礼をいわせて。…ありがとう、あの時私を救ってくれて」

 

八幡「!?」

 

八幡「れ、礼なら別にいい…」プイ

 

留美「ほんと感謝してるよ八幡には…八幡は私の恩人だよ」

 

八幡「…買い被りすぎだ。俺は誰かに感謝されるような人間じゃない」

 

留美「そんなことないよ!」

 

八幡「もう用はすんだろ…なら悪いが帰ってくれ」

 

留美「ど、どうして…?」

 

八幡「俺みたいな引きこもりと関わっても得しないぞ。むしろマイナスだ」

 

留美「そんなことない。私は八幡と一緒にいたい」

 

八幡「…おまえが優しい奴だってことはわかる…人を見下したり、利用するような奴でないことは…」

 

留美「………」

 

八幡「わざわざこんな場所まで突き止めて俺なんかにお礼をいってくれたし、キャンプの時もルミルミをはぶって楽しんでいた上に、いざとなったら自分達が助かるため真っ先におまえを生け贄にしようとした心醜い奴らでさえ、おまえは助けたりするくらいだからな」

 

留美(八幡…私の事そう思っていてくれたんだ…

うれしい…)

 

八幡「だがダメなんだ……お前が優しい人間だと頭でわかっていても俺の心が拒むんだ…」

 

八幡「人を信じるのが怖いんだ…関わるのが怖い…今の現状を変えるのが怖い…」

 

留美「八幡…」

 

留美(無理もないか…今の八幡は家族さえも心を許せないほど心が傷ついている…ちょっとしか関わったことがない私をあっさり信じる方がおかしい…)

 

八幡「これ以上…人との関わりを増やしたくない……俺は戸塚と材木座だけと話せればいい…」

 

八幡「会話はできないがカマクラもいるしな…」

 

留美「………」

 

八幡「だから帰ってくれ…おまえみたいないい女が無理して俺といる必要はないんだ」

 

留美「待って!お礼はまだあるの!」

 

八幡「…何を言っている?俺がおまえと関わったのはキャンプの時だけだろ。それ以上何があるっていうんだ?」

 

留美「…中学で別のクラスの子がイジメを受けていたの」

 

八幡「………」

 

留美「その子は私と別の小学校出身の子だけど、小学時代私と似たようなことされていたらしいの」

 

八幡「!?」

 

留美「その事が同じ小学校の子から広まって…その子はクラス中の子からはぶられた…

でもそれがエスカレートしてトイレで水をかけられたり、机に落書きされたり、ひどい暴言をはかれたりしていたらしいの…」

 

八幡「……胸くそ悪い話だな」

 

留美「…動画サイトにひどい映像流されたり、追いつめられたその子は………自殺してしまったの」

 

八幡「………なんだと?」

 

留美「…私は別のクラスだったから事件が発覚するまで知らなかったけど……聞いた時はすごくショックだった…」

 

八幡「………」

 

留美「…私もはぶられたことがあるからその時のみじめな気持ちわかるし…親に相談しづらいのも理解できる。 でも私はその子が苦しんでいるのを気づいてあげることもできなかった…」

 

八幡「………おまえは悪くない。悪いのはイジメやっていた奴らだろう」

 

八幡(別のクラスの名前も顔もろくに知らない奴がどんな目にあっているか気づける方が普通じゃないんだよ。 イジメやっていた連中もバレないようにやっているに決まっているし)

 

留美「…それで思ったの。もし八幡がキャンプの時、あの状態をリセットしてくれなかったら、私も同じ目に合っていたんじゃないかって」

 

八幡「!?」

 

留美「八幡が助けてくれなかったら、小学校卒業まであの状態が続いていただろうし…中学に入ったらその子と同じような目に合わされていたかもしれない…耐えきれず死んでいたかもしれない…」

 

八幡「ルミルミ…」

 

八幡(そんなことねえよ!なんて無責任なことは俺にはいえない…誰よりも人の悪意を受けていた俺だからこそわかる。 ルミルミが狙われる可能性が高かったと…)

 

八幡(それにあの容姿だ…女は嫉妬してよりひどいことする可能性が高い…)

 

八幡(それにたぶんこいつは親に心配かけないよう一人で抱え込む…そうなったら)

 

留美「だから私がこうやって普通に生活できるのも八幡のおかげなんだよ」

 

八幡「俺のおかげ」

 

留美「そう八幡のおかげ。あのキャンプであの状態を解消してくれたおかげで私は中学で1から始めることができた。少ないけど気の許せる友達もできた」

 

留美「あのキャンプで唯一私を助けることができたのは八幡だけ、八幡のやり方が私を救ってくれたの」

 

八幡「…………俺の…やり方が……」

 

留美「そうだよ。あの時、八幡が立てた作戦が私の人生をいい方に変えてくれたんだよ。

もしあの時、八幡がキャンプに来てなかったら、おせっかいな金髪の人のせいで状況をさらに悪くなるところだった…」

 

八幡「……俺は…」

 

留美「お母さんも感謝していた。特に中学の事件の後は八幡に泣いて感謝していた。 もちろん私もすごく感謝している。八幡ほんとにありがとう。私を助けてくれてありがとう…八幡は命の恩人だよ」ペコリ

 

八幡「………あ…」

 

留美「八幡は間違ってないよ。あの時、キャンプに参加している人の中には不満あった人もいたかもしれないけど… その人たちは考えが甘いだけ、浅はかなだけ、私が八幡の作戦のおかげで救われたのはまぎれもない事実…八幡は私にとって大切な人なの」

 

八幡「…………おまえは…俺を否定………しない…のか…?」

 

留美「するわけないがない。私は八幡に助けられた。誰がなんと言おうと、私もお母さんも戸塚さんも材木座さんも八幡の事を否定なんかしない。だから八幡何度もいうね」

 

留美「私を救ってくれてありがとう」ニコ

 

八幡「………」

 

留美「………」

 

八幡「………そ、そうか……こんな俺でも………誰かを救うことが……できたんだな……」ポロ

 

留美「!?八幡泣いているの…」

 

八幡「…あ、あれ…………なんで俺…泣いているんだ……別に悲しいわけじゃねえのに…………なんで…なんでだ…」ポロポロ

 

留美「八幡!」ダキッ

 

八幡「!?ル、ルミルミ…おまえ」

 

留美「大丈夫だよ!これからは私もついているから!ずっとそばにいるから!だからもう一人で抱え込まないで!」

 

八幡「なんでだ………なんでおまえはそんなに俺に優しくしてくれるんだ………?なんでそこまでいってくれるんだ……?俺には…そんな価値なんてないのに………」

 

留美「………好きだから」

 

八幡「え?」

 

留美「私が八幡の事大好きだから」

 

八幡「!?」

 

留美「ずっと好きだった…最初はこの気持ちがなんなのかわからなかった。でも時がたてばたつほどどんどんこの気持ちが大きくなって… いつのまにか八幡の事ばかり考えてるようになって、八幡が好きなんだと気づいて…それで」

 

八幡「………」

 

留美「………返事は断ってもスルーしてもかまわない…私はどんなことがあっても八幡の味方だから」

 

八幡「ルミルミ…」

 

留美「八幡…」ギュ

 

八幡「………おまえのおかげで少し報われた気がする…俺みたいな存在でも誰かの役にたっていたっと、少し実感できた……」

 

留美「うん…」

 

八幡「…だがもう俺は駄目だ……もう引きこもって八年もたってしまった…おまえと共に道を歩めない」

 

留美「…そ、そんな……」

 

八幡「その道は俺にはまぶしすぎる。8年前、俺は社会に出ることをきっぱりあきらめたんだよ」

 

留美「誰にだって幸せになる権利はある!もちろん八幡にも!」

 

八幡「何をいっても無駄だ。自分で選んだ道だ。後悔はない」

 

留美「…八幡」

 

八幡(悲しそうな顔してんな…悪りいな好きになった奴がこんないくじなしで…)

 

留美「………」

 

八幡(何かいいたそうだな……そうか…ほんとはあきらめるのはまだ早いとか、がんばれとか言いたいんだな。 無理強いしたら俺がつらくなるだけだとわかってくれてるんだな。

俺の気持ちを良く理解して考えてくれている。ほんと俺みたいな引きこもりにはもったいなさすぎるぜ)

 

八幡「それにそう簡単に自分の生き方なんてころころ変えられるもんじゃねえ」

 

留美「で、でも…」

 

八幡「もう十分だ。おまえから礼を言われて俺はすごくうれしかったし、十分救われた。

もうお前が俺に恩を返す必要はないんだよ。おまえは幸せな人生を送れ、俺の事はもう気にすんな」

 

留美「私の幸せは八幡を幸せにすること。それっていけない考え方?」

 

八幡「………」

 

留美「八幡?」

 

八幡「…………すまん…今日は帰ってくれ……頭の中を整理したい」

 

留美「わかった…でもまた会いに来ていい?」

 

八幡「…………考えさせてくれ」

 

?「ちょっびっと待った!」

 

八幡「な、なんだ今のは?」

 

留美「八幡、今の声なに?」

 

?「愛はいつでもそこにある、人が気づかないだけで」

 

八幡「ま、まさか…おまえは…」

 

留美「マッカン様!?」

 

?「人はそう呼ぶ。いつどこで誰がつけたか、マッカン様と!」

 

マッカン様「ちゃお!」

 

八幡「そ、そんなバカな…!?」

 

留美「ど、どうして…!?」

 

八幡(おいおい一体どうなってんだよ!?マッカン様が動いてる…しゃべっている…なんで俺が作った像が動いているんだよ…わけがわかんないよ!!)

 

留美(な、なんで像がしゃべるの!?八幡も驚いているから心当たりないみたいだけど…害はないのかな?)

 

マッカン様「話は聞かせてもらった。その子が八幡の事をとても大好きだということだな」

 

留美「///」

 

八幡「ちょ、ちょっとまってくれ…!」

 

マッカン様「ちょっともひょっとこもない。悪いことはいわない。いい加減、逃げてばっかりいないで、自分の人生と向き合った方がいい」

 

八幡「む…」

 

マッカン様「なぜその子の好意を拒む。もうわかっているんだろ。その子の気持ちが本物だということを」

 

八幡「っ!!」

 

留美「そうなの…八幡」

 

マッカン様「その子は八幡を絶対見捨てたりしない…勝手に期待したり、失望したりなんかしない。 何があっても八幡の味方でいてくれるはず」

 

マッカン様「あの二人は八幡の味方だった…今も。でももう一人くらい信じる人間を増やしてもいいんじゃないか?」

 

八幡「戸塚…材木座…」

 

留美「八幡」ギュ

 

八幡「ルミルミ…」

 

マッカン様「愛と勇気のメッセンジャー。マックス、マックス、マックスコーヒー!!ゴー、ゴー!」ダッ

 

八幡「お、おい!」

 

留美「待って!」

 

八幡「い、いない…」

 

留美「足…早いね…」

 

八幡「……8年前の俺の選択は間違っていたというのか…?」

 

八幡「それなら俺のこの8年は、いったいなんだったんだろう…」

 

留美「大丈夫だよ…八幡」

 

八幡「ルミルミ…」

 

留美「これからは私もそばにいるから。 八幡の心の傷癒やしてあげるから」

 

八幡「………ありがとうルミルミ。 ずっと俺のそばにいてくれ…お願いだ」

 

留美「うん」

 

こうして八幡は留美という心を許せる大事な人を見つけた。

 

 

翌日、トイレに起きた八幡が部屋の前に発見したもの。

それは動かなくなったマッカン様だった。

 

八幡(ありがとう…マッカン様)

 

八幡にはマッカン様の表情が優しげに微笑んでいるように見えた

 

 

五年後、

 

八幡「ただいま」

 

留美「お帰り八幡!…もしかしてかなり疲れてる?」

 

八幡「ああ、明日は休みだし問題ない…それより留美おまえも大変だっただろ?家事や娘の世話も」

 

留美「そんなことないよ。愛する八幡と娘のためだもん」

 

八幡「いつも苦労かけてすまねえな…」

 

留美「それはいわない約束。私も八幡と娘といられるだけでとても幸せだから」

 

八幡「俺ももっとがんばって今より給料を上げるようにしないとな」

 

留美「あまり無理しないでね…八幡」

 

八幡(留美と再会して五年…けして裕福ではないが俺はいますごく幸せに暮らしている)

 

八幡(あのころはほんと大変だった…俺の引きこもりが治るまで二年近くもかかったし…それに親身になって協力してくれた留美の負担も大きかった事だろう)

 

八幡(戸塚と材木座にもかなり世話になったな…小町とも和解したし)

 

八幡(そして就職先を紹介してくれたのはなんとあの雪ノ下さんだった)

 

八幡(以前は俺を困らせたり、いじったりして楽しんでいたあの人が今まで雪ノ下達に俺の居場所言わないでくれた事も驚きだったが

私の妹が迷惑かけてごめんなさいっと、頭下げて謝った時は目を疑った)

 

八幡(雪ノ下さんのコネのおかげでなんとか職につけたし、困った事があったら相談にのるとまでいってくれた)

 

八幡(正直かなり助かった…もうあの人の事魔王と思うことできねえな…)

 

八幡(昔みたいに俺を弄ばないのはうれしいが…いつも元気なさそうのは気になるな。

雪ノ下家の長女としていろいろあるんだろうな…初めて会った頃はあの人まだ学生だったから多少は自由があったんだろう)

 

留美「八幡、一緒にお風呂入ろう♪背中流してあげる」

 

八幡「背中流すのはいいが、今日は変なことはなしだからな」

 

留美「そんな…」

 

八幡「前、風呂場でやりすぎて2人とも風邪ひくところだったろ」

 

留美「うう…」

 

八幡「い、いや…別にお前が嫌というわけじゃなくて…今寒い季節だから用心しとこうというだけだ。 ある程度暖かくなったらたまにならいいからな」ナデナデ

 

留美「う、うん」

 

八幡(求めてくれるのはすごくうれしいが…場所はベッドだけにしてくれ。まあそれだけ愛されていると実感できるけど)

 

八幡「留美、今日の飯はなんだ?」

 

留美「生姜焼きだよ」

 

八幡「お、豚肉か、いいな」

 

留美疲労回復には豚肉がいいし、生姜は体暖まるし、いつもお仕事がんばっている八幡が元気出るように作ったの」

 

八幡「ほんとおまえはいい妻だな…」ポロ

 

留美「八幡…また涙が」

 

八幡「あ、ほんとだ…あの日以来涙もろくていかんなほんと…」ゴシゴシ

 

留美「妻が夫のために食事を用意するのは当然の事だよ」

 

八幡「ありがとうな留美

 

八幡(こいつと結婚してほんとよかった)

 

 

寝室

 

留美「八幡♪」チュ

 

八幡「明日は三人で公園にでも行くか」ナデナデ

 

留美「そうだね。公園でのんびり過ごしながらマックスコーヒーでも飲もう」

 

八幡「ああ、それにしても娘が俺と同じようにマックスコーヒー好きになるとはな」

 

留美「フフ…八幡に似たんだね」

 

八幡「だろうな。だけど見た目はおまえ似でよかったぜ。 もし目が腐っていたらイジメに合わないか心配だったからな…」

 

留美「私は気にしないけど他の人はそうじゃないからね」

 

八幡「俺や留美の子供時代のようなみじめな思いは娘にはさせたくない」

 

八幡「おまえと俺で娘を絶対幸せにしよう」

 

留美「うん、その前に…」

 

八幡「ん?」

 

留美「二人目をつくりたいな」

 

八幡「ちょ!?」

 

留美「ねえ~八幡」ギュ

 

八幡「お前はまだ若い!そんなに急がんでも…」

 

留美「陽乃さんの後輩のめぐりさんという人が三人目産んだと聞いてうらやましくなって…」

 

八幡「だからっといって…」

 

留美「八幡」ウルウル

 

八幡「!?そんな顔されたらOKするしかねえだろ」

 

留美「ほんと!」

 

八幡「ああ、いくら先の事考えても人生どうなるかわからねえからな…作るか二人目?」

 

留美「うん♪」

 

留美(愛しているよ八幡)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

小町「あれから8年お兄ちゃんが引きこもって怪しい宗教をはじめた」留美「八幡」

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