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雪乃「ふふ、起きたかしら?」八幡「…おう」【俺ガイルss/アニメss】

 

雪乃「起きなさい、比企谷くん」

 

八幡「……」スー、スー

 

雪乃「……寝顔は意外とまともなのよね」

 

八幡「……」スー、スー

 

雪乃「はあ。……起きなさい、比企谷君。朝よ」ペシン

 

八幡「……ん?んう」

 

雪乃「起きたかしら?」

 

八幡「……お前今デコピンした?」ボー

 

雪乃「ええ。あなたがあまりに起きないから。もう九時よ」

 

八幡「おう。……なあ、俺、三限の日は十二時まで寝てたいって前に言わなかったか?」

 

雪乃「言ったわね。そしてそれは即却下したわ」

 

八幡「だったけか」

 

雪乃「ええ」

 

八幡「……おはよう、雪ノ下」

 

雪乃「おはよう、比企谷くん」

 

八幡「顔洗ってくる」テクテク

 

雪乃「はい」

 

シャー、ジャバジャバ

 

八幡「……」フキフキ

 

八幡(雪ノ下雪乃。彼女とこんな半同棲のような生活を続けて、もう一年近くになる)

 

八幡(同じ大学の別の学部に入学した俺達)

 

八幡(大学ってのは、同じキャンパスであっても、学部学科が違えば、なかなか知り合いと顔を合わさないもんだ)

 

八幡(ただ、俺と雪ノ下は住んでるアパートが隣同士だった。まあ、雪ノ下のはアパートというよりマンションだが)

 

八幡(そこで入学してしばらく経ったある日、事件が起きた)

 

八幡(雪ノ下にストーカーが出たんだ)

 

八幡(少し遅れて気づいた俺は、何かを考える前に走って、雪ノ下の家に向かった)

 

八幡(インターホンを鳴らして。玄関越しに聞こえたのは、とても怯えて憔悴しきった声だった)

 

八幡(そして問題解決に向けて、俺は動き出した)

 

八幡(その時に取ったいくつかの対策の一つとして、雪ノ下が俺の家に。俺が雪ノ下の家に泊まった。俺が現行犯で捕まえるために)

 

八幡(以来、犯人を警察に突き出し、事件が解決した後も。雪ノ下はなにかとうちに来るようになった)

 

八幡(どうにも恩返しがしたかったようなので。雪ノ下が満足するまでの間、しばらくは放っておこうと決めたのだが)

 

雪乃「比企谷くん。いつまで顔を洗っているの。朝ご飯、とっくにできてるわよ」

 

八幡(どうも最近は、俺の方もこの生活を『意外と悪くない』と感じてたりする)

 

 

―――朝食を食べ終わった後。二人ともこたつに入ってコーヒーをすすりながら

 

八幡「お前、今日何限だったっけ」

 

雪乃「三限と、五限」

 

八幡「ふうん。お前って講義と講義の間の時間、何してんの」

 

雪乃「読書とか、自習よ。高校の時と変わらないわ」

 

八幡「相変わらずだな」

 

雪乃「あなたも似たようなものでしょう」

 

八幡「まあ、否定はしない。でも今はたまに男とつるんでるよ」

 

八幡(男と言っても、親交があるのは一人だけだけど)

 

雪乃「へえ」

 

八幡「何その顔」

 

雪乃「人間が心底驚いた時、きっとこんな顔よ」

 

八幡「お前な……。俺だって、一人の時間の方が好きってだけで、別に友だち嫌いってわけじゃないからな」

 

雪乃「ええ、その友達ができなかっただけなのよね。だから余計に驚いてるのよ」

 

八幡「あっそ。お前、自分の言葉が結構ひどいこと知ってる?」

 

雪乃「さあ。……でも、よかったわね」

 

八幡(そう言ってほほ笑む雪ノ下は、意外とほんとうに嬉しそうだった)

 

八幡「まあな。あ、そうだ雪ノ下。俺今日晩飯いらねえ」

 

雪乃「え?……いえ、別に今日も作るなんて言ってないでしょうまだ」

 

八幡「でも言っとかないと後から文句言われそうだしな」

 

雪乃「それで、理由は?」

 

八幡「明日、ゼミの発表でな。準備しないといけないから、大学から何時に帰るか分からん」

 

雪乃「そう。……頑張ってね」

 

八幡「まあ、ほどほどにやるさ」

 

 

―――昼ごろ、大学の前

 

八幡「じゃあな」

 

雪乃「ええ。また明日」

 

八幡「おう。……あ、そうだ雪ノ下」

 

雪乃「何?」

 

八幡「朝飯、いつもさんきゅな。美味いぞ」

 

雪乃「そ、そう。じゃあまたね比企谷くんちゃんと講義受けるのよ」スタスタ

 

八幡「母ちゃんかよお前は。ほいよ、じゃあまた」

 

雪乃(自分でも、早口で、顔が赤かったのが分かった。あの男は、たまに卑怯。いつも卑怯だけど、ああいうのは本当に卑怯だ)スタスタ

 

雪乃(意図せずに顔が緩むから、できるだけやめてほしい。ああいうのは)スタスタ

 

 

―――八幡、ゼミにて

 

男「で。ハッチはまだ、例のあの子と付き合ってないの?」

 

八幡「ん」カタカタ

 

男「そうなんだ。なんで?」

 

八幡「んー」カタカタ

 

男「ハッチ、パソコンの世界に入りすぎ。今は恋バナしよーぜー」

 

八幡「お前、先週終わらせたからってうぜえ。俺は発表明日なんだよ」クル

 

男「まーまー。コーヒー入れたからさ。ちょっと休憩すべき」

 

八幡「ちゃんと砂糖入れたか?」

 

男「入れた入れた、たっぷりね」

 

八幡「っそ」ズズズ

 

男「それで、例の雪ノ下さんの話」

 

八幡(目の前でニコニコしている熊みたいな体のこの男は、ゼミの同期)

 

八幡(基本一人でいることの多い奴なのだが、話してみると朗らかで、穏やかな奴だ)

 

八幡(ある意味、俺が初めて獲得した貴重な同性の友人。だって戸塚は天使で、材木座は知り合いだしな)

 

八幡(ただ、ケーキ作りが趣味で、好きな話は恋バナというのがたまに傷だが)

 

八幡「別に、付き合うとか付き合わないとか、そういう対象じゃない。だいたい、見たことあんだろ。釣り合わないんだよ」

 

八幡(色んな意味で、な。きっと、雪ノ下もそう思ってるだろう)

 

男「ふうん?でも、半同棲はしてる」

 

八幡「それだって、あいつが義理人情でやってるだけだ。別に色っぽいことなんか一つもない」

 

男「ハッチがそう言うなら、本当なんだろうね」

 

八幡「そうだよ。勘ぐるな、めんどくさい」

 

男「はは、ごめんごめん。面白いから」

 

八幡「なにがだよ」

 

男「なんでもないよ」

 

男(多分君は気づいてないだろうけど、この話をしてる時の君の表情って、たまに照れたように唇を尖らせる)

 

男(それが、面白いんだ。見てて楽しい)

 

男「まあ、ハッチのそういうところ、結構すきだよって話」

 

八幡「……お前、ホモじゃねえだろうな。俺、男は戸塚以外認めねえぞ」

 

男「違うよー。僕、彼女いるし」

 

八幡「けっ、知ってるよ。そら、休憩おわり。続きするから手伝え」

 

男「はーい」

 

 

―――日付が変わりそうなぐらいの深夜、八幡帰宅

 

八幡「はー、さむ」ガチャ

 

八幡(ん?部屋の電気ついてる)

 

テクテク

 

雪乃「……」スー、スー

 

八幡「……ただいま、雪ノ下」

 

八幡(こたつに突っ伏して、穏やかな寝息を立てる雪ノ下がいた。傍には、読みかけらしい本が置いてある)

 

八幡「いい匂いするな……ああ」

 

八幡(台所のコンロの上には、とん汁とおでんの入った鍋がそれぞれ置いてあった。冷蔵庫には書置きが貼ってある)

 

雪乃『準備、お疲れ様です。とん汁とおでんは温めなおして食べてください。冷蔵庫にはサラダが入ってます。食べた食器は流しに置いといてください』

 

八幡(こいつ、手紙だと敬語になるんだよな……)

 

八幡(なんだろう。今、俺が感じているこの気持ち。これを言葉にしたらなんて言うのか、俺は知ってる)

 

八幡(でもその気持ちは、今までずっと、俺を苦しめるものでしかなかった。俺の黒歴史を量産するものでしかなかった)

 

八幡(今回も、そうなのだろうか。それとも、違うのだろうか)

 

八幡(まあ、どう転ぶのかはまだ分からないが)

 

八幡(いつか、雪ノ下に伝えるときが来るのだろうか。この気持ちを)

 

八幡(とりあえず今は。目の前のご飯を頂こう)

 

八幡「……いただきます」

 

八幡(彼女を起こさないようにそっと声をかけて、俺はコンロに火をかけた)

 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

雪乃「起きなさい、比企谷くん」八幡「……」スー、スー

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