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高木さん「これはね….私の、大切な宝物だよ」【からかい上手の高木さんss/アニメss】

 

高木さん「あははは、私の勝ち。西片よわいなぁ」 

 

西片「くぅ~!高木さんめぇ…!」 

 

高木さん「さーて、罰ゲーム、何にしよっかなぁ…」 

 

西片「うう…」 

 

 

いつもの帰り道。 

 

隣の席の高木さんと、気づいた頃には当然のようにいっしょに帰るようになった俺。 

 

高木さんは俺と歩幅を合わせるために自転車を押して、俺はそんな高木さんに一日中からかわれて。 

 

ああ、今日は何回腕立て伏せするのだろう。次こそ、いや明日こそは高木さんをからかってやろうとまた作戦を考えて。 

 

高木さん「あ、そうだ。手伝ってほしいことがあったんだ。ちょっときついかもだけど、平気?」 

 

西片「わからないけど、俺にできる範囲で」 

 

高木さん「西片なら大丈夫だと思うけど、どうだろうね」 

 

西片「何させるつもりなの…?」 

 

 

そんな日常が、このままずっと続くのだと俺は疑いもしなかった。 

 

 

高木さん「私、もうすぐ引っ越しするから」 

 

西片「……え……?」 

 

 

そう、信じていたんだ。 

 

 

ひっこし…ヒッコシ…引っ越し…って、言ったよな 

 

引っ越し…高木さんが? 

 

引っ越すって、それって… 

 

 

高木さん「…片、西片?」ズイッ 

 

西片「うわっ!?」 

 

高木さん「どうしたの?ぼーっとしちゃって」 

 

西片「うぇ!?あ、いや…」 

 

高木さん「へんなこと考えてたの?」 

 

西片「考えてないよ!!」 

 

高木さん「そ。ほら、帰ろ」カラカラ 

 

西片「あ、うん…」 

 

間違いない、いつもの高木さんだ。 

 

…なんだよ、動揺してるのは俺だけなの? 

 

 

引っ越すって… 

 

高木さんと、もう会えなくなるかもしれないんじゃないの?

 

西片「あの、さ。高木さん」 

 

高木さん「ん?」 

 

西片「さっきの、引っ越しって…」 

 

高木さん「うん、西片に荷物の片付けとか手伝ってほしくてさ」 

 

西片「…それ、俺がやっていいのかい?」 

 

高木さん「西片が、いやらしいことしないならね」 

 

西片「しないよ!」 

 

高木さん「ならオッケー。いつ手伝ってもらうかは学校で会うときか、携帯で連絡するから」 

 

高木さん「あ、西片には学校で毎日会うか」 

 

西片「う、それは…そうだけど…」 

 

高木さん「じゃ、私こっちだから。また明日」 

 

西片「あ、ちょっ…」 

 

色々聞こうと高木さんを引き留めようとした時には、彼女は遠くに行ってしまっていた。 

 

西片「ああ…」 

 

どうしよう、俺。

 

 

西片「…ごちそうさま」カチャ 

 

西片母「もう食べ終わったの?」 

 

西片「うん…ちょっとお腹の調子が悪くて」 

 

西片母「大丈夫?気分悪くない?」 

 

西片「平気。でも、今日はもう寝るよ。おやすみ」 

 

西片母「そう…おやすみ」 

 

西片「…」

 

西片「…はぁ」 

 

帰ってもずっと、高木さんのことが頭から離れなかった。大好きなゲームをやっても楽しくないし、ごはんも喉を通らなかった。 

 

高木さんのことを考えてたからなんてお母さんに言ったら、きっとバカにされるだろうな。 

 

何をしようとも、このもやもやした気持ちが、晴れる気がしなかった。 

 

何度も高木さんと話そうと携帯を持ち、何度も画面を閉じる。これじゃあまるで、失恋した女子みたいだ。 

 

西片「…失恋…片思い…か」 

 

ふと手に取った100%片思いを、俺は無心でぱらぱらページをめくっていた。

 

なんとなく流し読みしていると、数あるうちの何気ない話が俺の目に止まった。 

 

それは、ある事情で主人公と離ればなれになってしまうヒロインを、キザなセリフで引き留めるという話だった。 

 

 

≪行かないでくれ!≫ 

 

読んでいた当時はどうとも思わなかった主人公の一言一言が、俺の胸に突き刺さった。 

 

西片「はは…こんなの、俺のキャラじゃないや」 

 

本を本棚に戻して、俺は静かに目を閉じた。もう何も考えたくなかった。

 

高木さん「おはよ、西片」 

 

西片「…おはよう」 

 

高木さん「あれ?元気ないね?」 

 

西片「別に…」 

 

高木さん「…?」 

 

西片「……し」 

 

高木さん「え?」 

 

西片「引っ越しの話、みんなには言ったの?」 

 

高木さん「うん?男子はまだだけど、女子には伝わってると思うよ。先生にはお父さんがもっと前に連絡してたし」 

 

高木さん「気にしてたの?」 

 

西片「…」 

 

教室を見渡してもいつもと様子は変わってない。 

 

真野「おはよう、高木ちゃん」 

 

高木さん「おはよー」 

 

真野さんも知ってるはずでしょ…?どうして普通にしていられるんだ… 

 

先生「おし、出席とるぞー」 

 

先生だって… 

 

 

西片「なんでだよ…」 

 

高木さん「西片…?」

 

西片「はぁ…」 

 

時間割には俺の嫌いな教科もなかった。大好きな体育だってあった。なのに今日は、今までで一番学校にいる時間が楽しくなかった。 

 

俺を心配した先生が、保健室に連れていってくれた。顔色が悪いからもう帰りなさいと告げられたので、せっかくだからはい、分かりました。と返した。 

 

家に電話してくれたのだろう、お母さんが車で俺を迎えに来てくれた。 

 

昨日から調子が優れなかったので、と先生に説明していたのを見て、ずるいことをしたんだと少し反省した。 

 

 

車に乗り、気分はどうか、と聞かれても俺はずっと黙ったまま。最初は怒っていたお母さんだったけど、家に着く頃には車内は静まっていた。 

 

体がきついから寝るとまた嘘をついて、自分の部屋にこもっていると、高木さんからメッセージが送られてきた。 

 

高木さん≪体の調子はどう?≫ 

 

 

西片「高木さん…」 

 

 

≪ありがとう。もう大丈夫だよ≫ 西片 

 

高木さん≪よかった!クラスの男子は西片をずるい!なんて言ってたけど笑≫ 

 

≪そっか≫西片 

 

ずる休み扱いされても仕方ないくらいだ。体調なんて悪くなかったんだから。 

 

高木さん≪西片、ちょっとだけいつもと様子がおかしかったけど、気にするほどじゃないかなと思って≫ 

 

西片「!」 

 

高木さん≪でも、引っ越しの手伝いは無理そうだね≫ 

 

西片「あ…」

 

忘れてた、頼まれてたんだ。 

 

西片 「…行くべきだろうか…」 

 

 

≪行けたら行くよ≫ 西片 

 

 

西片「はは…行かないやつの言い訳じゃんこれ…」 

 

返す言葉がないからって、あんまりだ。せめて一言… 

 

 

西片母「ごはんよー」 

 

西片「! もうそんな時間か。はーい!」 

 

高木さんの返信から逃げるように、俺は勢いよく部屋を出ていった。

 

 

西片「…いただきます」 

 

西片母「はい、どーぞ」 

 

食卓には俺を気遣ってか、病気の時に食べるような優しい味の料理や消化に良い物が並んでいた。 

 

母の好意に、あの車での態度が申し訳なくなった。 

 

西片「あの、さっきは…えっと、ごめんなさい」 

 

西片母「ああ…良いわよ別に。でもどうしたの?先生は何も言わなかったけど、学校でなにかあったの?」 

 

西片「いや…そういう訳じゃ…」 

 

西片母「なら何?まさかいじめとか!?」 

 

西片「いや…そういう訳でも…」 

 

 

…隠しても仕方ない、言ってしまおう。そうしたほうが、きっと楽になる。 

 

 

西片「…お母さん」 

 

西片母「うん?」

 

西片「俺の…大事な友達が今度引っ越すんだ」 

 

西片母「…それって高木さん?」 

 

西片「ええ!?どうして分かるの!?」 

 

西片母「分かるわよ、あれだけ毎日高木さん高木さん言ってたら」 

 

西片「うう…」 

 

照れてる場合じゃない!お母さんに相談するんだろ俺! 

 

西片「それで、どうしたら…」 

 

西片母「あー…なるほどね。大体分かった」 

 

西片「なんで!?」 

 

西片母「そうね…経験の差かな?」 

 

西片「おお…」

 

西片「引っ越しの手伝いに来てほしいって頼まれてるんだけど、どうしよう…」 

 

西片母「どうしようって…」 

 

西片母「うーん…あんたがどうしたいかは知らないけど…別れる時は、笑って送ってやりなさい」 

 

西片「笑って…?」 

 

西片母「悲しい顔してちゃ、お互い気持ちよくさよならできないじゃない」 

 

西片「…」 

 

西片母「後になって、自分が後悔しないようにね」 

 

西片母「さっさと食べちゃいなさい、早く片付けたいから。調子悪くないんでしょ?」 

 

参ったな、なんでもお見通しか。 

 

でも、すっきりした。そうだ、迷ってもしょうがないよな。

 

 

高木さん「…行けたら行く、か」 

 

高木さん「西片、まだ体が良くないのかな…」 

 

(♪♪♪) 

 

高木さん「電話…?西片からだ」 

 

高木さん[もしもし…] 

 

西片[高木さん!!俺、手伝いに行くから!] 

 

高木さん[え…大丈夫な[大丈夫!俺全然元気だよ!] 

 

高木さん[そ、そうなの?なら、今度の日曜日…[了解!] 

 

高木さん[ねぇ、ほんとに大丈夫なの?] 

 

西片[うん!じゃあね!] 

 

(ブツッ) 

 

高木さん「切れちゃった…」 

 

高木さん「西片…おかしくなってないよね?」

 

西片「よし…」 

 

もう後戻りはできない。向き合うんだ、今の俺の気持ちと。 

 

西片「高木さんのために…」 

 

 

≪日曜日≫ 

 

西片「…緊張するなぁ」 

 

冷静になると、女の子、しかも高木さんの家に招待されるなんて…雑用だけど。 

 

なかなか決心のつかない俺は、呼び鈴を鳴らせずに扉の前で立ち尽くしていた。 

 

高木さん「ん、西片じゃん」 

 

西片「うわああ!?」 

 

高木さん「ぷっ、その反応…さすがだね西片」 

 

西片「高木さん!びっくりさせないでよ!」 

 

高木さん「今から行くねって送られてから、けっこー時間がたったからさ、迎えに行こうとしてたんだよ?」 

 

高木さん「西片が迷子になってるかなって」 

 

西片「なるわけないだろ!」 

 

高木さん「あはは、必死すぎ」 

 

西片「高木さんめ…!」 

 

高木さん「ささ、上がってよ」 

 

西片「あ、うん…おじゃましまーす…」 

 

高木さん「はい、いらっしゃい」

 

いざ作業が始まると、高木さんの部屋でイベント発生って感じじゃなく、俺が手伝わされたのは力仕事ばかりだった。 

 

高木さんのお父さんもお母さんも、男手が欲しかったから助かる、と喜んでくれた。ほぼ毎日の腕立て伏せでついた筋肉が有効活用されて、俺も嬉しくなった。 

 

一段落ついてお疲れさま、休憩してくれて大丈夫だよと言われたのでそこらで休んでいると… 

 

高木さん「じゃまになるから、私の部屋に来なよ」 

 

 

気がついたら俺は高木さんの部屋にいた。 

 

西片「…」 

 

高木さん「でね。…西片聞いてる?」 

 

西片「あっ、うん!聞いてる聞いてる!」 

 

高木さん「ほんとは?」 

 

西片「…聞いてませんでした」 

 

高木さん「正直でよろしい。最近、クラスで占いをしてたんだけどね…」 

 

西片「あー…」 

 

高木さんと部屋に二人きり…落ち着けるか!なんか良い匂いするし… 

 

高木さん「ねぇ」ツンツン 

 

西片「ひゃっ!?」 

 

高木さん「西片、また、ぼーっとしてた」ツンツン 

 

西片「ちょ、わき腹、わき腹はやめ…ははははは!!」 

 

高木さん「えいえい」ツンツン 

 

西片「あは、あはははは!!」 

 

高木さん「…ふぅ」ピタッ 

 

西片「ひゅー…ひゅー…腹筋が…」 

 

高木さん「それでね」 

 

西片「続けるの!?」

 

高木さん「近いうちに、私に大切な宝物が現れるでしょうって」 

 

西片「た、宝物?」 

 

高木さん「そ、宝物」 

 

西片「ふーん…だから部屋を隅々まで探してたのか」 

 

高木さん「それもあるけど…こんな機会ぐらいしかないからね」 

 

高木さん「写真や思い出の物なんか見てさ、ああ、こんなこともあったなぁって、懐かしい気分になるの」 

 

西片「!!」 

 

高木さん「そうなったら片付けに手がつかなくなって大変だけどね」 

 

西片「…」

 

危ない危ない…高木さんのいつものペースに乱されて、大事な目的を忘れるところだった。 

 

 

西片「た、高木さん!」 

 

高木さん「なに?」 

 

 

しまった!あれほど予行練習した高木さんをうまく連れ出す方法をど忘れしてしまった! 

 

 

西片「え、えっと…さ、散歩にでも行かないかい!?」 

 

高木さん「…」 

 

西片「気晴らしにほら、気分転換にもなるし!気が安らぐし!」 

 

高木さん「…」 

 

 

気持ちのことばっかじゃないか!何言ってんだ俺は! 

 

 

高木さん「…いいよ」 

 

西片「へ?」 

 

高木さん「西片、なんかありそうだし。断ったらかわいそうだから」 

 

西片「あ、そう…」 

 

 

バレバレじゃん…

 

高木さん「それじゃ、行こっか」 

 

西片「うん…」 

 

高木さん「…」 

 

西片「…」 

 

ヤバい、会話を、会話をしなければ… 

 

西片「そういえば高木さん、さっき言ってた宝物は見つかったのかい?」 

 

高木さん「あー…微妙かな」 

 

西片「…微妙ってなに」 

 

高木さん「見つからなかったって言ったらウソになるけど…」 

 

西片「ははは、なにそれ」 

 

高木さん「西片はあるの?大事な宝物」 

 

西片「俺?俺は…」 

 

西片「…ないよ」 

 

高木さん「ないってことはないでしょ?」 

 

西片「い、いやぁ思い付かないなぁ」 

 

高木さん「そうやって、私にだけ言わせるんだ」 

 

西片「うっ!」

 

西片「い、言わない」 

 

高木さん「ふーん…なら、私も言わない」 

 

西片「…」 

 

高木さん「…」 

 

また会話が… 

 

高木さん「西片、どこまで行くつもり?私の家からずいぶん離れちゃったけど…」 

 

西片「えっ…と、とりあえず公園でも行こうよ!ベンチやブランコに座って、語り合おうじゃ…ないかー…は…ははは…」 

 

高木さん「…やっぱり」 

 

高木さん「西片、私に隠してることあるでしょ」 

 

西片「…」 

 

高木さん「私が引っ越すって聞いてから、西片変だもん。言ってくれないと私、西片の言うこと聞いてあげない」 

 

西片「…そうだよね」

 

西片「でも一生のお願いだよ、高木さん。俺の勝手なワガママ、聞いてくれませんか?」 

 

高木さん「…」 

 

西片「ダメ…かな?」 

 

高木さん「んーん。ダメじゃないよ」 

 

西片「よかった…」 

 

高木さん「西片、私に何してくれるか、期待してるからね」 

 

西片「…」

 

 

≪公園≫ 

 

高木さん「さーて、西片。何するつもり?」 

 

高木さんはキラキラした目でこちらを見ていた。 

 

 

いよいよ、この時が来た。絶対後悔しないように、今の自分の気持ちを高木さんに伝えるんだ。 

 

深く深呼吸する。次の言葉は決まっている。何百回も言ったあのセリフだ。 

 

 

西片「…勝負しよう、高木さん」

 

高木さん「なんとなく予想はしてたけど…勝負するの?この公園で?」 

 

西片「…ルールは簡単、公園の遊具は使わないよ」 

 

西片「今から言う俺の言葉で、高木さんが笑ったら俺の勝ち、笑わなかったら高木さんの勝ち」 

 

高木さん「私が笑ったら…?」 

 

西片「そうだよ。」 

 

高木さん「無理だと思うなあ。そうなると私、簡単には笑わないよ?」 

 

西片「それはどうかな…」 

 

西片「じゃ、始めるよ!」 

 

最後の勝負だ、高木さん。

 

 

西片「高木さん、今まで本当にありがとう!」 

 

高木さん「へ?」 

 

西片「俺さ、高木さんが引っ越すって聞いた時、すごく心がもやもやした」 

 

西片「あれだけからかわれてたのにさ、もう高木さんと会えなくなるって思ったら、なんだか悲しくなって…」 

 

西片「高木さんなら遠くに行っても友達もいっぱいできるだろうから、心配なんてしてない」 

 

西片「行かないでほしいなんてセリフは俺には言えないけどさ…」 

 

西片「もし、もしもだよ。高木さんが寂しくなったなら、何時でも俺に電話してきてくれていいから!頼りないかもしれないけど、俺、頑張って力になるから!」 

 

高木さん「…」

 

西片「短い間だったけど、高木さんに会えて思い出もたくさん出来たよね」 

 

西片「気が向いたら遊びに来なよ。俺、ここで待ってるから」 

 

西片「…いつか、高木さんが俺のこと忘れても、俺、高木さんのこと絶対忘れないから」 

 

高木さん「…」 

 

あれ、高木さん全然笑ってないぞ…? 

 

西片「ち、ちょっと待って…て、手紙があるんだ」 

 

高木さん「…」 

 

西片「はい、これ…ずずっ…ごれ…うっ…」 

 

西片「こ…ごれ…ひっく、お、おれ゛の…ぎもぢだがらっ…」 

 

高木さん「西片…」 

 

はは…なんだよ…高木さんを笑わせるどころか、俺、泣いてるじゃん… 

 

西片「お゛れ…わすれないがら…ううっ…」 

 

高木さん「…涙、拭きなよ」 

 

西片「ひぐっ…うん…」 

 

情けない、笑わせるはずだった高木さんから慰められるなんて… 

 

高木さんから差し出されたハンカチで、俺は両目から溢れ出てくる涙を拭った。 

 

高木さんはハンカチを貸してくれた後も、俺が泣き止むまで背中をなでてくれた。 

 

高木さん「…落ち着いた?」 

 

西片「…ごめん、高木さん」 

 

高木さん「んー?」 

 

西片「俺、高木さんには笑ってここを出て行ってほしかったから…」 

 

高木さん「…だから、あんな西片らしくないこと言ってたの」 

 

西片「…でも高木さん、全然笑ってなかった」 

 

高木さん「正直、おどろいたな。ふざけたこと言うのかと思ったら、西片の顔、真剣だったから」 

 

高木さん「私のために真剣に頑張ってる人を、笑うなんてできないよ」 

 

西片「…そっかぁ…」

 

高木さん「西片。そのハンカチ、覚えてる?」 

 

西片「ハンカチ…?」 

 

急に言われても、ハンカチのことなど何も気にしてなかったから全く想像できない。 

 

高木さん「それ、入学式の時に西片が拾ってくれたやつだよ」 

 

西片「え?…ほんとだ」 

 

高木さん「これのおかげで、すぐに西片と仲良くなれたんだよね」 

 

それは入学式当日。俺は誰かの落とし物を届けに行って、結果入学式に遅刻したのだ。 

 

『高木さんて人のせいだ…』 

 

隣の席こそその高木さんだとは知らずに。

 

西片「思い出した。そうだ、あれ、恥ずかしかったんだよ?」 

 

高木さん「あははは」 

 

西片「もう…」 

 

西片「…もしかして、高木さんの宝物って」 

 

高木さん「そ、これだよ」 

 

西片「なるほどね…」 

 

高木さん「…」 

 

高木さんが俺を…いや、俺の書いた手紙をじっと見つめている。 

 

西片「?どうしたの高木さ…」 

 

高木さん「その手紙もらうね」ヒョイ

 

西片「ああ!?なにするの高木さん!返してよ!」 

 

高木さん「ええー?だってこれは西片が私宛てに書いた手紙でしょー?」 

 

西片「それは、そうだけど…」 

 

高木さん「勝負、私の勝ちだったよね?」 

 

西片「勝負…?あっ!」 

 

西片『高木さんが笑ったら俺の勝ち、笑わなかったら高木さんの勝ち』 

 

高木さん「これは戦利品ってことで」 

 

西片「そんなぁ…」 

 

高木さん「…暗くなってきたし、遅くなっても悪いから、もう帰りなよ。私を送らなくていいからさ」 

 

西片「…うぇ!?もうこんな時間…で、でも高木さん、これが最後になっても…」 

 

高木さん「じゃ、また明日ね」 

 

西片「…明日?」

 

 

《翌朝》 

 

高木さん「おはよー、西片」 

 

西片「えええええええ!!!?ななななななんでぇ!?」 

 

高木さん「なんでも何も私、元の家の近くに引っ越しただけだし。通う学校も変わらないよ」 

 

西片「へ…」 

 

高木さん「つまり~…昨日のアレは、西片の盛大な勘違いだったってこと!」 

 

西片「な、なななななななっ!ひどいよ高木さん!!分かっててあそこまで…ああっそうだ!手紙!手紙返してよぉ!!」 

 

高木さん「あれ、なんのことかなー?覚えてないなー」 

 

西片「ふざけないでよ!もう!高木さーーーん!!」 

 

中井「朝っぱらから仲良いなー、あいつら」 

 

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元・高木さん「なつかしいなー…」 

 

西片「ええっ!?まだそれ残してたの!?」 

 

ちー「おかーさん、それなにー?」 

 

元・高木さん「これ?これはねー…」 

 

 

『近いうちに、高木さんには大切な宝物が見つかるでしょう』 

 

 

元・高木さん「私の、大切な宝物だよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

「引っ越し」

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