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沙希「あたし達のブラコンシスコンぷりもナメられたもんだよね」 八幡「まったくだ」【俺ガイルss/アニメss】

 

八幡「川なんとかさんの好感度が上がる機械?」

 

小町「うん」

 

八幡「色々ツッコミどころ多すぎだろ。あとあいつの名前は川崎だから」

 

小町「あれ? お兄ちゃん沙希さんの苗字ちゃんと覚えてたんだ」

 

八幡「覚えられないわけないだろう常識的に考えて。ネタにしてたのは悪かったけど、まともに覚えられてない辛さは俺が身を持って経験してるからな」

 

小町「そういえば同年代でお兄ちゃんをまともに呼んでる人ってほとんどいないね。雪乃さんも変なふうにもじってくるし、それこそ沙希さんくらいじゃない?」

 

八幡「おい、戸塚を忘れるな戸塚を。あと戸塚とか戸塚とか」

 

小町「名前呼びでいいならあのざ、ざ……」

 

八幡「いいか小町、そんなやつはこの世に存在しない。材木座なんて俺の知り合いにはいないんだ」

 

小町「哀れなちゅうにさん……」

 

八幡「で、何だっけ、そのスマホみたいなの。川崎の好感度が上がる機械?」

 

小町「うん。ここにあるボタンを押すと、お兄ちゃんに対する沙希さんの好感度が上がるようなアドバイスをしてくれるんだよ」

 

八幡「効果がニッチすぎるだろ。誰が何の目的で作ったんだよそんなの…………」

 

小町「というわけで、はい。早速使ってみよっか」

 

八幡「使わん使わん。何であいつの好感度を上げなきゃならないんだ」

 

小町「うーんそっかー、なら仕方ないか。これ大志君に返してこないと」

 

八幡「待て小町。使う使う。だからお前が大志に会う必要はない」

 

小町「あ、やっぱりお兄ちゃんも沙希さんと仲良くしたいんだね。じゃ、早速いってみよー!」

 

八幡「くっ、俺のシスコンぶりを盾にしやがって…………だが、そんな小悪魔小町も可愛い! よっと」ポチッ

 

『千里の道も一歩から。まずはメールを送ってみよう』

 

八幡「はい終了。この企画はここまでとなりました」

 

小町「早いよお兄ちゃん! まだ一歩目すら踏み出してない!」

 

八幡「いきなりメールなんか送れるか。だいたい俺は川崎のメルアドを知らん。どうしようもないだろ」

 

小町「じゃあもう一回ボタンを押してみてよ。別のアドバイスをくれるかもよ?」

 

八幡「前のを実行してないのに押したら辻褄合わなくなるんじゃねえか? まあさっさと企画倒れにしてしまうか」ポチッ

 

『川崎沙希さんのメルアドはこちら』

 

八幡「えっ!? 何これ? 俺の声とか聞こえてんの?」

 

小町「さすがスーパーコンピューター『京』と繋がってるだけあるね」

 

八幡「嘘をつくな嘘を…………ええっと、h、a、c、h、i、l、o、v、e、@…………」

 

小町(えっ? 何そのメルアド。あからさますぎじゃない! もしかして沙希さんからの好感度ってカンストしてるんじゃ…………しかもお兄ちゃん気付いてないっぽいし)

 

八幡「で、何て内容を送ればいいんだ? またボタン押すか?」

 

小町「何でもいいんじゃない? 軽い挨拶とかで。少しは自分でも考えないと」

 

八幡「まあ所詮はお遊び企画だしな、適当でいいか。怒らせたりしたらあとで謝っとこう」

 

八幡「…………」ポチポチ

 

小町「お兄ちゃん、ずっとスマホいじってるけどまだ送ってないの?」

 

八幡「…………ああ。何て送っていいかわかんねえからな。書いては消し、書いては消し、だ」

 

小町「軽い挨拶を適当にって言ってたのに……」

 

八幡「コミュ障にはそれすらキツいんだって…………小町、こんなんでいいか?」

 

スマホ『こんにちは。特に用事があるというわけではないのですが、メルアドを聞きましたので送ってみました。もしよろしければ~~~』

 

小町「誰にメールしてんの!? 同級生だよね!? 何でそんなにへりくだってるの!!」

 

八幡「だ、だって俺だぞ? 底辺カーストなんだから気を使わないと……」

 

小町「気弱すぎでしょ…………じゃあとりあえず戸塚さんに送るみたいにしてみたら?」

 

八幡「戸塚みたいに、か……よし」ポチポチ

 

スマホ『結婚しようぜ!』

 

八幡「どうだ?」フー

 

小町「何でそんないい笑顔!? 戸塚さんにそんなメールしてるの!?」

 

八幡「だいたい『あはは、面白いね八幡は』みたいな返事が来る。いつか本気だと伝わるまで頑張るつもりだ」

 

小町「うう、このままじゃ本当に戸塚さんルートになっちゃう…………というかそれ沙希さんに送るの? ど真ん中ストレートすぎるんだけど」

 

八幡「あ、そうだった、戸塚じゃなくて川崎に送るんだったな。こんなん送ったらぶっ飛ばされちまう」

 

小町(いや、いきなりゴールインしてもおかしくないかも…………大志君から聞く限り沙希さんはお兄ちゃんに気があるみたいだし。さっきのそのまま送らせればよかったかな?)

 

八幡「こんなんでどうだ?」

 

スマホ『うっす。メルアド聞いたんでせっかくだから送ってみた』

 

小町「うーん、味気ないけどお兄ちゃんだし最初はそんなもんかな?」

 

八幡「おい、その『お兄ちゃんだし』って文はいらないだろ…………んじゃ送信っと」ピピッ

 

小町「さて、お返事が来る前に新たなアドバイスを貰っとこうよ」

 

八幡「もう今日は良くね? 一日一回くらいにしとこうぜ、この機械もメールも」

 

小町「そんなんじゃいつまで経っても進展しないでしょ。もうちょっとコミュニケーション能力を鍛えようよ」

 

八幡「進展って何だよ、そもそも川崎も対人能力は低いから練習になるかどうか…………あ、返信が来た」

 

小町「早いね、どれどれ?」

 

スマホ『誰?』

 

小町「…………」

 

八幡「そういや名乗ってなかったな。怪しい勧誘とか思われたかもしれないし、これ以上はよくない。ここらが潮時だろう」

 

小町「だから早いって! せめて名乗りメールくらい出そうよ! でないと沙希さんも気味が悪いでしょ」

 

八幡「俺からのメールだったら似たようなもんだろ。気味が悪いことには変わんねえ」

 

小町「むー、じゃこの機械使ってみようよ」

 

八幡「こんな事態に対応してんのか?」ポチッ

 

『唐突だったことを謝りつつ名乗ろう。特に怒られはしないから』

 

八幡「…………何でこんなピンポイントなアドバイスが出るんだ? ほんと何なんだよこの機械」

 

小町「まあまあ。とりあえず言うとおりにしてみようよ」

 

八幡「えーと…………」ポチポチ

 

スマホ『いきなりでスマン、比企谷だ。迷惑だったか?』

 

八幡「どうだ?」

 

小町「うん、いいんじゃないかな。もうちょっと一言二言欲しいけどお兄ちゃんだし」

 

八幡「小町の場合は一言多いぞ。送信、っと」ピピッ

 

小町(あとで大志君にこの時の反応を聞いてみよう)

 

小町「あとは返ってきた内容によって臨機応変に、だね」

 

八幡「直接会話とは違って、考える時間があるのがメールの良いところだな。なんでリア充達はあんなにスラスラと会話が出来るんだ…………」

 

小町「お兄ちゃんだって雪乃さんや結衣さんとはまともに話してるじゃん」

 

八幡「それはあっちが会話の主導権を握ってるからな…………あ、返信来た」

 

小町「どれどれ?」

 

スマホ『迷惑とかはないけど…………突然メール送ってくるなんてどういう風の吹き回し?』

 

八幡「えっと……小町が、変な機械を……」ポチポチ

 

小町「ストップストップ! 何でそんなことを馬鹿正直に伝えようとしてんの!?」

 

八幡「じゃあ何て送ればいいんだよ?」

 

小町「そんなときのためのこれでしょ。はい」

 

八幡「結局この機械に頼るのか」ポチッ

 

『次の文を送ろう。【ちょっとお前と話がしたくてな。でも直接だと何か恥ずかしいから】』

 

八幡「はい終了。お疲れさまでした」

 

小町「えー、どうして?」

 

八幡「こんなチャラいナンパ男が言いそうな文が送れるか! こういうのはイケメンが言ってこそサマになるんだよ」

 

小町「でもお兄ちゃんだって目さえ隠せば他のパーツはかっこいいと思うよ?」

 

八幡「目が駄目ってのは致命的だけどな。というか川崎はそういうこと言われるの好きじゃないと思うぞ。以前葉山のかっこつけたセリフにこれっぽっちもなびかなかったし」

 

小町「人によるんじゃないかな。もしかしたらお兄ちゃんが言ったら違う反応かもよ? とりあえず送ってみようよ。怒られたりしたら小町が一緒に謝ってフォローしてあげるから」

 

八幡「ったく。どうなっても知らねえぞ」ポチポチ、ピピッ

 

小町(よし。大志君からの報告が楽しみだなあ♪)

 

ピロリン

 

八幡「お、返信来た。どれどれ……」

 

スマホ『何? ヒマなの? 話し相手になるくらいなら構わないけど』

 

八幡「ふう、怒ったりはしてねえな」

 

小町「あれー? 随分淡泊な内容だね」

 

八幡「いや、普通こんなもんだろ。やっぱりメールで好感度なんか上がんねえよ」

 

小町「うーん、メールだと相手の様子がわからないからね……」

 

八幡「さて、これには何て返すか…………こんな感じでどうだ?」ポチポチ

 

スマホ『まあ暇な時に相手してくれると嬉しい。ただ、鬱陶しいようだったら言ってくれ』

 

小町「おおー、まともだ! 訓練の成果が早速出てるのかな?」

 

八幡「いや、こんくらい普通だろ。送信、っと」ピピッ

 

小町「その普通が出来てないじゃんお兄ちゃんは…………でも好感度が上がるような内容じゃないね」

 

八幡「だから別に頑張って上げる必要も…………お、返信来た」

 

スマホ『はいよ』

 

小町「短っ!」

 

八幡「いや、だからこんなもんなんだって。とりあえず一段落ついたし今日はもういいだろ?」

 

小町「待って待って。全然好感度上がるようなことしてない!」

 

八幡「ばっか、俺が女子とメールするなんてそれだけですごいことなんだぞ。好感度じゃなくて俺の心拍数が上がりまくりだから」

 

小町「そういえばそうだね。一見平然としてるけどやっぱドキドキしてるの?」

 

八幡「まあ…………そりゃ、な」

 

小町(あれ、これって結構脈アリなんじゃないかな? 結衣さんとのメールは面倒臭がってるのに)

 

八幡「とにかく俺はそろそろ寝るぞ。明日から土日の二連休とはいっても夜更かしして生活サイクルを崩すのは良くないからな」

 

小町「あ、待って待って。ならせめて最後にお休みメールを送ろうよ!」

 

八幡「あん? まあそれぐらいなら…………こんな感じか?」ポチポチ

 

スマホ『とりあえず今日は遅いからもう寝るわ。お前もあまり夜更かしとかして身体壊すなよ? お休み』

 

小町「うわーうわー! お兄ちゃんが! あのお兄ちゃんが!」

 

八幡「何だよ……どこか駄目なのか?」

 

小町「ううん! オッケー! オッケーだから早く送って! お兄ちゃんの気が変わらないうちに!」

 

八幡「何かすげえ気になるんだが…………送信、と」ピピッ

 

小町(わざわざ相手を気遣う一言を添えるなんて! これはもう沙希さんもメロメロに!)

 

ピロリン

 

八幡「返信早えな」

 

小町「見せて! 早く!」

 

八幡「何だその食い付き…………えっと」

 

スマホ『ん、ありがとう。お休み』

 

小町「…………」

 

八幡「よし、寝るか。お前も早く寝ろよ?」

 

小町「あ、うん、お休み……」

 

小町(あっれー? 動揺してもっと時間かかったりとかしないのかな? …………とりあえず部屋に戻って大志君に連絡取ってみよ)

 

~次の日~

 

小町(うーん、大志君によると沙希さんは最初のメールが来てからすぐに自分の部屋に引っ込んでしまったからわからないけど、お休みメールの後はちょっと機嫌良かったみたいって言ってたし……実際沙希さんはお兄ちゃんのことどう思ってんだろ?)

 

小町(いや、あのメルアドが答な気もするけど偶然かもしれないし)ウムム

 

八幡「おう、おはよう小町。起きるの早いな。親父達は?」

 

小町「あ、おはようお兄ちゃん。お父さんたちはまだ寝てるよ。お兄ちゃんは今日も朝から予備校?」

 

八幡「…………いや、今日はない」

 

小町「そっか。ここしばらく土日も朝から予備校行く日が多かったし、たまにはゆっくりしないとね」

 

八幡「…………まあ、そうだな」

 

小町「あ、そだ。沙希さんにメールした?」

 

八幡「いや、特には」

 

小町「駄目だよー、こういうマメなところから好感度上げていかないと」

 

八幡「だから上げる必要なんかないだろっての」

 

小町「まあまあ。ちょっとあの機械持ってくるから」パタパタ

 

八幡「はあ…………」

 

小町「持ってきたよー。はい、早速押してみて」

 

八幡「ったく。これいつまで続けるんだか」ポチッ

 

『もう起きているからメールしても大丈夫。朝の挨拶メールを送ろう』

 

八幡「だから何でこの機械は川崎の行動を把握してるんだよ……ストーカーなの?」

 

小町「気にしない気にしない。早く送ろうよ。ほら、ボタン押して」

 

八幡「それ任せばっかりだとまた歯の浮くような文を書かされる気がする。これくらいは自分で打つよ…………こんなのでどうだ?」ポチポチ

 

スマホ『おはよう。今日はいい天気だな』

 

小町「つまんない…………話も広がりそうにないし」

 

八幡「たかだか朝の挨拶で広げる必要はないだろ。送信っと」ピピッ

 

小町「あ、もっとよく考えて…………あー、送っちゃった」

 

八幡「こんなもんでいいだろ。朝からメールのやりとりなんて疲れるだけだ」

 

小町「むー、んじゃ今のうちに次の方針立てとこうよ。ほら、ボタン押して」

 

八幡「そういやこれって俺が押さなきゃいけないの?」ポチッ

 

『今日は特に予定はないからどこかお出掛けに誘ってみよう』

 

八幡「予定まで把握してんのかよ、ほんと何なのこの機械? 怖い」

 

小町「沙希さん予定ないんだって。じゃ、これはお兄ちゃんがデートに誘うしかないね!」

 

八幡「どうしてその結論になるんだ。たまにはゆっくりしないとって言ったのはお前なんだし、俺は今日は家でゴロゴロするんだ」

 

小町「むー…………あ、返信来たよ」

 

八幡「どれどれ…………」

 

スマホ『おはよう。そうだね、天気が良いからあたしは買い物にでも行くつもり。あんたはどこか行くの?』

 

小町「うわー! 沙希さんの方から話を振ってきた! どどどどうしよう?」

 

八幡「何でお前が慌ててんだよ…………ていうか普通に家でのんびりしてるって返せばいいだけだろ」

 

小町「だからそんなんじゃ駄目だってば! はい、ボタン押して!」

 

八幡「どんだけこの機械を信用してんだよ…………」ポチッ

 

『次の文を送ろう。【ヒマなので特に予定はない。なんなら一緒にどこか出掛けるか?】』

 

八幡「うっかりしてた。今日は戸塚とエアデートの予定があったんだ。だから他の予定はキャンセルだな」

 

小町「エアデートって何!? むしろエア戸塚さんでしょその場合…………」

 

八幡「というかこんなメール送られても困るだろ。俺なんかに誘われたってさ。ソースは俺の経験」

 

小町「そんなことないよー。ちゃんとメールのやり取りしてるだけで今までの女の子とは違うってのはわかるでしょ?」

 

八幡「ん、まあ…………」

 

小町「だから思い切って送ってみよ? 少しくらいオブラートに包んでもいいからさ」

 

八幡「わかったよ……送信、っと」ポチポチ、ピピッ

 

小町「ちなみに何て送ったの?」

 

八幡「こうだ」

 

スマホ『特に予定はない。誰か誘ってくれれば出掛ける可能性はある。が、誘ってくれる友達とかいないのでやっぱり可能性はなかった』

 

小町「全然駄目だよ! そんなんじゃ一緒にお出掛けに進展しないよ! ああ……やっぱりちゃんとメールチェックしとけば良かった…………」

 

八幡「逆に考えよう小町。これで俺はわざわざ出掛けなくてすむし、川崎もいらない気遣いをしなくていい。ウィンウィンだ」

 

小町「大敗北にも程があるよ…………せっかくいい感じに築いた関係が…………」

 

ピロリン

 

八幡「お、返信だ」

 

小町「はあ……どうせ…………えっ?」

 

スマホ『何それ、あたしに誘えって言ってんの?(笑) いいよ、午前中は家事があるけど午後からでいいならどこか行こっか?』

 

小町「お、おおおおお兄ちゃん! 沙希さんが! 沙希さんが!」

 

八幡「だから落ち着けって。返信するか、えーと…………せっかくだけど、今日は、ゆっくり、したいから…………」ポチポチ

 

小町「待ちやがれこのダメ兄貴があああぁぁ!」パシッ

 

八幡「おいスマホ奪うな。あとそんな言葉遣いをするんじゃない、兄は悲しいぞ」

 

小町「小町は妹として悲しいよ…………もうお兄ちゃんには任せておけないよ! はい! ボタン押して!」

 

八幡「妹からの信頼が機械以下になった件について」ポチッ

 

『新作の服が見たいらしい。ららぽーとあたりに誘ってみよう』

 

八幡「ららぽか…………そういや俺もそろそろ新刊のチェックをしておきたいな。あそこの本屋に行くとするか」ポチポチ

 

小町(え、何か随分平然としてる…………嫌な予感が……)

 

小町「お兄ちゃん、ちょっと送ろうとしてる文を見せて?」

 

八幡「ん? ああ、ほら」

 

スマホ『俺はららぽーとの本屋に行くことにしたわ。お前はどこに行くんだ?』

 

小町「ちっがーう! 一緒に! 一緒に行動するの! 何で別行動前提なの!?」

 

八幡「いや、目的が違うなら別行動した方が効率いいだろ。同じとこに行くなら一緒に行動するのもやぶさかでないが」

 

小町「目的は一緒に行動することなの! どこに行くかってのはそのあと!」バンバン

 

八幡「えー…………他人と一緒に行動して何が楽しいんだよ?」

 

小町「楽しいよ! 例えば…………」

 

~~~~~~~~~~

 

沙希『ねえ八幡、この服とこの服どっちがいいかな?』

 

八幡『どっちも似合うだろ。お前スタイルいいし』

 

沙希『もう。そうじゃなくてあんたの好みを聞いてるの! あんた好みの女になりたいんだよ』

 

八幡『だったらなおさらだ。中身が沙希だったらどんな格好だって俺の好みだぜ』

 

沙希『ふふ、嬉しい。じゃ、両方買っちゃおうかな』

 

八幡『ああ、なら片方は俺が買うよ。俺から沙希へのプレゼントだ』

 

沙希『ありがとう八幡。大好き!』

 

~~~~~~~~~~

 

小町「…………とかさ!」

 

八幡「いや、誰だよこいつら。キャラ崩壊ってレベルじゃねえぞ」

 

八幡「というか川崎はほとんど服なんか買わねえぞ。自分で作ったり古着を今風にアレンジしたりしてるからな」

 

小町「え、そうなの?」

 

八幡「ああ。だから服を見に行くっつっても本当に流行を見るだけってパターンだろうな」

 

小町「へー…………ていうか何でお兄ちゃんそんなこと知ってるの?」

 

八幡「…………文化祭の時にちょっとそういうことを話す機会があったんだよ」

 

小町「あらま。知らぬ間に意外と親密だったんだね」

 

八幡「そんなわけでセンスのない俺がいても意味はない。つまり一緒に行動する必要はない。以上、Q.E.D」キリッ

 

小町「ウザッ! もういい、小町が送る!」ポチポチ、ピピッ

 

八幡「あ、おいこら、止めろ…………あー、送っちまった。何て送ったんだよ、スマホ返せ」ヒョイ

 

スマホ『誘ってくれて嬉しい。どこでも付き合うぜ。待ち合わせ時間や場所はそっちに任せていいか?』

 

八幡「本当に出掛けるのかよ。貴重な休みが…………」

 

小町「女の子と出掛けられのに文句言わない! お兄ちゃんだって満更でもないんでしょ!?」

 

八幡「あー、まあな」

 

小町「え?」

 

小町(え? 今、お兄ちゃん……ええ?)

 

ピロリン

 

八幡「お、返信来た」

 

スマホ『なら駅前の改札口付近に13時でどう?』

 

八幡「13時か。昼飯食って出ればちょうどいいくらいだな。…………了解っと」ポチポチ、ピピッ

 

小町「ず、随分あっさり了承するんだね」

 

八幡「無理やりやっといて何言ってんだよ…………んじゃちょっと二度寝すっかな。11時くらいにまた起きるから」

 

小町「あ、うん。わかった。お休み」

 

八幡「おう、お休み」スタスタ

 

小町「…………」

 

小町(た、大志君に電話、電話!)

 

 ~ 昼 ~

 

八幡「よし、メシも食ったしそろそろ準備して行くかな」

 

小町(大志君情報だと沙希さんは鼻歌するくらい機嫌が良いらしいけど…………お兄ちゃんはいつも通りっぽい)

 

八幡「えーと、財布に、スマホに…………」

 

小町(でもそれが逆に腑に落ちない。浮かれるでもなく面倒臭がるでもなく)

 

八幡「じゃ、小町。歩きで行くからもう出るわ。あの機械は持って行った方がいいのか?」

 

小町「へ? あ、ううん。あんなの持ってたら怪しいでしょ? あれ無しで頑張ってきてよ!」

 

八幡「何を頑張るんだよ…………」

 

小町「そりゃ好感度を上げることだってば。あ、出掛ける前にアドバイス貰って行けば? はい」

 

八幡「買い物するだけで上がるもんなのか? よっ、と」ポチッ

 

『派手ではないけどちょっとお洒落しているぞ。まずは服やアクセサリーなどを誉めよう』

 

八幡「何でお洒落してるのかは知らんが…………とりあえずお世辞を言っておけばいいんだな?」

 

小町「違うよ! 本心から誉めてあげようよ!」

 

八幡「ま、何でもいいわ。行ってくる」

 

小町「はーい、行ってらっしゃーい」

 

小町「………………」

 

小町(さて、バスで駅前に先回りしよ)

 

小町(駅前に到着! お兄ちゃんはあと五分くらいかな? えーと、大志君は…………いた)トコトコ

 

小町「やっほー大志君、沙希さんは?」

 

大志「ちわっす比企谷さん。姉ちゃんはあと十分くらいで来ると思うっすよ」

 

小町「おっけ。ここからなら見つからずに見張ってられそうだね。お兄ちゃんはそろそろ着くかな」

 

大志「そうっすか。と、ところで比企谷さん、変装用に被ってる帽子なんすけど…………に、似合ってるっすね」

 

小町「ほんと? ありがとう。大志君もカッコいいよ」

 

大志「ど、どうもっす」

 

小町「あ、お兄ちゃんが来た。沙希さんを探してるね」

 

大志「お、向こうからこっちに来てんの姉ちゃんだ。お兄さんの位置からだと見えないかな?」

 

小町「お兄ちゃんがスマホ取り出したね、メールで連絡を…………あれ、耳に当てた。電話?」

 

大志「あっ、姉ちゃんも取り出して耳に…………え? いつ番号交換なんてしたんすかね?」

 

小町「ここに来るまでにメールのやり取りで交換したのかな? って、ええっ!?」

 

大志「な、なんすかあの姉ちゃんのすごい笑顔! 俺もほとんど見たことないっすよ」

 

小町「お、お兄ちゃんもあんな自然に笑いながら手を振って…………」

 

大志「あ、お兄さんが何か言ってるっす。あの指示通り服を誉めてるんですかね?」

 

小町「うん、多分。沙希さんすっごい嬉しそう…………」

 

大志「な、なんか俺らが思ってる以上に仲が良くないすかあの二人…………」

 

小町「だね…………あ、歩き出した。とりあえず追いかけよっか」

 

大志「うす」

 

小町「予定通りららぽに向かってるみたいだね…………でも、うーん、もしかしてわざわざ何かする必要なかったのかなあ」

 

大志「かもしんないっすね。俺らが何かするまでもなく距離が縮まってるみたいだし…………」スッ

 

小町(え…………あ、大志君車道側に……よく見たらお兄ちゃんもだ。やばっ、二人ともポイント高すぎ!)

 

大志「比企谷さん?」

 

小町「あ、そ、そうだね。でもいつの間に…………クラスで何かあったのかな?」

 

大志「学校外で接触してる様子はなかったっすからね」

 

小町(でも結衣さんとかは何も言ってなかったしなあ)

 

小町「とりあえずもうちょっと観察してみよっか」

 

大志「了解っす…………あ、ららぽーとに入って行きました」

 

小町「土曜だし人多いね。見失わないようにしないと」

 

大志「あれ? エスカレーターじゃなくて階段に向かいましたよ?」

 

小町「どしたんだろ? じゃ、エスカレーターで服屋のある階に先回りしよ」

 

大志「がってんっす」

 

小町(そんなわけで階段の見える位置で見張っているわけですが…………)

 

小町「来ないね」

 

大志「来ないっすね。途中でどこかに寄ってんのかな?」

 

小町「まあこの辺で見回してればいずれ来たときにわかると思うけど…………ん? メール? 誰だろ……えっ!?」

 

スマホ『後を追ってくるなんて悪趣味だぞ。もう俺たちはららぽーとを出たから』

 

小町「あっちゃー…………バレてたのかぁ」

 

大志「お兄さんからっすか?」

 

小町「うん……もうここから出たぞって」

 

大志「ええー、いつ気付かれたんすかね」

 

小町「わかんないけど…………もうどこに行ったかわかんないし、お手上げだなあ」

 

大志「そうっすね…………」

 

小町「うーん、じゃあこれからどうしよっかな」

 

大志「あ、あの、比企谷さん!」

 

小町「へ? 何?」

 

大志「よ、良かったらこのあと俺とぶらついたりしませんか? その、俺も時間空いたし……」

 

小町「あー、ひょっとしてデートのお誘い?」

 

大志「う…………ま、まあそんな感じっす」

 

小町「へー…………うん、いいよ」

 

大志「え、マ、マジっすか!?」

 

小町「あ、でもお兄ちゃん以外の男子と遊びに行くなんてほとんどないから一緒にいても楽しいかわかんないよ」

 

大志「ひ、比企谷さんならそれは大丈夫っすから!」

 

小町「あはは、何その自信は。あ、でも代わりと言ったら何だけどさ」

 

大志「え?」

 

小町「さん付けと微妙な敬語は止めてほしいかなって」

 

大志「わ、わかった…………じゃ、とりあえずその辺の店を回ってみようぜ、比企谷」

 

小町「うん!」

 

 ※ ※ ※ 

 

沙希「撒いた?」

 

八幡「多分な。小町と大志を二人きりにするのは気に入らんが…………しかしまさか本当に尾行してくるとは」

 

沙希「あれで変装してるつもりだったらあたし達のブラコンシスコンぷりもナメられたもんだよね」

 

八幡「まったくだ。あんくらいで見抜けない俺達じゃないぜ…………さて、これからどうする?」

 

沙希「そうだね…………とりあえずあそこの公園行こ? あたしちょっと座りたいな」

 

八幡「あいよ、行くか」

 

 ~ 夕方 ~

 

小町「た、ただいまー……」

 

比企谷父「おう、お帰り小町。どこ行ってたんだ?」

 

小町「あ、ちょっと友達と遊びに…………お兄ちゃんは?」

 

比企谷父「八幡なら自分の部屋にいるぞ」

 

比企谷母「あと三十分くらいしたら夕御飯だからって言っといてー」

 

小町「わかったー」

 

小町(キッチンから聞こえてきたお母さんの言葉に返事をして、お兄ちゃんの部屋へと向かう小町です。平常心、平常心)

 

小町(ノックをするとすぐに返答があり、ドアを開ける)

 

小町「た、ただいまお兄ちゃん。その、昼はごめんね」

 

八幡「おう。あんくらいの変装でシスコン兄貴千葉トップ3を争う俺の目を誤魔化せると思うなよ」

 

小町「うん、もうしないからさ…………そ、それじゃ」

 

八幡「ちょっと待った」

 

小町「な、何?」

 

八幡「今言っただろうが。俺の目は誤魔化せないと。大志と何かあったな?」

 

小町「え、な、何で?」

 

八幡「いつもの小町ならあのあと俺と川崎がどうしたとか根掘り葉掘り聞いてくるはずだ。それがないってことはそりゃ何かあったと思うだろ」

 

小町「う…………え、えっと」

 

八幡「なるほど、告白されたか…………んで返事は保留中ってとこか?」

 

小町「うええ!? 何でそこまで!?」

 

八幡「大志が小町に気があるのは知ってたからな。あの身の程知らずめ…………」

 

小町「身の程知らずって…………小町そこまで大した人間じゃないよ」

 

八幡「いや、小町は日本一可愛い妹だ! 例え小町本人の言葉でもこれだけは譲れん!」

 

小町「うわあ…………」

 

八幡「そこで引くなよ…………で、返事どうすんだ?」

 

小町「う……まだちょっと悩んでて、ね」

 

八幡「ほう。ならこの機械に頼ってみたらどうだ?」スッ

 

小町「あ、その機械…………で、でもそれって」

 

八幡「いいから押してみろ」

 

小町「う、うん」ポチッ

 

『迷っているのは多少でも気のある証拠。しばらくの間、お試しででも交際してみたらどうかな?』

 

小町「えっ!? こ、これって」

 

八幡「ああ、安心しろ。それ送ってんの大志じゃないから」

 

小町「! た、大志君がこれに送ってたの知ってたの?」

 

八幡「まあな」

 

小町「い、いつから!?」

 

八幡「最初からだよ。大志が変なことを多分小町と組んで考えてるって川崎から連絡あったからな。直後にその機械渡されたし」

 

小町「連絡って、お兄ちゃんと沙希さん連絡先知らないんじゃなかったの?」

 

八幡「あれは演技だ。彼女の連絡先を知らないわけないだろ」

 

小町「……………………はい?」

 

八幡「もうそろそろ言ってもいい頃合いだしな。実は俺と川崎、付き合ってるんだよ」

 

小町「………………え?」

 

小町「えええええ!?」

 

八幡「そんなに驚くことか? そもそもそんなふうになるように企んでたんだろ」

 

小町「そ、そうだけど。でもそんな素振りなかったよ」

 

八幡「まあ一応隠してたし。でもあの機械渡されて、そろそろ小町にはカミングアウトしてもいいだろって話し合ってな。ついでだからちょっとあの機械に振り回されるふりをしてやった」

 

小町「話し合ったって、いつ? 最初に沙希さんにメール送ったら『誰?』って返ってきてたし」

 

八幡「その直前だよ。俺ずっとスマホいじってただろ。あん時にやり取りしてたんだよ」

 

小町「あー、あれかー」

 

八幡「んで、俺がメール送って川崎の様子を見つつお前と連絡取り合ってる大志がこの機械にアドバイス送ってたんだろ?」

 

小町「うん……あーあ、お兄ちゃん達を上手く動かそうとしてたのに小町達が動かされていたのかぁ」

 

八幡「そうだな。んで今日みたいな動きをすれば大志が小町に何らかのアプローチをするだろって川崎がな」

 

小町「そ、そうなんだ」

 

八幡「で、大志の事はどうすんだ? そのアドバイスは川崎からだが、無視してフってもいいんだぞ。もちろんお試しするのもありだが」

 

小町「お兄ちゃん、反対しないの? 前までは『悪い虫がー!』とか言ってたのに」

 

八幡「あー、小町が可愛いからちょっとコナかけようってんならそうなんだが…………どうも大志は本気の本気でお前が好きみたいだからな。だったら俺は何も言えねえよ。小町が嫌がることをするなら別だが、そんなことはないんだろ?」

 

小町「うん、むしろすごく気を遣って良くしてくれてる…………今まであんまり意識したことなかったんだけど、なんか好きになっちゃうかも…………」

 

八幡「そう言ってる時点で相当気があるよなそれ…………アドバイスもらうか? 俺にでも機械にでも」

 

小町「機械っていうか沙希さんなんでしょそれ…………じゃ、先人にアドバイスもらおっかな」

 

八幡「おう、何でも聞けや…………っと、その前にそろそろ夕飯じゃねえのか?」

 

小町「あ、そうだった。お母さんにご飯の時間言っとくように言われたんだった。確かにそろそろだね」

 

八幡「んじゃ話はメシのあとだな」

 

小町「うん。ついでにお兄ちゃん達の馴れ初めとかも聞かせて!」

 

八幡「それは勘弁してくれ…………」

 

 ~番外・お昼のデート(八幡視点)~ 

 

八幡「さて、と…………」キョロキョロ

 

八幡(俺は駅前に到着し、周辺を見回す…………いた、小町だ。てことは隣にいるのは大志か)

 

八幡「とりあえず川崎に連絡するか」

 

八幡(俺はスマホを取り出して川崎に電話をかける。すぐに繋がった)

 

沙希『もしもし。あたしはそろそろ着くよ』

 

八幡「おう、俺は今着いた。えっと…………見つけた。そのまま真っ直ぐこっちだ」

 

八幡(俺は電話を切って川崎に向かって手を振る。川崎は嬉しそうにこちらに駆け寄ってきた)

 

沙希「おはよう比企谷」

 

八幡「おう……って、もう昼だぞ」

 

沙希「どうせあのあと二度寝したんでしょ?」

 

八幡「くっ、俺の事を良く理解してやがるぜ」

 

沙希「ふふっ」

 

八幡「いい笑顔しやがって…………あ、そうだ、小町と大志がいたぞ」

 

沙希「やっぱり」

 

八幡「どうする? 撒くか?」

 

沙希「そうだね。でもすぐ撒いたんじゃ面白くないし、ららぽーとまではついて来させよっか」

 

八幡「あいよ。んじゃ行くか」

 

八幡(俺達は連れ立って歩き出した。さり気なく後ろを確認すると、こそこそと二人が着いてきている)

 

沙希「あ、大志が車道側に立ってるよ。あんたみたいに気が遣えるね」

 

八幡「さり気なくやってんだから俺に関してはスルーしろよ…………ああ、言い忘れてた。今日の服も似合ってんぜ。こういう時のボキャブラリーに乏しくていつも同じような言葉になって申し訳ないが、本心だから」

 

沙希「ふふ、わかってるよ、ありがと。比企谷も格好いいよ」

 

八幡「おう、ありがとな。そんなことを言ってくれるやつなんて世界でお前だけだぜ……ま、お前さえ言ってくれれば充分だけど」

 

沙希「もう…………ホントそういうことを自然に言うんだから…………」

 

八幡「これも本心だからな…………おっと、ららぽに着いたぜ。どうする?」

 

沙希「階段で上がるフリをしとこ。そうすれば多分エスカレーターで先回りしようとするから、それを見計らって出よ」

 

八幡「んじゃ出てから小町にメールしよう…………なあ、大志は告白すると思うか?」

 

沙希「八割方すると思うよ。完全に脈無しで最初の誘いすら断られない限りはね」

 

八幡「どうなることやら…………よし、撒いたな。小町にメールするか」

 

八幡(俺達はららぽを出て、川崎の希望で公園に向かう)

 

八幡「お、あのベンチが空いてんな。何か飲み物とか買ってこようか?」

 

沙希「ありがと。でも大丈夫」

 

八幡「そっか…………悪いな、気が付かなくて」

 

沙希「? 何の話?」

 

八幡「疲れてたから座りたかったんだろ? それに気付かなくてすまん」

 

沙希「ああ、違うよ。あたしはただこうしたかったの。学校とかじゃくっつけないからね」

 

八幡(そう言って川崎は隣に座った俺の腕に自分のを絡めて身を寄せてくる)

 

八幡「おっと…………はは、お前も大胆になったな。付き合い始めの頃は肩や肘が当たっただけでオロオロしてたくせに」

 

沙希「あんただって手が触れただけで物凄い挙動不審になってたじゃないのさ」

 

八幡「ふふ、馬鹿め! 今だってすげえドキドキしていっぱいいっぱいなんだぜ!」

 

沙希「何で自慢気…………でも、うん、ちょっと嬉しいな」

 

八幡(川崎はそう言ってはにかみながら腕の力を少し強める)

 

八幡(そしてその時、どんな神の悪戯か、ふと人通りが途絶えた。土曜日の昼過ぎだというのに、視界内には俺達しか見当たらない)

 

八幡(俺は空いた手を川崎の顎に添えてこちらを向かせ、そのまま顔を寄せて唇を重ねる)

 

沙希「ん…………」

 

八幡(五秒ほどその状態を保ち、ゆっくり顔を離すと川崎がすこしとろんとした表情になっていた)

 

沙希「…………なかなかキスの仕方がサマになってきたじゃない。ファーストキスが嘘みたいだよ」

 

八幡「あれは忘れようぜ。お互い恥ずかしさしかないだろ」

 

沙希「ふふ、一生の笑い話かもね」

 

八幡「ったく…………ちょっと腕離してもらっていいか?」

 

沙希「え、うん」

 

八幡(俺は解放された腕をそのまま川崎の肩に回し、ぐいっと抱き寄せる。川崎は抵抗せずにそのまま俺に身体をもたれかからせ、体重を預けてきた)

 

八幡「このあと、どこか行くか?」

 

沙希「ううん。このままでいたい…………」

 

八幡「そか」

 

八幡(俺は川崎の頭に手を乗せ、優しく撫でる)

 

沙希「ん…………八幡、好き……」

 

八幡「おう、俺もだ。好きだぜ、沙希」

 

八幡(その後は帰宅時間になるまで時折少しお喋りをしたものの、基本的に黙ったまま俺達は心地良い雰囲気の中でずっと無言でくっついていた)

 

 ~夕食後~

 

小町「さて、容疑者お兄ちゃんさん。洗いざらい話すのです」

 

八幡「何で犯罪者扱いしてんだよ。何も悪いことしてないだろ」

 

小町「小町に黙って沙希さんと付き合ってたじゃん」

 

八幡「いいじゃねえかそんくらい。というか大志への返事はどうしたんだよ?」

 

小町「それなら明日呼び出して返事することにしたからもういいの。今はお兄ちゃんの話!」

 

八幡「俺の話を参考にする予定だったんじゃねえのか…………もう返事決まってんなら話す意味ないだろ」

 

小町「あるの! 早く」バンバン

 

八幡「床叩くな。下に響くだろうが…………で、何を聞きたいんだ?」

 

小町「えっとね、二人が付き合うきっかけとかを。どっちから告白したとかどんなシーンだったとか。つまり全部!」

 

八幡「やだよ恥ずかしい。だいたい他人のを聞いても面白くないだろ」

 

小町「そんなことないよ。女の子は他人の恋愛沙汰にも興味津々なのです。ほら、お兄ちゃんの学校の平塚先生とかもそうでしょ」

 

八幡「あれは興味というより参考にしようとしているんじゃ…………そもそも女の子って歳じゃないし」

 

小町「はい、今の録音しました。平塚先生に聞かれたくなかったら…………」ピッ

 

八幡「天使だと信じていた妹がこんな悪魔になって兄を脅すなんて」

 

小町「ま、さすがに全部とかは言わないけどさ、実際不思議なんだよね。さっきも言ったけど本当にそんな様子なかったから」

 

八幡「そりゃ隠してたからな。付き合ってちょっと経つけどまだ誰にも言ってねえし」

 

小町「え、そうなの? 雪乃さんや結衣さんにも?」

 

八幡「おう。というかあいつらに言ったらまた何か色々言われそうだしな。どんな手段で脅したんだとか何とか」

 

小町「あー…………できれば早めに教えておいてあげた方がいいと思うよ」

 

八幡「まあいつまでも隠しきれるもんじゃないしな」

 

小町「でもメールや電話はともかく、普段の付き合いはどうしてんの? 平日はそんな時間ないし休日も最近は朝から予備校で潰れてばっかりでしょ」

 

八幡「…………今から言うこと、親には内緒にしろよ」

 

小町「え、うん」

 

八幡「確かに土日に予備校はある。だけど一日中じゃない。その前後で遊びに行ったりしてんだ」

 

小町「あ、そっか、沙希さんも同じ予備校だし…………午後予備校の時は午前中デートで、午前予備校の時は午後にデートしてたんだ」

 

八幡「まあそういうことだ」

 

小町「むー、忙しくて大変だなって心配してたのに」

 

八幡「悪いとは思ってるけどよ」

 

小町「だったらお詫びということで色々聞かせて。どっちから告白したの?」

 

八幡「あー、川崎の方からだ」

 

小町「ま、そりゃそうだよね。お兄ちゃんからするなんて思えないし」

 

八幡「うっせ。ヘタレで悪かったな」

 

小町「でもお兄ちゃんもよくその告白を受けたね。恋愛沙汰に臆病だから断ったりしそうだけど、お兄ちゃんも沙希さんのこと好きだったの?」

 

八幡「いや、元々あまり意識していなかった。良い奴だとは思ってたけど。最初は罰ゲームか冗談だと思ったが」

 

小町「ほほう、そんなお兄ちゃんを沙希さんはどんな手段でオトしたんでしょうか」

 

八幡「なんか結局全部話す事になりそうだな…………順を追って話すか」

 

小町「うん、よろしく!」

 

八幡「付き合うよりもうちょい前なんだがな、予備校に持ってくテキストを間違えたことがあったんだ。んでちょっと困って焦ってたら川崎が声を掛けてきて隣に座ってテキスト見せてくれたんだ」

 

小町「ほうほう」

 

八幡「それをきっかけに話すことも多くなってな、ある日予備校の終わりが遅かった時に家まで送ることにしたんだ。その日川崎は歩きで来てて、夜に女一人ってのも危ないしな」

 

小町「おおう、お兄ちゃんにそんな甲斐性があったとは」

 

八幡「まあ色々世話にはなってるからな。あいつはお互い様って言ってるけど。そんで家まで送った別れ際に告白されて付き合うことになったんだ。以上」

 

小町「以上、じゃないでしょ。罰ゲームとかだと思ってたお兄ちゃんをどうやってその気にさせたの?」

 

八幡「それを俺の口から言わせるのかよ…………まあ簡単に言えば試用期間を設けたんだ。気に入らなければさっさとフってくれていいってことでな」

 

小町「え、それって…………」

 

八幡「さっき小町に提案したのと同じだな。んで恋人ごっこに興じているうちにわかったんだよ。川崎は冗談でも何でもなく俺の事を好きなんだって。こんな俺の事をな」

 

小町「いやいや、お兄ちゃんはなんだかんだ良い男ですよ。小町が保証します」

 

八幡「はは、ありがとな。ま、川崎もそう言ってくれてるが。そしてまあ…………いつの間にか俺も川崎の事を好きになっていたってわけだ。そして俺の方からお試しじゃなくて正式に付き合ってほしいと言った。だからさっき告白したのは川崎からって言ったけど、正確には俺からかもしれん」

 

小町「うーん……じゃ、さっきの言葉を訂正するね」

 

八幡「あん?」

 

小町「お兄ちゃんがヘタレみたいなこと言ってごめんね。ちゃんとお兄ちゃんから言ったなら立派だよ」

 

八幡「…………いや、実際ヘタレだと思うぞ。ヘタレエピソードなんかいっぱいあるし。教えないが」

 

小町「えー、そう言われると気になるなあ」

 

八幡「これは俺と川崎だけの秘密だ。誰にも言う気はない」

 

小町「むー、わかった…………じゃ、小町はそろそろ大志君に明日の連絡するから」

 

八幡「おう。困ったことがあったらすぐに言え。俺に言いにくかったら沙希にでもいいから」

 

小町「…………うん、わかった」

 

小町(お兄ちゃん、今沙希さんを名前で呼んだ…………突っ込みたい、けど我慢しとこう)

 

八幡「ついでに大志にこの機械返しとけ」

 

小町「はーい」

 

小町(そういえばこれ、お兄ちゃんと沙希さんを近付けようとした物なのに…………結局上がったのは小町の大志君への好感度だったなあ…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

八幡「川なんとかさんの好感度が上がる機械?」小町「うん」

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