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有咲「その、初めてだったんだろ?」 りみ「うーん……そうだね、初めて……かな」【バンドリ!ss/アニメss】

 

――市ヶ谷家 有咲の部屋―― 

 

市ヶ谷有咲「…………」 

 

牛込りみ「すー……すー……」 

 

有咲(拝啓、高く澄みきった空に、心も晴れ晴れとするこの頃、色彩あふれる紅葉の美しさに心弾む季節となりました) 

 

有咲(そんな秋の朝、目が覚めると、どうしてか私の隣でりみが寝ていた) 

 

有咲「…………」キョロキョロ 

 

有咲(……八畳の畳敷き、見慣れた我が家のマイルーム) 

 

有咲(それはいい。うん。別にどうってことない、けど……) 

 

りみ「うぅん……すー……」 

 

有咲(本当になんでりみと同衾してんの私?) 

 

有咲(え、ちょっと待って、昨日なんかしたっけ。なんかあったっけ) 

 

有咲(えーっと、確か昨日は……土曜日だったな。そんでポピパのみんなで遊ぶことになってて、蔵にみんなが来て……) 

 

有咲「…………」 

 

有咲(やっべぇ、そっから先が全く思い出せねーぞ……) 

 

有咲(……つーか)チラ 

 

りみ「むにゃむにゃ……」 

 

有咲(なんかりみ、若干パジャマがはだけてんだけど?) 

 

有咲(あれ、これなんかやっちゃった系? まったく記憶がないけど取り返しのつかないことしちゃった系?) 

 

有咲(……んなこたぁない……とは思うけど……いや、そうだよな) 

 

有咲(初めて入れるときには痛むし、好きな人に入れてもらえると嬉しい……ってこの前やったRPGで言ってたし、そういう観点で言うのであれば私に一切の痛みはないわけだし、であれば私はそういうコトには一切及んでいないだろう常識的に考えて) 

 

有咲(ましてや私とりみは女同士。そんな爛れた関係になるだなんてこたぁ、そうそうあるはずがない) 

 

りみ「んー……えへへ……」 

 

有咲(……ないよな?) 

 

有咲(確かに無防備に寝顔を晒すりみとかなんか可愛い……と思わなくもないけどさ) 

 

有咲(加えて昨日の記憶がまったくないけど、ない……よな。身体に異常ないし……ん?) 

 

有咲(あ、いま気付いたけど、女同士でもしもそういうコトに及んじゃったらどうなんだ?) 

 

有咲(こう、攻守っつーか、攻めと受け? 的な? まだ俺のバトルフェイズは終了してないぜ! みたいな?) 

 

有咲「…………」 

 

有咲(……あれ、これって私の身体に異常がなくてもまだまだ全然安全圏じゃなくね?) 

 

有咲(これでもしもりみが色々とこう、色々とああなってたとしたら……責任問題じゃね?) 

 

りみ「……んん……?」パチリ 

 

有咲「あ」 

 

りみ「ふわぁ~……もう朝……」 

 

有咲「…………」 

 

りみ「あ……おはよう、有咲ちゃん……」 

 

有咲「あ、ああっ、うんっ、お、おはよ……りみ……」フイ 

 

有咲(ああああ、なんだこれ、なんか万が一にでもアレがアレしちゃってたらって思うだけでりみの顔が見れねぇぇ……) 

 

りみ「んー……」 

 

有咲「な、なんだか眠そうな声だな、りみ?」 

 

りみ「うん……まだちょっと眠いかも……」 

 

有咲「そ、そそっか。それならまだ寝てていいんじゃないか? ほほほら、きょ、今日は日曜だし?」 

 

りみ「そうだねぇ……」ギュー 

 

有咲「ひゃぁっ!? ちょ、ちょちょちょりみ!?」 

 

りみ「あー……ごめんね……有咲ちゃん、あったかくて……」 

 

有咲「や、いや、えぇと、そ、そうだな、もう朝も結構冷え込む季節だしな!」 

 

りみ「うん……それに昨日の夜は……」 

 

有咲「え、昨日の夜……?」 

 

りみ「……えへへ」 

 

有咲(なにその意味深な笑い!?) 

 

りみ「有咲ちゃんって意外と……」 

 

有咲「い、意外と?」 

 

りみ「……んふふ」 

 

有咲(だからなんだってその笑い!?) 

 

りみ「はぁ~……昨日、ずっとくっついてたからかな……なんだかこうしてると安心する……」 

 

有咲「えっ」 

 

りみ「めっちゃ眠い~……」 

 

有咲「ちょ、ま、待ってりみ! やっぱ起きよう! 責任の在処を明確にしないとやべーって!」 

 

りみ「えー……」 

 

有咲「えーじゃなくて!」 

 

りみ「ありさちゃぁん……」 

 

有咲「そ、そんな甘えた声出してもダメだぞっ! ほら、一回離れろって!」 

 

りみ「はぁい……」スッ 

 

有咲(こんな甘えてくるりみなんて初めてだ……。やっべぇ、これもしかするともしかしちゃうのか……) 

 

有咲(い、いや、そんなわけねーよな。ほら、やっぱ寝起きってみんな寝ぼけてたりなんだりして色々とおかしなことするしな。おたえだって前に寝ぼけて私の唇を奪いに来てたし) 

 

有咲(とにかく、しっかり目を覚まして、昨日のことを思い出さないと) 

 

有咲(ちょっと寒いけど、掛け布団を払えば頭も冴えるだろ……)バッ 

 

シーツに出来た赤い染み<ヤァ 

 

有咲「…………」 

 

有咲「……は?」 

 

シーツの中央辺りに出来た赤い染み<ヤリキッタカイ? 

 

有咲「…………」 

 

有咲「いや、は?」 

 

りみ「あ、それ……」 

 

有咲「え?」 

 

りみ「えーっと……その、ごめんね? 汚しちゃって……」 

 

有咲「…………」 

 

有咲「えっ」 

 

有咲「いや、えぇっ!?」 

 

有咲(汚しちゃって? 汚しちゃってってことはきっとこの赤い何かはりみ由来のものだということで、それはつまり端的な言葉にすると……もしかして、ハカとか呼ばれるやつなのか……!?) 

 

有咲(ラグビーのアレでもなく、埋葬される場所でもなく、破れる瓜と書いて破瓜……!?) 

 

有咲「…………」 

 

有咲(……そうだよなぁ、りみ、誕生日3月だもんなぁ、遅生まれだもんなぁ、そりゃあ破瓜っていえば16歳のこと指すもんなぁ、ははははは) 

 

有咲(とりあえずアレだよアレ。スマホスマホ)スッ 

 

りみ「どうかしたの?」 

 

有咲「オーケーグー〇ル。『初めて 責任 取り方』」 

 

りみ「有咲ちゃん?」 

 

有咲「いや、いいんだ、りみ」 

 

有咲(3つの責任……『遂行責任』、『説明責任』、『賠償責任』……) 

 

有咲(最後までやり遂げる責任、相手に納得してもらう責任、何かを差し出して償う責任) 

 

有咲(……あー、やっぱそうなるんだなぁ) 

 

有咲(そうだよなぁ、責任っつったらそれしかないよなぁ) 

 

有咲(私は17歳で、りみはまだ16歳で、つまり僅かであれど私のが年上なんだし) 

 

有咲(つまりそういうこと……なんだよなぁ) 

 

有咲「……りみ、すまなかった」 

 

りみ「え?」 

 

有咲「いや、ホント、昨日の記憶がまったくないんだけど……とりあえず、色々とヤッちゃったのはなんとなく分かったからさ」 

 

りみ「あ、やっぱり覚えてないんだ」 

 

有咲「ああ。蔵にみんなが来てたとこまでは覚えてんだけど、そっから先が何も思い出せない」 

 

有咲「本当に、迷惑をかけてごめん」 

 

りみ「う、ううん。そんなに大変じゃなかったし、大丈夫だよ」 

 

有咲「……そうなのか?」 

 

りみ「うん。こういうのって初めてだったけど……なんだか楽しかったし」 

 

有咲「楽しい……。よかった、りみが苦痛を感じなかったなら、それだけは幸いだよ」 

 

りみ「でも一晩中ずーっと抱きしめられてたのはちょっと……あったかかったけど、恥ずかしかったかな……」 

 

有咲「……そっか」 

 

有咲(ああ……やっぱヤッちゃったんだなぁ私……) 

 

有咲「ごめんな、りみ」 

 

りみ「だ、大丈夫だよ。私の方こそごめんね? その、ベッド汚して……」 

 

有咲「なに言ってんだよ、これは全部私のせいなんだから……私の方こそ、謝って済む問題じゃねーけど、本当にごめん」 

 

りみ「平気だよ」 

 

有咲「……りみは優しいな」 

 

りみ「そ、そんなことないよ」 

 

有咲「そんなことあるって。あー、それで、その……」 

 

りみ「うん?」 

 

有咲「ほら、アレだ、あの、さ……」 

 

りみ「うん」 

 

有咲「その、取り返しのつかないっつーか、ホント、事故っていうか事後報告っていうか、なんつーかさ」 

 

りみ「?」 

 

有咲「……責任はちゃんと取るから」 

 

りみ「責任……」 

 

有咲「ああ」 

 

りみ「……うーん?」 

 

有咲(ああ、ピンと来てないな、これ。やっぱあれか、恥ずかしいけど、もっとハッキリ言葉にしないといけない訳か) 

 

有咲(……まぁ、でもそれが当たり前だよな。説明責任ってやつだ。全然記憶にないけど、とても口には出来ないようなことをりみにしでかしてるんだし。それも責任って聞いてもピンと来ないピュアりみに) 

 

有咲「だから、ほら、あれだよ」 

 

りみ「うん」 

 

有咲「その、初めてだったんだろ?」 

 

りみ「うーん……そうだね、初めて……かなぁ」 

 

有咲「だろ? だから、ほら……」 

 

りみ「うん」 

 

有咲「その……」 

 

りみ「うん」 

 

有咲「…………」 

 

りみ「…………」 

 

有咲「……わっ、」 

 

りみ「わ?」 

 

有咲「私が、責任を持ってっ、りみを幸せにするってことだよぉ!」 

 

有咲(……あーくそっ、なんだこれめっちゃ照れくさいし恥ずかしい!) 

 

有咲(ああ、顔っつか身体全体が熱いなぁっ、花咲川の夏はまだ終わってねーのかよぉ!) 

 

りみ「幸せ……?」 

 

有咲(りみは……なんか呆けてるな。もしかしてあれか、もっとしっかり言葉にしないと伝わらない系なのか? マジかよ、これ以上ストレートにって相当ヤバいぞ……?) 

 

りみ「責任……幸せに……?」 

 

りみ「…………」 

 

りみ「え、えぇっ!?」 

 

有咲(あ、伝わったっぽい。よかった……けど、そうなるとますます恥ずかしいなこれぇっ) 

 

りみ「え、そ、それって、つまり、あの……」 

 

有咲「そっ、そういうことっ」 

 

りみ「え、で、でも……」 

 

有咲「でももヘチマもねーんだよ、ヤッちまったのは間違いない事実なんだからっ」 

 

有咲「初めてだったんだろっ? それならこうするしかねーんだって!」 

 

りみ「だ、だけど、他の人には初めてだったけど、お姉ちゃんとはしたことあるし」 

 

有咲「え、ちょ、いや、マジでっ!? なにやってんのゆり先輩とっ!?」 

 

りみ「なにやってって……家族だし?」 

 

有咲「牛込家はどうなってんだ!?」 

 

りみ「姉妹がいるところはどこもそうじゃない、かな。香澄ちゃんも昔は明日香ちゃんとよくしてたって言ってたよ」 

 

有咲「マジかよ!? やべーな最近の姉妹事情進みすぎだろ!!」 

 

りみ「え、そ、そうかな……」 

 

有咲「そうだよ、冷静に考えてやべーって! そんな、そう、気軽にホイホイするもんじゃないだろっ!?」 

 

りみ「でも、沙綾ちゃんもたまに紗南ちゃんと添い寝するし、姉としては妹に甘えられるのは嬉しいって言ってたよ?」 

 

有咲「沙綾まで!? しかも紗南に!? ……って、添い寝?」 

 

りみ「え、うん。添い寝」 

 

有咲「……添い寝って、あの? 一緒に寝る的な?」 

 

りみ「その添い寝……以外にはないと思うけど……」 

 

有咲「…………」 

 

りみ「…………」 

 

有咲「……そっか、添い寝か」 

 

りみ「うん、添い寝」 

 

有咲(そっか。そっかそっか。そっかそっかそっか。ああつまりあれだ。私の早とちりとかそういう話か) 

 

有咲(はははは、そうだよな、そんな、りみと、私が、こう、肌色多めで、そんな、なぁ?) 

 

有咲(そんな、そんな……) 

 

りみ「あ、あの、有咲ちゃ――」 

 

有咲「あぁあぁああああ!!」 

 

りみ「わっ」ビクッ 

 

有咲(あー! あー!! なんだよっ、普通の添い寝かよっ!!) 

 

有咲(あああああ!! 何を考えてたんだ私はっ!! そりゃそうだろ普通に考えてコトに及ぶだどうこうなんてありえねーだろアホじゃねーかこのアンポンタンめがぁ!!) 

 

有咲(なのに責任とるだとかなんだとか、お前は一体なんなんだよ何者だよちくしょう!!) 

 

有咲(あー死にたい! 軽く死にたい! なんなんだよマジでぇ!!) 

 

有咲「おおおお……!」 

 

りみ「あ、あの、大丈夫……?」 

 

有咲「だい、だ、大丈夫、だから、ちょっといまこっち見んといてやおりみさん……」 

 

りみ「え、でも……なんか変な関西弁になっとるし、ちょっと心配になってまうよ」 

 

有咲「やめて、お願いだからその純粋な目で汚れた私を見んといて」 

 

りみ「けど、昨日のこともあるし、まだお酒が抜けてないのかもだし……」 

 

有咲「……え、お酒?」 

 

りみ「うん。あのね?」 

 

 

――前日 有咲の蔵―― 

 

戸山香澄「親戚からたくさん飲み物もらったから、みんなにもおすそ分け持ってきたよ!」 

 

花園たえ「ありがとう、香澄。私はりんごジュース貰うね」 

 

りみ「ありがとう、香澄ちゃん。私は……みかんジュースにしようかな」 

 

山吹沙綾「それじゃあ私はウーロン茶にしよ。ありがとね、香澄」 

 

香澄「どういたしまして! 有咲はどれがいいかなぁ」 

 

たえ「その白いのがいいんじゃないかな?」 

 

香澄「カ〇ピスだね! じゃあ私はぶどうジュースにしよっと!」 

 

――タッタッタ... 

 

有咲「わりぃ、遅くなった」 

 

沙綾「おかえりー。流星堂の手伝い、終わった?」 

 

有咲「ああ。棚の整理が大変でさー……物を持ってあっちこっち動いてたから、結構汗かいちまったよ」 

 

香澄「お疲れさま! そんな有咲には、はい! ジュースあげる!」 

 

有咲「おお、さんきゅ。どうしたんだこれ?」 

 

香澄「親戚にいっぱいもらったんだ。だからおすそ分け!」 

 

有咲「そっか。珍しく気が利くな」 

 

香澄「えへへ~」 

 

沙綾「微妙に褒められてないような気がするけど……」 

 

りみ「香澄ちゃんがいいならいいんじゃないかな」 

 

たえ「じゃあ、とりあえず乾杯しよっか」 

 

沙綾「そうだね」 

 

香澄「えー、それじゃあ皆さま、お手を拝借……」 

 

りみ「それは一丁締めじゃないかな?」 

 

有咲「始まってすらいねーのに締めるつもりか」 

 

香澄「あれぇ、そうだっけ?」 

 

たえ「ここは一気に……かんぱーい」 

 

香澄「かんぱーい!」 

 

たえ「いぇーい」 

 

香澄「いぇーい!」 

 

有咲「それでいいのか……まぁ、いいのか。喉乾いたし、私も飲もう」グビッ 

 

有咲「……ん? なんかこれ、ちょっと変わった味がするような」 

 

沙綾「変わった味?」 

 

有咲「ああ。なんか普通のカル〇スとちょっと違う風味っつーか……まぁ、マズくはないんだけどさ」ゴクゴク 

 

たえ「特殊なやつじゃないかな。パッケージもあんまり見たことないし」 

 

有咲「確かに……」ゴクゴク 

 

有咲「ん……ひっく」 

 

りみ「……あれ? それ、小さく『お酒』って書いてない……?」 

 

沙綾「えっ」 

 

たえ「あ、本当だ」 

 

香澄「あ、あぁーっ!? それ、お父さん用のお酒だ! 間違えて持ってきちゃってた!!」 

 

りみ「え、えぇーっ!?」 

 

沙綾「ちょ、有咲、もうそれほとんど飲み切ってるけど……だ、大丈夫?」 

 

有咲「……うん」 

 

たえ「ありさー?」 

 

有咲「ん……」ポー 

 

沙綾「……駄目っぽいね、これ」 

 

香澄「ご、ごめんね、有咲!」 

 

有咲「ん~……」フラフラ 

 

 

…………………… 

 

りみ「……っていうことがあったんだ」 

 

りみ「それで、そのまま酔っちゃった有咲ちゃんを私が介抱してたんだよ」 

 

有咲「そ、そうだったのか……だから昨日の記憶がねーのか……」 

 

有咲(つーかこの状況、香澄のせいじゃねーかよ……確認しないで普通に飲んでた私も私だけどさ……) 

 

有咲(いや、でも、事情的にはさらに私がクズじゃん……酒で記憶失くして迷惑かけてって、かなりやべーよな) 

 

有咲「その、なんつーか……本当にごめん、りみ」 

 

りみ「だ、大丈夫だよ。酔っ払った人の面倒をみるのは初めてだったけど、ちょっと楽しかったから」 

 

りみ「それに……」 

 

有咲「……それに?」 

 

りみ「……ううん、なんでも。えへへ」 

 

有咲「…………」 

 

有咲(またさっきみたいな意味深な笑い) 

 

有咲(私、記憶がない間にりみに何したんだ……) 

 

有咲「ん、あれ? それでりみは私を介抱して、その、ウチに泊まって添い寝してくれてたんだよな?」 

 

りみ「うん。有咲ちゃんが私を放してくれなくて」 

 

有咲「あ、ああ、うん、ごめん。……えっと、それじゃあシーツの赤い染みは……」 

 

りみ「トマトジュースだよ」 

 

有咲「トマトジュース?」 

 

りみ「沙綾ちゃんが二日酔いにいいんだって教えてくれて、有咲ちゃんに飲んでもらおうとしたんだけど……ちょっとこぼしちゃったんだ」 

 

りみ「急いで拭いたんだけど、染みになっちゃって……ごめんね?」 

 

有咲「え、あ、いや、それこそ酔っ払ってた私が悪いんだし……」 

 

有咲(トマトジュースか……よかった。私、本当に何もしてないみたいだ) 

 

りみ「有咲ちゃん、身体は大丈夫? 頭とか痛くない?」 

 

有咲「う、うん……昨日のことを覚えてない以外は、全然」 

 

りみ「そっか。それならよかった」 

 

有咲「えぇっと、ホントごめんな、りみ。迷惑と心配かけて……」 

 

りみ「大丈夫だよ。有咲ちゃんがなんともなかったのが一番だから」 

 

有咲「……うん、ありがと。この埋め合わせはちゃんとするから」 

 

りみ「責任、とる?」 

 

有咲「そ、それは忘れてくれっ!」 

 

りみ「ふふ、お酒を飲まないと忘れないかも」 

 

有咲「り、りみぃ~!」 

 

…………………… 

  

――翌日 花咲川女子学園・中庭―― 

 

りみ「……っていう感じだったよ、昨日は」 

 

沙綾「大丈夫だったんだね。よかった」 

 

有咲「ああ……記憶だけは全然ねーんだけどな」 

 

香澄「ごめんね、有咲……私、お酒だって全然気付いてなくて……」 

 

有咲「や、まぁ、私も気付かないで飲んじゃったし。気にすんなよ」 

 

たえ「それじゃあ有咲、一昨日のアレとかソレとか覚えてないんだ」 

 

有咲「え?」 

 

沙綾「あー……まぁ、覚えてない方がいいんじゃないかな?」 

 

有咲「えっ」 

 

香澄「りみりんもごめんね? あの有咲の介抱ってすごく大変だったでしょ?」 

 

りみ「ううん、そんなことないよ。全然放してくれなかったのはちょっとだけ恥ずかしかったけど……」 

 

有咲「…………」 

 

たえ「なにやったか聞きたい?」 

 

有咲「……いや、いい。聞きたくない……」 

 

たえ「そっか。じゃあ言わないでおくね」 

 

沙綾「それでもひとつ言えることは、りみりんにはちゃんとお礼を言ってあげてねってことだね」 

 

たえ「うん。酔っ払い有咲のこと、ずっと構ってあげてた」 

 

有咲「あー、うん、そうだよな……。りみ、本当にごめん。それと、面倒みてくれてありがとう」 

 

りみ「大丈夫だよ。なんだかんだで私も楽しかったし……それに」 

 

香澄「それに?」 

 

りみ「責任」 

 

有咲「げっ」 

 

りみ「責任、とってくれるんだよね?」 

 

有咲「いや、それはなんつーか、勘違いってか、ほら……な?」 

 

りみ「とってくれないの……?」 

 

有咲「や、やめてくれよりみ、そんな上目遣いで見ないでくれって……」 

 

たえ「責任?」 

 

香澄「責任……?」 

 

沙綾「責任、かぁ」 

 

たえ「沙綾、責任ってなに?」 

 

沙綾「責任は責任だよ」 

 

たえ「うーん……?」 

 

香澄「何かしちゃったのかな、有咲? 私もそういうの、とった方がいいかな……」 

 

沙綾「大丈夫大丈夫。それはきっと有咲がとらなくちゃいけないものだから。……ふふふ」 

 

有咲「お前らもそこは気にしないでいい! 特に沙綾! 意味深に笑うなぁっ!」 

 

沙綾「ごめんごめん」 

 

りみ「…………」 

 

りみ(酔っ払った有咲ちゃん……いつもよりもちょっと強引で、でもすっごく優しかったな) 

 

りみ(お布団の中で……) 

 

 

有咲『りみ、いつもありがとうな。迷惑ばっかかけてっけどさ、それでも傍にいてくれるりみが好きだよ』イケボ 

 

有咲『ほら、そんな離れてたら寒ぃだろ。もっとこっち来いよ』イケボ&ダキヨセ 

 

有咲『あはは、真っ赤になってる。りみのそういうとこ、本当に可愛いよな』イケボ&ナデナデ 

 

有咲『おやすみ、りみ。幸せな夢を見てくれよな』ウィスパーイケボ 

 

 

りみ(……なんてされちゃったし) 

 

りみ「えへへ……」 

 

有咲「だからっ、りみもっ、その意味深な笑い!」 

 

沙綾「これは責任とらなくちゃだね、有咲」 

 

有咲「勘違いだったんだって! それには不幸なすれ違いがあってだな!」 

 

沙綾「でもほら、恋は好意の勘違いから始まって、勘違いの積み重ねで深まるって言うし?」 

 

沙綾「そういう意味で言えば、恋は勘違いの積み重ねだよ?」 

 

有咲「どこのどいつだそんな無責任な言葉を最初に言ったのはっ!!」 

 

香澄「コイ?」 

 

たえ「カープ?」 

 

りみ「恋……」 

 

りみ(有咲ちゃんにちょっと強引にされちゃった時とか、耳元で優しく囁かれちゃった時とか……あの時のドキドキが恋、なのかな……) 

 

りみ(そうだとしたら……えへへ、なんだか嬉しいな) 

 

有咲「あーもうっ、あーもう!! 二度と酒なんか口にしねぇぞ私は!!」 

 

白金燐子「あ、あの……市ヶ谷さん……?」 

 

氷川紗夜「……今、聞き捨てならない言葉が聞こえたのだけど」 

 

有咲「げぇっ!? 通りすがりの燐子先輩に紗夜先輩!?」 

 

紗夜「…………」 

 

有咲(ひえぇっ、氷みたいに冷えた目になってやがる……!) 

 

有咲「ち、違うんです! これにはとても深い理由があってですね!?」 

 

紗夜「申し開きは放課後に生徒会室で聞きます。行きましょう、白金さん」スタスタ 

 

燐子「は、はい……」 

 

有咲(うおぉぉ取り付く島もねぇ!!) 

 

燐子「あの、わたしから……少しフォローをしておくので……」 

 

有咲「た、頼みます……」 

 

燐子「あ、あんまり期待は……しないでくださいね……? それでは……」ペコリ 

 

有咲「あああ……放課後、生徒会行きたくねぇぇ……」 

 

香澄「あれだよね、これ、やっぱり私も有咲と一緒に行った方がいいよね……?」 

 

有咲「いや……いい、大丈夫だ……紗夜先輩のお説教を受けるのは私だけで十分だ……」 

 

香澄「で、でも!」 

 

有咲「大丈夫、なんとか……ちゃんと理由と経緯を話せば、正座2時間くらいで勘弁してもらえるはずだから……」 

 

香澄「それって全然勘弁してもらえてなくない!?」 

 

りみ「そ、それじゃあ私が一緒に行くよ! 有咲ちゃんの潔白を証明する!」 

 

有咲「いやいい、りみはマジでいい。泊まったとかなんだとかで絶対に話が拗れるから……」 

 

りみ「そ、そっか……」 

 

たえ「あ、じゃあ私が行こうか?」 

 

有咲「お前は一番ダメだ! 何しでかすか予測つかねぇから!」 

 

たえ「そっかぁ」 

 

沙綾「いっそみんなで行こうか?」 

 

有咲「いや、うーん……いや、平気……。放課後までに覚悟は決めておくからさ……」 

 

沙綾「……もしも覚悟が決めきらなかったら早めに言ってね?」 

 

有咲「ああ、うん……たぶん大丈夫……はぁ……」 

 

香澄「私のせいで……ごめんね、有咲……」 

 

有咲「だからお前のせいじゃねーって。気にすんなよ」 

 

たえ「骨は拾ってあげるね」 

 

有咲「ああ、うん……出来れば死にたくはねーけど」 

 

沙綾(一応、つぐみに『紗夜先輩の機嫌を取っておいて、お願い。有咲の命が危ないから』って連絡しとこう) 

 

りみ「もしも大変な目に遭ったらすぐに言ってね? 私が有咲ちゃんを慰めるから」 

 

りみ「なんだったら、その……また添い寝とかするから……ね?」 

 

有咲「…………」 

 

有咲「いや、うん、それはちょっとほら、アレだから……私、頑張るよ」 

 

りみ「そう……」シュン 

 

有咲(どうしてりみは残念そうな顔をしているんだろうか。これが分からない) 

 

りみ「でも、有咲ちゃんのためなら何だって頑張れるから、いつでも頼りにしてねっ」 

 

有咲「……ああ、うん、機会があれば」 

 

有咲(なんか、なんつーか、昨日からやけにりみの圧が強いような……。まぁ、それは気のせい、だよな) 

 

有咲(それより紗夜先輩のお説教の方が気がかりだよ……) 

 

りみ(有咲ちゃん……) 

 

りみ(もしも落ち込んだり傷付いちゃったら、今度は私が添い寝してカッコいい声で慰めてあげるからね……!) 

 

有咲「はぁ~……胃が痛い……」 

 

りみ(ため息も笑顔に変えられるように……頑張るからね!) 

 

 

 

その後、沙綾の機転のおかげで機嫌のよかった紗夜さんに軽めのお説教をくらうだけで済んでホッとした有咲だったけれど、今度はやけに押しの強くなったりみりんに色々と悩まされることになるのでしたとさ。 

 

 

 

 

 

 

元スレ

https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1574153470/