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ことり「そんなことないよ!ことり、結構ちゃんとしてるよ?」穂乃果「そうかな~」 【ラブライブ!ss/アニメss】

 

穂乃果「海未ちゃ~ん!ことりちゃ~ん!おっはよーー!!」タッタッタ 

 

海未「ふう、やっと来ましたね」 

 

ことり「けど待ち合わせの時間にはちゃんと間に合ってるよ? 穂乃果ちゃん、μ’s始めてから遅刻がなくなったよね」 

 

海未「遅刻しないのは当然のことですよ。ことりは穂乃果に甘すぎます」 

 

ことり「え~?そぉかな~」 

 

穂乃果「はぁはぁ、よし!今日もちゃんと待ち合わせに間に合った!」 

 

海未「穂乃果はもう少し時間に余裕をもって行動してもいいとは思いますけどね」 

 

穂乃果「朝は忙しいから!」 

 

海未「穂乃果の場合、別に朝食を作ったりしてるわけじゃなくて2度寝したりぼ~っとしたりしてるだけでしょう」 

 

穂乃果「えへへ」 

 

ことり「でも2度寝って気持ちいいよね~」 

 

穂乃果「そう言えばことりちゃんも朝ちゃんと起きるキャラに見えて結構遅刻したりしてるよね?」 

 

ことり「へ!!?」 

 

海未「……そういえば、そう言う描写がないためかことりは朝強いと思われてるかもしれませんが、穂乃果に負けず劣らず朝は弱いですよね」 

 

穂乃果「ことりちゃんの場合はお母さんがしっかり起こしてくれてるからまだ何とかなってる部分が大きいよね」 

 

ことり「なんでちゃんと間に合ったことりが責められてるの!?」 

 

穂乃果「別に責めてるわけじゃないけどさ、ことりちゃんも結構抜けてるよね」 

 

海未「穂乃果が言っていいのかは不明ですが、ことりが抜けているというのは同意ですね。ことりはぼーっとしていて少し心配な部分があります」 

 

ことり「そんなことないよ!ことり、結構ちゃんとしてるよ?」 

 

穂乃果「そうかな~。ことりちゃんだったらすぐ騙せると思うけどな」 

 

海未「そうですね、変な人に引っかからないか不安です」 

 

ことり「もう!二人とも失礼だよ!」 

 

穂乃果「あ、海未ちゃん!今日ちゃんと調理実習の材料持ってきた?」ウインクパチリ 

 

ことり「え?」 

 

海未「………ええ、もちろんです。そういう穂乃果こそちゃんと用意してきたのですか?」 

 

ことり「え?え?」 

 

穂乃果「ふっふーん!もちろんこの鞄の中にちゃんと入ってるよ! ことりちゃんは?」 

 

ことり「へ!?」 

 

海未「…もしかして忘れたのですか?」 

 

ことり「へ?へ?調理実習?そんなのあった?え?」 

 

穂乃果「昨日先生が授業予定が変わって今日するって言ってたよ?」 

 

ことり「え?嘘……ことり、何も持ってきてない……」 

 

穂乃果「へ!?じゃあことりちゃんどうするの!? 

    皆が調理実習してる間見てるだけ!?その後皆が食べてる横でお弁当食べるの!?」 

 

 

ことり「……ふえぇぇん!穂乃果ちゃんどうしよう!?」 

 

穂乃果「と、まあ簡単に騙せるわけだし」 

 

ことり「へ?」 

 

海未「ことり、ごめんなさい。調理実習というのは嘘ですよ」 

 

ことり「え!?嘘!?」 

 

穂乃果「ほら、ことりちゃんを騙すなんて簡単なんだから。ことりちゃんはもうちょっとしっかりしたほうがいいね」 

 

海未「穂乃果も人に偉そうには言えませんけどね」 

 

ことり「もう!二人して嘘吐くなんて!」 

 

穂乃果「あぁ!ことりちゃんが怒っちゃった!」 

 

海未「穂乃果が嘘を吐いたりするからですよ。ごめんなさい、ことり。ですがことりのことが心配ですから、もう少し気を付けてほしいんです」 

 

ことり「……ことりってそんなに抜けてるかな?」 

 

海未「もう少ししっかりしないと危ないとは思いますね」 

 

穂乃果「変な人にひっかかったり壺買ったり知らない人についてったりしそうだよね」 

 

海未「穂乃果言いすぎです」 

 

ことり「うぅ……分かった!ことり、もっとしっかりするね!」 

 

海未「……しっかりすると言って簡単にできるものなんでしょうか」 

 

穂乃果「ならことりちゃんがしっかりしてるか試そうよ」ヒソヒソ 

 

海未「?  どうやってですか?」ヒソヒソ 

 

穂乃果「私に任せて!」ヒソヒソ 

 

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海未「……穂乃果、本当にするのですか?」 

 

穂乃果「するよ!だってことりちゃんのためだもん!」 

 

海未「ですがもうすでに学校に着いてから階段と廊下で何もないのに1度ずつこけていますし、机の上に置いていた紙パックの紅茶も倒して零してますし、いつも通り天然ぼけぼけのことりでしかないと結論付けてもいいと思いますが」 

 

 

穂乃果「だけど見て!海未ちゃん!」 

 

ことり (゚8゚≡゚8゚) 

 

穂乃果「あんなにことりちゃんが周囲を警戒してるんだよ?」 

 

海未「………だから何ですか?」 

 

穂乃果「何かアクシデント起こしてあげないと可哀想だよ!」 

 

海未(穂乃果………この子は本当になんて優しいのでしょう) 

 

海未「分かりました。ではやってみましょう。で、一体なにをするんですか?」 

 

穂乃果「さっきも言ったけど、ことりちゃんは知らない人にもホイホイついて行きそうでしょ?」 

 

海未「あまり人を疑いませんからね」 

 

穂乃果「だから見知らぬ人にホイホイついて行くかテストします。ほい!ここに私達も知らない子が!」 

 

モブ「は、初めまして」 

 

海未「よく調達できましたね」 

 

穂乃果「事情を説明してお願いしたんだ!というわけで、この子にことりちゃんを誘いだしてもらいます」 

 

海未「ですが同じ学校の子から声を掛けられたら誰だってついて行ってしまうんじゃないでしょうか?」 

 

穂乃果「けど、知らない人に誘われて、しかもひと気のないところに連れ込まれたら普通だったら警戒するでしょ?」 

 

海未「まあ確かにしますね」 

 

穂乃果「だから、付いてってもすぐアウトにはしないよ? けど、ひと気のないところにどんどん進んでるのにノコノコと付いてったらお仕置きをします!」 

 

海未「なるほど。趣旨のほうはわかりました。では早速やってみましょうか」 

 

穂乃果「うん!じゃあお願いね」 

 

モブ「は、はい!」トコトコ 

 

モブ「あ、あの!」 

 

ことり「はい?」 

 

モブ「わ、私は1年のモブです!こ、ことり先輩に実は相談があるんです!」 

 

ことり「相談?ことりに?」 

 

モブ「は、はい」 

 

ことり「相談ってなあに?」キョトン 

 

モブ「こ、ここでは少し………人のいない場所に移動してもいいですか?」 

 

ことり「うん、わかった!」 

 

 

穂乃果「ああ、わかっちゃった……」 

 

海未「何も疑わずに承諾しましたね。まあ見た目は普通の後輩ですから仕方ない部分もありますが」 

 

穂乃果「とりあえず私達も後を付けよう」ダッ 

 

海未「はい」トコトコ 

 

海未「校舎から出ちゃいましたね」 

 

穂乃果「そろそろどこに行くのか気になってもいいころだと思うんだけど」 

 

ことり「今日は天気が良くてポカポカで気持ちいいね!」 

 

モブ「は、はい!」 

 

 

海未「天気の話をしてますね」 

 

穂乃果「ことりちゃ~ん(´;ω;`)」 

 

海未「そうこうしてるうちに中庭も抜けてしまいましたね」 

 

穂乃果「あー……もうすぐゴールの体育館裏だよ…」 

 

海未「と、言ってる間に着きましたね」 

 

穂乃果「ことりちゃん……私、信じてたのに……」 

 

海未(自分で仕掛けておいて引っかかると落ち込むというのも難儀ですね) 

 

穂乃果「辛いけど、今後のことりちゃんのためを思ってお仕置きをしないとね……」 

 

海未「お仕置きとは何をするのですか?」 

 

 

モブ「あ、あの!」 

 

ことり「うん?」 

 

モブ「こ、ことり先輩!お、お金を出してください!」 

 

 

 

海未「……恐喝ですか?穏やかじゃないですね」 

 

穂乃果「だって少しくらい恐い目に遭わないと、ことりちゃんが反省しないと思って。大丈夫だよ、当然途中で止めに入るし」 

 

海未「そうですか」 

 

 

ことり「お金?」 

 

モブ「は、はい!」 

 

ことり「お金忘れてきちゃったの?いくら貸してほしいの?」ポケットサグリサグリ 

 

モブ「あ、いえその……貸してほしいのではなくて」 

 

ことり「あっ!!!」 

 

モブ「ど、どうしたんですか?」 

 

ことり「お財布、鞄の中に置いてきちゃったみたい!」 

 

モブ「え?それは……いくら学校の中とは言え不用心だと思います。貴重品は基本的には身に着けて行動された方がいいかと」 

 

ことり「そうだよね。いっつも海未ちゃんにも怒られるんだけど、お財布ってブレザーとかに入らないからついつい忘れちゃうんだよね。へへ」 

 

モブ「そうでしたか」 

 

ことり「あ、ごめんね。だからお金は今貸してあげられないの!後でまた教室に来てくれる?そうしたら必要な分貸してあげれるから!」 

 

モブ「あ、いえ……もういいんです」 

 

ことり「本当に?大丈夫?他にアテがあるの?」 

 

モブ「あ、はい、まあ……」 

 

ことり「そっか~よかったよ~。あ、ごめんね?力になってあげられなくて」 

 

モブ「あ、いえ。とんでもないです……ことり先輩」 

 

ことり「ん?なぁに?」 

 

モブ「次のライブ、応援に行きますから。頑張ってください!」 

 

ことり「応援に来てくれるの?ありがと、じゃあいっぱい頑張るね!」 

 

モブ「はい!それじゃあ失礼します!」 

 

ことり「ばいば~い」フリフリ 

 

海未「……ファンが一人増えましたね」 

 

穂乃果「……これ、どうしたらいいんだろうね」 

 

海未「私に聞かれましても……ですが、ことりの人の好さがピンチを招くとともに、それから脱する切っ掛けになったともいえそうですね」 

 

穂乃果「けど、これは仕込みだったからだよ。本当に恐喝されてたらことりちゃん危なかったよ」 

 

海未「まあ、財布がないと分かれば暴行されていたかもしれませんね」 

 

穂乃果「だから、もうちょっとことりちゃんを試さないと!」 

 

海未(本当に穂乃果は友達思いですね。そういうところは素晴らしいと思います) 

 

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海未「次はどうするんですか?」 

 

穂乃果「次はこれだよ!」つ携帯 

 

海未「電話、ですね」 

 

穂乃果「これで俺々詐欺をしよう!」 

 

海未「俺々詐欺、ですか。ですが、あれは俺という一人称の人物がいて成立するものですから、ことりの周りにはそういう人物がいない以上、さすがのことりも引っかからないのではないですか?」 

 

穂乃果「そうだね、じゃあ『私』とかなら引っかかるかな」 

 

海未「引っかかったとしても、お金を振りこんだりはしないでしょう。 俺々詐欺は親子などの関係を利用するものなんですから、養われる側のことりがお金を誰かに振りこむとは考えにくいかと思います」 

 

穂乃果「まあ引っかからなかったらそれはそれでことりちゃん的にはいいんだよ!」 

 

海未「たしかにそうですね」 

 

穂乃果「じゃあかけてみるね!」 

 

海未「あ、穂乃果」 

 

 

穂乃果「……あ、もしもーし。私だよ」 

 

ことり『あ、穂乃果ちゃん?急にどうしたの?』 

 

 

海未(穂乃果の携帯電話で穂乃果がかけたら俺々詐欺にならないんですが…… そんなことにも気づかない穂乃果はやはり最高に可愛いですね) 

 

穂乃果「そうだよ、穂乃果だよ。ことりちゃん、どうしよう……ちょっと困ったことになっちゃって………」 

 

ことり『困ったこと?どうしたの?』 

 

穂乃果「さっきちょっと事故っちゃってお金が必要になっちゃったの……」 

 

海未(穂乃果が正体を明かした上で普通に詐欺をしてます!) 

 

ことり『事故!?穂乃果ちゃん大丈夫!?』 

 

穂乃果「うん。穂乃果は大丈夫だったんだけど、相手の人がちょっと怪我しちゃったみたいで。 それで示談金?として200万ほど必要なんだけど、穂乃果そんなお金持ってないし……」 

 

ことり『わかった!ことりに任せて!』 

 

穂乃果「ほんとう!?ことりちゃん、お金貸してくれるの?」 

 

ことり『ううん、そんなのより知り合いの弁護士さんに穂乃果ちゃんの弁護をお願いするよ!穂乃果ちゃんがお金を払うなんて間違ってるもん!』 

 

穂乃果「あ?え?け、けど私も携帯触ってて不注意だったし」 

 

ことり『穂乃果ちゃんに不注意があったとしても相手にも不注意があったはずだよ! だから言いなりになって相手の言う金額全部を穂乃果ちゃんが払うなんておかしいよ! ちょっと待っててね?いま弁護士さんに連絡してみるから』 

 

穂乃果「あ、ことりちゃん!相手の人がお金はもういいって! 何とかなるみたい!」 

 

ことり『え?ほんとう?ならよかった~~。穂乃果ちゃん、次の授業始まるから、早く帰って来てね?』 

 

穂乃果「う、うん、分かったよ。じゃあまた後でね」 

 

ことり『は~い♥』 

 

穂乃果「……ことりちゃんが弁護士を用意しようとしました」 

 

海未「ええ、聞こえてましたから。 ですが結果的にですが、さきほどの恐喝も今回の詐欺も、ことりはお金を払うと言う行為にまでは及んでいませんよね」 

 

穂乃果「さっきの恐喝はお財布持ってたら普通に払ってたと思うけどね」 

 

海未「今回の詐欺も、相手が穂乃果だったから身の潔白を信じてお金じゃなくて弁護士を用意しようとしたんでしょうけど」 

 

穂乃果「ならやっぱりことりちゃんがお金を払わなかったのは偶々じゃん!」 

 

海未「まあそうですね」 

 

穂乃果「く~~!次こそは絶対にお金を払わせるんだから!」 

 

海未(悔しがってる穂乃果の顔も可愛いですね♥ あれ?目的はなんでしたっけ?) 

 

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~お昼休み~ 

 

穂乃果「う~~ん、ことりちゃんを騙すだけなら簡単なんだけどな~」 

 

海未「3人ならんで食事している最中に話す内容ではないですね」 

 

ことり「ねーねー何のお話してるの?」 

 

穂乃果「ことりちゃん。あっちでアルパカが散歩してるよ?」 

 

ことり「え!?どこ!?」キョロキョロ 

 

穂乃果「ほら、騙すだけならこんな簡単なのに…もぐもぐ」 

 

海未「穂乃果、ことりのお弁当から勝手におかずを取るなんて駄目ですよ」 

 

ことり「ねーねー穂乃果ちゃん、アルパカさんどこにも……あれ!?ことりのエビフライがなくなってる!」 

 

穂乃果「あーそれ、さっきアルパカが食べてったよ」 

 

ことり「えー!?気付かなかったよー。アルパカさん見たかったよー」 

 

海未「……ここまで簡単に騙されるとやはり少しは不安になりますね」 

 

穂乃果「でしょ?やっぱりことりちゃんのためにここはビシッと騙さないと」 

 

海未「かと言って、今日1日なんとか大事にはならずに済んでるんですよね」 

 

穂乃果「ん~~じゃあ皆の力を借りよう!」 

 

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~放課後 部室~ 

 

穂乃果「と言うわけで皆にもことりちゃんを騙す方法を考えてほしいの」 

 

真姫「騙すったって……その対象のことりが今ここに座って話を聞いてんだけど」 

 

穂乃果「ああ、大丈夫だよ。 ことりちゃん、耳栓取っていいよ」ジェスチャーフリフリ 

 

ことり「? もうとってもいいの?  ところで何のお話してたの?」 

 

穂乃果「ちょっと大人なお話だよ」 

 

ことり「お、おとななお話…///」 

 

真姫「……確かにこの様子じゃちょっと不安ね」 

 

にこ「……胸の大きい女は栄養が頭に行かなくなって馬鹿になるんだってね」ジロ 

 

ことり「ぴい(;8;)」ムネカクス 

 

希「なんか今日のことりちゃん、あんまりオーラがよくないみたいやなあ。そんなときには………ブラをとって頭にかぶるんがええかもね」 

            

ことり「……」イソイソソウチャク(`・ω・´) 

 

凛「えっとえっと…ことりちゃんは明日事故に遭っちゃうかもしれないにゃ!」 

 

ことり「ぴい!(;8;)」 

 

真姫「それじゃ単なる脅迫じゃない」 

 

絵里「……ことり、何か私達に隠し事してるって顔してるわね」 

 

ことり「っ!な、なんで絵里ちゃんは知ってるの!?(;8;)」 

 

真姫「そりゃ人間誰だって隠し事の1つや2つくらいあるでしょ」 

 

花陽「えっとね…………」 

 

真姫「別に無理してやらなくてもいいわよ」 

 

花陽「あ、大丈夫……ごほん、ことりちゃん。最近悩み事ない?けどね、このサイトに載ってる数珠を買うと色んな悩み事がすっきりするんだって」 

 

ことり「ほんと!?」 

 

真姫「なんであんたはガチのやつをことりに試すのよ」 

 

希「これはこれでおもしろ……可愛いと思うんやけどねぇ」コトリナデナデ 

 

絵里「ええ、こんなに純真なんてことりはキュートね」ギュッ 

 

ことり「ぴよっ///」 

 

にこ「けど確かに騙されやすいってのもどうかと思うわ。仮にもアイドルなんだからファンに騙されて……って心配もあるし」 

 

花陽「それは……確かに心配かも」 

 

凛「それは大変なんだにゃ!ことりちゃんは皆で守らないと!」 

 

真姫「けどずっと見守ってるわけにもいかないでしょ」 

 

穂乃果「だからだよ!私達がいなくても大丈夫なように、一度お灸をすえとくべきだと思うの!」 

 

真姫「……ことりが2年の中じゃ一番まともだから大丈夫だと思うけど」 

 

凛「ことりちゃんは常識があるけど押しに弱い気がするにゃ!」 

 

希「まあお人好しなんは明らかやし疑うことも覚えた方がええかもなあ」 

 

絵里「けど、わざわざ騙さなくても言って聞かせればいいんじゃないかしら」 

 

 

海未「絵里、残念ながらことりは今日は朝から意識的に注意をしているんです。 それなのに今やブラジャーを頭にかぶってる始末です」 

 

ことり「ぴよ?(・8・)」 

 

絵里「……なら多少のショック療法も必要なのかもしれないわね」 

 

希「ほなことりちゃんのために皆で色々やってみよっか」 

 

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この日からμ’sでは、ことりに嘘を言い、ことりが引っ掛った場合にはデコピンをする、というややもするとイジメに見えてしまいそうなことが始まった。 

 

ことりは「しっかり者になりたい!」とやる気を見せ、この企画にも俄然やる気を見せていたが、そのやる気とは正反対に悉く皆の嘘に引っかかっていた。 

 

1日に20回はデコピンされ続け、おでこが真っ赤になってるのがデフォになって早1週間が経った…… 

 

 

真姫「これ、やり続けても意味あるの?」 

 

凛「ことりちゃん、引っ掛りっぱなしにゃ……」 

 

 

絵里「ことり、コルセットとかでお腹を圧迫しながら食事をとると、お腹には肉が付かずに胸に脂肪が付くそうよ」 

 

ことり「へえ、そうなんだ~。ならちょっとくらいお菓子食べ過ぎても大丈夫ってことだよね!」パクパク 

 

絵里「いいえ、嘘よ♥」デコピン☆ 

 

ことり「いたい!(:8:)」 

 

にこ「……これじゃあ1週間前と変わらないじゃないの」 

 

花陽「うーん……人を信じるってのもことりちゃんのいいところだし…」 

 

穂乃果「けど結局、この1週間でもことりちゃんが徹底的に騙されてお金をはらったりとかしたことはなかったね」 

 

海未「そういえばそうですね。簡単な嘘にはすぐだまされますけど、お金とか物をだまし取られるような引っかけには違う方向に話が流れてしまって、結局引っ掛りませんでしたね」 

 

凛「それはことりちゃんの常日頃の行いがきっといいからにゃ!」 

 

真姫「ならさー、別にいいんじゃないの? ことりが抜けてるのはそうだけど、今すぐに直さないとヤバいってほどじゃないんだしさ」 

 

絵里「確かにそうかもね。 これ以上、おでこが真っ赤なことりを見るのも忍びないし。 それに、ことり自身が注意しようって思っただけでもいい方向に向かうんじゃないかしら」 

 

穂乃果「う~~ん………そうだよね。 じゃあことりちゃんがしっかりするまでは穂乃果が見守ってあげようかな」 

 

ことり (・8・)! 

 

海未「そうですね。今まで私はことりと穂乃果の面倒を見てきたつもりなので、そうなったところで前と一緒なので別に構いませんが」 

 

ことり (・8・)! 

 

ことり「穂乃果ちゃん、海未ちゃん、これからもよろしくね!」 

 

希(ことりちゃん、ホンマにお金とかが絡むと全く引っ掛らんかったなー。これも全部天然なんやろうか? ことり、というよりなんか鷺とかの方がぴったりなイメージやわ。まあ偶然なんやろうけど) 

 

ことり「ちゅん(・8・)?」 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

https://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1401/14012/1401213904.html

アスカ「ん……もう/// 結構大胆なのね///」シンジ「…」【エヴァンゲリオンss/アニメss】

ゲンドウ「出撃」 シンジ「わかった! 行ってくる!」【エヴァンゲリオンss/アニメss】

 

アスカ「ん……もう/// 結構大胆なのね///」シンジ「…」【エヴァンゲリオンss/アニメss】

 

 

 

 

 

 

ゲンドウ「出撃」 シンジ「わかった! 行ってくる!」

 

ネルフ本部】

 

 

シンジ「頑張るぞーっ!」ダダダダダッ

 

ミサト「待ちなさい、シンジ君! 説明を受けて!」

 

『せいっ!』バキッ

 

 

マヤ「ハッチこじ開けられました! エントリープラグの中に侵入されます!」

 

リツコ「誰か、シンジ君を止めて!!」

 

『動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動いてよっ!』

 

 

キュピーンッ

 

 

マヤ「初号機起動!」

 

リツコ「なんですって!?」

 

『うおおおおおっ!』

 

 

ダンッ、ダンッ、ダンッ

 

 

マヤ「信じられません! 三角飛びで地上へと飛び出していきます!」

 

リツコ「26番ルートのシャッター開放! 急いで! 壊される前に!」

 

ミサト「シンジ君、ちょっと! 落ち着いて!」

 

『くっらえーーーっ!』バリンッ

 

 

ドーンッ!!!!!

 

 

マヤ「使徒殲滅!」

 

ミサト「もう!?」

 

リツコ「……なんて子なの!」

 

 

冬月「……勝ったな」

 

ゲンドウ「」コクッ

 

 

使徒殲滅後】

 

 

ミサト「え!? シンジ君、お父さんと暮らさないの!?」

 

シンジ「はい! 父さんから一人で暮らせって言われてるので、だから一人暮らしします!」

 

ミサト「」

 

ミサト「だけど、それじゃいくらなんでも……」

 

シンジ「大丈夫です! 父さんはきっと我が子を千尋の谷に突き落とすライオンみたいな人なんです! 流石だよ、父さん! ワイルドだよ!」キラキラ

 

ミサト「」

 

ミサト「あの……シンジ君。良かったら私と一緒に住む?」

 

シンジ「いいんですか!?」パアッ

 

シンジ「ありがとうございます、ミサトさん! 僕、嬉しいです! 感激しました!」キラキラ

 

ミサト「……なんなの、この子」

 

 

【丘】

 

 

ミサト「えっと、シンジ君。あれがあなたの守った街よ」

 

シンジ「はい! 僕、頑張りました! 誉めて下さい!」

 

ミサト「……あ、うん」

 

シンジ「」ワクワク

 

ミサト「頑張ったわね、シンジ君」

 

シンジ「ひゃっほーい!」

 

 

【ミサトの家】

 

 

ミサト「それじゃあ、シンジ君。ここが今日からあなたの家よ」

 

シンジ「たっだいまー! うわっ、超汚い!」

 

ミサト「」

 

シンジ「すごいよ! こんな片付けがいがある家、初めてだ! 頑張るぞー! うりゃああー!!」ダイブ

 

ミサト「……ご、ごみんね」

 

 

【サービスシーン】

 

 

シンジ「お風呂だ、うっひょー!」ザバンッ

 

ペンペン「クエエエエッ!」ビクッ

 

 

シンジ「うわっ! なんだこの生き物! メチャメチャ可愛い!!」ダキッ

 

ペンペン「クエエエエェェェッッッッ!!!」ジタバタ

 

 

ネルフ

 

 

リツコ「それじゃあ、シンジ君。次は訓練よ」

 

シンジ「うおおおおおっ! センター! 照準! センター! 照準! スイッチ! スイッチ!」ガチッ、ガチッ、ガチッ

 

リツコ「」

 

 

使徒来ちゃった】

 

 

レイ「碇君、非常召集」

 

シンジ「きゃっほーい! 出番だー!」ダダダッ

 

レイ「…………」

 

 

【出撃】

 

 

ミサト「リツコ、シンジ君の出撃準備は出来てる?」

 

リツコ「もう勝手に飛び出してるわ」

 

 

『ファイヤァァー! 覚悟しろ、使徒おぉぉ!!!』

 

 

ミサト「」

 

 

『うおおおおああああああああっっ!』

 

 

ドーンッ!!!!!

 

 

マヤ「使徒殲滅!」

 

ミサト「また!?」

 

リツコ「おまけに素手で倒したわよ、あの子!?」

 

 

【殲滅後】

 

 

ミサト「なんで私の命令をきかず、勝手に出撃したの」

 

シンジ「敵を倒すには早い方がいいって、孫子ジーンさんが言ってましたから!」キラキラ

 

ミサト(どう返しゃいいのよ、こんなの……)

 

 

ミサト「とにかく、シンジ君」

 

シンジ「はい!」

 

ミサト「使徒戦については私が指揮を取る事になってるから。だから、勝手な真似は今後しないように。いいわね」

 

シンジ「はい! ごめんなさい!」ペコリッ

 

ミサト「……うーん」

 

 

【ミサトの家】

 

 

ミサト「シンちゃーん。悪いけど、レイに新しいIDカード届けに」

 

シンジ「行ってきます!!」ダダダダッ

 

ミサト「」

 

 

綾波の家】

 

 

シンジ「綾波綾波綾波!」ドンドン、ガンガン

 

シンジ「来た! 僕! 届けに! IDカード!」ドンドン、ガンガン

 

シンジ「ドア! 開ける! 綾波! 早く!」ドンドン、ガンガン

 

 

ガチャッ

 

 

レイ「……何?」

 

シンジ「はやなみぃー!」パアッ

 

シンジ「持ってきた! ほらっ! 出来立て! IDカード! 新しい!」ババンッ

 

レイ「そう」

 

シンジ「それじゃ一緒にネルフに行こう、綾波!」ギュッ

 

レイ(手を……掴まれた)

 

シンジ「それーっ!!」ダダダダッ

 

レイ「待って。速い……! 転ぶから……!」ダダダッ

 

 

エスカレーター】

 

 

シンジ「綾波ってエヴァに乗るの怖くない?」

 

レイ「……どうして?」

 

シンジ「怖かったら、僕が綾波の分まで乗るから!」

 

レイ「……別に、怖くないわ」

 

シンジ「そっか! でも、危ないからやっぱり僕が綾波の代わりに乗るね!」

 

レイ「……そう」

 

 

【ラミちゃん襲来】

 

 

ミサト「リツコ、シンジ君の出撃準備は出来てる?」

 

リツコ「もう飛び出してるわ」

 

 

『ぎゃあああああああああっっ!!』

 

 

ミサト「」

 

 

【病室】

 

 

シンジ「」ハッ

 

レイ「碇君……気がついた?」

 

シンジ「ちくしょう! ちくしょう!」ガバッ

 

レイ「!?」

 

シンジ「うわぁぁぁぁぁ!!」ダダダダッ

 

レイ「あ、碇君……!」

 

 

ミサト「リツコ、準備は間に合う?」

 

リツコ「ギリギリ何とかね。でも、問題は準備よりも人の方だと思うわよ」

 

ミサト「シンジ君か……。考えてみれば、あの子、初めて使徒から攻撃を受けたのよね……」

 

リツコ「それも生死に関わる攻撃をね。これまでは怖いもの知らずでやっていけたかもしれないけど、これから先はどうか……」

 

ミサト「そうね……。心配だわ。怖くなってトラウマ抱えたりしてないといいけど……」

 

リツコ「ミサト……。こちらは私が受け持つから、あなたはシンジ君の様子を見に行ったら?」

 

ミサト「そうね……。ちょっち悪いけど、少し席を外すわ。シンジ君の病室まで行って」

 

 

キュピーン

 

 

マヤ「!? 初号機、突然起動しました!」

 

リツコ「何ですって!?」

 

ミサト「まさか……! 暴走!?」

 

使徒め! よくもやってくれたなコンチクショウ! さっきのは痛かった! 痛かったぞぉぉぉー!!』

 

 

ウオオオオオッ!!

 

 

ミサト「ちょっ!」

リツコ「」

マヤ「」

 

 

『食らえええっ!! 怒りのフライングボディブレス!!』

 

 

ラミちゃん「来ないでー!」

 

キュイーン……

 

 

ミサト「あ」

リツコ「」

マヤ「」

 

 

チュドーン!!!!!

 

『うわああああああああああっ!!!』

 

 

ミサト「シンジ君っ!」

 

リツコ「何をしてるの、あの子は!」

 

マヤ「作戦が! 全部パーに……!」

 

 

『痛いよ! だけど、僕はもう負けない! 弱音なんか吐かないんだ!』

 

『今度こそ!』ピカンッ

 

 

マヤ「!? 左腕と胸部、一瞬にして復元!」

 

ミサト「なんで!?」

 

リツコ「あり得ないわ!!」

 

 

ラミちゃん「いやー、やめてー」

 

キュイーン……

 

 

ミサト「シンジ君、また来るわよ! 避けて!」

 

リツコ「シンジ君っ!」

 

マヤ「逃げて、シンジ君!!」

 

 

チュドーン!!!

 

 

『うおああああああああああああっっ!!』

 

バリンッ!!!

 

 

ミサト「そんなっ! 嘘でしょ!?」

 

リツコ「ATフィールドで!!」

 

マヤ「逸らした!?」

 

 

『いっくぞー!!』ジャキンッ

 

 

マヤ「プログレッシブナイフ装備!」

 

 

『食らええええええぇぇぇっ!!』

 

ギュイーン

 

 

バリンッ!!!!!

 

 

ラミちゃん「あーれー」

 

 

 

マヤ「使徒殲滅!」

 

 

ミサト「無茶苦茶よ……」

 

リツコ「非常識だわ……」

 

 

綾波! 見てた!? 次は負けなかったよ、僕!!』

 

綾波は僕が守るから! だから安心して!!』

 

 

 

ミサト「」

リツコ「」

 

マヤ「なんか青春してる……」

 

 

 

 

 

レイ「碇君……?」

 

 

【司令室】

 

 

綾波は僕が守るから! だから安心して!!』

 

 

冬月「碇……あれ、本当にお前の息子か? お前と似ても似つかないが……」

 

ゲンドウ「……あまり自信はない」

 

冬月「やれやれ……。こういう時、どういう顔をしていいものか……」

 

ゲンドウ「……聞くな、冬月。放っておいてくれ」

 

 

【人の造りしモノ】

 

 

ジェットアローン「へいへいへい、爆走だぜえ」ドシン、ドシン

 

 

『ちょっと待ったー! ここを通りたかったら、僕を倒してからだよ! そりゃあ!』バキッ!!

 

ジェットアローン「おおふ」ドサッ

 

 

ミサト「ちょっ! 炉心融解の危険があるって言ったでしょうがあ!!」

 

 

【アスカ来日】

 

 

アスカ「ミサト、久しぶりー! 会いたかったー! 元気ー!」タタタッ

 

ミサト「ええ、元気よ。紹介するわ、彼がサードチルドレンの」

 

アスカ「ハイターッチ! ヘイヘイカモン、サード!」

 

シンジ「オーイエー! セカンド! フーーーーッ!」パチンッ

 

アスカ・シンジ「仲良し♪」

 

 

ミサト「あんたたち、ホントに初対面なの?」

 

 

ガギたん「やっはろー」

 

 

アスカ「チャーンス! 早く早く、シンジー! 置いてっちゃうわよー!」ダダダッ

 

シンジ「いやっふうううい! 使徒キター!」ダダダッ

 

ミサト「ちょっ!」

 

加持「……元気だなあ、あの二人。いやはや、何とも」

 

 

『とっつげきー!!』

 

『バームクーヘン!』

 

 

弐号機「せいっ!」ズサッ

 

ガギたん「きゃあん」

 

 

使徒殲滅!』

 

 

 

ミサト「はや!」

 

加持「何とも頼もしい事で……」

 

 

【ミサトの家】

 

 

アスカ「ヘロー、シンジ! 引越して来たわよー!」

 

シンジ「ヤッフゥゥゥイ! 可愛い女の子と同棲だー!」ピョイン

 

 

ミサト(一緒に暮らすなんて言った覚えないんだけどなあ……)

 

 

【サービスシーン2】

 

 

アスカ「お風呂♪ お風呂♪」

 

ペンペン「クエェ……」コソコソ

 

 

アスカ「!?」

 

ペンペン「」ビクッ

 

 

アスカ「きゃー、なに、これ! スゴい可愛い!」ダキッ

 

ペンペン「クエエエエェェェッッッッ!!!」ジタバタ

 

 

【学校】

 

 

シンジ「おっはよー! 綾波!」

 

アスカ「おっはよー! アンタがファーストチルドレンのレイね! アタシ、セカンドのアスカ! これから仲良くしてきましょうね!」ニコッ

 

レイ「……命令があればそうするわ」

 

 

【昼休み】

 

 

シンジ「そーれ、アスカ。今日のお弁当、ぽーいっだ」ポイッ

 

アスカ「甘い甘い。そーれ、キャッチー!」パシッ

 

 

アスカ「やったわねえ、お弁当の中身ぐちゃぐちゃじゃないの、このバカシンジー♪」キャッキャッ

 

シンジ「あはは、ごめんよ、アスカー♪」キャッキャッ

 

 

レイ「…………」

 

 

レイ「……碇君。一つ聞きたい事があるの」

 

シンジ「どうしたの、綾波?」

 

レイ「セカンドのお弁当を碇君が持ってるのはどうして?」

 

シンジ「ああ、あれは僕が作ってきたからだよ! 今日のは特に自信作なんだ!」ニコッ

 

アスカ「それを投げて渡したじゃないの、アンタ! いい加減にしなさいよね! このー♪」ペシペシ

 

シンジ「あはは、ごめんってばー、アスカー♪」キャッキャッ

 

 

レイ「……二人とも、少し黙って聞いて」

 

シンジ「え」

 

アスカ「え」

 

 

レイ「……それで、どうしてセカンドのお弁当を碇君が作る事になったの?」

 

 

シンジ「ああ、それは僕達が!」

 

アスカ「一緒に! 暮らす事になったから!」

 

レイ「……一緒に?」

 

 

シンジ「ね、アスカ!」

 

アスカ「そうよ! アタシ逹仲良しだもん!」

 

シンジ・アスカ「イエイ!」パシンッ

 

レイ「…………」

 

 

ヒューヒュー、ヒューヒュー

 

\ 熱いねー、二人ともー /

 

 

シンジ「みんな、やめてよー! そんなんじゃないってばー」

 

アスカ「そうそう。そんなんじゃないってばー!」

 

 

\ 仲いいー。同棲してるんだー /

 

 

シンジ「だから、違うってばー!」

 

アスカ「そうよ、違うってばー。シンジとはお友達なのー!」

 

レイ「……そう」

 

シンジ・アスカ「うん!」ニコッ

 

レイ「…………」

 

 

ネルフ

 

 

レイ「……葛城一尉。不公平です」

 

ミサト「え? レイ、藪から棒に何?」

 

レイ「セカンドチルドレンが葛城一尉の家に引越しをしたと聞きました。不公平です」

 

ミサト「え、ちょっとレイ、待って。何の話をして」

 

レイ「私も同じエヴァパイロットです」

 

ミサト「うん、それは知ってるけど、でもそれとこれで何の関係が」

 

レイ「今日から葛城一尉の家に私も引越します」

 

ミサト「」

 

 

【ミサトの家】

 

 

レイ「今日から、この家に私も住む事になったから」

 

アスカ「イエーイ、女の子増えたぁ!」

 

シンジ「可愛い女の子二人と同棲だなんて、僕、エヴァに乗ってて良かったあ! ひょーっ!」ピョイン

 

 

ミサト「ちょっ!!」

 

 

【サービスシーン3】

 

 

レイ「……ポカポカ」

 

ペンペン「クェ……」コソコソ

 

ペンペン「」シュバババッ (ダッシュ

 

 

レイ「!!」ガシッ (確保)

 

ペンペン「クエッッッ!!」ビクッ

 

 

レイ「」ジッ

 

ペンペン「クエェェ……?」ドキドキ

 

 

レイ「可愛い……!///」ギュッ

 

ペンペン「クエエエエエェェッッ!!」ジタバタ

 

 

【晩御飯のお時間】

 

 

ミサト「」グビッ、グビッ、グビッ、プハーッ

 

ミサト「あー、もう! こうなったらやけよ! 今日はレイの歓迎会だからパーッといくわよ、パーッとお!」

 

 

アスカ「ディナー♪ ディナー♪」

 

シンジ「ご馳走♪ ご馳走♪」

 

レイ「……野菜炒め。野菜炒め」

 

 

ミサト「あんたら、行儀悪いからやめ」

 

 

シンジ・アスカ「いたっだきまーす!」

 

レイ「……いただきます」

 

 

ミサト「……もうやだ。こんなんばっかり」

 

 

アスカ「うん、おっいしー! さっすが、シンジー!」

 

レイ「……美味しい」

 

シンジ「みんなで食べるご飯、サイコーだよーっ!」

 

ミサト「ホント、仲良いわね、あんたら」

 

 

レイ「」モグモグ、ヒョイッ

 

アスカ「って、レイ、何で肉をよけてるの? こんなに美味しいのに」パクパク

 

レイ「話しかけないで、そこの赤いの」

 

アスカ「」

 

 

レイ「」モグモグ、ヒョイッ

 

シンジ「あれ? 綾波、その唐揚げ食べないの? 美味しいのに」

 

レイ「ごめんなさい……。肉、食べられないの」

 

シンジ「あ、そうなんだ。珍しいね」

 

アスカ「あ、えっと……レイ?」

 

レイ「うるさいわ、そこの赤いの」

 

アスカ「」

 

 

シンジ「でも、それなら僕がもらってもいいよね? 綾波?」

 

レイ「ええ……碇君、食べて」

 

シンジ「やったー、お肉倍増だーい!」モグモグ

 

アスカ「あー、シンジ、ずるーい! アタシも欲しかったのにー! ちょっとシンジ、一口ちょーだいよ!」

 

シンジ「ダメだよ! 早い者勝ちなんだから! これは僕の!」ムグムグ

 

アスカ「渡せー! ほらほら」コチョコチョ

 

シンジ「や、やめへ、アフカ! 反則だよ、くふぐるのは!」

 

アスカ「知らないわよーん! うりうり」コチョコチョ

 

シンジ「うひゃはは! た、助け、あはははは!」ジタバタ

 

 

レイ「…………」

 

ミサト「えっと……レイ? ひょっとして、混ざりたいの?」

 

レイ「いいえ」

 

ミサト「あ、そう……? うん、なんかごめんね……」

 

 

【深夜】

 

 

ガラッ

 

ミサト「はぁー、もう。ちょいと飲みすぎたわね」

 

ミサト「おトイレ、おトイレっと。ん?」

 

 

シンジ「」スヤスヤ

 

アスカ「」スヤスヤ

 

レイ「」スヤスヤ

 

 

ミサト「あらら……三人してこんな床の上で寝て」

 

ミサト「はしゃぎ疲れてそのまま寝ちゃったってパターンよね、これ。みんな可愛い寝顔しちゃって、全くもう」

 

ミサト「そりゃ昼間あれだけ騒ぎ回ってるんだから、夜まで持たないか。こういうところは本当に子供なんだから」

 

ミサト「でも、これだけ無邪気な顔して眠ってると、可愛いから許しちゃうけど」クスッ

 

ミサト「仕方がないわね。とりあえず三人とも部屋まで運んであげるか。まずはアスカから。よっこらしょっと」ヒョイッ

 

アスカ「……や」ボソッ

 

ミサト「?」

 

 

ミサト「アスカ? 起きたの?」

 

アスカ「」スヤスヤ

 

ミサト「……寝言?」

 

アスカ「……や、ママ……行かないで……」ギュッ

 

ミサト「……ママ?」

 

アスカ「アタシを……見て。アタシを捨てないで……」ポロポロ……

 

ミサト「…………」

 

 

シンジ「……父さん」ボソッ

 

ミサト「……シンジ君? ……こっちも寝言?」

 

シンジ「父さん、僕を置いていかないで……父さん……」ポロポロ……

 

ミサト「…………」

 

 

レイ「……違うわ」ボソッ

 

ミサト「……レイまで」

 

レイ「私は人形じゃない……。私の代わりはいないの……だから……」ツー…… (涙)

 

ミサト「…………」

 

 

ミサト「そうよね……。シンジ君もアスカもレイも本当は淋しいのよね……」

 

ミサト「母親がいない……。淋しいのは当たり前の事よね……」

 

ミサト「普段、あれだけ明るいからまるで気が付いてあげられなかった……完全に保護者失格ね、私は」

 

アスカ「ママ……」ギュッ

 

ミサト「はいはい……。大丈夫よ、アスカ。私はどこにも行かないから……ね?」ナデナデ

 

アスカ「……マ……マ?」

 

ミサト「いい子ね、アスカ。……さ、向こうのベッドで眠りましょう。連れてくわよ」

 

アスカ「うん……」

 

ミサト「……お休みなさい、アスカ。いい夢を見てね」

 

アスカ「ママ……」スヤスヤ

 

 

ミサト「次はシンジ君か。布団かけてあげなきゃ」テクテク

 

 

シンジ「父さん……」ポロポロ

 

ミサト「うん……。大丈夫よ、シンジ君。あなたのお父さんも、きっと心の底ではあなたの事を想っているわ」

 

ミサト「……辛いだろうけど、頑張ってね、シンジ君」ナデナデ

 

シンジ「僕を……」

 

ミサト「うん。あなたを見ている人はここにいるわ、お休み」

 

シンジ「父さん……」スヤスヤ

 

 

ミサト「最後にレイね」

 

レイ「……碇……君。私は……」ツー……(涙)

 

ミサト「うん。シンちゃんはあなたの事を人形だとか、代わりがいるとか、そんな風には思っていないわよ、きっと」

 

ミサト「前にシンちゃんから守るって言われたわよね、レイは。だから、それを信じなさい。シンちゃん、嘘をつけるような子じゃないし。だから安心して、レイ」ナデナデ

 

レイ「う、ん……」スヤスヤ

 

 

【翌朝】

 

 

チュンチュン

 

ミサト「ん……もう朝……?」

 

ミサト「うー……頭痛い。本当に昨日はちょっと飲みすぎたわね……」

 

 

レイ「……おはようございます、葛城一尉。……起こしてくるように碇君から頼まれました」ガラッ

 

ミサト「うあ……レイ、悪いけどもう少しだけ寝かせて……頭痛いから」

 

シンジ「ミサトさーん! 遅いですよー! 起きて下さーい!」ガンガン!!

 

ミサト「やめ……静かに……」

 

アスカ「ミッサトー! 愛のダイビングアターック! それーっ!」ドサッ

 

ミサト「がふっ! アスカ……あんたまで……」ガクッ

 

 

【瞬間、心、重ねて】

 

 

イスラフェル「来ちゃった」エヘ

 

 

『行っくわよー、シンジー!』

 

『わかってるよ、アスカー!』

 

 

初号機&弐号機「二人は仲良し」クルクル

 

初号機&弐号機「スーパーキーック!!」ズガッ

 

イスラフェル「まだ分身もしてないのにー」

 

 

チュドーン!!!

 

 

マヤ「使徒殲滅!」

 

ミサト「はいはい、お疲れさまー。うー……頭が痛い……」

 

リツコ「早くて楽でいいわね」

 

加持「今夜は久しぶりに三人で飲みにでも行くか?」

 

ミサト「あんた……わざと言ってるでしょ?」

 

 

【マグマダイバー】

 

 

シンジ「うぃええええええ!!!」

 

アスカ「修学旅行がぁぁぁぁ!!!」

 

レイ「……ないわ」

 

 

シンジ「うっ、うぁぁぁ……! そんなのってないよぉぉぉ!! 楽しみに、してたのにぃ……!」グスッ

 

アスカ「うっ、うっ……! 水着買っだのに゛ぃぃ……!」グシュッ

 

レイ「…………」

 

 

ミサト「ご、ごみん……。本当に許して……三人とも……」

 

 

【プール】

 

 

シンジ「ぅぅ」シクシクシクシク

 

アスカ「ぅぅ」シクシクシクシク

 

 

レイ(……まだ泣いてる)

 

 

【一時間後】

 

 

シンジ「そーれ、アスカ、パース!」ポーンッ (ピーチボール)

 

アスカ「ナイスパス、シンジー! そーれっ!」ポーンッ

 

シンジ「あー! 全然別のところにいってるじゃないか、アスカのへたっぴー」キャッキャッ

 

アスカ「シンジなら取れるわよー、頑張りなさいよねー」キャッキャッ

 

 

レイ「…………」

 

 

【更に一時間後】

 

 

シンジ「アスカー! 見て見てー! ジャイアンストライドエントリー!」ドボンッ

 

アスカ「それなら私はバックロールエントリー!」ドボンッ

 

レイ「ステップオーバーエントリー」ドボンッ

 

 

【サンダル捕獲作戦】

 

 

ミサト「アスカ、ケージに入れて使徒を生け捕りにするから」

 

『どおりゃぁぁぁぁ!!』ズサッ!!

 

 

サンダルフォン「ふぇぇ……」

 

 

使徒殲滅!』

 

ミサト「アスカぁぁぁぁ!!」

 

 

【静止した闇の中で】

 

 

シンジ「使徒がキター!」ダダダッ

 

アスカ「でも、停電で扉閉まってるー!」ダダダッ

 

レイ「えいっ!」バキッ!! (破壊)

 

アスカ「ナーイス、レイ!」ダダダッ

 

シンジ「このままダッシュダッシュゥー! イエーイ!」ダダダッ

 

アスカ「私が先よー! 負けるもんですかー!」ダダダッ

 

レイ「ま、待って!」ダダダッ

 

 

エヴァ搭乗後】

 

 

『はっ! ほっ! やっ!』タンッ、タンッ

 

『ちょっと、シンジー! 三角飛びはズルいわよ!』

 

『私も!』タンッ、タンッ

 

『レイまで! もうっ! アタシも行く!』タンッ、タンッ

 

 

マトリエル「マジすか」

 

 

『くっらえー!! 初号機パーンチ!』ドゴッ!!

 

『零号機アタック!』ギュイイイーン!!

 

 

マトリエル「ごふっ!」

 

 

チュドーンッ!!!

 

 

使徒殲滅!』

 

 

『ちょっと、アタシの出番はー!!』

 

 

 

 

【奇跡の価値は】

 

 

ミサト「各機、指定の位置について!」

 

リツコ「もう発進(ry」

 

 

『いやっほーい! たーのしーい!』ピョーン

 

『そーれっ! あはははぁ!』ピョーン

 

『……ジャンプ』ピョーン

 

 

ミサト「あんたらぁぁ!! 使徒が落ちてくる前に内部電源が切れるから飛び出すなって散々言ったでしょうがぁぁぁ!!」

 

 

ミサト「マヤ! 使徒の落下予想時刻は!」

 

マヤ「推定で七分後です! 内部電源だけではもちません!」

 

リツコ「ミサト! ここは呼び戻すしかないわよ!」

 

ミサト「わかってるわよ! あんたら、ソッコーで戻って」

 

日向「目標! 急加速して大気圏を突破! もう肉眼で確認出来ます!」

 

青葉「推定より二分も早いぞ! これじゃ呼び戻しても、もう間に合わない!」

 

 

ミサト「そんなっ!」

 

 

『ATィィィ……!』

 

『フィールド……!!』

 

『全っ開っっ!!!』

 

 

『そおりゃあああああっ!!!』ブンッ!! (ATフィールド投げ)

 

『最大出力っ!!!』ブンッ!! (ATフィールド投げ)

 

『いっけええええええっ!!!』ブンッ!! (ATフィールド投げ)

 

 

キランッ

 

サハちゃん「あーれー」

 

 

チュドーンッ!!!

 

 

マヤ「使徒……殲滅……!!」

 

日向「今、ATフィールド……ぶん投げたぞ、あの子ら……」

 

青葉「あんな使い道あるのかよ……」

 

ミサト「なにあれ……」

 

リツコ「凄い……」

 

 

【嘘と沈黙】

 

 

シンジ「このお墓の下に母さんが眠ってるなんて信じられないや。掘り起こしていい?」

 

ゲンドウ「駄目だ。そこにはいないけど駄目だ」

 

シンジ「冗談だよ。写真も燃やしたんだよね。一枚ぐらい残ってないの?」

 

ゲンドウ「ない。全ては思い出の中だ。今はそれでいい」

 

シンジ「僕は嫌だよ。父さんには新しい恋愛をしてもらって早く幸せになって欲しいんだ。いい人見つけて再婚しなよ、父さん」

 

ゲンドウ「母さんの前だ。ぶち殺すぞ」

 

 

【車の中】

 

 

ミサト「どうだった、シンジ君? 久しぶりのお父さんとの対面は?」

 

シンジ「最高です! やっぱり父さんはワイルドでした!」キラキラ

 

ミサト「あ、ああ、そう……」

 

 

【ミサトの家】

 

 

シンジ「ミサトさんが今日は帰ってくるのが遅い!」

 

アスカ「って事は!」

 

レイ「みんなでトランプ」

 

シンジ「お菓子、準備オッケー!!」ジャンッ

 

アスカ「ジュース、準備オッケー!!」ジャンッ

 

レイ「トランプ、準備オッ……用意は出来ているわ」

 

 

シンジ「負けたら罰ゲームだよ! 覚悟はいい、みんなっ!」

 

アスカ「へっへーん! 負っけるもんですかー!」

 

レイ「……勝つわ」

 

 

「ゲームスタートォゥ!!」

 

 

【十五分後】

 

 

シンジ「」ガクゥ

 

 

アスカ「イエーイ! レイ! ナイスアシストォ!」サッ

 

レイ「あなたも、よくやったわ」パシッ (ハイタッチ)

 

 

シンジ「」ズゥン……

 

 

アスカ「罰ゲーム♪ 罰ゲーム♪」

 

レイ「罰ゲーム。罰ゲーム」

 

 

シンジ「あんまりだ……。世の中には神様なんかいないんだ……」ズゥン……

 

 

アスカ「それじゃあ、負けたシンジはアタシにキスね。それがアタシからの罰ゲーム」

 

レイ「!?」

 

シンジ「!!」

 

レイ「セカンド……。キスって、唇と唇を重ねるあれ?」

 

アスカ「あったり前じゃないの! お子様じゃないんだから、キスの一つぐらい罰ゲームにしてもいいでしょ。ねー、シンジ?」

 

シンジ「う、うん……///」ドキドキ、バクバク、ドキドキ、バクバク

 

 

アスカ「ほら、シンジ。目をつぶってるから早く///」

 

シンジ「あ、いや、あの、その、えと……!///」ドキドキ、バクバク、ドキドキ、バクバク

 

 

レイ「…………」

 

 

レイ「」スタスタ (台所に行く)

 

レイ「」ヒョイ (こんにゃくを取り出す)

 

レイ「」スタスタ (居間に戻る)

 

 

アスカ「シンジ、まだー///」

 

シンジ「や、えと、あの……///」ドキドキ、バクバク、ドキドキ、バクバク

 

 

レイ「」ピトッ (こんにゃくをアスカの唇につける)

 

アスカ「ん///」

 

レイ「」グリグリ (押し付ける)

 

アスカ「あ……/// ん……」

 

 

シンジ「」

 

 

アスカ「ん……もう/// シンジ、長過ぎよ」

 

シンジ「」

 

レイ「」サッ (こんにゃくを隠す)

 

 

アスカ「にしても、アンタ、結構大胆なのね。あんなに強く///」

 

シンジ「」

 

レイ「」スタスタ、ポイッ (台所に行ってこんにゃくを捨てる)

 

 

レイ「……碇君」クルッ (向き直る)

 

シンジ「な、なに……? 綾な」

 

レイ「」スッ (キスをする)

 

シンジ「!///」

 

レイ「私も罰ゲーム、キスにしたから……///」

 

シンジ「あ、綾波///」

 

 

アスカ「…………」

 

アスカ「ふうん……」

 

 

死に至る病、そして】

 

 

『戦いは男の仕事っ! いやっふーい!』ピョンッ

 

『前時代的ぃ! そーれっ!』ピョンッ

 

『私も行く!』ピョンッ

 

 

ミサト「ちょっと、アンタらぁ!! 戻っ(ry」

 

リツコ「いつもの事ね」

 

マヤ「ですね」

 

 

レリエル「おいーっす」

 

 

ズブ……ズブズブズブ……

 

 

ミサト「なっ! 街が影に飲み込まれて!」

 

リツコ「まさか、これはディラックの海!?」

 

 

『なっ! 何ですか、これ! ミサトさんミサトさん!』

 

『ミサト! 私たち、飲み込まれて! 足場が!!』

 

『っ!』

 

 

ミサト「シンジ君! アスカ! レイ!」

 

リツコ「まずいわ! このまま全部飲み込まれてしまったら!」

 

マヤ「駄目ですっ! エヴァ全機! 完全に飲み込まれました! 通信も応答ありません!」

 

ミサト「みんなっ!!」

 

 

シンジ「ふんっ!」バリンッ!! (こじ開ける)

 

アスカ「どっせい!」バリンッ!! (こじ開ける)

 

レイ「はいっ!」バリンッ!! (こじ開ける)

 

 

レリエル「オーマイガー……」

 

 

チュドーンッ!!!

 

 

マヤ「あ……使徒殲滅です」

 

ミサト「」

 

リツコ「」

 

 

【四人目の適格者】

 

 

レイ「」ギュッ…… (雑巾しぼり)

 

 

シンジ「…………」

 

 

レイ「……どうしたの? 碇君」

 

シンジ「あ、ううん。何でもない。ただ……」

 

レイ「ただ?」

 

シンジ「なんか、綾波の雑巾のしぼり方がお母さんみたいだなって思って……//」

 

レイ「///」カアッ

 

シンジ「綾波って結婚したら、いいお母さんになるかもって……。そう思ったんだ///」

 

レイ「そう///」ドキドキ

 

 

ネルフ

 

 

リツコ「ミサト、今度四号機がこちらに来るみたいだけど」

 

ミサト「ぶっちゃけ、今の状況で四号機っている?」

 

リツコ「いいえ。必要ないわ」

 

ミサト「そうよねー」

 

 

【格納庫】

 

 

エヴァ四号機「…………」

 

バルディエル「俺、何しに来たん?」

 

 

【男の戦い】

 

 

ゼルりん「がおー」

 

 

『せいっ!!』ドゲシッ!!

 

『どっしゃああ!!』ズガッ!!

 

『いける!!』ダンッ!!

 

 

ゼルりん「フルボッコとかないっすわ、ホンマ……」

 

 

チュドーンッ!!!

 

 

 

マヤ「使徒殲滅!」

 

ミサト「今回、意外と強かったわね」

 

リツコ「そうね。戦闘開始から殲滅まで五分かかったのってこれが初めてよね」

 

加持「しかし、全員無事でなにより。さあて、今夜は祝杯といきますか」

 

ミサト「そうね。給料出たばっかりだし、いっちょパーっとね」

 

 

ネルフ誕生】

 

 

加持「よお。遅かったな」

 

 

バンッ!!!

 

 

【ミサトの家】

 

 

『留守番電話に一件のメッセージがあります』

 

 

ミサト「!!」

 

ミサト「まさか……」ソロソロ……

 

ミサト「再生……」ポチッ

 

『葛城……俺だ』

 

『このメッセージを聞く時には、君に多大な迷惑をかけた後かもしれない。……すまない』

 

『実はさっき車に轢かれちまってな……。右足を骨折してしまったんだ』

 

『君がまだその連絡を受けていないのなら、悪いが俺の部屋に行って枕とパジャマを持ってきてくれ。俺、枕が変わると眠れないんだ』

 

『ついでに、俺の家の表札も持ってきてくれないか。それは君の家につけておいてくれると嬉しい』

 

『八年前に言えなかったあの言葉を今言うぞ、葛城。これからは加持ミサトになってくれ』

 

『俺と結婚してほしい』

 

『必ず幸せにしてみせるから。迷わず俺を選んでくれ。それじゃ……』

 

ツーツーツー……

 

ミサト「うっ……」ポロポロ

 

ミサト「あんた、馬鹿よ……。こんな留守番電話でプロポーズするなんて……」ポロポロ

 

ミサト「本当に馬鹿よ……」ポロポロ

 

 

シンジ「おめでとうございます」

 

アスカ「おめでとう、ミサト」

 

レイ「おめでとう」

 

 

ミサト「……みんな、ありがとう」グスッ

 

 

【せめて人間らしく】

 

 

アラたん「ハーレルヤ♪ ハーレルヤ♪」

 

 

アスカ「うっ! いやあああああっ! 私の心を見ないで! 私を殺さないでぇ!!」

 

 

リツコ「精神攻撃!?」

 

ミサト「まずいわっ! 初号機にポジトロンスナイパーライフルの用意を! 超長距離射撃準備!」

 

 

レイ「ていっ!」ピューンッ!!!

 

ゲンドウ「ドグマの槍がっ!!」

 

ヒュイーン……

 

ズサッ!! ボシュンッ!!!

 

 

アラエル「ばたんきゅー……」

 

 

使徒殲滅!』

 

 

ロンギヌスの槍の回収は!?』

 

『不可能です!』

 

『……ぐっ』

 

 

【涙】

 

 

アルミサエル「いきまーす」

 

 

『くっ!』ダンッ、ダンッ!!! (射撃)

 

綾波、危ない! ふんっ!!』ガシッ (捕獲)

 

『オッケー、シンジ! 綱引きといくわよー!』ガシッ (捕獲)

 

 

アルミサエル「ちょっ」

 

 

『オーエス! オーエス!』グイッ、グイッ!!

 

『オーエス! オーエス!』グイッ、グイッ!!

 

 

ブチッ!!!

 

アルミサエル「ちぎれたー」

 

 

 

チュドーンッ!!!

 

 

マヤ「使徒殲滅!」

 

ミサト「みんな、おつかれー」

 

リツコ「通常業務に戻るわよー」

 

日向「了解です」

 

青葉「はーいっと」

 

 

 

【最後のシ者】

 

 

カヲル「♪♪♪」

 

カヲル「歌はいい。歌はいいねえ。リリンの生み出した文化の極みだよ」

 

カヲル「君もそう思わないかい、碇シンジ君?」

 

シンジ「そうだね! それで、君は誰!」

 

カヲル「僕の名前は渚カヲル。最後のシ者だよ」

 

シンジ「じゃあ、カヲル君だね! よろしく!」

 

カヲル「こちらこそ、よろしく。シンジ君」

 

 

 

【ミサト家】

 

 

カヲル「いいのかい? 僕がお邪魔しちゃっても」

 

シンジ「そんな事気にしないでよ! 人類みんな兄弟だよ!」

 

アスカ「イケメン登場ー! やったあー!!」ピョーン

 

レイ「楽しんでいって」

 

カヲル「ありがとう、みんな。……シンジ君は幸せ者だね、こんな良さそうな人たちに囲まれて」

 

シンジ「うん! スゴい幸せだよ、僕!」

 

カヲル「……そう」ニコッ

 

 

【格納庫】

 

 

カヲル「あれだけ仲が良さそうだと、僕も少々気が引けるね……。だけど」

 

カヲル「ご老人たちの意向には従うよ。僕はその為にここに来たのだから」

 

 

カヲル「おいで。アダムの分身、そしてリリンのしもべ」

 

 

弐号機「」キュピーン

 

 

【発令所】

 

 

マヤ「パターン青、使徒です!」

 

ミサト「弐号機が乗っ取られたの!?」

 

リツコ「あの少年が使徒だったと言うの!?」

 

 

ミサト「急いでシンジ君とレイを出撃させて! 何としてもドグマへの侵入を阻止するのよ!」

 

リツコ「二人とも、もう出(ry」

 

 

『カヲルくんっ! 僕を騙してたの!?』

 

『待って!』

 

 

アスカ「アタシの弐号機を返してー!!」

 

 

【ターミナルドグマ】

 

 

シンジ「アスカ、ごめんっ! うっりゃあああ!」バキッ!!

 

レイ「そいっ!」メキョッ!!

 

弐号機「oh……」

 

 

『弐号機、大破!』

 

『いやあぁ! アタシの弐号機がぁぁ!!』

 

 

カヲル「容赦なしか……。流石、シンジ君たちだね」

 

シンジ「カヲルくんっ! 何でこんな事を!!」

 

カヲル「僕が使徒で、君がリリンだからさ……。僕たちは結局こうなる運命だったんだよ。だから」

 

レイ「せいっ!!」グシャッ (握り潰し)

 

 

シンジ「カヲルくぅぅぅぅぅん!!!」

 

 

【浜辺】

 

 

シンジ「いい人だなって……。カヲル君とは仲良くなれると思ってたのに……」グスッ

 

アスカ「友達が増えたと思ったのに……。アタシの弐号機も壊されて……」グスッ

 

 

レイ「……私」

 

ミサト「あなたは悪くないわ……レイ。どのみち、誰かがやらなきゃいけない事だったのだから……」

 

レイ「でも……碇君が……。それにセカンドも……」

 

ミサト「仕方のない事だったのよ……。みんなもそれがわかってるわ……。あなたはエヴァパイロットとして、使徒を殲滅した。それだけの事よ……」

 

レイ「…………」

 

ミサト「それに、弐号機ならすぐに直るわ。パーツも予算も余りまくってるし……」

 

レイ「……でも」

 

 

【AIR・まごころを、君に

 

 

ミサト「……使徒はアダム、リリス、リリンを除くと、全部で十五体」

 

ミサト「だけど、私たちが倒した使徒は十四体しかいない……。一体足りないわ……」

 

ミサト「それなのにネルフ本部施設への立ち入りが禁止された……」

 

ミサト「一体、これはどういう事……?」

 

ミサト「使徒はもう来ないという事なの……?」

 

ミサト「碇司令は何を隠しているの……」

 

 

【???】

 

 

モノリス「約束の時は来た」

 

モノリスロンギヌスの槍を失った今、リリンによる計画の遂行は出来ぬ。唯一、リリスの分身たるエヴァ初号機によってその遂行を願う」

 

ゲンドウ「ゼーレのシナリオとは違いますが」

 

冬月「人はエヴァを生み出す為にその存在があったのです」

 

ゲンドウ「人は新たな世界へと進むべきなのです。その為のエヴァシリーズです」

 

モノリス「我らは人の形を捨ててまでエヴァという方舟に乗る事は無い」

 

モノリス「これは通過儀礼なのだ。閉塞した人類が再生する為のな」

 

モノリス「滅びの宿命は新生の喜びでもある。神も人も全ての生命が死をもって一つのものになる為に」

 

ゲンドウ「死は何も生みませんよ。我々は最後まで人として生きる事を望みます」

 

モノリス「死は君達に与えよう……」

 

ブンッ…………

 

 

冬月「……人は生きて行こうとする所にその存在がある。それが自らエヴァに残った彼女の願いだからな」

 

ゲンドウ「……ああ」

 

 

【発令所】

 

 

日向「外部との通信、情報回路が一方的に遮断されていきます!」

 

冬月「目的はマギか……」

 

青葉「全ての外部端末からデータ侵入!マギへのハッキングを目指しています!」

 

冬月「やはりか……侵入者は松代のマギ2号か?」

 

青葉「いえ、少なくともドイツと中国、アメリカからの侵入も確認出来ます!」

 

冬月「まずいな……マギの占拠は本部のそれと同義だからな……」

 

リツコ「私がプロテクトを展開します。それが出来れば少なくともマギによる占拠は当分の間、不可能になりますから」

 

冬月「……わかった。君に全てを任せよう」

 

ミサト「状況は?」

 

日向「先ほど、第二東京からAー801が出ました」

 

ミサト「Aー801?」

 

日向「特務機関ネルフの特例による法的保護の破棄、及び、指揮権の日本国政府への委譲です」

 

日向「最後通告ですよ。現在マギがハッキングを受けています。かなり押されています」

 

マヤ「今、赤木博士がプロテクト作業に入ってます。それが展開出来れば防げるはずです」

 

ミサト「リツコが……。わかったわ。あなた達は全力でリツコをサポートして。私は各ゲートの見回りに警戒要請をするわ」

 

日向「分かりました」

 

 

ミサト「これはちょっちヤバイかもね……」 

 

 

【第666プロテクト作動後】

 

 

ミサト「エヴァの発進準備は!?」

 

マヤ「全機、もう勝手に発進してます!」

 

 

ミサト「また!?」

 

 

ドーンッ!!!

 

 

日向「うわっ!」

 

青葉「爆発!? 一体どこで!」

 

ミサト「どうやら戦自のお出ましのようね……! 命令違反だけど丁度いいわ! アスカ、シンジ君、レイ! あいつらを蹴散らして!」

 

マヤ「もう勝手に蹴散らしてます!」

 

ミサト「」

 

 

『みんなは僕が守る! うおぁぁぁ!!』バキッ!!

 

『やらせるもんですかぁっ!!』ズガッ!!

 

『させないっ!』ドシュッ!!

 

 

ミサト「頼もしいんだけど、ああもう! なんかモヤモヤする!」

 

 

【十分後】

 

 

青葉「外の敵は全て掃討されました!」

 

日向「後は内部か……!」

 

ミサト「シンジ君たちが最初の段階から片付けてくれたから、そんなに多くは侵入されてないはずよ! 隔壁を閉鎖して対応を」

 

日向「待って下さい! これは……! 上空にエヴァシリーズです!」

 

ミサト「次々とあっちも抜け目ないわね……! シンジ君、アスカ、レイ! そいつらを一匹残らず殲滅して!」

 

マヤ「もう勝手にやってます!」

 

ミサト「でしょうねえ! 知ってたわよ!」

 

 

『そおりゃあああああ!!!』ズガッ!!

 

『負けてらんないのよ、アンタたちにぃ!』ブンッ!!

 

『どいて!』ドシュッ!!

 

 

【ターミナルドグマ】

 

 

ゲンドウ「……レイがいつまで経っても来ない」

 

ゲンドウ「…………」

 

ゲンドウ「ユイ……どうして」

 

 

リツコ「」カツカツ……

 

 

ゲンドウ「赤木博士か……」

 

リツコ「ええ。あなたの待ち人なら、今、上で戦闘中です。あの三人なら、それもすぐに終わるでしょうけど」

 

ゲンドウ「そうか……」

 

リツコ「人に裏切られる気持ち、少しはわかりましたか?」

 

ゲンドウ「……やはり、レイはもう、ここには来ないという事か……。私の計画も、これで全て水の泡だ」

 

リツコ「そうでしょうね」

 

ゲンドウ「ああ。ユイに会う事はもう叶わないだろう……」

 

リツコ「…………」

 

リツコ「ゼーレに対しては、恐らく私たちは勝利を収めるでしょう。あの三人が操縦するエヴァに傷をつける事は、人の手では不可能でしょうから」

 

ゲンドウ「わかっている。……しかし、その勝利も結局は戦術的なものでしかない。A―801が出た時点で、戦略的に、我々は初めから負けている」

 

リツコ「司令……。こうなった以上、いっその事、リリスも殲滅して逃亡をしませんか」

 

ゲンドウ「…………」

 

リツコ「人類補完計画も遂行できない様にして、逃げ出しませんか。どこか外国にでも」

 

ゲンドウ「……君達はそれを行うといい。だが、私には責任がある。それにもう、生きている意味もない」

 

リツコ「司令にはなくとも、私にはあなたが生きている意味があります。それでは駄目なんですか?」

 

ゲンドウ「…………」

 

リツコ「私はあなたを今でも愛してるんですよ! 殺したいほど! だから、生きて下さい! 司令! お願いですから!」

 

ゲンドウ「…………」

 

 

 

 

【発令所】

 

 

マヤ「葛城さん! 碇司令から連絡が入ってます!」

 

ミサト「回線をこちらに回して!」

 

マヤ「はい!」

 

 

ミサト「碇司令! 御無事ですか!? 今、一体、どこに!?」

 

『問題ない。それよりも葛城三佐。君に最後の命令を伝える』

 

ミサト「最後の……?」

 

『そうだ。エヴァシリーズを殲滅後、エヴァ全機でターミナルドグマのリリスをも殲滅。その後、初号機を破壊し、ネルフ本部ごと自爆させる』

 

ミサト「!?」

 

ミサト「司令! ですが! それはあまりに……!」

 

『責任は全て私がとる。職員の命を最優先させろ。こちらからも自爆と初号機破壊の旨を日本政府とゼーレに通達し、それを材料として交渉を行う。そうすれば、戦自の連中を一時引かせる事ぐらいは出来るだろう。脱出の隙も生まれるはずだ』

 

ミサト「それで……上手く避難出来たとして、私たちの今後の処遇は?」

 

『あれだけの事を向こうもやっているのだ。投降したとしても、言い分も聞かずに処分されるのは間違いない。全員が逃亡するより手はない』

 

ミサト「……そうですか。確かにそうですね……。今回ここを守りきったとしても、どのみちもう、ネルフはやっていけないでしょうから」

 

『逃亡の手はずはこちらでも可能な限り手配する。詳しい事はそちらに戻ってから伝える』

 

ミサト「わかりました……。準備を整えながら、お待ちしています」

 

『……すまない。苦労をかける』

 

ミサト「いえ……」

 

 

エヴァシリーズ、殲滅後】

 

 

『逃亡……!?』

 

『何でよ、ミサト! 何でアタシたちが逃げなきゃいけないの!? 人類を守ってきたの、アタシたちじゃなかったの!?』

 

『……納得がいきません、葛城三佐』

 

 

ミサト「ごめん……みんな。大人の事情ってやつなの……。私にはどうしようも出来なくてごめんね……。ごめんね……」グスッ

 

 

ミサトさん……』

 

『ミサト……』

 

『…………』

 

ミサト「あなたたちの事はどうにかなるわ……。エヴァをあまり快く思ってない国がいくつかあるから……。そこへ亡命すれば安全は確保できる……。司令のツテよ……」

 

『父さんの……』

 

ミサト「ええ……。万が一の事を考えて、前から準備していたみたい……。でなきゃ、こんな短時間で用意出来るはずもないし……」

 

『…………』

 

ミサト「もちろん、あなたたちにはそこに行っても、元エヴァパイロットって事で制限が色々つくわ……。でも、この国にいたら、もうきっと暗殺されるだけだもの……わかって」

 

『暗殺、ね……。何でこんな事になったのかしら……』

 

ミサト「なるべくしてなった事、としか私からは言えないわ……。でも、殺されるよりはずっとマシよ。生きていれば、どうにかなるんですもの……」

 

『……生きていれば、どうにか』

 

ミサト「うん……。生きていればどうにか。あなたたちには可能性がまだたくさん眠ってるんだから」

 

『…………』

 

 

【司令室】

 

 

加持「戦略自衛隊が引いていきますね。どうやら交渉は上手くいったようですね。……碇司令」

 

ゲンドウ「時間稼ぎだ。しかし、これで亡命の準備を整えられる」

 

加持「一つお聞きしたいんですが……一体いつからこんな事態を予想されてたんです?」

 

ゲンドウ「…………」

 

冬月「それは……ある意味、初めからかもしれんな。碇の息子がこっちにやって来たその日から……」

 

加持「……なるほど」

 

ゲンドウ「…………」

 

 

加持「確かに、シンジ君は少し普通じゃありませんでしたからね。こう言っては失礼ですが、とてもあなたの息子さんとは僕は思えなかった」

 

冬月「……私もな。顔立ちもそうだが、特に性格がだ。ユイ君の隠し子ではないかと疑ったぐらいだ」

 

ゲンドウ「…………」

 

加持「あなたも実は少しはそう思ったのでは? 碇司令」

 

ゲンドウ「……シンジはユイの子供だ。仮に私の子供でなくとも、私の息子には変わりない」

 

加持「ご立派な答えです」

 

冬月「いずれにせよ、真相は闇の中だ。碇の本当の息子かそうでないかは永遠にわからんよ。碇にそれを確かめる気がないのだからな」

 

ゲンドウ「…………」

 

 

加持「しかし、真相がどうであれ、あなたはそれを一時疑った。だから、奥さんとの愛も多少は疑わざるを得なかった……。男というのは悲しい存在ですね」

 

冬月「他人事で済めばな。君も気を付けたまえ」

 

加持「キツいご忠告をどうも……」

 

ゲンドウ「…………」

 

 

加持「そして、それに加えて、綾波レイ。彼女もまた碇シンジと出会う事によって、目に見えるほど変わっていった。だから、万が一の事態を考えるようになった。……そういう事ですか」

 

冬月「人は変わる生き物だ。変わらないのは亡くなった人間だけだよ。私は今回の事でそう思った」

 

ゲンドウ「何かきっかけがあれば人は変わる。人が変われば歴史も変わるだろう。世の中を変えるというのは、そういう小さな積み重ねだけだ。その事を私は遅まきながら知ったのだ」

 

加持「そうですか……」

 

 

加持「それが良い変化か悪い変化かはわかりませんが……」

 

加持「しかし、少なくとも僕は感謝してますよ。僕もシンジ君やアスカの生き方を間近で見てなかったら、葛城にプロポーズなんかしてなかったでしょうからね」

 

冬月「やはり、あの二人が影響したのかね。君が事故のふりをしてまで、危ない橋を渡るのをやめたのも、そのせいか」

 

加持「流石にバレてましたか……。ですが、馬鹿な生き方というのもたまにはいいものです。そうでなければ得られないものもある。そして、得たものを守るために僕は死ねなくなったんですよ」

 

冬月「歳をとればとるほど、そういう生き方は出来なくなる。私から見れば、君も十分子供だよ」

 

加持「これは参りましたね……。しかし、それを否定出来ないのも確かです」

 

ゲンドウ「……私もああいう生き方がしたかったものだ」

 

冬月「お前には似つかわしくないがな、碇……」フッ

 

加持「それでは、僕はこれで。まだ僕にもやれる事が残ってますので」

 

冬月「ああ、よろしく頼んだ。君も死ぬなよ」

 

加持「わかってます。新婚早々、あいつを未亡人には出来ませんから」

 

ゲンドウ「…………」

 

加持「ところで、お二人はこれからどうされるつもりなんですか?」

 

ゲンドウ「やるべき事をやるだけだ」

 

加持「……そうですか」

 

ゲンドウ「それと、これを君に預ける。シンジと赤木博士の二人に渡してやってくれ」

 

加持「……なるほど。……わかりました。そういう事なら、必ず二人にお渡しします。それでは……」クルッ

 

カツカツ、カツカツ……

 

 

冬月「やるべき事か……。これが最後だな」

 

ゲンドウ「ああ。……全てはこれでいい。私はもう、人を幸せにする事は出来ない」

 

冬月「不器用な男は最後まで不器用なままか……」

 

 

【発令所】

 

 

マヤ「……外国に亡命か。仕方ないとはいえ、辛いです」

 

日向「僕はそっちの方がよっぽどいいよ。殺されるよりは、そっちの方がよっぽど」

 

青葉「どこに行っても、ベースは弾ける。ただし、生きてる限りは、か……」

 

ミサト「あんたたちー、そういう話は、無事に明日を迎えられてからする事ね。明日の話をするなら、今日やるべき事をやってからよ」

 

日向「ごもっともです」

 

青葉「そうですね、本当に」

 

マヤ「そういえば、葛城さん。先輩は……?」

 

ミサト「リツコなら、お母さんのところよ。最後の挨拶をするんだって」

 

マヤ「お母さん……?」

 

 

【マギの中】

 

 

リツコ「……こうして話をするのは久しぶりね、母さん」

 

リツコ「私ね……今度、結婚するの」

 

リツコ「ようやく……プロポーズしてくれたわ。おかげで私もかなり歳をとった。ミサトには先を越されちゃうし」

 

リツコ「母さんは……やっぱり、悔しい……?」

 

リツコ「私を殺したいほど、憎い……?」

 

リツコ「でもね、母さん……。今だからきっと言える事だけど、私は母さんが好きよ」

 

リツコ「母さんの事、尊敬してた。女としては嫌いだったけど、娘としては憧れてたのよ」

 

リツコ「人ってやっぱりロジックじゃないのね。ほんの些細な事で変わるものだわ。私も、あの人も……」

 

リツコ「母さんに、祝ってほしいとは言わないわ。でもね、母さん。これからも私の事を見ていてね」

 

リツコ「それが私からの最後のお願い……。これからもずっと見ていてね、母さん……。私はこれからもきっと変わっていくから」

 

 

【初号機内】

 

 

シンジ「……エヴァの中……こんなに気持ちが落ち着くんだ」

 

シンジ「考えてみれば……こんなに長い時間、エヴァに乗ってるの、初めてだ……」

 

シンジ「だからかな……。外国に亡命するって聞いても、それほどショックじゃなかった……」

 

 

シンジ「だけど、これからはエヴァがない生活に変わるのか……」

 

シンジ「何でだろう……。少し寂しい……」

 

 

シンジ「エヴァって……なんなんだろう……」

 

ピピッ (通信)

 

『シンジ……。ちょっと、話いい?』

 

シンジ「うん……。いいよ、アスカ。どうしたの?」

 

『何となくね……。誰かと話がしたかったの』

 

シンジ「そっか……。わかるよ。多分、今、僕もアスカと似たような気持ちだから」

 

『そう……。アンタもなのね……。やっぱり、少し寂しい?』

 

シンジ「うん……。寂しい。アスカは余計そうなんじゃないの? 大事にしてた弐号機にもう乗れなくなるんだから」

 

『うん……。正直、辛い……。だけど……』

 

シンジ「だけど?」

 

『……何でもない。上手く言葉に出来ないし』

 

シンジ「そっか……。そうかもね」

 

『うん……』

 

『ねぇ……シンジ』

 

シンジ「なに?」

 

『今だから言うけど、アタシね……。正直な事言えば、アンタの事が少し好きだったの』

 

シンジ「……そうだったの?」

 

『うん。友達としては今でも大好きだけど』

 

シンジ「……ありがとう、アスカ」

 

『シンジはどうなの? アタシの事、好き?』

 

シンジ「友達としては大好きだよ。アスカと会えて本当に毎日が楽しかった」

 

『それ聞けて良かった。……なんか安心した』

 

シンジ「うん」

 

『それじゃあね、シンジ。もう回線切るわよ』

 

シンジ「え? もういいの?」

 

『うん。もういい。色々とスッキリしたし』

 

シンジ「そっか……」

 

『シンジ、アンタもレイにきちんと伝えておきなさいよ。アタシが諦めたのは、多分、アンタの事を一番よくわかってるからよ』

 

シンジ「……そっか。うん、きっとそうだね……。そうする」

 

『アタシたち、これからどうなるかなんてわかんないだから。後悔のないようにね』

 

シンジ「わかってる……。ありがとう、アスカ」

 

『アタシもね。ありがとう、シンジ』

 

シンジ「綾波……。いつから何だろう。僕が綾波を好きになったのって……」

 

シンジ「あの時のキスの時から……? でも、もっと前からだったような気もする……」

 

シンジ「本当に、いつのまにかって感じで……」

 

シンジ「最初は……無口な大人しい子って思ってただけなのに……」

 

シンジ「綾波がちょっとずつ、僕に話しかけるようになって、それからいつのまにか……」

 

シンジ「……綾波に、きちんと気持ち、伝えないと」

 

 

ピピッ (通信開く)

 

『……どうしたの、碇君?』

 

シンジ「あ、綾波……。その……//」

 

 

【Do you love me?】

 

 

シンジ「  ///」

 

『  ?』

 

シンジ「     ///」

 

『  』

 

シンジ「  !///」

 

『  ///』カアッ

 

 

シンジ「      ?///」

 

『  ///』

 

シンジ「  ///」カアッ

 

『   ///』

 

 

 

シンジ「うん……ありがとう、綾波///」

 

『ありがとう、碇君……///』

 

 

【Do you love me】

 

 

シンジ「その……あの、僕///」

 

『……?』

 

シンジ「前からずっと、その……何て言えばいいか、ええと……///」

 

『…………』

 

シンジ「と、とにかく、綾波の事が好きなんだ!///」

 

『……!///』カアッ

 

 

シンジ「……綾波は。……僕の事、好き?///」

 

『私は……碇君以外で、こんな気持ちになった人はいない……///』

 

『きっと……私は今、喜んでると思う。碇君が教えてくれた、初めての感情///』

 

シンジ「あ……///」カアッ

 

『碇君と……ずっと一緒にいたい///』

 

シンジ「うん……ありがとう、綾波///」

 

『ありがとう、碇君……///』

 

 

【発令所】

 

 

ミサト「よしっ! こっちの準備は全部整ったわ」

 

ミサト「シンジ君、アスカ、レイ、聞こえてる! これから作戦を」

 

リツコ「もう勝手に飛び(ry」

 

ミサト「最後の最後まであんたらはぁぁ!!」

 

 

『いやっほぅぅーいい!! あー、もう! 今日死んでもいいよ!!』ズガッ!!

 

『嬉しい……!!』バキッ!!

 

『二人ともー、ホントにおめでとー!』ズガッ!!

 

 

ミサト「私の存在意義ってなんなのよ、もうっ!!」

 

 

首相官邸

 

 

『報告! エヴァ全機、待機中の戦略自衛隊に突如攻撃を開始!』

 

【五分後】

『報告! 何機か戦闘機と輸送機を占拠された模様!』

 

【十分後】

『報告! ネルフ本部の直上に突如、光の柱を確認! 使徒が一体、殲滅されたと推定!』

 

【十五分後】

『報告! ネルフ本部の内部から高エネルギー反応! 自爆装置が作動したようです!』

 

 

首相「なんて事を……!!」

 

 

【戦闘機内】

 

 

ミサト「びっくりするぐらい、スムーズにいったわね……」

 

リツコ「予め、リョウちゃんが色々と戦自に根回しして、工作したみたいよ」

 

ミサト「あいつ……いつのまにそんな事を……」

 

リツコ「ここと、元、内務省のスパイだもの。人脈はかなり張ってあったみたいね。戦自の方でも、虐殺に近い事をするのに反対する現場指揮官は多かったでしょうし」

 

ミサト「ホント、いっつも美味しいとこだけ取ってくわね、あいつ……」

 

リツコ「素直に誉めればいいのに。そういうところ、相変わらず不器用ね」

 

ミサト「うっさいわねえ、もう!」

 

ミサト「それで、シンジ君たちは無事なの? 大丈夫?」

 

マヤ「先ほど確認出来ました。全員、脱出して今は輸送機の中だそうです」

 

ミサト「で、エヴァは?」

 

マヤ「シンジ君の初号機を除いてはエヴァごとの回収ですから弐号機も零号機も無事ですよ。内部電源もまだ60秒近く残ってるそうですから、いざという時は稼働出来ます」

 

リツコ「それぐらいの手土産がなければ、向こうの政府もこんな危ない橋を渡る気はなかったでしょうね。いくら亡命とはいえ、かなりの無茶をしてるのだから」

 

ミサト「そこは仕方ないわね。……それで、他の人たちは?」

 

マヤ「全員と連絡が取れてます。ただ……二人だけまだ……」

 

ミサト「二人だけ……? 誰?」

 

マヤ「碇司令と副司令です。この二人なら無事だと思うんですが……」

 

リツコ「……!!」

 

 

ネルフ本部 ???】

 

 

モノリス「我らの宿願たる人類補完計画はこれで全て終わった……。最早、それを行う術がない」

 

ゲンドウ「我々は途中で行く先を間違えたのです。そして、これがその結果なのでしょう」

 

冬月「かくなる上は緩慢な死をあなた方も受容されるべきです。生命は命ある限り、必ず死ぬのですから」

 

モノリス「君達が今もこの場にとどまっているのも、それを証明する為かね」

 

モノリス「あるいは、これがその結果に対する責任という事か」

 

ゲンドウ「そうでなければ、あなた方も溜飲を下げられないでしょう。それに、アダムをこの身に宿している人間をあなた方が放っておく訳がない。人類の為ではなく、一人の人間として、私は無為な生ではなく意義のある死を選んだだけです」

 

冬月「私も老い先短い身です。最高責任者二人の命、これぐらいでこの件は終わらしたい。私の死が誰かの生に繋がるならそれも良いかと思いましてね……。私は十分に生きた。かくなる上は未来を別の誰かに譲りたい」

 

モノリス「君達が死ねば全ての責任や罪が消えるという事はない」

 

モノリス「左様。そもそも人の死によって片付く問題でもない」

 

ゲンドウ「しかし、いくばくかの責任や罪が消えればそれでいい。全ての贖罪にはならずともわずかな罪滅ぼしにはなり得るでしょう」

 

冬月「私たちが逃げるのと、ここで死ぬのとでは、今後のネルフ関係者に対する各国の見方や追求もまた変わってくるはずです。あなた方の手は長いが、墓にかける手錠を持ってはいない」

 

ゲンドウ「最早、あるべき死をあなた方も受け入れる事をお勧めします。悠久の生は生きてる限り人類には決して得られない」

 

モノリス「もう良い……。我々の希望は永遠に消え、そして断罪の時間は終わった。あとは無へと帰するのみだ」

 

ゲンドウ「はい。もうまもなく時間が訪れます。お別れの時です」

 

 

首相官邸

 

 

『報告!! ネルフ本部、大規模な爆発によって完全に消滅しました!』

 

 

 

首相「ついに幕が閉じてしまったか……」

 

 

【数ヵ月後 某国】

 

 

アスカ「ヘロー、シンジー。ひっさしぶりね」

 

シンジ「アスカ。久しぶり」

 

アスカ「こっちの言葉には、もう少しは慣れた? うまくやっていけてる?」

 

シンジ「まだ慣れてはいないけど、でも、やってはいけると思う。ミサトさんや加持さんもいるし」

 

アスカ「新婚ほやほやの二人と同居なんて、シンジもついてないわよね。目のやり場に困らない?」

 

シンジ「まあ、本当にたまには。二人とも結婚前からそんなに変わってないし」

 

アスカ「それはそれで問題あるかもしれないけどね」

 

シンジ「うん……。そうかもね」

 

アスカ「…………」

 

 

アスカ「ねぇ、シンジ……。アンタちょっと変わったわね。前みたいな、はっちゃけた感じがなくなってるわよ」

 

シンジ「それはアスカの方もだよ。なんか落ち着いた雰囲気になって……。少し大人っぽくなったっていうか……」

 

アスカ「そう? 自分じゃわからないけど」

 

シンジ「それは僕もだよ。変わった実感はまったくないから」

 

アスカ「アタシから見たら、結構変わったわよ、アンタ。ま、あんな事があったからね……。そりゃ変わりもするんだろうけどさ」

 

シンジ「うん……。そうかもしれない」

 

シンジ「それより、アスカの方はうまくやれてる? 寮で暮らすとか、アスカ、大丈夫かなって思ってたから」

 

アスカ「アタシはまあ何とか。こっちの言葉も大体覚えたし。学校の寮だから、規則は色々とうるさいけどね」

 

シンジ「そういえば、僕も来月から通う事になったんだ。アスカの行ってる学校に」

 

アスカ「へー、そうなんだ。じゃあまた学校で一緒に遊べるわね」

 

シンジ「うん。そうだね。その時はよろしくね、アスカ」

 

アスカ「まっかせておきなさい。すぐにアンタをクラスに馴染ませてあげるから」

 

シンジ「それは……お手柔らかにね」

 

アスカ「ところで、レイは? あいつ、まだ来てないの?」

 

シンジ「あ、うん。綾波はリツコさんのところに一度寄ってから来るって言ってた」

 

アスカ「リツコのところか……。リツコ、今の様子はどう?」

 

シンジ「前よりは元気になったみたいだよ。ミサトさんもそう言ってた」

 

アスカ「そっか……。こっちに来た直後はずっと泣き通しだったものね」

 

シンジ「うん……。結婚の約束してたみたいだから。父さんと」

 

アスカ「知ってる……。マヤから聞いたわ」

 

シンジ「なのに、父さん……亡くなったちゃったからさ……。リツコさんを置いて」

 

アスカ「…………」

 

アスカ「それで……アンタは大丈夫なの、シンジ……? 司令の事……」

 

シンジ「うん……。もう整理はついた。それに、加持さんからこれをもらったし……」

 

アスカ「それ……ボイスレコーダー?」

 

シンジ「うん。リツコさんももらってたみたい。そこに一言だけ、父さんからのメッセージがあったんだ」

 

アスカ「……なんて言ってたか、聞いてもいい?」

 

シンジ「巻き込んですまなかった、ってそれだけ。リツコさんの方には何て言ってたかは知らないけど、父さんも色々と悩んでたのかなって思ったら、なんかさ……」

 

アスカ「そっか……」

 

シンジ「うん……。これ聞いた時、父さんらしいなって、そう思った」

 

シンジ「今度さ……父さんの墓の横に母さんのお墓を建ててもらおうって思ってるんだ」

 

アスカ「そっか……」

 

シンジ「それで、母さんと父さんに色々と話してこようと思う。今、どんな生活をしてるかとか」

 

アスカ「報告?」

 

シンジ「うん……。元気にやってるって伝えたいから」

 

アスカ「そうね。それがいいかもね」

 

シンジ「母さんとの思い出は僕にはほとんどないし、父さんとの思い出も少ししかないけど、でも、この録音したのを聞いた時、何となく父さんの事が全部わかったような気がした……。本当に何となくなんだけど」

 

アスカ「そうね……。シンジがそう言うなら、きっとそれで合ってるわよ」

 

「碇くーん!」

 

アスカ「あ、やっと来たわね、レイ」

 

シンジ「うん」

 

 

レイ「お待たせ。碇君、それにアスカ」

 

アスカ「別にいいわよ。そんなに待ってないし」

 

シンジ「うん。気にしないで」

 

レイ「そう? それじゃあ、早速行きましょ。みんなで久しぶりに遊ぶんだから」

 

アスカ「レイ、アンタもなんかちょっと変わったわね。前よりもずいぶん明るくなったんじゃない?」

 

レイ「私が? そう?」

 

シンジ「そうだね。綾波も結構変わったなって思う。最初の頃とは別人みたいに」

 

レイ「自分ではわからないけど……」

 

アスカ「そういうもんよ、きっと」

 

シンジ「うん。そういうものだよね、きっと」

 

レイ「そうなの……?」

 

レイ「それより、二人とも、早く行きましょ。私、水族館に行くのは初めてだから」

 

アスカ「そうなの? シンジ、これまでデートとかに誘わなかったの?」

 

シンジ「あ、うん……。他のところには行ったんだけど、水族館はまだで……」

 

レイ「ええ。だから、今日を楽しみにしてたの」

 

アスカ「なんか、今のレイの方が、前のシンジみたいね。素直ではしゃいでて」

 

シンジ「そうかな……?」

 

レイ「そうだったら、私は嬉しい。碇君に少し近付けた感じがするから」

 

シンジ「う///」

 

アスカ「はいはい。ごちそうさまっと」

 

アスカ「さてと、それじゃ行きましょうか」

 

シンジ「うん」

 

レイ「早く早くー! みんな、置いてっちゃうよー!」

 

アスカ「ホント、前のシンジみたい」クスッ

 

シンジ「前のアスカもあんな感じだったよ」クスッ

 

レイ「もー! 早くー! 待ちきれない!」

 

アスカ「わかったっちゅーの。ほら、走るわよ、シンジ!」

 

 

シンジ「そうだね。行っくぞー! やっほーい♪」ダダダダッ

 

レイ「水族館、楽しみー♪」ダダダダッ

 

アスカ「みんなでお出かけ、ひっさしぶりー! 思いっきり楽しむわよー♪」ダダダダッ

 

 

 

 

元スレ

http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1439814743/

有咲「その、初めてだったんだろ?」 りみ「うーん……そうだね、初めて……かな」【バンドリ!ss/アニメss】

 

――市ヶ谷家 有咲の部屋―― 

 

市ヶ谷有咲「…………」 

 

牛込りみ「すー……すー……」 

 

有咲(拝啓、高く澄みきった空に、心も晴れ晴れとするこの頃、色彩あふれる紅葉の美しさに心弾む季節となりました) 

 

有咲(そんな秋の朝、目が覚めると、どうしてか私の隣でりみが寝ていた) 

 

有咲「…………」キョロキョロ 

 

有咲(……八畳の畳敷き、見慣れた我が家のマイルーム) 

 

有咲(それはいい。うん。別にどうってことない、けど……) 

 

りみ「うぅん……すー……」 

 

有咲(本当になんでりみと同衾してんの私?) 

 

有咲(え、ちょっと待って、昨日なんかしたっけ。なんかあったっけ) 

 

有咲(えーっと、確か昨日は……土曜日だったな。そんでポピパのみんなで遊ぶことになってて、蔵にみんなが来て……) 

 

有咲「…………」 

 

有咲(やっべぇ、そっから先が全く思い出せねーぞ……) 

 

有咲(……つーか)チラ 

 

りみ「むにゃむにゃ……」 

 

有咲(なんかりみ、若干パジャマがはだけてんだけど?) 

 

有咲(あれ、これなんかやっちゃった系? まったく記憶がないけど取り返しのつかないことしちゃった系?) 

 

有咲(……んなこたぁない……とは思うけど……いや、そうだよな) 

 

有咲(初めて入れるときには痛むし、好きな人に入れてもらえると嬉しい……ってこの前やったRPGで言ってたし、そういう観点で言うのであれば私に一切の痛みはないわけだし、であれば私はそういうコトには一切及んでいないだろう常識的に考えて) 

 

有咲(ましてや私とりみは女同士。そんな爛れた関係になるだなんてこたぁ、そうそうあるはずがない) 

 

りみ「んー……えへへ……」 

 

有咲(……ないよな?) 

 

有咲(確かに無防備に寝顔を晒すりみとかなんか可愛い……と思わなくもないけどさ) 

 

有咲(加えて昨日の記憶がまったくないけど、ない……よな。身体に異常ないし……ん?) 

 

有咲(あ、いま気付いたけど、女同士でもしもそういうコトに及んじゃったらどうなんだ?) 

 

有咲(こう、攻守っつーか、攻めと受け? 的な? まだ俺のバトルフェイズは終了してないぜ! みたいな?) 

 

有咲「…………」 

 

有咲(……あれ、これって私の身体に異常がなくてもまだまだ全然安全圏じゃなくね?) 

 

有咲(これでもしもりみが色々とこう、色々とああなってたとしたら……責任問題じゃね?) 

 

りみ「……んん……?」パチリ 

 

有咲「あ」 

 

りみ「ふわぁ~……もう朝……」 

 

有咲「…………」 

 

りみ「あ……おはよう、有咲ちゃん……」 

 

有咲「あ、ああっ、うんっ、お、おはよ……りみ……」フイ 

 

有咲(ああああ、なんだこれ、なんか万が一にでもアレがアレしちゃってたらって思うだけでりみの顔が見れねぇぇ……) 

 

りみ「んー……」 

 

有咲「な、なんだか眠そうな声だな、りみ?」 

 

りみ「うん……まだちょっと眠いかも……」 

 

有咲「そ、そそっか。それならまだ寝てていいんじゃないか? ほほほら、きょ、今日は日曜だし?」 

 

りみ「そうだねぇ……」ギュー 

 

有咲「ひゃぁっ!? ちょ、ちょちょちょりみ!?」 

 

りみ「あー……ごめんね……有咲ちゃん、あったかくて……」 

 

有咲「や、いや、えぇと、そ、そうだな、もう朝も結構冷え込む季節だしな!」 

 

りみ「うん……それに昨日の夜は……」 

 

有咲「え、昨日の夜……?」 

 

りみ「……えへへ」 

 

有咲(なにその意味深な笑い!?) 

 

りみ「有咲ちゃんって意外と……」 

 

有咲「い、意外と?」 

 

りみ「……んふふ」 

 

有咲(だからなんだってその笑い!?) 

 

りみ「はぁ~……昨日、ずっとくっついてたからかな……なんだかこうしてると安心する……」 

 

有咲「えっ」 

 

りみ「めっちゃ眠い~……」 

 

有咲「ちょ、ま、待ってりみ! やっぱ起きよう! 責任の在処を明確にしないとやべーって!」 

 

りみ「えー……」 

 

有咲「えーじゃなくて!」 

 

りみ「ありさちゃぁん……」 

 

有咲「そ、そんな甘えた声出してもダメだぞっ! ほら、一回離れろって!」 

 

りみ「はぁい……」スッ 

 

有咲(こんな甘えてくるりみなんて初めてだ……。やっべぇ、これもしかするともしかしちゃうのか……) 

 

有咲(い、いや、そんなわけねーよな。ほら、やっぱ寝起きってみんな寝ぼけてたりなんだりして色々とおかしなことするしな。おたえだって前に寝ぼけて私の唇を奪いに来てたし) 

 

有咲(とにかく、しっかり目を覚まして、昨日のことを思い出さないと) 

 

有咲(ちょっと寒いけど、掛け布団を払えば頭も冴えるだろ……)バッ 

 

シーツに出来た赤い染み<ヤァ 

 

有咲「…………」 

 

有咲「……は?」 

 

シーツの中央辺りに出来た赤い染み<ヤリキッタカイ? 

 

有咲「…………」 

 

有咲「いや、は?」 

 

りみ「あ、それ……」 

 

有咲「え?」 

 

りみ「えーっと……その、ごめんね? 汚しちゃって……」 

 

有咲「…………」 

 

有咲「えっ」 

 

有咲「いや、えぇっ!?」 

 

有咲(汚しちゃって? 汚しちゃってってことはきっとこの赤い何かはりみ由来のものだということで、それはつまり端的な言葉にすると……もしかして、ハカとか呼ばれるやつなのか……!?) 

 

有咲(ラグビーのアレでもなく、埋葬される場所でもなく、破れる瓜と書いて破瓜……!?) 

 

有咲「…………」 

 

有咲(……そうだよなぁ、りみ、誕生日3月だもんなぁ、遅生まれだもんなぁ、そりゃあ破瓜っていえば16歳のこと指すもんなぁ、ははははは) 

 

有咲(とりあえずアレだよアレ。スマホスマホ)スッ 

 

りみ「どうかしたの?」 

 

有咲「オーケーグー〇ル。『初めて 責任 取り方』」 

 

りみ「有咲ちゃん?」 

 

有咲「いや、いいんだ、りみ」 

 

有咲(3つの責任……『遂行責任』、『説明責任』、『賠償責任』……) 

 

有咲(最後までやり遂げる責任、相手に納得してもらう責任、何かを差し出して償う責任) 

 

有咲(……あー、やっぱそうなるんだなぁ) 

 

有咲(そうだよなぁ、責任っつったらそれしかないよなぁ) 

 

有咲(私は17歳で、りみはまだ16歳で、つまり僅かであれど私のが年上なんだし) 

 

有咲(つまりそういうこと……なんだよなぁ) 

 

有咲「……りみ、すまなかった」 

 

りみ「え?」 

 

有咲「いや、ホント、昨日の記憶がまったくないんだけど……とりあえず、色々とヤッちゃったのはなんとなく分かったからさ」 

 

りみ「あ、やっぱり覚えてないんだ」 

 

有咲「ああ。蔵にみんなが来てたとこまでは覚えてんだけど、そっから先が何も思い出せない」 

 

有咲「本当に、迷惑をかけてごめん」 

 

りみ「う、ううん。そんなに大変じゃなかったし、大丈夫だよ」 

 

有咲「……そうなのか?」 

 

りみ「うん。こういうのって初めてだったけど……なんだか楽しかったし」 

 

有咲「楽しい……。よかった、りみが苦痛を感じなかったなら、それだけは幸いだよ」 

 

りみ「でも一晩中ずーっと抱きしめられてたのはちょっと……あったかかったけど、恥ずかしかったかな……」 

 

有咲「……そっか」 

 

有咲(ああ……やっぱヤッちゃったんだなぁ私……) 

 

有咲「ごめんな、りみ」 

 

りみ「だ、大丈夫だよ。私の方こそごめんね? その、ベッド汚して……」 

 

有咲「なに言ってんだよ、これは全部私のせいなんだから……私の方こそ、謝って済む問題じゃねーけど、本当にごめん」 

 

りみ「平気だよ」 

 

有咲「……りみは優しいな」 

 

りみ「そ、そんなことないよ」 

 

有咲「そんなことあるって。あー、それで、その……」 

 

りみ「うん?」 

 

有咲「ほら、アレだ、あの、さ……」 

 

りみ「うん」 

 

有咲「その、取り返しのつかないっつーか、ホント、事故っていうか事後報告っていうか、なんつーかさ」 

 

りみ「?」 

 

有咲「……責任はちゃんと取るから」 

 

りみ「責任……」 

 

有咲「ああ」 

 

りみ「……うーん?」 

 

有咲(ああ、ピンと来てないな、これ。やっぱあれか、恥ずかしいけど、もっとハッキリ言葉にしないといけない訳か) 

 

有咲(……まぁ、でもそれが当たり前だよな。説明責任ってやつだ。全然記憶にないけど、とても口には出来ないようなことをりみにしでかしてるんだし。それも責任って聞いてもピンと来ないピュアりみに) 

 

有咲「だから、ほら、あれだよ」 

 

りみ「うん」 

 

有咲「その、初めてだったんだろ?」 

 

りみ「うーん……そうだね、初めて……かなぁ」 

 

有咲「だろ? だから、ほら……」 

 

りみ「うん」 

 

有咲「その……」 

 

りみ「うん」 

 

有咲「…………」 

 

りみ「…………」 

 

有咲「……わっ、」 

 

りみ「わ?」 

 

有咲「私が、責任を持ってっ、りみを幸せにするってことだよぉ!」 

 

有咲(……あーくそっ、なんだこれめっちゃ照れくさいし恥ずかしい!) 

 

有咲(ああ、顔っつか身体全体が熱いなぁっ、花咲川の夏はまだ終わってねーのかよぉ!) 

 

りみ「幸せ……?」 

 

有咲(りみは……なんか呆けてるな。もしかしてあれか、もっとしっかり言葉にしないと伝わらない系なのか? マジかよ、これ以上ストレートにって相当ヤバいぞ……?) 

 

りみ「責任……幸せに……?」 

 

りみ「…………」 

 

りみ「え、えぇっ!?」 

 

有咲(あ、伝わったっぽい。よかった……けど、そうなるとますます恥ずかしいなこれぇっ) 

 

りみ「え、そ、それって、つまり、あの……」 

 

有咲「そっ、そういうことっ」 

 

りみ「え、で、でも……」 

 

有咲「でももヘチマもねーんだよ、ヤッちまったのは間違いない事実なんだからっ」 

 

有咲「初めてだったんだろっ? それならこうするしかねーんだって!」 

 

りみ「だ、だけど、他の人には初めてだったけど、お姉ちゃんとはしたことあるし」 

 

有咲「え、ちょ、いや、マジでっ!? なにやってんのゆり先輩とっ!?」 

 

りみ「なにやってって……家族だし?」 

 

有咲「牛込家はどうなってんだ!?」 

 

りみ「姉妹がいるところはどこもそうじゃない、かな。香澄ちゃんも昔は明日香ちゃんとよくしてたって言ってたよ」 

 

有咲「マジかよ!? やべーな最近の姉妹事情進みすぎだろ!!」 

 

りみ「え、そ、そうかな……」 

 

有咲「そうだよ、冷静に考えてやべーって! そんな、そう、気軽にホイホイするもんじゃないだろっ!?」 

 

りみ「でも、沙綾ちゃんもたまに紗南ちゃんと添い寝するし、姉としては妹に甘えられるのは嬉しいって言ってたよ?」 

 

有咲「沙綾まで!? しかも紗南に!? ……って、添い寝?」 

 

りみ「え、うん。添い寝」 

 

有咲「……添い寝って、あの? 一緒に寝る的な?」 

 

りみ「その添い寝……以外にはないと思うけど……」 

 

有咲「…………」 

 

りみ「…………」 

 

有咲「……そっか、添い寝か」 

 

りみ「うん、添い寝」 

 

有咲(そっか。そっかそっか。そっかそっかそっか。ああつまりあれだ。私の早とちりとかそういう話か) 

 

有咲(はははは、そうだよな、そんな、りみと、私が、こう、肌色多めで、そんな、なぁ?) 

 

有咲(そんな、そんな……) 

 

りみ「あ、あの、有咲ちゃ――」 

 

有咲「あぁあぁああああ!!」 

 

りみ「わっ」ビクッ 

 

有咲(あー! あー!! なんだよっ、普通の添い寝かよっ!!) 

 

有咲(あああああ!! 何を考えてたんだ私はっ!! そりゃそうだろ普通に考えてコトに及ぶだどうこうなんてありえねーだろアホじゃねーかこのアンポンタンめがぁ!!) 

 

有咲(なのに責任とるだとかなんだとか、お前は一体なんなんだよ何者だよちくしょう!!) 

 

有咲(あー死にたい! 軽く死にたい! なんなんだよマジでぇ!!) 

 

有咲「おおおお……!」 

 

りみ「あ、あの、大丈夫……?」 

 

有咲「だい、だ、大丈夫、だから、ちょっといまこっち見んといてやおりみさん……」 

 

りみ「え、でも……なんか変な関西弁になっとるし、ちょっと心配になってまうよ」 

 

有咲「やめて、お願いだからその純粋な目で汚れた私を見んといて」 

 

りみ「けど、昨日のこともあるし、まだお酒が抜けてないのかもだし……」 

 

有咲「……え、お酒?」 

 

りみ「うん。あのね?」 

 

 

――前日 有咲の蔵―― 

 

戸山香澄「親戚からたくさん飲み物もらったから、みんなにもおすそ分け持ってきたよ!」 

 

花園たえ「ありがとう、香澄。私はりんごジュース貰うね」 

 

りみ「ありがとう、香澄ちゃん。私は……みかんジュースにしようかな」 

 

山吹沙綾「それじゃあ私はウーロン茶にしよ。ありがとね、香澄」 

 

香澄「どういたしまして! 有咲はどれがいいかなぁ」 

 

たえ「その白いのがいいんじゃないかな?」 

 

香澄「カ〇ピスだね! じゃあ私はぶどうジュースにしよっと!」 

 

――タッタッタ... 

 

有咲「わりぃ、遅くなった」 

 

沙綾「おかえりー。流星堂の手伝い、終わった?」 

 

有咲「ああ。棚の整理が大変でさー……物を持ってあっちこっち動いてたから、結構汗かいちまったよ」 

 

香澄「お疲れさま! そんな有咲には、はい! ジュースあげる!」 

 

有咲「おお、さんきゅ。どうしたんだこれ?」 

 

香澄「親戚にいっぱいもらったんだ。だからおすそ分け!」 

 

有咲「そっか。珍しく気が利くな」 

 

香澄「えへへ~」 

 

沙綾「微妙に褒められてないような気がするけど……」 

 

りみ「香澄ちゃんがいいならいいんじゃないかな」 

 

たえ「じゃあ、とりあえず乾杯しよっか」 

 

沙綾「そうだね」 

 

香澄「えー、それじゃあ皆さま、お手を拝借……」 

 

りみ「それは一丁締めじゃないかな?」 

 

有咲「始まってすらいねーのに締めるつもりか」 

 

香澄「あれぇ、そうだっけ?」 

 

たえ「ここは一気に……かんぱーい」 

 

香澄「かんぱーい!」 

 

たえ「いぇーい」 

 

香澄「いぇーい!」 

 

有咲「それでいいのか……まぁ、いいのか。喉乾いたし、私も飲もう」グビッ 

 

有咲「……ん? なんかこれ、ちょっと変わった味がするような」 

 

沙綾「変わった味?」 

 

有咲「ああ。なんか普通のカル〇スとちょっと違う風味っつーか……まぁ、マズくはないんだけどさ」ゴクゴク 

 

たえ「特殊なやつじゃないかな。パッケージもあんまり見たことないし」 

 

有咲「確かに……」ゴクゴク 

 

有咲「ん……ひっく」 

 

りみ「……あれ? それ、小さく『お酒』って書いてない……?」 

 

沙綾「えっ」 

 

たえ「あ、本当だ」 

 

香澄「あ、あぁーっ!? それ、お父さん用のお酒だ! 間違えて持ってきちゃってた!!」 

 

りみ「え、えぇーっ!?」 

 

沙綾「ちょ、有咲、もうそれほとんど飲み切ってるけど……だ、大丈夫?」 

 

有咲「……うん」 

 

たえ「ありさー?」 

 

有咲「ん……」ポー 

 

沙綾「……駄目っぽいね、これ」 

 

香澄「ご、ごめんね、有咲!」 

 

有咲「ん~……」フラフラ 

 

 

…………………… 

 

りみ「……っていうことがあったんだ」 

 

りみ「それで、そのまま酔っちゃった有咲ちゃんを私が介抱してたんだよ」 

 

有咲「そ、そうだったのか……だから昨日の記憶がねーのか……」 

 

有咲(つーかこの状況、香澄のせいじゃねーかよ……確認しないで普通に飲んでた私も私だけどさ……) 

 

有咲(いや、でも、事情的にはさらに私がクズじゃん……酒で記憶失くして迷惑かけてって、かなりやべーよな) 

 

有咲「その、なんつーか……本当にごめん、りみ」 

 

りみ「だ、大丈夫だよ。酔っ払った人の面倒をみるのは初めてだったけど、ちょっと楽しかったから」 

 

りみ「それに……」 

 

有咲「……それに?」 

 

りみ「……ううん、なんでも。えへへ」 

 

有咲「…………」 

 

有咲(またさっきみたいな意味深な笑い) 

 

有咲(私、記憶がない間にりみに何したんだ……) 

 

有咲「ん、あれ? それでりみは私を介抱して、その、ウチに泊まって添い寝してくれてたんだよな?」 

 

りみ「うん。有咲ちゃんが私を放してくれなくて」 

 

有咲「あ、ああ、うん、ごめん。……えっと、それじゃあシーツの赤い染みは……」 

 

りみ「トマトジュースだよ」 

 

有咲「トマトジュース?」 

 

りみ「沙綾ちゃんが二日酔いにいいんだって教えてくれて、有咲ちゃんに飲んでもらおうとしたんだけど……ちょっとこぼしちゃったんだ」 

 

りみ「急いで拭いたんだけど、染みになっちゃって……ごめんね?」 

 

有咲「え、あ、いや、それこそ酔っ払ってた私が悪いんだし……」 

 

有咲(トマトジュースか……よかった。私、本当に何もしてないみたいだ) 

 

りみ「有咲ちゃん、身体は大丈夫? 頭とか痛くない?」 

 

有咲「う、うん……昨日のことを覚えてない以外は、全然」 

 

りみ「そっか。それならよかった」 

 

有咲「えぇっと、ホントごめんな、りみ。迷惑と心配かけて……」 

 

りみ「大丈夫だよ。有咲ちゃんがなんともなかったのが一番だから」 

 

有咲「……うん、ありがと。この埋め合わせはちゃんとするから」 

 

りみ「責任、とる?」 

 

有咲「そ、それは忘れてくれっ!」 

 

りみ「ふふ、お酒を飲まないと忘れないかも」 

 

有咲「り、りみぃ~!」 

 

…………………… 

  

――翌日 花咲川女子学園・中庭―― 

 

りみ「……っていう感じだったよ、昨日は」 

 

沙綾「大丈夫だったんだね。よかった」 

 

有咲「ああ……記憶だけは全然ねーんだけどな」 

 

香澄「ごめんね、有咲……私、お酒だって全然気付いてなくて……」 

 

有咲「や、まぁ、私も気付かないで飲んじゃったし。気にすんなよ」 

 

たえ「それじゃあ有咲、一昨日のアレとかソレとか覚えてないんだ」 

 

有咲「え?」 

 

沙綾「あー……まぁ、覚えてない方がいいんじゃないかな?」 

 

有咲「えっ」 

 

香澄「りみりんもごめんね? あの有咲の介抱ってすごく大変だったでしょ?」 

 

りみ「ううん、そんなことないよ。全然放してくれなかったのはちょっとだけ恥ずかしかったけど……」 

 

有咲「…………」 

 

たえ「なにやったか聞きたい?」 

 

有咲「……いや、いい。聞きたくない……」 

 

たえ「そっか。じゃあ言わないでおくね」 

 

沙綾「それでもひとつ言えることは、りみりんにはちゃんとお礼を言ってあげてねってことだね」 

 

たえ「うん。酔っ払い有咲のこと、ずっと構ってあげてた」 

 

有咲「あー、うん、そうだよな……。りみ、本当にごめん。それと、面倒みてくれてありがとう」 

 

りみ「大丈夫だよ。なんだかんだで私も楽しかったし……それに」 

 

香澄「それに?」 

 

りみ「責任」 

 

有咲「げっ」 

 

りみ「責任、とってくれるんだよね?」 

 

有咲「いや、それはなんつーか、勘違いってか、ほら……な?」 

 

りみ「とってくれないの……?」 

 

有咲「や、やめてくれよりみ、そんな上目遣いで見ないでくれって……」 

 

たえ「責任?」 

 

香澄「責任……?」 

 

沙綾「責任、かぁ」 

 

たえ「沙綾、責任ってなに?」 

 

沙綾「責任は責任だよ」 

 

たえ「うーん……?」 

 

香澄「何かしちゃったのかな、有咲? 私もそういうの、とった方がいいかな……」 

 

沙綾「大丈夫大丈夫。それはきっと有咲がとらなくちゃいけないものだから。……ふふふ」 

 

有咲「お前らもそこは気にしないでいい! 特に沙綾! 意味深に笑うなぁっ!」 

 

沙綾「ごめんごめん」 

 

りみ「…………」 

 

りみ(酔っ払った有咲ちゃん……いつもよりもちょっと強引で、でもすっごく優しかったな) 

 

りみ(お布団の中で……) 

 

 

有咲『りみ、いつもありがとうな。迷惑ばっかかけてっけどさ、それでも傍にいてくれるりみが好きだよ』イケボ 

 

有咲『ほら、そんな離れてたら寒ぃだろ。もっとこっち来いよ』イケボ&ダキヨセ 

 

有咲『あはは、真っ赤になってる。りみのそういうとこ、本当に可愛いよな』イケボ&ナデナデ 

 

有咲『おやすみ、りみ。幸せな夢を見てくれよな』ウィスパーイケボ 

 

 

りみ(……なんてされちゃったし) 

 

りみ「えへへ……」 

 

有咲「だからっ、りみもっ、その意味深な笑い!」 

 

沙綾「これは責任とらなくちゃだね、有咲」 

 

有咲「勘違いだったんだって! それには不幸なすれ違いがあってだな!」 

 

沙綾「でもほら、恋は好意の勘違いから始まって、勘違いの積み重ねで深まるって言うし?」 

 

沙綾「そういう意味で言えば、恋は勘違いの積み重ねだよ?」 

 

有咲「どこのどいつだそんな無責任な言葉を最初に言ったのはっ!!」 

 

香澄「コイ?」 

 

たえ「カープ?」 

 

りみ「恋……」 

 

りみ(有咲ちゃんにちょっと強引にされちゃった時とか、耳元で優しく囁かれちゃった時とか……あの時のドキドキが恋、なのかな……) 

 

りみ(そうだとしたら……えへへ、なんだか嬉しいな) 

 

有咲「あーもうっ、あーもう!! 二度と酒なんか口にしねぇぞ私は!!」 

 

白金燐子「あ、あの……市ヶ谷さん……?」 

 

氷川紗夜「……今、聞き捨てならない言葉が聞こえたのだけど」 

 

有咲「げぇっ!? 通りすがりの燐子先輩に紗夜先輩!?」 

 

紗夜「…………」 

 

有咲(ひえぇっ、氷みたいに冷えた目になってやがる……!) 

 

有咲「ち、違うんです! これにはとても深い理由があってですね!?」 

 

紗夜「申し開きは放課後に生徒会室で聞きます。行きましょう、白金さん」スタスタ 

 

燐子「は、はい……」 

 

有咲(うおぉぉ取り付く島もねぇ!!) 

 

燐子「あの、わたしから……少しフォローをしておくので……」 

 

有咲「た、頼みます……」 

 

燐子「あ、あんまり期待は……しないでくださいね……? それでは……」ペコリ 

 

有咲「あああ……放課後、生徒会行きたくねぇぇ……」 

 

香澄「あれだよね、これ、やっぱり私も有咲と一緒に行った方がいいよね……?」 

 

有咲「いや……いい、大丈夫だ……紗夜先輩のお説教を受けるのは私だけで十分だ……」 

 

香澄「で、でも!」 

 

有咲「大丈夫、なんとか……ちゃんと理由と経緯を話せば、正座2時間くらいで勘弁してもらえるはずだから……」 

 

香澄「それって全然勘弁してもらえてなくない!?」 

 

りみ「そ、それじゃあ私が一緒に行くよ! 有咲ちゃんの潔白を証明する!」 

 

有咲「いやいい、りみはマジでいい。泊まったとかなんだとかで絶対に話が拗れるから……」 

 

りみ「そ、そっか……」 

 

たえ「あ、じゃあ私が行こうか?」 

 

有咲「お前は一番ダメだ! 何しでかすか予測つかねぇから!」 

 

たえ「そっかぁ」 

 

沙綾「いっそみんなで行こうか?」 

 

有咲「いや、うーん……いや、平気……。放課後までに覚悟は決めておくからさ……」 

 

沙綾「……もしも覚悟が決めきらなかったら早めに言ってね?」 

 

有咲「ああ、うん……たぶん大丈夫……はぁ……」 

 

香澄「私のせいで……ごめんね、有咲……」 

 

有咲「だからお前のせいじゃねーって。気にすんなよ」 

 

たえ「骨は拾ってあげるね」 

 

有咲「ああ、うん……出来れば死にたくはねーけど」 

 

沙綾(一応、つぐみに『紗夜先輩の機嫌を取っておいて、お願い。有咲の命が危ないから』って連絡しとこう) 

 

りみ「もしも大変な目に遭ったらすぐに言ってね? 私が有咲ちゃんを慰めるから」 

 

りみ「なんだったら、その……また添い寝とかするから……ね?」 

 

有咲「…………」 

 

有咲「いや、うん、それはちょっとほら、アレだから……私、頑張るよ」 

 

りみ「そう……」シュン 

 

有咲(どうしてりみは残念そうな顔をしているんだろうか。これが分からない) 

 

りみ「でも、有咲ちゃんのためなら何だって頑張れるから、いつでも頼りにしてねっ」 

 

有咲「……ああ、うん、機会があれば」 

 

有咲(なんか、なんつーか、昨日からやけにりみの圧が強いような……。まぁ、それは気のせい、だよな) 

 

有咲(それより紗夜先輩のお説教の方が気がかりだよ……) 

 

りみ(有咲ちゃん……) 

 

りみ(もしも落ち込んだり傷付いちゃったら、今度は私が添い寝してカッコいい声で慰めてあげるからね……!) 

 

有咲「はぁ~……胃が痛い……」 

 

りみ(ため息も笑顔に変えられるように……頑張るからね!) 

 

 

 

その後、沙綾の機転のおかげで機嫌のよかった紗夜さんに軽めのお説教をくらうだけで済んでホッとした有咲だったけれど、今度はやけに押しの強くなったりみりんに色々と悩まされることになるのでしたとさ。 

 

 

 

 

 

 

元スレ

https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1574153470/

小町「お兄ちゃん、買い締め禁止でしょ!?」八幡「マッカンはマスクのように不足してないからいいんだよ。」【俺ガイルss/アニメss】

 

【比企谷家】

 

八幡「ふぁーあ……朝か。いや、もう昼か」

 

八幡(ぶっちゃけこのまま寝ててもいいが……まあぼちぼち起きるとしますかね)

 

八幡(しかし、学校がないとこうもきっちり昼夜逆転しちまうのは不思議なもんだな)

 

八幡(早寝早起きみたいな良い習慣は続かないのに、悪い習慣はいくらでも続いちまう)

 

八幡(日記を書くのは三日坊主でも日記を書かない習慣は何十年でも継続できる)

 

八幡(パチンカスやアル中やソシャゲ課金廃人もヤバいと思いながら自分の習慣を毎日ちゃんと継続しているわけだ)

 

八幡(それはそれで凄いんじゃないか。ある意味才能あるんじゃね、あいつら)

 

八幡(まあ、継続したところで何の成果も得られないんですけどね。場合によっては死ぬまである。いや、やっぱダメじゃねーか依存症)

 

八幡「くだらないこと考えてないで何か腹に入れるか。もう朝飯か昼飯かわからねぇけど」

 

 

<リビング>

 

小町「……」

 

八幡「おう、起きてたのか小町」

 

小町「……」

 

八幡「何テーブルに突っ伏してるんだ」

 

小町「……」

 

八幡「寝てるのか?」

 

小町「……」

 

八幡「その姿勢あんまりよくないらしいからやめといたほうがいいぞ」

 

小町「あーもーやだぁ―――――!!」バァンッ

 

八幡「!?」

 

八幡(え、なに……小町ちゃんったらいきなり奇声あげてテーブル叩いちゃって。そういうお年頃なの?)

 

八幡(まあ年齢的に反抗期になってもおかしくないんだが。小町に限ってそんなこと……)

 

小町「もーやんなるよ……いつまで続くのこんな生活」どよ~ん

 

八幡「ああ、自粛生活でストレス溜まってんのか」

 

小町「いや溜まるに決まってるでしょ……毎日毎日ずーっと家の中に居なきゃいけない、もううんざり」

 

八幡「まあ確かに、世間じゃストレスでDVとか虐待とか増えてるって聞くしな」

 

小町「お兄ちゃんストレス溜まらないの、こんな閉じこもってばっかで」

 

八幡「全然。むしろ理想のニート生活過ぎて居心地良すぎるまである」

 

小町「うわぁ……」

 

八幡「おい、ゴミを見るような目やめろ。まるでニートがゴミみたいじゃねぇか」

 

小町「え、ニートってゴミでしょ。ていうかゴミ以下」

 

八幡「真顔で本当のことを言うのやめろ」

 

小町「まあ、お兄ちゃん何だかんだでニートにはならなそうだけどね。やるときは仕方なくでもやるとこが奴隷的で社畜っぽいし」

 

八幡「やるときはやるのにネガティブでしかない形容やめて……。まあ実際、俺はそこそこスペック高いからな。就職はできるだろ」

 

小町「でも結局仕事の善し悪しよりも人間関係がすべてでしょ。バイトですらあっさりバックレるお兄ちゃんが長続きするはずもなく……」

 

八幡「おいやめろ。いや、本当に入社3か月以内にそういうのありそうだからやめて……」

 

小町「ま、お兄ちゃんの予定調和な未来は置いといて。今起きたんでしょ、ごはん食べる?」

 

八幡「ああ、小町はもう食べたのか」

 

小町「うん、あり合わせで焼きそば作って食べた。お兄ちゃんのぶんも冷蔵庫入ってるからチンして」

 

八幡「了解、サンキュな」ガタン

 

小町「どういたしまして」

 

小町「そういや、お父さんとお母さんってテレワークやるとか何とか言ってたけど。結局仕事行ってるね」

 

八幡「ああ。親父が言うには、テレワークしてもいいけど出退勤時のタイムカードは会社に行って押さなきゃならんらしい」モグ

 

八幡「あと、決済で会社のハンコがいるとか、機密情報は持ち出せないとかで制約が多くてな」モグ

 

八幡「もう面倒だから会社行くわ! ってなったんだと」

 

小町「なにそれ……」

 

八幡「ちなみに時差出勤で遅く出たら、よその会社も同じように時差出勤してて、もともとラッシュタイムより電車の本数が少ないからかえって混雑してたんだと」

 

小町「ええ……」

 

八幡「こんな時にも修羅の外界に働きに出なきゃいけないとか……やっぱ社畜とかクソだな! 俺は働かない選択肢を選ぶぞ!」

 

小町「まーたそこに戻って来たよこの人……」

 

八幡「いや、だから専業主夫という道がだな」

 

小町「専業主夫目指すんならもっと家事とかしようよ。お兄ちゃん、休みになってもからずっとだらけてるだけじゃん」

 

八幡「いや、それは小町が何でもやってくれてるからでな……。出来のいい妹にはつい頼っちまう。これ八幡的にポイント高い!」

 

小町「え、なに。キモい」

 

八幡「ちょっと小町の真似しただけなのに……そんな辛辣な言葉やめてくれない? マジでへこむんだが」

 

小町「もー冗談だってば、この人本当にめんどくさいなぁ。お褒めに預かり光栄ですよ、お兄ちゃん様」

 

八幡「おう、褒めてつかわすぞ妹様」

 

小町「妹様ってなにその呼び方~」ぷっ

 

八幡「ごちそうさん。食洗機かけとくわ」

 

小町「あ、うんお願い」

 

八幡「これでよし」カチッ 

 

小町「お茶入れようか?」

 

八幡「あーいい。自分で入れる」

 

八幡(そういやマッカンの在庫がそろそろ切れそうだな……一週間ぶりに買い出し行ってくるか)

 

小町「お兄ちゃんさ」

 

八幡「ん?」

 

小町「今年受験生でしょ。いろいろ不安とかない? 学校休みになってて」

 

八幡「ああ、まあ全くないというわけでもないが、俺だけの問題じゃないしな。他の連中も条件は同じなんだし」

 

八幡「そもそも普通に学校行ってたところで、たいして授業なんて聞いてねぇよ」

 

八幡「むしろ捨ててる科目でこそこそ内職なんかせずに、家で自分の時間配分で勉強できるんだ」

 

八幡「私立文系で絞ってる俺にとっては、むしろやりやすいくらいだな。登下校の時間ロスとかもなくなるし」

 

小町「……うん、そうだね。そういう意味だとお兄ちゃんには合ってるのかも」

 

八幡「……。小町は」

 

小町「あーうん、一応、高校から課題とか送られてきたからそれはやってるけど」

 

小町「でも、やっぱいろいろ不安なんだよね。受験終わって、合格してさ……さあ、これからってときに」

 

八幡「……」

 

小町「それに、……部活のこととか」

 

八幡「部活か。何かやりたいことでもあるのか? まあ、中学のとき生徒会やってたんならそっち系もあるだろうが」

 

小町「ふふふ、内緒♪」

 

八幡「えぇ……思わせぶりに言っておいて秘密なの?」

 

小町「まあね、でもお兄ちゃんきっと喜ぶよ。涙流しながら小町を妹に持って良かったって感動するんだ……」

 

八幡「何だよそれ……嫌な予感しかしないんだが」

 

小町「はぁー! 早く学校始まらないかなー」

 

八幡「いつかは始まるんだから気長に待ってろよ。そんなことよりプリキュアの放送延期がショックすぎる……再開いつになるんだよ

 

小町「いやもっと現実問題でショック受けようよ……」

 

八幡「プリキュアのヒーリングがないと、地球を蝕み人類を侵略しているコロナビョーゲンズは倒せない……このままでは世界が終わる」

 

小町「お兄ちゃん、大丈夫……? 何か別の病気発症してない? ちゃんと現実とフィクションの区別ついてる……?」

 

八幡「まあ、こんな状況になったら逆にフィクションの世界とかに救いを求めたくなるだろ?」

 

八幡「あのラノベのあのキャラとか、あの漫画のアイツとか、あのアニメのあの人とかがいたら……この状況を何とかしてくれるんじゃないかっていう」

 

小町「あぁ。まあ、うん。分からなくはないかも」

 

小町「よぉし」スクッ

 

八幡「小町?」

 

小町「わたし、魔法少女になる」

 

八幡「!?」

 

小町「小町の願いは世界中のすべてのコロナを消し去ることだよ」

 

小町「もう誰も自粛してイライラしたり無職になって絶望したり悲しんだりしない世界をつくるんだ……」

 

小町「お兄ちゃん。小町行ってくるね。必ず帰ってくるから……ほんのちょっとだけお別れだね」にこっ

 

八幡「小町……!」

 

八幡「頭大丈夫か?」

 

小町「お兄ちゃんにだけは言われたくないよっ」

 

八幡「つか、そのアニメ見てたのかよ」

 

小町「だって暇だから、ドラマとかアニメとか見放題のサイトで見てるの。アニメストアってやつ」

 

八幡「ああ、あれね」

 

八幡(妹が面と向かってこんなセリフ言ってきたら『残念な娘かな?』って思っちまうが)

 

八幡(でもよくよく考えると小町って魔法少女適性あるんじゃね? 主に声的な意味で)

 

小町「プリキュア再開したらまた一緒に見よっか」

 

八幡「いいんじゃねぇの。この年になって見ると普通に泣けるぞ」

 

小町「朝っぱらからキッズ向けアニメを見てるいい年した兄妹の後ろ姿でお母さんも泣いちゃうかもね……」

 

八幡「おいやめろ。リアルに構図想像できて辛くなるから……」

 

小町「さーてと、じゃあ小町ちょっと出てくる」

 

八幡「出るのか?」

 

小町「軽く散歩に。さすがに体なまっちゃうしね。お兄ちゃんも一緒にいかない?」

 

小町「たまには日光浴びた方がいいよ」

 

八幡「……そうだな。ちょうどマッカンを買い締めしようと思ってたんだ。ついでに少し歩くか」

 

小町「いや、お兄ちゃん買い締め禁止じゃない?」

 

八幡「マッカンはマスクのように不足してないからいいんだよ。むしろマッカンの本当の価値に気づいていない千葉市民が多すぎる。そもそも」

 

小町「あー、面倒なスイッチ押しちゃったなー」

 

ガタン

 

小町「はぁー、もうすっかり暖かくなったよね。軽く汗ばむくらい」

 

八幡「だな」

 

八幡(ちょっと出てない間にも、季節はちゃんと移り変わっていく)

 

八幡(世間で何が起きようと時間は同じリズムで流れていくし、いずれ次の局面を迎えることになる)

 

八幡(思わぬ休校でできた貴重な時間は、来るべき未来のために有効活用しなければならない)

 

八幡(そういう意味では、自堕落に生活が乱れて非生産的に過ごしている俺の自粛生活は、やはりまちがっているといえるだろう)

 

八幡(とはいえ)

 

小町「こんな感じで一緒に歩くのも久しぶりだね」

 

八幡「だな」

 

小町「こーゆー時間は、小町嫌いじゃないよ」

 

八幡「そうかい」

 

小町「なんてね、いまの小町的にポイント高い! 2%還元しちゃう」

 

八幡「えー還元率低くない?」

 

八幡(同じ高校に通うことになるとはいえ、小町は小町でやりたいことがあるだろう)

 

八幡(この年齢で一緒に通学するっていうのも考えづらい。小町にもいろいろ付き合いはあるだろうし)

 

八幡(俺が卒業して大学に行けば、まあ家を出るかどうかは別として、小町と関わる時間はさらに減るはずだ)

 

八幡(社会人になればなおのこと。まあ、兄妹揃って“働かないふたり”にでもならない限りな)

 

八幡(だから小町とこうやって長いときを一緒に過ごせるのは今が最後かもしれない)

 

八幡(これはこれで、悪くない時間だろう。――まあ、さっさと終息してくれるに越したことはないがな)

 

 

やはり妹さえいればいい。

 

 

 

 

 

元スレ

https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1587819996/l50

香澄「……これは私達の、始まりのライブです!!」【バンドリ!ss/アニメss】

 

みんなで初めて立った夢のライブハウスは、余りにも輝いていて……眩しかったんだ。 

 

 

****** 

 

 

カーテンの隙間から差し込む光と、家族の生活音で、目が覚めた。 

 

意識が、はっきりとしていく。 

 

掛け布団を腕で剥がし、勢いよく上半身を起こした。 

 

途端に目に入る、所々色褪せた制服は、色んな思い出を想起させる。 

 

光を遮るカーテンを一気に開放すると、全身が温かく包まれ……思わず、ため息が漏れた。 

 

しばらくして、予め設定していた目覚まし時計の淡白な音が部屋中に響き始める。 

 

 

「遅いぞっ!」 

 

 

上部を軽く叩くと、鳴り響くアラーム音が止んだ。 

 

制服に身を包んで。 

 

スクールソックスを身に着けて。 

 

お気に入りの星のヘアピンで前髪を留めて。 

 

鏡を見つめると、まだ少しあどけなさの残る自分の顔が映っている。 

 

ニコッと笑顔を作ると、鏡の中の自分はいつも通りに笑っていた。

 

 

こっそり、忍び足で隣の部屋へと向かう。 

 

 

「ヒッヒッヒ」 

 

 

音を立てないように扉を開けた先で眠るのは、こちらに背中を向けて眠っている女の子。 

 

両手を構え、一気に布団の中へと身体を潜らせた。 

 

 

「いやあーもうー……おねーちゃん!」 

 

 

「あっ、皺ついちゃう」 

 

 

身体を起こして制服の裾を正すと、眠っていた女の子は横になったまま、瞼を瞬かせて振り向いた。 

 

 

「どう? 変なとこない?」 

 

 

「耳……違う、髪!」 

 

 

「え? これ? ニャー!」 

 

 

こちらを一瞥すると、彼女は「はぁ」とため息をついて―― 

 

 

「……っておーいー! 寝たら死ぬぞー!?」 

 

 

「もう……なんでそんなにテンション高いの?」 

 

 

「だって卒業式だよ! 卒業式!」 

 

 

「私違うしー」 

 

 

「一緒に行くんでしょ! あっちゃん、在校生送辞やるんでしょ!」 

 

 

「そうだけど……あ、そうだった。わたし、今日は早く行かなきゃ……」 

 

 

そう言ったあっちゃんは、未だ眠そうに身体を起こして、ベッドからゆっくりと足を下ろした。 

 

 

「ふわあー……ってお姉ちゃん、まだ制服着なくてもよかったんじゃない? 卒業生は、いつもより登校時間は遅いんじゃなかったっけ?」 

 

 

「あ! そーだった!」 

 

 

「忘れてたんだ……おねーちゃんは変わらないね」 

 

 

そう言ったあっちゃんは、パジャマ姿のまま、私を置いて先にリビングに降りてしまった。 

 

 

「……じゃ、行ってくるから」 

 

 

あっちゃんの声音は何だかいつもと違っていて、ほんの少しだけ震えていて……いつか、私が歌えなくなった時の事を思い出した。 

 

だから私はいつも通り、元気に振舞う。 

 

 

「私、今行っちゃダメかな!?」 

 

 

あっちゃんは、半ば呆れたように苦笑した。 

 

 

「別にいいけど、行ってもすることないんじゃないの?」 

 

 

「でも、家にいるのも暇だし……そうだっ、有咲ん家行ってくる!」 

 

 

「あ、いいんじゃない? 行ってきなよ。有咲さん、きっと喜んで……」 

 

 

予め玄関に用意しておいたスクールバッグを肩に提げ、ローファーをつっかける。 

 

 

「ええっ、今?」 

 

 

「うんっ!」 

 

 

玄関扉に手をかけ、力いっぱい開く。 

 

 

「じゃあ行ってくるね。ふひひ」 

 

 

「おねーちゃん……ホント、変わんないね」 

 

 

そう言ったあっちゃんが見せた笑顔は、どこか嬉しそうに見えた。

 

 

「……さっきドカンッてすごい音がしたけど?」 

 

 

「はは……布団バンッて取ったら、怒られちゃって」 

 

 

「あの子はもう……。学校でもそうなの?」 

 

 

眉尻を下げたおばあさんは、何だか心配している様子。 

 

――以前、私はその問に答えることができなかったけれど。 

 

 

「はい! 学校でも、有咲は元気です!」 

 

 

「……フフッ、そうかい」 

 

 

目尻に皺がよって、口角が上がったその笑顔は優しくて、まるでお母さんみたい。 

 

 

「今日は、ご飯は食べていかないの?」 

 

 

「はい! 今日は家で朝ご飯食べてきたので、大丈夫です!」 

 

 

元気いっぱいに言うと、おばあさんは「そうかいそうかい」と微笑んだ。 

 

 

「有咲もね、最近はちゃんと朝ご飯食べて、毎日学校に行くようになったんだよ。香澄ちゃんのおかげだね」 

 

 

「あ……ありがとうございますっ」 

 

 

「ふふ……本当に元気のいいこと」 

 

 

するとおばあさんは、「おや」と声を漏らし、私の後ろへ視線を向けた。 

 

振り向くと、トントンと子気味よく階段を降りる音とともに、明るい色のツインテールの女の子が姿を見せる。 

 

 

「おはよう、有咲!」 

 

 

「香澄ぃ……今日は9時登校だろ? はええっつーの。あと『おはよう』はさっきも……」 

 

 

「おはよう!」 

 

 

「っ! ……ったく。お……おはよぅ」 

 

 

一瞬びっくりした有咲は、恥ずかしそうに語尾を小さくしながら言った。 

 

フフッと息の漏れる音が、後ろから聴こえてくる。 

 

 

「おはよう、有咲」 

 

 

有咲に向けられたその声は、本当に温かいものだった。 

 

 

「お……おはよう、ばーちゃん」 

 

 

照れくさそうに挨拶を告げる有咲は、本当に可愛いらしくて。 

 

 

「有咲っ! 朝ご飯食べよ!」 

 

 

「うぇっ……お前、食ってきたんじゃねーのかよ?」 

 

 

「まだ食べれる!」 

 

 

「ご飯盛ってくるよ」 

 

 

おばあさんは、笑顔のまま席を立ち上がった。 

 

 

「ありがとうございますっ!」 

 

 

「ばーちゃん、いいって!」 

 

 

「いいじゃないの、そのくらい」 

 

 

慌てる素振りを見せる有咲を見て、おばあさんは有咲の頭を撫で始める。 

 

突然の事に、「ちょっ……ばーちゃん!!」と顔が真っ赤になっている有咲に、おばあさんは包み込むような声音で呟いた。 

 

 

「……良かったね、有咲」 

 

 

「……うん」 

 

 

……おばあさんの目元が、一瞬だけきらりと光ったような。 

 

気のせいかもしれないけれど……そう見えた。 

 

 

「美味しかったね、有咲!」 

 

 

「お前、本当に自分家で朝ご飯食ってきたのかよ。一食分丸々食いやがって……」 

 

 

「美味しかったもん!全部!」 

 

 

朝ご飯を食べた私達は、おばあさんに「行ってきます!」と挨拶をして、二人で有咲の家を出た。 

 

有咲のおばあちゃんの「行ってらっしゃい」は、何だか安心感があって、嬉しくなる。 

 

――でも同時に、何となく寂しくて。訳もなく胸の奥に上がってきた何かが、私の胸を覆いつくしてしまいそうで。 

 

よくわからないけれど、それに支配されたらダメな気がして。 

 

……だから、私は元気に振舞うんだ。 

 

 

「ホント、元気だなーお前」 

 

 

「うんっ! 元気元気!!」 

 

 

「……そっか」 

 

 

そう言って私を見る有咲の顔は……どこか遠くを見ているみたいだった。 

 

 

「あたしには、信じらんねえよ……」 

 

 

「え?」 

 

 

小さく呟いたその声は、あんまりよく聞こえなかった。 

 

 

「……何でもねー」 

 

 

「そう?」 

 

 

「さっさと行くぞー」 

 

 

私よりも一歩前を歩く有咲は、やっぱりいつも通り。さっき感じた違和感は、私の勘違いだったみたい。 

 

 

「うん! 行こー!」 

 

 

かけっこでもするみたいに走りながら、真っ青に晴れた空を仰ぎ見る。 

 

雲なんて一つも無いはずなのに……どういうわけか私には、その空が曇って見えた。 

 

 

校門をくぐると、前を歩く人ごみの中でも、絶対に彼女だと分かる影が一つ。私はその背中に向かってかけていき、思いっきり覆いかぶさった。 

 

 

「おッはよー沙綾っ!」 

 

 

「わっ、びっくりした……香澄かー。おはよう」 

 

 

いつも通りの反応。いつも通りの挨拶。変わらないこのやり取りが、私に安心感を与えてくれた。 

 

 

「よ、沙綾」 

 

 

「有咲、おはよー」 

 

 

沙綾が有咲に向けた笑顔は、私に向けるものとはほんの少しだけ違う……見るだけで胸の奥が苦しくなってくるような、切ない笑顔だった。 

 

 

「ねね、沙綾! 今日、沙綾ん家寄って行ってもいい?」 

 

 

「いいけど……今日はクライブするんじゃないの?」 

 

 

「ちょっとだけー! いいでしょ!?」 

 

 

沙綾は、有咲に視線を向けた。 

 

 

「別に、いーんじゃねーの? そんくらい」 

 

 

「……そうだね。うん、分かった」 

 

 

頷いた拍子に、栗色のポニーテールがピョコンと揺れた。 

 

 

「やったー! りみりんとおたえもきっと行くよね!」 

 

 

「言うだろ、特にりみは」 

 

 

有咲は、やれやれとでも言いたげに腰に手を当てた。 

 

 

「じゃあじゃあ、じゅんじゅんとさーなんも連れていく!?」 

 

 

「おいおい……蔵が人であぶれちまうって」 

 

 

「純と紗南は、卒業式に来るって言ってたよ」 

 

 

「なら、わざわざクライブにも来てもらう必要なくね? それに、クライブは私達だけでって……」 

 

 

「んー……聞いてみる!」 

 

 

「っておい! 聞けよ!!」 

 

 

「ははは……香澄は変わらないね」 

 

 

――その言葉に、私は一瞬だけ思考が停止した。 

 

 

「……香澄?」 

 

 

まるで不思議なものを見るように、沙綾が私の顔を見る。 

 

 

「……ううん、何でもない!」 

 

 

教室に行けば、りみりんとおたえに会える。 

 

大丈夫……何も変わってない。変わってなんかいない。 

 

 

――それとも……変わってないのは……私だけなの? 

 

 

SPACEが終わっても、私達は終わらない。終わらせるつもりも無い。 

 

きっと、いつまでも続いていくんだろうって……その時は、本気で信じてた。 

 

 

でも、私達5人を取り囲む時間は、瞬く間に過ぎていって。 

 

気がついた時には、先輩はみんな卒業して、私達の前からいなくなって。 

 

 

それでもきっと、私達は終わらない。ただそれだけを信じてた。終わらないひと時を過ごしているんだって、懸命に自分に言い聞かせた。 

 

こんなに楽しい時間が、こんなにも充実している時間が……終わっていいはずがない。無くなっていいはずがない。失っていいはずがない。 

 

 

――でも、そんなわけがなくて。 

 

 

終わらない時間は決してない。 

 

どんなに楽しい時間でも、どんなに充実していた時間も、どんなに素晴らしい仲間と過ごした思い出も……やがて、過去のものとなる。 

 

 

その事に私が気が付いたのは……ずっとずっと、後のことだった。 

 

 

「りみりーん! おたえー! おっはよー……ん?」 

 

 

教室に足を踏み入れると、りみりんとおたえの周りに人だかりができていた。 

 

それは、クラスメイトだけじゃない。 

 

よく知っている顔に交じって、たくさんの後輩が私達の教室に来ていた。 

 

 

「おねーちゃん、遅いよ!」 

 

 

「あ……あっちゃん」 

 

 

妹のあっちゃんが、教室に入った私達の所へと駆け寄ってくる。 

 

 

「卒業生は、胸に花をつけなくちゃいけないんだからさー」 

 

 

そう言うとあっちゃんは私の胸元に手を添えて、一輪の赤い花をつけた。 

 

 

「わあ! 可愛い! ねえねえあっちゃん、これ何の花?」 

 

 

「さあ? ただの造花だし……多分、バラとかじゃないの?」 

 

 

「バラ!? すごいっ!!」 

 

 

「な……何が?」 

 

 

呆れ気味に苦笑するあっちゃんは、いつもの様子と変わらない。 

 

ふと後ろを見ると、有咲と沙綾が、それぞれ後輩に赤い造花をつけてもらっていた。 

 

 

「ふふっ、ありがとね」 

 

 

「いえ、とんでもないです! ……あの、沙綾先輩。本当に……卒業しちゃうんですか? わたし……今でも信じられなくて」 

 

 

「よしよし……まあ確かにねー。私もちょっと信じられないや」 

 

 

今にも泣きだしそうな目の前の女の子の頭を撫でながら、沙綾は苦笑した。 

 

沙綾は一昨年の三月あたりから、ずっと彼女に慕われているらしい。 

 

 

「……有咲さんが卒業したら、これから私、どうやってテストを乗り越えればいいんですかあー!」 

 

 

沙綾の隣で、沙綾を慕っている女の子と一緒にバンドを組んでいるらしい二年生の子が、有咲に思いっきり抱き着いていた。 

 

 

「はあっ!? そ……そんくらい自分でできんだろぉ!?」 

 

 

「むりですぅ~、私が勉強できないの知ってるじゃないですかあー!!」 

 

 

「知るかっつーの! ったく、香澄が二人もいるみたいだ……勘弁してくれ……」 

 

 

二人が後輩と仲良くなっていたことは、本人から聞かされるまで全然知らなかった。 

 

沙綾と有咲だけじゃない。りみりんも、おたえも。 

 

みんな……私の知らない所で、私の知らない誰かに変わってしまったような。 

 

 

……そんな風に思ってるのは、私だけなのかな? 

 

 

「ははは、面白ーい」 

 

 

「有咲ちゃん、嬉しそうだね」 

 

 

「嬉しいわけあるかあ!!」 

 

 

有咲が後輩とやり取りしている様子を見て、私の隣でりみりんとおたえがお腹を抱えて笑っている。 

 

既に後輩につけてもらったらしいバラの造花を胸元に添えた二人は……何だか少し、大人っぽい。 

 

 

「おたえ! りみりん! おはよう!」 

 

 

「香澄、おはよー」 

 

 

「おはよう、香澄ちゃん」 

 

 

「そうだ、二人とも! 今日の帰り、沙綾ん家寄って行かない?」 

 

 

「いいね、パン食べたい!」 

 

 

「チョココロネ……残ってるかなあ?」 

 

 

りみりんが言うと、沙綾が口を開く。 

 

 

「大丈夫、夕方になると追加で焼くからね」 

 

 

「そっかー、良かったあ」 

 

 

「オッチャン、何食べるかな?」 

 

 

「うさぎに食べさせるのかよ……」 

 

 

「いいじゃん有咲。オッチャン、可愛いし」 

 

 

有咲がツッコミを入れると、いつも沙綾がフォローを入れる。 

 

 

「何だか……こうしていると、本当に信じられないね。お姉ちゃん達が卒業するなんて……」 

 

 

あっちゃんは、何だか寂しそうに呟いた。 

 

 

「私は家から通うよ! だから寂しくない!」 

 

 

「お姉ちゃんは別に、卒業しても何も変わらないだろうからどうでもいいよ」 

 

 

「ひどい!」 

 

 

卒業しても、きっと私達は変わらない。 

 

どこか遠くに引っ越しするわけでもないし、会えなくなるわけでもない。 

 

寧ろ、ポピパのみんなはずっと東京にいるのだから、今よりもずっと会う時間が増えるかもしれないのだ。 

 

バンドは解散しない。これからも、ずっと……。 

 

 

「……変わらないと思ってるのは、お姉ちゃんだけだよ」 

 

 

「え……あっちゃん?」 

 

 

それは、彼女が言ったとは思えないような……冷たい口調で。 

 

思わず私は、あっちゃんの顔を凝視した。 

 

 

「……別に、何でもないよ」 

 

 

「う……うん」 

 

 

抑えていた何かが、再び膨れ上がってくる。 

 

今にもはち切れそうな気持ちは、何かの拍子に零れてしまいそうで。 

 

 

――その時……毎日、何度も聞いた甲高い鐘の音が、教室や廊下に響き渡った。 

 

 

「……じゃあ、私達は教室に戻るから」 

 

 

あっちゃんと一緒に、訪れていた後輩達が次々と教室を後にした。 

 

その中には、涙で顔をぐちゃぐちゃに濡らした子も何人かいて。 

 

 

考えないようにしていた何かは、途端に胸中を覆いつくしていった。 

 

 

卒業式が始まるまで、まだ少し時間がある。 

 

教室で待機している私達は、卒業ライブについて最後の確認をしていた。 

 

 

「ねね、卒業ライブなんだけどさ! いつやるんだっけ?」 

 

 

「はあ? 寝ぼけてんのか……午後。わざわざ職員室まで行って、許可貰ってきたじゃん」 

 

 

「あはは、そっかあ! すっかり忘れてた!」 

 

 

「全く香澄は……マイペースというか、何というか……」 

 

 

「ここまでくると、ただのバカだ」 

 

 

「ヒドイよ有咲ぁ~」 

 

 

有咲の酷い言い草に、今度ばかりは沙綾もフォローしてくれなかった。 

 

確かに、忘れていたのは認めるけど……それは、昨日遅くまで練習していたからで、仕方ないというか。 

 

 

「そういえばね。卒業ライブ、お姉ちゃんも来てくれるって言ってた」 

 

 

「え!? ゆりさんもくるの!?」 

 

 

びっくりして、つい大きな声で叫んでしまう。 

 

 

「香澄、声がでけえ」 

 

 

「こんだけみんな騒いでるんだから、誰もそんなに気にしてないよ」 

 

 

「沙綾は香澄に甘すぎ」 

 

 

「フフッ、そうかな?」 

 

 

「有咲が私に酷いだけだよ!」 

 

 

「なっ……悪かったって、そんなに怒んなよ……」 

 

 

「怒ってないもん!」 

 

 

「……そんなことより、ゆりさんも来てくれるんだね。びっくり。確か、今は東京に住んでないんだよね?」 

 

 

一通りやり取りした後に、本当にどうでも良さそうな口調でおたえが話を戻した。 

 

 

「うん……でも、大学が今は春休みだから来てくれるって」 

 

 

「そっか。それじゃ今は、ゆりさん帰って来てるんだね」 

 

 

「うん! そうなんだあ」 

 

 

本当に嬉しそうに笑うりみりんを見ていると、何だかこっちまで嬉しくなってくる。 

 

 

「それなら、なおさら気を引き締めないとね!」 

 

 

「新曲もあることだしね」 

 

 

みんなを奮い立たせようとした私に、沙綾が片目でウインクして頷いた。 

 

――そう、新曲。 

 

みんなで作った、みんなの曲だ。 

 

卒業しても、私達「Poppin’Party」は解散しない。 

 

けれど、この学校でライブをするのは、これが本当に最後だ。 

 

 

「……悔いの残らないような、最高のライブにしよう!」 

 

 

このライブだけは、絶対に失敗したくない。 

 

後悔なんて、したくない。 

 

ここで少しでも悔いが残ってしまえば……抑え込んでいた何かが、崩れ落ちてしまうような、そんな予感がするから。 

 

 

――高校卒業したら私達、どうしようか? 

 

 

そんな質問を投げかけたのは、一体誰だったかな? 

 

それは大分昔の事で……今はもう、誰が言い出したのか覚えていない。 

 

けれど会話の内容だけは、今も鮮明に覚えていて。 

 

 

「……なあに? 藪から棒に?」 

 

 

聞き返したのは沙綾。それに続いたのは私。もしかしたら、言い出しっぺは私かも。 

 

 

「卒業したら……続ける! バンド、続けるよ!」 

 

 

「おいおい……音楽だけで生きていけるのは、本当に一握りの天才だけって聞くけど?」 

 

 

有咲の言い方は、いつも大人っぽい。 

 

 

「うーん……頑張る!」 

 

 

「頑張るって、気合かよ!?」 

 

 

「ははは……香澄らしいね」 

 

 

「うん、香澄らしい」 

 

 

沙綾とおたえが、それに続いて。 

 

 

「香澄ちゃんが言ったことは、本当にそうなりそう」 

 

 

りみりんが、いつものあどけない口調で答える。 

 

 

「きっと、私達ならできるよ! SPASEの時もそうだった!」 

 

 

「うん……あの時のこと、今も覚えてる」 

 

 

おたえは最初、私に無理だと言った。 

 

きっとそれは、私がまともに演奏もできない初心者で、右も左も見えてなかったから。 

 

でも、周りの助けを借りて……いっぱい頑張って。泣いたこともあったけど、乗り越えた。 

 

だからきっと、これからも。 

 

 

「そううまくいくわけねー」 

 

 

やっぱり有咲は素直じゃない。 

 

口ではそう言ってるけど……表情は、なんだか嬉しそう。 

 

 

「頑張ろう! みんなで、一緒に!」 

 

 

「うん、頑張ろう。この5人なら、何とかできる気がする」 

 

 

最初に突っ走る私が暴走しないように、ムードメーカーになってくれるのは、いつも沙綾だ。 

 

 

「よーし! じゃあ、いつもの!」 

 

 

「今かよ!?」 

 

 

「あはは……いいね、やろう!」 

 

 

「嘘だろ!? ……ったく、わかった」 

 

 

私の言う事は渋るくせに、沙綾の言う事にだけは文句を言わない有咲。 

 

そんな二人を見て苦笑するおたえとりみりん。 

 

私の出した手の甲に自分の手を重ね……まるで、5人の腕が星を対角線に表しているみたい。 

 

 

「よーし……ポピパ!ピポパ!ポピパパ!ピポパー!」 

 

 

「……え? グリグリが解散!?」 

 

 

ある日の昼休み。いつも通りに中庭でご飯を食べていた私達は、りみりんの突然の告白に耳を疑った。 

 

 

「うん……おねえちゃんが言ってたから、間違いないと思う……」 

 

 

消え入りそうな声を出すりみりんは、今にも泣きそうな顔をしていて。 

 

それが嘘か本当かなんて……疑いようがなかった。 

 

 

「でも……どうして急に? だってグリグリだよ? あんなに凄い卒業ライブまでしたのに、どうして解散なんて……」 

 

 

いつもは穏やかな沙綾も、この時ばかりは声を上げずにはいられなかったみたいだ。 

 

 

「うん……あのね。おねえちゃんが、引っ越しちゃうんだ。大学が東京じゃなくて、関西にあるからって」 

 

 

「関西……」 

 

 

確かに、今はそんな時期だ。 

 

3月下旬。この時期になると、卒業式を終えた三年生たちの進路も決まり、引っ越しが盛んに行われる。 

 

高校を卒業したゆりさんが大学に進学することを理由に引っ越すのも、何ら不自然ではない。 

 

 

「だって……どうして、そんな急に……」 

 

 

「それが……そんなに急な話でもなかったみたい。ずっと前から、メンバーでそれぞれ進路の話もしてたみたいで……全員の希望通りいけば、もうバンドの練習もできないねって……」 

 

 

「何でだよっ!!」 

 

 

突然の叫び声に、りみりんの肩がビクッと跳ねた。 

 

 

「何で……そんな……音楽が好きだから……バンドが大好きだからやってたんじゃねーのかよっ!!」 

 

 

「有咲……」 

 

 

「っ……わりぃ」 

 

 

りみりんは、溢れる感情を抑えきれなくなったようで、肩を震わせながら泣き始めてしまった。 

 

そんな彼女を、おたえがギュッと抱きしめる。 

 

 

「仕方ないよ……好きじゃないのに、バンドをやっている人なんていない。みんな音楽が好き……バンドが大好きなの。それでも、どうにもならない事だってあるんだよ……?」 

 

 

「わ……分かってる……分かってんだよ、そんなこと」 

 

 

有咲も、頭では理解しているはずだった。 

 

才能がある人でさえ、音楽で生きていくのは難しいのだと、いつかテレビ番組で誰かが言っていた。 

 

きっと、ゆりさんもそれが分かった上で、生まれ故郷の東京を離れて関西の大学へ進学することを選んだのだ。 

 

 

――でも……分かっていても、信じたくないんだ。 

 

 

「Glitter*Green」が、バンドとして優れていたのは明白だ。 

 

誰から見たってそれは変わらない事実で、SPASEで行われていたライブに、彼女達が目当てで訪れる客も決して少なくなかった。 

 

そんな彼女たちが、音楽で生きていく道を拒んだのだ。 

 

私達「Poppin’Party」よりも、ずっと優れていたであろう彼女達が、音楽で生きていくことを諦めた。 

 

好きなことだけで生きていくことを諦めた。 

 

 

きっとどこへ行っても、何かの形で音楽には触れるのだろう。 

 

大学の学園祭だったり、SPASEのようなライブハウスだったりするかもしれない。 

 

だとしても……今この瞬間から、音楽で生きていく事を諦めた事実は揺るぎない。 

 

そんな事実を突きつけられて、それでも私達は音楽で生きていくだなんて……軽々しく口にしていいのだろうか? 

 

 

「……どうする? 私達」 

 

 

重すぎる沈黙を破ったのは、沙綾だった。 

 

 

「香澄。……どうするの?」 

 

 

こんな形で私に話を振るのは、彼女にとっても不本意なのかもしれない。 

 

汚いとさえ思っているかもしれない。 

 

それほどに、彼女の顔は悲壮に歪んでいた。 

 

でも、私が言わなくちゃいけない。 

 

今までだってそうだった。 

 

 

言い出すのは、いつも私。 

 

 

思ったことを何でも口にして、まるで赤ん坊のように、そのまま行動に移そうとする。 

 

そんなこと、普通の人にはできない。 

 

……いや、しようとも思わないのだ、普通なら。 

 

しない方が利口だから。 

 

その方が、何かあった時に怪我を負わなくて済むから。 

 

しっかり考えてから行動する人は、私のように思いついたことを実行しようとはしない。 

 

でも……なら私がどうして、思ったことを行動に移せるのか。 

 

 

それは、一重に友達のおかげでしかない。 

 

 

いつも私が言い出して。 

 

周りの大人達は、それを否定する。 

 

それでも彼女達だけは、いつも……どんな時だって私に付き合ってくれた。 

 

私が間違っていたら、正してくれた。 

 

私が正しかったら、その背中を後押ししてくれた。 

 

だから今、私は……私達はここにいる。 

 

 

そうだ……こんな時だからこそ。 

 

私が、言わなくちゃいけない。 

 

きっと、みんなそう思っているであろう……その言葉を。 

 

 

「……続けよう」 

 

 

私の言葉に、誰一人として驚かなかった。 

 

 

「ゆりさんが……グリグリが解散しても、私達は解散しないっ! 卒業したって、絶対に終わらせない!! だって好きだから! 誰がなんて言っても、その気持ちだけは絶対に変わらない!! ここで止めたら、こんな所で止まったら、後で絶対後悔する! やらないで後悔なんて、私は絶対したくないっ!!」 

 

 

はあはあと、息が切れた。 

 

赤ん坊の癇癪のように、言いたいことを何でも口にする。 

 

そんな私のワガママに、いつも付き合ってくれるのは。 

 

 

「うん……そうだね。香澄らしい」 

 

 

「あたしもさんせー」 

 

 

「ここで止めたら、オッチャンに顔向けできない」 

 

 

「私もっ……続けたい!」 

 

 

いつも付き合って、隣に立ってくれるのは、彼女達なんだ。 

 

 

「……卒業生、入場」 

 

 

司会の教頭先生の声と共に、静かな音楽が流れ始める。 

 

同時に、前の列の生徒達が前進し始めた。 

 

 

「何だか……ワクワクするね!」 

 

 

「緊張じゃないんだ……」 

 

 

「うん! ワクワク!」 

 

 

沙綾と話していると、次第に体育館の入り口が見えてきた。 

 

 

「卒業ライブ、頑張ろうね!」 

 

 

「まだ早いと思うけど……うん、頑張ろう」 

 

 

体育館の中は、既に保護者と在校生でいっぱいで、当たり前だけど、空いているのは前の方の卒業生の席だけだ。 

 

あっという間に入場が終わった。 

 

国歌斉唱、卒業証書授与、校長祝辞、PTA会長祝辞と進んでいく。 

 

やがて、あっちゃんがステージに立った。 

 

 

「厳しい冬の寒さの中にも、春の訪れを感じることの出来る季節となり……」 

 

 

「……おお、何だかあっちゃんが頭の良さそうな事言ってる……」 

 

 

「頭の良さそうな事って……」 

 

 

隣の席で、沙綾が苦笑した。 

 

 

「……先輩方が次の世代の先頭を切り、どんな困難も乗り越えて、グローバルにご活躍なされることを心より期待しています。……先輩方がご卒業した後のぽっかりと空いた教室。それを見ることになると思うと寂しく心細くてなりません。しかし、これまで先輩方が築き上げてきた花咲川女子学園の伝統を私たちがしっかりと引き継ぎ…………」 

 

 

そこで、不自然に声が途切れた。 

 

 

「……あっちゃん?」 

 

 

「……伝統を……わたし……たちが……」 

 

 

――あっちゃんは……口元を覆って、泣いていた。 

 

 

普段は絶対に見せないような表情。悲痛に歪んだ、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔。 

 

変わらないものは無いのだと……変わっていないのは私だけだと、そう言った時のあっちゃんの顔を思い出して。 

 

 

思わず。 

 

 

「……あっちゃん!!」 

 

 

途端に、体育館中にざわめきが起こる。 

 

 

「あっちゃん!! がんばれ!!」 

 

 

私は思わず、叫んでいた。 

 

 

「……おねーちゃん」 

 

 

あっちゃんは服の袖で、ゴシゴシと目元を擦った。 

 

再び上げたその顔は、赤く腫れていて、いつものあっちゃんらしくない。 

 

でも……今だけは、世界中で一番カッコいいよ、あっちゃん。 

 

 

「……この学園をさらに素晴らしい学び舎へと導いて行きたいと思います。先輩方の後輩としてこの学び舎でともに生活できたことを心から誇りに思います。これまで本当にありがとうございました。先輩方のご健康とご活躍を祈念して、送辞とさせていただきます。……在校生代表、戸山明日香」 

 

 

「……先輩方が次の世代の先頭を切り、どんな困難も乗り越えて、 

 

グローバルにご活躍なされることを心より期待しています。 

 

……先輩方がご卒業した後のぽっかりと空いた教室。 

 

それを見ることになると思うと寂しく心細くてなりません。 

 

しかし、これまで先輩方が築き上げてきた花咲川女子学園の伝統を、 

 

私たちがしっかりと引き継ぎ…………」 

 

 

そこで、不自然に声が途切れた。 

 

 

「……あっちゃん?」 

 

 

「……伝統を……わたし……たちが……」 

 

 

――あっちゃんは……口元を覆って、泣いていた。 

 

 

普段は絶対に見せないような表情。 

 

悲痛に歪んだ、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔。 

 

 

今朝、あっちゃんと話した時から感じていた違和感の正体は、これだったんだ。 

 

きっとあっちゃんは今朝から……ううん。きっと、もっと前から。 

 

私達三年生が卒業するだなんて、信じられなくて。 

 

 

あっちゃんが花咲川に残ると聞いた時、私はとっても嬉しかった。 

 

これからも、ずっとあっちゃんが一緒の学校にいてくれるんだって、嬉しかった。 

 

多分それは、あっちゃんも同じ。 

 

 

でも、ずっと一緒の学校だなんて、あり得ない。 

 

別れはいつか、必ず訪れる。 

 

 

私とあっちゃんは、同じ家に住んでいることは変わらないけれど。 

 

花咲川からは、いなくなるんだ。 

 

 

ずっと変わらないと思ってた。きっと、あっちゃんも。 

 

こんな瞬間が訪れるなんて……想像もしてなくて。動揺してて。 

 

 

だからあっちゃんは、今朝からずっと落ち込んでたんだ。 

 

 

あっちゃんと私は、これからも家で何度だって会える。 

 

でも、学校で制服を着て、一緒に学校の事を話せるのは……今日が最後なんだ。 

 

 

――私が、あっちゃんにしてあげられることは何だろう。 

 

 

この学校の先輩として。 

 

一足先に、旅立つ者として。 

 

一体私は……彼女に何を? 

 

 

変わらないものは無いのだと……変わっていないのは私だけだと。 

 

そう言った時のあっちゃんの顔を思い出して。 

 

 

思わず。 

 

 

「……あっちゃん!!」 

 

 

途端に、体育館中にざわめきが起こる。 

 

 

「あっちゃん!! がんばれ!!」 

 

 

私は思わず、叫んでいた。 

 

 

「……おねーちゃん」 

 

 

あっちゃんは服の袖で、ゴシゴシと目元を擦った。 

 

再び上げたその顔は、赤く腫れていて、いつものあっちゃんらしくない。 

 

 

でも……今だけは、世界中で一番カッコいいよ、あっちゃん。 

 

 

「……この学園を、さらに素晴らしい学び舎へと導いて行きたいと思います。 

 

先輩方の後輩として、この学び舎でともに生活できたことを、心から誇りに思います。 

 

これまで、本当にありがとうございました。 

 

先輩方のご健康とご活躍を祈念して、送辞とさせていただきます。 

 

……在校生代表、戸山明日香」 

 

 

「Glitter*Green」のラストライブは、 

 

今までの先輩たちのライブと、何かが違った。 

 

 

ゆりさんもだけど……他の先輩も、いつもの余裕な笑みはどこにもなくて。 

 

でも、私達はそれに全然気が付いてなかった。 

 

 

『なんか今日のグリグリ、いつもよりもっとすごくない!?』 

 

 

『そりゃあ、だって卒業ライブだよ! でも……本当にすごい。 

 

何だか、捨て身のライブって感じ!! かっこいい!!』 

 

 

『流石グリグリの卒業ライブだね!』 

 

 

みんな盛大に盛り上がって、楽しそうだった。 

 

一曲目の中盤辺りから、ゆりさんたちの表情はいつものそれに戻っていて。 

 

 

だから……誰も、疑いすらしなかったんだ。 

 

 

「私達もしよう! 卒業ライブ!」 

 

 

有咲ん家の蔵で、練習中。 

 

私は突然、みんなの前でそう言った。 

 

 

私が何かを、突拍子もなく宣言することなんて、 

 

全然珍しくないことだから、誰も驚きはしなかった。 

 

 

でも……雰囲気が、変わった。 

 

 

文化祭の壮大なライブを終えた私達は 

 

……きっと、もう学校でライブをする事なんてない。 

 

 

だからきっと、終わったら悲しいんだろうなーって……思ってたけど。 

 

全然そんなことは無くて。 

 

文化祭のライブが終わってから、誰一人それを悲しんで涙を流すメンバーはいなかった。 

 

もちろん、私達のライブを見てくれた生徒達の中にも。 

 

 

それはきっと、みんな僅かに期待しているから。 

 

 

文化祭のライブが終わったら、私達『Poppin’Party』はもう、 

 

学校のステージでライブはできない。 

 

 

――たった、一度の機会を除いて。 

 

 

「……なんで?」 

 

 

有咲が、こちらに目線を向けないまま呟く。 

 

それはまるで……無言で拒絶しているかのようだった。 

 

 

「だって、グリグリはライブしたもん!」 

 

 

私が卒業ライブをしたいと思った理由を、率直にぶつける。 

 

 

「……その次の卒業生はやらなかった」 

 

 

おたえが、いつもとは違った、少し低い声で言った。 

 

 

「うん……卒業ライブやると、何だかそれが最後みたいだからって……」 

 

 

りみりんは、舌っ足らずな声で……それでも、考えていることはきっと同じ。 

 

 

――卒業ライブをすると、何もかも終わってしまうかもしれない。 

 

『Glitter*Green』がそうだったように。 

 

 

「私達は終わらないよ!」 

 

 

きっとみんなが感じているであろうその不安を、たった一言で否定できる……わけもなく。 

 

 

「だからっ!! ……わざわざ卒業式にライブしなくてもいいだろ。 

 

一日くらい、ずらしてもいいんじゃねーの?」 

 

 

有咲の表情はどこか必死で。当たり前の事を言う。 

 

 

それでも……その日にやらなくちゃダメなんだ。 

 

 

「ううん、卒業式にやりたい」 

 

 

「……どうしてそんなに卒業ライブにこだわるの?」 

 

 

沙綾が、優しく聞いた。 

 

 

「あの日……グリグリの卒業ライブの日。私、すごく感動した」 

 

 

いつかの、ライブハウスで見た時よりも。 

 

 

「初めてグリグリのライブを見た時と同じくらい……ううん、もっとすごかった。 

 

すごく……感動したの。みんなもそう思ったでしょ?  

 

みんなも、同じように輝きたいって、やり切りたいって、 

 

そう……思ったでしょ?」 

 

 

4人とも、黙ったまま。 

 

その沈黙は肯定なのか……否定なのか。 

 

私には、わからない。 

 

 

「音楽って、こんなにも人を感動させられるんだって、 

 

私に教えてくれるのは……いつも『Glitter*Green』だったの」 

 

 

「……だから?」 

 

 

有咲は、今度は私の目を見て言った。 

 

 

「だから、なんでわざわざ卒業式のライブにこだわるんだよ?  

 

……グリグリみたいに、それで終わらせたくないだろっ!?」 

 

 

「……でも、逃げたくない!」 

 

 

思ったことを、そのままの言葉で。 

 

 

「卒業式は、みんなの最後の日。 

 

そんな日だからこそ、私はライブをしたい!!」 

 

 

続いた無言……その沈黙を破ったのは、やっぱり沙綾。 

 

 

「……香澄って、たまに率直過ぎて、何が言いたいのかよく分からない事あるよね」 

 

 

苦笑して、ポニーテールを揺らしながら言った。 

 

 

「そうかも!」 

 

 

「わけわかんねえよ……」 

 

 

有咲は、あきれたようにため息をつく。 

 

その時、おたえが「でも」と口を開いた。 

 

 

「わたしも……卒業ライブしたい!」 

 

 

何かを決意するような、何かを振り切るような、そんな言い方。 

 

 

「なんか、やらなきゃいけない気がするの。わたし達には、必要な気がする」 

 

 

「何だよそれ……抽象的っつーか、そんなんじゃわかんねえ」 

 

 

まだ、決断しきれない有咲。 

 

きっと、みんなよりも少し大人な有咲には、自分を納得させるための言葉が必要で。 

 

自分の感情をうまく言葉にできない私には、彼女を説得するのは難しくて。 

 

 

そんな時……沙綾は。 

 

 

「やってみようよ、有咲」 

 

 

「沙綾まで、何言ってんだよ」 

 

 

「卒業ライブしたから解散するだなんて、そんなの分からないじゃん? 

 

それに……きっと私達は解散しない」 

 

 

「……何でそんな事が言えんだよ?」 

 

 

沙綾は私の顔を見て、「フフッ」と笑う。 

 

 

「きっと、香澄がそうさせない」 

 

 

「わっ……私!?」 

 

 

「うん。だって香澄、いつもそうじゃん」 

 

 

「私も、初めて香澄ちゃんに誘われた時はびっくりしたあ」 

 

 

口元に手を当てて、肩を上下させる沙綾とりみりん。 

 

 

「……いつも決断しきれない私達を、無理やり連れていく」 

 

 

有咲は黙ったまま聞いている。 

 

 

「私達のためらいを振り切って、すごい強引に」 

 

 

「私……強引かなあ?」 

 

 

「自覚なかったんだ……香澄、いつもすごい強引だよ」 

 

 

「そ、そんなあ~」 

 

 

「……でも、だからきっと。私達はいつまでも続けていける。……そんな気がする」 

 

 

「香澄ちゃんがいれば、きっと大丈夫」 

 

 

どういうわけか、私は沙綾とりみりんに信頼されていた。 

 

 

私は、自分でいうのもなんだけど、他人に信頼されるほど大人じゃないと思う。 

 

あとで思い返すと、いつも自分勝手だったなあと反省するし、 

 

そのくせ次も同じことをしてしまう。 

 

私はただ、自分の思った通りに行動するだけ。 

 

後で後悔なんて……絶対にしたくないから。 

 

 

「……そんなの信用できねえよ。だって香澄、何も考えないで行動するじゃん。 

 

いつもあたしらが振り回されんだろ?」 

 

 

「それで後悔した事なんて、一度だってあった?」 

 

 

沙綾のその一言に、有咲はグッと息を詰まらせる。 

 

 

「……なかった……けど」 

 

 

それは本当に小さな呟きで。でも……確かに聞こえた。 

 

 

「私達なら大丈夫。解散なんて、絶対しないよ……それにさ」 

 

 

一人一人、見回した沙綾は。 

 

 

「したいじゃん、卒業ライブ」 

 

 

とびっきりの笑顔を見せた。 

 

その表情は、まるで一輪の花が咲いたようで……思わず私達は、見とれてしまう。 

 

 

そんな沙綾を見て……有咲は。 

 

 

「っ……あーもう、分かったよ!!」 

 

 

「フフ……有咲ならそういうと思ってた」 

 

 

何だか甘ったるい声で、沙綾が囁いた。 

 

 

「こっ……このバカあっ!!」 

 

 

有咲は顔を真っ赤にして、そっぽを向いてしまう。 

 

きっとそれは、有咲の賛成の証だ。 

 

 

「私達も、グリグリみたいに人の心を動かすようなライブがしたい! だから……」 

 

 

「うん、わたしも」 

 

 

「私も、香澄ちゃんと同じ」 

 

 

おたえとりみりんが、それに続いた。 

 

沙綾と有咲も、無言の頷きを返す。 

 

 

「だから……卒業ライブをしようっ!!」 

 

 

それはきっと、私達には大切な事で……必要な事だから。 

 

 

解散のための、終わりのライブじゃない。 

 

これからも、ずっとずっと続けていく。 

 

『Poppin’Party』は、いつまでも終わらない。 

 

それを、みんなに示すために。 

 

私達が、これからも続けていくために。 

 

 

「みんなー! 今日は、私達のライブに来てくれてありがとうっ!!」 

 

 

私の声に続いて、生徒達や大人達までもが歓声を返した。 

 

開始直後から、グリグリを見習って1曲目を披露した私達5人は、既に息が上がっていて……でも、テンションはMAXだ。 

 

 

堅苦しい卒業式は終わって、今から始まるは私達『Poppin'Party』の卒業ライブ!! みんな、盛り上がってる~!?」 

 

 

瞬間、これ以上ないくらいに、ワーッとざわめきが巻き起こる。 

 

そこかしこから、「香澄ー!」とメンバーの名前を呼ぶ声や、「ポピパー!」とバンド名を叫ぶ声が聞こえてきて。 

 

会場、もとい体育館は、過去最高の盛り上がりを見せている。 

 

 

昔の私……1年生の私は、本番になるとよく分からないことを言ってしまって、1人で焦っていた。 

 

その時からは考えられないほどに、今の私は落ち着いていた。 

 

それは、単純に私達が経験を積んだからかもしれないけど。 

 

 

「おねーちゃーん!!」 

 

 

クラスメイトや、友達……あっちゃんがいるからなのかもしれない。 

 

 

見てて、あっちゃん。私も、頑張るから。 

 

 

「きっとみんな、紹介しなくても私達の事は知ってると思うけど! メンバー紹介します!!」 

 

 

左手を、彼女の下へ伸ばす。 

 

 

「青いギターのおたえ!!」 

 

 

迫力満点のギターソロ。おたえの、海のようにどこまでも広がるマイペースな性格を、そのまま再現したかのような音色だ。 

 

同じギターなのに、私が出す音とおたえの音は、全く違う楽器を使っているかのようで。私はいつも嫉妬してしまう。 

 

 

「ベースのりみりん!!」 

 

 

子犬のように愛らしい見た目からは全然想像できない、お腹に直接響いてくる重低音。 

 

演奏が上手くなっているのは当たり前。 

 

それだけでなく、幾度となく経験したライブによって培われたいざという時の強靭なメンタルが、りみりんの力強い演奏を支えている。 

 

 

「あっちが有咲!!」 

 

 

瞬間、『キーボードッ!!』とでも言いたげに、観客を上下左右に振り回すジェットコースターのような演奏。 

 

つい私は怯んでしまい、『ごめーん』と視線で返す。『ったく』と聞こえてきそうな、大きなため息。 

 

 

気を取り直して。 

 

 

「ドラムのー……沙綾っ!!」 

 

 

パワーのある何種もの音が重なり合う。 

 

時折見せるスティックを豪快に回すパフォーマンスが、沙綾が奥底に秘めるヤンチャぶりを表している。 

 

女の子とは思えない、猛然とした演奏だ。 

 

全てが吹っ切れた沙綾の、迷いのない自由奔放な姿は、同姓の私でも惹かれてしまうくらいに魅力的だ。 

 

 

――私も、負けてられないな。 

 

 

翻って、有咲から譲ってもらった大好きな赤いギターを豪快に鳴らす。 

 

 

「ランダムスターのー……戸山香澄っ!!」 

 

 

元気いっぱいの笑顔で。 

 

 

「私達、5人で……『Poppin’Party』です!!」

 

 

私がみんなに、「香澄は変わらないね」と言われ始めたのは、いつからだっただろう。 

 

 

最初、私はそれを嫌だとは感じていなかった。 

 

寧ろ、自分自身のことをどうこう言ってくれるってだけで、何故だか嬉しかった気がする。 

 

 

でも……時間が経つにつれて、それがどういう意味なのかが理解できた。 

 

 

みんな、ライブを重ねて、歳を重ねて、大人になっている。 

 

みんな、後輩に慕われて、いつの間にかファンも大勢出来て、頼もしくなっている。 

 

それなのに……私だけ何も変わってない。 

 

 

私を慕ってくれる後輩はいる。でも、私が頼られたことは、一度も無くて。 

 

 

ギターはおたえ。ベースはりみ。キーボードは有咲。ドラムは沙綾。 

 

みんなそれぞれ得意分野があって、でもみんな歌唱力もあって。 

 

私が特別優れているものなんて、何一つない。 

 

それは、私が誰にも頼られないという事実が証明している。 

 

 

それでも、私は私。私なりに頑張ればいい。 

 

ずっとそう思ってやってきたのに……。 

 

 

「香澄は変わらないね」 

 

 

その一言が、私の心をざわつかせる。 

 

 

 

私、変わってないの? 

 

あの時から、成長してないの? 

 

一歩も……前に進めてないの? 

 

 

待ってよ……置いていかないで。 

 

 

私を……一人にしないで。 

 

 

「はぁ……はぁ……みんな! ありがとう!!」 

 

 

私達に与えられた時間は、卒業式が終わった午後の、たった1時間。 

 

だから……次の曲で、このライブは終わりだ。 

 

 

「私達の卒業ライブ、みんな楽しんでるー!?」 

 

 

そこかしこから、「サイコー!!」「ポピパ―!!」と声援が飛んできて。 

 

 

いつまでも、この最高の時間を味わいたい。 

 

みんなと、バンドをやっていたい。 

 

終わってほしくなんかない。 

 

 

でも……時間は無情にも過ぎていくばかりで。 

 

 

「……残念だけど、次の曲が、最後です」 

 

 

その瞬間、盛り上がっていたはずの体育館が静まり返る。 

 

まるで、溜まっていた水が、栓を抜いたことで一瞬で消えてしまったかのように。 

 

 

「次の曲が最後……でも、だからこそ! これまで以上に全力を尽くします!」 

 

 

――次の瞬間。 

 

 

「終わらないでっ!!」 

 

 

誰かの、悲鳴のような叫び声が、ステージに向かって轟いた。 

 

次の言葉を続けようとしたけど、その声にびっくりして、息を飲んだ。 

 

 

「お願い……終わらないで、ポピパ」 

 

 

今にも張り裂けそうな気持ちを、どうにか抑えているような、そんな涙ぐんだ声だった。 

 

この大勢の観客の中では、誰がその声を発したのかは分からない。 

 

 

でも……彼女に続いて、多くの声が飛び交ってくる。 

 

 

「終わっちゃ嫌だよ!」「続けるんだよね!?」「これが最後なんて言わないで!!」 

  

 

みんなの思いが、伝わってくる。 

 

 

……当たり前だ。 

 

 

『Poppin’Party』は、私達だけで作り上げたバンドじゃない。 

 

私達がここまでやってこれたのは、私達5人だけの力では決してないのだ。 

 

 

私達をずっと応援してくれたクラスメイトがいて。 

 

ずっと支えてくれた両親がいて。 

 

この場所、この時間を提供してくれた先生がいて。 

 

今はもう、無くなってしまったけれど……私達の目標だった『SPASE』があって。 

 

 

みんなのおかげで、私達はここに立っている。 

 

みんなに支えられて、ここに立つことができている。 

 

 

だから、『Poppin’Party』は、みんなのバンドなんだ。 

 

 

「……終わらないよ」 

 

 

自分でも小さな声だと思ったけど、マイクを通じて、確かにそれはみんなに届いた。 

 

途端に、私の声を……私達5人の答えを聞くために、体育館中が静寂に包まれた。 

 

 

「私達『Poppin’Party』は、決して終わらない! 終わらせない!! 卒業ライブが終わっても、絶対に続けます!! だから……」 

 

 

私は、メンバーの4人の顔を見る。 

 

少しだけ大人びた彼女達の表情は……みんなの答えは、同じだ。 

 

 

「だからこれからも……私達の応援を、どうかよろしくお願いします!!」 

 

 

一瞬の間。 

 

 

そして……歓声と共に、拍手が巻き起こった。 

 

 

――それが、みんなの答え。 

 

 

「……では、最後の曲です! この曲は、私達全員で作った、私達の曲です! それでは、聴いてください!!」 

 

 

 

沙綾の、スティックを打ち付ける音を皮切りに、一斉に楽器を鳴らす。音楽を奏でる。 

 

 

この曲は、みんなで協力して作った曲。 

 

みんなの思いが込められた曲。 

 

 

高校を卒業しても、卒業ライブが終わっても、私達は決して終わらない。 

 

 

辛いこともあったけど。泣いたこともあったけど。 

 

 

ここで止めようとは、誰も言わなかった。 

 

 

みんなに支えられて。みんなに助けられて。みんなが応援してくれた。 

 

だから私達は、ここにいる。 

 

 

この思いを、今私達が感じている思いを、みんなに届けたい。 

 

 

みんなのおかげで、ここまで来れた。 

 

そして、それはこれまでもこれからも変わらない。 

 

 

私達が、キラキラと輝くために。 

 

これからも、ずっとずっと続けていくために。 

 

 

それを、みんなに伝えるために。 

 

 

最後の文化祭のライブが終わった、その直後。 

 

クラスメイトが、ライブを終えた私達に声をかけてきた。 

 

 

「今日のライブ、いつも通り最高だったよ!」 

 

 

「うん! ありがとう!!」 

 

 

いつも通りの、すっかり慣れてしまったこのやり取りも。 

 

やっぱり「ありがとう」の一言で、嬉しくなるんだ。 

 

 

「やっぱりポピパは最高だよ! いつまでもこのままでいてね!」 

 

 

いつまでも……このまま? 

 

 

「う、うん。頑張る!」 

 

 

変わらなくて……いいのかな? 

 

私、自分が変わらないとダメってずっと思ってたのに。 

 

 

もう……わけわかんないよ。 

 

 

「かーすーみ」 

 

 

「沙綾? どうしたの?」 

 

 

「香澄はさ……いいんだよ、そのままで」 

 

 

「……え?」 

 

 

「1年の時の……バンド結成した時の事、覚えてる?」 

 

 

「うん、覚えてるよ」 

 

 

突然、何を言い出すんだろう。 

 

そんなの、覚えていて当たり前だ。 

 

 

それがなかったら、今の私達はここにいなくて。 

 

だから私達にとっては、大きな分岐点。 

 

忘れるわけない。忘れていいはずがない。 

 

 

「香澄は、あの時のままでいいんだよ」 

 

 

「あの時の……まま?」 

 

 

「いつだって強引で、迷ってる私達を無理やり連れていく」 

 

 

それだけ聞けば、迷惑もいいところだ。 

 

本当は嫌だったんじゃないかって……今でも引っかかってる。 

 

 

「でもね……私達みんな、本当はそうしたかったんだよ」 

 

 

沙綾は、目を伏して。 

 

 

「……でも、できなかった。 

 

 周りに反対されるんじゃないかって、周りが誰も応援してくれないんじゃないかって、躊躇ってたの。 

 

 自分でも、何が本当にやりたいことなのか分からない……。 

 

 そんな私達を、ここまで連れてきてくれたのが香澄なんだよ」 

 

 

「……ホント?」 

 

 

私……みんなの力になってた? 

 

みんなの足を引っ張ってなかった? 

 

みんな……本当は、私とバンド組むの、嫌じゃなかった? 

 

 

「香澄は今のままでいい。今の香澄だから、私達は香澄とバンド組んでるんだから」 

 

 

胸の奥で引っかかっていた何かが取れたような……そんな気がした。 

 

 

本当は変わるべきだったんじゃないかって。 

 

みんなに迷惑かけっぱなしだったんじゃないかって。 

 

ずっと不安だった。 

 

 

でも、本当は……ちゃんと力になれてたんだ、私。 

 

 

「……これからも、私とバンド組んでくれる?」 

 

 

沙綾は、苦笑して。 

 

 

「もちろん!」 

 

 

最高の笑顔を見せてくれた。 

 

 

私達はきっと終わらない。 

 

みんなと一緒に、これからも走っていくんだ。 

 

 

その気持ち、伝わったかな? 

 

私達の、奮える熱い気持ち……伝えられたかな? 

 

 

――そんなの、聞くまでもない事だ。 

 

 

演奏が終わった瞬間……体育館中、全てが歓声に包まれた。 

 

 

「……みんな、今まで応援してくれて……本当にありがとう!!」 

 

 

――そして。 

 

 

「これが終わりじゃありませんっ!!」 

 

 

これが、私達の決意。 

 

 

「この卒業ライブは、私達の終わりじゃありませんっ!!」 

 

 

『Glitter*Green』が終わってしまったのは、仕方がないことで。 

 

だからって、私達まで終わってしまうわけじゃない。 

 

 

別れは、いつだって突然に訪れる。 

 

 

でも……それが全てではないんだ。 

 

 

「私達は、また走り出します!! これからも、ずっと!! だから……」 

 

 

だから、この卒業ライブは。 

 

 

「……これは私達の、始まりのライブです!!」 

 

 

 

 

「だあ~疲れたあ~!」 

 

 

「もう、みっともないよ、有咲」 

 

 

短くも充実した卒業ライブを終えた私達は、教室に荷物を取りに戻って来ていた。 

 

有咲はクラスが違うけど、更衣室兼控室として、このがらんとした教室を使っていた。 

 

 

教室に入った途端、汗でびっしょりのTシャツを脱いだ有咲。 

 

一応下にはキャミソールを着ているけれど……男子には絶対に見せられない姿だ。 

 

まあこの学園には、男子なんて一人もいないんだけど。 

 

 

「女の子なんだから、もっと気を遣わないと」 

 

 

「いいだろぉ~、どうせ女しかいねーんだからさ」 

 

 

「いいのかなあ、そんなこと言ってー?」 

 

 

少し悪い顔をした沙綾は、少しずつ有咲との距離を詰めていく。 

 

 

「へ? 沙綾、お前……ちょっと何する気だよ、両手そんなモゾモゾさせて……」 

 

 

「フッフッフ」 

 

 

「やっやめ……ひゃっ!!」 

 

 

「こちょこちょこちょこちょ!!」 

 

 

沙綾が、有咲を思いっきりくすぐった。 

 

 

「ばっ……か……ぁ……やめろお~~~!!」 

 

 

「フフッ……ありゃりゃ、ちょっとやり過ぎた?」 

 

 

ゼエゼエと真っ赤になって息を切らす有咲を見て、沙綾が「てへっ」と舌を出す。 

 

 

「こんのバカぁ!!」 

 

 

「あの二人、夫婦漫才でもやってるみたい」 

 

 

「有咲ちゃん可愛い」 

 

 

おたえとりみりんが、天然なのかマイペースなのか、机に寄りかかって笑いあった。 

 

 

「そこっ! 夫婦とか言ってんじゃねえ!!」 

 

 

「え? 違うの?」 

 

 

おたえが、当たり前の事を聞かれたかのように問い返した。 

 

 

「ちっがーう!!」 

 

 

両手を突き出して全否定。対する沙綾は、いつもの余裕の笑みを浮かべている。 

 

 

何だか、いつも通りのやり取りで。 

 

ああ、変わらないなって、そう思って。 

 

 

――このやり取りも……今日で終わりなんだ。 

 

 

ふとよぎった、その瞬間。 

 

 

「……香澄……ちゃん?」 

 

 

「香澄……泣いてるの?」 

 

 

りみりんとおたえが、私の顔をじっと見つめてきた。 

 

 

「泣いて……る?」 

 

 

頬を流れる、一筋の雫。 

 

それはやがて、顎を伝って地面に落ちていって。 

 

余りにも小さくて、本当は聞こえるはずないのに……涙の落ちる音が、微かに聞こえた。 

 

 

「あれ……? おかしいな……。私、泣くつもりなんかなかったのに」 

 

 

「香澄……」 

 

 

沙綾が、私を見て。 

 

有咲は、じっと床を見つめたまま。 

 

 

「だって全然泣くようなとこじゃ……どうして、私……」 

 

 

次々と溢れ出す涙は、止まる気配も無く、ただただ流れ続けて。 

 

床に、涙の水たまりができていく。 

 

 

「分かんない……わかんないよ……だって、終わらないって決めた……ばかりなのに……」 

 

 

何度も何度も拭っても、次から次へと、決壊が破れたかのように。 

 

 

両手で顔を覆った私を……おたえとりみりんが、ギュッと抱き締めた。 

 

 

「いいんだよ、香澄ちゃん。今は泣いても、いいんだよ。だって……」 

 

 

りみりんの顔を見上げると、彼女も、目尻から涙が流れていて。 

 

 

「だって……この学校で過ごす時間は、これが最後なんだから……」 

 

 

「――っ」 

 

 

そうだ……いくら私達が続けると言ったって、ここでずっと過ごせるわけではない。 

 

 

今日、確かに終わったのだ。 

 

 

――高校生の私達は、今日で全てが終わったんだ。 

 

 

「……うっ……うああ……」 

 

 

みっともなく嗚咽を上げて、私は泣き出した。 

 

どうにもならない事実を前に、だだをこねる赤ん坊のように。 

 

 

気が付くと、りみりんもおたえも、私を抱きしめていて。 

 

二人とも、泣いていて。 

 

 

有咲も、沙綾も。 

 

両膝を抱え込んで、頭を埋める有咲を、悲痛な表情の沙綾が抱き締める。 

 

 

教室には、私達5人の声だけがこだましていた。 

 

 

この日……私達は。 

 

決して戻れない扉の向こうへと、足を踏み出したんだ。 

 

 

ひとしきり泣いた私達は、クラスのみんなと挨拶を交わして、ある場所へと向かった。 

 

 

それは、ポピパのみんなに最も馴染み深い場所。 

 

みんなの、ある意味一番の思い出が詰まった場所。 

 

そして……きっと、これからもずっとお世話になるであろう場所。 

 

 

「クライブ! 始めよう!!」 

 

 

有咲ん家の、蔵でのライブ。略して『クライブ』。 

 

名前を付けたのは、おたえだったっけ。 

 

 

「おいおい、勘弁してくれ……さっきライブしたばっかなんだけど」 

 

 

「あはは……香澄ってホント元気だねー」 

 

 

私の提案に、有咲と沙綾が苦笑する。 

 

 

「いいね、クライブ! わたしもまだ、弾き足りない!!」 

 

 

「私もー! まだまだ弾けるよ!」 

 

 

おたえに続いて、りみりんがあっけらかんと言い放つ。 

 

二人とも、まだまだ体力が有り余っているとでも言いたげだ。 

 

 

「マジか……バケモンかよこいつら……」 

 

 

「とか言ってて、有咲もさっきからソワソワしっぱなしじゃない?」 

 

 

「うっ……うるせー! そんなんじゃねーし!!」 

 

 

有咲と沙綾のやり取りは、いつ見ても面白い。 

 

 

私は、お気に入りのランダムスターを用意して。 

 

みんなも、それぞれ自分の楽器を構えた。 

 

 

このクライブは、卒業ライブが終わったらやろうって、前から決めていたライブだ。 

 

 

観客は、私達自身。 

 

 

私達が、この3年間でちゃんと成長したんだって、自分自身の心に刻み付けるために。 

 

成長した証を胸に、これからもまた走り続けていくために。 

 

 

「じゃあ、いつもの!!」 

 

 

「フフッ、香澄らしいね」 

 

 

「はあ……仕方ねーなー」 

 

 

沙綾が苦笑して。 

 

有咲が、ため息をつく。 

 

 

「いいね、テンション上がってきた!」 

 

 

「私も、ワクワクしてきちゃった」 

 

 

おたえがはしゃいで。 

 

りみりんが、舌っ足らずな声で呟く。 

 

 

私達は、こうしていつまでも続いていく。 

 

 

終わりのないものなんて、決してないけれど。 

 

 

その時が訪れるまで、キラキラと一生懸命に輝いていくんだ。 

 

 

「いくよー……ポピパ!ピポパ!ポピパパ!ピポパー!」

 

 

 

 

 

 

元スレ

https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1493290279/

日菜「おねーちゃん、ポテト!」 紗夜「はいはい」リサ「……」【バンドリss/アニメss】

 

─ファーストフード店内─ 

 

紗夜「はぁ? 今井さん、急に何を言ってるんですか?」 

 

日菜「えー? そーかなー?」 

 

リサ「うん、絶対甘やかし過ぎだって」 

 

紗夜「今井さん、確かに日菜は私の双子の妹です」 

 

紗夜「しかし家族だからといって、私が簡単に人を甘やかす人間だと、そう言うんですか?」 

 

リサ「いや、紗夜が自分にも他人にも厳しいのは知ってるよ?」 

 

紗夜「では何故そんな馬鹿げた事を」 

 

リサ「いやだってさ……」 

 

日菜「おねーちゃん、ポテト!」 

 

紗夜「はいはい」スッ 

 

日菜「あー……んっ! んー♪」

 

リサ「ほら」 

 

紗夜「何ですか?」 

 

リサ「何いまの」 

 

紗夜「日菜にポテトを食べさせただけですが何か?」 

 

リサ「ほら」 

 

紗夜「だから何ですか?」

 

リサ「甘やかしてんじゃん」 

 

紗夜「甘やかしてなんていません」 

 

リサ「じゃあ何いまの?」 

 

紗夜「可愛がっているだけです」 

 

リサ「可愛がっているだけ?」 

 

紗夜「はい、可愛がっているだけです」 

 

リサ「……」 

 

紗夜「……」 

 

リサ「そっかぁ」 

 

紗夜「はい」

 

リサ「……いやいや待ってよ、おかしいって」 

 

紗夜「何もおかしくなんてありません」 

 

リサ「……わかった。じゃあ何で最近、日菜をそんな可愛がってるの?」 

 

紗夜「……今まで私は、日菜の才能に嫉妬し、日菜に随分と冷たくあたっていました……」 

 

紗夜「ですが今は、日菜と正面から向き合い、姉として、今まで冷たくしていた分を可愛がろうと……」 

 

紗夜「そう、決めたんです」 

 

日菜「おねーちゃん……」 

 

リサ「……うーん……そっかぁ……いやでも……」 

 

紗夜「何ですか? まだ何か不満なんですか?」 

 

リサ「いや……やっぱりそれにしてもさー……」 

 

日菜「んー♪ この新作ハンバーガーおいしー♪」モッキュモッキュ 

 

紗夜「……もう、何やってるのよ……口の周りにソースついてるわよ」フキフキ 

 

日菜「んぶぶ」

 

リサ「ほら」 

 

紗夜「何ですか?」 

 

リサ「何いまの」 

 

紗夜「日菜の口の周りを拭いただけですが何か?」 

 

リサ「ほら」 

 

紗夜「だから何ですか?」

 

リサ「甘やかしてんじゃん」 

 

紗夜「甘やかしてなんていません」 

 

リサ「じゃあ何いまの?」 

 

紗夜「可愛がっているだけです」 

 

リサ「可愛がっているだけ?」 

 

紗夜「はい、可愛がっているだけです」 

 

リサ「……」 

 

紗夜「……」 

 

リサ「そっかぁ」 

 

紗夜「はい」

 

リサ「いやだからおかしいって」 

 

紗夜「ですから、何もおかしくなんてありません」 

 

リサ「何でそんな頑ななの……」 

 

紗夜「今井さんには言われたくありません」 

 

リサ「いやいやいや……」 

 

日菜「おねーちゃん……この椅子、クッション潰れててお尻痛くなってきちゃった……」 

 

紗夜「あら、そうなの? じゃあ、ほら。いらっしゃい」スッ 

 

日菜「わー! おねーちゃん、ありがとー♪」ポスッ

 

リサ「ほら」 

 

紗夜「何ですか?」 

 

リサ「何いまの」 

 

紗夜「日菜を膝の上に座らせただけですが何か?」 

 

リサ「ほら」 

 

紗夜「だから何ですか?」

 

リサ「甘やかしてんじゃん」 

 

紗夜「甘やかしてなんていません」 

 

リサ「じゃあ何いまの?」 

 

紗夜「可愛がっているだけです」 

 

リサ「可愛がっているだけ?」 

 

紗夜「はい、可愛がっているだけです」 

 

リサ「……」 

 

紗夜「……」 

 

リサ「そっかぁ」 

 

紗夜「はい」

 

リサ「おかしいおかしいおかしい」 

 

紗夜「何もおかしくなどありません」 

 

リサ「いやいやいや待って待って」 

 

紗夜「はぁ……では今井さんはどうなんですか?」 

 

リサ「へっ? アタシ? 何でアタシ?」 

 

紗夜「自覚がないんですか……」 

 

リサ「いやいや、意味わかんないって……」 

 

紗夜「では今井さんは、湊さんといま何をしているんですか?」 

 

リサ「友希那と? 何をしてるかって……」 

 

友希那「リサ……ごめんなさい、ちょっとお手洗いに……」 

 

リサ「ん? ああ、ゴメンね友希那。はい、行ってらっしゃい」スルスル 

 

友希那「ん……行ってくるわ」ガタッ スタスタ

 

紗夜「ほら」 

 

リサ「何が?」 

 

紗夜「何ですかいまのは?」 

 

リサ「お店の暖房の効きが悪くて寒かったから、友希那とマフラー巻き合ってただけだけど?」 

 

紗夜「ほら」 

 

リサ「だから何?」

 

紗夜「甘やかしてませんか?」 

 

リサ「甘やかしてなんかないよ」 

 

紗夜「じゃあ何ですかいまのは?」 

 

リサ「仲良くしてるだけだよ」 

 

紗夜「仲良くしているだけ?」 

 

リサ「そっ、仲良くしているだけ」 

 

紗夜「……」 

 

リサ「……」 

 

紗夜「そうですか」 

 

リサ「うん」

 

友希那「リサ、お待たせ……皆食べ終わったのなら、そろそろ出るわよ……」スタスタ 

 

リサ「ん、そうだね。そろそろ出よっか」ガタッ 

 

紗夜「ほら日菜、行くわよ」ガタッ 

 

日菜「あっ、おねーちゃん待って! 手、繋いで帰ろ?」ガタッ 

 

紗夜「はいはい」ギュッ 

 

日菜「えへへー♪」ギュッ 

 

リサ「ほら友希那、外もっと寒いからマフラーちゃんと巻かないと」スルスル 

 

友希那「ん……そうね……」 

 

 

 

 スタスタ トテトテ 

 

 アリガトウゴザイマシター 

 

 

 

蘭「……何あれ……」 

 

つぐみ「もーっ! 蘭ちゃん! 私以外の女の子見ちゃだめ!」 

 

蘭「あぁ、ゴメンねつぐみ……それにしてもRoseliaの人達、馴れ合いはしないみたいこと言ってたけど、ベタベタし過ぎでしょ……」 

 

つぐみ「もー、蘭ちゃん! 私と二人きりの時は私以外の事は考えちゃダメって言ってるでしょ!」 

 

蘭「あ、ゴメンね……」 

 

つぐみ「ほら蘭ちゃん、あーん!」 

 

蘭「あ……ん」 

 

つぐみ「どう、蘭ちゃん? おいしい?」 

 

蘭「当たり前でしょ。つぐみにあーんしてもらえるなら、グリーンピースだって美味しく食べられるよ」 

 

つぐみ「本当? 嬉しいなぁ……えへへ」 

 

蘭「ふふっ……」 

 

 

 

 

 

 

元スレ

https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1517056315

藤原「ミコちゃんのえっちー」 伊井野「っ~~~~~~~~//」【かぐや様は告らせたいss/アニメss】

 

石上「藤原先輩の……存在感が消えた……?」

 

藤原「え!?」

 

藤原「!?!?!?!!?」 

 

石上「いえ、最近の本誌や単行本を読んで思っていたんですが、藤原先輩って会長の特訓回と伊井野を弄る以外ではほぼ存在感出してませんよね?」 

 

藤原「え? ど、どゆこと?」 

 

石上「藤原先輩ってシリアス回だと扱いにくいし、仕方ありませんよね」 

 

白銀「まぁ……そう言われれば」 

 

藤原「……か」 

 

白銀「?」 

 

藤原「会長のせいですよ!」 

 

白銀「え?」 

 

藤原「そもそも会長がポンコツのせいで、いつの間にか私が聖母みたいな立ち位置になり、扱いにくいキャラ扱いされちゃうんです!」 

 

白銀「……」 

 

石上「……」

 

藤原「こうなったらシリアルを探してきます! 私がどんなに素晴らしいシリアルキャラだったのかを皆さんに思い出させてあげます!」 

 

白銀「……」 

 

石上「……ぷっ」 

 

 

藤原「こら! そこ! 笑いましたね!!!!」 

 

石上「だ、だってシリアスをシリアルて……藤原先輩がシリアルって……ぷぷっ」 

 

藤原「くぅーーー!!」バンバン 

 

 

藤原「こうなったら二人とも行きますよ! 二人に私の本物のシリアスを見せてあげます!」 

 

白銀「すまんが俺は生徒会の仕事があるから。いやー生徒会は忙しいなー」 

 

石上「僕もこの仕事を片付けないと。本当に生徒会って忙しいですよねー」 

 

藤原「こら男子ども! 今日は暇だって事は同じ生徒会メンバーの私が知ってるんですからね!」

 

 

  *  *  * 

 

 

藤原「あっちからシリアスの気配がします!」 

 

石上「そんな気配するわけないだろ」ボソッ 

 

白銀「やめとけ。後が面倒だから今日は好きにさせてやろうぜ」ボソボソ 

 

 

スタスタ 

 

 

藤原「くんくん! こっちです! 近いですよ! すぐ近くにシリアスの臭いが!」 

 

石上「気配なのか臭いか、はっきりしろよ」ボソッ 

 

白銀「まぁまぁまぁまぁ」ボソボソ 

 

 

藤原「ここです!」 

 

白銀「って風紀委員室!?」 

 

石上「伊井野を弄る気まんまんじゃねーか!」 

 

藤原「まったくあなたたちは『シリアス』の事を何もわかってませんね!?」キリッ 

 

白銀「え!?」 

 

石上「さっきまで『シリアル』って言われた人の言葉とは思えませんね」 

 

藤原「もうーーーー!!! いいから私の話を聞いて!」 

 

石上「はいはい」 

 

 

 

藤原「コホン。では、気を取り直して『シリアス』をwikiで調べてみてください!」 

 

石上「えーと、『きわめてまじめなさま』」 

 

藤原「そうこの部屋は風紀委員室! きわめて真面目な部屋です!」 

 

藤原「どうです!? 私の事を見直しましたか!?」 

 

白銀「す、すごいなー」 

 

藤原「えへんっ」 

 

石上「えーと、一つ質問いいですか?」 

 

藤原「どうぞ」 

 

石上「きわめてまじめなさまの『さま』って意味知ってます?」 

 

藤原「え?」 

 

白銀「……」 

 

石上「これって『こと』なんですよね。だからシリアスの意味って『極めて真面目な事』なんですよ」 

 

藤原「で、でも、風紀委員室だから真面目な事が行われてるはずです!」

 

石上「……まぁ、そう言われると」 

 

藤原「扉を開けて確認しましょう!!」 

 

ガララララッ!!! 

 

伊井野「!!???!!!!!??」 

 

藤原「あれ? ミコちゃんだけですか?」 

 

伊井野「ち、違うんです! これは違うんです!」 

 

 

藤原「えー、何が違うんですか……ってこの本は!!」 

 

石上(エ〇本……) 

 

白銀(いい表紙だ)

 

伊井野「だ、男子が本を隠し持っていたから没収しただけで! そして風紀委員として中身を確認しただけで!」 

 

藤原「そうですよねー。風紀委員として中身の確認は仕方のない事ですよねー」ニコー 

 

伊井野「そ、そうなんですよ! これは仕方のない事でして! まったく男子め! こんな本を私に確認させるなんて!」 

 

藤原「んふふ~♪」ニマニマ 

 

伊井野「え? ど、どうしたんですか?」 

 

藤原「ミコちゃんのえっちー」 

 

伊井野「っ~~~~~~~~//」カァー 

 

 

藤原「さあ行きますよ。ミコちゃんの至福の時間を邪魔しちゃいけません」 

 

伊井野「至福!!?!?!?!?!?」 

 

白銀「お、おう。邪魔したな」 

 

石上「あまり気にすんなよ。あの人、生き方が適当だから」 

 

伊井野「藤原先輩を悪く言うのはやめて!」 

 

伊井野「今回の事は藤原先輩からの忠告なの!」 

 

伊井野「私がカギをかけずに本をチェックしてたから! 『もし男子にこんな所を見られたら酷い事される』っていう藤原先輩からの優しい忠告なのよ!」 

 

石上「いや男子に見つかった時以上に酷い仕打ちを受けたと思うぞ。あと男子に見られてもお前が妄想しているような展開にはならないからな」

 

 

  *  *  * 

 

 

藤原「あー楽しかった。さあ次のシリアスを探しに行きますよ」 

 

石上「ひでえ」 

 

白銀「そうだな。次は校舎の外を探してみないか?」 

 

石上「校舎の外ですか?」 

 

白銀「ああ、運動部ならシリアスな展開が起きているかもしれないからな」 

 

藤原「なるほど」 

 

 

 運動部! 

野球だったらケガをしたエースがいたり、サッカーだったらボールと友達だったり、バスケだったらあきらめたら試合終了だったり。テニスだったら分身したり。 

色んなシリアスなドラマが展開される! 

それがお約束の運動部なのである! 

 

 この男、今回の件を面倒くさそうにしているが、なんだかんだ生徒会メンバー想いの生徒会長 

 

白銀(弓道部に行って、四宮の弓道具姿を見てみたい。あとポニテ!) 

 

などではなく、あくまでも私利私欲で動くだけの男だった。

 

石上「どうします? ついでに体育館とかも見に行きませんか?」 

 

 この男も想い人が体育館にいると知っていての行動。 

 

 

藤原「いえ、シリアスは校舎にいます!」 

 

白銀「え?」 

 

藤原「私のシリアスセンサーがビンビンです!」 

 

 

藤原「こっちです!!!」 

 

白銀・石上「はぁ……」 

 

藤原「なにしてるんですか!? 早く行きますよ!」

 

  

  *  *  * 

 

 

藤原「んー。見つかりませんね」 

 

白銀「もうあきらめよう。もう少ししたら下校時間だからな」 

 

藤原「というか、二人ともさっきから何かソワソワしてません?」 

 

白銀「そ、そうか?」ソワソワ 

 

石上「僕は早く帰ってゲームしたいだけです」ソワソワ 

 

 

 ソワソワ! 

 

白銀と石上は今回の行動の途中でやりたい事ができてしまった。 

 

しかし、藤原と一緒にいてもその目的が達成される事はない。 

 

だったらさっさと分かれて目的達成のために動きたかったのだった。 

 

藤原「じゃあ、今日はこの辺にしておきますか」 

 

白銀「そうだな」 

 

藤原「二人ともわかってくれましたか? 私がいかにシリアスなキャラかを?」 

 

白銀「ああ、十分わかった」キリッ 

 

石上「ですね」キリッ 

 

 

藤原「ちょっと気になりますが解散しましょう。お疲れさまでした」 

 

 

白銀「じゃあ、俺教室にカバン置いてるから」 

 

石上「僕も教室に忘れ物が」 

 

 

藤原「……二人ともダッシュで!? そんなに早く帰りたかったの!? もーーーーっ!」 

 

 

藤原「まったく男子どもは今度お仕置きが必要ですね」 

 

藤原「さて、私も忘れ物を取りに行きますか」

 

 

■風紀委員室前の廊下 

 

白銀「まったく……ああいう本があるから風紀が乱れるんだ。ああいう本は生徒会が責任を持って処分しなければ」 

 

 この男。あの本が気になって気になって仕方なくなってしまったのである! 

 

一時的にかぐやの弓道着姿が見たいと思っていたのだが、それが叶わなかった。 

 

そして、欲求不満になった白銀は別の欲求を満たすために行動を起こしたのである! 

 

 

白銀「って、石上!?」 

 

石上「え!? あっ、いえ、ちょっと伊井野に用事があって」 

 

 この男も同じである。想い人に会えなかったから欲求不満に(以下略 

 

 

藤原「あれ? 二人で何をしてるんですか?」 

 

白銀「なっ!?」 

 

 この女も同じである。自分がシリアスキャラと認めて貰えなかったから(以下略

 

石上「いや、僕は伊井野に用事があって」 

 

白銀「俺は風紀委員に用事があってだな。そういう藤原は?」 

 

藤原「あ、わ、私はミコちゃんと一緒に帰ろうと思いまして。あれから結構時間経ってますし、まだ残ってればの話ですが」 

 

 

白銀「ハハハ。じゃ、じゃあ、さっさと用事を済ませて帰るとするか」 

 

藤原「そ、そうですね」 

 

 

ガラララッ 

 

 

伊井野「ひゃぁっ//」 

 

 

石上「って、まだ読んでたんかい!!!!!」 

 

 

 

 本日の勝敗 

 伊井野の勝利 

 (至福の時間を過ごせた) 

 

 

 

 

 

元スレ

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