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チュチュ「さぁ、アサヒロッカ! 準備はいいかしら?」 六花「は、はいっ!」マスキング(……頑張れよ) 【バンドリss/アニメss】

――チュチュのスタジオ―― 

 

チュチュ「Why!? なんで!? どうしてどいつもこいつも私のスカウトに靡かないの!!」 

 

パレオ「チュチュさまー、そんなに暴れてたらスカート捲れちゃいますよ?」 

 

チュチュ「あーもう悔しいっ! あんな演奏力で感動させられるし、もうなんなのよー!!」 

 

パレオ「仕方ありません、チュチュ様のスカートは私がお守りしますね! さぁ好きなだけ暴れてください!」ガシッ 

 

チュチュ「そんなのいらないわよ! はーなーれーなーさーいー!」 

 

レイヤ「主催ライブの花ちゃん……楽しそうでよかった……」 

 

マスキング「…………」 

 

マスキング(ウチのライブハウス、Galaxyでポッピンパーティーが主催ライブやってから1週間) 

 

マスキング(チュチュは毎日ギタリストを探してるけど、これってやつが見つからずにイライラ) 

 

マスキング(パレオはそんなチュチュに楽しそうに絡んでる) 

 

マスキング(レイヤはずっと花ちゃん花ちゃん言ってる) 

 

マスキング「うーん……」 

 

レイヤ「マスキ、どうかしたの?」 

 

マスキング「……いや、別に」 

 

パレオ「さぁさぁチュチュ様! スカートはバッチリしっかりパレオがお守りしますから、好きなだけ鬱憤を晴らしてください! 花さんに振られちゃってからずっと連敗続きの鬱憤を!」 

 

チュチュ「余計なお世話よ! ぐぬぬぬ……こうなったら……レイヤ! マスキング!」 

 

レイヤ「うん?」 

 

マスキング「なんだよ」 

 

チュチュ「あなたたち、前の仕事柄、いろんなミュージシャンと付き合いがあるわよね? 誰かRASに相応しいギタリストに心当たりはないかしら?」 

 

パレオ「おおー、チュチュ様がメンバーに頼ることを覚えだしました……ポピパさんたちに影響されたんですね♪」 

 

チュチュ「Shut upパレオ! どうして私があんな友達ごっこのバンドに影響されるのよ!?」 

 

パレオ「だってチュチュ様、ポピパさんの主催ライブ楽しそうだったじゃないですか~」 

 

チュチュ「あ、あれは……別に、悪くはないって思っただけだから!」 

 

パレオ「またまた~♪」 

 

チュチュ「う、うるさい! とにかく! PerfectでAmazingなギタリストに心当たりはない、レイヤ、マスキング!?」 

 

レイヤ「パーフェクトでアメイジングなギタリスト……花ちゃんのことかな?」 

 

マスキング「んなやついたら、とっくに他のバンドに入ってんだろ」 

 

レイヤ「そうだね。その条件に合致するのは花ちゃんしかいないし、もしも花ちゃんがもうひとりいるとしたら私は……私は……!」 

 

マスキング「…………」 

 

チュチュ「はぁー……まぁそうよね。メンバーに関しては最強のプロデューサーである私が発掘するべきだし、変なこと聞いたわ。忘れてちょうだい」 

 

パレオ「その心意気や良し、ですね! アッパレチュチュ様! 日本一!」 

 

チュチュ「……最近たまに思うんだけど、パレオ、私のことバカにしてない?」 

 

パレオ「いえいえ滅相もございません! これは敬愛するパステルパレットの若宮イヴさんから頂いた言葉ですからっ!」 

 

チュチュ「そう。ならいいわ」 

 

パレオ「流石チュチュ様、チョロカワですね!」 

 

チュチュ「ちょろかわ?」 

 

パレオ「これも誉め言葉ですよ? あ、ジャーキーどうぞ♪」 

 

チュチュ「ふーん、変な日本語ね」モグモグ 

 

マスキング「…………」 

 

マスキング(ギターが見つからないのはまぁいい……いや、あんまりよくはないけど) 

 

マスキング(それより、最近ふと思ったけど、RASのメンバーってなんかどっかおかしくないか) 

 

マスキング(特にレイヤ)チラッ 

 

レイヤ「花ちゃんがふたり……ポピパ用花ちゃんとRAS用花ちゃん……はぁ~……」 

 

マスキング(こいつ、花園のこと好きすぎるだろ) 

 

マスキング(幼馴染でいつかバンドやるって約束した話は聞いたけど……確かにいい話だと思って泣きそうになったけど……限度がある) 

 

マスキング(この前だって……) 

 

 

――とある日のチュチュスタジオ―― 

 

マスキング「……は? なんだって?」 

 

レイヤ「だからさ、マスキ。ちょっとこの子がね、ドラム談義したいんだって」 

 

大和麻弥「おお、本物のマスキさんだ! あ、ジブン、パステルパレットでドラムやってます、大和麻弥って言います!」 

 

マスキング「ああ、どうも……いやそうじゃなくて」 

 

レイヤ「どうしたの、マスキ?」 

 

マスキング「勝手にRAS以外のやつ連れてきたら、チュチュが怒るぞ」 

 

レイヤ「その時は私が謝るから平気だよ」 

 

麻弥「いやぁ、すみませんレイヤさん。ジブンのわがままを聞いてもらっちゃって」 

 

レイヤ「気にしないで。あなたはどこか花ちゃんに似てるから」 

 

マスキング「……んん? こいつのどこが花園に似てるんだ?」 

 

麻弥「花園って……まさかたえさんですか!? い、いやいや、ジブンがたえさんみたいな綺麗な方と似てるなんて、滅相もないです!」 

 

マスキング「いや、お前もアイドルだし十分綺麗だと思うけど」 

 

麻弥「そ、そうですか? ありがとうございます……フヘヘ……」 

 

レイヤ「……うん、やっぱり花ちゃんに似てる」 

 

マスキング「いやどこがだよ。正反対だと思うぞ」 

 

レイヤ「そっか、マスキには分からないか……花ちゃんの前世を感じさせるこのフィーリングが」 

 

麻弥「前世?」 

 

マスキング「何言ってんだ? 熱でもあんのか?」 

 

レイヤ「ふふ、でも仕方ないよ。小さな頃から約束を交わし合う私にしか分からない魂の波長があるから」 

 

マスキング「お前ってそんなキャラだったか?」 

 

レイヤ「どことなく舎弟気質、何も悪くないのにいつもペコペコ、遠慮がちで変な笑い方、そして演奏の腕はピカイチ……そんな花ちゃんの前世の魂の形が、遺伝子が、私には見えるんだ」 

 

レイヤ「もうね、UNSTOPPABLEなんだ」 

 

マスキング「知らねぇよ」 

 

麻弥「あ、あの……?」 

 

マスキング「気にしないでくれ、えーっと……大和。普段はこんな危ないやつじゃないんだけど、今日はちょっと熱でもあるみたいなんだ」 

 

レイヤ「答えは そう…inside of me But…But…だけど“UNSTOPPABLE”」 

 

レイヤ「I・MY・満たして欲しいと せがみだす」 

 

マスキング「歌うな」 

 

麻弥「えぇと……」 

 

マスキング「あいつは相手にしなくていい。とりあえずあっちで一緒にドラムでも叩くか」 

 

麻弥「え、ジブンも入っちゃっていいんですか?」 

 

マスキング「レイヤとここに残すとどうなるか分からないからな」 

 

レイヤ「DNA 疼く 赤裸々に……」 

 

マスキング「うるさい。ほら行くぞ、大和」 

 

大和「は、はい!」 

 

…………………… 

 

マスキング(……冷静に考えてヤバすぎるだろ。なんだよ前世の魂と遺伝子を感じるって) 

 

マスキング(何よりそんな理由で人を拉致ってくるのが一番ヤバい) 

 

レイヤ「花ちゃん……花ちゃーん……えへへ」 

 

マスキング(事あるごとにああやって花園の名前呼んでなんか笑ってるし、ホントヤベーよ) 

 

マスキング(おかしいな……レイヤとは前から同じバンドをサポートすることもあったけど、こいつって物腰穏やかであんまり人に踏み込まないで距離感大切にするやつだったのにな……) 

 

チュチュ「はー……どこかに私のお眼鏡に適ういいギタリストがいないかしらね……」 

 

パレオ「そうですねー。チュチュ様のお眼鏡には適っても、チュチュ様がお眼鏡に適われないことが多いですもんねー」 

 

チュチュ「パレオ? あなた、言ってる意味を理解しているかしら?」 

 

パレオ「はい♪」 

 

チュチュ「自覚があるなら余計にBadよ! オシオキが必要ね!!」 

 

パレオ「きゃー♪」 

 

マスキング「…………」 

 

マスキング(レイヤは文句なしのヤベーやつだけど、パレオも大概だよな) 

 

マスキング(この前も……) 

 

 

――とある日のチュチュスタジオ―― 

 

――ガチャ 

 

マスキング「うーっす……あれ、パレオだけか」 

 

パレオ「あ、マスキさん! こんにちはです♪」 

 

マスキング「ああ。なんだよ、早く来すぎたか」 

 

パレオ「そうですねー、まだ集合の30分前ですし。マスキさん、随分お早いですね?」 

 

マスキング「ウチでドラム叩いてこうかと思ったんだけどな、今日は予約がたくさん入ってて叩けなかったんだ」 

 

マスキング「他にやることもなかったしのんびり来たんだが……早すぎたな」 

 

パレオ「なるほどなるほど……あ、そうです、マスキさん!」 

 

マスキング「あん?」 

 

パレオ「ちょっと相談があるんですけど、良かったら話を聞いてくれませんか?」 

 

マスキング「相談? 別にいいけど、ケーキ作りと漫画とドラム以外だと力になれないぞ」 

 

パレオ「大丈夫です、RASのことですから」 

 

マスキング「ん……分かった」 

 

パレオ「あ、こっちの椅子どうぞ」 

 

マスキング「さんきゅ。よっこらせ……っと」ガタッ 

 

マスキング「それで?」 

 

パレオ「はい……その、チュチュ様のことなんです」 

 

マスキング「チュチュがどうかしたのか?」 

 

パレオ「これを見てください」スッ 

 

マスキング「なんだこりゃ? アルバムか?」 

 

パレオ「はい。チュチュ様とRASでガールズバンド時代を変えていく過程を、記録として写真に残してるんです」 

 

マスキング「ふーん、初耳だな」 

 

パレオ「私が勝手にやってることですから」 

 

マスキング「そうか。けど、それになんか相談することなんてあるか?」 

 

パレオ「大アリですよ! これをどうするかによって今後のRASの方向性が左右されますから!」 

 

マスキング「そんなに重大なことなのか……分かった。それじゃあ、何で悩んでるんだ?」 

 

パレオ「では、まずこちらのページを……」ペラ 

 

マスキング「……チュチュの寝顔、だな」 

 

パレオ「はい! 夜中まで作曲して寝落ちしてたので、こっそり撮りました♪」 

 

マスキング(……なんか嫌な予感がしてきた) 

 

パレオ「普段は少し口が悪くてちょっと不遜な態度でいることがありますけど、そんなチュチュ様だからこそ、年相応、いやそれよりも若干幼げで無防備な寝顔が堪りませんよね!」 

 

マスキング「…………」 

 

マスキング(いや、それになんて答えりゃいいんだよアタシ) 

 

パレオ「それでですね、次のページが……はい、これです!」 

 

マスキング「……いつものジャーキー頬張ってる笑顔のチュチュだな」 

 

パレオ「はい! ファーストライブのあとで機嫌がよかったので、正面からお願いして正々堂々撮ったレア物です♪」 

 

マスキング(いや、それって当たり前のことだよな?) 

 

パレオ「『私はプロデューサーだからー』って普段はあんまり撮られたがらないのに、機嫌がいいと二つ返事で満面の笑みをくれる……これも普段とギャップがあっていいですよね!」 

 

マスキング「……ああ、そう……だな……」 

 

パレオ「それからそれから――」 

 

マスキング「…………」 

 

マスキング(あー、ミスった……相談なんて聞かずにさっさとドラム叩いてりゃ良かった……) 

 

パレオ「それでですね、このチュチュ様は……」ペラペラ 

 

マスキング「…………」 

 

パレオ「加えてこの日はスカートがいつもより5ミリも短くて……!」ペラペラペラ 

 

マスキング「…………」 

 

パレオ「さらにさらになんと、寝ぼけたチュチュ様が私のお膝にコテンって……!!」ペラペラペラペラ 

 

マスキング(ヤバいな。止まる気配がない) 

 

マスキング(まだ来ねーのかよ他のやつは……って、パレオが話しだしてから10分も経ってねぇし……) 

 

マスキング(なんなんだよ、相談の内容が一向に分からねぇ) 

 

マスキング(ただ単にパレオがチュチュの可愛かったと思うところを見せびらかしてるだけじゃねぇかよ) 

 

パレオ「……で、ここからが本題なんですが……」 

 

マスキング「ああ、やっと……」 

 

パレオ「やっと?」 

 

マスキング「何でもない。それで、何の相談なんだこれ?」 

 

パレオ「……はい。最近、私は気付いてしまったんです」 

 

マスキング(ロクでもないことに気付いてそうだな……) 

 

パレオ「前置きさせて頂きますけど、チュチュ様はパレオにとって何ものにも代えられない恩人なんです。チュチュ様が喜んでくれるなら、笑ってくれるなら、その姿をフィルムに収められるなら、例え火の中水の中草の中森の中チュチュ様のスカート中、という心意気なんです」 

 

マスキング(ああもう絶対にロクでもないことだこれ……) 

 

パレオ「けど、でも……ですね? 花さんに振られちゃった時のチュチュ様を見て……落ち込んで、瞳一杯に悔し涙を貯めて唇を噛みしめるチュチュ様を見て……」 

 

パレオ「『あれ? チュチュ様、笑顔より泣き顔の方が可愛くないですか??』ということに……気付いてしまったんですっ」 

 

マスキング(やっぱりだよちくしょう) 

 

パレオ「それに気付いてからパレオの中にはふたつの人格が出来ました」 

 

パレオ「ひとつは、チュチュ様の幸せを心から願い、笑顔を求める光のパレオ」スッ 

 

パレオ「そしてもうひとつは、チュチュ様に目一杯イジワルや悪戯をして涙目にさせたり悔しそうな顔をさせたりして普段とのギャップを大いに楽しみながらそれをフィルムに収めて毎晩毎夜眠る前に眺めることを日課にしつつも最後の最後にはとびっきりの笑顔を求める闇のパレオ」スッ 

 

マスキング(光と闇で自分の髪の白いとこと黒いとこ指すのやめろ) 

 

マスキング(ていうか今日のパレオの髪、白と黒の割合が2:8だぞ。もうほとんど真っ黒じゃねぇかよお前) 

 

パレオ「マスキさん……私はどうしたらいいんでしょうか?」 

 

マスキング「……何が?」 

 

パレオ「このままだと『チュチュ様を崇めるアルバムVol.8』が、方向性の一貫しない出来になってしまうんです……!」 

 

マスキング(知らねぇよ) 

 

パレオ「これは由々しき事態ですっ、RASを根底から揺るがす大事件です!」 

 

マスキング「なんでそんなもんアタシに相談すんだよ」 

 

パレオ「……前にレイヤさんにも同じことを相談したんです」 

 

マスキング「じゃあそれでいいだろ。アタシを巻き込むなよ」 

 

パレオ「けど、レイヤさん……何を言うにも絶対に『花ちゃんが』『花ちゃんなら』って言葉が付いてて……」 

 

パレオ「花さんもとても綺麗な方ですけど、チュチュ様とは違う部類じゃないですか。だからあんまり参考にならなかったんです……」 

 

マスキング(ああくそ、何の違和感もなくその場面が想像できる) 

 

パレオ「だからマスキさんに話をって思ったんです! パレオは、パレオはどうすればいいでしょうか!?」 

 

マスキング(荷が重い。その答えを出すのは荷が重すぎる) 

 

マスキング(けど出さなきゃ終わらないよなこれ……ああもうめんどくせぇ) 

 

マスキング「あー……」 

 

パレオ「…………」 

 

マスキング「……まぁ、パレオの好きにすればいいんじゃねぇか?」 

 

パレオ「私の好きに……ですか?」 

 

マスキング「ああ。パレオが作ってんだし、お前の好きなように作るのが一番だと思う……ぞ?」 

 

パレオ「……そっか、そうですよね……」 

 

マスキング(……すまん、チュチュ) 

 

パレオ「分かりました! これからは闇のパレオバリバリでアルバムを作っていこうと思います!」 

 

マスキング「……ああ。その、頑張れ……」 

 

マスキング(本当……頑張れ、チュチュ……) 

 

…………………… 

 

マスキング(……あれから目に見えてチュチュをからかうことが増えたよな、パレオ) 

 

マスキング(恩人だ何だってのはもう何回も聞いたけど、あいつは本当にチュチュのこと敬ってるのか?) 

 

パレオ「焦っても仕方ないですよ、チュチュ様。こういう時はあえてのんびりマイペースで行きましょう♪」 

 

チュチュ「それはNo goodよ。主催ライブもPerfectにこなして、メディアからも注目を受けてる今がチャンスなのよ」 

 

チュチュ「だから一刻も早く、RASに見合うギタリストをスカウトしないといけないのに……あーもう! なんでハナゾノもロゼリアも、私の言うこと全然聞いてくれないのよ!!」 

 

マスキング(そりゃ、お前の態度にも一因があると思うけどな。花園の引き抜きとか漫画の悪役そのものだったし) 

 

マスキング(……けどチュチュも根は悪いやつじゃねぇんだよな) 

 

マスキング(この前、ライブハウスの下見に行った時だって……) 

 

――駅 プラットホーム―― 

 

チュチュ「どうしてタクシーは私が手を挙げても止まらないのかしらね」 

 

マスキング「そりゃ、子供の悪戯だと思われてんだろ」 

 

チュチュ「どういう意味かしら、マスキング?」 

 

マスキング「お前が子供っぽいってことだよ」 

 

チュチュ「……アンタ、ストレートよね」 

 

マスキング「悪かったな」 

 

チュチュ「はぁ……別にいいわよ。パレオだったら叱りつけるところだったけど」 

 

マスキング(そういう反応するからパレオはますますからかうんだろうなぁ……) 

 

マスキング「本当に悪かった、チュチュ」 

 

チュチュ「だからもういいわよ。っと、電車が来たわね」スッ 

 

マスキング「……外すのか、ヘッドフォン」 

 

チュチュ「当たり前よ。外では何も聞いてないけど、電車の中で付けたままだとお行儀が悪いってパレオが言ってたし」 

 

マスキング「そうか」 

 

チュチュ「さぁ、乗りましょう」 

 

マスキング「ああ」 

 

…………………… 

 

マスキング(そのあともお年寄りに席譲るし、電車ん中ではすげー静かだし、なんかめちゃくちゃマナー良かったな) 

 

マスキング(それに道端にゴミが落ちてたら拾ってゴミ箱に捨てるし、ライブハウスのオーナーとかお世話になる人にはめちゃくちゃ丁寧に対応するし、プロデューサーって名乗るだけあってRASのことには一切手を抜かないし……) 

 

マスキング(もしかしてこのバンドで一番の常識人ってチュチュなんじゃねぇか?) 

 

パレオ「チュチュさま~、チュチュさま~♪」クルクルイジイジ 

 

チュチュ「私の髪で遊ぶなぁ!」 

 

マスキング(……なんだか不憫に思えてきたな) 

 

マスキング「ギタリスト、か」 

 

マスキング(しょうがないな……柄じゃないけど、ちょっとアタシも探してみるか……)ガタッ 

 

レイヤ「うん? どうしたの、マスキ?」 

 

パレオ「あ、お帰りですか?」 

 

マスキング「ああ。ちょっとウチのライブハウスのやつとかに、いいギタリストがいないか聞いてくる」 

 

チュチュ「Really!? っと、と……コホン。そうね、私が行き詰ってるのも確かだし、マスキングにスカウトさせてみるのも一つの手ね」 

 

パレオ「もーチュチュ様ってば。手伝ってくれるのが嬉しいくせに~♪」 

 

チュチュ「Shut up! とにかく、マスキング!」 

 

マスキング「あん?」 

 

チュチュ「あなたに期待するのはドラマーとしてのパフォーマンスよ。本来RASの管理は私の仕事。だから、その……」 

 

マスキング「気にすんな。無茶なことはしねぇよ」 

 

チュチュ「……そ。ならいいわ」 

 

マスキング「ギターがいなきゃバンドとして成り立たねぇからな。アタシもいい加減、打ち込みじゃない音が欲しいんだよ」 

 

マスキング「まぁ、あんまり期待はしないでいてくれ」 

 

チュチュ「ええ」 

 

パレオ「頑張って下さいね、マスキさん!」 

 

レイヤ「……ねぇマスキ、ワガママを言っても――」 

 

マスキング「却下だ」 

 

マスキング(どうせ『花ちゃんみたいなギターをスカウトしてくれ』とか言うだろうし) 

 

レイヤ「……仕方ない」 

 

マスキング「悪く思わないでくれ。そんじゃな」 

 

…………………… 

 

――銀河青果店―― 

 

マスキング「とは言ったけど、どうするか……」 

 

マスキング(ハンパなギタリストじゃチュチュは納得しないだろうし、アタシだってやるなら見所のあるロックなやつとがいい) 

 

マスキング(ていうか、ロックなやつじゃないとあの変態×2と絶対に上手くやれない) 

 

マスキング(けどそんなギタリストがすぐに見つかるならチュチュだってあんな悩まないよな) 

 

マスキング「……まず親父に聞いてみるか?」 

 

マスキング(いや……でも親父のことだから、『ロックってなんだと思う?』なんて聞いても「世界を笑顔にすることだ」としか言わないだろうな……) 

 

マスキング(気に入りすぎだろ、ハローハッピーワールドのこと。確かに『世界を笑顔に!』なんてことを大真面目に掲げるのはすげーロックだけどさ) 

 

マスキング(最近の親父、ウチのエプロンにミッシェルとかいうクマのワッペン付けてるし……いや確かにミッシェルは可愛いからアタシも好きだけど) 

 

マスキング「はぁ……いいや。考えてても仕方ねーし、とりあえずケーキを焼こう」 

 

マスキング(困った時は無心になってケーキ作り。これが解決への一番の近道だ) 

 

マスキング(いつだってホイップクリームは嘘を吐かないで、アタシを導いてくれるからな) 

 

マスキング(そうと決まれば早速、だな) 

 

――キッチン―― 

 

マスキング「…………」シャカシャカ 

 

マスキング(アタシがホイッパーを細かく動かす。ボウルの中の白い水面に波が立って、空気と混ざり合って形を変えていく) 

 

マスキング(いま必要な姿へと、あるべき姿へと、迷いなく変わっていく) 

 

マスキング(……ああ、やっぱりいいなぁ。ホイップクリームを作ってる時は世界に戦争なんて起こらないんだ) 

 

マスキング(パンが無ければケーキを食べればいい。これで貧困問題も概ね解決する) 

 

マスキング(なんだか今日はホイップクリームの海に深く入り込めそうだ) 

 

マスキング「……そういやケーキを作るだとか、そんな歌があったな。たしか、えーっと……」 

 

マスキング「……ケーキを焼きましょう」シャカシャカ 

 

マスキング「ケーキを焼いてみましょう?」シャカシャカシャカ 

 

マスキング「大体の物事は考え方ひとつで どうにでもなる、なるから」シャカシャカシャカシャカ 

 

マスキング「…………」ピタ 

 

マスキング「そうか、そういうことか」 

 

マスキング(大体のお菓子は、卵に砂糖を混ぜるところから始まる。始まりは常に同じだ) 

 

マスキング(そしてお菓子の味の決め手は少しの分量差。味が足りなきゃ足せばいい、濃すぎたなら……その時はその時だ。ケーキをでかくして薄くすればいい) 

 

マスキング(何事も同じだ。まず動いてみることが大切で、それをしなければ何も始まらない) 

 

マスキング(例え分量を間違えたって、その時はその時だ。なるようになる。定められた形にすっぽりと収まる) 

 

マスキング(つまり、全てはケーキ作りに始まりケーキ作りに収束する) 

 

マスキング(いわばホイップクリームは銀河だ。ギャラクシーだ。命の始まりはそこにあるんだ) 

 

マスキング「……やっぱりケーキ作りは偉大だな。いつだって大切なことをアタシに教えてくれる」 

 

マスキング「っし、このギャラクシーショートケーキ、出来たらライブハウスのやつらにも持ってってやるか」 

 

…………………… 

 

――Galaxy―― 

 

マスキング「うーっす」 

 

朝日六花「あ、マスキさん。こんばんは」 

 

マスキング「ああ。あれ、朝日だけか」 

 

六花「はい。今日はほとんど利用者がいないですから……あっ!? えっと、その……ごめんなさい……!」 

 

マスキング「んなこと気にすんな。まだまだ忙しい方が珍しいのは事実なんだし。……しっかし、どうすっかなぁ」 

 

六花「……? どうかしたんですか?」 

 

マスキング「ケーキ焼いたんだが……流石に朝日だけじゃ食いきれないよな、これ」 

 

六花「ホ、ホールケーキ丸々ひとつはちょっと……」 

 

マスキング「だよな。まぁいいや、一緒に食おう」 

 

六花「え!? で、でも、私まだアルバイト中ですし……」 

 

マスキング「大丈夫だ。ウチを使おうってやつで、このギャラクシーケーキの良さが分からないやつなんていない」 

 

六花「ギャ、ギャラクシーケーキ……?」 

 

マスキング「そうだ。皿とか持ってくるからちょっと待ってな」 

 

六花「あ、は、はい!」 

 

 

―しばらくして― 

 

六花「あ、美味しい……」 

 

マスキング「だろ? 口の中に銀河が広がっただろ?」 

 

六花「ぎ、銀河かはちょっと……」 

 

マスキング「ああ?」 

 

六花「ひぇっ、ご、ごめんなさい!」 

 

マスキング「あ、悪い。脅かすつもりじゃなかったんだ」 

 

六花「い、いえ……」 

 

六花(いい人なのは知ってるけど……やっぱりマスキさん、ちょっと怖い……でもケーキでらうまい……) 

 

六花「その、リンゴのショートケーキって珍しいですね」 

 

マスキング「ああ、ちょうど店のリンゴにロクデナシになりかけてるのがあってな。捨てるのももったいないし、親父に言ってもらったんだ」 

 

六花「はぁー、バッドアップルですか」 

 

マスキング「そう。腐りそうなロクデナシですらこうして上手いもんに変えられるなんて、やっぱりケーキはすごいよな。銀河を内包してるよな」 

 

六花「は、はぁ……?」 

 

マスキング「っと、そうだ。朝日」 

 

六花「はい、なんでしょう」 

 

マスキング「ちょっとロックなギタリストを探してるんだが、心当たり――」 

 

マスキング(……いや、待てよ? そういや朝日、この前ギター弾いてたな。確か……) 

 

――1週間前 Galaxy・ライブステージ―― 

 

六花「はぁー、ポピパさんのライブでら堪らんかった……」 

 

六花「私もいつかバンドを組んで、ポピパさんみたいにここで……」 

 

六花「…………」キョロキョロ 

 

六花「今は店じまい直前で私しかいない……」 

 

六花「そしてさっきまでそこのステージにはポピパさんたちが立っていた……」 

 

六花「……ということは、今そのステージに立てば時間差で間接的に私もポッピンパーティー……ふへへへへ……」 

 

六花「はっ!? い、いけないいけない! 滅多なことを考えたらあかん、朝日六花!」 

 

六花「……でも今なら誰にも見られないし……」 

 

六花「…………」 

 

六花「ちょ、ちょっとだけ……お邪魔しまーす……よいしょっと」 

 

六花「……!!」 

 

六花(こ、これは……) 

 

六花(感じる……ポピパさんの残り香とかかすかな温もりを……確かに感じる……!) 

 

六花(こんなの……こんなの、我慢できるわけが、) 

 

ロック「ないっ!」ジャーン 

 

――ガチャ 

 

マスキング「なんか音がしたけど、誰かいるのか……って、朝日か?」 

 

マスキング「ステージでギター持ってるけど、あいつギター弾けるのか」 

 

ロック(今、私は確実に繋がっとる……この広い銀河の片隅で、確実にポピパさんと繋がっとる……!) 

 

ロック(やるしかない。これはもう、1年前からずっと温めてたロック流ポピパメドレーやるしかない!!) 

 

マスキング「もう店じまいなんだが……まぁ、いつもウチのために頑張ってくれてるし、好きなようにさせとくか」 

 

ロック(1曲目はもちろんこれやね!) 

 

マスキング「アルペジオ……これ、きらきら星か?」 

 

ロック(やっぱり最初はこれやないと!!) 

 

マスキング「初っ端にこれとは……なかなかロックじゃねぇか」 

 

…………………… 

 

マスキング(……うん、朝日がいい気がしてきたな) 

 

六花「マスキさん? どうかしましたか?」 

 

マスキング「朝日、ギター弾けるよな?」 

 

六花「え? は、はい……まだまだ全然ですけど……」 

 

マスキング「謙遜すんな。この前ここで弾いてるの見たけど、結構ロックだったぞ」 

 

六花「ここで弾いて……? って、まさか……!?」 

 

マスキング「ん? どうした?」 

 

六花「あの、マスキさん……? その、私がギター弾いてるの見た日って……」 

 

マスキング「1週間前だよ。ほら、ポッピンパーティの主催ライブやって、店閉める直前の時」 

 

六花「み、み、見てたんですかっ!?」 

 

マスキング「ああ」 

 

六花「ど、どこからですか!?」 

 

マスキング「きらきら星のアルペジオ弾いてるところからだけど」 

 

六花「さ、ささ最初からじゃないですか!! うぅぅ……まさか見られてたなんて……」 

 

マスキング「それでな、朝日」 

 

六花「な、なんでしょう? はっ、もしかして、勝手にステージで演奏したからクビとか……!?」 

 

マスキング「こんなことでクビになんかしないから安心しろって。それにお前をクビにする余裕なんてウチにはないしな」 

 

六花「そ、そうですか……よかった……」 

 

マスキング「アタシが言いたいのは、RASのオーディション受けてみないかってことだよ」 

 

六花「らすのおーでぃしょん……ですか」 

 

マスキング「ああ」 

 

六花「…………」 

 

マスキング「…………」 

 

六花「えっ、ええーっ!?」 

 

マスキング「なんで驚くんだよ」 

 

六花「え、だ、だってRASってあれですよね!? 前にたえ先輩がサポートしてた……!」 

 

マスキング「そのRASだ。RAISE A SUILENだ」 

 

六花「む、む、無理です無理です! 私なんかじゃ到底、あんなにレベルの高いバンドには入れません!!」 

 

マスキング「んなことねぇって。朝日はなかなかロックだから大丈夫だ」 

 

六花「確かにあだ名はロックでしたけど、それとこれとは関係ないです!」 

 

マスキング(朝日、腕は確かだったけどな。まさかきらきら星からあんなに激しいメドレーに繋げるとは思わなかったし) 

 

マスキング(腕も確かでロックなやつならあの変態の中に入っても大丈夫そうだし、チュチュも認めると思う。だからさっさとスカウトしたいけど……どうすっかな) 

 

マスキング「朝日、バンドやりたくないのか?」 

 

六花「いえ、バンドはずっとやりたくて、ギターがいないバンドを探してるんですけど……」 

 

マスキング「ならいいだろ。RASもギター探してるし、お前もバンドやりたいなら」 

 

六花「そ、その、私個人としての技量がまだその域に達してないと言うか、そりゃあ私だってポピパさんみたいにステージでキラキラしたいですけど、まだまだ全然レベルが足りないっていうか……」 

 

マスキング「…………」 

 

マスキング(自信がないのか……十分いい腕してると思うけどな) 

 

マスキング(変に煽っても落ち込みそうだよな、朝日は。うーん……) 

 

マスキング「……お前、ポッピンパーティーに憧れてるんだよな?」 

 

六花「はい! ポピパさんのライブの為なら例え日の中水の中草の中森の中土の中雲の中です!!」 

 

マスキング(パレオみたいなこと言い出したな。絶対こいつならRASで上手くやれる。さっさとその気にさせちまおう) 

 

マスキング「それはポッピンパーティーに入りたいっていう感じの憧れなのか?」 

 

六花「そんな滅相もない! ポピパさんはあの5人でポピパさんだからポピパさんなのであってその調和とコントラストの中に朝日六花なんて人間が入ってしまったら二重の虹もあっという間に色を失ってしまいますからそれはないです!! 私はひとりのファンなんです!! でも贅沢を、本当に贅沢を言えるのならポピパさんと同じステージに立ちたいって言うかそれも別に一緒のバンドでってことじゃなくて例えば主催ライブにお呼ばれしたりもういっそ対バンなんてやっちゃったりって感じで共に立ちたいというかそういう形の憧れなんです!!」 

 

マスキング「お、おう」 

 

六花「でもそれにはやっぱりまだまだ私自身の力量が全然足りてないですしそもそもバンド組んでないですからまだまだ夢物語なのは否めないんですけどそれでもいつかはバンド組んでポピパさんの隣に並び立てるくらいのギタリストになりたいですしでもやっぱりなかなかバンド組めなくて大変なのは大変なんですけどでもポピパさんという目標がある限り私の夢は途絶えることはないんですどんなに風が強くたってどんなに雨が強くたって何度も何度も呟くんです前へススメ! って!! 私の夢みるSunflowerはポピパさんという強い光がある限り未来永劫萎れることはないんです!!」 

 

マスキング「そ、そうか」 

 

六花「そのために今は雌伏の時だと言い聞かせていてよりポピパさんに近づけるようにでも近づきすぎてあの輝きと熱量に飲まれて幸せな死を迎えてしまわないようにもっともっとポピパさんへの理解を深めるとともに腕を磨く時間を大事にしていて例えこれが零れ落ちてしまうだけの青い砂を眺める切ないSandglassだとしてもそういう感性は音楽に必要だと思いますしこの前だってポピパさんはちょっとしたすれ違いを経験してより強いキズナミュージック♪を奏でることが出来てキラキラだとか夢だとかで希望だとかドキドキだとかでこの世界は回り続けてるって教えてくれましたしそうやって走り始めたばかりの私へメッセージを送ってくれることが何よりのHappy Happy Party!で――」 

 

マスキング「わ、分かったっ、朝日の気持ちは分かったから少し落ち着けっ」 

 

六花「あっ、ご、ごめんなさい、ポピパさんのことになるとつい……」 

 

マスキング(やべぇな……もしかするとレイヤやパレオ以上のタマかもしれねぇ……) 

 

 

マスキング(でもこれなら確実にRASに馴染めるだろ。……チュチュはまた苦労するかもしれないけど) 

 

マスキング(とにかくRASのオーディションを受ける気にさせちまおう) 

 

マスキング「……あー、なんだ。朝日」 

 

六花「は、はい」 

 

マスキング「理解から一番遠い感情が何か、知ってるか?」 

 

六花「理解から一番遠い……? えーっと……無関心、とかですか?」 

 

マスキング「違うな。『憧れ』だよ」 

 

六花「え……」 

 

マスキング「憧れは理解から最も遠い感情なんだよ」 

 

六花「そうなんですか……?」 

 

マスキング「ああ。すごい実力者が言ってた言葉だ」 

 

マスキング(漫画の中で、だけど) 

 

マスキング「憧れを持つのはいいことだと思う。けど、恋は盲目って言うだろ?」 

 

マスキング「そうすると本質を見誤る。理想を押し付けて、相手の本当の姿が見えなくなるんだ」 

 

マスキング(多分) 

 

六花「…………」 

 

マスキング「だから、朝日。ひとりのファンとしてじゃなくて、ライバル……っていうのか? とにかく、対等な立場で、面と向かって勝負するような関係になってみると、もっとポッピンパーティーの本質に近付くことが出来るはずだ」 

 

マスキング(きっと) 

 

六花「……そっか……そうですね……」 

 

六花「私、ポピパさんが大好きで大好きで、明日香ちゃんと一緒にいると香澄先輩のDNAを感じて心が震えてます」 

 

マスキング(レイヤみたいなことまで言いだしたな。こいつ、実は一番ヤバいんじゃないか?) 

 

六花「でも、確かにそれじゃダメです! 明日香ちゃんにも失礼やし! 私もバンドを組んで、それが例え自分の身の程には合わないところでも一生懸命頑張って、もっともっとポピパさんに近付きたいです!!」 

 

六花「マスキさん! 力不足ではありますが、RASのオーディションを受けさせてください!!」 

 

マスキング「……ああ、その言葉を待っていたぞ」 

 

六花「い、いつやりましょうか!?」 

 

マスキング「じゃあとりあえず……明日で平気か?」 

 

六花「大丈夫です!」 

 

マスキング「ん。それじゃあ、明日一緒にチュチュのとこ行くか」 

 

六花「はい! お願いします!!」 

 

マスキング「ああ」 

 

マスキング(……正直なことを言うと、朝日が想像以上にロック過ぎてちょっと心配だけど……まぁあとはチュチュが上手くやるだろ) 

 

…………………… 

 

――翌日 チュチュのスタジオ―― 

 

チュチュ「Wellcome、アサヒロッカ! マスキングから聞いたわよ。あなた、なかなかロックらしいじゃない!」 

 

六花「は、はい! あだ名がロックです!」 

 

チュチュ「そう。それじゃあ、あなたが私のお眼鏡に適うのならそう呼ばせてもらおうかしら」 

 

六花「が、頑張りましゅ!」 

 

マスキング(噛んだ……) 

 

パレオ「チュチュ様、とても嬉しそうですね」 

 

チュチュ「まぁね。本当は私がスカウトしたミュージシャンが一番だけど、マスキングがせっかく連れてきてくれたんだし、それなりの人物だろうとは思うし?」 

 

パレオ「流石ご主人様、素直じゃないですね~♪」 

 

六花「もしもー、キミがー、不安にふるーえたーならー……」ブルブル 

 

マスキング「おい」 

 

六花「ひゃ、ひゃい!?」 

 

マスキング「緊張しすぎだ。大丈夫だ、お前はもっと自信もっていい」 

 

六花「わっ、分かりました……! が、頑張れ私、たえ先輩のように……ああでもたえ先輩に比べたら私なんて亀……ウサギとミドリガメ……」 

 

マスキング「絶対分かってないだろ」 

 

チュチュ「さぁ、アサヒロッカ! 準備はいいかしら?」 

 

六花「は、はいっ!」 

 

チュチュ「それじゃあ、こっちよ」 

 

マスキング(……頑張れよ、朝日) 

 

レイヤ「……マスキ」 

 

マスキング「あん?」 

 

レイヤ「ありがとう」 

 

マスキング「ギター見つけてきたことか? 別に、大した手間じゃねぇよ。あいつはウチで働いてるやつだし」 

 

レイヤ「ううん、そうじゃなくて」 

 

マスキング「は? じゃあなんだよ」 

 

レイヤ「私のワガママ、聞いてもいないのに答えてくれて」 

 

マスキング「それに関してはノーコメントだ。そんなつもりねぇし」 

 

レイヤ「ふふ、そういうことにしておくね。あの子からも花ちゃんの前世を感じるんだ……」 

 

マスキング(大和と朝日に似てる花園の前世ってどんなだよ……) 

 

 

―オーディション後― 

 

六花「はぁ……はぁ……ど、どうですか、チュチュさん」 

 

チュチュ「…………」 

 

六花「あ、あの……」 

 

チュチュ「……イエス」 

 

六花「はい?」 

 

チュチュ「イエスエスイエース! Excellentよ、ロック!」 

 

六花「ロック……そ、それじゃあ……!」 

 

チュチュ「文句なしの合格よ! Congratulations!」 

 

六花「あ、ありがとうございます!」 

 

パレオ「よかったですね、チュチュ様♪」 

 

チュチュ「イエース! まぁマスキングがハンパなミュージシャンを連れてくる訳ないって思ってたけど、想像以上のギタリストね!」 

 

六花「よ、よかったぁ……」 

 

マスキング「おめでとう、朝日」 

 

六花「あ、マスキさん! ありがとうございます、マスキさんのおかげです!」 

 

マスキング「アタシは何もしてねぇよ。ケーキ焼いただけだ」 

 

レイヤ「おめでとう。ええと、ロックちゃん……でいいのかな?」 

 

六花「は、はい! ベースボーカルのレイヤさん……ですよね?」 

 

レイヤ「うん。これから一緒によろしくね」 

 

六花「ありがとうございます! よろしくお願いします!」 

 

パレオ「私はキーボードのパレオです。ロックさん、よろしくお願いしますね♪」 

 

六花「はい! よろしくお願いします!」 

 

チュチュ「ふっふっふ……ここに新たなRAISE A SUILENが生まれたわ! We get to the TOP!! 目指すは頂点、私たちがガールズバンドのトップに立って、時代を新しく築き上げるのよ!」 

 

パレオ「はい! どこまでもお供します、チュチュ様!」 

 

レイヤ「これでやっと揃ったからね。花ちゃんに負けないように頑張ろう」 

 

六花「私もポピパさんに負けないよう頑張ります!」 

 

マスキング「…………」 

 

マスキング(バンドメンバーが揃ったのはいいけど……5人中3人が変態なのは大丈夫なのか。いやそのうちのひとりはアタシが連れてきたんだけど) 

 

マスキング「……まぁ、なるようになるか」 

 

…………………… 

 

マスキング(朝日がRASに加入してから2週間が経った) 

 

マスキング(ようやく正規のメンバーが揃ったことでチュチュは気合満点、曲の作成にメディアへの宣伝、演奏への指導と、RASに関わる全てのことに精魂を込めていた) 

 

マスキング(そんなチュチュをパレオは時にはからかったり時にはイジワルしたりたまにめちゃくちゃ優しくしたりしては楽しそうに笑っていた) 

 

マスキング(レイヤは朝日を眺めながら「花ちゃん……」と呟くことが多くなった) 

 

マスキング(朝日はロックになるとずっとポピパさんポピパさんと言ってチュチュを少しうんざりしたような顔にさせていた) 

 

マスキング(けれどアタシの思った通り、朝日はレイヤとパレオとはどこか波長が合うらしく、よく3人で噛み合ってるんだか噛み合ってないんだか分からない会話を交わすことが多かった) 

 

マスキング(まぁ、RASに馴染んでるということでいいんだろう。多分) 

 

マスキング(アタシはというと、そんなあいつらの性格はともあれ、この5人で派手な音楽を奏でられることが楽しかった。ケーキを焼いて、それをみんなが食べるところを見るのがそれなりに好きだった) 

 

マスキング(そんな日々を過ごす中、とうとうチュチュが宣言した) 

 

チュチュ「新生RAISE A SUILENの主催ライブをやるわ!」 

 

マスキング(もう日程を決めてハコも押さえてあるらしく、これからすぐに告知を出すらしい) 

 

マスキング(アタシはもちろん、他の3人もそれを聞いて気合の入った顔をしていた) 

 

パレオ「またステージライトに煌めく嬉しそうで楽しそうなチュチュ様を間近で余すことなく見れますね♪」 

 

レイヤ「花ちゃんを招待しよう。花ちゃんの前で『もう私たちは大丈夫だよ』ってところを見せて、花ちゃんを安心させて、花ちゃんと一緒に盛り上がりたい」 

 

六花「ポピパさん、誘えば来てくれるかな……。もし来てくれたら、ポピパさんの前でギターを弾いてポピパさんと繋がるってことで……ふへへへぇ……」 

 

マスキング(そんな三者三様の呟きについては深く考えないことにした。あいつらなりのテンションの上げ方なんだろう) 

 

マスキング(ともあれ、以前にも増して熱の入った練習をこなして着々と準備を進めていると、あっという間にライブ当日になった) 

 

…………………… 

 

――ライブハウス 楽屋―― 

 

チュチュ「ふっふっふ……とうとう来たわね、この時が」 

 

チュチュ「今日ここから、私たちが新たな伝説を築いていくのよ! Are you excited!?」 

 

パレオ「はい! パレオはいつでも、チュチュ様の隣にいます!」 

 

レイヤ「花ちゃんが来てくれてるからね。無様なところは見せられないよ」 

 

六花「つ、ついにポピパさんの前でライブ……頑張ります!」 

 

マスキング「ああ、いつでもイケる」 

 

チュチュ「All right! さぁ、行くわよっ!」 

 

 

――ライブハウス ライブステージ―― 

 

戸山香澄「わー、またすごく大きなところでやるんだね~」 

 

山吹沙綾「だね。ロック、すごいなぁ」 

 

市ヶ谷有咲「つか、私たちの場所って本当にここなのか……?」 

 

牛込りみ「場所?」 

 

花園たえ「『花ちゃん&ポピパさん専用』って書いてあるから、きっと合ってるよ。おかしなこと言う有咲だね」 

 

有咲「いやいや普通に考えておかしいだろ? なんでオールスタンディングの観客席の一番前に私たち専用のスペースが出来てんだよ? ペンライトまで名前入りで2本ずつ用意されてるし……」 

 

たえ「きっとレイとロックが気を回してくれたんだよ。ほら見てみて、私のやつ、片方にレイの名前が入ってるよ」ブンブン 

 

りみ「綺麗だね~。これもロックちゃんが用意してくれたのかな」 

 

沙綾「じゃないかな。ポピパのロゴとRASのロゴが入ってて、それからどうしてか私たちそれぞれの色にも変えられるし」 

 

香澄「うーん、ペンライトまで用意してくれて、更に一番前の特等席! 至れり尽くせりだね!」 

 

有咲「見やすいは見やすいけど、こんなステージの真ん前なんてちょっと他の客に悪い気がするっていうか、なんていうか……」 

 

りみ「有咲ちゃん、優しいね」 

 

有咲「いやそういう話じゃねーってこれ……明らかに私たち5人には広すぎるスペースだし……周りの目が……」 

 

――フッ 

 

沙綾「あ、照明が消えた」 

 

香澄「始まるね!」 

 

チュチュ「Hello, everyone! RAISE A SUILENのステージへようこそ!」 

 

チュチュ「Let me show you! その目に刻みなさい、ここから始まる私たちの伝説の幕開けを!」 

 

チュチュ「Newcomer! ギター、ロック!」 

 

ロック「よ、よろしくお願いします……!」 

 

香澄「ロック~!」ブンブン 

 

有咲「ちょ、ペンライト振り回しすぎだお前!」 

 

りみ「ロックちゃん、顔が赤くなってる……緊張してるのかな……」 

 

沙綾「頑張れ、ロック!」 

 

ロック「ポ、ポピパさんが私の目の前に……!」 

 

ロック(はわぁー、あかん、これあかんよ……ポピパさんを目の前にしてポピパさんと繋がってるなんてあかん……頭が沸騰する……!) 

 

チュチュ「ベースボーカル、レイヤ!」 

 

レイヤ「今日もよろしくね、みんな」 

 

たえ「レイ~」フリフリ 

 

レイヤ「……!」 

 

レイヤ(花ちゃんが私の名前の入ったペンライトと一緒に花ちゃん専用ペンライトを振っている……ああ、幸せ……) 

 

チュチュ「キーボード、パレオ!」 

 

パレオ「みなさーん、今日も楽しんでいってくださいね~!」 

 

パレオ(ふふふ、みなさんが楽しめば楽しむほどチュチュ様の笑顔が輝いて、悔しかったときや悲しかったときの顔とのギャップが大きくなって、私の糧になるのです……!) 

 

チュチュ「ドラム、マスキング!」 

 

マスキング「ああ」 

 

マスキング(あの3人、絶対変なこと考えてるな……) 

 

チュチュ「We are RAISE A SUILEN! さぁ、これが始まりよ!」スッ 

 

レイヤ(花ちゃん花ちゃん、ああ花ちゃん……)スッ 

 

ロック(ポピパさん、ポピパさん、ポピパさん……)スッ 

 

パレオ(チュチュ様チュチュ様チュチュ様ぁ……)スッ 

 

マスキング(アタシも最初だけ上げとくか……)スッ 

 

香澄「わっ、みんなで右手上げてる」 

 

たえ「うん。これは最初にそうする曲だから」 

 

チュチュ「その手を掲げなさい! 『A DECLARATION OF ×××』!」 

 

マスキング「……よし」 

 

沙綾(あ、ドラムの人だけ腕下げた) 

 

マスキング(こっからアタシは手を掲げらんねぇけど、せめて声くらいはしっかり出すか) 

 

マスキング「ふっ!」 

 

――ダン、ダン、ダダダダン、ダン! 

 

 

『RAISE YOUR HANDS,NOW!』 

 

レイヤ「“Let's get it going”さあ始めよう…」 

 

『RAISE YOUR HANDS,NOW!』 

 

レイヤ「So, 僕らの名の下に」 

 

『RAISE YOUR HANDS,NOW!』 

 

レイヤ「Bring it, Bring it on」 

 

『RAISE YOUR HANDS,NOW!』 

 

レイヤ「Bring it, Bring it on」 

 

『RAISE YOUR HANDS,NOW!』 

 

レイヤ「Bring it, Bring it on」 

 

『RAISE YOUR HANDS,NOW!』 

 

レイヤ「Bring it, Bring it on」 

 

『RAISE YOUR HANDS,NOW!』 

 

レイヤ「CAN'T STOP!!!」 

 

レイヤ「目障りな喧騒には Get out 挑発するよう舌出して Bye now」 

 

レイヤ「不撓不屈 唯々昇るさ」 

 

レイヤ「余所見出来るの? 出来ないYou see」 

 

レイヤ「Risk 伴った愉快さがDon't stop」 

 

レイヤ「Play out 朽ちてゆけ お前が」 

 

『逆巻く熱を帯びて』 

 

レイヤ「全身全霊Checkmate」 

 

『意思表示する叫びの』 

 

レイヤ「金輪際容赦しないCondition」 

 

レイヤ「僕ら色のScenarioはNever end…」 

 

レイヤ「Ahhhhh!」 

 

『RAISE YOUR HANDS,NOW!!』 

 

レイヤ「I will win against! 運命は僕らさ 魂を魂で穿って」 

 

レイヤ「I know」 

 

『You know?』 

 

レイヤ「You know?」 

 

『I know』 

 

レイヤ「“We get to the TOP”」 

 

『3,2,1,JUMP!』 

 

レイヤ「I will win against! 前人未到の地へ 絶対的な存在へと」 

 

レイヤ「I know」 

 

『You know?』 

 

レイヤ「You know?」 

 

『I know』 

 

レイヤ「A DECLARATION OF ×××」 

 

レイヤ「此処に……聴け!」 

 

『RAISE YOUR HANDS,NOW!』 

 

―――――――――― 

――――――― 

―――― 

…… 

 

――ライブ後 控室―― 

 

チュチュ「はぁ、はぁ……やった、やりきったわ……」 

 

パレオ「はぁはぁ……はい……!」 

 

レイヤ「ふー……うん、いいライブだった……」 

 

ロック「私も……はぁー……久しぶりでとても楽しかった……です……!」 

 

マスキング「ああ、そうだな……」 

 

チュチュ(演奏技術もそうだけど、ロックはステージで想像以上にRASとシンクロするわね……それに幕が上がればあの引っ込み思案もなくなるし……いいギタリストが手に入ったわ……!) 

 

パレオ(ああ……ライブ中のチュチュ様の、楽しそうで嬉しそうでこの先の展望を見据えてワクワクしている顔を思い出すだけで……また背筋が震えます……!) 

 

レイヤ(花ちゃん……デクラレで一緒にぴょんぴょんしてくれてたな……私も今度花ちゃん家のうさぎちゃんたちと一緒にぴょんぴょんしに行かなくちゃ……ふふっ) 

 

ロック(はーライブヤバい、やっぱヤバいわー……ポピパさんも『3,2,1,JUMP!』でジャンプしてたし、もうこれ半分Jumpin'一緒にやってるのと同じやしヤバい、ポピパさんの色に私の全部を染められちゃう……!) 

 

マスキング(チュチュだけ真面目なこと考えてて、他の変態どもは欲望全開だろうな……) 

 

マスキング(ああ、なんかもうこいつらの顔見ただけでなに考えてんのか大体分かるようになっちまったなぁ) 

 

マスキング(……けど) 

 

マスキング「ふっ……はは、はははっ」 

 

チュチュ「What? いきなりどうしたのよ、マスキング?」 

 

マスキング「いや、別に。案外悪くねぇなって思っただけだ」 

 

レイヤ「そうだね。ロックちゃんが入ったRAS……花ちゃんがいないのは寂しいけど、悪くないよ」 

 

パレオ「ロックさん、やっぱり演奏中は別人ですしね! 一緒に飛んで跳ねて、私も楽しかったです!」 

 

ロック「あ、す、すみません! ついポピパさんを前にテンションが上がって……」 

 

チュチュ「はぁー……ロック、アンタはいつもポピパさんポピパさんってそればっかりよね」 

 

ロック「あぅ……ご、ごめんなさい……」 

 

チュチュ「……ま、いいわよ。気持ちはほんの少しだけ、スプーン一杯の半分の半分の半分の半分くらいだけ分かるから」 

 

ロック「え?」 

 

パレオ「もーチュチュ様ってば、本当はポピパさんもロゼリアさんも、他のバンドさんのことだって認めてるのに素直じゃないんですから~♪」 

 

チュチュ「Shut up! 余計なことは口にするなぁ!」 

 

レイヤ「ふふっ。こういうやり取りが私たちなのかもね」 

 

マスキング「だな。……お前とパレオと朝日はもう少し自重しろとは思うけどな」 

 

レイヤ「え、何を?」 

 

マスキング「薄々分かってたけどやっぱり無自覚かよ。まぁ、でもその方がお前ららしくていいや」 

 

レイヤ「そう? よく分からないけど、マスキがそれでいいならいっか」 

 

ロック「あれ、スマホにメッセージが……はっ!? か、か、香澄先輩から!?」 

 

香澄『ロック~! 今日すごくカッコよかったよ! 私たちもRASに負けないように頑張る! いつか一緒にライブしようね!!』 

 

ロック「香澄先輩からのお褒めのメッセージ……はぁぁ~、堪らんわぁ~……」 

 

レイヤ「……ということは、きっと私にも花ちゃんからのメッセージが……スマホスマホ……」 

 

チュチュ「パレオ! やっぱり最近のアンタ、私のこと舐めてるわよね!?」 

 

パレオ「舐めてないですよ~? あ、でもチュチュ様が舐めていいと仰るならパレオは……パレオは……!!」 

 

チュチュ「……Why? 急に悪寒が……?」 

 

マスキング「……ふっ」 

 

マスキング(ヤベーやつばっかのバンドだけど……一緒に演奏してみると、意外と気が合うことが分かる) 

 

マスキング(大体の物事は考え方次第でどうにでもなるし、アタシがこの変ちくりんなバンドを楽しんでるならそれでいいんだろうな) 

 

マスキング(やっぱりケーキは偉大だ。迷った時は進むべき道を切り開いてくれるし、落ち込んだ時はその甘さで元気をくれるし、嬉しい時はその喜びを増やしてくれる) 

 

マスキング(ケーキには人生の全てが詰まってる……深いな、ケーキ道) 

 

マスキング(まだまだこの道の先は長い。アタシももっとケーキを探求しないとな) 

 

パレオ「大丈夫ですチュチュ様……優しくしますから……ハァハァ……」 

 

チュチュ「パ、パレオ? その息の上がり方はBadだと私は思うわよ……?」 

 

ロック「ふぇへへへ~、香澄先輩になんて返そうかなぁ~……」 

 

レイヤ「……メッセージが来てない。実は花ちゃん、私がRASに誘っちゃったことものすごく怒ってる……? もしそうなら私は……どうしたら……!!」 

 

マスキング「よし、帰ったら早速打ち上げ用のケーキを焼こう」 

 

マスキング(RAISE A SUILENのケーキ探求の道は、まだ始まったばかりだ!) 

 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1554212216/

文乃 「こののままじゃ乙女的にまずい…水分取りすぎちゃったかも///」【ぼく勉ss/アニメss】

 

………………一ノ瀬学園 グラウンド

 

滝沢先生 「今日から体育は長距離走だ。初日だから、無理するなよ」

 

滝沢先生 「身体を慣らす程度でいい。ただししっかり走れよー」

 

成幸 (ふっふっふっふ……)

 

成幸 (長距離走はただ走るだけ! 不器用な俺が体育の内申点を上げるチャンスだ!)

 

成幸 (まぁ、体力はないから良いタイムは望めないが、努力さえすれば多少はなんとかなる)

 

成幸 (一学期と二学期前半の水泳の分も挽回しなければ……!!)

 

文乃 「おー。なんか、成幸くん燃えてるね」

 

成幸 「ん……? ああ、古橋か。そうか、今日の体育はAB組合同か」

 

文乃 「うん。あと、長距離走だから男女混合だね。男子は外周五周、がんばってね」

 

成幸 「女子は三周だっけか。うらやましいぞ……」

 

文乃 「私は走るの嫌いじゃないからいいんだけどね、五周でも」

 

文乃 「成幸くんより足速い自信あるし」 エッヘン

 

成幸 「む……言ったな? じゃあ、今日のタイムで勝負しようぜ」

 

文乃 「ほうほう。つまり、わたしのタイムを3/5倍して勝負だね?」

 

成幸 「うん。考え方は間違ってないけど5/3倍な」

 

文乃 「……こっ、細かいことはいいんだよ!」

 

コソッ

 

文乃 「ただ勝負するだけじゃつまらないから、何か賭けない?」

 

成幸 「ほー。俺に勝つ自信があるみたいだな。いいぞ、乗ってやる」

 

成幸 「負けた方は勝った方に購買のパン一つ奢る……ってのでどうだ?」

 

文乃 「うん。まぁ成幸くんの経済状況を考えたら妥当なところだと思うよ」

 

成幸 「冷静に人のサイフの中身を分析しないでくれ、古橋……」

 

鹿島 (……古橋姫と唯我成幸さん、何か話してますね)

 

猪森 (古橋姫、楽しそうっスね)

 

蝶野 (こっちまで幸せになってくるな……)

 

 

………………スタート直前

 

成幸 (ふっふっふ……。古橋、悪いが、手をぬくつもりはない。単純な体力だけなら、さすがに負けないぞ)

 

成幸 (球技ならわからんが……)

 

文乃 (ふふふ……。成幸くんったら、私は体育は得意なんだよ?)

 

文乃 (キャラクター紹介ページでもATHLETICは○なんだよ。そしてきみは×だって知ってるんだから)

 

文乃 (成幸くんがなぜあんなに自信満々なのかわからないけど、絶対に負けないからね)

 

滝沢先生 『準備はいいかー? 公道を走るから、車や歩行者に気をつけろよー』

 

滝沢先生 『では、よーい……スタート!』

 

成幸&文乃 *1

 

成幸 (俺が!!)  文乃 (わたしが!!)

 

成幸&文乃 *2

 

成幸 (うわー! どうしたらいいんだ俺はー! 古橋の奴、絶対俺のこと怖がってるよー!!)

 

文乃 (どうしようどうしようどうしよう!! 成幸くん、絶対わたしのこと怒ってるよー!!)

 

成幸 (ええい!)

 

文乃 (ままよ、だよ!)

 

成幸&文乃 「「あ、あのさ!」」

 

成幸 「!? あ、えっと……」

 

文乃 「な、成幸くんから、どうぞ?」

 

成幸 「い、いや、そっちからでいいよ……」

 

文乃 「えっ、ずるいよ、成幸くん……」

 

成幸 「ずるいって、お前……。わかったよ……」

 

成幸 「えっと……なんか、その……ごめんな?」

 

文乃 「へ……?」

 

成幸 「怖くないか? お前、女の子だし、その……あんまり、男、得意じゃないだろ?」

 

成幸 「俺、どうしてたらいい? もっと離れてた方がいいか?」

 

文乃 「………………」

 

クスッ

 

文乃 「……ひょっとして、そんなことずっと考えてたの?」

 

成幸 「わ、笑うなよ。ずっと考えてたよ。悪いかよ……」 プイッ

 

文乃 「ごめんごめん。でも、可笑しくってさ」

 

文乃 「……旅館でふたりで泊まったこともあるんだよ? 今さらきみが怖いわけないでしょ」

 

成幸 「なっ……/// あ、あのときは、仕方なかっただろ……」

 

文乃 「きみはわたしの弟みたいなものだからね。大丈夫だよ。怖くなんてないよ」

 

成幸 「……そうかよ。ならよかったよ」

 

成幸 「で? そっちは何を言おうとしたんだよ」

 

文乃 「うん……あの、成幸くん。ごめんなさい」

 

成幸 「……? ごめんって、何が?」

 

文乃 「さっきも言ったけど、わたしが賭け事なんて提案したから、こんなことになって……」

 

文乃 「成幸くんの勉強時間まで取っちゃって……」

 

成幸 「いやいや、さっきも言っただろ。パンを賭けようって言ったのは俺だし、そもそも乗ったのも俺の判断だ」

 

成幸 「お前は悪くないよ」

 

文乃 「……ありがと。そう言ってくれると、助かるな」

 

文乃 (そっか。きみがずっと難しい顔をしていたのは、わたしに悪いと思っていたからなんだ)

 

成幸 (お前がずっと物憂げだったのは、俺に申し訳ないと思っていたからなのか)

 

クスッ

 

文乃 「……ほんと、きみはお人好しだよね、成幸くん」

 

成幸 「お前に言われたくないよ、古橋」

 

 

………………図書室

 

『間もなく閉館時間です。本を元の場所に戻して、退室してください』

 

理珠 「……!? も、もうこんな時間ですか!?」

 

理珠 (結局成幸さんも文乃も来ませんでしたが……)

 

理珠 (ま、まさか……!!)

 

理珠 (私に内緒でふたりきりで何か美味しいものでも食べに行ったのでしょうか!?)

 

理珠 (だとしたら許せません。こちらはがんばって勉強しているというのに……)

理珠 (うるかさんでも誘って、私たちも何か美味しいものを食べに行ってやります!!)

 

………………

 

文乃 「………………」

 

ブルッ

 

文乃 (……まずい)

 

文乃 (何がどうまずいのかは、ご想像にお任せするというか、乙女的な意味で絶対に口にはできないけど、)

 

文乃 (まずい!!)

 

文乃 (長距離走の後に水分補給をしすぎたのが原因かな!!)

 

成幸 「……古橋? どうかしたか? 顔が青いぞ? 寒いのか?」

 

文乃 「だ、大丈夫! 全然大丈夫だよ!」

 

文乃 (成幸くんがニブチンで良かった。彼はきっと気づかないだろう)

 

文乃 (ただ、わたしの中で色々なものが終わってしまうタイムリミットまで、そう時間はない)

 

文乃 (助けを待つなんて悠長なことは言っていられない。これは、もう……)

 

文乃 (採光窓から出るしかない!!)

 

 

………………プール

 

うるか 「へ……? 今日、成幸も文乃っちも来なかったん?」

 

理珠 「そうなんです。本当に腹立たしい限りです。約束をしていたというのに」 プンプン

 

理珠 「もうふたりなんて知りません。このあと私たちだけで美味しいものでも食べに行きましょう」

 

滝沢先生 「ん? おお、緒方。なんかえらくご機嫌ナナメだな」

 

理珠 「滝沢先生。成幸さんと文乃に約束をすっぽかされたのです」

 

滝沢先生 「ん……? 唯我と古橋が……?」

 

ハッ

 

滝沢先生 「……いや、まさか、そんなことは……」

 

滝沢先生 「そういや、施錠を桐須先生にお願いしてたな……」

 

滝沢先生 「あの人、ときどき抜けてるからな……」

 

ダラダラダラ……

 

滝沢先生 「……ちょっとふたりとも来い。嫌な予感がする」

 

………………

 

成幸 「お、おい、古橋、本当にやるのか?」

 

文乃 「やるといったらやるんだよ! もう時間がないんだよ!」

 

成幸 「……?」 (なんか急ぎの予定でもあるのか?)

 

成幸 「絶対無理するなよ? ケガするなよ?」

 

文乃 (少しくらいケガしてでも乙女の尊厳を守りたいんだよこっちは!!)

 

文乃 「ほら、肩車してもらうから、早くかがんで」

 

成幸 「……まぁ、それはいいけどさ」

 

成幸 (す、スカートの女子を肩車か……)

 

スッ

 

成幸 「ち、ちゃんと頭持ってろよ?」 (ふ、ふとももの感触が……)

 

成幸 (いかんいかん! 不埒なことを考えるな。集中しろ)

 

文乃 (平常時であれば色々と思うところもあるんだろうけど!)

 

文乃 (今はあまりそのあたりは考える余裕はないかな!!)

 

成幸 「ゆっくり立ち上がるぞ……」

 

文乃 「うん」

 

スクッ……

 

成幸 (き、きつい……古橋が重いとかじゃなくて、長距離走の後に重いものを運んだからだ……)

 

成幸 「よし、っと……。届きそうか?」

 

文乃 「大丈夫。手が届いたよ。窓も……うん。開けられる」

 

文乃 「ちょっと足をしっかり持っててもらっていいかな。少し窓に身体を預けてみるね」

 

成幸 「お、おう」

 

グッ

 

文乃 「……うん。いけそうかな。窓からちゃんと飛び降りられれば、外に出られると思う」

 

成幸 「危なくないか?」

 

文乃 「これくらいの高さなら大丈夫だと思う。窓のへりに移っちゃうね」

 

成幸 「本当に大丈夫か? 危険は……」

 

……ガクッ

 

成幸 (あっ……)

 

文乃 「きゃっ……!?」

 

ドタドタドタ………………

 

成幸 「……いたたた」

 

成幸 (しまった……。急に足の力がガクッと抜けてしまった)

 

成幸 (下がマットで助かったな……)

 

成幸 「古橋? 大丈夫か……? ごめんな、ちょっとバランスを崩しちまって……」

 

文乃 「う、うん、大丈夫だよ。やわらかいマットの上だから……」

 

成幸 「……!?」

 

文乃 「ふぇっ……!?」

 

成幸 (ち、近っ……!? 俺、マットに仰向けに寝て……その上に、古橋が……)

 

文乃 (こ、これじゃまるで、わたしが成幸くんを押し倒してるみたい……!!)

 

ドキドキドキドキ……

 

成幸 「ふ、古橋……? どいてくれると、助かるというか……」

 

文乃 (う、動けないよー! 外に出られないと分かった絶望感と今のショックで、もう決壊寸前なんだよー!)

 

成幸 (うっ……。な、なんでそんなうるんだ目でこっちを見るんだよ……)

 

成幸 「古橋……」

 

文乃 「成幸くん……」

 

文乃 (ああ、終わった……。さようなら、乙女としてのわたし)

 

文乃 (明日からわたしは、不名誉なあだ名をもらうことになるんだ)

 

文乃 (文学の森の眠り姫なんて大それたあだ名、そもそもわたしに相応しくなかったんだ……)

 

文乃 (成幸くんの女心の師匠もやめることになるんだろうな……)

 

文乃 (ああ、色んなことが走馬灯のように……――)

 

――――――ガシャン!!! ガラッ

 

理珠 「文乃!! いるのですか!?」  うるか 「成幸!! 大丈夫!?」

 

理珠&うるか 「「!?」」

 

滝沢先生 「お前たち急ぎすぎだよ……って……」

 

滝沢先生 「……何をやってるんだ、唯我、古橋?」

 

文乃 「あっ……」

 

文乃 (開いたぁあああああああああああ~~~~~)

 

タタタタタタタ……!!!

 

理珠 「ふ、文乃!? ……行ってしまいました」

 

うるか 「な、成幸! どういうことか説明してよ!! 何をしてたの!?」

 

成幸 「お、落ち着けうるか! 何もないから!」

 

うるか 「何もなくて、どうして文乃っちが涙目で飛び出していくの!?」

 

成幸 「俺が聞きたいよ!!」

 

滝沢先生 「あー……まぁ、色々と後手に回った私が悪いのは重々承知しているが、」

 

滝沢先生 「高校生の男女が密室にいたんだから、気持ちは分からなくもないが……」

 

滝沢先生 「そういうのは、もっとこう、ロマンチックな場所でだな……」

 

成幸 「だから違いますって! 先生までどんな勘違いしてるんですか!!」

 

理珠 「……不潔です。見損ないました。成幸さん」

 

うるか 「あたしもだよ! 成幸のケダモノー! アクマー!」

 

成幸 「なぜ俺が責められているんだ!?」

 

 

………………お手洗い前

 

文乃 「ふー……」

 

パァアアアアアアアアア……!!!!

 

文乃 (守られた! わたしの、女子としての尊厳……!!)

 

文乃 (良かったよう……危うく、成幸くんにとんでもない姿をさらしてしまうところだったよ)

 

文乃 (……まぁ、成幸くんのことだから、そうなっていたとしても、きっとわたしをバカにしたりはしないだろうけど)

 

理珠 「……あ、いました! 文乃」

 

タタタタ……

 

文乃 「りっちゃん。今日は図書室に行けなくてごめんね」

 

理珠 「文乃が悪いわけではありませんから、気にしないでください」

 

理珠 「それより、これからうるかさんと成幸さんとファミレスで勉強会をしようという話になったのですが、」

 

理珠 「もちろん、文乃も来ますよね?」

 

文乃 「うん。一緒に行くよ。今日の分の勉強を取り返さないといけないからね」

 

文乃 「………………」

 

―――― 『怖くないか? お前、女の子だし、その……あんまり、男、得意じゃないだろ?』

 

―――― 『俺、どうしてたらいい? もっと離れてた方がいいか?』

 

 

文乃 (……成幸くんのバカ。今さらそんなこと気にするはずないのに)

 

 

―――― 『デートみたいだな! 古橋』

 

 

文乃 (どっちかといえば、わたしは台風のときの映画館を思い出していたんだけど)

 

文乃 (ニブイきみは、きっとそんなこと分からないし気づかないだろうね)

 

文乃 (だから絶対内緒だよ)

 

クスッ

 

文乃 (……実はちょっとだけ、そんなことを思い出して)

 

文乃 (きみにドキドキしていただなんて)

 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1536589434/

*1:パンは!

*2:いただく!!) んだよ!!)

 

………………

 

大森 「はぁ~、長距離走なんてだるいよなー。どっかでサボれないかな」

 

小林 「うるさいなぁ。喋ってると体力なくなるぞ」

 

小林 「少しは成ちゃんを見習えよ。ほら、あんなにまじめに走ってる」

 

成幸 「ゼェ……ゼェ……ゼェ……」

 

大森 「……まじめに走ってるのに、ダベりながら走ってる俺たちの少し前ってのが悲しいけどな」

 

成幸 (ふふ……いい、ペースだ……)

 

成幸 (男子の中でも真ん中の方にいるだろ……ふふ、負けんぞ、古橋……)

 

 

………………ゴール後

 

成幸 「………………」

 

グタッ

 

成幸 (し、死ぬ……滝沢先生の言うとおり、慣らし程度で走るべきだった……)

 

成幸 (肺が痛い……)

 

文乃 「やーやー、成幸くん。結果はどうだったかな?」

 

成幸 「ふ、古橋……ふふ、お前の、その、余裕そうな顔も、そこまでだぜ……」 ゼェゼェ……

 

文乃 「うん。きみの方にそこまで余裕がないとわたしはどんどん余裕が出てくるんだけどね」

 

文乃 「ちなみにこれが今日のわたしのタイムだよ? で、5/3倍も計算しておいたよ」

 

成幸 「………………」

 

ガクッ

 

成幸 「う、うそだ……。俺、結構全力で走ったのに……」

 

文乃 「ふふふ、どうやらわたしの勝ちのようだね。じゃあ、昼休み、パンをよろしく頼むよ、成幸くん?」

 

成幸 「うぅ……」

 

 

―――― 「ほう。なかなか興味深い話をしているな、唯我、古橋」

 

文乃 「わっ……た、滝沢先生!?」

 

滝沢先生 「まさかお前たち、体育の授業で賭け事をしていたわけじゃないだろうな?」

 

文乃 「あ、あはは……」

 

成幸 「えっと……あの……」

 

滝沢先生 「………………」

 

成幸&文乃 「「すみません!!」」

 

滝沢先生 「素直でよろしい。まぁ、パン程度なら遊びの延長というところで目はつむってやる」

 

成幸 「本当ですか!? 助かります……」

 

滝沢先生 「その代わり、といってはなんだが、少し手伝いをしてもらおうか」

 

滝沢先生 「外周にパイロンが設置してあっただろう? 放課後、あのパイロンの回収を頼みたいんだ」

 

滝沢先生 「体育の教員の手が空いてなくてな。頼めるか?」

 

文乃 「それくらいなら、まかせてください」

 

成幸 「はい、やります!」

 

滝沢先生 「じゃあ頼んだ。体育用具倉庫にあるカートを使って回収してほしい」

 

滝沢先生 「回収した後は、体育用具倉庫にしまっておいてくれ」

 

 

………………放課後

 

成幸 (……と、いうわけで、外周を回りながらパイロンを回収しているわけ、だが……)

 

グイッ……グイッ……

 

成幸 (重い!!)

 

成幸 (ひとつひとつのパイロンは軽いが、カートに乗せていくにつれてどんどん増えていく!)

 

成幸 (重い!!)

 

文乃 「成幸くん、顔真っ赤だよ? 大丈夫? カート引くの代わろうか?」

 

成幸 「いや、さすがに……これを、女子にはさせられないだろ……」

 

成幸 「俺は男子だから、大丈夫……」

 

文乃 「む……男子とか女子とか、あんまり関係ない気もするけどな」

 

文乃 「結局、わたしの方が長距離走も速かったわけだし」

 

成幸 「ど……同一距離だったら、きっと負けてない、はず……」

 

文乃 「わたし今日結構流してたけど?」

 

成幸 「……お、俺だって、慣らしだったぞ?」

 

文乃 「ふーん。そう? じゃ、カート引きがんばってね。パイロン追加するよ」

 

ゴトッ

 

成幸 「うぉ……」

 

成幸 (お、重い……)

 

グイグイ……

 

文乃 「ほら。後ろから押してあげるから、がんばって」

 

成幸 「わ、悪い……助かる……」

 

文乃 (だから、きみがずっとカート引いてるんだから、悪いなんて思う必要ないんだってば……)

 

文乃 (本当に損な性格。きみの将来が心配だよ、お姉ちゃんは)

 

成幸 (あ、あと少し……あと少しで、一周だ……)

 

成幸 (長距離走より疲れるぞ、これ……)

 

 

………………体育用具倉庫

 

成幸 「うおお、おわった……」

 

ゴトッ

 

成幸 「これで全部のパイロンをしまえたか……長かった……」

 

文乃 「おつかれさま、成幸くん」

 

成幸 「いや、古橋もおつかれさま。つか、悪いな、変なことに巻き込んで。俺がパンを賭けようなんて言ったから……」

 

文乃 「いやいや、それはおかしいよ。わたしが何か賭けようかって言い出したのが悪いんだから。ごめんね」

 

成幸 「ん……いや、まぁ、俺もそれに乗ったわけだし、べつに……」

 

成幸 「そんなことより、早く戻ろうぜ。今日は図書室で勉強の日だろ」

 

文乃 「それもそうだね」 クスッ 「いつまでも成幸くんを独り占めしてたら、りっちゃんとうるかちゃんに怒られちゃうね」

 

成幸 「独り占め? なんだそりゃ。俺はべつに――」

 

――――ガシャン

 

成幸 「へ……?」

 

………………外

 

真冬 「………………」

 

真冬 (まったく、なぜ私が体育用具倉庫の施錠をしなければならないのかしら……)

 

真冬 (体育の先生方も忙しいのはわかるけれど、そのあたりしっかりとしてもらわないと困るわ)

 

真冬 (……外周にパイロンが残っていないのは確認したし、カートも帰ってきている)

 

真冬 (滝沢先生は生徒にお願いしたと言っていたけど、その生徒たちはパイロンをしっかり回収したようね)

 

真冬 (さっさと鍵をかけて仕事に戻りましょう……)

 

ガシャン

 

真冬 (これでよし、と。さっさと仕事に戻りましょう)

 

 

………………体育用具倉庫

 

文乃 「い、今の音って……」

 

成幸 「鍵がしまったような音だったな?」

 

文乃 「鍵って、ひょっとして……」

 

バッ……ガチャガチャガチャ……!!!

 

成幸 「開かねえ!! これは、ひょっとしてひょっとすると……」

 

成幸&文乃 「「閉じ込められた!?」」

 

成幸 「誰かー! 誰かいませんかー!」

 

ドンドンドン……!!!

 

成幸 「……ダメだ。鍵をかけた人はもうどこかに行っちゃったみたいだ」

 

文乃 「……うーむ」

 

成幸 「古橋? なんだ、考え込むような顔をして」

 

文乃 「いや、大したことじゃないんだけどさ、一言だけ言わせてほしくて」

 

文乃 「なんてベタな……」

 

………………

 

文乃 「成幸くん、携帯電話持ってる?」

 

成幸 「あいにく、荷物は全部教室だ。古橋は?」

 

文乃 「同じく、だよ……」

 

成幸 「助けを呼んでも聞こえるような場所じゃないしなぁ……」

 

成幸 「仕方ない。このまま、気づいた誰かが助けに来てくれるのを待とう」

 

成幸 「図書室に俺たちが現れなけりゃ、緒方が心配して先生に相談してくれるだろ」

 

文乃 「カバンも教室に置きっぱなしだから、きっと滝沢先生が気づいてくれるよね」

 

成幸 「ゆっくり待とう。ちょっとした休憩だな」

 

文乃 「……うん」

 

成幸 「………………」

 

文乃 「………………」

 

成幸 (……気まずい)

 

成幸 (と、いうよりは、どういう顔をしていたらいいのか分からない)

 

成幸 (今さらな話ではあるが、古橋はそれはもうとてつもない美少女だ)

 

成幸 (間違っても、薄暗い密室で一緒にいて心安らぐような相手じゃない)

 

成幸 (そして何より、向こうは恐らく、もっとそう思っているだろうということだ)

 

文乃 「………………」

 

成幸 (古橋のアンニュイな顔がそれを物語っている)

 

 

―――― 『実はわたし…… 威圧してくる男の人が怖くて……』

 

 

成幸 (俺はそういうタイプの男じゃない……とは思いたいが、)

 

成幸 (もしも万が一、古橋が今のこの状況を山岡に迫られたときのように感じているとしたら、)

 

成幸 (俺は今、絶対、古橋に近づいちゃいけない……!!)

 

文乃 「………………」

 

文乃 (ど、どどど、どうしよう……)

 

ズーン

 

文乃 (わたしがそもそも賭け事なんてイケナイことを提案しなければ、こんなことには……)

 

文乃 (当たり前だけどなんの勉強道具も持ってきてないし、わたしはともかく、成幸くんは……)

 

成幸 「………………」

 

文乃 (めちゃくちゃ険しい顔してるー!! そりゃそうだよ。だって、わたしのせいで勉強が……)

 

文乃 (わたしの勉強が進まないのは自業自得として、それに成幸くんを付き合わせてるのはまずいんだよ)

 

文乃 (な、なんとしても早くここから脱出しないと……!!)

 

文乃 (出られるとすれば……)

 

チラッ

 

文乃 (あの、天井近くの採光用の窓。薄べったいけど、届きさえすれば、わたしなら通れる!)

 

文乃 (そのためには……)

 

文乃 「あ、あのあの、成幸くん」

 

成幸 「!? お、おう、なんだ、古橋」

 

文乃 「ひとつ提案があるんだけど、あの採光窓から外に出てみない?」

 

文乃 「成幸くんが踏み台になってくれれば、わたしひとりなら出られると思うんだ」

 

文乃 「そうしたら、職員室に助けを呼べるし、すぐにここから出られるよ」

 

成幸 「……ん、まぁ、たしかにお前なら出られそうだな、あの窓」

 

成幸 「………………」

 

フルフル

 

成幸 「……でも、ダメだ。さすがに危なすぎる。こちら側は俺が肩車でもすればいいかもしれないが、」

 

成幸 「外に踏み台になるものがあるとも限らない。あの高さから変な飛び降り方をしたら、お前がケガをする」

 

成幸 「危険すぎる。だからダメだ」

 

文乃 「そ、そっか。そうだよね……。ごめん」

 

成幸 「おとなしく先生を待とうぜ。すぐ助けに来てくれるって」

 

 

………………図書室

 

理珠 「………………」

 

カリカリカリ……

 

理珠 「……成幸さんと文乃、遅いですね」

 

理珠 (今日は体育の片付けを命じられたとかで行ってしまいましたが……)

 

理珠 (そんなにたくさんの片付けを命じられたのでしょうか。かわいそうに……)

 

フンスフンス

 

理珠 (うるかさんも水泳の練習でいませんし、)

 

理珠 (いまのうちに問題を解いて解いて解きまくって、みんなを驚かせてあげましょう)

 

カリカリカリカリカリ…………

 

 

………………数時間後

 

成幸 「……日、暮れてきたな」

 

文乃 「うん……」

 

成幸 「………………」

 

文乃 「………………」

 

成幸&文乃 ((気まずい!!!!

美琴「昨夜のこと思い出したら集中できなくなっちゃって///」【とあるss/アニメss】

 

 一枚のタオルケットの包まれた上条当麻は右手の軽さに違和感を覚えながら焦げ臭い匂いで目を覚ました。

 瞬き混じりで重い目を開けると匂いは明確に鼻腔に飛び込んでくる。

 寝起きの喉の粘着く不快感を覚えながら上体を起こし、パジャマ姿のまま周囲を見渡す。

 するとリビングと一体化したキッチンの方で僅かながら空気が黒ずんでいて、それを全開で動作する換気扇が吸い込んでは外部へ吐き出していた。

 コンロの前にはカエルのエプロンをつけたパジャマ姿の少女が失態をどう誤魔化すか、という表情で佇んでいる。

 こちらの視線に気づいたのか、通い妻たる御坂美琴は振り向いて、上条に冷や汗の混じった顔で、

 

「おはよう、ごめん、焦がしちゃった」

 

 と舌を出した。

 今の今まで火を使っていたのだろう、ほんのりと赤みが差している。

 

 時期は初夏の六月。土曜日から日曜日にかけての週末。

 木々はますます青々と茂り日差しは高くなり、空も成層圏まで飛び抜けそうな季節。

 例年のように続く異常気象とやらは今年も健在らしく、南北に長いこの国ではさっそく三十度を超える場所が出ているらしい。

 

 当然、その一つに学園都市も含まれている。

 アスファルトだらけのこの世界はこもった熱は重ねられていく一方。

 それでもやはり若さか、街には活気があふれている。

 

 そんな夏にも負けない熱い一夜を過ごしたはずなのだが、御坂美琴の表情にはそういった色合いは一切見られない。

 腕の中で息を荒げる彼女を独り占めしているという牡の興奮は確かに手のひらに残っているはずなのにあっけらかんとしたあどけない顔のまま。

 

 飾り気のないファンシーなピンク色のパジャマは身体のラインをはっきりと浮かび上がらせていて、それでいてとても健康的で。

 情熱的な昨晩とイメージは随分異なる。

 部屋の外さえ出なければそのまま日中過ごしても問題なさげに思えてくる。

 当然、化粧っけなどない。

 

「当麻、おはようは?」

 

「お、おはよう……」

 

「ん。一応出来てるからさ、顔洗ってきてよ。ベーコン真っ黒だし白身も焦げ付いちゃったけど黄身は無事なのよ。勿体ないから食べる?」

 

「あ、ああ」

 

 特段、これが初めてというわけではない。

 何度目かも数えることもできないほどの朝で、落ち着かない理由はないはずなのに上条は足元がフラフラとする感覚を味わっている。

 ゆっくりと洗面所へと足を運び、緑色のカエルの歯ブラシと並んでいる飾り気も何もない安物の歯ブラシを手に取る。

 そして歯を磨いて顔を洗った。

 濡れた顔面をタオルで拭うと洗面台の鏡の中に前髪と目の垂れた冴えない男がいた。

 当然、上条当麻その人である。

 ミント味の歯磨きと冷たい水とをいくら感じても心のモヤは晴れなかった。

(アイツ、なんでいつも平気なのかな――)

 

 

 拭いたはずの顔を再び冷水に突っ込む。

 瞬間止まる呼吸と息苦しさ。

 その中には僅かながら嫉妬のようなものが混じっている。

 

 御坂美琴

 学園都市の誇る超能力者の第三位。別名、超電磁砲

 あの夏から二回りしてより一層美しく成長した彼女は少女の笑顔のまま大人への階段を登っている。

 学園都市でも著名人である彼女の美しさは画面や紙面越しでは伝わりづらく、名前の割には窮屈な生活をしていない。

 だがそんなことを取り除いたとしても彼女はとても魅力的な女性として花開いていた。

 

 だからこそ、平々凡々な一学生である自分と釣り合っているのか――という思いが上条の中に少なからず存在する。

 それ以上に反発する心も確かに存在するのだが、一面で納得すらしている。

 元々他人の評価など気にせず自分が正しいと思ったことをやり遂げる意志の強さがあった上条当麻だ。

 一度感じてしまった疑惑というものはしつこく根を張る。

 

 別に、裏切っているとか、そういったことを考えているわけではないのだけれども。

 ただ、あれだけのことをした次の朝に少しぐらい照れるとか、恥ずかしそうにするとか、そういった仕草を、見たいという欲望がある。

 そんなことを考えている自分にもイラつきを感じている。

 

 子供っぽい、と自省するも自分は偽れない。

 酔っている最中にふと覚醒したら背中に道がなかった。

 欺瞞のような感覚に苛まれている。

 付き合ってから二年も経とうとしているのに少しも大人びていない。

 

 再び顔を上げて、タオルで顔を拭って。

 そして鏡から覗き込んでいる顔はとても平凡で不安げな表情をしていた。

 二年前から少しも変わっていない。

 彼女は髪を伸ばし始めて明確に自分から変わろうとしているのに、上条当麻という個性は髪型一つ変えられていない。

 

 はぁ、と吐く息が重かった。

 

「ちょっと、当麻! まだぁ?ご飯覚めちゃうってばぁ」

 

 壁一枚隔てたリビングキッチンから能天気な声が響いてきた。

 かくん、と首を落として、ぐい、と胸を張って、ぱんぱん、と頬を叩いて。

 少しだけ鏡の中の顔に気合が入る。

 

 暑い夏の朝にこんな顔をしていられるか、なぁ、受験生。

 特別な右手と誰にでもある勇気だけで世界を敵に回したかつての英雄は自身を平凡な存在と卑下しながらも前を向いた。

 

 しかし、やることはやはりごくごく平凡。

 リビングに戻って、朝食の並べてあるローテーブルの前に胡座で腰を下ろして。

 

「いただきます」

 

 と箸を掲げながら両手を合わせて一礼。

 

「うん、召し上がれ」

 

 元気の入った『いただきます』に機嫌よさげに微笑んだ美琴が艶やかな唇を優しげに綻ばせる。

 白いご飯、豆腐とわかめの味噌汁。ボウルに盛られたグリーンサラダ、焼き海苔と、切ったハムと、そして少し焦げ臭い目玉焼きの黄身が二個。

 それが上条の前に並べられていた。

 黄身は半熟が好みだがしっかり火が通っているものに醤油をかけて崩しながら白米と合わせて食べるのも結構乙なものだ。

 

「ハムはベーコンの代わりね。卵はボリュームなくなっちゃったから二つとも食べて」

 

 明るくニコニコした顔。

 フライパンを焦がしたことはもう気に留めていないらしい。

 別に大した事柄ではないし、それはそれで構わないのだが、この瑣末な出来事以上に言葉の中に悪戯を思いついたような色合いが混じっている。

 微妙な変化だが、上条にはそれがわかる。

 

「あとさ、フライパン焦がしちゃったから、新しいの買いに行きたいんだけど」

 

 男性としては長身とは言いづらい上条当麻と女性としては平均的な身長の御坂美琴

 それでも身長差はあるのだが、座ってしまえばまさに誤差の範囲。

 のはずなのだが、見上げてくるような視線は甘えてくるようで実のところ逆らえない響きを持っている。

 しかもその響きは上条の警戒心とか猜疑心とか、そういったものを溶かす効果すらあった。

 

「……付き合え、って言うんだろ?」

 

 その返事を聞いて、少女が満面の笑みを浮かべる。

 ぱん、と両手を目の前で叩いて、さもいいことを思いついた――実のところ、最初っから考えていたのだろうけれども――といった趣きで言葉をつなげる。

 

 

「デートしようよ、久々にさ。なぁんか、当麻も勉強ばっかりで鬱憤溜まっているみたいだし。私も一回自分の部屋戻って着替えてくる。十一時ぐらいに待ち合わせ。いいかな?」

 

「ん、そうだな」

 

 確かに、そういった外出は随分と自粛しているような気がする。

 なんだかんだで美琴の笑顔は可愛い。

 化粧なしでも人前に出れる程度、との自己評価が高いのか低いのか、少なくとも上条にとっては満点でありとても素敵だ。

 週に四日は泊まり込んでいていつでも見られる笑顔なのに、見るたびに綺麗になっているような気がする。

 上条は心の虚に巣食った黒々としたものが小さくなっていくのを感じていた。

 

 

 閑話。

 

 テフロン加工が施されているフライパンは焦げ付きにくいのだが絶対ではない。

 ましてや金タワシでギシギシやってしまえばどうしようもない。

 学園都市の最新技術は安物には適用していないらしく外部の同程度の品より若干安いくらいで、だったら真面目に説明書通り使うように。

 そうすればもっと長く使えました。

 焦げつかしたのは私が悪いんだけれども。

 と、着替えて自宅へ帰宅する直前の美琴から軽いお説教を喰らう上条であったがまさに余談。

 

 

 閑話休題

 午前十時。

 

「はああ……」

 

 

 机替わりにしているローテーブルの上で勉学に励んでいた上条さんはカラフルなノートを放り出してフローリングに絨毯敷の床に大の字に寝転がった。

 中に放り投げたシャープペンシルがくるくると軸方向に回転しながら放物線を描き、みごと、スタンとローテーブルの上に落ちる。

 

 現在のところ成績は上昇中。

 狙うは教育学部世界史系。

 必須科目は歴史に国語に英語。特に英語が鬼門だ。

 世界史日本史に関して言えば「高校の教科書を完全に理解してれば余裕でマスターには入れるよ」との美琴の言葉があって、その助言通りに行動している。

 具体的には五十年単位のイベントを一枚の紙に纏め、紙の上で様々な色で線を紡いでネットワークを構築。

 それで発送を連鎖させるというもの。

 

 十四世紀の朱子学後醍醐天皇の思想←→当時の武士が求めていたもの。

 朱子学←→陽明学王陽明→実践的な儒教思想大塩平八郎が求めていたもの。

 などなど、とにかく横に横に繋げていく方法だ。

 ひとつを忘れてもほかの事柄から連想が効く、という時間はかかるが忘れない方法である。

 これをどんどんとつなげていくと何かしら魔法陣のようなものが出来上がって妙に感心したりする。

 

 この方法が英語では使えない。

 まずは単語を丸暗記。

 八百程度の単語を覚えれば大体意味はわかるというが、上条の脳はイミのない単語の羅列を覚えるのはとても苦痛なのである。

 

 しかしまぁ、それでも昔に比べれば実感はある。

 ひとつ屋根の下で他の誰かと過ごす経験は初めてではないが、あの時には感じなかった華やかさが充実感をくれる。

 いい刺激となって勉学に打ち込める。

 届かなかったものに手が届くという感覚は一度知ってしまえば病みつきになる。

 恋人が努力で才能の階段を駆け上がった気分が少しだけ理解できた気がした。

 

 寝転がったまま上条は携帯電話に手を伸ばした。

 御坂美琴と無料で通話できる契約を結んだ――実際問題、直に会話する方に傾きすぎていてほとんど役になっていない――小さな端末。

 学園都市の外側のスマートフォンなどとは比べ物にならない高機能ながらもそのすべてを使いこなせない科学の末端はディスプレイに時刻を表示していた。

 

 

(そろそろ、いくか。上条さんは紳士ですから、女の子を待たせたりなんかできませんのことよ)

 

 たった二時間弱ではあるが、とにかく机には向かった。

 習慣は途切れさせないことが大切である。

 ましてや学園都市で数える程の天才でもなければ完全記憶能力者でもない上条当麻にとっては日々足掻くことこそが最大の武器である。

 この敵ばかりは勇気と度胸ではどうにもならない。

 

 もっとも、負けるつもりはさらさらない。

 二年前ならいざ知らず、今は心強い味方がついている。

 隣にいないだけで二時間がこんなにも長くなる。

 

 起き上がって壁にかかったハンガーに手を伸ばす。

 こんな時ぐらい、少しオシャレをしなくては。

 ファッション誌そのままのコーディネイトという事以上の努力は望めない上条さんである。

 が、ひとまず恥ずかしくないコードを揃えて暑い初夏の日差しの中に飛び出していった。

 

 暑い。

 暑すぎる。

 照りつける日差しが容赦なく街路を行く若者たちを焼き付ける。

 すかっとするさわやかな光、というよりはあちい鉄板の上でゆらりと揺れる陽炎のような熱気に近い。

 

 学園都市は成績優秀者にはとても寛大だ。

 上位何名、で足切りはしない。

 推薦枠もそれなりに広い。

 もちろん、上位と言われる研究機関を並立した大学への推薦は実際に研究で結果を出したかどうかで左右される。

 が、無能力者だから、研究者ではないからといってその道が閉ざされているわけでもない。

 

 要するに、三年生の夏までの成績が優秀だ、と判断されればそれなりの数の生徒が受験から解放されるのだ。

 

 当然ながら全員が全員受験進学を目指しているわけでもないし、いくら多いとは言え推薦枠は一般受験枠よりは狭い入口となる。

 それでも今頑張れば解放される、と夏から秋にかけてのこの時期に妙に気合の入った学生たちをあちらこちらで見かけることになる。

 踏ん張りどころ、というやつだ。

 

 実際、進学校ではない上条の学校、同窓生の吹寄制理という巨乳の健康オタク委員長、対上条に置ける鉄壁ガード能力保持者がこの推薦枠に挑んでいる。

 ピリピリしてるから刺激をしないようにしておこう、と思っていたところを危険な青い髪の変態が、

 

「あの日、やな」

 

 とか余計なことを言ってくれたおかげで何故か上条に鉄拳と石頭が飛んできたが、それもまた学園都市の風物詩の一つ――なのだろう、たぶん。

 

 とにかく、暑いだけではないのだ。

 受験生となるまでは気づかなかった様々なひとの意思の形が学生だらけの街のあちらこちらに浮かんでいる。

 それをなんとなく感じ取りながら上条は薄く汗の浮いた額をスポーツタオルで拭いた。

 

 それほど距離を歩いたわけではない。

 公共機関、交通網が発達した学園都市だ。

 繁華街、第十五学区へと移動するのにほとんど足は使わない。

 

 そのはずなのだが、うっすらと脇の下あたりが湿っぽい。

 身体が体温を下げようと勝手に反応しているのだ。

 ただの無能力者、一般人たる上条にはどうしようもない。

 そして今ここで天を恨んでいる人間は皆そうなのだろう。

 

 焼き煉瓦の赤い歩道。

 夜中に搬入のための車両が通行する以外は歩行者天国となっている車道エリアもあって、歩道部分は歩くというよりも街路樹の影で涼を取る空間となっている。

 右を見ても左を見ても私服の男女が誰かを、或いは誰かたちを待って自己主張の激しい太陽を憎らし気に見上げている。

 

 大きな噴水のある広場の、鏡面仕上げの現代アート

 キラキラと眩しいそれを前にして上条は植え込みの煉瓦部分に腰掛けていた。

 ふと見れば隣にカップルが座っていてイチゴ味のフラッペをふたりで美味しそうに訳あっていたりする。

 微笑ましい反面うっとおしいのは上条の待ち人が来ないからだろう。

 まだ本格的な夏は遠かりし、という時期であるのにもうこれか。

 

 すぐ近くのショッピングモールに行くための待ち合わせ場所として指定されているこの場所には多くの人たちが足を休めている。

 きちんとしたチェアだけではなく、縁淵や、場合によっては地べたに座り込んでさえいる。

 最近の若者の下半身の能力低下は嘆かわしいとかそういった記事になりそうな光景だ。

 

 そんな上条の前にふと淡い影が降りた。

 見上げればひとりの少女の影。

 見上げれば淡いモスグリーンのシャツに肩口で切った洗いざらしのリネン地のジャケット。

 シャツよりも濃いグリーンのチェニックのショートスカートからは健康的な素足が覗いていて白いかかとを浮かばせたまま可愛らしいサンダルへと帰結している。

 明るい色の髪の毛はピンク色のシュシュで耳から上の髪を纏めていて大人の色気を醸し出していた。

 

「お待たせ。暑かったでしょ、これあげるわ」

 

「わり、ありがたくもらうわ」

 

 言って、半分ぐらい飲み干したであろうペットボトルを差し出すのは御坂美琴

 幸いというべきか、インタビュー記事などで見せる顔よりも健康的なオーラが強くて周りの人間には気づかれていない。

 もっとも、それは恐らくは数分だけの沈黙であるのでさっさと逃げるのが上策なのはいつもの通り。

 

 立ち上がった上条はペットボトルを受け取って一気に飲み干し、ぐいと握りつぶして通りすがりのお掃除ロボットへ用済みの容器を投げ捨てる。

 そして彼女の手を引いてお目当てのショッピングモールへと移動しよう――としたが。

 

「こら、なんかいうことないの?」

 

 美琴は目尻を釣り上げ、腰に両手を当ててむくれていた。

 

「ごめん。似合ってる、可愛いよ」

 

「うん、よろしいっ!」

 

 これが会った頃であったのならばこんな気障なセリフを上条が吐くことはできなかっただろう。

 少女も言葉より先に電撃を飛ばしていただろう。

 それをぱんと不思議な右手でかき消して、更に機嫌を悪くした少女が無闇矢鱈に電撃を飛ばしまくって少年が夜の街を逃げ回る。

 そんな光景になっていたのかもしれない。

 

 だが、今はそうではない。

 お互いを意識している。

 

 大輪の向日葵のような満面の笑みの恋人の手を改めて握りなおす。

 小さくて華奢な手で、少し力を入れてしまえば壊れてしまいそうに思える。

 大切にしなくちゃな、と再確認した。

 

「じゃあどこ行こうか。いきなりフライパンっていうのは面白くないだろ?」

「そうね。家具とか家電とかパッと見てさ、めぼしい物見つけたら一回遊ばない?色々あるみたいなのよ、ここ」

 

「オッケ。お姫様の言うとおりにさせていただきますのことよ」

 

 強く右手を握り占めてくる少し下から見上げる視線。

 太陽ではない熱さをふたりして感じながら二人は次の場所へと歩みを進めた。

 

 風を裂いてボールが飛んでくる。

 一度コートでバウンドしても威力はまったく衰えない。

 それを上条はタイミングよく打ち返す。

 だがひと呼吸つく間もなくネットの向こうから再びボールが襲ってきた。

 足の親指に力を込めてダッシュし、勢いそのままに腰から上半身を回転させる。

 すぱん、という小気味いい音がした次の瞬間にはボールは相手のコートの隅でバウンドして消えていった。

 

「あーあ、これでマッチポイントか。アンタ、テニス初めてじゃないわね」

 

「一応学校でルールは覚えた。でも素人って言っても過言ではないのですのよ?」

 

「ふぅん。運動神経いいのねぇ」

 

 シャツとスコートを組み合わせたシンプルなテニスウェアをまとった美琴がラケットを肩の上に乗せている。

 柔らかな日差しを反射してとても魅力的だ。

 空は青く澄み渡り空気は肺に新鮮で気分爽快――と言いたいところだが、ここは実はショッピングモールの地下である。

 涼し気な高原の環境はすべて作り物で実際はコンクリートの箱の中で発汗している。

 だが脳に酸素が回っていないのか、分かっていても感じはしなかった。

 

 実際、ちょっとしたウォームアップ程度のつもりだった。

 元々、汗をかいていて不快な部分もあった。

 ウェアに着替えてプレイしている間に洗濯乾燥までしてくれるサービス――しかも無料だそうだ――に釣られたのだが。

 いざ始めてみればふたりして夢中になっている。

 

 常盤台で経験豊富の美琴の圧勝か、と最初は思われていたがとにかく勘のいい上条の動きにゲームは五分五分で動かなくなっていた。

 とにかく真剣になって審判をつけなかったのが惜しいぐらいに盛り上がっている。

 一ゲーム目はなんとか拾った美琴だったが、もう一回と挑まれた二ゲーム目では土俵際にまで追い込まれていた。

 

 鋭いボールを追いかける。

 美琴の視界には自分と同じような白いウェアの上条の姿が。

 悔しいけれども、正直かっこいい。

 ネット際での反撃はギリギリのところで上条に捉えられる。

 

 経験ではやはり美琴の方が何枚も上なのだろう。

 体力も女の子としては最高クラス。

 それでも上条に敵う気がしない。

 そして、そのことを悔しいとも思えない――かっこいいな、と思ってしまったことは悔しいのに――自分にも気づいている。

 

 一方の上条にも余裕はない。

 溺れないように足掻いている、その足掻きがたまたま成功しているだけなのだから仕方があるまい。

 それに、その足掻きも少しづつ真剣さを失ってきている。

 艶やかな頬を高揚させて額に玉の汗を浮かべながらボールを追いかける恋人に見惚れる瞬間があるのだ。

 

 伸縮性のあるシャツは身体にフィットしてラインを顕にしているし、伸ばしている髪を纏めたポニーテールが急制動の動きに跳ねる様も美しい。

 ラケットを振れば胸元が揺れるしスコートが翻る。

 そんなことを気にしてては負ける、と分かっていても男は悲しい生き物なのだ。

 

 結局。

 マッチポイントまで追い込んでおきながら上条は二連敗という結果になった。

 激しい応酬の上、美琴のキレのあるサーブを打ち返した、までは良かったのだが。

 天井近くまで打ち上げられたボールは格好の餌食で、ニンマリと勝利を確信した笑みを浮かべてのスマッシュとボールの弾ける音で決着がついたのだ。

「まだまだよね、アンタも」

 

 ふふん、と得意げに鼻を鳴らした美琴を見て上条の虚脱感や無念も微笑ましいものに変わる。

 結果はどうであろうと気持ちよく汗をかけば心もスッキリする。

 同じ場所で同じように汗をかいたのだから連帯感のようなものも感じ取れる。

 単純に独占欲を満たしてくれている。

 

 そうして、はいっとタオルを頭から被せられた。

 背伸び気味に子供のようにゴシゴシと汗を拭われる。

 

「――少しはさっぱりしたかな?」

 

 と、言葉を追加された。

 

「え?」

 

 上条がまだ荒い呼吸のままタオルの中で疑問符を上げると同じように呼吸の荒い少女が小首を傾げて応える。

 

「なぁんか、朝不機嫌そうだったからさ。勉強のし過ぎでストレス溜まってんのかなーって。ここは偶然だったけど、何かしら運動させたいなぁって思ってたのよね」

 

「それは、その……うん、ありがと」

 

 正直に話せることではないし、心の淀みもなくなったことは事実だ。

 酸素不足の肉体のおかげで頭がバカになって余計なことを考えなくなる。

 それが悩みを軽減することは確かだろう。

 

「……その、昨夜も汗はかいたけどさ、あれは別物だしね」

 

 そして、聞き取れないほど小さな声で美琴が呟いた。それを上条は見逃さなかった。

 火照っている。

 テニスであれだけ動いたのだから当然だ。

 しかしそれだけではない。そう思えて、確信した。

 美琴が、恥ずかしがってる。

 

「ば、オマエいきなり何を……」

 

 上条も美琴以上に頬を赤くする。

 心臓のあたりできゅうという音がして舌が微妙に引きつった。

 とても可愛いし、何よりも嬉しい。

 なんとも思っていないわけではない。

 

 思い返してみれば純情もいいところでちょっとしたからかいにですら顔を真っ赤にして電撃を飛ばしていた娘である。

 本質がそう簡単に変わるわけじゃない。

 ポーカーフェイスなのかどうかはわからないにせよ、上条の思い込みは自意識過剰だったと証明された。

 

 そして、微妙に甘ったるい粘性の空気が流れる。

 その重さに耐え切れなくなったのか、漫画で言えば頬に斜線を入れた美琴が上目遣いで呟いた。

 

「あ、あのさ。ついでだから言っちゃうけど。今朝、焦がしちゃったの、昨夜のこと思い出してたら、だかんね」

 

 

 だから半分以上はアンタが悪い、と取ってつけたような反論。

 そのまま上条の胸元にどん、といいパンチを入れる。

 

 そしてタイミングがいいのか悪いのか、その瞬間上条の胃袋がくぅと鳴った。

 思わずふたりでその場所を覗き込んで一緒のタイミングで顔を上げる。

 見つめ合う形で唇を歪めて、そしてふたりして大声で笑い出した。

 美琴などはお腹をかかえて笑っている。もしかしたら自分の腹の音が出るのを防いでいるのかもしれない。

  

「んもう、シリアスをコミカルにしちゃうんだから」

 

 箸が転がっても笑う年頃のふたりだ。

 ネジが外れたように笑って笑って、屋外に見える室内の空間を勧笑の響きでいっぱいにする。

 そして笑い疲れたのか、目尻に涙を浮かべながら白い歯を見せる少女はもう一度拳を握りしめて、今度は上条の腹を叩く。

 

「どうする?ボリューム優先でいく?今ならきっとなんでも美味しいと思うけれど」

 

「お姫様のおっしゃる通りに」

 

 言って。

 また笑い合って。

 とりあえずのところはシャワーを浴びて着替えるという点で一致したふたりは十五分後の待ち合わせ時間を指定したあとそれぞれの更衣室へと移動することにした。

 

 

「わぁ……」

 

 美琴が目をキラキラさせて見ているのはカラフルな色合いのクレープの移動販売車だ。

 なんと、五百円以上のクレープを頼めばファンシーなカエルのストラップがついてくるという。

 

 あれから軽く食事を済ませ新しいフライパンを買い込んで、ついでにウィンドウショッピングをしながらあちこちケチをつけたりつけなかったりして。

 どこにでもいる恋人同士の当たり前のデートを楽しんで。

 夕暮れにはまだ遠いけれどももうすぐ気配が漂ってくるような、そんな時間。

 まだ空腹には程遠い。

 

「食べてく?」

 

「いいの?」

 

「いいもなにも、ゲコ太見た瞬間に美琴センセーの足が止まってるんですけど」

 

 ありがと、という一言とギュッと右腕に抱きついてくる薄い胸の感覚。

 やれやれ、と思いながらも張り切ってアイスクリーム屋に向かう美琴に上条は引きづられる。

 左腕に下げた鍋の入った買い物袋が上条の動きからワンテンポずれて振り子軌道を描いた。

 

「うーん、アイス苺チョコも捨てがたいしバナナカスタードも好きなんだよねぇ。

 あ、ルバーブなんてのもある。迷うなぁ。

 当麻はどうするの?」

 

「いや、上条さんそんなにお腹がすいてな――」

 

 ギロ。

 瞬間、歴戦の勇者ですらも背筋が凍りつくような殺気のこもった視線が上条を貫いた。

 

「た、食べます。じゃあ、このルバーブってやつで……」

 

「あ、私もそれにしようか悩んでたのに」

 

「じゃあ変える――」

 

「カエル!?」

 

 美麗淡麗。後味爽やか。責任感の強いアネゴ系。

 であるはずの御坂美琴さんであったが、ことカエルのマスコットキャラが絡むと人格が変わる。

 限定とか余計な二文字がついているのも問題かもしれない。

 明日から毎日通う……でも学校帰りにここに寄ってたら夕飯が……いっそのことここで全キャラ制覇……

 などなど、聞こえなくてもいい呟き声がすぐ隣から聞こえてくる。

 背中に冷たいものを感じさせる上条さんを他所に、バナナカスタードとやらを注文した美琴。

 チラチラと視線を限定の二文字に送りながらもちょっと引いた店員さんがクレープを焼き上げるのを待つ。

 

 

「ところで、ルバーブってなんなんだ?」

 

「そういう植物よ。見た目はフキに似てるのかな。ちょっと酸っぱいけどジャムにすると美味しいのよ。ここもそうみたいね。

 確か日本でも昔から自生していて古事記とかに『大黄』という名前で書かれているのよ?」

 

「いや、これまで生きてきて一度も聞いたことない名前なんだけど」

 

「アンタはもう少し常識ってやつを広げたほうがいいわね。常識知らずの右手を持ってる割には小市民なんだから」

 

「やかましいわ。将来の夢は真面目な公務員なんですよ上条さんは」

 

 教育学部を目指している一学生と超能力者第三位とのたわいのない会話。

 そうこうしているうちにくるりと巻き上げられたクレープをそれぞれの手に持ってお会計を済ませてしまう。

 そのまま移動販売車前に置かれている安っぽいプラスティック製の長椅子にならんで腰掛けた。

 きらりと口元を光らせているものと不敵に笑う二種類のゲコ太を手に入れて満面喜悦の美琴とは異なりクレープの甘い匂いに上条は軽い胸焼けを覚える。

 パクリ、と小さな口で食いついてもしゃもしゃと咀嚼する美琴はそんな上条を不思議そうな目で見ていた。

 

「食べないの?クリーム溶けちゃうわよ?」

 

「いや、想像以上に匂いが甘くて……」

 

「いい生地の証拠よ。流石に本物は使ってないけどいいエッセンス使ってるわ、苦味とか混じってない」

 

「そういうもんですかね」

 

 ルバーブの酸味ある匂いは嫌いではないのだそれ以上に生地から発するバニラ臭がきつい。

 かと言って食べないわけにもいくまい。

 決心して、かぶりと一口。

 

「こ、これは――うまいっ!」

 

 確かに酸味が強い。

 レモンとかの柑橘系より強いかもしれない。

 だが決して不快ではない。

 緑色の混じった紅のジャムはジャムなだけあってかなり甘いが生クリームはほとんど甘味を感じさせない。

 随分と砂糖を減らしているのだろう。

 二つが口の中で交じり合うとちょうどいい、より少しだけ物足りない甘さに変わる。

 その物足りなさが胃袋を蠢動させて勝手にスペースを作る。

 身体も喜んでいる味だ。

 

「そっか。よかったじゃない。じゃあこれも食べてみない?」

 

 言って、一口欠けたクレープを差し出す美琴。

 急速に感じた空腹感のおかげで甘さへの嫌悪がなくなった上条はそのまま首だけ動かして齧り付いた。

 

「うん、これもなかなか」

 

 これも思ったほどに甘くない。

 カスタードクリームの甘さが生クリームで軽減されて口当たりが軽い。

 バナナは色焼け防止のためかレモン汁をかけてあるらしく、またその酸味がいい。

 ルバーブジャムとはまったく異なるのだが甘さと酸味のバランスがとてもいいのだ。

 

「こらこら、私にはくれないの?」

 

「我儘お嬢様だな。ほら、たぁんとおあがり」

 

 フライパンを膝の上に乗せた上条が美琴にルバーブクレープを差し出す。

 いただきます、と一言いって、そして少しだけ躊躇って。

 

「間接キス、かな」

 

 少しだけ頬を染めた悪戯っぽい目で。

 小悪魔のような上目遣いで。

 子供のようなことを言って、パクリと噛み付く。

 

 当然、少女は口が塞がる。

 そんな言葉を聞かされた上条は唖然としながらも沈黙している理由を奪われている。

 たいしたことをしているわけじゃない。

 一緒にいると落ち着くし、楽しいし。心が落ち着く。

 だが今の一言で頭の中で火花がバチバチなった。

 これ以上のことなんか、いくらでもしているはずなのに。

 

「今更何を言ってるんだよ――」

 

 正しいはずの反論はとても弱々しく、真摯に向けてきた瞳に一気に化けの皮を剥がされる。

 ぐぅ、と何も言葉を発せない。

 そして沈黙のままの少年の前で少女は、ぱあ、と顔を輝かせた。

 そのまま、うんうん、と勝手に納得してしまう。

 

「要するにアンタ、私に惚れ直したってことよねー」

 

 大問題の大発言。

 しかもそれがあながち間違っていないからタチが悪い。

 いや、あながちどころの問題ではない。否定する要素がどこにも見当たらない。

 

 

 しかし、だ。

 時間も押してきて段々と人通りが寂しくなりつつあるとは言っても公路であることには違いない。

 こんなことを大声で言われては、そのなんだ、大変困ることになる。

 思わず上条は持っているルバーブクレープを美琴の口へと押し付けた。

 一瞬、むっとした顔をするも大人しくそれを頬張り始める。

 

 つかの間の沈黙の後、

 

「アンタはホント、子供なんだから」

 

 との温かいお言葉。

 しょうがないな、との顔つきは母親が子供を叱る時のそれ。

 ここでもう少し色っぽいこととか言いなさいよねー、とさらにダメ出しが重なる。

 

「オマエが言うのかよ。フライパン焦がすぐらいのおっちょこちょいが」

 

 照れくさそうに言い返したものの、上条は自分自身が子供であることはまったく否定することはできなかった。

 悔し紛れのようにクレープを口にする。

 それは酸っぱくて甘くて、わずかにほろ苦いように感じた。

 

 なんとはなしに空を見上げる。

 高いビルに切り取られて狭くなった世界はそれでも青々しい。

 雲一つなく突き抜けている。

 

「しかしいいのか? 買って帰るのフライパンだけだなんて。ほかに欲しいもんなかったのかよ」

 

「そうだねぇ。お醤油と油がなくなりそうだし。せっかく持ってくれる人がいるから重いもののまとめ買いとかしたいかな」

 

「いや、そうでなくてね。美琴の私物でね。服とか靴とか、アクセとかなんかないのか?」

 

 意外と寂しい帰りの荷物に疑問を持つ上条。

 それに所帯じみた言葉を返す御坂美琴

 はむはむ、と残ったクレープをリスのように口に押し込んで、ごっくんと飲み込んだあと、彼女は勢いよく立ち上がった。

 そしてその場でくるりと振り返る。

 

「今一番欲しいものはね――誰かからもらうんじゃなくって、自分の努力で本物にしたいんだ」

 

 言葉は奇しくも上条当麻御坂美琴に教えてもらった感覚そのもの。

 陽光に輝く笑顔が眩しい。

 とても前向きな笑顔。

 その笑顔のまま、ぐいと上条の目の前に拳を突きつけ、コインを発射するように親指を折り曲げた。

 

「覚悟しておきなさい。そんときになって慌てて間に合わなくなっても知らないわよ」

 

 親指が弾ける。

 見えないコインがくるくる宙を回って、美琴のどーん、という声と共に上条の中の何かを貫く。

 それは決して右手でなんかじゃ防げない。

 

 何を言っているのか具体的なことはわからない。

 しかし挑戦的なセリフと自信にあふれた言い回しは誠に持って彼女らしい。

 剛健剛直、大胆不敵。

 それでいて艶めかしく美しい。

 上条は自分の口元が笑っていることと心の中に何か大きなものが満ちてくることに気づかなかった。

 

「夕飯は軽めでいいわよね?大根カレーと豆腐ハンバーグにしよっかな。カロリー調整もしなきゃいけないし」

 

 ほら、早く行かないと特売に間に合わないわよ、と上条を立ち上がらせバンバンと背中をたたいて。

 ふたりは新たな戦場へと足取り軽く突き進むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1350107497/

風太郎「五月、口開けろ! ちゃんと味わえよ!」五月「こ、こうですか?」【五等分の花嫁ss/アニメss】

風太郎「あ、あぁ~ッ!」ドピュドピュドピューッ!←家計が火の車になる音

五月「はい、今日の晩ご飯は終わり。ごちそうさまでした」

風太郎「うぅ……お、おそまつさまでした……」

数週間前、念願の中野五月と結婚したのだが、
『裕福な家庭に育った娘が貧乏人の家に嫁ぐと餓死するのでは』
という懸念の声があり、結果、五月は毎食ご飯を特盛りで食べるようになった。しかし五月はなんだかお腹いっぱいにならないみたいで、いつも空腹そうにご飯パクパクして、エンゲル係数タカイタカイなのだった。
風太郎「トホホ……五月は可愛いのにエンゲル係数はタカイタカイなんだから……あーあ、どうにかして五月の胃袋を満足させられないかな~、ん?」

深夜なのに、五月の部屋から明かりが漏れている。
五月「はむっ……はむっ……」

風太郎(い、五月が自分の部屋でご飯をつまみ食いしている!?)

五月「けぷっ……こんなものですかね。もっと食べられるように頑張ってもらわないと……」

風太郎「五月ぃー!」 バターンッ!

五月「ひゃあッ!?」

風太郎「い、五月ぃー! ごめんよーッ!
五月は毎日俺のご飯食べたがってたのに俺はそんなことも知らずに……ッ!
ハフッ!ハフッ! 五月の食後のお腹ふかふか!」
 
五月「ど、ドサクサにまぎれてお腹を撫でないでください!」

風太郎「す、すまない五月……」

五月「べ、別にあなたのご飯食べるくらい普通です。それがあなたのお仕事なんですから……。それに、あなたは甲斐性なしで、お腹いっぱい食べさせてくれないから……」

風太郎「そ、そんなことないぞ!五月にお腹いっぱいになってもらうためだけに俺は毎日働いているんだぞ! あっ、そ、そうだ! 五月、口開けろ!」

五月「こ、こうですか?」

風太郎「そう! それじゃあ今からご飯あげるからな! 五月の食いしん坊な口に食べさせてやるから、ちゃんと味わえよ!」

五月「えっ、えっ?」

風太郎「ウオーッ! 五月! ホカホカのご飯食わすぞ!」 トピュドピュドピューッ!←米の一粒一粒が起ち、美しい艶を放つ様

五月「ひゃあッ!」 モグモグ
 
風太郎「くっ……ふぅ……! す、すっごい美味しいご飯が炊けたぁーッ!」

五月「ほんとうです……で、でもなんで……?」

風太郎「それはな……五月の気持ちが、俺に伝わったからさ! 五月のもっと食べたいって食欲がな!」

五月「私の食欲……」

風太郎「そう! だから、食費なんて、二の次なんだよ! ホカホカご飯は、金持ちに食べてもらうより、好きな人に食べてもらうのが一番幸せなんだよ!」

五月「す、好きって……はわわ……あ、あの……もうちょっとだけ、ご飯食べてもいいですか?」

風太郎「もちろん!」
その後、俺は一晩中五月にご飯を食べさせて次の日の朝は食材が尽きるほど逼迫していた。
でもまぁ、その日以来、ご飯を食べるとき五月が一回多く「おかわり」を言ってくれるようになったので結果オーライ! 

 

 

 

元スレ

http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1554732395

リズ『恥ずかしいのは分かるけどさ、キリトが家来るなら自分で用意しておいた方が良くない?』アスナ『……う、うん…そうだけど…』カァァァ 【SAO ss/アニメss】

 

キリト「こ、今度の休日アスナの家に呼ばれてるんだけど」

 

クライン「リアルで?」 

 

キリト「……り、リアルで」 

 

クライン「両親は?」 

 

キリト「……不在らしい」 

 

クライン「……………」 

 

キリト「…………」 

 

クライン「…………なぁキリトよ、自慢話とか良いから攻略の話しようぜ?それか女の子紹介しろ」 

 

キリト「た、頼むクライン聞く耳持ってくれよ!?俺どうすりゃ良いのかわかんないんだよ!!」 

 

クライン「どうすりゃ良いのかわかんねぇ?んなこと言ってすることしてんだろ既に、なに言ってんだおめーは」シッシッ 

 

キリト「………いや、そりゃゲームの中でなら……まぁ、そうだけど……」モジモジ 

 

クライン「ん?なんだよリアルではまだなのか?」 

 

キリト「…………お、おう」コクリ 

 

クライン「なんで?」 

 

キリト「………いや、だってアスナは最近ようやく体力戻ってきたばっかりだし…」モジモジ 

 

クライン「そういやそうか………なるほどなぁ」 

 

キリト「だからさぁ、リアルではまた違うんだろうしここはね、年長者のアドバイス貰って対策を……」ソワソワ 

 

クライン「………」 

 

キリト「そういう事だから頼むクライン、流石に経験あるんだろ、教えてくれよ」 

 

クライン「………」 

 

キリト「………おい、クライン?」 

 

クライン「……お、おう了解だキリト、何事も経験者に聞くのは基本だからな!!SAO で一番最初にお前からテク教えて貰ったみてーに色々と教えてやるよ、おう!!」 

 

キリト「そうか、助かるぜクライン!!」ガシッ 

 

クライン「お、おう」ガシッ 

 

クライン「……で、まず何が聞きたいんだよ?」 

 

キリト「えーと、まずどういう雰囲気になったらOKなんだ?」 

 

クライン「…ん?なんだそりゃ?」 

 

キリト「え?」 

 

クライン「ぶっちゃけやる為に行くんじゃねーの?部屋に入ったら即合体?」 

 

キリト「……流石にそりゃないだろ、真面目に答えてくれよ」 

 

クライン「……そ、そうだなすまん、えーと、ふいんきふいんき……」ブツブツ 

 

キリト「クラインの実体験でも良いけど」 

 

クライン「えっ、お、おう」 

 

キリト「どっちから切り出すべきなんだ?あんまり失敗したくないし一般的にどうなのかとにかく知りたい」 

 

クライン「……お、俺のね?うん……」フイッ 

 

キリト「どうなんだ?」

 

クライン「……そ、そりゃあれよ、抱いてってせがまれたから応えてやったのよ」 

 

キリト「ふむふむ、つまり向こうから来たってことか……まあそうなれば一番展開的には……」 

 

クライン「そ、そうだな」 

 

キリト「…………」 

 

クライン「………なんだ、どうした?」 

 

キリト「来なかった場合は?」 

 

クライン「………いや、そんときゃ普通に遊んでりゃ良いだろ」 

 

キリト「……………」 

 

クライン「………ヤル気満々なのか」 

 

キリト「ああ、超ヤりたい」コクリ 

 

クライン「………ずいぶん積極的だな」 

 

キリト「リアルだと匂いとか感触とか段違いなんだよ……俺ここまでかなり我慢してるんだよ、アスナけっこうひっついてくるから…」 

 

クライン「……気持ちは分かるだがなぁ」 

 

キリト「だからさ、自分から切り出して尚且ついい感じになれる方法をだな?頼むよクライン」ソワソワ 

 

クライン「……あー、えーと、自分からな?うん…」 

 

キリト「おう」 

 

クライン「……………」 

 

キリト「……………」 

 

クライン「……………」 

 

キリト「………クライン、もしかして自分からはないのか?」 

 

クライン「そ、そんなことねーよ!?今頭ん中で話整理してんだよ!!俺が女にヤらせろっていやぁ大概股開いてるし!!」クワッ 

 

キリト「マジか、どういう感じで言うんだ?」 

 

クライン「ちょ、ちょっと待て、まだ考えまとまんない」 

 

キリト「おう、いくらでも待つぞ、今日暇だし」 

 

クライン「…………そうか…」フイッ

 

クライン「………そ、そうだな……あれだ、いきなり押し倒せば良いんじゃねぇの」フイッ 

 

キリト「どんな状況でだ?」フムフム 

 

クライン「そこまでしらねーよ!?それは自分で気転効かせろよ!!」クワッ 

 

キリト「い、いやだっていきなり押し倒すとか嫌がられそうだし、せめてここだっていうポイントを…」モジモジ 

 

クライン「そんなもんその場のふいんきで決めるしかねーだろぉよ…」 

 

キリト「アスナに言われた事あるんだが……俺はそういう事での雰囲気読むとか空気読むとか、絶望的に下手らしい…」 

 

クライン「………おめーはそうだろうな、キリトよ」 

 

キリト「だからどうにかしたいんだよ……本当は人に聞くのも恥ずかしいんだが俺もそういう事で恥かきたくないし、アスナにも悪いし…」モジモジ 

 

クライン「………それは分かるんだがな、あぁ…」

 

クライン「………まぁ、あれだ……キリト、お前がどういうつもりで当日行くかだな、それ以外目的は無いのか?普通にデートとかよ」 

 

キリト「朝からアスナの両親が帰ってくる夜中までがっつりヤりたい」 

 

クライン「………お前、そんなキャラだっけ?」 

 

キリト「ここ最近はそれしか考えてない」キッパリ 

 

クライン「若いな…」 

 

キリト「クラインだってそこまで歳取ってないだろ、二十代前半だろ?」 

 

クライン「大人になるとそんなにがっつかなくなるんだよ、仕事だなんだって色々あるからな」ハァ 

 

キリト「ふーん、でもすることはしてんだろ?前彼女がなんだって言ってたよな?」 

 

クライン「………おお、寝かせてくれなくて困ってるぜ?」 

 

キリト「へぇ、すげえな」 

 

クライン「………D○MがMMO に本格参入したからなぁ……すげぇエロくて眠れねーよ」ボソッ 

 

キリト「え?DM○?」 

 

クライン「……なんでもなねーよ」グスッ

 

クライン「……まあとにかくだ、もう付き合ってんだしゲームん中じゃ経験済な訳だろ?好きなタイミングでがばーっと行ったって大して問題にならねーと思うぜ?」 

 

キリト「そ、そうか…確かに…」 

 

クライン「そういう事だ、もういいな?」 

 

キリト「まだだ、他にも聞きたい」 

 

クライン「……なんだよ」 

 

キリト「……………ぜ、前戯ってどのくらいするのが普通なんだ?」 

 

クライン「………」 

 

キリト「………」 

 

クライン「………じゅ、十分くらい?」フイッ 

 

キリト「えっ、そんなもんなのか?」 

 

クライン「知らねーよ!!もう挿れてって言われるまでだ!!他人のなんか知らねーよ!!」 

 

キリト「お、おう」ビクッ

 

キリト「えーと、じゃあそれは良いとして………クラインは知ってるかわかんないが、血ってやっぱり出るのか?」 

 

クライン「血?」 

 

キリト「いや、だってアスナはリアルでは初めてな筈だし」 

 

クライン「…………」 

 

キリト「むちゃくちゃ痛いって言うじゃん?初めてって」 

 

クライン「男の俺に聞いてもわかんないだろそれは……」 

 

キリト「いや、そうだけどさ……初めての女の人とした事あればわかるかなーと、どうなんだ?」 

 

クライン「だ、抱いた女は大半は処女だが、おう…」 

 

キリト「マジかよ、クラインすげぇ、それで?」 

 

クライン「………初めてなら血はちょっとだけだが出るんじゃねーの?」 

 

キリト「ちょっとなのか、……痛みは?」 

 

クライン「問題ねーよ、途中で気持ちよくなるだろ」 

 

キリト「大したことないのか、それなら良いんだが」 

 

クライン「大丈夫だって、初めてだけど感じちゃうは基本だろ?」 

 

キリト「そっか、それエロ漫画とかエロゲーだけなのかと思ってたけど違うのか……」フム 

 

クライン「………まあ、大丈夫だろ、たぶん…」

 

キリト「えーと、後は…」 

 

クライン「……まだなんかあんのか…」ゲンナリ 

 

キリト「当たり前だろ、人生の一大イベントなんだから」 

 

クライン「………そうだな」 

 

キリト「ゴムっていつ付けんの?」 

 

クライン「え、ゴム?」 

 

キリト「うん」コクリ 

 

クライン「………えーと……したことねえしな…」ボソッ 

 

キリト「え?」 

 

クライン「あっ」ギクッ 

 

キリト「………避妊しないのかクライン?」 

 

クライン「……え、あ、えーとだな?」ダラダラ 

 

キリト「なるほど、ピル派なのか…」 

 

クライン「お、おうそうだぜ?生のほうが良いから徹底させて付けさせてるぜ!!」 

 

キリト「付ける?何を?」 

 

クライン「ん?何って?」 

 

キリト「ピル派なんだよな?」 

 

クライン「おう、バッチリ付けさせてるぜ?」 

 

キリト「……んー、そうか、分かった」 

 

キリト(……確か飲み薬だったような……パッチタイプとかもまあ、あるのかな…)

 

クライン「あーそうだキリトよぉ、お前ヤりたいのは分かるけど生理ん時は我慢しとけ、嫌がるからな無理矢理しようとすると」 

 

キリト「それはまあ、分かってるつもりだけど」 

 

クライン「なら良いけどよ、なんか今のお前なら強行しそうだったからな」 

 

キリト「流石にそれはな、アスナに嫌がられてまで事におよんだりはしないよ」 

 

クライン「どうだかなぁ」 

 

キリト「大丈夫だって、脱がす時ナプキンガサガサ言ったりしたら気まずそうだし」 

 

クライン「……あ、ああナプキンな?そうだな、剥がさなきゃならないのは気まずいな」 

 

キリト「え、剥がすの?」 

 

クライン「剥がすだろ、剥がさないでどうすんだよ?」 

 

キリト「………何の為に?」 

 

クライン「そりゃおめぇ、弄ったり舐めたり?」 

 

キリト「………え?」 

 

クライン「ん?」 

 

キリト「…ハイレベルだな、クライン」ゴクリ 

 

クライン「………?ま、まあ女にゃすごいって言われるけどな?うん」 

 

キリト(………経血ゼリーを本人目の前でずるっといってたらすごい……よな、確かに)ゴクリ 

 

キリト(………いや、マジか?どんだけ変態なんだよクライン、まだナプキンを直接肌に張るって勘違いしてるほうが説得力が……いやでも流石にそんな勘違いはしないよな…)ジー 

 

キリト「……あー、クライン……ひとつ聞いていいか?」 

 

クライン「さっきから質問責めのくせして何言ってんだ今更、なんだ?」 

 

キリト「…………経験、あるんだよな?」 

 

クライン「はぁ!?今までさんざん聞いてたのにそれ聞くのかよキリト!?」 

 

キリト「いやだって…」 

 

クライン「あるに決まってんだろ!?俺幾つだと思ってんだよ学生時代からヤりたい放題のプロフェッショナルだっての!!」クワッ 

 

キリト「そ、そうか、だよなすまない…」ビクッ 

 

クライン「くそ、そんな所疑ってどうすんだっつうんだよ…う、嘘付いても悲しいだけだろちくしょう……!!」グスッ 

 

キリト「いや、何も泣かなくても……ほら、疑って悪かったから、な?」ポン 

 

クライン「………ふぐぅ…」ブワッ 

 

キリト「お、おいクライン…?」オロオロ 

 

クライン「なんでもなねーよ!!ただの武者震いの侠哭きだっつうの!!」ウルウル 

 

キリト「お、おう…」タジッ 

 

キリト(……今の会話の何処に武者震いする要素があったんだ?やっぱりクラインて……) 

 

クライン「んなことより今はキリト、おめーの話だろぉが!!もう良いからなんでも徹底的に聞いてけこんちくしょぉ!!」 

 

キリト「……あ、ああ」 

 

キリト(………聞く奴間違ったかな……どうしよう…)ダラダラ

 

クライン「で、次はなんだ、どんどん聞けよキリの字」 

 

キリト「……え、えーと」 

 

クライン「おう」 

 

キリト「クラインの経験人数は…なんて聞いてみたり…」ソワソワ 

 

クライン「………それお前へのレクチャーに必要な事か?まあ良いけどよ…えーと」 

 

キリト「いや、どれだけの経験値を積んだ方なのか受講者としては興味があったりね?ははっ…」 

 

クライン「……そ、そうか、えーとだな…何人と経験したかな?うん…」 

 

キリト「…………」 

 

クライン「……さんじゅ……ゴホン…三人」フイッ 

 

キリト(言い直した、微妙に謙虚な数字に言い直した)ジー 

 

クライン「みんな可愛かったんだけどな、ちょっとした事でケンカして別れちまったりお互いすれ違いばっかりで辛くなっちまったり受験だなんだって将来のために別れを選んだり体の関係に溺れ過ぎて恐くなっちまって離ればなれになること選んだり色々とな…」フッ 

 

キリト(……それだと四人だぞクライン…)フイッ 

 

クライン「……とまあ、こんな感じだな、わかったかよ?」 

 

キリト「………お、おう」

 

クライン「……なんだよ、なんか歯切れわりぃな」 

 

キリト「そ、そんなことないぞ?だいぶ参考になってる」フイッ 

 

クライン「なら目ぇ反らすなよ、やっぱり疑ってんだろ?」ジロッ 

 

キリト「…………」 

 

クライン「何回でも言うからな?俺は童貞じゃねぇぞ?違うからな?」 

 

キリト「わかったってば……そんな必死にならなくても良いだろ……」タジッ 

 

クライン「別に必死になんかなってねぇ、勘違いされて言いふらされたりされたら敵わねぇから念押ししてんだよ」 

 

キリト「……そんな事言いふらす訳ないだろ…」 

 

クライン「なら良いけどよ、誰にも言うなよ?特に女連中には絶対だからな?もし言いふらしたら絶交するからな?」クワッ 

 

キリト(……そんなに恥ずかしいのか?別に今時珍しくもない気がするんだが…) 

 

クライン「おい返事は」 

 

キリト「約束するって、たとえ聞かれてもクラインは経験豊富なスペシャリストって答えておく」 

 

クライン「おい待てそんなのも言うんじゃねぇ、アホみたいに聞こえる」 

 

キリト「そ、そう?なら黙秘する方向で行くよ、うん…」 

 

クライン「………そうしてくれ」ホッ

 

キリト「……さ、さて…話の切りも良いし俺は落ちるわ」ガタッ 

 

クライン「なんだ、暇じゃなかったのかよ」 

 

キリト「……いやー、飯時だし?今スグが晩飯作ってる筈だし、うん…」 

 

クライン「………直葉ちゃんか、キリトよぉ晩飯の談笑のネタにさっきの事話したり…」 

 

キリト「するわけないだろ!?誰も得しないし飯時にする話題かよ!?」 

 

クライン「なら良い、お疲れ」 

 

キリト「……おう、お疲れクライン」 

 

クライン「………」 

 

キリト「………クライン」 

 

クライン「……あん?」 

 

キリト「………頑張れよ、じゃ」スタスタ 

 

クライン「なんで俺に頑張れなんだよ!?おいキリト!!」 

 

キリト「……いや、悪かったと思って…すまん…」タタタッ 

 

クライン「おい!?違うっつってんだろ!?おいこらキリトぉ!!」 

 

バタン 

 

クライン「」

 

クライン「」 

 

………… 

 

☆以下、クラインの未来予測☆ 

 

キリト『………という訳でな、クライン童貞なんだって』モグモグ 

 

直葉『えークラインさんあの歳で童貞なの?キモーイ』モグモグ 

 

……… 

 

リーファ『おにーちゃんから聞いたんだけどねー?クラインさん童貞なんだってー!!』 

 

シリカ『えーあのクラインさんが?ほんとにー?』 

 

リズベット『まじ?うっえー!!』 

 

リーファ『キモいよね』 

 

シリカ『ねー』 

 

リズベット『童貞許されるのとか未成年までっしょ』 

 

クライン『………』トボトボ 

 

シリカ『あ、童貞来た…!!』ヒソヒソ 

 

クライン『』ビクッ 

 

リーファ『やだ、こっち見てんだけど』ヒソヒソ 

 

クライン『』 

 

リズベット『童貞だからエロい事考えてんのよきっと、やっばー目線で犯される』シッシッ 

 

クライン『』 

 

……………… 

 

 

クライン「…………うあああああああああああああ!!!!!!」ガタガタブルブル 

 

クライン「お、俺の貴重な女の子連中との交遊関係(脈無しなのは理解してるがそれでも貴重)が!!?!うあああああああああああああ!!!!!!」ビッタンビッタン 

 

クライン「………あ、でもそれはそれでゾクゾクするかもしれん」ピタッ 

 

クライン「……いやいやいやいや、そんな場合じゃないだろ」ブンブン 

 

クライン「………あいつ本当に喋らないよな?し、信じるからなキリト…」ダラダラ 

 

 

翌日、ダイシーカフェ 

 

和人「………という訳でな、今度の休日アスナの家にお呼ばれされてるんだが助言が欲しい」 

 

エギル「なんだ、いきなり店に顔だしたと思ったらそんな事か」 

 

和人「そんな事って言うなよ、俺は真面目に悩んでる」 

 

エギル「なにも心配要らんさ、お前らお似合いだしな………ほら、前祝いだ、飲んでけ」ポンッ 

 

和人「なんだそれ?」 

 

エギルシャンパンだよ、ノンアルコールだけどな……赤飯のほうが良かったか?」ニヤリ 

 

和人「……い、いや…そっちで良いよ、ありがとう」 

 

エギル「キリトが聞きたいのは女性の正しいエスコートの仕方か?」 

 

キリト「………まぁ、そんな所だが」 

 

エギル「大丈夫だろう、お互いそれなりに知識はあるだろう?」 

 

キリト「……いやー、そこが不安だから聞いてんだけど、クラインにも聞いたけどちょっとな…」 

 

エギル「クラインに?なんでまたあいつに聞いたんだ?」 

 

キリト「あ、いや、えーと…」 

 

エギル「なんだ歯切れ悪いな…」 

 

キリト「……いやー、ちょっと…」 

 

エギル「まあいい、あいつじゃまともにアドハイスなんて貰えなかっただろ、違うか?」 

 

キリト「え、なんで分かる」ギクッ 

 

エギル「そりゃあな、まあ…」 

 

キリト「………えと、エギルも知ってたのか?」 

 

エギル「クラインの事か?」 

 

キリト「そうだけど……聞いてたりするのかもしかして?」 

 

エギル「いや、初見で分かった」 

 

キリト「……え、マジ?」 

 

エギル「あいつほど分かりやすい奴居ないからな……いや、もう一人知り合いで居るな」 

 

キリト「……だれ?」 

 

エギル「目の前でシャンパン飲んでる奴もこいつは女慣れしてねーなってすぐに分かった 

 

キリト「………あぁそう」

 

エギル「思い出すぜ……最初、まだSAOの低層攻略してた時のアスナに対するお前の反応というか対応というか……だいたいしどろもどろの手探りでコミュニケーション取ろうしてる様が初々しくて中々笑えたからな?」ニヤニヤ 

 

キリト「……ぐっ……悪趣味な奴だな…」 

 

エギル「そう言うなって、職業柄そいつがどういう奴かとかなんとなくさぐっちまうのよ」 

 

キリト「でもクラインと俺じゃタイプ全然違うぜ?少なくともクラインのほうが社交性はあるだろ」 

 

エギル「だな、あいつはリーダー的なポジション張れるし割りと友人も多いはずだ」 

 

キリト「……ならモテるんじゃないのか?」 

 

エギル「……ふぅ、それもそうなんだがな……女の前ですぐに看破されるような見栄張るからプラマイゼロだな」 

 

キリト「なるほど……つーかエギルの観察力すげぇな」 

 

エギル「職業柄だ、色んな客が来るからな」

 

キリト「その観察力を生かして俺にアドハイスをくれよエギル」 

 

エギル「だから、心配ないって」 

 

キリト「いや、具体的なアドハイスを…」 

 

エギル「優しくしてやってりゃいい、後は俺が口出す事じゃない」 

 

キリト「………優しく、優しくねぇ?」ウーン 

 

エギル「あんまり博識過ぎるのもアスナの性格的に考えりゃよろしくねぇと思うからな、そのまま分かんないまま最初は行け、色々と知るのは後でも問題ないからな」 

 

キリト「……そんなもんか?」 

 

エギル「そんなもんだ」 

 

キリト「……分かった、信じるぜエギル」 

 

エギル「ああ、頑張れ」

 

ガチャ 

 

クライン「うーす、やってるか?」 

 

エギル「ん?なんだ、サボりかクライン」 

 

キリト「お?」 

 

クライン「ここら辺にある得意先回りで後は帰るだけなんだよ………ってキリトも居たのかよ」ギクッ 

 

キリト「よ、よぉクライン」 

 

クライン「………おめー言ってねぇだろうな?」ボソボソ 

 

キリト「………えと」フイッ 

 

クライン「おい!?なんで目ぇそらすんだよ!?なあキリトぉ!?」ユサユサ 

 

キリト「………いやー、女の子には言ってないぞ?うん」 

 

エギル「キリトが話したのはクライン、お前にアドハイス貰おうとしたって所だよ、落ち着け」 

 

クライン「………貰おうとしたっつうかガッツリアドハイスしたんだが」 

 

キリト「………そ、そうね」フイッ 

 

エギル「あんま見栄はるな、分かってるから」 

 

クライン「…………」

 

クライン「……分かってるって何を?なぁ何を?」 

 

キリト「………」 

 

エギル「お前、今まで女友達すら居なかっただろ、だいたい分かるぞ」 

 

クライン「…………」 

 

エギル「見栄はって未成年に間違った知識教えるのはどうかと思うからな、止めとけ」 

 

クライン「」 

 

キリト「えっ、なんでそこまで分かる」 

 

エギル「このぐらいは普通に予測出来る範囲だろうよ」フゥ 

 

クライン「な、なんの事だ?」ダラダラ 

 

エギル「………クライン、そういう見栄張る奴が一番不様でカッコ悪くてモテないぞ」 

 

クライン「…………」プルプル 

 

キリト「……く、クライン…」 

 

エギル「キリトを見ろ、そういうアホな見栄張ってないからモテモテだろう」 

 

キリト「え?」 

 

クライン「た、確かに…」 

 

キリト「いやいやいやいや、なんだそれ…」ブンブン

 

エギル「まぁつまりだ、気にしすぎは害にしかならないって事だ、気にしなさすぎも問題だろうけどな」 

 

クライン「…………」 

 

キリト「えーと……」 

 

クライン「………んなこと言ってもよ」 

 

エギル「お前、風俗すら行った事ないだろ」 

 

キリト「え、風俗?」ギョ 

 

クライン「……んなとこ行く訳ないだろ」 

 

エギル「とりあえず理由を聞くか、何でだ?」 

 

クライン「俺は好きになった女以外とはやりたくねぇんだよ」 

 

エギル「そうか………キリト、今のクラインの発言をどう思う?」 

 

キリト「え、俺?えーと、間違ってないんじゃないか?俺もそうだし……その、風俗?とか行ける年齢になっても俺も絶対行きたくないし」 

 

クライン「だよな、俺は間違ってないよなキリト」 

 

キリト「そう思うぞ、うん」コクリ 

 

エギル「キリトぐらいの年齢なら間違ってないがクラインの歳でそれ言ってんのはかなり悲しいな」 

 

クライン「なんでだよ!?金で女をあーだこーだしようなんざゲスの極みだろうがよ!!」 

 

エギル「世の中どんな事だろうと建て前と綺麗事だけじゃ生きてけねぇだろ?そういう事だ」 

 

クライン「うぐっ…!?だ、だがよぉ…」 

 

キリト「………エギル、つまり何が言いたいんだ?」 

 

エギル「年相応の考え方を身につけろって事だ、クラインは純情過ぎるからな、こいつの顔でそれはハッキリ言って似合わねぇ」 

 

キリト「確かに似合わないな……つまりは汚れろって事か」 

 

エギル「ストレートに言えばな」 

 

クライン「でも風俗は行かねぇからな」 

 

エギル「行けとは言ってねぇよ、例えで出しただけだしどうせ一人じゃ行けないだろお前」 

 

クライン「…………」

 

クライン「言いたい事ぁ分かるしキリトとか未成年と似たような思考なのも、まぁ気持ち悪いんだろうと理解出来るがよ………だったらどうすりゃいいんだよ!?」 

 

エギル「手段はなんでも良いから女作れ、大丈夫だ、お前はそこまでブサイクでもないから数打ちゃ当たる」 

 

クライン「出会いがねぇ」 

 

キリト「そうなのか?」 

 

クライン「会社にゃ若い女の子居ないし取引先で受付嬢とか口説く訳いかねーし」 

 

エギル「合コンとかやらないのか」 

 

クライン「誘われねぇんだよ……前からのネット仲間も俺と似たようなもんだしよ」 

 

キリト「ALOやってれば女性プレイヤーくらいたくさんいるだろ?それは?」 

 

クライン「……最近はお前らとしか遊ばねぇからな」 

 

エギル「……ふむ」 

 

キリト「なら少しでいいからソロやってみたらどうだ?向こうから来るかも」 

 

クライン「そんな簡単に行くかね…」 

 

キリト「大丈夫じゃないか?女の子のフレンドとか普通に遊んでれば勝手に増えるだろ?そこから好みの子を…」 

 

クライン「殴っていいか?」イラッ 

 

キリト「え、なんで?」 

 

エギル「よせクライン、キリトに悪気はない……モテる奴の思考回路は女の子は自動ホップするモンスターと同じぐらい勝手に出てくるもんなんだ」 

 

クライン「………くっ…!!」ブワッ 

 

キリト「え、どういう事?」キョトン

 

エギル「じゃあ今、女の知り合いは?」 

 

クライン「……あー、まず アスナだろ?」 

 

エギル「………」 

 

キリト「いきなり人の彼女の名前出すのかよ…」 

 

クライン「それにリズベットシリカちゃんか……あと直葉ちゃん」 

 

キリト「………」 

 

エギル「……全部キリト経由か」 

 

クライン「全部キリト経由だ」コクリ 

 

キリト「………」 

 

エギル「………」 

 

クライン「なんだよぉ!!その憐れむような目ぇ止めろよ!!」 

 

エギル「………じゃああれだ、出会い系SNS 利用しろ」 

 

クライン「サクラと詐欺恐い」 

 

キリト「………じゃあナンパだ、恋人の出会いランキングで常に上位になってる普通の手段だ」 

 

クライン「俺は硬派で通ってんだよ、軽々しく行きずりの女に手は出せねぇ」 

 

エギル「んな事言ってたら女なんて一生涯できねえぞ」 

 

キリト「……クライン」 

 

クライン「運命的な出会いから燃えるような恋がしてぇ」 

 

キリト「…………」 

 

エギル「…………」 

 

クライン「キリトまでとは言わねぇけどさぁ……ほら、こうな?」 

 

キリト「………俺、運命的な出会いなのか?」 

 

エギル「見ようによってはな」

 

エギル「……こう言っちゃなんだがよ、そんな運命的な出会いだなんだなんて滅多に起きないレアケースだぞ」 

 

クライン「………そりゃ分かってるけどよ、可能性はゼロじゃねぇだろ」 

 

キリト「ゼロじゃないけど……うーん…」 

 

エギル「クラインが望み通りの出会い方以外したくないってなら相談もクソも無くなるな、口出ししようがない」 

 

クライン「……元々相談なんてしてねーだろ」 

 

エギル「そういやそうだな、要らねぇ世話だったか」 

 

クライン「そういう事だ、構わねぇよ別に俺は生来は明るいって信じてんだからよ、レアぢろうと難しかろうといつかはそういう事あるだろ」ケッ 

 

キリト「つまりそういう出会いを待つって事か」 

 

クライン「そうなるな、ダメかよ?」 

 

キリト「ダメとは言わないけどさ……なんか後ろ向きだな」 

 

クライン「後ろ向き?なんでだよ」 

 

エギル「どんな事でもそうだが待ってるだけで欲しいもん手に入れられるなんて起こらねぇと思うぜ?」 

 

クライン「…………」 

 

キリト「ゲームは放置しててもクリア出来ないからな」 

 

エギル「宝くじ当てる夢見るにはまず買わなきゃならないってな」 

 

クライン「……そ、そりゃそうだが…」 

 

クライン「…んなこと言ってもよ」 

 

エギル「お前、自信ないだけだろ」 

 

クライン「あぁん!?んなわけねぇだろ!?」 

 

エギル「じゃあお前、今夜またここに来て客の女の子と話してみろ、口説けって訳じゃないけどな」 

 

クライン「え、いやいきなりは俺も都合がな?」ギクッ 

 

キリト「…………」 

 

エギル「…………」 

 

クライン「それに知らない野郎に話かけられたらビビられちまうかもしれねぇし、なぁ?」 

 

エギル「俺が上手く取り次いでやるよ、多少の雑談なら受けてくれると思うけどな」 

 

クライン「……いや、でもよぉ」 

 

エギル「………」 

 

キリト「そこまで恐いかな……うーん…」 

 

クライン「いや恐い訳じゃないけどな?見知らぬ野郎が馴れ馴れしく話しかけるってのはどうなのかってな?」 

 

エギル「心配いらねぇよ、独身で人見知りしないで一人でよく来る女性客に何人かアテがあるからどうかと思ったんだがよ、そこまでビビってたんじゃ取り成しても上手く行かねぇな、やめとくか」ハァ 

 

クライン「…そ、そうか……つぅかビビってるんじゃなくてさっきも言ったが俺は出会いを待つって言ってんだよここの常連客口説くなんざやりたくねぇ」 

 

エギル「口説けとはいってねぇだろ…あぁもう良いか、悪かったよクライン」ヤレヤレ

 

キリト「じゃああれだ、知り合いの女の子に頼むしかないんじゃないか?知ってる奴なら平気だろ」 

 

クライン「…………未成年しかいねぇ」 

 

エギルアスナ達か、あんまり意味ないと思うが」 

 

キリト「え、なんでだ?」 

 

エギル「既に脈無しって分かってる女、しかも子供相手じゃあ普通に話してられるだろ、いくらなんでも」 

 

クライン「………さっきからバカにされてる気がするんだが」 

 

エギル「気のせいだ、それより自分の事考えとけよ」 

 

キリト「………確かにアイツらとは普通に話してるか……でも脈無しってのはなんでだ?未成年だからって理由は分かるんだけど」 

 

エギル「……お前も大概だな、キリト」 

 

クライン「アスナはお前の彼女、直葉ちゃんはお前の妹、シリカはまだ中学生、リズベットは……まぁ見てりゃダメだと分かる」 

 

キリト「あー、まあそうか…未成年って事考えなくてもだいたいダメって分かるか…すまない」 

 

クライン「そういう事だ、まぁそれがなくて脈あっても法律が許さねぇけどな」ハァ 

 

エギル「……ロリコンではないんだな」 

 

クライン「………当たり前だ、人をなんだと思ってやがる」 

 

キリト「……高校生ってロリータに分類されるのか…?」 

 

エギル「法律的には18歳未満は子供なんだよ」 

 

クライン「ま、それ言ったら世の女子高生好きはみんなロリコンになっちまうけどな」 

 

キリト「ふーん?なるほど」

 

キリト「……うーん、じゃあどうしたもんか」 

 

エギル「まずはこのビビり症どうにかしないと女なんざ出来ねぇな」 

 

クライン「ビビってねぇっつってんだろ」 

 

キリト「………そうだな、俺もそうだったんだけど女の子にそこまで変に思われてないって分かれば多少違うんじゃないか?」 

 

クライン「………」ピクッ 

 

エギル「…一理あるな、クラインが虚勢を張ってんのは自信がない事の裏返しだろうからな」 

 

クライン「………むぅ……でもよぉ、女がなに考えてるのなんてわかんねぇだろ、まさか直接聴くって訳じゃないだろ?」 

 

キリト「そりゃそうだ」 

 

エギルアスナ辺りに協力頼むか、リサーチするには女手も必要だろ」 

 

キリト「そうしよう、今呼び出してみるよ」ポチポチ 

 

クライン「ちょ…おいなにするつもりだよ!?」 

 

エギル「だからリサーチだっての」 

 

キリト「大丈夫心配するなよ、あいつらがクラインを悪く言ってるの見たことないし、さっきの話と違って会話する訳じゃないから意味はたぶんある」 

 

エギル「未成年でも女だしな、どういう印象持たれてるか知るのは無駄にはならんだろ」 

 

クライン「いやいやいやいや、おっかねぇよそれ!?」 

 

キリト「大丈夫だってば、嫌われてるって事は間違いなくあり得ない、断言する」 

 

エギル「女の思考回路だって人間の思考回路だよ、あんまビビんなよ、な?」ポンッ 

 

クライン「」

 

………… 

 

アスナ「キリトくん、クラインさんとエギルさんもおまたせ」 

 

キリト「悪いないきなり呼び出して」 

 

アスナ「大丈夫だよ?実はここで待ち合わせしようって呼び出される前にみんなで話してたから」 

 

キリト「みんな?」 

 

アスナ「うん、リズとシリカちゃんと直葉ちゃん、直葉ちゃんだけ学校別だし遊ぶなら知ってる所に集合しようって」 

 

キリト「なんだ、そうだったのか」 

 

アスナ「うん、だからもう少ししたらみんなくるよー?」 

 

キリト「なるほど、そりゃ好都合」 

 

エギル「だな、手っ取り早くていい」 

 

アスナ「へ?なに、どうかしたの?」 

 

キリト「いや、実はアスナにお願いがあってな………ゴニョゴニョ…」 

 

アスナ「……クラインさんの印象をみんなからリサーチ?なんで?」キョトン 

 

クライン「………」 

 

エギル「深くは追及しないでやってくれ、頼めるか?」 

 

アスナ「……まぁ、良いですけど」 

 

キリト「すまないアスナ、変な事頼んで」 

 

アスナ「大丈夫だってばキリトくん、なんとなくは分かるから」 

 

クライン「えっ」ギクッ 

 

アスナ「みんな嫌ってたりしないと思いますよ?クラインさん面白い人だと思うし」 

 

キリト(……察しが良すぎじゃないかアスナ……) 

 

エギル(……女からしても丸わかりなのか…) 

 

クライン「」

 

アスナ「それで、私がみんなからそれとなく聞き出して報告すれば良いんだよね?」 

 

エギル「ああ、軽い感じでな」 

 

アスナ「やってみますね」 

 

キリト「………いや、ちょっと待ってくれ」 

 

アスナ「どうしたの、キリトくん?」 

 

キリト「……アスナを信用してない訳じゃないが……後から報告じゃなくて直接聞こう」 

 

アスナ「え、どういう事?」 

 

エギルアスナ経由だとクラインに気をつかって多少リサーチ内容が屈折する可能性はまぁ、あるな」 

 

アスナ「……ん……そっか、余計な部分は省かないとダメだよね、私を情報経由したら本当にそういうリサーチ結果だったのかって疑い発生するし」 

 

クライン「…………………………なんか恐くなってきたんだが、変にオブラートに包まれるような結果になるって言ってねぇかお前ら」 

 

キリト「気のせいだ、大丈夫だって」 

 

エギル「保証してやるがお前は嫌われてはねぇよ、いい人ぐらいには思われてる筈だからビビんなよクライン」 

 

アスナ「私もクラインさんの事嫌いじゃないですよ?ほら、人付き合い苦手気味なキリトくんをよく心配してくれてるし」 

 

クライン「…………そ、そぉか?」 

 

キリト「ああ、大丈夫だから任せとけって」 

 

アスナ「それでキリトくん、具体的にはどうするの?クラインさんが居合わせる訳にはいかないんでしょ?」 

 

キリト「………そうだな……よし、じゃあこうしよう」パチン 

 

エギル「なんだ?」 

 

キリト「盗聴する」ニヤリ 

 

クライン「おい」 

 

アスナ「キリトくん…?」ジトッ 

 

エギル「お前なぁ…」 

 

クライン「恐れを知らねぇ野郎だな……バレたらどうすんだよ…」 

 

エギル「それに機材は?まさか盗聴用の機材持ってるなんて言わねぇよな?」 

 

キリト「アスナが協力してくれるならそうそうバレないよ、機材もそんな専用の物なんて必要ないし」 

 

アスナ「……どういう事?」 

 

キリト「ようはボイスレコーダーと同じように会話を集音して、それを聞ければいいわけだから………これだけで道具は足りる」コトッ 

 

アスナ「携帯?」 

 

エギル「………あぁ、なるほどな…アスナの携帯と通話状態にしたままでアスナに質問させるって事だな?」 

 

キリト「そういう事、ドラマとかアニメじゃ使い古された手段だろ?」 

 

クライン「……確かによく見るけどよ、居場所を知らせるとかなんとか色々」 

 

アスナ「そんなに上手く話し声拾えるのかな?ホントに」 

 

キリト「どうだろ?試した事はないから何とも言えないけど………とりあえずアスナの携帯はスピーカーモードにしといてくれ」 

 

アスナ「え、うんわかった」ポチポチ 

 

キリト「……よし、それで俺の携帯もスピーカーモードにして、マイク部分に音漏れしないようにテープきつめに貼って…」ワクワク 

 

エギル「……キリト、お前楽しんでるだろ?」 

 

キリト「いや、そんなことねーよ?」 

 

アスナ「絶対わくわくしてる」ジー 

 

クライン(………まさか俺が弄られ役になるとはなぁ……まいった…)ガクッ

 

………で。 

 

直葉「おまたせですみなさん、ちょっと時間かかっちゃって」 

 

リズベット「大丈夫だよリーファ、みんな来たばっかりだし」 

 

シリカ「全員揃いましたね」 

 

アスナ「うん」 

 

リズベット「そんでどうする?もう行くんでしょアスナ?」 

 

アスナ「あ、うんそうだね……」チラッ 

 

エギル「………」コクリ 

 

シリカアスナさん?行かないんですか?」 

 

エギル「おいおいお前らせっかく来たのにもう行くのかよ?冷やかしか?」 

 

リズベット「えーだって待ち合わせ場所に利用しただけだし、ていうかドリンク一つ頼んだのに冷やかしとか酷くない?」 

 

シリカ「私もアイスティー頼みましたけど…」 

 

直葉「えと、じゃあ私も何か頼みますエギルさん」 

 

エギル「お、そうかい?何にする?」 

 

リズベットエギルせこーい」ジー 

 

直葉「リズさん良いですって、お店に来て何も頼まないのも失礼ですし、ははは…えーと、アイスコーヒーで」 

 

エギル「はいよ、まぁ商人はセコいぐらいじゃねぇとダメなんだよ……っつっても女学生にタカるような真似は男としては慎むべきではあるな……まってろよ?」カチャカチャ 

 

アスナ「………」ソワソワ 

 

リズベット「え、なになに?何か出してくれんの?」 

 

シリカ「え、なんですかエギルさん?」 

 

直葉「………?」 

 

エギル「まずリーファにアイスコーヒーお待たせ」カタッ 

 

直葉「あ、はいいただきまーす」 

 

エギル「で、これは俺から奢りだ、今度メニューに加えようと思って試作したアインクラッドミルフィーユケーキ」どんっ 

 

リズベット「デカっ!?なにこれ!?」 

 

シリカアインクラッドですか…?もしかして…」 

 

エギル「もちろんクレープ生地100層重ねてるぞ?全高50センチ下層の幅は直径30センチの円錐型だ」 

 

直葉(……お、美味しそうだけど量が……太りそう…) 

 

エギル「食ってってくれよ、感想聞きたいからな」 

 

リズベット「四人でもこんな量食べられないわよ…」 

 

シリカ「……試食ですか……アスナさんは良いんですか?」 

 

アスナ「え、うん大丈夫だよ?お買い物なら後でもね、うん」 

 

リズベット「それなら良いけどさ、アスナの用事に付き合ってって言うのが今日の集まった理由だしアスナが平気ならね?」 

 

アスナ「…う、うん」 

 

エギル「よし、じゃあ食っててくれな、余ったら俺とカミさんで食うから残しても良いからよ」スタスタ 

 

リズベット「えっ、エギル何処か行くの?」 

 

エギル「買い出しだよ、ただでケーキ食わすんだからちょっと店番頼むぜお前ら」ニヤリ 

 

リズベット「はぁ!?なによそれ!?」 

 

エギル「一応店は閉めとくけどな、誰か来たら店主は留守ですって伝えといてくれよ、じゃあよろしくな」バタン 

 

リズベット「ちょっとエギル!!結局店番頼むのにケーキ出しただけじゃんこれ!!」 

 

シリカ「ははは…エギルさんって抜け目ないですよねこういうの」 

 

直葉「そ、そうだね…」 

 

アスナ(………さて、次は私が仕事しなきゃ)グッ 

 

………

 

……ダイシーカフェスタッフ用別室。 

 

ガチャ 

 

エギル「上手く女連中だけに出来たぞ」 

 

キリト「グッジョブだエギル、まさかあんなデカイケーキ出して足止めするとはな」 

 

エギル「女ってのは甘いもん大好きだからな、太る太る文句言いながら平らげるぜ?あれだけ出かけりゃ腹ごなしも含めて二時間は拘束出来る筈だ」ニヤリ 

 

キリト「で、あのケーキもうないの?俺も食いたい」 

 

エギル「試作品だからな……まぁ評判よけりゃマジでメニューに加えるから後で食いに来い」 

 

キリト「……ちっ、有料かよ」 

 

クライン「高そうだなあれ、幾らにするんだよ?」 

 

エギル「そうだな……5000円って所かな……」 

 

キリト「残念だ、食う機会はまず訪れないなそれじゃ」フゥ 

 

クライン「たけぇ、2500円にしろ、酒と一緒にオーダーしてやるからよ」 

 

エギル「冗談言うな、手間賃考えたら5000円でも安いってんだ」 

 

リズベット『……あー、大きさはともかくこれ美味しいわね』 

 

シリカ『ですね、四等分でもすごい大きいですけど……はむっ…』 

 

直葉『あー……こんなのまた太っちゃうのに……うー…アイスコーヒーによく合う…』 

 

アスナ『これ手作りだね、エギルさんが作ったんだよね……レシピ教えてくれないかな』 

 

キリト「……よし、感度良好だな……よく聞こえる」 

 

クライン「ミルフィーユってクレープに生クリーム塗ったくって重ねるだけじゃねぇのか?アスナ料理好きなんだったら知ってそうだがな」 

 

エギル「そこにアレンジ加えるのが旨いもん作るコツなんだよ、アスナは料理好きだからこそ一味違うってわかったらしいな」フフン 

 

キリト「ほう、ならエギルからアスナが教われば俺はあのケーキにありつけるってことか、なるほど」 

 

エギル「授業料はキリトからの振り込みなら教えてやらんでもないぞ」 

 

キリト「有料かよ」 

 

エギル「当たり前だ、味にだって著作権的なもんが存在するんだよ」 

 

クライン「………つーか、ケーキの感想盗聴してるだけじゃねぇのかこれ?」 

 

キリト「焦るなよ、話の流れってのもあるんだろうし」

 

直葉『ていうかエギルさんも商魂逞しいというかなんというか……あはは…』 

 

リズベット『知り合った時からあんな感じだけどね、安く仕入れて高く売りつけるってのモットーにしてるような人だし』 

 

シリカ『知り合った時って、SAOの中ですよね?』 

 

リズベット『うん、キリト経由だったけどね、けっこうアコギな商売してたわよエギル』 

 

エギル「………」 

 

クライン「………エギルの話になったな」 

 

キリト「……そうだな」 

 

シリカ『へー、私はあの頃は会ってませんでしたけど、そんなにですか?』 

 

リズベット『一応理由はあったんだけどね、利益の殆どを中層のプレイヤーの援助に使ってたんだって』 

 

直葉『へー、いい人ですねエギルさん』 

 

エギル「………」 

 

クライン「………お前の好印象な意見をなんで聞かなきゃならないんだおい」 

 

キリト「焦るなクライン、アスナが上手く誘導してくれる筈だ」フルフル 

 

クライン「……まぁ良いけどよ」

 

アスナ『………あれー?エギルさんの雑貨屋さんそんなに酷かったかしら?』 

 

シリカ『へ?でもさっきリズさんがアコギな商売してたって』 

 

リズベット『あ、やっぱりアスナは違うんだ?実は私だけど』 

 

直葉『え?なんです?』 

 

アスナエギルさんのお店、私はよく利用してたんだけどね?安かったし高く買い付けしてくれたんだよね』 

 

キリト「………は?」 

 

クライン「……あぁん?」 

 

エギル「………」フイッ 

 

リズベット『私も、武器製作するのにインゴット買い付けとかしてたんだけどさ、相場の3割引きぐらい、物によっては半額以下で売ってくれてたのよねー』 

 

キリト「おいエギル」 

 

クライン「どういう事だこの野郎」 

 

エギル「過ぎた事だ、気にするな」フルフル 

 

キリト「エギル、お前女プレイヤーには贔屓した値段で俺らにはふっかけてやがったな?」 

 

クライン「あの極限状態でそんな事してやがったのかてめぇこの既婚者様よぉ!?」 

 

エギル「………まぁ、女性に優しくってのは基本だろ?」 

 

キリト「こ、このやろう…」ワナワナ 

 

クライン「なんどアイテム二束三文でてめぇに売ったと思ってんだちくしょう…」プルプル 

 

エギル「はっはっはっ、野郎に優しくする趣味はねぇからな」フゥー

 

キリト「……ちっ、まあいい、確かに過ぎた事だしな、その頃のデータが残ってる訳でもないし」 

 

クライン「アコギなだけじゃなくスケコマシの気もあったとはな」ケッ 

 

エギル「おいおい今はそんな事してないんだしいいっこ無しにしようぜ?ほら、まだ肝心な事聞いてないんだし集中しようぜ、な?」 

 

キリト「………都合のいいやつだ」 

 

リズベット『まあそれだけなら私ら女プレイヤーには損はないし、まあ良いかなって思ってたんだけどさ』 

 

アスナ『え?まだ何かあるの?』 

 

シリカ『なんです?』 

 

直葉『なんか変な事あったんですか?』 

 

リズベット『変な事ではないんだけどね、ただリアルで会ったときさ、エギルが既婚者って聞いた時うわぁって思ったのよね……結婚してんのにそりゃないわって』 

 

エギル「中断だ、ちょっと止めてくる」スタスタ 

 

キリト「おいなんだ、最後まで聞かせろって」ガシッ 

 

クライン「なんだ、リズベットになんかしたのかエギル?おい?」ガシッ 

 

エギル「離せ!?家庭崩壊の危機なんだ!!」ジタバタ 

 

キリト「絶対離さん、クラインもっと踏ん張れ」ガッシリ 

 

クライン「おうよ」ガッシリ 

 

エギル「か、勘弁してくれ!?」ジタバタ 

 

リズベット『私さ、何回かエギルに食事誘われて口説き文句みたいな事言われてんのよね』 

 

エギル「NOOOOOOOOOOOOOO!!!!」ウガー 

 

キリト「………マジで?」 

 

クライン「………お前……相手幾つだと思ってんだ」 

 

エギル「」 

 

直葉『え……なんですかそれ』ジトッ 

 

シリカ『奥さんかわいそう…』ジトッ 

 

アスナ『えっと、あのリズ……』オロオロ 

 

リズベットアスナが誘われなかったのはキリトが居たからね、実際女性プレイヤーには手当たりしだいだったっぽいのよ』 

 

シリカ『………えー…』 

 

直葉『ちょっと酷い、かな…エギルさんの奥さんってずっとこのお店頑張って維持してたんですよね確か』 

 

アスナ『ね、ねぇこの話はちょっと…』オロオロ 

 

エギル「」 

 

キリト「…アスナが話反らそうとしてるっぽいな」 

 

クライン「まあ、本人聞いてるのにディスり始められたらそりゃ気まずいだろうからな」 

 

エギル「」 

 

リズベット『まあ仕方ないのかもしれないけどね、エギルいわくあの時は奥さんなんて離婚届けだけ残してさっさと見限られてると思ってたって言ってたから』 

 

キリト「なるほど、でも実際は待っててくれたと」 

 

クライン「いい奥さんだな」 

 

エギル「泣いて土下座して感謝して二度とそういう事しないってカミさんには誓ってる!!俺が馬鹿だったから掘り返すの止めてくれ!?」ジタバタ 

 

キリト「………まぁ、エギルの奥さんにチクるつもりならもうしてるだろうし、ここで話に上ってても平気じゃね?」 

 

クライン「…あー、羨ましいなぁそういう嫁さん」 

 

エギル「………要らねぇ恥を掻いちまったぜちくしょう…」プルプル

 

リズベット『その点キリトは安全よねぇアスナ』 

 

アスナ『え、き、キリトくん?』 

 

直葉『そうですねぇ、お兄ちゃんたぶん自分からは浮気とかしないと思う』 

 

キリト「………」ピククッ 

 

クライン「………今度はお前の番だな」ポン 

 

エギル「さて、どんな話題になることやらな」 

 

キリト「……ぐっ…」 

 

リズベット『あいつ鈍感だしね、ていうかアスナはキリトと二人の時どうなのよ?』 

 

アスナ『え、それは…その…』 

 

シリカ『あ、私も知りたい』 

 

直葉『私もー』 

 

アスナ『えっと、あの……』 

 

キリト「………」スタスタ 

 

エギル「クライン」ガシッ 

 

クライン「おうともよ」ガシッ 

 

キリト「はっ、離せ!?プライバシー侵害だ!!止めさせてくれよ!?」ジタバタ 

 

クライン「盗聴真っ最中の分際でなぁにがプライバシーだバカ野郎」ガッシリ 

 

エギル「お前も等しく恥を掻こうぜ?大丈夫だ、お前の次はクラインも続く」 

 

クライン「俺も続くのか…」 

 

キリト「あ、アスナやめてーーー!!!!」ジタバタ

 

アスナ『だ、大丈夫かな?大丈夫だよね言っても』モジモジ 

 

キリト「やめてっ!!アスナお願いだからやめて!!」ジタバタ 

 

クライン「うるせぇ、黙ってろキリの字」ムギュ 

 

キリト「ふ、ふぐー!?」ムガモガ 

 

エギル「猿ぐつわでもさせるか、ほれタオル」 

 

クライン「おうよ」ギュッ 

 

キリト「んー!?!?」ジタバタ 

 

直葉『えと、それでお兄ちゃんはどんな感じで?』ドキドキ 

 

アスナ『………えっと、普段はこう…ずーっと手を握ってたり、えへっ』ニヨニヨ 

 

シリカ『それで、そこからは?』ドキドキ 

 

アスナ『さ、最近はキリトくんの方からキスしてくる事多かったり……あとは学校とかでも人がいない所でこうぎゅーっと…』ニヨニヨ 

 

リズベット『ふむふむ、で?』 

 

キリト「んー!?んんーー!!!!」ビッタンビッタン 

 

クライン「青春してんなぁ…」 

 

エギル「あまずっぺぇな」ニヤニヤ 

 

キリト「ふごぉぉぉ……」ウルウル 

 

エギル「おうおう恥ずかしがりやがって、真っ赤だぜ顔が」 

 

クライン「そのまま恥ずか死んで爆発してしまえこんちくしょう」

 

直葉『お兄ちゃんけっこう積極的なんだ…意外かも…』ゴクリ 

 

リズベット『まあ確かに、あいつ淡白っぽいのに』 

 

アスナ『え、そうかな……あー、いや……確かにそう見えるのかな?』ムゥ 

 

シリカ『そういえば、アスナさんのお買い物って今度の休日キリトさんが家に来るからその準備…でしたっけ?』 

 

アスナ『』ギクッ 

 

キリト「……っ!!」ピクッ 

 

エギル「……そういやもともとあいつら集まる予定だったとか言ってたよな」 

 

クライン「食材でも買うつもりだったんじゃねぇの?」 

 

リズベット『そういえばそうだね、なに買うのかは聞いてないけど』 

 

アスナ『えと、それは…その…』 

 

シリカ『料理に使う食材とかですかね?ほら、リーファが居れば好みの料理も聞きながら材料揃えられるし』 

 

アスナ『材料は前日買うからまだ良いんだけど……』モジモジ 

 

リズベット『………あー…』 

 

リーファ『……?』キョトン 

 

アスナ『えと……キリトくんはうっかりわすれそうだから不安だけど、私もよく分からないからみんなに恥ずかしいけど相談して買おうかなって…』モジモジ 

 

リズベット『………あーはいはい、なるほど』 

 

シリカ『へ?何を買うのを相談するんです?』 

 

キリト「……?」キョトン 

 

エギル「…………」 

 

クライン「なんだ?勝負下着か?」 

 

キリト「…ッッ!!!!」クワッ 

 

エギル「黙ってろ」 

 

アスナ『……その……コ……』モジモジ 

 

直葉『こ?』 

 

シリカ『こ?』 

 

クライン「電動コケシか…?」ゴクリ 

 

キリト「…ッッ!?!?」クワワッ!! 

 

エギル「なわけねぇだろ」 

 

リズベット『…………』 

 

アスナ『……や、やっぱりなんでもないよ、うん』アセアセ 

 

シリカ『え、気になりますよアスナさん』 

 

直葉『教えて下さいってば』 

 

アスナ『なんでもないのほんとに!!やっぱり必用ないもん』 

 

リズベット『……必用ないって…アスナ、あんたが買いたいのって……ヒソヒソ…』 

 

アスナ『……う、うん…そうだけど…』カァァァ 

 

リズベット『恥ずかしいのは分かるけどさ、キリトが用意するかどうかは怪しいから持っといた方が良くない?』 

 

シリカ『え、リズさんなんですか?教えて下さいってば!!』ユサユサ 

 

直葉『………お兄ちゃんが用意するか分かんない必用な物…あっ…』ギクッ 

 

アスナ『………その、うん…』モジモジ 

 

リズベット『ほんとに良いの?』 

 

直葉『……え、えっと、あたしも買っといた方が良いと…』モジモジ 

 

シリカリーファも分かったの?除け者嫌ですよ教えて下さいってば』ユサユサ 

 

リズベット『仕方ないわね、シリカ、えーと…ゴニョゴニョ』 

 

シリカ『はぅ!?』ギクッ 

 

キリト「……???」ンン? 

 

クライン「キリトが用意するべきもん……?」 

 

 

アスナ『だ、大丈夫、よく考えたらまだ早いから、まだ私もキリトくんも未成年だし仮想世界ならともかくリアルでは早いから、うん』 

 

キリト「……ん?」キョトン 

 

アスナ『大丈夫よねキリトくん?そういうのはしっかりと自立して、お互いに責任持てるようになってからでも遅くありませんからねっ!!』 

 

キリト「…っ?」エッ 

 

リズベット『でもさ、キリトだって男だし、彼女の家に行ったらそういうの期待するんじゃない?』 

 

アスナ『キリトくんはそんなにスケベじゃないもん、大丈夫です』プイッ 

 

キリト「………ふごっ」エッ? 

 

直葉『………そうかなぁ?』 

 

シリカ『うーん…』 

 

アスナ『大丈夫ったら大丈夫なの!!キリトくんはそんなに意思弱く無いし、現実世界でそういう事するのは成人して一緒になってからですから、キリトはエッチでスケベで変態なんかじゃないから絶対に今度の休日私の家に来ても何もありませんっ!!』キッパリ 

 

キリト「」グフッ 

 

クライン「………」 

 

エギル「…………」 

 

リズベット『……じゃあ万が一押し倒して来たら?』 

 

アスナ『お説教よ』 

 

キリト「」シクシクシク 

 

エギル「………」 

 

クライン「……泣くなよおい」 

 

キリト「ふぉぉぉ…」ポロポロ 

 

エギル「今のアスナの発言はあんまり気にする必用無いぞ?なぁ泣くなよキリト」 

 

キリト「ふぉぉぉ…」ウルウル

 

キリト「………」ウジウジ 

 

クライン「あんまりウジウジすんなよ?ほら猿ぐつわ外してやるから…」グイッ 

 

キリト「……あんまりだぁぁぁぁ……」サメザメ 

 

エギル「気にするなって言ってんのによ……ありゃ俺らが聞いてるし肯定したら恥ずかしいからああ言ってるだけだと思うぞ?」 

 

キリト「……アスナってけっこう頑固だし……」ウジウジ 

 

クライン「ツンデレか、良いなぁそれ…」 

 

エギル「まぁそうなんだが、実際に意地張られたら面倒なだけではあるからな……まあ頑張れ」 

 

キリト「………なんでこんな事に……ふぐぅ…」ウルウル 

 

リズベット『あー、まあアスナがそう言うならそうって事で良いわ、二人の事には口出さないわ』 

 

直葉『あはは…』 

 

キリト「………というか、本題が来ないんだが」キッ 

 

クライン「本題?」 

 

キリト「お前のリサーチが目的じゃん!!なんで俺が標的にされてんだよぉ!! 

」ウルウル 

 

クライン「ちっ…覚えてやがったか…」 

 

エギル「逆ギレしても仕方ないだろ、今はアスナが流れ変えるの待つしか無いだろ」フゥ 

 

キリト「……だってよぉ…」ウルウル 

 

シリカ『え、クラインさんですか?』 

 

直葉『アスナさん、クラインさんがどうかしたんですか?』 

 

エギル「……ほら、ようやく本題入ったみたいだぜ?」 

 

クライン「……うやむやにしてくれてりゃ良かったんだがなぁ」ガシガシ 

 

キリト「……よし、これで全員フェアだな」ゴクリ 

 

エギル「………やらにゃあ良かったな、こんな事なら」 

 

アスナ『うん、エギルさんとかキリトくんの話題出たし、ついでって言ったら変だけど』 

 

クライン「……ついで…」 

 

キリト「気にするな、多少強引に話持ってっただけだろ兄弟」 

 

エギル「細かい事はいいっこ無しだぜブラザー」 

 

クライン「なんで兄弟なんだよ……」 

 

キリト「この場で心抉られる奴は兄弟なんだよ」 

 

エギル「そうだ、覚悟しとけ」 

 

クライン「…そんなブラザーは要らねぇ」 

 

リズベット『クラインねぇ?』 

 

直葉『いい人ですよねクラインさん、気さくだし』 

 

シリカ『そうですね』 

 

リズベット『ちょっとむさいけどね、嫌な印象はないかなぁ私も』 

 

クライン「…………」 

 

キリト「ちっ」 

 

エギル「お前なんかブラザーじゃねぇ」 

 

クライン「………」 

 

キリト「………おい、クライン?」 

 

エギル「………どうした?」 

 

クライン「………ふへっ」フルフル 

 

エギル「………お前あれくらいで感無量なのか…」 

 

キリト「……安上がりだな…」 

 

クライン「うるせぇ!!そういう事言われた事なんざねぇんだから喜んだっていいだろ!!」 

 

キリト「…ああ、うん…すまん」 

 

エギル「未成年には惚れんなよ?」 

 

クライン「……お前に言われたくねぇよ」ギクッ

 

キリト「まあでも予想通り印象は悪くなかったな」 

 

エギル「そりゃそうだろ、嫌われてたらいくらキリトと仲良くてもゲームでパーティーなんて組んでくれねぇよ」 

 

クライン「……まぁ、そうか、そうだわな」 

 

シリカ『クラインさんってあんまり年上の男の人って感じしないですし』 

 

リズベット『確かに、エギルとかと比べるとね』 

 

アスナ『んー…言われるとそうかも、なんでかな?』 

 

リズベット『子供っぽいのよね、精神的にはキリトと対して変わんないわあれ』 

 

直葉『あはは……確かにお兄ちゃんと同レベルの遊びばっかりやってるかも』 

 

クライン「………これは誉めてんのかけなしてんのか」 

 

キリト「正直微妙だが…」 

 

エギル「悪気は無さそうだから良しとしとけ」 

 

クライン「……おかしい、俺は常に大人の男として振る舞っていたはずなんだが」 

 

リズベット『あとたまに変な事言うよね、どう反応していいか分かんないからだいたい流してるけど』 

 

アスナ『へ?例えば?』 

 

リズベット『俺は女に困った事ないぜー的な?私らに対しても割りとキョドるのに、いやあんたどう考えても恋愛経験まるでないでしょって何度かツッコミ入れそうになったわ』 

 

キリト「あっ」 

 

エギル「………」 

 

クライン「」

 

クライン「」 

 

シリカ『あ、それ私もそれっぽい事言われましたよ?俺はそれなりに色恋沙汰には詳しいからなんか悩み事あればいつでもいえなー?って感じで、笑って誤魔化しましたけど』 

 

クライン「」 

 

キリト「……クラインお前…」 

 

エギル「……出来もしねぇことを…」 

 

クライン「」プルプル 

 

アスナ『あの…みんなそのくらいで…』オロオロ 

 

直葉『ここだけの話なんですけど……たまにクラインさん、すっごい凝視してきません?』 

 

アスナ『えっ?』 

 

クライン「」ギクッ 

 

キリト「おい」 

 

エギル「………」 

 

シリカ『私はそんな事ないですけど』 

 

リズベット『しょうがないんじゃない?リーファおっきいもん、私とアスナも割りとガン見されてるしぶっちゃけ男ってだいたいそういうの見てくるし、まぁキリトはいうのあんまりないないんだけどね、あいつは変だから』 

 

直葉『そうなんですかね…アスナさんもやっぱりリズさんが言うように見られてるって分かったり…?』 

 

アスナ『……う、えーと…』 

 

クライン「」 

 

キリト「………」 

 

エギル「あーあ…」 

 

アスナ『………そ、そんなことないよ?うん…』フイッ 

 

リズベット『あれ?気付いてなかったのアスナ?クラインってさ、パーティー組んでる時後ろ歩く事大いにんだけどね、その時キリトと最前列歩いてるアスナのお尻ずーっとみてんのよあいつ』 

 

アスナ『ちょっ、リズそういうのは言わなくて良いってば!?』ガタッ 

 

リズベット『えっ、う、うん』ビクッ 

 

キリト「おいクラインどういう事だ」 

 

クライン「」 

 

エギル「………お前、そんな気付かれるほどガッツリ見てたのか…」 

 

クライン「」

 

クライン「」 

 

キリト「おい!!なんか言えよこらぁ!!」 

 

エギル「よせキリト、お前だって付き合う前はこっそりバレないようにケツやら乳やら見てただろ」 

 

キリト「だ、だけど!?」グッ 

 

エギル「本人らがあんまり気にしてないんだ、許してやれ」フゥ 

 

キリト「……というかなんで気にしてないんだ、普通嫌がるんじゃ…」 

 

エギル「野郎のそういう視線には慣れっこなんだろ、気にしてたら外出歩けねぇからな」 

 

キリト「……スグは?」 

 

エギル「鈍感なのか純粋なのか、まぁそのうち似たような感じで折り合いつけると思うぞ?」 

 

キリト「………なんか複雑な気分だ…」 

 

エギル「見てくれの良い女ほどそういう野郎の視線は気にしないもんだ、あいつら全員レベル高いからな」 

 

クライン「……じゃあ何故追及されてんだ俺…」 

 

エギル「物事には限度ってもんがあるだろうが下手くそ」 

 

キリト「……下手くそっておい」 

 

エギル「自然に拝めるなら拝めなきゃ損だろ、違うか?」 

 

キリト「………批難されるのが怖くて自粛してる俺の立場は…」ゲンナリ 

 

エギル「お前はそれで良いだろ、アスナはそういうの鋭いと思うからアスナ以外にはやめとけ」 

 

キリト「………そうね」 

 

クライン「………つーかよ、そんなに俺、分かりやすいのか?」 

 

エギル「………あぁ、かなり」 

 

キリト「あんまり落ち込むなよ兄弟、良くいえば嘘がつけないタイプって事だろ?」 

 

エギル「そうだブラザー、実際嫌われてはないんだから落ち込むな」 

 

クライン「兄弟って言うんじゃねぇよ!!」 

 

リズベット『ま、クラインっていい人だし嫌いじゃないけどさ、絶対モテないわあれ』 

 

シリカ『いい人止まりっぽいですよね』 

 

クライン「」グサッ 

 

直葉『なんでですかねぇ?顔はそんなに悪くないど思うししっかりしてる所はしてるんですけど』 

 

リズベット『まああれね、やっぱりd…ブチッ 

 

クライン「おい!?リズベットはなんて言おうとしたんだ!?なんで切れたんだよ!?」 

 

キリト「アスナが通話切ったっぽいな…」 

 

エギル「…これ以上は聞かせられないと判断したか、良い判断だ」 

 

クライン「なんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」ビッタンビッタン 

 

キリト「……なんか、すまん」 

 

エギル「……ガールズトークの盗み聞きなんざすんもんじゃなかったな…」

 

その後、クラインは見栄を張るような言動をしなくなったものの、女性恐怖症っぽくなってしまった。 

 

俺やエギル、それにアスナが何度となく励ましの言葉をかけてみたが、クラインの傷付いた心を癒す事は叶わなかった。 

 

それとあの時、リズベットがなんと言ったのかアスナに後から聞いたのだが、「ダサい、キリトの黒ずくめと良い勝負だわ、キリトはまだ似合ってるし年齢的にも許せるけどあれはないわー」と言ってたらしい、俺はそれを聞かなければ良かったと本気で泣きそうになった。 

 

それから数日経ったアスナとの約束の日、俺は期待に胸とそれ以外の所を膨らまし、エギルの大丈夫だ大人になってこいという言葉と、餞別に貰った避妊具を握りしめてアスナの家に赴いて、そしてアスナにお説教された。エギルの嘘つき。 

 

その日の夜は朝まですすり泣き、翌日スグに泣きすぎて腫れた顔を見られて、慰められてしまった。抱き締められた時、スグまた胸でかくなったなと考えてしまった自分をボコボコに殴り倒してやりたくなった。 

 

……そして、それから数ヵ月。

 

…………死銃事件から数日後、ALO内 

 

キリト「おーす、待たせたなクライン」 

 

クライン「よぉ、後始末は終わったのか?」 

 

キリト「ああ、預けてたアイテム関係も引き取ったしコンバートした時の面倒事は全部終わった」 

 

クライン「しかしキリトよ、お前もトラブルによく巻き込まれる奴だな」 

 

キリト「まぁ、バイトだったから自分から巻き込まれに行ったって感じだけどな……まぁ色々収穫もあったし良いよ別に」 

 

クライン「収穫?あのシノンって娘と仲良くなってた事か」 

 

キリト「……あー、まあそれもあるといえばあるが……それだけじゃなくてGGOでの経験でちょっとした事思い付いてな」 

 

クライン「なんだ?新しい技でも思い付いたのかよ?」 

 

キリト「そんな所だ、後で試してみるから付き合えよクライン」ニヤリ

 

クライン「ああ、それは構わねぇがよ、今日は別件だぞ」 

 

キリト「何の用なんだ?いきなり呼びつけて」 

 

クライン「……なぁキリトよ、お前ALOで新規アカ作らねーか?」 

 

キリト「新規アカウント?アバターをこれ以外に作るのか、なんで?」 

 

クライン「……まぁ訳は後で話すけどよ、確かすぐ作れるよな?」 

 

キリト「ああ、大丈夫だと思うけど」 

 

クライン「なら頼むわ、この通りだ」ペコリ 

 

キリト「……いまいち意図がハッキリしないけど……まぁいいか、少し待っててくれ、今から作るから」 

 

クライン「……お、おう!!」ソワソワ 

 

キリト「………なんでソワソワしてんだ?」 

 

クライン「良いから早くやろうぜ?なっ?」 

 

キリト「分かったよ、じゃあ一時間ぐらい待っててくれな」 

 

一時間後。 

 

キリト(マッスル)「作ってきたぞクライン」スタスタ 

 

クライン「……キリトか、なんだそれ…ムキムキじゃねぇか」ガックリ 

 

キリト「……なんだよ?この姿じゃダメって事か?俺は気に入ったんだけど」ムキッ 

 

クライン「一番最悪だってんだちくしょう、あーもういい、キリト……アバター変更設定やるぞ」 

 

キリト「……えー、せっかく念願の筋肉が…」 

 

クライン「それ、アスナにも間違いなく不評だと思うぞ、良いから早く」 

 

キリト「でもアバターのフォルム変更って課金コンテンツでべらぼうに高いぜ?俺そんな金出したくないんだが」 

 

クライン「俺が出す、メインメニュー開け口座からお前にマネーポイント送る」ポチポチ 

 

キリト「……マジで?なんでそこまで…」 

 

クライン「いいから早くしてくれよ、フォルムの指定Noは指示するからよ」 

 

キリト「……?まあいいか、ちょっと待ってくれな今やるから」 

 

……で。 

 

キリト「おい」 

 

クライン「………よし、GGOでのお前のアバター完全再現できたな」ポッ 

 

キリト「……おいクラインどういうつもりだ」 

 

クライン「………一から説明するか?」 

 

キリト「当たり前だ、なに考えてやがる」ジロッ 

 

クライン「……キリトよ、あれから俺よ……ちょっと女怖いってのは知ってるよな?」ジリッ 

 

キリト「………知ってるが……おい、ちょっとまて」 

 

クライン「俺よ…ずっと考えてたんだがよ、なんとかリハビリ出来ねーかって、でも実際女前にするとビビっちまってな、情けない事に」ジリジリ 

 

キリト「………いや、だからまてクライン」ズサッ 

 

クライン「で、そういう感じで悩んでた所でGGOでのあの大会を、お前の応援の為に見た訳だ」ジリジリ 

 

キリト「おいにじり寄ってくるな、離れろ馬鹿野郎」ジリジリ 

 

クライン「その瞬間、俺の脳天に稲妻が堕ちた」ジリッ 

 

キリト「どんな稲妻だ」 

 

クライン「本物の女より偽者でも気心が知れたキリトの方が良いんじゃね?って」ポッ 

 

キリト「良くねぇよ!!!!なに考えてやがるこのやろう!?!?」ゾゾゾゾゾッ 

 

クライン「ぶっちゃけ惚れたかもしんない」エヘッ 

 

キリト「気持ち悪いよ」

 

キリト「クライン、冷静になれ、こんな姿でも性別は変わらないんだぞ、俺は男だ、いいか?俺は男だ!!」 

 

クライン「男の娘ってジャンルも嫌いじゃないから問題ねぇ」 

 

キリト「男の娘ってあれだろ!?ホントに性別だけが男でそれ以外は完全に美少女キャラじゃん!!それこそ性格まで!!残念だか俺は性格まで乙女にはなってないからな!!」 

 

クライン「わかってねぇなキリト、男の娘ってやつは性格は野郎のまんまの方がはるかに萌えるもんなんだぜ?」ヤレヤレ 

 

キリト「知らねぇよ!?なにそのこだわり?!」 

 

クライン「まあ、とにかくだ、別に付き合えとか言わないけどよ、その………いっぺんそういう事してみたいし」 

 

キリト「」 

 

クライン「頼むよキリト、俺を助けると思って、なぁ……」ジリジリ 

 

キリト「」

 

キリト「お、落ち着けクライン、よく考えろ、俺の普段の姿を思い出せ!!こんなの結局はガワだけの偽者だぞ!!」 

 

クライン「つーか、お前普段から女顔で可愛い系だろ」 

 

キリト「」 

 

クライン「とりあえず宿屋行こうぜ?」 

 

キリト「お断りだ!!」タタッ!! 

 

クライン「逃がすか!!初期ステ新規アバターがSAO時代から鍛えてるカンストステに敵うわきゃねぇだろ!!」ダッ!! 

 

キリト「ひっ!?く、来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」ビュン!! 

 

クライン「ちっ、飛んで逃げやがったか!!待てキリトぉ!!」ビュン!! 

 

キリト「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

…………… 

 

シノン「……よっ」ヒュッ 

 

モンスター「ガァァ!!」バシュッ 

 

アスナ「すごいシノのん、新規で作ったばっかりなのにもうコツ掴んでる」ホェー 

 

シノン「……ちょっと射程短いけど、弓も良いね」 

 

アスナ「銃に比べたらね、でも弓使うプレイヤーってあんまり居ないからもしかしたらALOの方でもすごいプレイヤーになれるかもよ?」 

 

シノン「どうかな?魔法の方が射程は長いんでしょ?だからあんまり弓使いが居ないって話だけど」 

 

アスナ「発動に時間掛かるから一長一短かな、その辺りは試行錯誤して自分に合ったプレイスタイルならそれでって感じかも」 

 

シノン「そっか……それもそうね」 

 

アスナ「……そういえばキリトくん来ないね、どうしたのかな?」 

 

シノン「クラインって人の所に行ってから合流するって言ってたんだよね?そのうち来るんじゃない?」 

 

アスナ「そうだね、そろそろくるかな」

 

イヤァァァァァ!! 

 

アスナ「へ?」 

 

シノン「ん?」 

 

キィィィヤァァァァァァ!! 

 

アスナ「………あれかな?あの子が悲鳴上げながら飛んで……え、クラインさん?」 

 

シノン「……え、あれキリト?」 

 

アスナ「へ?いやあれ女の子………えぇ?あのアバターって」 

 

シノン「キリトってここではキチンと男のアバターの筈じゃなかった?」 

 

アスナ「うん、そうなんだけど…」 

 

シノン「まあ良いわ、どっちにしろ助けるから」ギリギリッ 

 

アスナ「ここから当たるのシノのん?けっこう遠いし動いてるけど」 

 

シノン「直線的に飛んでる的なんて動いてないも同じ、よっ…!!」ビュン!! 

 

 

ホゲッ!? 

 

シノン「当たった」スタスタ 

 

アスナ「シノのんすごーい」タタタッ 

 

シノン「キリト?だよね、あいつもこっち気づいたみたい」 

 

アスナ「なんだろ、むちゃくちゃ泣きべそかいてるね…」 

 

キリト「た、助かった…」ゼェ、ゼェ… 

 

アスナ「やっぱりキリトくん?」 

 

キリト「うん、俺…」ガックリ 

 

シノン「なんなのよその姿、もしかして気に入ったから作ったの?」ジトッ 

 

キリト「俺が気に入った訳じゃない!!」ウルウル 

 

アスナ「……もしかしてクラインさんが?」 

 

キリト「………」コクリ 

 

シノン「なに?もしかしてそういう趣味の人なのこの人、とりあえず拘束したけど」 

 

クライン「」 

 

アスナ「………うーん…」 

 

キリト「……ほんとはそんな悪い奴じゃないんだ…ただ、拗らせちまっただけで」 

 

シノン「拗らせるって何を…?」 

 

アスナ「………」 

 

キリト「………なあシノン、ペンギンの話をしようか」 

 

シノン「はぁ?」 

 

キリト「……ペンギンの雄ってな、雌が居ない環境にずっといると雄同士で交尾しようとするらしい」 

 

シノン「えっ」 

 

アスナ「」 

 

キリト「……雌さえ居れば、そう……雌にさえ困らなければそんなことにはならないのにな……」フイッ 

 

シノン「………えーと」 

 

アスナ「」 

 

クライン「」プルプル

 

……… 

 

クライン「すいませんでした」orz 

 

キリト「………もういいよクライン、ぶっちゃけ気持ちが分からんでもないし」 

 

クライン「……すまん」 

 

キリト「でもあのアバターは廃棄するからな、金掛かってるからちょっと忍びないが」 

 

クライン「ああ、そうしてくれ……残ってるとまた暴走しちまうかもしれん」 

 

キリト「しかし………そんなに追い詰められてるならマジでポリシーだのプライドだの言ってないで出会い系でもしろよ…」 

 

クライン「サクラと筒持たせ怖い」 

 

シノン「なら私紹介してあげる?」 

 

キリト「なにっ!?」 

 

クライン「なんだと!?」 

 

シノン「GGOの方で二十代っぽい女性プレイヤー、何人か知り合いいるからアポ取っといてあげる、それならどうです?」 

 

クライン「お願いします」orz 

 

シノン「分かりました、じゃあそういう事で」 

 

クライン「……め、女神様や…」ウルウル 

 

キリト「……シノン、大丈夫なのか?」ヒソヒソ 

 

シノン「さぁ?」ボソッ 

 

キリト「……さぁって…お前…」ヒソヒソ 

 

シノン「……どこかで手打ちにしないと、ほら、アスナの顔見てみなさいよキリト」クイッ 

 

キリト「……へっ?」 

 

アスナ「………」 

 

シノンアスナのクラインさんを見る目、完全に敵を見る目よ、よっぽどキリトに危害加えられそうになったの気にくわないのね、愛されてるわアンタ」ハァ 

 

キリト「……そ、そう?」 

 

シノン「そうよ、だからこれ以上は心配ないって状況にしとかないと、後で血をみるわよあれ」 

 

キリト「……なにそれちょっと怖い」 

 

アスナ「………………………………………………………………」 

 

 

クライン「…ありがてぇ、女神様やぁ……」ウルウル 

 

キリト「………い、一件落着…?」ドキドキ

 

………で、更に後日 

 

アスナ「その後クラインさんどうなの?」 

 

キリト「シノンに紹介して貰った人と連絡取り合ってるってさ……けっこう手当たり次第っぽく」 

 

アスナ「手当たり次第なんだ…」 

 

キリト「……エギルがな、お前は下手くそなんだから数撃て、そのうちどれかはそのうち当たるって助言したらしい」 

 

アスナ「ふーん?」 

 

キリト「まあそういう訳だから、クラインは大丈夫だろ、たぶん」 

 

アスナ「キリトくんがそういうなら…うん…」 

 

キリト「……でだ、ここからがな、本題というかなんというか…」モジモジ 

 

アスナ「………うん、なに?」 

 

キリト「……今、俺の部屋じゃん?」 

 

アスナ「うん」 

 

キリト「……スグも両親も居ないじゃん?」 

 

アスナ「……うん」 

 

キリト「……その、えーと…」ソワソワ 

 

アスナ「…………」ジー 

 

キリト「………………」 

 

アスナ「……………」 

 

キリト「……アスナ、ペンギンの話をしようか」 

 

アスナ「……それはもう良いってば、分かったから、キリトくんがそうなるのは嫌だし、ちゃんと言ってくれれば、ね?キリトくん」 

 

キリト「う、うん……じゃあアスナ…」 

 

アスナ「うん」ニコリ 

 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410521493/

アスナ「ダメじゃないキリトくん……私に嘘なんてついたら…」キリト「あ……え……」 【SAO ss/アニメss】

 

キリト「アスナって俺のこと好きなのかな?」

 

クライン「……」エギル「……」

 

エギル「……どうしてそう思ったんだ?」 

 

キリト「え、だって家にお呼ばれされて手料理作ってくれたし、無理矢理パーティ組まされるし、お弁当作ってきてくれたし、ボス戦終わった後抱きつかれたし……絶対好きじゃね?」 

 

クライン「……まぁ……そうだろうな(…自慢か?)」 

 

エギル「よかったじゃねぇかあんな美人さんに好かれるなんてよ」

 

キリト「まぁそれはいいんだけどさ……なんとなくなんだが……1年ぐらい前からだろうか……とにかくアスナの様子がおかしいんだ」 

 

クライン「様子が…」 

 

エギル「おかしい?」 

 

キリト「ああ……たとえば」 

 

アスナ「キリトくん……何か隠してるでしょ?」 

 

キリト「え?」 

 

アスナ「だっておかしいもの…君、片手剣装備なのに盾を持たないじゃない?私が装備しないのはレイピアの速度が落ちるからだし……怪しいなぁ……」 

 

キリト「……えと」 

 

アスナ「さては、ユニークスキルね」ニッ 

 

キリト「」 

 

アスナ「(やっぱりね……ずっとおかしいとは思っていたのよ…彼は無駄なことはしない性格だし、わざわざスタイル重視で盾を装備しないとかそんな危険なことを考える人じゃない……)」 

 

キリト「(な、なんでわかるんすかぁぁ!?)」 

 

回想終了 

 

 

キリト「ってことがあったんだ」 

 

クライン「へぇ…じゃああのボス戦前からアスナちゃんはお前に二刀流があることを知ってたのか」 

 

キリト「…さすがに二刀流スキルは分かってなかっただろうけど……それにしても察しが良すぎないか?」 

 

エギル「確かに……普通ユニークスキルなんて発想は出てこねぇよな」 

 

キリト「それにまだあるんだよ…」 

 

 

回想 

 

アスナ「キリトくん!」 

 

キリト「アスナ…」 

 

アスナ「もう…心配したんだからね?リズと一緒にマップから消えちゃうんだもん!…何してたのよ?」 

 

キリト「いや…別に」 

 

アスナ「それ…リズが鍛えた剣?」 

 

キリト「ああ…名は《ダークリパルサー》。最高の剣だよ」 

 

アスナ「……(でも彼のエリュシデータと特に大きな違いはない……なぜ彼はこんな強い剣を2つも欲しいと思ったの?………………あ)」 

 

アスナ「(まさか……《二刀流》?)」 

 

キリト「アスナ?」 

 

アスナ「(いや、そんなスキルはないわ……いや待てよ……もしキリト君が……ユニークスキルの使い手だったら……)」 

 

アスナ「……ありえるわ」 

 

キリト「おい…アスナ?」 

 

アスナ「あ、なんでもないわなんでも!…それよりキリト君、聞きたいことがあるんだけど…」 

 

キリト「なんだい?」 

 

アスナ「昨日はリズと何処で寝泊まりをしたの?」 

 

キリト「え………あ、の、野宿だよ野宿……いやぁ参ったよホント!」 

 

アスナ「…キリト君寝袋2つ持ってたもんね?それじゃ吹雪の中2人とも寝てたの?」 

 

キリト「…(2人で穴に落っこちて手を繋ぎながら寝てた…なんて言えないよな)」 

 

アスナ「……」 

 

キリト「そうだよ、いやぁ寒かった寒かった…死ぬかとー」 

 

アスナ「嘘ね」 

 

キリト「………え?」 

 

アスナ「(さっきの間…あれはきっと何かを隠そうとしているんだわ……それに吹雪の中で眠ったなんて、キリトくん1人ならやりかねないけど、優しいキリト君が女の子をそんな所で寝かせるはずがない……と、なれば)」 

 

アスナ「トラップで穴に落ちた……とか?」ニッ 

 

キリト「……なん………だと」 

 

アスナ「ダメじゃないキリトくん……私達友達なんだから嘘なんて…」 

 

キリト「あ……え……」 

 

アスナ「それで……穴の中でどんな風に過ごしたの?」ニコ 

 

キリト「」 

 

回想終了 

 

 

クライン「…………」 

 

エギル「…………」 

 

キリト「……どう思う?」 

 

クライン・エギル「……こえぇよ」 

 

キリト「だよな……さらにあってさ」 

 

クライン「まだあんのか………」 

 

 

回想 

 

アスナ「私もう1度47層に行ってみたいなぁ」 

 

キリト「まぁあそこは女の子が喜びそうな所だよな」 

 

アスナ「綺麗な所だったよね」 

 

キリト「ああ…今ではデートスポットになってるみたいだよ」 

 

アスナ「……随分と詳しいんだねキリト君?」 

 

キリト「え?」 

 

アスナ「もしかして、攻略後も行ったことあるの?デート?」 

 

キリト「いや…そんなんじゃ」 

 

アスナ「(確かあそこには……!!…なるほど理解したわ)」 

 

アスナ「お相手は…シリカちゃん…かしら?」ニッ 

 

キリト「……なん……で」 

 

アスナ「キリトくんがあのビーストテイマーのシリカちゃんと知り合いだっていうのは知ってるよもちろん」 

 

キリト「…(え、それ話したことあるっけ?)」 

 

アスナ「そしてあそこのダンジョンには使い魔蘇生アイテムを手に入れられるものがあった……つまりシリカちゃんは何かの拍子に自分の使い魔を死なせてしまい、そこに偶然居合わせたキリトくんがその蘇生アイテムを手に入れるための手助けをすることになった……と、いうわけになるわ」 

 

キリト「(全て見透かされている!?)」 

 

アスナ「….あそこのダンジョン…確か植物系のハレンチなモンスターがPOPするわ」 

 

キリト「!!(まさか……)」 

 

アスナ「キリトくんは余裕でしょうけど……シリカちゃんはどうだったのかしら?……あの植物系モンスターに絡み取られるシーンもあったんじゃないかしら?」 

 

キリト「………」ガクガク 

 

アスナ「……そこから予想できるのは一つ……あなたは恐らくシリカちゃんのパンツを見たわね」 

 

キリト「」 

 

アスナ「……詳しく、説明してもらうわ」ニコ 

 

回想終了 

 

 

キリト「なんで全部わかるんだよ!?どうなってんだよ!?」 

 

エギル「47層に行った=シリカって予想できるって……」 

 

クライン「まぁ確かにビーストテイマーは珍しいし……シリカちゃんはこの世界では有名人だからアスナちゃんがシリカちゃんを知っててもおかしくはないが…」 

 

エギル「引くを超えてもはや感心する」 

 

クライン「感心を超えて俺はもはや感動した」 

 

キリト「お前ら他人事だと思って!俺身体の何処かに無線機でも付けられてるかと思ってしまうぐらい混乱してんだからな!?」 

 

エギル「まぁ…この世界に無線機なんざあるわけねーよな」 

 

キリト「はぁ……」 

 

クライン「キリト…お前あの子と付き合ったら絶対に浮気なんてできねぇな」 

 

キリト「そんなことはしないさ」キリッ 

 

エギル「そこは格好つけるのかよ」 

 

 

アスナ「おーいキリトくーん」 

 

キリト「」ビクッ 

 

エギル「…どうやら嫁がお呼びのようだぜ?」ニヤニヤ 

 

キリト「ま、まだ嫁じゃねぇよ!///」 

 

クライン「そこは照れるのかよ」 

 

キリト「////…じゃ、俺行くから!」ガチャ 

 

エギル「……なんつーか」 

 

クライン「…なんだかんだで青春してんじゃねぇか」 

 

 

キリト「おいアスナ…引っ張るなよ」 

 

アスナ「ふふ、早く行こう!面白いダンジョン見つけたの」 

 

キリト「わかったわかったよ…ったく」 

 

アスナ「…………スキ////」 

 

キリト「…え?なんか言ったか?」 

 

アスナ「う、ううん!なんでもない////」 

 

キリト「?」 

 

アスナ「あ、そう言えば」 

 

キリト「なんだい?アスナ」 

 

アスナ「月夜の黒猫団って知ってる?」ニッ 

 

キリト「」 

 

 

おまけ

 

75層ボス攻略 

 

エギル「何人…死んだ?」 

 

クライン「クソッ!」 

 

キリト「はぁ…はぁ…」 

 

ヒースクリフ「………」 

 

キリト「!」 

 

キリト「(まさか……そんな……)」スッ 

 

アスナ「団長!」バッ 

 

キリト「!(…アスナ?)」 

 

ヒースクリフ「どうしたアスナくん?」 

 

アスナ「先ほどのボス戦で気になったことが何点かありまして…」チラ 

 

キリト「!(…一瞬だけど…俺の方を見た?)」 

 

ヒースクリフ「?…なんだ?」 

 

アスナ「それが……」 

 

グサッ 

 

キリト「なっ!?」 

 

エギル「え」 

 

クライン「は…?」 

 

ヒースクリフ「ごふっ!?……なん……だと?」 

 

アスナ「気になる点があったんですよ……団長、いえ……茅場晶彦!!」ニッ 

 

キリト達「」 

 

ヒースクリフ「」 

 

ヒースクリフ(…バカな!?) 

 

アスナ「ずっとこの機会を待っていました…あなたから信用を勝ち取り……あなたが油断する瞬間をー」 

 

ヒースクリフ「(なんて恐ろしい娘だ)」 

 

アスナ「……(現実世界に帰ると実家がめんどくさくて、キリト君とイチャイチャできなくなるから)まだ[ピーーー]つもりではなかったんですけどね……あなたはどうやらキリト君に夢中の様だったので懐がガラ空きでしたよ?」 

 

ヒースクリフ「ぐっ……」 

 

アスナ「…私が何より許せないのは…キリト君に《二刀流》を与えたことです」 

 

キリト「……え?」 

 

アスナ「キリトくん……その《二刀流》スキルは悪を倒す勇者のためのスキルなのよ」 

 

キリト「ど、どういう?」 

 

ヒースクリフ「(そ、そんな……わたしの思惑まで!?)」 

 

アスナ「団長のユニークスキル…それを打ち破るためのスキル…それが《二刀流》。つまりキリト君は最強の剣士としていずれ団長と戦う運命だったの」 

 

キリト「!!」 

 

アスナ「許さない……絶対……キリト君に危険なことをさせようとしたあなたを私は絶対に許さない!!」 

 

キリト「アスナ……(わけわからん)」 

 

ヒースクリフ「……私の負けだ、アスナくん、キリトくん」 

 

アスナ「……」 

 

キリト「……(え、俺なんもしてないんすけど)」 

 

ヒースクリフ「最後にこれを君に受け取ってほしい」 

 

キリト「これは?」 

 

ヒースクリフ「The Yandereだ……芽吹けばどういうものかわかる」 

 

キリト「?」 

 

アスナ「(あ、それ持ってる)」 

 

ヒースクリフ「ゲームクリアおめでとう。アスナくん、キリトくん」パシャーン 

 

ゲームはクリアされました。 

ゲームはクリアされました。

 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1389961880/

海老名「ああ、そんなに奥まで咥えて美味しそうに頬張って……///」【俺ガイルss/アニメss】

 

海老名「おかしいな……どこに行ったんだろう……」

 

由比ヶ浜「どうしたの、何か無くした?」

 

海老名「うん、『水着エプロン男子高校生喰い』ってDVDが見つからなくて」

 

由比ヶ浜「すごいタイトルだね……」

 

三浦「あんたはまたそんなものを学校に持って来て……」

 

 

比企谷(くそっ、人遣いの荒い先生だ。奉仕部は雑用係じゃねえぞ)

 

比企谷(山のようなプリントを運ばせるから前がよく見えん……おいおい、何か踏んだぞ)グシャッ

 

比企谷(くっ、見えん……一旦プリントを置くか)

 

比企谷(DVD……げっ、割れてる。水着エプロン……なんちゅうタイトルだ)

 

海老名(かかった……)

 

海老名「ヒキタニ君、ちょっとそのDVDを見せて」

 

比企谷「お、おう……」

 

海老名「あーやっぱり私のだ……割れちゃってる……」

 

比企谷「その……すまん」

 

海老名「いいよ、学校に持って来てそんなところに落とした私が悪いんだから……」

 

海老名「全然気にしてないから本当に……」

 

比企谷「悪い……」

 

三浦「海老名大丈夫?」

 

海老名「へーきへーき……」(今のところ順調に進んでるみたいだから)

 

相模「海老名さんかわいそー」

 

ゆっこ「またあいつが何かやったの?」

 

遥「サイテー」

 

海老名(よーし、外野も乗っかかってきた)

 

由比ヶ浜「えーと、ヒッキーもわざとやったんじゃないと思うよ」

 

海老名「分かってる……あんなところに落ちてたら仕方ないよね」

 

相模「でも普通気付くよね」

 

ゆっこ「いつも伏目がちなんだから足元くらいちゃんと見てればいいのにね」

 

比企谷(関係ない連中が好き放題言いやがって)

 

雪ノ下「これは何の騒ぎかしら?」

 

由比ヶ浜「ゆきのん、どうしてここに?」

 

雪ノ下「私は由比ヶ浜さんに用があって来たのだけど、どうやら比企谷が何かやらか

したようね」

 

由比ヶ浜「うん、ヒッキーがうっかり姫菜のDVDを踏んで壊しちゃって……」

 

雪ノ下「そう。学校に関係ないものを持って来て落としてそうなっても仕方ないわ

ね」

 

海老名「……」

 

雪ノ下「でも、足元に気付かず、割るほど強く踏んだ比企谷君にも問題はあるわね」

 

比企谷「……」

 

雪ノ下「なら、お詫びに奉仕部らしく比企谷君が海老名さんのお願いを聞くというの

はどうかしら」

 

比企谷(不自然に落ちているDVDを踏み壊した時から疑念はあった。それが海老名さんのものだったことで疑念は膨らんだ)

 

比企谷(不自然な雪ノ下の登場によって疑念はますます膨らんだ)

 

比企谷(そして今、疑念は確信に変わった)

 

比企谷(俺は雪ノ下と海老名さんにはめられた。俺に海老名さんのお願いとやらを聞かせるためだ)

 

比企谷(しかし、この二人の思惑に気付いたところでだ、今の俺に対抗する術はない)

 

比企谷(四面楚歌。教室中から俺を非難する声が聞こえてくる以上、ここでこれは陰謀だと叫んだところで無駄だろう)

 

比企谷(ここは素直に従うしかない……)

 

比企谷「海老名さん、何か俺にやって欲しいことはあるか?」

 

海老名「えーと、じゃあ……」

 

 

海老名「濃厚なはや×はちを今ここで!!」

 

比企谷「はあ!?」

 

葉山「!?」

 

由比ヶ浜「」

 

三浦「またあんたはアホなことを」

 

雪ノ下「……」

 

 

比企谷「分かった。一回落ち着こう。落ち着いて冷静に考えてみようか」

 

海老名「私は至って冷静よ!!」

 

雪ノ下「いいえ、海老名さん。いくら何でもそれは無茶苦茶よ」

 

由比ヶ浜「そ、そうだよ。ヒッキーがは、はや、ち、ち……」

 

相模「ひ、ひきが、は、はや……」

 

海老名「しょうがないわね……ヒキタニ君が隼人君の指をしゃぶるのなら」

 

雪ノ下「そのくらいなら出来るわね、比企谷君」

 

比企谷(やられた)

 

比企谷(これは最初にわざと無理な要求をぶつけて、本命を通りやすくする作戦だ)

 

比企谷(しかもその作戦は俺の意思を動かすためのものじゃない……)

 

相模「ま、まあ指くらいなら……」

 

由比ヶ浜「そ、そのくらいならやってあげなよヒッキー」

 

三浦「それで満足するならいいんじゃないの」

 

比企谷(俺を包囲する連中を動かして俺をさらに追い詰めるためのものだ)

 

比企谷(だが、俺にもまだ逃げ道はある)

 

比企谷「分かった。それでお詫びになるならやってやろうじゃないか。だが、肝心の

葉山はどこへ行った?」

 

海老名「え?」

 

三浦「あれ?隼人どこに行ったん?」

 

由比ヶ浜「さっきまでいたのに」

 

海老名「えー」

 

比企谷(俺は見逃さなかった。揉めている間に葉山がこっそり教室を出ていくのを)

 

比企谷(普段存在感を放ちまくっているあいつが、おそらく人生で最も存在感を消した瞬間であろう)

 

比企谷(GJだ葉山。ともかくこれでこの場はしのげた……)

 

戸塚「ねえ、何かあったの?」

 

由比ヶ浜「あ、さいちゃん。実はヒッキーが……」

 

雪ノ下「……」

 

海老名「隼人君がいないのなら戸塚君に代わりをやってもらおうかしら」

 

比企谷「な!?」

 

戸塚「え?」

 

海老名「さい×はち、いや戸塚君相手ならはち×さいもありか……」ブツブツ

 

比企谷「い、いやちょっと待て……」

 

海老名「さっき何でもするって言ったよね?」

 

比企谷「いや、そこまで言ってない」

 

戸塚「何だかよく分からないけど、それで八幡が許してもらえるなら……」

 

比企谷「戸塚!?」

 

海老名「じゃあやってもらおうかしら」

 

比企谷(どうしてこうなった)

 

比企谷「戸塚、巻きこんですまん」

 

戸塚「いいよ、八幡のためなら」

 

比企谷(くっ、可愛すぎるだろこいつ。なんか役得な気がしてきたぞ)

 

海老名「言わなくてもこんな空気に出来るなんて、いいよー戸塚君逸材だよー!」ハァハァ

 

海老名「それじゃ、最初は袋を舐めるように指の付け根あたりから舐めてみようか」

 

比企谷(こ、こんな感じか……)ペロッ

 

戸塚「あっ……!!」ビクンッ

 

比企谷「わ、悪い戸塚大丈夫か!!」

 

戸塚「大丈夫、ちょっと驚いただけだから。続けていいよ、八幡」

 

比企谷(指を舐めてるだけなのに……)ペロペロ

 

戸塚「くっ……んっ!!」

 

比企谷(いかがわしいことをしてる気分だ)ペロペロ

 

海老名「いいよいいよー!!もっと唾を含ませて、時には吸い込むように!!」ハァハァ

 

比企谷「ピチャピチャ……チュパチュパ……ジュルルッ……」

 

戸塚「んくっ!!ふあっ……!!」ビクビク

 

海老名「次は竿を舐めるように指を舐めて!!」ハァハァ

 

比企谷「レロレロ……ピチャチャ……チュパチュパ……」

 

比企谷(俺は何をやってるんだろう)ペロペロ

 

戸塚「んっ!!は、はちまぁん……」ビクビク

 

比企谷(くっ、何だこの気分は)チュパチュパ

 

海老名「ハァハァ」ポタッ

 

海老名「おっと、鼻血が落ち始めた。しかし、ここで倒れるわけにはいかない……」ハァハァ

 

海老名「この情事を見届けるために!!」ハァハァ

 

三浦「またあんたは……」

 

雪ノ下「……」

 

海老名「指先を舐めて、咥えて、時には奥まで!!」ハァハァ

 

比企谷「ピチャピチャ……レロレロ……チュパチュパ……ジュルル……」

 

戸塚「ふあっ……!あっ……!!んっ……!!」ビクビク

 

由比ヶ浜(ふええ……見てたら何か変な気分になってきたよ……)ドキドキ

 

相模(指を舐めてるだけなのに何でこんな……)ドキドキ

 

三浦(海老名がいつも通り暴走しただけなのに……)ドキドキ

 

ゆっこ&遥(……)ドキドキ

 

雪ノ下「……」

 

海老名「ハァハァハァハァハァ」

 

比企谷「んぐっ……チュプチュプ……むぐっ……グチュグチュ……ジュポジュポ……」

 

戸塚「やっ、八幡……そんなにっ……!!」ビクンッ

 

海老名「ああ、そんなに奥まで咥えて美味しそうに頬張って……」ハァハァ

 

比企谷(無心無心……)ジュポジュポ

 

戸塚「はちまぁん……」ビクビク

 

比企谷(戸塚可愛い……無心無心……)ジュブジュブ

 

戸塚「ふあぁっ……!!」ビクンッ

 

比企谷(戸塚がエロい顔してる……無心無心……)ジュルルッ

 

海老名「ハァハァハァハァ」ボタボタ

 

雪ノ下「!!海老名さん、鼻血が大量に……」

 

比企谷「ジュポジュポ……ぐっ……ジュルルッ……」

 

戸塚「ああっ!!」ビクンッ

 

ドスンッ

 

比企谷「!?」

 

戸塚「ふぇっ……?」

 

雪ノ下「海老名さん、しっかり、海老名さん!」

 

海老名「ぐへへ……」

 

雪ノ下「気絶しているわ」

 

比企谷「依頼主が倒れたんだからもう終了でいいよな?」

 

雪ノ下「そうする外ないわね」

 

比企谷「その……何だ……巻きこんで悪かったな」

 

戸塚「いいよ。八幡の役に立てたのなら」

 

比企谷「戸塚……」(戸塚マジ天使)

 

由比ヶ浜「……」

 

三浦「……」

 

相模「……」

 

相模「絶対にかけ×はやだって」

 

ゆっこ「えー、絶対にはや×かけだって」

 

比企谷(あの一件以来、クラスの女子の間に腐った趣味が広がったようだ)

 

由比ヶ浜「♪」

 

比企谷(珍しく由比ヶ浜が本を読んでいると思って、ちらっと見てみたら、『陥落菊門王国』という衝撃的なタイトルが見えた)

 

比企谷(この腐った空気の原因の一端が俺にあると思うといささか責任を感じないでもない)

 

比企谷(腐界に落ちた彼女達がやがて綺麗になることを陰ながら願いたい)

 

 

―奉仕部部室―

雪ノ下「あら、ホモがや君」

 

比企谷「誰がホモだ」

 

雪ノ下「じゃあ、ひきゲイや君がいいかしら」

 

比企谷「俺はゲイじゃない、これだけははっきりと真実を伝えたかった。ってどこの野球選手だよ」

 

雪ノ下「そうかしら。戸塚君の指を舐めている時は、随分嬉しそうに見えたのだけど、私の見間違いかしら」

 

比企谷「あれは戸塚相手だからだ。仮に葉山に同じことをやれと言われても死んでもお断りだ」

 

雪ノ下「やっぱりゲイじゃない」

 

比企谷「だから違うと言っているだろ」

 

雪ノ下「そういうことにしておくわ」

 

比企谷「この前の件にお前はどこまで関わっていたんだ」

 

雪ノ下「あら、何のことかしら」

 

比企谷「今更とぼけても無駄だからな」

 

雪ノ下「海老名さんから依頼が来たのよ。比企谷君とクラスの男子の絡みが見たい

と」

 

比企谷「そんなもん引き受けるなよ……」

 

雪ノ下「もちろん、あなたが素直に協力してくれるとは思わなかったから、細工をし

たDVDを用意して罠にはめさせてもらったわ」

 

比企谷「お前にしては随分と強引で頭の悪い作戦だな」

 

雪ノ下「全体の計画を立てたのは海老名さんよ。私は主に細工担当」

 

雪ノ下「それに、これだけ無茶苦茶な依頼内容だと、周りを巻きこんだ力技の方が下

手に緻密な作戦よりも通りやすいと思ったのよ」

 

比企谷「まんまとお前らの思い通りになったな」

 

雪ノ下「内心、少し驚いているわ」

 

比企谷「戸塚があのタイミングで来たのもお前の仕業か?」

 

雪ノ下「ええ。海老名さんが強く希望する葉山君相手は難しそうだと思ったから、あのタイミングで戸塚君が来るように細工をさせてもらったわ」

 

雪ノ下「戸塚君ならあなたも無下にはできないでしょ、ホモがや君」

 

比企谷「ぐっ……」

 

雪ノ下「それから、平塚先生のプリントをあなたに運ばせるように仕向けたのも私」

 

比企谷「そこからお前の仕業かよ……」

 

 

比企谷(ん?雪ノ下が読んでいる本のタイトル)

 

『戦国武将と男色』

 

 

比企谷「雪ノ下……お前の読んでいる本……」

 

雪ノ下「これはあくまで学術的な興味から読んでいるだけよ」

 

雪ノ下「もっとも、今回のことでホモセクシュアリティーへ悪からぬ感情を抱いたの

は確かなのだけれど」

 

比企谷「……」

 

 

比企谷(やはり俺の周りの女子は腐っている)

 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

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