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直葉「お兄ちゃん……温かいね」【SAO ss/アニメss】

 

直葉「あー……暇だなぁ」 

 

桐ヶ谷直葉はベッドで1人、ポツンと寝転がっていた。 

 

家の中には誰もいる気配がしない。 

 

それはそうだ。今日は平日であり、直葉の両親は仕事、直葉の兄、桐ヶ谷和人も学校だ。 

 

誰もいるわけがないのだ。

 

……別に寂しくなんてない。 

 

もう高校生なんだから。 

 

…寂しいなんて、思うわけ…………。 

 

直葉「………お兄ちゃん」

 

 

少しだけ過去……まぁ今朝のことなのだが、その時のことを直葉は思い出していたー。 

 

翠「直葉、あんた顔色悪いんじゃない?」 

 

今朝、父親を除いた3人で朝食を取っている時のことだ。 

 

直葉「…そうかな。でも確かに起きた時からなんか調子悪いんだよね……風邪かな?」 

 

起きた時から、少し身体が重いとは直葉も感じていた。 

 

和人「おいおい、大丈夫かスグ」

 

もう制服に着替えて、朝ごはんを食べていた和人は一旦食べるのを中断し、直葉の前まで行き、彼女のおでこに手を当てた。 

 

直葉「あー…お兄ちゃんの手、冷たくて気持ちいぃ」 

 

和人「……おいおい、こりゃ完全に熱だな。母さん、学校を休ませよう」 

 

翠「そうね。…ふふ、お兄ちゃんは心配性ねぇ?」 

 

桐ヶ谷兄妹の、正確には直葉の本当の母親である桐ヶ谷翠は、和人をからかうようにニヤニヤしている。 

 

和人「…やかましい。ほら、立てるか?」 

 

和人は直葉の手を優しく握って、そっと支えてやる。 

 

直葉「うん……」 

 

イスから立ち上がった直葉だが、フラフラしていてどこか危なっかしい。 

 

和人「…仕方ないな」 

 

直葉「ん~?どしたのお兄ちゃん?」 

 

和人「身体の力抜けよ」 

 

直葉「え」 

 

和人は直葉に近寄り、少ししゃがんで、左手で直葉の膝に手を置き、右手で背中のほうを支えて、両手に一気に力を入れた。

 

和人「ちょいと失礼!」 

 

直葉「うわっ!?お、お兄ちゃん!?」 

 

翠「あらまぁ~」 

 

和人は何のためらいもなく直葉をお姫様抱っこした。 

 

もちろん直葉は慌てて抵抗する。 

 

直葉「ちょ!?何やってるのよ!?は、恥ずかしいから早く降ろしてよ!」 

 

それまでどこかボーっとしていた直葉もさすがに目を覚ましたようだ。 

 

和人「コラコラ、暴れたら危ないだろ。部屋まで連れてってやるから大人しくしてろ」

 

直葉「お、お母さん!」 

 

直葉は和人に何を言っても無駄だと判断し、即座に母親に訴えたのだがー。 

 

翠「へぇ、アンタ割と力あるのね」 

 

和人「なんだかんだで今でもジムに行ってるからな」 

 

翠「あ、なるほどね」 

 

無視された。

 

翠「じゃあ私が学校に連絡入れとくから、和人!直葉のことよろしくね」 

 

和人「了解」 

 

直葉「了解……じゃないわよもぅ」 

 

さすがに直葉も諦めたのか……それとも抵抗するのに疲れたのか大人しくしている。 

 

翠「あ、でも和人!学校遅刻は許すけど、欠席はするんじゃないよ?」 

 

和人「……へーい」

 

そして直葉は和人の手によって、部屋までお姫様抱っこで連れていかれた。 

 

それから少し経って、直葉は自室の布団に入り、おでこには熱さまシートが貼られている。 

 

和人「それじゃスグ…俺、そろそろ学校行くけど……何かあったらすぐにメールしろよ。」 

 

直葉「わかったって……もう、お兄ちゃん心配しすぎ」 

 

直葉はどこか呆れたように、しかしどこか嬉しそうな表情をしている。

 

和人「ポカリはここに置いてあるからな!」 

 

直葉「わかったわかった。ほら、早く行かないと1限間に合わないよ?」 

 

和人「……じゃ、いってくるな?ホントに1人で大丈夫か?」 

 

直葉「大丈夫大丈夫。それじゃいってらっしゃいお兄ちゃん」 

 

和人「…なるべく早く帰る。いってきます。」 

 

そう言って和人は直葉の部屋から出て行った。

 

直葉「はぁ………まったく……」 

 

部屋に1人になった直葉は呆れたように呟く。 

 

しかし、和人のこの心配性は若干鬱陶しかったが、それでも自分のために必死になってくれるのは、やっぱり嬉しかった。 

 

直葉「……ありがとね、お兄ちゃん」 

 

そして直葉はゆっくりと瞼を伏せて、眠りについた。

 

 

ーーで、現在。 

 

直葉「暇だ」 

 

直葉は暇を持て余していた。 

 

お昼過ぎぐらいに目を覚ましたのだが、まだ熱もあり、身体を動かす気にはなれず、ベッドで端末機をいじっていたのだが、それにも飽きてしまった。

 

直葉「はぁ……ALOにインしようかなぁ」 

 

直葉はアミュスフィアを手に持ったのだがー 

 

直葉「……お兄ちゃんにバレたら怒られるよね」 

 

ただでさえ和人の端末機にはユイというスーパーAIがいるのだ。 

 

もしインなんてしたらユイにバレて、和人に報告されるかもしれない。 

 

直葉「……寝るしかないかな」 

 

直葉は諦めて、もう一度眠りにつこうと思い、目を閉じた瞬間ー

 

ガラガラガラ 

 

という玄関の扉が開く音が聞こえた。 

 

直葉「え」 

 

お母さん? 

 

いや、でもお母さんは仕事だし、お兄ちゃんも学校のはず………ということはー 

 

直葉「泥棒!?」

 

ヤバイヤバイ!どうしよう…あたし今の状態じゃ泥棒に勝てないかも…どうすれば。 

 

直葉「あ」 

 

そう言えば和人が護身用に竹刀を部屋に置いていってくれたのだった。 

 

直葉「よし……部屋に入ってきた瞬間、思いっきりぶっ叩いてやる」 

 

タンタンタン 

 

と、泥棒(?)が階段を登って、こちらに近付いてくるのが足音でわかる。 

 

ゴクッと直葉は唾を呑み込んだ。

 

 

そしてー。 

 

ガチャ 

 

和人「スグー、大丈夫かー?」 

 

直葉「めぇぇぇぇぇえええんん!!」 

 

和人「ぬぅぁあああああああああ!?」 

 

泥棒(?)の叫び声が部屋に響き渡った。

 

 

しばらく経ちー。 

 

直葉「あ、あはは……ごめんねお兄ちゃん?」 

 

和人「まぁ間一髪で回避したから大丈夫だけど……だとしてもあれはないだろ」 

 

直葉「ははは……だよねぇ」 

 

和人「自分で撃退しようと考える前に、警察呼ぶとか、俺や母さんに連絡入れるとかが先だろ……まったく。あれが俺じゃなくて母さんだったら今頃病院送りだぞ」 

 

直葉「うぅ…ごめんなさい」 

 

いつからスグはこんな危険な思考になってしまったのだろう?……ま、それは恐らくVRMMOをやるようになってからだろうがー、と和人は直葉を説教しながら考えていた。

 

和人「…まぁいいか。それよりスグ、お昼ご飯はもう食べたか?」 

 

直葉「あ……ごめんなさい。食欲無くて……」 

 

和人「きっとそうだろうな、と思って食べやすいもの買ってきたぞ。」 

 

和人はビニール袋からゼリーやヨーグルトを出した。

 

直葉「あ、これならいけそう」 

 

和人「…なにも食わないよりはマシだと思って。代わりに夜はお粥にするからちゃんと食べろよ?」 

 

直葉「うん……あのさお兄ちゃん」 

 

和人「?どうした?」 

 

直葉は食べていたゼリーをいったん机に置いて話を続けた。 

 

直葉「学校はどうしたの?」 

 

和人「え?バックれた」 

 

シレッと言いやがった。

 

直葉「……お母さんに怒られるよ?」 

 

和人「母さんにダメって言われたのは欠席。早退がダメとは言われてない」 

 

直葉「……それ、揚げ足を取っただけでしょ」 

 

和人「いいんだ。揚げ足だろうが揚げ物だろうが事実は事実。」 

 

本当に呆れたものだと思う直葉だったが、でも、それでも本当の気持ちは隠せなかった。 

 

直葉「………お兄ちゃん、ありがとね」 

 

和人「……どーいたしまして」 

 

和人は気恥ずかしかったのだろうか、直葉の頭に手を置いて、少し乱暴に撫でた。

 

 

それから2人は少し談笑をし、直葉はまだ食べ切っていなかったゼリーと、ヨーグルトを食べた後、再びベッドで寝ていた。 

 

和人「そろそろ寝るか?」 

 

直葉「うん…なんだか眠くなってきちゃった」 

 

直葉は眠たそうに欠伸をしている。 

 

和人「それじゃ俺、自分の部屋いるからなんかあったら携帯で呼んでくれ」 

 

直葉「…………」

 

直葉は何やら黙り込んでいる。 

 

どうしたのだろうー? 

 

和人「スグ?」 

 

直葉「………て」 

 

和人「え?」 

 

直葉の声が小さすぎて上手く聞き取れない。 

 

ー少しの沈黙の後、直葉は恥ずかしいそうに、しかし、はっきりと言った。 

 

直葉「……一緒にいてほしい」

 

少し動揺したが、それでも和人は思考を切り替えて平静を保った。 

 

和人「いいのか?」 

 

直葉「…うん。あたしが眠るまででいいから……お願い」 

 

和人はこの時、2人がまだ小学生低学年だった時のことを思い出した。 

 

直葉は昔、風邪を引いてしまった時に凄く寂しがり屋になり、1人にするとよく泣き叫んでいた。 

 

もうあれから随分と経つが、やはり根っこの部分は変わってないのかもしれない。

 

そう思うと、今の直葉が幼い時の姿と重なって、なんだか可愛らしい。 

 

元々直葉は甘えん坊なほうで、よく俺に張り付いていたし、もしそれも変わってないのだとしたら……それなら今日ぐらいは直葉の我儘を聞いてやろうと和人は思った。 

 

和人「……了解したよ。じゃあもう少しそっちに詰めてくれ」

 

直葉「え?……一緒に寝るの?」 

 

直葉は何か意外そうな声で返してくる。 

 

和人「あれ?違ったか?」 

 

直葉「……え、いや、ううん!全然それでいい………てか……それがいぃ………」 

 

和人「…?」 

 

最後のほうは声が小さくて聞き取れなかったが、どうやら間違ってはいなかったみたいだ。

 

直葉「じゃあ……どうぞ」 

 

和人「お、おう」 

 

そう改められると照れ臭くなるのだが、まぁ可愛い妹のためならこれぐらい喜んで我慢しよう。 

 

直葉「お兄ちゃん……温かいね」 

 

和人「スグは熱いぐらいだよ……熱上がったんじゃないか?」 

 

和人は今朝のように直葉のおでこに手をやり、体温を測る。

 

和人「ちゃんと寝てないと治るもんも治らないぞ?」 

 

直葉「…それじゃあさ、あたしの風邪が治ったらどこかに連れてって。そしたら熱もすぐ下がると思うから」 

 

和人「どんな理屈だ……」 

 

若干呆れつつも、まぁ一応考えてはみる。

 

 

 

和人「そうだな……じゃあ近所のファミレスで宇治金時ラズベリークリームパフェを奢ってやる」 

 

直葉「ホント?」 

 

和人「スグがちゃんと風邪治したらな」 

 

直葉「わかった!約束だからね?」 

 

なんというか、現金な奴である。 

 

和人「はいはい……だから早く寝ろ」 

 

直葉「はーい……それじゃ、おやすみ」 

 

和人「おやすみ、スグ」 

 

和人は直葉の頬を人撫でし、そっと目を閉じた。 

 

 

直葉「………んん」 

 

直葉は静寂に包まれている部屋で一人起きた。 

 

隣に誰かがいる気配がする。 

 

和人「…………すぅ」 

 

どうやら和人もそのまま寝てしまったらしい。 

 

ふと、顔を傾けて時計を見るともう19時を回っている。 

 

少し寝すぎたかもしれない。

 

直葉「………んん」 

 

直葉は静寂に包まれている部屋で一人起きた。 

 

隣に誰かがいる気配がする。 

 

和人「…………すぅ」 

 

どうやら和人もそのまま寝てしまったらしい。 

 

ふと、顔を傾けて時計を見るともう19時を回っている。 

 

少し寝すぎたかもしれない。

 

直葉「………」 

 

起き上がろうと思ったのだが、せっかくなのでもう少し和人の温もりを堪能しようと思った。 

 

直葉「お兄ちゃん……今日はありがとね」 

 

今日は本当に嬉しかった。 

 

あたしのためにわざわざ学校を早退して帰ってきてくれて、我儘を聞いてくれた。 

 

お兄ちゃんといるとお腹のほうがポカポカして心地がいい。 

 

ー直葉はそのまま吸い寄せられたかのように、和人の唇に自分の唇をそっと重ねた。 

 

直葉「大好きだよ………お兄ちゃん」 

 

後日、すぐに体調を治した直葉だったが、代わりに和人が風邪を引き、宇治金時ラズベリークリームパフェは延期となってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

直葉「お兄ちゃんと“風邪”」

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