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雪乃「……ト、トリックオアトリート」八幡「………とりあえず上がるか?」【俺ガイルss/アニメss】

 

雪ノ下「……ト、トリックオアトリート」

 

八幡(今俺は信じられない光景を目の当たりにしている)

 

雪ノ下「………」

 

八幡(俺の自宅の玄関に雪ノ下が魔女の格好をしてこう言ったのだ)

 

八幡「トリックオア…トリート…」

 

八幡(………悪戯なんてもんじゃねえなこれは)

 

雪ノ下「………」

 

八幡「………とりあえず上がるか?」

 

雪ノ下「……あなたが棲みついている所に上がるのは心底不快だけれど…仕方ないわね…邪魔させてもらうわ」

 

八幡「俺は洞窟の奥のドラゴンか何かか…」

 

八幡(いや…俺は今まさにRPGのドラゴンと同じ気持ちを味わっているのかもしれん……変な格好した人間が自分の住処に突然現れて攻撃してくる…)

 

雪ノ下「………」

 

八幡(常時冷凍ビーム出せる魔女が来たら流石のドラゴンも逃げるのコマンドを選ぶだろうな、俺も選ぶわ)

 

八幡「で、一体何の御用でしょうか」

 

雪ノ下「もう用件は言ったはずなのだけれど、あなたの目はとっくに腐りきってると思ってはいたけれど、耳までなんて…」

 

八幡「いや分かってるけど……まさかそれ…仮装か?」

 

雪ノ下「……見ても分からないなんてあなたはこれが私の普段着とでもいうのかしら」

 

八幡「ああそうじゃないのか」

 

雪ノ下「………」ジッ…

 

八幡(ゆきのしたのれいとうびーむ!はちまんのきゅうしょにあたった!ぐたいてきにいうととらうまあたりに!)

 

八幡「……で、何でそんな格好するはめになったんだ」

 

雪ノ下「………由比ヶ浜さんと…その…」

 

八幡「由比ヶ浜と?」

 

雪ノ下「一緒に仮装大会をしていたのだけれど…その………何でもないわ」

 

八幡(一瞬氷タイプの雪ノ下の頬が赤くなったのは何だったんだろうか……ていうか呼べよ、いや俺も呼べよ!)

 

八幡「要するに、由比ヶ浜と二人でハロウィーンを楽しんでいたのだけれど」

 

八幡「優しい雪ノ下さんは俺のことを考えてわざわざその格好で呼びに来てくれたのか、ああ…なんて優しい」

 

雪ノ下「由比ヶ浜さんならたった今さっき別れたわ、今頃自分の家に着いている頃かしら」

 

八幡(あーなるほどーじゃあ俺への嫌味として魔女の格好をしてまで来てくれたのかー)

 

八幡「……自宅にいるはずなのにトラウマが掘り返される…学校にも家にも俺の安息の場は無いんじゃないだろうか」

 

雪ノ下「そもそもあなたみたいな協調性のない人間が過ごせる場があること自体に驚きを隠せないわね」

 

八幡「いや今隠してるじゃねえか、その真顔はなんだその真顔は」

 

雪ノ下「これでも必死に驚きを隠しているつもりなのよ……必死に…」

 

八幡「おいあからさまにかわいそうな目つきをするな、やめろ、やめてください女優雪ノ下さん」

 

八幡(……って何いつもと同じように会話してんだ…さっさと菓子でもやってお帰りになってもらうか)

 

八幡「それで魔女の雪ノ下さん、どのようなお菓子をご所望でしょうか?」

 

雪ノ下「………」

 

八幡「悪いがここにはニシンのパイは無いからな、まあ持って行くパーティー自体俺やお前は誘われないんだろうけどな」

 

雪ノ下「あら、私は由比ヶ浜さんに誘われたのだけれど……屍鬼ヶ谷君は誰かに誘われたのかしら?」

 

八幡「遠まわしにゾンビっぽいって言うな、つか、雪ノ下もああいうの読むんだな」

 

雪ノ下「ええ、原作小説を少しね」

 

八幡「漫画のほう読むとさしもの雪ノ下も…」

 

八幡(ゆきのしたのれいとうびーむ!はちまんのきゅうしょにあたった!ぐたいてきにいうとちゅうにのころのじょしのしせんにたえしのんだおもいであたりに!)

 

八幡「……じゃあこの中から好きなようにもらっていってくれ…雪ノ下」

 

八幡(せんべい、おかき、まんじゅう、栄養剤……小町が冷蔵庫に適当に入れてる奴持って来たけどこれで満足してもらうしかないなうん)

 

雪ノ下「………」

 

八幡「悪いがこれで勘弁してくれ、俺の家は雪ノ下さんちほど裕福じゃないんでな、エスカップが限界なんですわ」

 

雪ノ下「あら、崖を登っても誰も手を差し伸べてくれないような比企谷君の家にこんなものがあるなんて……すごく意外だわ」

 

八幡「そもそも俺は崖に登りさえしない人間なんでな、俺のような賢い人間はああいう脳筋と違ってしっかり道筋にそって進んでいくからな」

 

雪ノ下「そうね、比企谷君の場合は崖から突き落とされる側だものね、何度も何度も健気に突き落とされて…そのたびに登って…一人で…」

 

八幡「あの悲しくなるからやめてください」

 

雪ノ下「………」

 

八幡「それで、何持っていくか決まったか?」

 

雪ノ下「………別にいらないわ、それに比企谷君から物をもらうなんて危険きわまりない行動を起こす気なんてさらさらないわ」

 

八幡「おいじゃあ今日は何の日なんだ一体」

 

雪ノ下「………でもそうね…代わりにジジに…」

 

八幡「魔女の宅急便のネタはもう流れたっつーの……分かったよかまくら連れてくる」

 

雪ノ下「………」ポー…

 

八幡「ついでに言うが俺の家の猫は一切喋らないし器用に猫の人形の真似も出来ないからな」

 

雪ノ下「は?」ギロッ…

 

八幡(すいませんわたくしが悪かったので一言で心底ウザったいというのを上手に表現しないでください)

 

八幡「……俺はどうすればいいんだ?」

 

雪ノ下「………」ポー…

 

八幡(まあここに居ても俺の中の雪ノ下のキャラが崩壊するだけ…か)

 

雪ノ下「……キモヶ谷君、気持ちの悪いことを考えないで頂戴」

 

八幡「おい何故分かったお前はエスパーかていうかストレートに辛い名前の改変はいかんとてもいかんぞ」

 

雪ノ下「……冗談よ、とても気持ちの悪い顔をしていたから思わずね」

 

八幡「いやそれはそれでもう俺この表情一生使えねーじゃん…気をつけよ」

 

八幡「………じゃ好きなだけ楽しんでいてくれ」

 

雪ノ下「………」

 

自室

八幡「今日のようなイベントの日ほど休日で助かったことはなかったが…」

 

八幡「………」

 

雪ノ下『……ト、トリックオアトリート』

 

八幡「割りと悪くはないかもな……こういうイベントも」

 

八幡「………」

 

八幡「あやべこんな気持ち悪いこと考えてたら察しがいい雪ノ下にはバレるな…」

 

八幡「………」

 

八幡「そろそろもういいよな…」

 

八幡「おーいゆきのし…」

 

雪ノ下「にゃぁ~んにゃんっ」

 

八幡(……もう30分は経ってるはずなんだが全然飽きる気配がないな)

 

雪ノ下「にゃふふぅ~ふにゃにゃぁ~ん」

 

八幡(ああ…壊れていく…消えていく…俺の中の雪ノ下像が壊れていく…)

 

雪ノ下「……ねえジジ、あなたには分かるかしら」

 

八幡(いやだからかまくらだって、雪ノ下さんそんなにジブリ好きだったのか)

 

雪ノ下「こういうイベント事の時に気分が少し高揚してしまって失態を犯す人間の気持ちを」

 

八幡(……俺んちの猫に何喋ってるのこの人)

 

雪ノ下「……私はあなたと戯れるこの時間を終えたら…どうすればいいのかしら」

 

八幡(………あ、これが絶句っていうんだ…ていうかこの雪ノ下っぽい人誰だよ金持ちはこんなに似てる影武者を用意できるのかよ俺のも用意してくれよ)

 

雪ノ下「別にその…彼に悪戯をしたくて来たわけではないのよ…ただ由比ヶ浜さんとのパーティーで気分がいつにもまして昂ぶってしまって…」

 

八幡(由比ヶ浜、やっぱりお前はすげえよ、氷タイプのゆきのんがそろそろかえんほうしゃ覚えそうな勢いだぞ)

 

雪ノ下「それで彼に嫌味でこの格好を持って途中で着替えて来たのだけれど…」

 

八幡(あ、流石にその格好では来なかったのか……ってそこで考え直せよ雪ノ下)

 

雪ノ下「……彼のひきつった酷い顔を見て気づいてしまったわ…自分の失態に」

 

八幡(圧倒的に遅いよ……今日の雪ノ下さん一味も二味も違いすぎるよ……後飼い主の悪口言うのやめろグレるだろ)

 

雪ノ下「はぁ……こんなことをあなたに話すのも間違いね…ごめんなさい…でも…」

 

八幡(あ、かまくらの奴やっと俺のほうに気づきやがった……ってこれまさか…)

 

雪ノ下「あっ………」

 

八幡「……ははは…」

 

雪ノ下「………」

 

八幡「……トトロのDVDあるけど…見るか?」

 

雪ノ下「結構よ……帰るわ」

 

八幡「そ、そうか…いやあの雪ノ下俺にもあったから大丈夫だ…変なテンションで一人はりきって失敗したときなんてたくさん…」

 

八幡(自分で言ってて辛くなってきた…)

 

雪ノ下「……今日は…その…突然おしかけてごめんなさい、比企谷君」

 

八幡「…お、おう……なんつーか…」

 

八幡(考えろ比企谷八幡、覚醒雪ノ下に掛けれる言葉を!)

 

雪ノ下「………」

 

八幡「……キキのコスプレ…結構よかったぞ…うん」

 

八幡(はいトラウマ一件確定)

 

雪ノ下「……別に意識してそうしたわけではないのだけれど……そうね…お礼は言っておくわ」

 

八幡「そ、そうか…こちらこそ…」

 

八幡(か、覚醒雪ノ下……わからねえ…今俺はあの雪ノ下を前にしているのかさえさっぱりわからねえ…)

 

雪ノ下「……帰るわ」

 

八幡「あっ…ちょっ…」

 

八幡(このままの雰囲気じゃ明日以降の奉仕部が……た、助けてくれ小町ィイイイイイイイ!!!)

 

雪ノ下「………」ピタッ…

 

八幡「……ど、どうした雪ノ下」

 

雪ノ下「………ト、トリックオアトリート」

 

雪ノ下「既に…悪戯は完了しているわ……ふふふ…」

 

八幡「………」

 

雪ノ下「……それじゃあっ」バタンッ…

 

こうして、困惑だけが残ったハロウィンは終わりを告げた

 

と、思っていたが

 

小町「おにいちゃーん、かまくらの首に何かついてるんだけどー」

 

八幡「はあ?何ってなんだよ」

 

小町「それが分かれば小町も苦労しないってー、だけど何だか下手に触れなくて…」

 

八幡「んー…?何だコレ?小さい袋?」

 

八幡(なんでかまくらに…っ!)

 

雪ノ下『既に…悪戯は完了しているわ……ふふふ…』

 

八幡(まさか…)

 

 

後日

八幡「よっ、雪ノ下」

 

雪ノ下「………」ペラッ…

 

八幡「………」

 

雪ノ下「………」ペラ…

 

八幡「……雪ノ下のクッキーは奉仕部の初めての依頼以来だったな」

 

雪ノ下「………」ペラ…

 

八幡「相変わらず……うまかったぞ」

 

雪ノ下「………」

 

八幡「それだけだ、悪かったな」

 

雪ノ下「……あら、エアーヶ谷君いつの間に来ていたのかしら、その名のとおり気配さえ感じなかったわ」

 

八幡「流石にその名前の改変は無理があるんじゃないのか…」

 

雪ノ下「………」ペラ…

 

八幡「って無視かい……まあ…」

 

八幡(やっぱり俺の知ってる雪ノ下はこっちだな……うん)

 

由比ヶ浜「やっはろー!ってあー!ごめんヒッキー!昨日のヒッキーも誘うつもりだったんだけどね!」

 

八幡「もういいやめろ由比ヶ浜、そういうのが一番傷つくんだ、察してくれ」

 

由比ヶ浜「うぅ…でもゆきのんも昨日はヒッキーが来るって知ってたからたくさんお菓子作ってたのにもったいなかったなあ…」

 

八幡「……そうだったのか」

 

雪ノ下「何を勘違いしているのかしら、私は由比ヶ浜さんが食べられる分しか作った覚えがないのだけれど」

 

由比ヶ浜「ゆきのんひっどーっい!流石にほとんど食べたけどいつもはあんなに食べないしー!もう!ゆきのんのイジワル!」

 

八幡「………」

 

雪ノ下「………」

 

八幡「んじゃ由比ヶ浜、俺は本を読むから美味しいクッキーが作れるように練習でもしておけ」

 

由比ヶ浜「えっ…クッキーって…な、なんでクッキーなのヒッキー!まさか昨日ヒッキーゆきのんの家に…」

 

雪ノ下「………いたずら完了…ね」

 

 

 

 

元スレ

雪ノ下「……ト、トリックオアトリート」

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