アニメssリーディングパーク

おすすめSSを当ブログで再編集して読みやすく紹介! 引用・リンクフリーです

京介「そんなに顔を赤くしてんじゃねえよ!」黒猫「そういう先輩だって赤くなってるでしょう、いやらしい!」【俺妹ss/アニメss】

 

「おはよう先輩。遅いお目覚めね?」

 

「…………なんでおまえがここにいんの?」

 

夏休みも終盤にさしかかろうとしている頃。朝、俺が目を覚ますと何故か黒猫が俺の机に座っていた。

黒猫は、俺が桐乃から借りているピンクのノートパソコンを使ってなにやら作業をしていようだが何をしているのかはここからは見えない。

服装はいつものゴスロリではなく、夏コミの時に着ていた白のワンピース。

ワンピースの裾から除く白い足や二の腕が、朝日と相まってやたらと眩しい。

俺はその眩しさに目をしばたかせながら、

 

「なんでおまえがここにいんの?」

 

同じ質問を繰り返した。

黒猫は返事に戸惑っていたが、やがて何かを決心したような素振りを見せた。

……黒猫の顔が赤い。

 

「こ、ここ、恋人の部屋に上がりこむのに理由がいるの?」

 

瞬間的に頭に血がめぐり、あっという間に眠気が吹き飛んでしまう。

え!?ひょ、ひょっとして夜這い的な!?いや、今は朝だけども!?

 

「じょ、冗談だから本気にしないで。からかってみただけよ」

 

「冗談なら言い淀んだ上に顔を赤くしてんじゃねえよ!」

 

普段、黒猫の肌はとても白いもんだから少しでも赤くなればたちどころに分かる。

おまえ、さっきの台詞をいう前から既に赤くなってたぞ。

 

「そういう先輩だって赤くなってるでしょう、いやらしい!」

 

「誰のせいだ、誰の!?」

 

その後はお互いに押し黙り、なんとなく気まずい雰囲気が漂う。

……黒猫と最後にこんな空気になったのっていつだったかな。

ただ、今までの気まずい空気とはちょっと違っていて……

何て言うのかな、喧嘩した友人と仲直りする直前の……気恥ずかしさにも似た気まずさというか――

 

「…… あなたの妹に頼まれたのよ」

 

「え?」

 

この空気に耐えかねたのか、黒猫が先に口を開いた。

 

「『今度の日曜日、あたしは部活で一日いないし、お父さんもお母さんも朝から出掛けちゃうから、あの馬鹿兄貴のことよろしく』……ですって」

 

「あー、そういえば昨日みんな出掛けるって言ってたな」

 

それにしても桐乃は俺を子供かなんかだと思ってんの?俺一人でも留守番くらいできるわ!

 

「あと、こうも言っていたわね。『兄貴は異常な寂しがりだから、とりあえず誰か居てあげないとやばい』」

 

「誰が異常な寂しがりだよ!」

 

何がやばいんだ、何が。あれか?ウサギは寂しすぎると死ぬみたいな感じの意味か!?

 

……まぁ、理由はどうあれ桐乃が黒猫に頼みごととか珍しいな。

こいつらって、いつからそんなに仲良くなったんだろ。

 

「だからって朝から来る必要はなくね?今何時だと思ってんの?まだ11時すぎだよ?」

 

「もう十分昼と言っていいと思うわ」

 

「……その通りっすね」

 

くそっ、これも全てりんこりんが可愛すぎるのがいけないんだ。

不器用で自分の想いを素直に伝えられないとか――可愛すぎるじゃねえか。

 

そりゃ、22時から翌日の6時までかけて全ED見ちゃうってもんだよ。

初見でこそみやびちゃん一択だったが、今ではりんこりんも十分ありだ。

 

ひとしきり思い出しニヤニヤを楽しんだ後、黒猫の方を見てみると、いつのまにか椅子に座ったまま部屋の隅まで移動している。

ん?おまえ、何で俺から離れていってんの?そして、何でいつぞやのあやせみたいに片手で体を抱くようにして頬を染める?

 

「なぜかしら……今、貞操の危機を感じたわ。あなたの妹に百合もののエロゲを見せられた時以上に。私は今すぐこの場を離れるべきかしら」

 

はっはっは。俺みたいな紳士を前にして何をおっしゃるのやら。

 

「あなたの場合、紳士は紳士でも変態紳士よ。こんな時間まで寝ていた理由だって、どうせ深夜までエロゲでもしていたからでしょう?」

 

ぐ……事実だけに反論できない。

 

………… いや、待てよ?

 

「黒猫、逆に考えるんだ。深夜までエロゲをしていたからこそ貞操の危機はないと!何故なら俺は今、賢者タ――」

「私、先輩との付き合いを考えた方がいいのかしら」

 

「じょ、冗談だって!そんな本気にしないでくれ!」

 

や、やばい!このままでは黒猫の中での俺のイメージが変態紳士で上書きされてしまう!

 

な、何か他の話題を……、

 

「そ、そうだ!黒猫って俺が起きた時にはもう居たけどさ、実際には何時から居たんだ?」

 

「え…… あ……それは、その……」

 

俺の質問の内容が意外だったのか、黒猫はワンピースの端をきゅっと掴み、困ったように目を左右に泳がせている。

 

そして、やがて一瞬目をきつく閉じたかと思うとぷいっとそっぽを向き、こう答えた。

ここからじゃあよく見えなかったが、頬はまたほんのり赤みを帯びていたかも知れない。

 

「し……7時」

 

「やっぱり朝から居たんじゃねえか!」

 

「し、仕方ないのよ!あなたの妹に頼まれたのだから!」

 

「だからって7時はねえだろ!?上がる時、お袋とかに何も言われなかったの!?」

 

そこで黒猫は、「う……」と言葉に詰まった。

 

そりゃそうだろう。いくら桐乃の頼みとはいえ、思春期の女の子が朝から男の部屋に上がりこむなんて普通ありえん。

 

エロゲじゃないんだから。

 

「ふ……それとも何か?そんなに早く俺に会いたかったのか?」

 

「変な誤解をしないで頂戴。これは私が単に早く目覚めたからであって他意はないわ」

 

相変わらず素直じゃねえな。

 

「あと、あなたのお母さんには、私の顔を見るなり手を握って『京介をよろしく』と言われたわ」

 

…………お袋、ちょっとは疑問を抱こうぜ。

俺ってそんなに留守番できなさそうかな?

 

「…… とりあえず顔洗ってくるわ。それと――黒猫、飯は?」

 

「え?」

 

「朝飯。まだなら一緒に食うか?この時間だと朝昼兼用になっちまうけど」

 

「………… ええ、頂くわ」

 

ここへきてようやく微笑む黒猫。うむ、やはりこいつはもっと笑った方がいい。

 

…………いや、今日、ここまで笑ってなかったのは俺のせいなんだけどね。

 

 

「いただきます」

「いただきます。悪いな、簡単なもので」

 

今日の昼飯は、夏の風物詩そうめんだ。

特に具を追加したわけでもない、なんの変哲もない夏休みのお供。

添えた薬味といえば、しょうがと刻んだしその葉だけだしな。

 

「いえ、こういう素朴な方が落ち着くから」

 

「そうか?そりゃよかった」

 

昼食を食べ終え皿洗いをした後は、俺の部屋でくつろぐことになった。

俺は別にリビングでもよかったのだが、黒猫が俺の部屋がいいと言い出したからだ。

 

「俺の部屋、クーラーないぞ?」

 

「知ってるわ。私、クーラーは肌に合わないから。扇風機くらいはあるのでしょう?」

 

そう言えば麻奈実が、「クーラーがきいてると手足が冷たくなっちゃって大変なんだよ~」とか言ってたっけ?

 

こいつも冷え性なのかな。どうみても体温高そうには見えねえもんな。

 

俺の部屋に戻ると、俺はベッドでごろごろ、黒猫はノートパソコンで作業の続きを始めた。

 

「そう言えば黒猫って妹いるんだよな?今日はそいつの世話はよかったのか?」

 

この前もラジオ体操にも付き添ってるとかって言ってたし。

そのくらい小さい妹がいるなら、正直、俺なんかに構ってる場合じゃないと思うんだが。

 

「あなたは他人の家の妹でも心配になるの?……シスコンをこじらせるとこうなるのね」

「そういう意味じゃねえよ!」

 

「冗談よ。本気にしないで頂戴」

 

おまえの冗談はわかりにくいんだよ……。

 

「そんなに心配しなくても大丈夫よ。今日は両親とも休みだから」

 

そうなのか。そういうことなら、よかった。

 

それぞれに思い思いの作業をしつつのほほんと過ごし、そのまま1時間ほど時間が経った。

今の時刻は1時30分くらいか。

 

「………………」

 

いつのまにか黒猫の口数は少なくなり、先ほどからしきりに片手で目をこすっている。

 

「黒猫、おまえ眠いのか?」

 

「……少し。お腹いっぱいになったせいかしら」

 

それもあるだろうけど、早起きするからだ。7時に家に来たってことは少なくとも6時には起きてたろ。

いや、女の子は出掛ける準備に時間がかかるっていうし、下手したらもっと早くか?

妹のラジオ体操に付き合った後、普段なら二度寝でもするんだろうけど、俺ん家ではそうもいかなかっただろうしな。

 

「横になるか?俺のベッド使っていいから」

 

「…………うん、そうする」

 

眠気のせいか、口調が少し子供っぽい。

 

「あ…………」

 

「どうした?」

 

ベッドの手前まで来た黒猫の足が止まる。

 

「ワンピース……皺になっちゃう」

 

あぁ、そのワンピース、桐乃に見立ててもらった大事なやつだもんな。

 

「じゃあ俺の部屋着使えよ。着替えてる間は外に出とくから」

 

「いいの?」

 

「おう、ここに入ってるから好きに使ってくれ。ハンガーはここにあるから」

 

黒猫は無言で頷き、スルスルと服を脱ぎだす。

お、おい!俺がまだいるだろ!?いきなり脱ぎだすんじゃない!!

慌てて廊下に飛び出し、扉を閉める。

 

いくら眠いからって無頓着すぎるだろ。口調といい、ほとんど人格変わってんじゃねえか。

 

それにしても…………ちょっとおしいことしたかな?

 

それから5分ほどが経過したが、黒猫からはなんの合図もない。

 

「く、黒猫さーん?入りますよ?」

 

恐る恐る扉を開け、部屋の中を確認する。

例の白いワンピースはちゃんとハンガーに掛けられている。これなら皺にもならなくてすみそうだな。

 

で、肝心の黒猫はというと――ベッドの上で既に寝息をたてていた。胎児のように背中を丸めた格好で眠っている。

 

しかし、決して気持ちよさそうにという感じではなくて、窓から差し込む陽光がちょうど顔に当たっていて暑そうだ。

カーテンを閉め陽光を遮断してやると、黒猫の眉間に寄った皺が幾分かましになった。

 

扇風機をこちら側に引き寄せ、お腹を壊さないように黒猫の腹にタオルケットをかけてやり、ぽんぽんとお腹を軽く撫でる。

 

「……なんで俺はこんなに手慣れてるんだ?」

 

自分の予想外の手際の良さに驚きつつも、ベッドに腰掛け背中越しに黒猫の様子を見やる。

扇風機が功を奏したのか、眉間から皺は消え、すっかり気持ちよさそうに眠っている。

 

「目を覚ました時のために、お茶でも入れてきておいてやるか」

 

一階に降りるため俺が立ち上がろうとしたその時、不意に左手を掴まれた。

いかん、ひょっとして起こしちまったか?

振り返ると、黒猫は未だ定期的に寝息を立てていた。どうやら無意識に掴んだだけみたいだな。

それにしても……、

 

「サイズ……やっぱりあってねえな」

 

先ほどまでは意識的に注視しないようにしていたのだが、やっぱり俺の服だとサイズが合わないようで、

左の鎖骨から肩にかけてのラインが露わになってしまっている。

 

…… ゴクリ。

 

「……いかん、俺は何をしてるんだ」

 

ぶんぶんとかぶりを振って気を取り直す。このままじゃ間違いをおかさないとも限らない。

っていうか、こいつはなんでこんなに無防備なんだよ。

 

以前は俺のことを男として認識してないだけだと思ったんだが、こいつから告白してきた以上それはなくなったしなぁ。

 

「…………信用されてるってことなのか?」

 

それじゃあ、寝てる間に何かするわけにはいかないよな。こいつの信用を裏切るような真似はできないよ。

でも、手を握られてる以上ここから離れられねえし…………。

 

「仕方ねえ、俺も寝るか」

 

ばふっ、とベッドに頭を投げだし、そのまま目を閉じる。

昨日ほぼ徹夜したせいか、急激に睡魔に襲われた。

 

「……ふぁ…………おやすみ…………………」

 

――――――――――

 

「………… 何で私はベッドで寝ているのかしら?」

 

寝起きのせいで思うように開かない目をこすりながら辺りを見渡す。

何でワンピースではなく、ぶかぶかの男物の服を着ているの?何で先輩が私の隣で寝ているの?

 

そして、ベッドの脇に置かれたごみ箱の中に存在するティッシュの山は何?

 

「………………」

 

嫌な汗がふきだすのがわかる。暑さが原因ではない。

まさか……あのそうめんに?

 

「いえ、いくらなんでもそうめんに細工は不可能よ」

 

そもそも、この人はそんなことをする人ではないもの。

 

「…………大方、私が眠った後に着替えさせてくれただけよね。きっとそうだわ、そうに違いない。……おやすみなさい」

 

それもどうかと思うし、ティッシュの説明もつかないのだけれど……

私はとにかく現実から逃避するべく再び目を閉じ、

 

「…………落ち着く匂い……」

 

そして意識を手放した。

 

―――――――――――

 

バチンと頬に強い痛みを感じ、俺は目を覚ました。

 

「っだ!?」

 

最悪の目覚め。まるで桐乃の人生相談を初めて受けた時のようだ。

そして襲撃者の姿を確認し目を見開いた。

 

「お、おまえっ、なにしやがる!?」

 

襲撃者の正体は案の定桐乃だった。

考えてみれば、こいつ以外にビンタで俺を起こす奴なんていねえよな……。

 

「うっさい!あ、あんたこそなにしてんの!?このっ、変態!!」

 

「お、落ち着け!話が見えん!!」

 

問答無用とばかりに俺を殴りつけてくる桐乃。

何で自分の部屋で寝てただけで変態扱いされなきゃならんのだ!

 

俺は慌てて今の状況を確認する。

 

横には黒猫が寝てて、その黒猫は俺の寝間着に着替えてて……そしてごみ箱には、使用済みティッシュの山…………

 

 

「ち、違う!落ち着け!このティッシュはそういう意味じゃない!!」

 

それは、俺が昨日の夜中に賢者に転職する際にだな……

 

「あんたこの後に及んで言い訳する気!?」

 

 

俺達があまりに騒ぐもんだから黒猫も目を覚ます。

 

「あなた達うるさいわよ。おちおち寝てもいられないじゃない……」

 

「あ!やっと起きた!!あんたこそ何やってんの!!」

 

「何って……先輩と寝てただけよ?」

 

「この泥棒猫!!あたしが言った兄貴を頼むってそういう意味じゃないんですケド!?」

 

「おまえはどこの姑だ!?」

 

 

 

 

元スレ

黒猫「おはよう先輩。遅いお目覚めね?」

http://horahorazoon.blog134.fc2.com/blog-entry-866.html