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結衣「二人とも、そんなことでケンカしてたの?」雪乃&八幡「"そんなこと"?」【俺ガイルss/アニメss】

 

結衣「やっはろー☆」

 

雪乃「………………」ブスッ

 

八幡「………………」フンッ

 

結衣「ふ、二人ともどうしたの…?」

 

雪乃「由比ヶ浜さんこんにちは」ニコ

 

結衣「う、うん……」チラ

 

八幡「…………おう」

 

結衣「ひ、ヒッキーまで機嫌悪いし…」

 

雪乃「なんでもないの由比ヶ浜さん。ただ、ね……」チラ

 

八幡「あ?なんだよ。俺のせいにするつもりかよ」

 

雪乃「別にあなたのせいだとは言っていないでしょ。それとも何か心当たりがあるのかしら?」

 

結衣「ゆきのんもヒッキーも落ち着こうよ?ね?」アタフタ

 

雪乃「私は落ち着いているわ。ただどこかの誰かさんが…」

 

八幡「あ?お前そういうこと言っちゃうんだ?ふーん…」

 

雪乃「あら。どうかしたの、ヒキガエルくん」

 

八幡「ヒキガエルって誰だよ。お前両生類にしか友達いないのか

 

結衣「あわわ……」

 

雪乃「………………」

 

八幡「………………」

 

結衣「………………」

 

雪乃「………………」

 

八幡「………………」

 

結衣「………………」キリキリ

 

雪乃「………………」

 

八幡「………………」

 

結衣「……ふ、二人はなんでケンカしてるの?」

 

雪乃「由比ヶ浜さん」

 

結衣「はい!?」

 

雪乃「これはケンカではないわ」

 

結衣「そ、そうなの…?」

 

雪乃「えぇ、これは戦争よ」

 

結衣「もっと怖くなってるし!?」

 

雪乃「勝てば官軍、負ければ賊軍。世界は弱肉強食なのだから」

 

結衣「難しい話はわからないや…」

 

雪乃「由比ヶ浜さん、あなたも高校生なのだから少しは勉強したほうがいいわ。つまり…」

 

結衣「つまり…?」

 

雪乃「これから私がヒキガエル君を論破するということよ」

 

結衣「ロンパー?ごめんゆきのん。全然わからないや」

 

雪乃「もう結構よ由比ヶ浜さん…。簡単に言えば、私とヒキガエル君の話し合いを見ていて頂戴」

 

結衣「うんわかった!がんばって見てるね!それで何について話すの?」

 

雪乃「論題は"夏カレーにジャガイモを抜くか否か"よ」

 

結衣「………………え?」

 

雪乃「だから"夏カレーに……」

 

結衣「ちょーーーとっ!待ってゆきのん」

 

雪乃「なにかしら?」

 

結衣「そ、そんなことでケンカしてたの?」

 

雪乃「"そんなこと"?」

八幡「"そんなこと"?」

 

結衣「うわっ。なんかヒッキーまで反応してるし!」

 

八幡「そらそうだろ」

 

八幡「カレーは日本の国民食だぞ」

 

結衣「ヒッキーキモい!」

 

八幡「お前条件反射でキモいって言ってるだろ!」

 

結衣「ヒッキーマジでキモいから!」

 

八幡「好き!」

 

結衣「キモい!」

 

八幡「好き!」

 

結衣「キモい!」

 

八幡「キモい!」

 

雪乃「好き」

 

結衣「す…!?」

 

八幡「!?」

 

雪乃「もうコントはいいかしら?」

 

結衣「ゆ、ゆ、ゆきのん?」

 

雪乃「なにかしら?」ニコリ

 

結衣「な、なにか怒ってる…?」

 

雪乃「別に何も怒っていないわ。別に」

 

結衣「そ、そっか…」

 

雪乃「えぇ、全く怒っていないわ」

 

結衣「何で二回も言うのかな…?」

 

雪乃「………………」ニコリ

 

結衣「」ビクッ

 

雪乃「それでは戦争を始めましょうか」

 

八幡「お前の泣き顔が目に浮かぶな」

 

雪乃「あら?そういうセリフを"死亡フラグ"というのではなかったかしら」

 

八幡「せいぜい言ってろ。正義は俺なんだよ」

 

雪乃「そこまで言うのなら賭けをしましょう」

 

八幡「は?全然余裕だけど?なんなら俺の一生を賭けてもいいくらいだわ」

 

雪乃「そう。けれどそういう安請け合いというの…」

 

結衣「ストーーーーーーープっ!」

 

雪乃「なにかしら由比ヶ浜さん」

 

八幡「なんだよ由比ヶ浜

 

結衣「えっと……その……」

 

雪乃「何も考えていないのに話しかけたの。由比ヶ浜さん?」

 

八幡「おい、そんなにキツい言い方しなくてもいいだろうが」

 

雪乃「厳しいことは言っていないつもりなのだけれど」

 

八幡「言っていなくても言い方でキツく聞こえ…」

 

結衣「…………じゃ……」

 

雪乃「…………?」

 

八幡「じゃ……?」

 

結衣「……ジャッジ!」

 

雪乃「審判・判定の意味ね」

 

八幡「流石ユキペディア」

 

結衣「そ、そのくらいの英語あたしだってわかるし!」

 

雪乃「それでジャッジが何なのかしら?」

 

結衣「うん!ほらっ。勝負するのはいいけど、公平に審査する人が居ないとダメでしょ?だからあたしが審判するよ!」

 

雪乃「………………!」チラ

 

八幡「………………」フルフル

 

雪乃「………………」ジー

 

八幡「おい、由比ヶは…」

 

結衣「ダメ……?」ウルウル

 

雪乃「………………」ジー

 

八幡「あー由比ヶ浜?」

 

結衣「……なにヒッキー?」

 

八幡「ならこうしよう」

 

結衣「どうしよう?」

 

八幡「三人でカレーについて話し合うか」

 

結衣「え?あたしが!?それって大丈夫!?」

 

雪乃「……危機意識は持っているのよね。発想が残念なだけで」

 

結衣「あっゆきのんヒドい!…でもホントにあたしが入ってもいいの?」

 

八幡「まぁ、実際に作るわけでもないしな。それにこれを切っ掛けにカレーを覚えればいいだろ」

 

結衣「ヒッキーだいすきっ!」ガバッ

 

八幡「ゆ、由比ヶ浜!?」

 

雪乃「」ギリッ

 

結衣「あっ!ひ、ヒッキーの変態!ド変態!大変態!」サッ

 

八幡「自分から抱きついてきてその言い草かよ!」

 

結衣「ち、ちがうし!これはそういうんじゃないし!」

 

八幡「ど、どんなんだよ!知らねぇよ!」

 

結衣「ふんっ!ヒッキーなんて知らないし!」フンッ

 

八幡「あぁそうかよ!」フンッ

 

結衣「………………」チラッ

 

八幡「………………」チラッ

 

結衣「っ」サッ

 

八幡「っ」サッ

 

結衣「………………」ソワソワ

 

八幡「………………」ソワソワ

 

結衣「………………」チラッ

 

八幡「………………」チラッ

 

結衣「………………」ポッ

 

八幡「………………」ポリポリ

 

雪乃「」バン!

 

八幡「!?」

 

結衣「!?」

 

雪乃「~~~~っ!」

 

八幡(痛かったんだな)

 

結衣(痛かったんだね、ゆきのん)

 

雪乃「っ!」キッ

 

八幡「」サッ

 

結衣「」サッ

 

雪乃「………………」ウルウル

 

八幡(そんなに痛いなら叩かなければいいのに)

 

結衣(まだ痛いんだね、ゆきのん)

 

雪乃「………………」フーフー

 

八幡(どんだけ強く叩いたんだよ…)

 

結衣(涙目でふーふーするゆきのん、かわいっ)

 

雪乃「…さて。それでは"夏カレー"について話し合いましょうか」

 

八幡「もう右手は大丈夫なのか?」

 

雪乃「右手?なんのことかしら。それよりも話し合いをしましょう」

 

八幡(なかったことにしたな)

 

結衣(恥ずかしいんだね、ゆきのん)

 

八幡「話し合いつってもどうするんだ?」

 

雪乃「そうね…。始めは夏カレーにジャガイモは有りなのか、という議題だったのだけれど…」

 

結衣「けれど…?」

 

雪乃「由比ヶ浜さんにカレーを教えるという意味も込めて、お気に入りの夏カレーを紹介し合いましょう」

 

結衣「ゆきのんだいすきー!」ガバッ

 

雪乃「ゆ、由比ヶ浜さん…っ。急に抱き付かれると困るわ」

 

結衣「あはは。ゆきのんごめんねぇ」ギュ

 

雪乃「謝っているのにさらに抱きしめると言うのはいかがなものなのかしら…」

 

結衣「だってゆきのんの肌スベスベで、すっごくさわり心地いいんだもん!」

 

雪乃「そ、そういうことを口に出さないでもらえないかしら…?」

 

結衣「照れてるゆきのん、かわいすぎ!」ダキ

 

雪乃「やめなさ……んっ。…ほ、本当に怒るわよ、由比ヶ浜さん!」

 

結衣「ゆきのんが怒ったー」ニコニコ

 

八幡(何この放置プレイ。俺もう帰っていいんじゃないか?)

 

雪乃「そろそろ離れなさい由比ヶ浜さん」

 

結衣「はーい…」

 

八幡「なんだもう満足したのか?」

 

雪乃「べ、別に満足とかそういう話ではないでしょう」

 

結衣「うん!ゆきのん超スベスベで気持ちよかった!」

 

雪乃「だからそういうことは一々報告しなくていいと言っているでしょう」

 

結衣「だってホントだし!ねぇねぇゆきのん、今度一緒にスパ銭行こうよ」

 

雪乃「そうね…。機会があれば是非行きましょう」

 

八幡「おーい、際限ないから始めたいんだけど」

 

雪乃「あら。比企谷くんにしては随分まともな答えね」

 

八幡「おい、俺が普通のこと言って何が悪い」

 

雪乃「悪いとは言っていないわ。ただあなたがまともなことを言ったせいで混乱を招くということよ」

 

八幡「言い方が丁寧なだけで言ってる意味同じじゃねーかよ」

 

雪乃「きちんと日本語が理解できるようで安心したわ」ニコリ

 

八幡「だからお前はなんで俺に嫌味を言うときだけそんな笑顔なんだよ」

 

結衣(・ω・)。。。

 

八幡「ゆ、由比ヶ浜!?」

 

雪乃「由比ヶ浜さん!?」

 

結衣「ヒッキーとしゃべってるときのゆきのん楽しそうだよね(・ω・)」

 

雪乃「別に楽しいと思ったことなんて、ヒキガエル君と出会った頃から一度もないわね。それよりどうして楽しそうと言う結論に至ったのかしっかりとじっくりと聞いてみたい…」

 

結衣「ゆきのんの口数が多くなるときって照れ隠しとかだよね(・ω・)」

 

雪乃「」

 

八幡(気付いてなかったのかよ)

 

雪乃「違うのよ……別に照れ隠しとかそういうものではないのよ。えぇ、絶対に違うわ……」ブツブツ

 

 

閑話休題

 

雪乃「さて。そろそろ本題に入りましょうか」

 

八幡「なんだもうメンタル回復したのか?」

 

雪乃「なんのことかしら引きこもりくん?」

 

八幡「おい。人のことを社会不適合者扱いするなよ」

 

雪乃「あら?主夫になるなんて言っていたのは何処の誰かしら?」

 

八幡「主夫は家事をきっちりこなして、扶養家族に入ってるからいいんだ…」

 

結衣(・ω・)。。。

 

雪乃「ごめんなさい由比ヶ浜さん。お願いだから怒らないで頂戴」

 

八幡「俺らが悪かったからその顔やめてください」

 

結衣「でさー。どうやって発表するのゆきのん?」

 

雪乃「そうね。考える時間を少し作ってから、一人ずつ発表しましょう」

 

八幡「それならちょうどホワイトボードがあるぞ」

 

雪乃「どうしてあなたがそんなものを持っているのかしら?意思を疎通する友人なんていないでしょうに」

 

八幡「だからナチュラルにdisるのやめろよ。あとホワイトボードは平塚先生からの差し入れだそうだ」

 

結衣「そっかー。…あれ?なんでホワイトボード四枚もあるの?」

 

雪乃「由比ヶ浜さん。いくらなんでも無意識に平塚先生を除外するのはいかがなものかしら?」

 

八幡(天然ってこえー。…あと誰か早く貰ってあげてください。いやマジで)

 

 

~シンキングタイム~

 

雪乃「………………」サラサラ

 

八幡「………………」サラサラ

 

結衣「うーん…あれでもないしなぁ…」

 

雪乃「………………」チラ

 

八幡「………………」チラ

 

結衣「…あっ。コレ入れたらおいしいよねきっと!」カリカリ

 

雪乃「………………」ダラダラダラ

 

八幡「………………」ダラダラダラ

 

結衣「……よしっできた!あれ?二人ともやっぱり早いんだね」ニコニコ

 

雪乃「ゆ、由比ヶ浜さん。その…見直しはしなくても大丈夫かしら?」

 

結衣「見直しなんて大丈夫だよ。ゆきのんは心配性だなぁ…」

 

雪乃「(比企谷くん。大丈夫かしら彼女?)」

 

八幡「(いや正直自信ない。しかも笑顔って言うのがすげー怖い)」

 

雪乃「(やっぱり今からでも止めたほうが……?)」

 

八幡「(いいか雪ノ下逆に考えるんだ。これから起こりうる災害を先取りして実害がないうちに対処するんだ)}

 

雪乃「(あなたの口から前向きな言葉が聞けるなんて驚きだわ)」

 

八幡「(今はそういう茶化しをしている場合じゃないだろ。由比ヶ浜をどうするのかを考えろ)」

 

雪乃「(それもそうね。一時休戦と行きましょうか)」

 

八幡「由比ヶ浜も書き終わったみたいだしそろそろ始めるか。最初は雪ノ下からでいいか?」

 

雪乃「えぇそれで結構よ。せいぜい私のレシピを見て発狂しなさい」

 

八幡「発狂とかこえーよ。お前のカレーなんなの。スパイスにTウイルスでも混ぜたの?」

 

雪乃「あぁ、あなたを倒すなら銀製の弾丸か杭を打ち込まないといけないわね」

 

八幡「俺はバンパイアかよ」

 

雪乃「性質で言えばバンパイアよりもグールといったところかしら」

 

結衣「ゆ、ゆきのん!あたしそろそろゆきのんのカレー見たいな!」

 

雪乃「そうね。いつまでもボッチくんの相手をしていてはダメね。…これが私のオススメカレーよ」

 

 

Yukino's 夏カレー

 

名称:シーフードカレー

 

 

材料A:エビ・イカ・ホタテ・カキ

 

材料B:たまねぎ・にんじん

 

隠し味:あさり・しじみ

 

ポイント:Aはバターと白ワインでしっかりと風味付けて、隠し味として貝類でとった出汁で煮込む点。

 

一言:一番気を使うのはやはり魚介類の下拵えね。エビ・イカは下拵えした後に軽く塩揉みして臭みを取り除いているわ。もう一つは出汁かしら。しっかりと出汁を取って一度濾す点ね。貝特有の砂を取り除かないと不快な思いをしてしまうのよね。

それから出涸らしのあさり・しじみは捨てず、佃煮にするわ。

 

 

結衣「おぉ~。ゆきのんのカレーすっごくおいしそうだね!」

 

雪乃「ありがとう由比ヶ浜さん。そうね。手間はかかるけれど、魚介類ならではのおいしさを実感できるわ」

 

結衣「うーん…。難しいことはよくわからないけど、すっごく時間が掛かってるってコトはわかったよ!」

 

雪乃「由比ヶ浜さんの手に掛かるとどうしてこう単純化してしまうのかしら…?」

 

結衣「なんでだろうねー」

 

八幡「そりゃ由比ヶ浜の頭が単純だから、どんな話も本人に合わせて単純化するんだろ」

 

結衣「あ!ヒッキーヒドくない!?」

 

雪乃「なるほど…そう言われてみれば確かにそうね…」

 

結衣「ゆきのんも納得しないでよ!」

 

八幡「というか雪ノ下にしてはシンプルだな」

 

雪乃「えぇ。もう少し本格的なレシピもあったのだけれど。今回の趣旨はあくまでも由比ヶ浜さんが作れるレシピだから比較的簡単なものにしたわ」

 

八幡「なるほどな。けど今の由比ヶ浜の感想を聞く限り無駄になりそうだけど」

 

結衣「ヒッキーヒドい!」

 

雪乃「そうなのよね…。けれどこれ以上簡単なレシピもないし、どうすればいいのかしら」

 

結衣「ゆ、ゆきのんまで!」

 

八幡「だって…」

 

雪乃「…えぇ」

 

結衣「二人ともひどいよ!」

 

八幡「まぁ、今回を機に家でお手伝いとかしてみろよ」

 

雪乃「そうね。現状それが一番現実的ね」

 

結衣「お母さんのお手伝いかぁ。少しがんばってみよっかな」

 

八幡「結局普通のところに落ち着いたな」

 

雪乃「まぁそうなるでしょう」

 

八幡「結論は出たけどどうする…?」

 

雪乃「どうしましょうか…」

 

結衣「えーっ!せっかく書いたんだし最期までしようよ!」

 

八幡「なら俺のレシピはこれだな」

 

 

Hachiman's 夏カレー

 

名称:夏野菜カレー

 

 

材料A:牛肉・たまねぎ・にんじん

 

材料B:ジャガイモ・ナス・カボチャ・長いも

 

隠し味:赤唐辛子・黒胡椒・クローブ・カルダモン・はちみつ・ココア・ピーナッツバター

 

ポイント:市販カレー粉にスパイスを追加してガツンと来る辛さとはちみつ等で出した深みだな

 

一言:ジャガイモ・ナス・カボチャ・長いもは表面にオリーブオイルを薄く塗って、オーブントースターでローストするからカロリーは抑え目。ローストした野菜は煮込まず、カレーの上に乗せてルーをかけるから足が早くなることもない。食が不安定な夏こそしっかりがっつり食わないとな。小町に吹き出物が出来た日には監禁するね。

 

 

結衣「意外と本格的なカレーでビックリだし!あとヒッキーキモい!」

 

雪乃「確かに意外ではあるわね…。レシピもしっかりしているし流石主夫希望というだけはあるのかしら?あと気持ち悪いわね」

 

八幡「おい。カレーの評価を放って俺が気持ち悪いっておかしいだろ」

 

結衣「だっておいしそうとか思う前に小町ちゃんのこと思い過ぎてキモいよ!」

 

雪乃「えぇそうね。味はともかく小町さんへの愛情が燻ぶりすぎて気持ちが悪いわ」

 

八幡「別に小町への愛情とか燻ぶってねーよ。ただ彼氏が出来たらそいつの目にレーザーポインター当てるくらいだって」

 

結衣「ヒッキーすこぶるサイテーだ…」

 

雪乃「報復の仕方があなたらしすぎるわ…」

 

八幡「あーもう!俺に対する評価とかいいからカレーの感想言えよ!」

 

結衣「そうだなぁ…。カレーだけで考えれば普通においしそうだよね!野菜たくさん入ってるし!」

 

雪乃「そうね。確かにルーと一緒に煮込まなければそこそこ持ちそうね」

 

結衣「ていうかヒッキーのくせによくこんなこと考え付くよね…」

 

八幡「(おい雪ノ下。由比ヶ浜は大丈夫か…?)」

 

雪乃「ひゃぁっ!」ビクッ

 

結衣「…ゆきのん?」

 

雪乃「…な、なんでもないわ」

 

雪乃「(耳に息をかけないでくれないかしら。不愉快よ)」

 

八幡「(それでどうする?)」

 

雪乃「(やはり危険な芽は早いうちに摘んでおきましょう)」

 

八幡「(やっぱりそうなるか)」

 

雪乃「(ええ。私も覚悟を決めたのだからあなたも腹をくくりなさい)」

 

八幡「(七面倒くせぇ…)}

 

雪乃「ゆ、由比ヶ浜っさん!そろそろあなたのれ、レシピを見せてもらっていいかしら?」

 

結衣「うん!…す、すこしだけ恥ずかしいな…はいっ」

 

 

Yuidevil's 夏カレー

 

名称:きら☆きら夏カレー

 

 

材料A:牛肉・にんじん・じゃがいも・たまねぎ

 

材料B:マンゴー・ドラゴンフルーツ・パッションフルーツマンゴスチン・ココナツ

 

隠し味:スターフルーツドドリア・パパイア・ランブータンタマリンド

 

ポイント:フルーツたくさんで絶対おいしいよね!

 

一言:昨日ちょうどテレビ番組でフルーツ特集してたんだよね!おいしそうなフルーツがたくさんあったからとりあえず入れてみた!今度お父さんに作ってあげようかな…?

 

 

結衣「ど、どうか…な?」テレッ

 

八幡「」

 

雪乃「」

 

結衣「ふ、二人とも…?」オドオド

 

八幡「」

 

雪乃「」

 

結衣「ゆ、ゆきのん…?」

 

八幡「」

 

雪乃「」

 

結衣「ヒッキー…?」ウルウル

 

八幡「あー…」

 

雪乃「………………」

 

結衣「………………」

 

八幡「今日はいい天気ですね。あなたはどうですか?」

 

雪乃「そうですね。私はとても元気です」

 

結衣「なんか英会話みたいになってる!?」

 

八幡「………………」チラ

 

雪乃「………………」フルフル

 

八幡「一応聞いておきたいんだけど、このレシピは本気なのか…?」

 

結衣「えっと……うん……?」

 

雪乃「………………」フラッ

 

結衣「ゆきのん!?」ダキッ

 

八幡「あまりの出来事に脳内処理できなくなったんだな」

 

結衣「冷静に言ってないで助けてよ!?」

 

八幡「おーい、雪ノ下。生きてるか…?」

 

雪乃「こんにちは比企谷くん。さて今日の奉仕部活動は中止します」

 

八幡「現実逃避したい気持ちはわかるがしっかりしろ雪ノ下」

 

雪乃「だって…」チラ

 

結衣「ゆきのん大丈夫…?」

 

雪乃「えぇ…少し目眩と頭痛と立ち眩みが起きただけだから大丈夫よ」

 

結衣「それ全然大丈夫じゃないよね!?」

 

八幡「おい。雪ノ下は現実逃避してもいいけど、由比ヶ浜はちょっとツラ貸せよ」

 

結衣「ひ、ヒッキーがこわい……」

 

八幡「でさ、いろいろ聞きたいんだけどさ。まずこの山盛りのフルーツってどうするつもりなんだよ」

 

結衣「い、入れたらおいしいかなぁ~って」

 

八幡「スターフルーツはどうするつもりだったんだ…?」

 

結衣「ほら、星型でかわいいからにんじんのみたいに切っていれようかなって!」

 

八幡「…ランブータンは?」

 

結衣「あれ、白くてらっきょみたいだからカレーに添えようかなって!」

 

八幡「……タマリンドは?」

 

結衣「あぁ、あれはさやえんどうみたいだから一緒にコトコト煮込もうかなって!」

 

八幡「…………ドラゴンフルーツは?」

 

結衣「皮を剥いてたまねぎの代わりに炒めようかなって!」

 

八幡「………………ココナッツは?」

 

結衣「実を刻んでジュースと一緒にご飯と炊き上げたらおいしいんじゃないかなって!」

 

八幡「」

 

雪乃「」

 

八幡「…………無理だ」

 

結衣「え!?」

 

八幡「手は尽くしましたが残念ながら…」

 

結衣「お医者さんみたいに言わないでよ!全然尽くしてないじゃん!」

 

八幡「いや末期だろ」

 

結衣「末期じゃないし!」

 

八幡「いや継ぎ接ぎだらけの無免許医でも無理だから。そのライバルの手を借りることになるから」

 

結衣「ヒッキーが何言ってるかわかんないし!」

 

八幡「分かりやすく言うとだな。無理だ。人生諦めが肝心だってことだ」

 

結衣「諦めたら試合終了って言うじゃん!」

 

八幡「とりあえず安西先生に謝ろうか?」

 

結衣「え、えっと……あんざい先生ごめん…なさい?」

 

八幡「あんざいって……」

 

結衣「あぁおいしいよねー。そう言えばぜんざいとおしるこって何が違うんだろうねー」

 

八幡「それは善哉だろうが。てかやめろバカ。ただでさえ壊滅的なセンスなのに無駄に知識を広げようとすんな」

 

結衣「ヒドいよ!「人間は考える箸だから仕方ないじゃんっ」

 

八幡「酷いのはお前の頭だ。それととりあえずブレーズ・パスカルに誤ろうか?」

 

結衣「ごめんなさ……ってぶれ…?パスカルって誰!?」

 

雪乃「ブレーズ・パスカルは十七世紀フランスの哲学数学者・近代物理学の先駆者ね」

 

雪乃「あなたが言った…正しくは"人間は考える葦である"は、一六六九年に書かれた"パンセ"の一節よ。ちなみにパンセは彼の死後に出版されたものね」

 

結衣「へー。ゆきのん賢いね!」

 

八幡「なんだ。ユキペディアさんはもう復活したのか」

 

雪乃「えぇ。もう少し現実逃避していたかったのだけれど、衝撃的な言葉が聞こえてきて叩き起こされた気分よ」

 

八幡「お前も災難だったな。ところでお前ってパンセ読んだの?」

 

雪乃「読んだわ。仏語辞典を片手にだったから、きちんと仏語を学んで読み直すつもりよ」

 

結衣「へー」

 

雪乃「由比ヶ浜さん、わからないならそれでいいわ」

 

結衣「ゆきのんごめんねー?」

 

雪乃「それは大丈夫だから由比ヶ浜さんの頭について考えましょう」

 

結衣「ゆきのん言葉がいつもよりきついよ!?」

 

八幡「それじゃあ話進める…」

 

雪乃「比企谷くんは黙っていて頂戴」

 

結衣「ヒッキーうるさい超キモい!」

 

八幡「お前らなんでこんなときだけ仲良いんだよ」

 

雪乃「人と人とを団結させるには共通の敵を見つけるのが一番と言うことね」

 

結衣「まぁ冗談は置いておいてさ!これからどうするの?」

 

雪乃「冗談……?」

 

八幡「おい、そこに疑問を抱くなよ」

 

雪乃「そうね。今回は由比ヶ浜さんの顔に免じて見逃してあげましょう」

 

結衣「あ、あたしの顔って……あたしゆきのんみたいにかわいくないよ!?」テレ

 

八幡「由比ヶ浜……」

 

雪乃「由比ヶ浜さん……」

 

結衣「ふ、二人ともそんな可哀相なものを見る目で見ないでよ!」

 

雪乃「なんて不憫なのかしら…」

 

結衣「く、口にも出さないでよゆきのん!」

 

八幡「おい。そろそろ下校時刻だから準備しとけよ」

 

雪乃「何を言っているのかしら。まだやらなければいけないことが残っているでしょう」

 

結衣「すべきことって?」

 

八幡「何か依頼ってあったか?」

 

雪乃「何を寝ぼけているのかしら、この男は?どちらの…今は一応誰のカレーを食べるのか、ということで話し合っていたでしょうに」

 

八幡「あー、そう言えばそんなことも言っていたな。由比ヶ浜がとんでもないことしたせいですっかり忘れてたわ」

 

結衣「ヒッキーひどくない!?いくらなんでも言いすぎでしょ!」

 

雪乃「確かに忘れてしまうのも致し方ないわね」

 

結衣「ゆきのんも認めないでよ!?」

 

八幡「……というわけで勝負はなしに……」

 

雪乃「なるわけがないでしょう。全力で叩きのめしてあげるから覚悟なさい」ニコリ

 

八幡「ですよねー」

 

結衣「笑顔なのにゆきのんが怖い…」

 

八幡「ならルールはA.一人一票、B.自分への投票は禁止、C.最多数の勝ち・同数無効でいいか?」

 

雪乃「……そうね。比企谷くんの思惑に乗るのは最悪なのだけれど、それが妥当でしょうね。本当に残念だわ」

 

八幡「繰り返して残念って言うなよ。どんだけ残念なんだよ」

 

雪乃「話してもいいのだけれど、そろそろ時間がないから止めておきましょう」

 

八幡「じゃあさっさと終わらせるか。さっきのホワイトボードに誰のカレーを指示するか書くか」

 

結衣「うーん……やっぱり………」サラサラ

 

雪乃「………………」サラサラ

 

八幡「………………」サラサラ

 

八幡「よし、書けたみたいだし見せ合うか」

 

 

結衣『ゆきのんのカレーおいしそうだよね!ヒッキーのは辛そうなんだよね…』

 

雪乃『比企谷くんのカレーね。他に選択肢がないのだから仕方ないでしょう』

 

八幡『由比ヶ浜のカレー』

 

結衣「一対一対一かぁ…ってあたしも一票入ってる!?」

 

雪乃「自分で考えておいて驚くというのは如何なものかしら…。結局こうなってしまったわね」チラ

 

八幡「なんのことかな。俺はただネタ的にフルーツカレーもありかな、と思っただけだ。他意はないぞ」

 

雪乃「あなたのリスクリターンの計算力を侮っていたということなのかしら…」

 

八幡「失礼な。第一お前は勝ちを求めすぎなんだよ」

 

雪乃「勝ちを求めるのは当然のことでしょう」

 

八幡「違うな、間違っているぞ。肉食動物は狩りに勝てなければ死ぬ」

 

八幡「だが草食動物は逃げ切れば再び安住の地を踏むことが出来る」

 

八幡「つまりだ!肉食動物においての引き分けと草食動物においての引き分けでは、現実問題として草食動物の勝ちになるということだ!」

 

八幡「すなわち雪ノ下雪乃、お前は俺に負けたということだな!」ビシッ

 

雪乃「…ま、待ちなさい比企谷くん…」

 

八幡「笑止!勝てば官軍、負ければ賊軍!つまり敗者の言など聞く耳持たぬわ!」

 

結衣「…………ヒッキーがあのヒトに似てきた気がする」

 

????「その勝負ちょっと待った!」

 

八幡「誰だ!?」

 

平塚「世界に悪の栄えた試しは無いのだ!それをわたしが証明してやろう!」シャキーン

 

八幡「平塚先生なにやってんすか…?」

 

平塚「きゅ、急に真顔になるな比企谷!」オドオド

 

八幡「部外者は立ち入り禁止なんすけど?」

 

平塚「わたしは奉仕部の顧問だ!恩師になんて言い草だ」

 

八幡「はいはい。それで恩師で某変身ヒーローの平塚先生がなんの用ですか?」

 

平塚「おぉ!比企谷はこのネタを知ってるか!よかったよかった!」

 

 

八幡「いや知りませんけど?ただ父親が話していたのを思い出しただけです」

 

平塚 (´;ω;`)ブワッ

 

八幡「いや、ジェネレーションギャップ感じたくらいで泣かないでくださいよ」

 

平塚「べ、別に泣いてなんかないし!これは心の汗だし!」ゴシゴシ

 

雪乃「話が進まないから比企谷くんは黙っていてもらえるかしら?それで平塚先生なんの御用でしょうか」

 

平塚「きょ、今日はノックのことはい…言わないの、か?」ウルウル

 

雪乃「…はぁ、いつもノックをしてくださいとお願いしていますよね、平塚先生」

 

平塚「ははは!細かいことを気にするな雪ノ下!」

 

雪乃「」

 

 

八幡(お前の今の心境は痛いほど分かるぞ、雪ノ下…)

 

八幡「…それで何の御用ですか平塚先生」

 

平塚「そうだった…。なに、施錠しようと思えば何やら面白い話が聞こえてくるじゃないか」

 

雪乃「聞き耳を立てていたんですね…」

 

平塚「まぁそう怒るな雪ノ下。これはむしろお前に有利な話なんだから」

 

八幡「」ソー

 

平塚「そう急いで帰ることもないだろう比企谷」ガシッ

 

八幡「いやぁ家でお腹を空かせた小町が兄の帰りを待ってるんで…」

 

 

 

結衣「小町ちゃんが『あたしは家でご飯食べてるので、兄は好きに使ってください』だってさ」ポチポチ

 

八幡「おまっアホの子なんだから大人しくしてろよ!」

 

結衣「アホの子って言うなし!そんなこと言うヒッキーなんて知らないし!」

 

八幡「あ、ちょ!」

 

雪乃「今の状況で由比ヶ浜さんを敵に回すというのは、流石としか言えないわね」

 

平塚「さて。異論も無いようだし…」

 

八幡「意義あり!民主主義なんておかしい!俺は今こそ共産主義が正しいと思う!」

 

平塚「最大多数の最大幸福だ、比企谷というわけで」

 

 

平塚『雪ノ下。何の勝負かはわからんが、雪ノ下に入れておけば間違いはないだろう』

 

 

比企谷:一票   雪ノ下:二票   由比ヶ浜:一票

 

 

雪乃「さて、比企谷くん。何か言うことはあるかしら?」ニコリ

 

八幡「は、敗者の弁を聞いてこそ人の上に…」

 

雪乃「何か言うことはあるかしら?」

 

八幡「な、ないです…」

 

雪乃「結構よ。…平塚先生ありがとうございました。おかげでこの男の毒手をへし折ることが出来ました」

 

平塚「そうか、それは素晴らしいことだな。それで何を言い争っていたんだ?」

 

雪乃「えぇ。夏カレーにジャガイモを入れるのか、入れないのかという……」

 

平塚「カレーにジャガイモは必須だろ?」

 

 

八幡「」

 

雪乃「」

 

結衣「」

 

平塚「……あ、あれ?わたし、おかしなことを言ったか?」

 

八幡「さて、帰るか」

 

雪乃「えぇ、そうね」

 

結衣「帰ろっか……」

 

平塚「え?……え?…………え?」

 

 

八幡「そう言えば賭けはどうするんだ?」

 

雪乃「そうね…今日の買い物の荷物持ち、というのはどうかしら?」

 

八幡「まぁ妥当だな……牛肉は…」

 

雪乃「買わないわ。今日の夕食はシーフードカレーなのだから当然でしょう」

 

八幡「ちぇっ……」

 

雪乃「安心しなさい。あなたには牛肉の代わりに山盛りのフルーツを買ってあげるわ」

 

八幡「え…?」

 

雪乃「あなたは私のカレーよりも由比ヶ浜さんのカレーがお好みなのでしょう?」ニコリ

 

 

八幡「いや…ちょっ……ちがっ……」

 

雪乃「何を言っているのか皆目見当も付かないわね」

 

八幡「さ、さすがにあれだけ珍しいフルーツはなかなかないだろ…?」

 

雪乃「確かにその点は心配ね…。ならば今日はいつものスーパーではなく、実家がよくお願いしている外商の方にお願いしましょうか」ニコリ

 

八幡「」

 

雪乃「何を固まっているのかしら。今夜は(食べ終わるまで)帰さないから覚悟することね」

 

八幡「」

 

雪乃「ほら、由比ヶ浜さんも早く支度をしなさい。夕飯が遅くなるわよ」

 

結衣「え!?あたしも行っていいの!?」

 

雪乃「当然でしょう。今日の趣旨はあくまでも由比ヶ浜さんに料理を教えるということなのだから」

 

雪乃「というわけで平塚先生、施錠はしっかりとお願いします。ほら、二人とも行くわよ」

 

結衣「センセーばいばいっ!」

 

八幡「」ズルズルズル

 

 

平塚「………………え?」

 

 

-千葉県内スーパー-

 

 

結衣「ねぇねぇゆきのん!お菓子買おうよ!」テテテッ

 

雪乃「由比ヶ浜さん。私たちはカレーの材料を買いに来たのであってお貸しを買いに来たわけでは……」

 

結衣「あっ。ゆきのん!これ新作ゴーヤプリンだって!買ってみようよ!」

 

雪乃「由比ヶ浜さん……」フゥ

 

八幡「諦めろ、雪ノ下。どうせああなった由比ヶ浜を止められるやつはいない」

 

雪乃「馬鹿なことを言わないでくれるかしら、アマ谷くん。今回の目的はあくまでカレー作りであってお茶ではないの」

 

八幡「別に菓子くらいいいだろ。そんな馬鹿みたいに買うわけでもあるまいし」

 

雪乃「今回は由比ヶ浜さんに覚えてもらうために自宅に招くのよ。そのあたりのことは理解しているのかしら」

 

八幡「別に俺は荷物持ちに来ただけだから、カレーさえ食えればどうでもいいんだが……」

 

雪乃「手伝え、とは言っていないでしょう。ただ由比ヶ浜さんを甘やかさないで、と言っているの」

 

八幡「はいはい。おーい、由比ヶ浜。怖い教育ママが怒りそうだから菓子は今度にしとけ」

 

結衣「ぇー」

 

雪乃「由比ヶ浜さん?」ニコリ

 

結衣「はーい……」ショボーン

 

八幡「……怖ぇよ、あと怖い」

 

雪乃「……比企谷君?」ニコリ

 

八幡「」ビクッ

 

雪乃「では最初にあさりとしじみの選び方ね」

 

結衣「あさりかぁ……。食べてるとたまにジャリってするからあんまり好きじゃないんだよね」

 

八幡「ハズレ引くといやだな。まぁ小町が食べなくて済むから俺はいいけど」

 

雪乃「生き物だからある程度砂が残ってしまうのは仕方ないわ。ただ下拵えをすれば幾分かマシにになるものよ」

 

結衣「へーそうなんだー。あとヒッキーキモい」

 

雪乃「えぇ。ただ今由比ヶ浜さんに言っても忘れてしまうでしょうから家に帰ってから教えましょう」

 

結衣「うん!がんばる!」

 

雪乃「と言うわけでまずあさりの選び方なのだけれど、大きさは時期によるから選ぶなら貝の模様がはっきりして横幅があるものがいいわ」

 

結衣「へー」

 

雪乃「他には水槽にあるなら水をよく噴き出すもの。

 

生きていて触ることができるのなら殻を堅く閉じているものがいいわね。誰かさんみたいに」チラッ

 

八幡「……ほっとけ」フンッ

 

結衣「とりあえず元気なのを選べばいいんだねっ!」

 

雪乃「……そうね」

 

雪乃「次にしじみの選び方は基本的にはあさりと同じなのだけれど、加えるなら茶色いものは選ばないことかしら」

 

結衣「へーなんで?」

 

雪乃「簡単に言うと鮮度が落ちているからね」

 

結衣「なるほどなるほど……」

 

雪乃「今の話を聞いてあさりとしじみを選んでくれるかしら、由比ヶ浜さん」

 

結衣「はーいっ。……えーと、これが黒くて……縞々がきれいなあさりを……」

 

八幡「」キョロキョロ

 

雪乃「何を探しているのかしら、比企谷君?」ジー

 

八幡「な、なんでもねぇよ……」

 

雪乃「そう……」ジー

 

結衣「……ゆきのん!選んだよ!」

 

雪乃「……えぇ。言われたとおりに選んでいるわね。はい」スッ

 

八幡「はいはい」ヒョイ

 

雪乃「何を探しているのかしら、比企谷君?」ジー

 

八幡「な、なんでもねぇよ……」

 

雪乃「そう……」ジー

 

結衣「……ゆきのん!選んだよ!」

 

雪乃「……えぇ。言われたとおりに選んでいるわね。はい」スッ

 

八幡「はいはい」ヒョイ

 

雪乃「次はエビを選びましょう」

 

結衣「エビフライおいしいよね!」

 

雪乃「由比ヶ浜さん?」

 

結衣「ご、ごめんなさい」

 

雪乃「わかってくれればいいの。この時期だとバナメイエビかしら」

 

結衣「ばななえび……?」

 

八幡「………………偽装」ボソッ

 

結衣「ゆきのん、やさしい!」

 

雪乃「べ、別に由比ヶ浜さんに特別優しいというわけではなく、あくまで由比ヶ浜さんでも選びやすい……」

 

八幡「はいはいわかったから選び方を教えてやれよ」

 

雪乃「……全く。と言っても冷凍が主流のバナメイエビで選び方もないのよね……。

 

強いて言うならまとめ売りか否か、というくらいかしら」

 

八幡「なんでだ?」

 

結衣「なんかヒッキーが食いついてるし!?」

 

八幡「いや、ほら……小町に旨いもん食わせてやりたいだろ」

 

結衣「キモッ!小町ちゃんへの愛が重すぎてキモいよ、ヒッキー!」

 

雪乃「児童相談所の番号は何番だったかしら?」

 

八幡「おい、やめろバカ。最近千葉県の某兄妹のせいで千葉県が近親相姦推奨都市みたいな扱いになってるんだから」

 

雪乃「まさかそれを狙って千葉県に移住を……?」

 

結衣「うわぁ……」

 

八幡「ちげーよ。第一生まれも育ちも生粋の千葉っ子だから!」

 

雪乃「比企谷君をいつ通報するか、というのは今度にしてどうしてまとめ売りがよくないかね」

 

八幡「通報するの確定かよ……」

 

 

雪乃「まとめ売りだと塊になっていて適量を解凍する、という点で不便になってしまうの」

 

結衣「へー」

 

雪乃「由比ヶ浜さんのように滅多に料理する機会がないならいいのだけれど、毎日料理するとなると意外と煩わしくなるの」

 

結衣「ゆきのん一人暮らしだもんねー」

 

雪乃「というわけで次に行きましょう」スッ

 

八幡「」ヒョイ

 

結衣「はーい」

 

結衣「はーい」

 

雪乃「貝柱を選ぶときは身が大きくてふっくらと張りのあるものを選びましょう」

 

結衣「大きいほうがいいの?」

 

雪乃「私は小さいものが好きなのだけれど、刺身にするなら大きいほうが食べ応えがあるでしょう」

 

結衣「へー。ゆきのんはさしみ派なんだねー」

 

雪乃「いいえ。私は醤油焼き派よ」

 

結衣「あれ?」

 

雪乃「えっとその……」

 

八幡「……由比ヶ浜、さっさと選べよ」

 

結衣「……うん?うん。じゃあこれかなー。大きいし」

 

八幡「よし、次行くぞ」スタタ

 

結衣「あ、待ってよヒッキー!」

 

雪乃「次は牡蠣ね」

 

結衣「うん!……あれ?カキって冬が旬じゃないの?カキ鍋とかあるし」

 

雪乃「驚いたわ、由比ヶ浜さん。カレーに桃を入れようとした人とは思えないわね」

 

結衣「えへへ、ゆきのんに誉められた……。あれ?」

 

雪乃「由比ヶ浜さんでも気がついたように牡蠣には旬が二つあって、一つは11-3月が旬の真牡蠣と6-7月が旬の岩牡蠣があるの」

 

結衣「あれ?今あたしバカにされた!?」

 

雪乃「牡蠣にはノロウイルスのように食中毒になりやすい食材で、生食できる牡蠣は洗浄や放射能によって滅菌処理が施されているわ」

 

結衣「ゆきのん!?今あたしのことバカにしたよね!?」

 

雪乃「牡蠣鍋や焼き牡蠣にする場合は特に気にする必要はないのだけれど、生食する場合は必ず生食用と表示された牡蠣を選ぶこと」

 

結衣「ゆきのん……」

 

雪乃「選び方は殻付きなら口が閉じていて殻に厚みがあり、重いものを選ぶといいわ」ナデナデ

 

結衣「ゆきのん……」ニコニコ

 

雪乃「というわけで牡蠣は私が選ぶわ」

 

結衣「うん!……あれ?」

 

雪乃「剥き身の牡蠣を選ぶ場合は光沢があって乳白色のものを選ぶことね」

 

八幡「~~~~」ゴニョゴニョ

 

結衣「……え?……あぁ、なるほど!けどなんでヒッキーがゆきのんの好きなもの知ってるの?」

 

八幡「さて、次はたまねぎとにんじんだな」

 

結衣「ヒッキー!?ねぇヒッキー!?」

 

雪乃「次は玉ねぎね」

 

結衣「あたし知ってるよ!新玉ねぎだよね!」

 

雪乃「えぇそうね。ただ正確に言うなら新玉ねぎは2-4月で今並べられているのは北海道産の新玉ねぎではないわ」

 

結衣「そっかぁ……」

 

雪乃「ただ今が季節外れかと言えばそんなこともなくて、九州…特に佐賀県の玉ねぎがおいしいの」

 

結衣「へー」

 

八幡「」ソー タタタッ

 

雪乃「他にも淡路島・湘南・愛知・静岡なども玉ねぎが特産品だから季節にあった玉ねぎを選ぶといいわ」

 

結衣「いろんなところで作ってるんだねー」

 

雪乃「さて玉ねぎの選び方なのだけれど、

 

球体に近い・外皮に傷が少ない・芽や根が出ていない・重みがある・芽の付け根を押しても凹まない

 

この五つを覚えておけばいいわ」

 

結衣「なるほど」フムフム

 

八幡「」シレッ

 

雪乃「というわけで……」

 

結衣「ゆきのん、ゆきのん!これなんかいい感じ!」サッ

 

雪乃「……え、えぇ。きちんと言われたことを実践しているわね」スッ

 

八幡「」ヒョイ

 

結衣「次はにんじんかな?」

 

雪乃「そうね。次はにんじんを選びましょう」

 

雪乃「というわけでにんじんの選び方なのだけれど、色が鮮やかで根がなくて艶のあるものを選びましょう」

 

結衣「根?」

 

雪乃「にんじんは根野菜で根の生えているものは収穫の時期を逃してしまったというサインよ」

 

結衣「へー。じゃあこれかな」

 

雪乃「これでいいわ。必要なものは全部選べたわね。お店に入る前より選び方は上達したわね、由比ヶ浜さん」

 

結衣「バカに……されてない!?」

 

雪乃「私は正しいことをすれば馬鹿にしないし、誉めもするわ。その言い方は心外ね」ムッ

 

結衣「そ、そうだよね!ゆきのんはいつでも正しいもんね!」アワワ

 

雪乃「別に怒ってはいないわ」

 

結衣「ごめんね、ゆきのん……」

 

雪乃「と言うわけでこれからレジに並ぶわけなのだけれど、比企谷君?」ニコリ

 

八幡「」ビクッ

 

雪乃「さっき目を盗んでかごの奥に隠したMAXコーヒーとプリンを戻してくれるかしら?」ニコリ

 

八幡「はい……」ショボ-ン

 

 

料理編

 

雪乃「いいでしょう。ならば料理を始めましょう」

 

結衣「がんばるっ!」

 

雪乃「と言うわけで最初は魚介類の下拵えからしましょうか」

 

結衣「はーい」

 

雪乃「まずはあさりとしじみの砂抜きね」

 

結衣「うん……」

 

雪乃「しっかりと下拵えすれば平気よ、由比ヶ浜さん」

 

結衣「うん!」

 

雪乃「まず500ccの水と5グラムの塩を用意して、溶けるまで混ぜて薄めの塩水を作ってくれるかしら」

 

結衣「はーい。まぜまぜ……できた!」

 

雪乃「次にバットにしじみを丁寧に寝かせて、しじみが少し隠れるくらい塩水を流しましょう」

 

結衣「作った塩水全部いれないの?」

 

雪乃「すべて入れてしまうとしじみが窒息して、砂抜きができなってしまうから浸るくらいで大丈夫よ」

 

結衣「海にいるのに塩水に窒息するって変だねー」

 

雪乃「しじみは内湾にいるから別におかしくはないのだけれど、説明をすると生物の授業になってしまうからやめておきましょう」

 

結衣「勉強……そうだね!今は料理しないとね!」

 

雪乃「由比ヶ浜さん……」

 

結衣「え、えへへ……?」テヘッ

 

雪乃「しじみを入れたバットの上に新聞紙かふわりと軽くラップを乗せて冷蔵庫に入れて1-3時間放置ね」

 

結衣「なんで新聞紙を乗せるの?」

 

八幡「」つ新聞紙

 

雪乃「塩水に浸けて砂を抜くのだけれど、新聞紙を乗せないとしじみが水を噴いて冷蔵庫が汚れるからよ」

 

結衣「へー。あと冷蔵庫に入れるのは?」

 

雪乃「室温が高いとしじみが痛んでしまう可能性があるからね。ならば冬は出したままでいいのかと言えばそんなことはないわ」

 

結衣「寒いのに冷蔵庫に入れるの?」

 

雪乃「誤解されがちなのだけれど、寒いのは気温であって冬でも暖房具を使っていることが多いから意外と室温は高いの」

 

結衣「なるほどー」

 

雪乃「次はあさりの砂抜きね」

 

結衣「しじみと同じじゃないの?」

 

雪乃「簡単に言うと方法は同じなのだけれど、塩水の濃度が違うわ」

 

結衣「へー?」

 

雪乃「しじみが1%の濃度に対してあさりは3%強といったところね」

 

結衣「一緒じゃダメなの?」

 

雪乃「ええ。食材には適切な下拵えがあって、適当な下拵えをすることでおいしくなるの」

 

結衣「へー」

 

雪乃「というわけでまず水500cc塩15グラムの塩水を作ってくれるかしら?」

 

結衣「はーい……できた!」

 

雪乃「できた塩水に塩を二抓み入れてあさりをバットに並べて、さっきと同じように浸るくらいに注いで……」

 

結衣「あれ?なんで塩をふたつまみ入れたの?」

 

雪乃「さっきは濃度は3%と言ったけれど、正確には3.5%くらいが適切だからよ」

 

結衣「へー」

 

雪乃「バットに新聞紙を被せて冷蔵庫で3時間寝かせましょう」

 

結衣「はーい」

 

雪乃「これであさりとしじみの下拵えは終わりね。次はエビの下拵えをしましょう」

 

結衣「エビフライ!」

 

雪乃「生と冷凍では下拵えの手順も違うのだけれど、今回は冷凍のエビの下拵えの方法ね」

 

結衣「ゆきのん……」

 

雪乃「まず最初に凍ったエビを流水にさらしましょう」

 

結衣「流水にさらす……?」

 

雪乃「ボウルにエビを入れて水を満たして、蛇口を締め切らずに少し流すようにすることよ」

 

結衣「へー」

 

雪乃「というわけでここに解凍したエビがあるから次の下拵えをしましょう」

 

八幡「」つエビ

 

結衣「なんかお料理番組みたい」

 

雪乃「次は牡蠣の下拵えね」

 

結衣「はーい」

 

雪乃「最初は剥き身の牡蠣をバットに入れて塩を振って揉みましょう」

 

結衣「もみもみ……」

 

雪乃「身が痛まないように優しくよ」

 

結衣「やさやさ……」

 

雪乃「一度水で塩を洗い流して水気を切りましょう」

 

結衣「はーい」

 

雪乃「次は大根おろしを混ぜて同じように牡蠣を揉むのよ」

 

結衣「はーい」

 

八幡「」つ大根おろし

 

結衣「……できた!」

 

雪乃「終わったら15分程度寝かせましょう」

 

結衣「はーい」

 

雪乃「というわけで寝かせておいた牡蠣・エビ・イカ・ホタテの下拵えをするわ」

 

結衣「けっこう大変なんだね……」

 

雪乃「最初は誰でもそんなものよ。作りなれてきたら自然とできるものよ」

 

結衣「ゆきのん大人っぽい……」

 

雪乃「……さ、さぁ次は魚介類の下拵えだったわね」

 

結衣「あ、照れた!」

 

雪乃「さっき下拵えしておいた魚介類をボウルに並べましょう」

 

結衣「はーい」

 

雪乃「次にレモン汁・塩・白ワイン・ローリエを合わせて混ぜましょう」

 

八幡「……ロリエたん」ボソッ

 

雪乃「比企谷君……?」ニコリ

 

八幡「」ビクッ

 

雪乃「あら?ローリエはどこにあったかしら……」

 

八幡「」つローリエ

 

雪乃「どうも。ローリエを混ぜたこの液をボウルに注いでさっきと同じように混ぜてくれるかしら」

 

結衣「まぜまぜ……」

 

雪乃「混ぜ終わったらキッチンペーパーで包んで魚介類の下拵えは終わりね」

 

結衣「はーい」

 

雪乃「次は出汁を取りましょうか」

 

結衣「だし?」

 

雪乃「冷蔵庫で寝かしていたあさりとしじみを煮出すのよ」

 

結衣「あーなるほどー」

 

雪乃「水1リットルに対してあさり・しじみをそれぞれ300グラム、昆布5グラム、白ワイン100cc、ローリエを鍋に入れて弱火にかける」

 

結衣「はーい」

 

雪乃「水が大きな気泡を作り始めたら昆布を取り出して、さらに煮出していきましょう」

 

結衣「こんぶだけ仲間外れなの?」

 

雪乃「えぇ。昆布で出汁を取る場合は沸騰したら取り出すというのが基本よ」

 

結衣「へー」

 

雪乃「沸騰したらタイマーを10分にセットして、その間に次の下拵えに移りましょう」

 

結衣「はーい」

 

雪乃「玉ねぎを二玉切っていくわ」

 

結衣「玉ねぎって切ってると涙出てくるんだよね……」

 

雪乃「それは玉ねぎに含まれる『硫化アリル』という催涙成分が出るせいね」

 

結衣「へー」

 

雪乃「これからみじん切りにしていくのだけれど、涙を流さなくて済む方法を教えるわね」

 

結衣「そんなのあるんだー」

 

雪乃「……というわけで比企谷君、キッチンから出て行ってもらえるかしら?」ニコリ

 

八幡「へいへい」トボトボ

 

結衣「あれ?なんでヒッキーはあっちにいくの?」

 

雪乃「……あまりいい格好ではないからよ」

 

結衣「へー」

 

雪乃「さっき言ったように硫化アリルという成分が涙を流す原因になるわけなので、この成分は鼻から作用するわ」

 

結衣「あぁなるほ……あぁ!そっか!」

 

雪乃「というわけでこれをつけてくれるかしら」

 

結衣「……はーい」

 

雪乃「玉ねぎは1つはみじん切り、半分は串切りにしていきましょう」

 

結衣「なんで切り方を変えるの?」

 

雪乃「みじん切りはコクを出すために使って、串切りは食感を残すためよ」

 

結衣「へー」

 

雪乃「まず芽と根を切ってから皮を剥いて半分に切りましょう」

 

結衣「はーい」

 

雪乃「みじん切りはまず付け根を残すように縦に刃を入れて繊維に添って切り込みを入れましょう」

 

結衣「へー?」

 

雪乃「次に横に刃を入れて同じように付け根を残すように切る」

 

結衣「ふむふむ」

 

雪乃「最後に付け根を押さえて反対側から切っていけば簡単にみじん切りができるわ」

 

結衣「ほんとだ!ゆきのんスゴい!」

 

雪乃「べ、別に私がこの方法を思いついたわけではないのだけれど……」

 

結衣「みじん切りできたよ!」

 

雪乃「もう一玉も半分にきって端から8等分を意識するように串切りにしていきましょう」

 

結衣「はーい」

 

雪乃「切れたらフライパンにバターを一欠けら入れて溶けたら炒めていきましょう」

 

結衣「ふむふむ」

 

雪乃「最初は強火で炒めて火が通ったら弱火で20分程度飴色になるまで根気よく炒めるの」

 

結衣「へー」

 

雪乃「焦がさないようにかき混ぜながら炒めるのよ」

 

結衣「結構大変なんだね……」

 

雪乃「と言うわけで比企谷君後はおねがい」つお玉

 

八幡「はいはい」

 

雪乃「次はにんじんね」

 

結衣「はーい」

 

雪乃「にんじんは皮を剥いてから半月切りにしましょう」

 

結衣「テレビでにんじんの皮には栄養がたくさんって言ってたけど、ゆきのんは捨てるの?」

 

雪乃「確かに皮に栄養が豊富なのだけれど、食感と言う点から言えばカレーには使わないわ」

 

結衣「へー」

 

雪乃「ただ皮もきんぴらごぼうにするつもりよ」

 

結衣「へー。なんかゆきのんおばあちゃんみたい」

 

雪乃「お、おば……そこは料理上手と言ってもらえないかしら?」

 

結衣「あ、そっか……ゆきのんはお料理上手だもんね!」

 

雪乃「切ったにんじんはボウルに入れておいて次に移りましょう」

 

結衣「はーい」

 

雪乃「ちょうどタイマーが鳴ったから次は出汁の下拵えね」

 

結衣「さっき煮込んだのに下拵えするの?」

 

雪乃「えぇ。むしろ次が大切よ」

 

結衣「へー」

 

雪乃「まずローリエしじみ・あさりを取り出しましょう」

 

結衣「はーい」

 

雪乃「取り除いた出汁を目の細かいざるに通しましょうか」

 

結衣「へー?」

 

雪乃「ざるに通すことで由比ヶ浜さんが苦手と言った砂を取り除くことができるの」

 

雪乃「ざるに通すことで由比ヶ浜さんが苦手と言った砂を取り除くことができるの」

 

結衣「へー!」

 

雪乃「濾した出汁を鍋に戻して粗熱を取りましょう」

 

結衣「はーい」

 

雪乃「次はバットに寝かしている魚介類ね」

 

結衣「はーい!」

 

雪乃「魚介類をキッチンタオルに包んで水気を切りましょう」

 

八幡「」つキッチンタオル

 

結衣「ふきふきー」

 

雪乃「水気を切った魚介類にレモン汁・塩・コショウを振って軽く揉んでくれるかしら」

 

結衣「はーい」

 

雪乃「フライパンにバターを一欠けら溶かして下味をつけた魚介類を炒めましょう」

 

結衣「まぜまぜー」

 

雪乃「火が通ったら白ワインを一振りして終わりね」

 

結衣「……あれ?お酒を入れたのにボー!ってならないね」

 

雪乃「フランベのことね。フランベはアルコール度数の高いウイスキーのような蒸留酒でないと火は立たないわ」

 

結衣「へー。あれってかっこいいけど意味あるの?」

 

雪乃「あるわ。あれはアルコールを飛ばして風味をつけるものであって、きちんとした調理方法よ」

 

結衣「へー」

 

八幡「」つウイスキー

 

雪乃「比企谷君?」

 

八幡「へいへい……」ショボーン

 

結衣「ヒッキーしたかったんだね、フランベ」

 

雪乃「そして最後に仕上げ……」グゥ

 

結衣「」

 

八幡「」

 

雪乃「」

 

八幡「……あー腹減ったなー。腹が減りすぎて腹が鳴いてるわー」

 

結衣「……あ、あはは。ヒッキーお腹すきすぎてお腹なっちゃったねー」

 

雪乃「……///」キッ

 

八幡「……ほら、仕上げだろ。さっさと作って食おうぜ」

 

雪乃「………………」ウルウル

 

結衣「あ、あたしもお腹すいたー」

 

雪乃「……最後の仕上げね。粗熱を取った出汁を火にかけて、飴色になった玉ねぎを入れましょう」

 

結衣「あ、ゆきのん元気になった!」

 

八幡「おい、バカ、やめろ」

 

雪乃「……煮立ったらにんじんを入れて、さっき炒めた魚介類から出た出汁とカレールーを入れて煮込んでいきましょう」

 

結衣「あれ?さっき炒めたのは入れないの?」

 

雪乃「イカやエビは火を通しすぎると固くなるから、煮込まずにカレーに乗せたほうが味を楽しめるのよ」

 

結衣「へー」

 

雪乃「と言うわけであと少し煮込むから二人はリビングで待っていてもらえるかしら」

 

結衣「はーい」

 

八幡「先に皿出しとくわ。あそこの棚だとお前取れないだろ」つ皿

 

雪乃「あら。比企谷君にしては気がつくのね。お願いするわ」

 

結衣「………………」

 

八幡「ほら行くぞ、由比ヶ浜

 

結衣「あ、待ってよ!」

 

雪乃「さて、私もあと三皿ほど作らないと」テキパキ

 

 

-リビング-

 

八幡「腹減ったな」

 

結衣「……うん。そうだねー」ウーン

 

八幡「どうかしたか、アホの子」

 

結衣「あ、アホの子って言うなし!……うーん」

 

八幡「でどうした?お前には難しすぎたか?」

 

結衣「そうじゃなくて、さっきヒッキーお皿取ったでしょ」

 

八幡「あ、あぁ……」ダラダラ

 

結衣「あそこってヒッキーなら届くけどゆきのんじゃ届かないっぽいでしょ」

 

八幡「……かもな」

 

結衣「あのゆきのんが取りにくい場所にお皿を置いておくのかなーって」

 

八幡「………………」

 

結衣「うーん……」

 

八幡「………………あれだろ」

 

結衣「?」

 

八幡「一人暮らしだとカレーって量があるからあまり作らないんだろ。で棚の奥底で眠ってたんだろ」

 

結衣「へー?」

 

八幡「まぁ料理したことないお前はわからないかもしれないがな」

 

結衣「あ、あたしだって作ったことあるし!……今日とか千葉村とか」

 

八幡「カレーに桃を入れようとしてたあの頃よりかは半歩くらい進歩したんじゃねーの」

 

結衣「あ、ヒッキーヒドい!あたしだってレベルアップしてるもん!」

 

八幡「今進歩したんだろ。部室でダークマター作ろうとしてたくせに」

 

結衣「あ、あれは……!」

 

雪乃「バカなこと言ってないで食べる用意をしてくれないかしら?」つカレー

 

八幡「おう。思ったより遅かったな」ヒョイ

 

結衣「あ、ゆきのんごめんね」ヒョイ

 

雪乃「大丈夫よ、由比ヶ浜さん。あなたも労いの言葉を1つくらいかけたらどうなのかしら」

 

八幡「へーへーお疲れさん」

 

雪乃「結構よ。あなたの労いなんてほしくもないわ」

 

八幡「お前ってやつは……」

 

結衣「あ、あはは……食べよっか!」

 

雪乃「そうね。いつまでもこの男に無駄な時間を費やしたくはないもの」

 

八幡「へーへー」

 

雪乃「それじゃあいただきましょうか」

 

結衣「いただきまーす」

雪乃「いただきます」

八幡「いただきます」

 

-メニュー-

・シーフードカレー

・サラダ

しじみとあさりの佃煮

きんぴらごぼう

 

 

結衣「」モグモグ

 

雪乃「」チラッ

 

八幡「」モグモグ

 

結衣「……く」

 

雪乃「?」

 

八幡「」チラッ

 

結衣「くさくない!」キラキラ

 

雪乃「ご飯を食べて第一声が『臭くない』ってどういうことかしら……?」ゴゴゴゴ

 

結衣「あ、ち、違うのゆきのん!なんか食べたことのあるシーフードカレーってなんかくさくって好きじゃなかったっていうか……」

 

八幡「」モグモグ

 

雪乃「あぁ、そういう意味ね。まぁ下拵えを疎かにしたり、下拵えをしても鮮度が悪ければ臭みが出てしまうのは致し方のないことね」

 

結衣「けどこのカレーはおいしくてびっくりしたっていうか……」

 

八幡「」モグモグ

 

雪乃「口に合って何よりね」モグモグ

 

結衣「あたしでもおいしいカレー作れるってことにびっくりしたっていうか……」

 

八幡「」モグモグ

 

雪乃「料理はレシピ通りに作れば失敗なんてそうそうないわ」

 

結衣「へー」

 

八幡「」モグモグ

 

雪乃「料理がおいしくできない人というのは大半がレシピ通り作らず、変なアレンジをしてしまうことが原因ね」

 

結衣「そっか」

 

八幡「」モグモグ

 

雪乃「人の好みは千差万別なのだからアレンジするな、とは言わないわ。ただアレンジと言うのはきちんとしたレシピを作れる人がするものよ」

 

結衣「ふーん」

 

八幡「」つ皿

 

雪乃「はいはい」スッ

 

結衣「あれ?ヒッキーおかわり?」

 

八幡「おう」

 

雪乃「どうぞ」つ皿

 

八幡「おう」モグモグ

 

結衣「」モグモグ

 

雪乃「」モグモグ

 

八幡「」モグモグ

 

結衣「」モグモグ

 

雪乃「」モグモグ

 

八幡「」モグモグ

 

結衣「ごちそう様でしたー」

 

八幡「ごっそさん」

 

雪乃「お粗末さまでした」

 

結衣「はーお腹いっぱい。もう食べられないかも」

 

雪乃「それは残念ね。せっかくプリンを作ったのだけれど、由比ヶ浜さんはいらないわね」

 

結衣「プリン!?食べる食べる!」

 

八幡「……太るぞ」ボソッ

 

結衣「ヒッキーヒドい!嫌い!あとキモい!」

 

雪乃「比企谷君……?」

 

八幡「」ビクッ

 

雪乃「はぁ……。気を取り直して食べましょうか」

 

結衣「ゆきのん大好き!」

 

雪乃「はいはい。あなたが好きなのは私ではなくてプリンでしょう」

 

結衣「そんなことないよ!ゆきのんもプリンと同じくらい好き!」

 

八幡「……やっぱうめぇ」モグモグ

 

雪乃「……ふふ」

 

結衣「……ゆきのん?」

 

雪乃「なんでもないわ。さて私たちも食べましょうか」

 

結衣「うん!」

 

結衣「」モグモグ

 

雪乃「」モグモグ

 

八幡「」モグモグ

 

結衣「」モグモグ

 

雪乃「」モグモグ

 

八幡「」ジー

 

雪乃「全部食べたのだからおとなしくしていなさい」

 

八幡「わかってるよ」

 

結衣「そう言えばヒッキーって思ったより食べるよね」

 

八幡「そうか?」ズズズ

 

雪乃「全くよね。作る人間の身にもなってほしいものね」

 

結衣「ゆきのん、ヒッキーにご飯作ってるの?」キョトン

 

雪乃「わ、私が比企谷君のご飯を作ると言う意味ではなくて、彼の料理を普段から作っている小町さんのことを思っていったのであって、決して私が彼のご飯を作っていると言うわけでは……」

 

結衣「そっかー。そうだよねー」

 

雪乃「え、えぇ」

 

八幡「」ズズズ

 

結衣「そう言えば話は変わるけどヒッキーの使ってるマグカップかわいいよね。魚のイラストで」

 

雪乃「そ、そうかしら?たまたまマグカップが足りなくてなんとなく買ったのであって他意は別にないのだけれど……」

 

八幡「」ズズズ

 

結衣「けどこの魚どこかで見たことあるような気がするんだよねー。んー特にこの腐った魚みたいな目が……」

 

雪乃「ゆ、由比ヶ浜さんプリンがまだ残っているのだけれど、よかったら食べてくれないかしら?」

 

結衣「え?いいの!?食べるたべるー」モグモグ

 

 

雪乃「」フゥ

八幡「」フゥ

 

 

やはり俺の青春ラブコメは間違っている。

 

 

おまけ

 

Prrr

 

雪乃「はい」

 

結衣『あ、ゆきのん今大丈夫かな?』

 

雪乃「えぇ今ちょうどお風呂を出たところよ」

 

結衣『そっかー。なんかね、うちのお父さんがゆきのんにお礼を言いたいらしくって代わってほしいんだってー』

 

雪乃「別にお礼を言われるようなことは何もしてないのだけれど」

 

結衣『だからお父さんに代わるねー』

 

雪乃「そんな急に……はじめまして、いえ料理を教えただけですから」

 

雪乃「え?由比ヶ浜さんが作ったカレーを食べてもお腹を壊さなかった……?」

 

雪乃「いえですから、本当に基本的なことを教えただけなのでお礼を言われるようなことは何も……」

 

雪乃「正露丸を手放せた……?お、おめでとうございます……?」

 

雪乃「できればお菓子作りも教えてほしい?……いえ、お菓子作りは少し……由比ヶ浜さんはもう少し練習したほうがいいと思うのですが……」

 

雪乃「試作品を食べていたら身が持たない……?教えるのが無理なら作らないように言ってもらえないか……?」

 

雪乃「それはご家庭のほうで……無理?……わかりました、言って聞くかはわかりませんがそのように由比ヶ浜さんに言っておきます」

 

雪乃「いえ、そのくらいなら……。もしかして泣いてます?これでトイレの神様にならなくて済む?……はぁ?」

 

雪乃「お礼がしたい……?いえ、ですからあくまで友人として教えただけであってお礼をされるようなことでは……」

 

雪乃「今度由比ヶ浜さんにお礼を持たせる?あの、本当に結構ですから……あ、電話が切れてしまったようね」

 

雪乃「………………」

 

雪乃「由比ヶ浜さん……」

 

 

おまけ2

 

平塚「わ、わたしが何をしたっていうんだよ……真面目に教師をしてるじゃないか……」

 

平塚「ただでさえ教師っていうのは出会いが少ないっていうのに、教え子はわたしの目の前でイチャイチャと乳繰り合いやがって……」

 

平塚「わ、わりゃしはなぁ……あいちゅりゃを乳繰り合わしぇるために奉仕部を作ったんららいんだよ……」

 

平塚「わりゃしは出会いもにゃいっていうにょに、友人らちはりょんりょん結婚していっちぇだなぁ」

 

平塚「なにが『静も早く結婚しなよ、はいこれブーケ』だりょ!こちとりゃなぁ!おまえりゃからもらっりゃブーケでいっぱいなんだよぉ!

 

平塚「ブーケをどうしたりゃいいのかわかりゃなくてぜんぶ防腐処理してかじゃってあるんだよぉ……」

 

平塚「こりゃぁ、はりゅの!わりゃしのはにゃしを聞いてりゅのかあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」ウルウル

 

陽乃「め、めんどくさいなぁ……」フゥ

 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

雪乃「いいでしょう。ならば戦争をしましょう」

雪乃「いいでしょう、ならば料理をしましょう」

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