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雪乃「おはよう、比企谷くん….まだ、寝てたのね。」 八幡「今日は授業、昼からだからな」【俺ガイルss/アニメss】

 

そうして俺達の時はまた、動き出してしまった。

 

俺は躊躇い逡しながら

 

覚 悟 も 決 意 も な い ま ま ・・・

 

 

 

■八幡のアパート

 

ピーンポーン♪

 

八幡(誰だよ・・・朝っぱらから・・・)

 

ピーンポーン♪

 

八幡(眠ぃ・・・昨日はいろいろ考えて眠れなかったのによ・・・)

 

ピーンポーン♪

 

八幡(はい、はい、今、出ますよ・・・)

 

 

ガチャリ

 

 

八幡「・・・」

 

雪乃「おはよう、比企谷くん。」チラリ

 

雪乃「・・・まだ、寝てたのね。」

 

八幡「俺、今日は授業、昼からだからな。」

 

雪乃「それにしても、もう10時よ。ずいぶんいい加減な生活をおくっているのね。」

 

八幡(誰のせいで眠れなかったと思ってるんですか)

 

雪乃「・・・」

 

雪乃「その・・・」

 

雪乃「上がらせてもらっても、かまわないかしら。」

 

八幡「お、おう。」

 

雪乃「けっこう、きれいにしているのね。ちゃんと片付いてる。」

 

八幡「そうか?」

 

八幡「で、今日は何のようだ?」

 

雪乃「・・・」ムカッ

 

雪乃「・・・」

 

八幡「?」

 

雪乃「アナタト イッショニ イタイカラニ キマッテルジャナイ」ボソッ

 

雪乃「いいから、早く着替えてきなさい!」///

 

八幡「お、おう?」

 

 

キガエ キガエ

 

八幡 クンクン 「?」

 

 

雪乃「朝食がまだだった見たいだから」

 

雪乃「悪いけど、勝手に冷蔵庫の中のものを使わせてもらったわよ。」

 

八幡「お、おう・・・すまん。」

 

八幡(朝食って・・・)コンワクガオ

 

八幡(しかし、まともな手料理なんて久しぶりだな・・・美味そうだ)ゴク

 

八幡「食っていいのか?」

 

雪乃「どうぞ」ニコリ

 

雪乃「それにしても、あなたの冷蔵庫、まともな食材がなにもないのだもの」

 

雪乃「いつも、どんな食せいか・・

 

雪乃「・・・」

 

雪乃 フフフ

 

そう微笑んで、八幡が食事をするのを嬉しそうに見つめた。

 

 

洗物を終え

 

雪乃「あなたの今日の授業は四講目の、英Ⅱだったわね。」

 

八幡「ああ。」

 

雪乃「そう・・・」

 

そう言って、本を広げて読み始めた。

 

八幡(本当に、こいつ何しに来たんだ・・・)

 

そう思いながらも、八幡もいつものように、自分の本を広げた。

 

まったりとした時間が流れた。

 

  ◇

 

八幡「やべぇ、そろそろ出ないと・・・」

 

雪乃「そうね。」

 

雪乃「・・・」

 

雪乃「あなたの今日の最後の授業は確か、六講目の文化心理学だったわよね?」

 

八幡「あぁ、そうだけど?」

 

八幡(なんで、こいつ、そんな事知ってんの?)

 

雪乃「・・・」シンキング

 

雪乃「あなたの事だから、どうせアルバイトも、人との付き合いもないでしょうから・・・」

 

雪乃「あとで、また、ここに来ていい?」

 

八幡「・・・」

 

雪乃「・・・」ジー

 

八幡「好きにすればいいんじゃね。」メヲソラシ ///

 

雪乃「そうするわ。」ニッコリ

 

  ◇

 

八幡 (はぁ、はぁ、はぁ・・・部屋まで走って来たが・・・)

 

八幡(いる・・・)

 

買い物袋をさげた雪ノ下が、八幡のアパートの前でたたずんでいる。

 

八幡「雪ノ下・・・」

 

雪乃「あら、けっこう早かったのね。」

 

じっとりと汗に濡れ、すこし息の荒い八幡を見て、雪乃は少し柔らかく笑った。

 

 

八幡「その買い物袋・・・」

 

雪乃「ええ、夕飯の材料よ。」

 

雪乃「あなたは碌なモノ食べてないようだったし、その・・・」

 

雪乃「一人分作るのも、二人分つくるのもたいして変わらないから・・・」

 

八幡(こいつ・・・)

 

少し困惑し、恋人として踏み込んでこようとする雪乃に焦りを感じながらも・・・

 

 

雪乃 フフフ

 

 

結局、ハムッ、ハフハフ、ハフッ!!してしまった・・・

 

  ◇

 

食事のあと、二人で何をするわけでもなく、何を話すわけでもなく、いつものように

 

本を読んですごす。

 

時間は8時。いい時間だ。

 

 

八幡「おい、雪ノ下。そろそろいい時間だ。帰れよ。」

 

雪乃「・・・」

 

雪乃「・・・」

 

雪乃「そう・・ね。」

 

八幡「送っていくぞ。」

 

雪乃「お願いするわ。」

 

  ◇

 

八幡「・・・」コツコツ

 

雪乃「・・・」コツコツ

 

二人で何を話すわけでもなく、歩く。

 

しかし、意外なことに、八幡の部屋から10分ほどの距離で雪乃の足が止まった。

 

 

八幡「お前、こんな近くに住んでたんだな・・・」

 

八幡(小奇麗だけど、昔、雪ノ下が住んでいたマンションより、ずっと人並みな・・・)

 

八幡(これも、俺のせい・・・)

 

 

雪乃「・・・」

 

雪乃「・・・」

 

雪乃「そうね・・・あなたはそんな事も・・・そんな事すら知らないのね。」キッ

 

雪乃「おやすみなさい。比企谷くん・・・」

 

そう言って、雪乃はマンションに入っていった。

 

 

そんな日々が3日ほど続いた。

 

  ◇

 

八幡(今日もいる・・・)

 

今日も買い物袋をさげた雪乃が八幡のマンションの前で待っていた。

 

雪乃「今日は少し遅かったのね。」

 

雪乃「そうね・・確か哲学概論の四之宮教授は授業を長時間延長するので有名ね。」クス

 

八幡(なんで、こいつは学部の違う教授の話を知ってんの?)

 

 

八幡(もう、来るな!と言ってしまえば楽なんだが・・・)

 

八幡(あの日、交際を再開した日から、俺にはそれすら言えないでいる・・・)

 

あの人並みなマンションが頭を掠めて、ジクリと胸が痛む。

 

 

陽乃 <君は雪乃ちゃんに何を捧げられるのかな?>

 

 

八幡(俺には、雪ノ下に捧げられるモノなんてなにもない・・・)

 

 

八幡「毎日、毎日、ひとの部屋の前で待ってんじゃねーよ・・・」

 

八幡「待ってるなら中で待ってろ。」

 

 

俺には、何もない。

 

それでも、もう雪ノ下に背を向けられない・・・

 

だから、その罪悪感から逃れるためのように、雪ノ下に、部屋の合鍵を差し出した。

 

それなのに

 

その鍵をまるで宝物のように胸に抱いて、雪ノ下はとても嬉しそうに笑った。

 

  ◇

 

その日から、毎朝、雪ノ下は俺を直接起こすようになり、今まで以上に甲斐甲斐しく

 

俺の世話をやくようになった。

 

 

そして、ときおり雪ノ下は黙り込んで、俺をジッと見つめて、何か、もの問いたげな表情をするようになった。

 

朝、起こした後、食事のあと、出かける前、帰ってきたとき、

 

 

そして夜、雪ノ下の部屋へ送っていったとき・・・

 

 

八幡「・・・」コツコツ

 

雪乃「・・・」コツコツ

 

いつものように、二人で特に何も話さずに歩く。

 

そしていつものように、雪ノ下のマンションの前で歩みをとめる。

 

しかし、雪ノ下は動かない。

 

 

雪乃「・・・」ジー

 

八幡「・・・」

 

 

ジッと俺を見つめて、物欲しげな、切なそうな顔をする。

 

雪ノ下は動こうとしない。

 

そして俺も動けない。

 

雪ノ下の目が、その表情が、言葉より雄弁に語っている。

 

 

「ホシイ」と

 

 

そして、俺も「ホシイ」。

 

 

陽乃 <君は雪乃ちゃんに何を捧げられるのかな?>

 

 

その言葉が、頭にチリチリと掠めながらも、キスだけなら・・・キスだけなら・・・

 

と欺瞞で罪悪感をごまかして

 

俺は雪ノ下の唇をゆっくりと塞いだ。

 

 

八幡「んっ・・」

 

雪乃「ふっちゅ・・・」

 

 

唇と唇を合わせるだけの、本当に軽いキス。

 

唇が離れたあと、雪ノ下は目を細め、とても幸せそうな顔をして、

 

オデコを俺の胸に押し当て、ハニカミながら、ささやくように言った。

 

雪乃「オヤスミナサイ」

 

 

その夜から、キスは雪ノ下の当然の権利としてカテゴライズされてしまった。

 

  ◇

 

二人の日々は少し変わった。

 

朝、起こされたとき、食事のあと、出かけるとき、帰ったとき、夜、送っていくとき

 

いつも雪ノ下に目と表情で要求される。

 

 

「シテ」と。

 

 

それを無視すれば、冷たい非難の視線と、無言の抗議で圧力をかけられ

 

結局はスルはめになった。

 

 

雪ノ下の求めは、三年間にたまりにたまった想いをぶつけるようで・・・

 

俺自身の胸に燻る想いも同じで

 

それが幸せで、嬉しくて、

 

そして雪ノ下のそんな想いに、甘えてしまう自分が嫌でたまらなくなった。

 

 

ブレーキの利かない自転車で坂道を二人で転がり堕ちていく

 

そんな気がした。

 

  ◇

 

雪乃「比企谷くん。あなたの今日の授業は三講目の歴史文化論だけよね?」

 

八幡「あぁ。」

 

雪乃「じゃあ、お昼からは時間がとれるわね?」

 

八幡「?」

 

雪乃「その・・・買い物に付き合ってくれないかしら?」

 

八幡「なんか、ほしいもんでもあんのか?」

 

雪乃「この部屋で使う、カップとポット、それに紅茶の葉もほしいわね。」

 

雪乃「ダメ?」

 

八幡「・・・うーん、じゃあ、1時に駅でいいか?」

 

雪乃「ええ。」

 

八幡「じゃ、あとでな。」スクッ

 

 

雪乃「比企谷くん・・・」ジッ

 

八幡(・・・)

 

雪乃(・・・)ジッ

 

八幡(・・・)

 

スッ チュッ

 

雪乃「ちゅっ」フゥ

 

 

雪乃「フフフ、いってらしゃい。」ニコニコ

 

  ◇

 

■待ち合わせ場所

 

 

八幡「急に休講ってどういう事よ?あのハゲ助教。今日、あれ一講だけだったのによ。」

 

八幡(約束より、30分ほど早くついちまったなぁ・・)

 

八幡(まぁ、さすがに雪ノ下もまだ来てないな)キョロキョロ

 

 

結衣「あれぇー? ヒッキー?」

 

八幡「由比ヶ浜? 由比ヶ浜か?久しぶりだな。」

 

結衣「あははは、ヒッキー、やっはろー。」

 

結衣(本当は久しぶりじゃないんだけどね。)

 

結衣「こんな所で本当にめずらしいね、ヒッキーの事だから誰かと待ち合わせということは無いだろうけど」

 

八幡(何、disってくれちゃってんの?)

 

結衣「何か買い物?」

 

八幡「まぁ、買い物ちゃー買い物なんだが・・・」

 

八幡「・・・」

 

結衣「・・・」

 

結衣「ねー、ヒッキー」

 

結衣「最近、ゆきのんと、ちゃんと話した?」

 

八幡「由比ヶ浜?」

 

結衣「ダメだよ、ヒッキー、ちゃんとゆきのんと話さないと。」

 

結衣「あのまま終わっちゃったら、私、カナシイヨ・・・」

 

八幡「あのな、由比ヶ浜、じつh  

 

 

雪乃「比企谷くん!」

 

雪乃「・・・・・ゆいが・・ハ・マサン?」

 

  ◇

 

■喫茶店

 

 

結衣「あははは・・・そうなんだ、ちゃんと仲直りできたんだ・・・」ニッコリ

 

雪乃「・・・」 ギュッ

 

結衣「本当に良かったよ・・ホントウニ」

 

八幡「・・・」

 

結衣「ヒッキー!」キッ

 

結衣「あの頃のゆきのんは、本当のほんとーーーーに! 悲しい想いをしたんだから!!」

 

結衣「大事にしないとダメだよ!」

 

結衣「そうじゃないと私・・・ユルサナカラ・・・」

 

八幡「お、おう・・・」

 

結衣「ゆきのん・・・」ニッコリ

 

結衣「本当によかったね・・・ヒッキーともう一度分かり合えて・・・」

 

雪乃「・・・」ギュッ

 

雪乃「由比ヶ浜さん・・・アリガトウ。」

 

  ◇

 

結衣「あっ! もうこんな時間だ!!!」アセッ!

 

結衣「せっかく、三人であえたのに、私、大事な約束があって・・・」

 

結衣「私、もう行くね・・・」バタバタ

 

結衣「ゆきのん!」

 

結衣「ヒッキー!」

 

結衣「幸せにならないとダメだからね! じゃ!」パタパタ

 

 

そう言って、由比ヶ浜は慌しく、店から出て行った。

 

 

由比ヶ浜と話している間中、ずっと、雪ノ下は机の下で、俺のシャツの袖を掴んで離さなかった。

 

 

雪乃「・・・」

 

八幡「・・・」

 

八幡「行っちまったな・・・」

 

雪乃「ええ・・」

 

 

雪ノ下は俺のシャツの袖を掴んで離さない。

 

 

雪乃「・・・」

 

雪乃「私はとても嫌な女だわ・・・」ポツリ

 

八幡「・・・」

 

雪乃「由比ヶ浜さんはずっと、私の友達でいてくれて・・・」

 

雪乃「私を支えてくれたのに・・・」

 

雪乃「彼女もきっと・・・・・・・ダッタノニ・・」

 

雪乃「なのに・・・私は・・・今日・・ずっと・・・」

 

雪乃「彼女が怖かった・・・」

 

八幡「・・・」

 

雪乃「あなたを取られるんじゃないかと・・・怖くて・・」

 

 

そう言って、さらに強く俺の袖を握る・・・

 

そんな雪ノ下が愛おしくて・・・

 

 

いけないと思いつつも、彼女の強く握った手に優しく触れた。

 

雪ノ下は俺の指を握り、腕に寄りかかって

 

 

少し泣いた。

 

  ◇

 

■八幡のアパート

 

 

その日の雪ノ下はずっとおかしかった・・・

 

ずっと上の空で、本を読んでいるわけでもなく、

 

かと思えば、ジーっと俺の方を見つめていたりする。

 

そんな雪ノ下に俺は何も声をかけることが出来ず、時間は夜8時。

 

 

八幡「・・・」

 

雪乃「・・・」ボー

 

 

八幡「おい・・・」

 

雪乃「・・・」ジー

 

八幡「雪ノ下・・・そろそろ、時間。」

 

雪乃「・・・」

 

雪乃「・・・」

 

雪乃「・・・」

 

八幡「雪ノ下?」

 

 

 

雪乃「イヤ」

 

 

っとポツリと呟いた。

 

 

雪乃「比企谷くん・・・あなた、まだ、迷っているでしょ?」

 

雪乃「姉さんに言われたことで。」

 

八幡「・・・」

 

雪乃「・・・」

 

雪乃「・・・」

 

雪乃「・・・私はもぉイヤよ。」

 

雪乃「あなたに避けられてきた、3年間、本当に辛くて・・・苦しかったから・・・」

 

雪乃「あなたがもう一度、私と向き合ってくれて・・・」

 

雪乃「こうやって、つきあえて・・・一緒の時間が持てるようになったのに・・・」

 

雪乃「もし、また、あなたに距離を置かれたり、誰かに奪われたりしたら・・・」

 

雪乃「私は・・・私は・・・」

 

八幡「・・・」

 

 

 

そう言って、いつもの目と表情を俺に向ける・・・

 

いつもの、キスを求める瞳・・・

 

しかし、その瞳の奥にはさらに熱いものが宿っている。

 

 

雪乃を押しとどめる事も、拒むことも出来ず、唇を重ねる。

 

 

八幡「ちゅっ・・・」

 

いつもより、出来るだけ優しくキスをする。

 

しかし、雪ノ下は許してくれず、激しく求めてくる。

 

雪乃「ふっ、ちゅっちゅるっちゅちゅるちゅ・・・」

 

唇を離そうとした瞬間、雪ノ下の潤んだ瞳は、その切なげな表情で モット っと呟く。

 

このまま唇を離したら、彼女の唇から、より直接的でより深い行為を言葉で求められてしまう。

 

その言葉を聞いてしまったら、俺はもぉ止まれない。

 

 

その言葉が聞きたくなくて、俺は再度、唇を重ね、さらに深いキスをする。

 

ヌルリと俺の舌が雪ノ下の口内に入った瞬間、雪ノ下は驚いた表情を浮かべたが

 

すぐに、それを受け入れ、とても愛おしいモノを受け入れるように、俺の舌に自分の舌を絡めた。

 

 

雪乃「じゅるっ、じゅぷっ・・じゅっ・・ぢゅっちゅるっ・・ふぅ・・ちゅちゅるちゅ・・・ふぅ・・ふぅ」

 

 

どのくらい長く、互いの舌と口内を愛撫しあっただろうか・・・

 

じっくりと唇を堪能しあい、唇を離すとき、

 

俺の口内にたまった唾液が、ズルリと雪ノ下の口内に流れこんだ。

 

 

雪ノ下はそれを、とても高価なモノのようにクチに含み

 

そして、ゴクリと嚥下し、

 

妖しく笑った。

 

 

俺の脳内で何かが弾けてしまった。

 

  ◇

 

気がつくと、そこには胸と下腹部をむき出しにし、秘所から、鮮血と俺の精液をドロリとたれ流しながら

 

とても満足そうに笑う雪ノ下の姿があった。

 

その夜から、「雪乃」は俺の側を離れなくなった。

 

  ◇

 

そんな日々が続いた数日後、彼女はやってきた。

 

 

雪乃が俺の膝を枕にスヤスヤと寝息をたてている。

 

雪乃「ヒキガヤ・・クン・・」そう寝言をいいながら、俺のシャツを掴んで離さない。

 

雪乃の頭を優しくなでる。

 

 

そのとき、不意にガチャリと音をたてて、部屋の扉があいた。

 

 

陽乃「やっぱり、雪乃ちゃんここにいたんだ・・・」ニヤ

 

 

八幡「!」

 

 

部屋には鍵がかけてあったはずなのに

 

陽乃はさも、当然とばかりに、入って来た。

 

陽乃「ふ~ん・・・ここが二人の愛の巣か・・・」

 

そう言って、あちこちを見回しながら俺達の前まできて

 

雪乃の顔を覗き込む。

 

 

陽乃「幸せそうな顔しちゃって・・・」

 

陽乃「雪乃ちゃん、報われちゃったんだ・・・」ニヤニヤ

 

陽乃「まだ早い時間なのに、雪乃ちゃんホントに良く寝てるね。」

 

陽乃「昨日の夜「も」、ずいぶんと イイ 事があったのかな?」ニヤニヤ

 

 

八幡「・・・」

 

陽乃「雪乃ちゃん、昨日も、一昨日も、ここ数日、ずっと、自分の家にいなかったみたいだけど」

 

陽乃「いったい、どこにいたのかなぁ?」

 

八幡「・・・」

 

陽乃「比企谷くんは知らないかなぁ?」ニヤニヤ

 

八幡「・・・」

 

陽乃「ダンマリなんだ・・・」そう言って目を眇めた。

 

陽乃「・・・」

 

陽乃「比企谷くん・・・」

 

 

陽乃「 雪 乃 ち ゃ ん を 抱 い ち ゃ っ た ん だ ね 」<●><●>

 

 

八幡「・・・」

 

陽乃「私、あの時、言ったよね?」

 

陽乃「雪乃ちゃんから奪ったもの以上のものを、捧げられるの?って・・・」

 

陽乃「雪乃ちゃんのカラダは柔らかかったかな?」

 

陽乃「雪乃ちゃんの声はとても甘かったかなぁ?」

 

陽乃「雪乃ちゃんの蕩けた表情はたまらなかったかな?」ニヤニヤ 

 

陽乃「君は、今度は雪乃ちゃんの貞操まで奪ったんだね・・・」<●><●>

 

 

八幡「!」苦悶に歪む顔

 

 

陽乃「にゃははは、君、いい顔するねぇ・・・」

 

陽乃「で?君は雪乃ちゃんの想いにどう応えるつもりなの?」

 

陽乃「君は雪乃ちゃんに何を捧げるつもりなの?」

 

 

八幡「・・・俺は・・・」

 

八幡「俺は・・・」

 

 

そんな八幡を見て、ますます目を細める。

 

追い詰めたネズミを弄ぶ猫のように。

 

陽乃「君は、雪乃ちゃんを愛しているのかなぁ?」ヤララカニ

 

八幡「・・・」

 

八幡「・・・」

 

八幡「・・・」

 

 

長い沈黙のあと、八幡は顔を真っ赤にし、陽乃から目をそらしてポツリと呟いた。

 

八幡「アイシテルニキマッテルジャナイデスカ・・・」ボソッ ///

 

 

陽乃「・・・」

 

陽乃「・・・」

 

陽乃「まぁ、いいわ。」

 

陽乃「ところで話は変わるけど、もうすぐ雪乃ちゃんの誕生日ね。」

 

八幡「1月3日ですね。」

 

陽乃「君が本当に雪乃ちゃんを愛しているなら」

 

陽乃「その誕生日に、雪乃ちゃんが本当に心から望むものを上げなさい。」

 

八幡「俺に・・できることなら・・・」

 

陽乃「ホントかな? そんな事、君にできるのかな?」

 

八幡「俺にできることなら、何だってしますよ。」

 

陽乃「君にそんあ覚悟があるかなぁ?・・・まぁ、いいや、それもこれも君次第ね。」

 

八幡「・・・」チラリと雪乃を見る

 

陽乃「ホントに良く寝てるわね。雪乃ちゃん、君にベッタリはりついて離れないわね。」

 

陽乃「でも、この子には大事な話があるから。」

 

陽乃「ほら!雪乃ちゃん、起きなさい!!」

 

雪乃「ヒキガヤクン・・・モウチョットダケ・・・モウチョットダケ・・・」 ギュッ 袖をつまむ。

 

陽乃「もう、この子、本当に可愛くなっちゃって。」

 

雪乃 イヤイヤ

 

陽乃「雪乃ちゃん! 起きろ! いいかげんに起きなさい!!」

 

雪乃「・・・」

 

雪乃「モォ・・ヒキガヤクン・・・」

 

雪乃「・・・」パチパチ

 

雪乃「えっ?」

 

雪乃「えっ?」

 

雪乃「何で、姉さんがいるの?」

 

雪乃「比企谷くん?」

 

 

陽乃「やっと起きたか・・・大事な話があるから、探してたのよ。」

 

雪乃「だいじな・・はなし?」

 

陽乃「そ、ちょっと緊急にね。」

 

 

八幡の袖を掴んだまま、八幡のほうを見る雪乃

 

陽乃「大丈夫よ、どこにも行かないから。もし、今度、雪乃ちゃんから逃げ出したら」

 

陽乃「地の果てまで追い詰めて、酷い目にあわせてやるから、安心しなさい。」<●><●>

 

八幡「・・・」

 

    ◇

 

■喫茶店

 

 

雪乃「それで、何のようかしら?」

 

陽乃「二人の愛欲の時間を邪魔して悪いんだけど・・・」

 

雪乃「ちょっ!」///

 

陽乃「タイムアップよ。時間切れ。」

 

雪乃「えっ?」

 

陽乃「ようやく報われて、これからって時にわるいけど」

 

陽乃「お母さんにバレたわ。」

 

 

雪乃「!!」

 

 

陽乃「というより、バレつつあるというのが正しいかな。」

 

雪乃「姉さんがバラしたの?」

 

陽乃「雪乃ちゃんは酷いなぁ、お姉ちゃんの事を何だとおもっるの?」

 

雪乃「性悪な姉よ。」

 

陽乃「本当に酷いなぁ~、本当に性悪ならこんなこと教えずに、雪乃ちゃんがお母さんに追い詰められるのを見ているわよ。」

 

雪乃「・・・」

 

陽乃「今回は、完全に雪乃ちゃんのミスね。」

 

陽乃「アナタ、比企谷くんと結ばれてうれしくてしょうがないのは分かるけど」

 

陽乃「舞い上がりすぎ!」

 

雪乃「・・・な・・何をいっているのよ・・・」

 

陽乃「あなたね、この二週間で、どんだけ授業をサボってるのよ・・・」

 

陽乃「お母さんにバレないよう、私学の学費を捻出するために、学校の奨学生になったの忘れてたの?」

 

陽乃「優秀な学生だから、学費を免除しているのに、その学生がガンガン授業をサボっていれば、家に連絡くらい入るわよ。」

 

雪乃「・・・」

 

陽乃「まぁ、まだ完全にバレたわけじゃないけれど、全部バレるのも時間の問題ね。」

 

雪乃「・・・」

 

陽乃「すぐに、彼の事もバレるわ。」

 

陽乃「そうなったらジ・エンド。今度こそ、家に連れ帰られて、家から出してもらえず、誰かとお見合いでもさせらると思うよ。」

 

陽乃「酷いバッドエンド。」

 

雪乃「・・・」

 

陽乃「 ま ぁ、 手 が な い わ け で は な い け ど ね 。 」

 

    ◇

 

雪乃「そんなこと!」

 

陽乃「そうね、彼が受け入れられなければ、それまでの事。」

 

陽乃「あきらめなさい。」

 

雪乃「・・・」

 

陽乃「あと、その日まで、彼の部屋に行くのは止めなさい!」

 

雪乃「そんな!」

 

陽乃「雪乃ちゃん!」

 

陽乃「学生課に手を回して、彼の在籍はわかりにくくしてあるけど」

 

陽乃「さすがに雪乃ちゃんが、彼の側に居続ければ、すぐにバレてしまうわ。」

 

雪乃「・・・」

 

雪乃「・・・ワカッタワ・・」シュン

 

陽乃「いい子ね・・」ニコ

 

 

陽乃「それと、雪乃ちゃんには、私の仕事を手伝ってもらうわ。」

 

陽乃「この二週間、学校をサボッていた理由がいるからね。」

 

陽乃「そうね、学校で学んだ事を実務で経験してみたかったとか、何とか・・・」

 

雪乃「よく、そんな出任せがポンポンでるわね。あきれるわ。」

 

陽乃「あと、実際、私の任されてる仕事も手伝ってもらいたいのよ。」

 

陽乃「その間に、私はいろいろ調べたい事があるから・・・」

 

そう言って、陽乃は携帯を握った。

 

雪乃「でも、姉さん・・・なんで私のためにこんな事までしてくれるの?」

 

陽乃「雪乃ちゃんのため ではないかな・・・」

 

陽乃「しいて言えば」

 

 

陽乃「私の楽しみのため・・・ってところよ。」ニヤ

 

 

雪乃「姉さんが何を考えているのか分からないけど。」

 

雪乃「姉さんに乗せられてあげるわ。」ニヤ

 

陽乃「利用させてもらう・・・の間違いでしょ?」ニヤ

 

そう言って二人の姉妹はニヤリと笑った。

 

   ◇

 

小町「あっ!お兄ちゃん?全然、連絡ないから小町から電話したんだけど・・・」

 

小町「今年のお正月は帰ってこないの?」

 

小町「別にいいんだけど、小町にお年玉持って帰ってきてくれると、小町的にポイント高いかな!」

 

八幡「悪ぃ・・いろいろ忙しくてな・・・今年は帰えれんわ・・・」

 

小町「えーーーっ!去年は冬休みの間じゅう、ずっと帰って来てたのに・・」

 

小町「友達と遊ぶのもいいけど・・あっこれはお兄ちゃんはないな・・・」

 

小町「アルバイト・・・もないだろうし、一人で何してるの?帰ってきなよ・・・」

 

八幡「ほんと、悪ぃ、時間だわ・・・お年玉だけ送っとくから、じゃ・・」

 

小町「あっ!ちょっと!おにい  ガチャ・・・ツーツーツー

 

 

八幡「拙い・・・本当に遅刻しそうだわ・・・」

 

 

あれから3ヶ月、俺は毎日バイトをしている。

 

講義は最低限度にし、入れられるだけバイトを入れた。

 

今日は3つ掛け持ち。

 

(働きたくないでござる)そう言っていたのが冗談のようだ。

 

 

120万円

 

 

学生にしては大した大金なんだろう。

 

でも、こんなモノは小銭にもならないんだろう。

 

俺がどんなにがんばっても、こんなもんだ・・・そう思いながらも

 

不安と憔悴を隠すため働く・・・働く・・・一心腐乱に働く・・・

 

 

陽乃さんが来たあの日から、雪乃は消えてしまった。

 

どこにもいない。

 

学校にも、あの人並みのマンションにもいなかった。

 

雪乃のいなくなった部屋で、ただ「雪乃の誕生日」の事だけが頭にのこった。

 

 

こんなちっぽけな俺に何ができる?

 

 

そう思いながら・・・雪乃の笑顔が見たくて・・・ただ、ただ働く・・・

 

 

雪乃はもぉいないのに・・・

 

 

そう思いながら・・・働きながら正月を過ごした。

 

  ◇

 

■1月3日

 

 

雪乃「・・・キナサイ」

 

雪乃「いい加減に、おきなさい・・」ユスリユスリ

 

八幡「・・・」

 

雪乃「起きたかしら・・・」

 

八幡「・・・」パチパチ

 

八幡「・・・ゆき・・の?」

 

雪乃「おはよう、比企谷くん。」ニコッ

 

八幡 ガバッ!

 

八幡「雪乃!!」 ギュッ!

 

雪乃「きゃっ!」

 

 

しばらく雪乃を抱きしめたあと

 

 

雪乃「落ち着いた?」

 

雪乃「大事な話があるから、着替えたら着てちょうだい。」スクッ

 

雪乃「その前に・・」

 

雪乃「・・・」ジー

 

 

八幡 スッ チュッ

 

 

雪乃「ちゅっ」フゥ

 

雪乃「ふふ・・朝ごはんできてるから・・・」///

 

八幡 ///

 

三ヶ月ぶりのキスだった。

 

  ◇

 

部屋にはいるとそこには、雪乃と、変な鼻メガネをつけた陽乃さんがいた。

 

 

陽乃「ハッピー・ニューイヤー&ハッピーバースデー雪乃ちゃん!!」

 

陽乃「比企谷くん? 覚悟は出来とるかね?ちみ?」ニヤリ

 

無駄に高いテンションで朝ごはんをつついていた。

 

 

そして俺は

 

久々の雪乃のメシをハムッ、ハフハフ、ハフッ!!した。

 

  ◇

 

雪乃「・・・」

 

雪乃「・・・」

 

雪乃「・・・」

 

八幡「・・・」

 

雪乃「あの・・・」

 

八幡「何だよ。」

 

雪乃「私・・ほしいものがあるの・・・」

 

雪乃「それが、どうしてもほしいの・・・」

 

八幡「・・・」

 

雪乃「だから、それを贈ってくれないかしら?」ウワメヅカイ

 

八幡「俺に出来ることなら・・な・・・」

 

八幡(通帳には128万・・・それで・・足りるのか?)

 

 

しずしずとカバンから一通の書類をだす雪乃

 

 

雪乃「なら、これにサインして。」///

 

(婚姻届)

 

 

八幡(えっ?)

 

八幡(えっえぇえぇぇぇぇええぇぇー!!!)

 

  。 。

 / / ポーン!

( Д )

 

 

陽乃 ニヤニヤ

 

陽乃「比企谷くんは、雪乃ちゃんの望むものを捧げるんだよね?」

 

陽乃「君の人生を雪乃ちゃんに捧げられる?」

 

 

八幡 フヒ

 

八幡「ふひ、ふひひひひひひ・・・」

 

雪乃・陽乃(き・・キモい笑いね・・・)

 

 

ひとしきり笑った後、サラサラとあっさりとサインしてハンコを押した。

 

 

雪乃 ///

 

陽乃(・・・)

 

陽乃「比企谷くん、そんなに考えなしに、サインしちゃっていいの?」

 

陽乃「君、まだ学生でしょ?」

 

雪乃「・・・」

 

八幡「・・・」

 

八幡「考えなし、ってことはないですね。」

 

八幡「まぁ、実際のこれからの生活とかについては考えなしとは思いますが。」

 

八幡「それでも、この三ヶ月間、いろいろ考えてきましたよ。」

 

陽乃「・・・」

 

八幡「俺に雪乃に何が捧げられるか・・・」

 

雪乃「・・・」

 

八幡「この三ヶ月間、死ぬ気で働きました。」

 

八幡「それで貯めたのが120万・・・」

 

 

八幡「こんなものはゴミだ。小銭にもなりはしない!」

 

八幡「雪乃に捧げられる何かにとても足りないでしょう。」

 

 

陽乃「・・・」

 

 

八幡「俺には雪乃に捧げられるものなど、何も無い・・」

 

 

雪乃「・・・」

 

 

八幡「婚姻届を突きつけられたとき、正直ぶっとびましたが・・・」

 

八幡「同時にこうも思いました。」

 

八幡「雪乃はツケを、俺の人生を担保にしてくれたんだって。」

 

八幡「とてで足りるとは思いませんが・・・」

 

八幡「それでも俺は・・・」

 

 

八幡「雪乃がホシイ」

 

 

雪乃 ///

 

 

八幡「俺の人生を、誕生日プレセントにもらってくれるか?」

 

雪乃「ハイ」///

 

 

そう言って笑った。

 

 

陽乃「・・・」ニタリ

 

  ◇

 

これは後で聞いた話だが、雪乃の親に俺達の関係がバレ、かなりきわどい話になっていたらしい。

 

親の承認なしに自分の意思で婚姻できる雪乃の二十歳の誕生日をピンポイントで狙った行動だったそうだ。

 

 

保証人は陽乃さんと、うちの親

 

なんと、うちの親には事前に話がとおっていたみたいだ。(どんだけ放任やねん!)

 

 

 

俺達は実質、二週間の交際期間だけで、結婚した事になる。

 

電光石火。どんだけスピード婚なんだよ!!

 

それを言うと、みんな、お前がヘタレなのが悪い!って言われるんだよね。(はちまん ないちゃう)

 

 

式もなく、披露宴もない、ただ三人で役場に婚姻届を提出するだけの結婚。

 

それでも、俺がどうしてもそれが見たくて、がんばって貯めた金を散財した。

 

小さなチャペルに行って、二人で写真を撮るだけだったが

 

雪乃のウェディングドレスはとても美しくて、この姿を網膜に焼き付ける事ができる男が自分だけなのが

 

嬉しくてたまらなかった。

 

そして、この写真が俺達の最初の二人の写真になった。

 

 

(なんか雪乃はもう一枚、もってるらしいが・・・)

 

  ◇

 

■エピローグ

 

 

雪ノ下母「陽乃? これはどういう事かしら?」

 

陽乃「さぁ? 雪乃ちゃんも、もう二十歳の大人だからねぇ~」

 

陽乃「自分の事は自分で決めたんじゃない?」

 

陽乃「いつまでもお人形さんじゃないんだし」クスクス

 

雪ノ下母「・・・」

 

雪ノ下母「そう・・・」

 

雪ノ下母「今は雪乃ちゃんが・・・」

 

雪ノ下母「あなたのお人形さんじゃないといいわね・・・」

 

 

スタスタスタ

 

 

陽乃「・・・」

 

陽乃(私が見たいのは、人形芝居じゃなく・・・)

 

陽乃(もう一度、二人のホンモが見たいのよ・・・)

 

 

そう思いながら、陽乃は携帯を強く握り締めた

 

 

 

 

 

 

 

 

【八幡】伝好雪花(でんこうせっか)【雪乃】

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