アニメssリーディングパーク

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陽乃「雪乃ちゃんだいたーん」 雪乃「次は負けないわ」【俺ガイルss/アニメss】

 

無言

 

雪乃「……」ペラッ

 

八幡「……」ペラッ

 

雪乃「……」

 

八幡「……」

 

雪乃「……」チラッ

 

八幡「……」

 

雪乃「……」

 

八幡「……」ペラッ

 

雪乃(紅茶を淹れようと思ったけれどタイミングがわからないわ。どうやって話を切り出せばいいのかしら)

 

八幡「……」

 

雪乃(そもそも、どうして私が比企谷くんに話しかけるのにタイミングとかを考えなければいけないのかしら。こんな時由比ヶ浜さんならきっと……すぐにでも彼に話しかけられるのに……)ソワソワ

 

八幡(こっち見たと思ったらすげぇソワソワしてて気になるんですが……雪ノ下が不安定で恐いから早く来てくれ由比ヶ浜)

 

-----

 

 

陽乃「だーれだ」ダキッ

 

八幡「ちょ、抱きつかないでください」

 

陽乃「答えは陽乃さんでしたー」

 

八幡「だから、少し離れ」

 

陽乃「うん。それ無理♪」

 

八幡「いや、そんな上機嫌で言われてもですね」

 

陽乃「うんうん。ちょーっとお姉さんに充電させてね」

 

八幡「だから離れてください」

 

陽乃「だーめ」

 

八幡(何これドラクエ?無限ループ恐い。柔らかいし良い匂いするし、まじでヤバイんですが)

 

雪乃「何をしているの」

 

陽乃「おりょりょ。やっほー雪乃ちゃん。迎えに来たよー」

 

雪乃「いますぐ離れなさい。姉さん。彼は私のよ」

 

八幡「は?」

 

陽乃「やーん。雪乃ちゃん独占欲はげしいー」

 

雪乃「三秒以内に離れなければ警察を呼ぶわよ」

 

陽乃「警察呼ぶにしてもどういった用件で?私は別に悪いことをしてないよ?」

 

雪乃「姉が目の腐った男に痴漢されていると言うのよ」

 

八幡「マジでちょっと待て!おかしいだろ」

 

陽乃「あはは。それは不味いかもね」パッ

 

八幡(助かった)

 

雪乃「わかればいいのよ」

 

陽乃「雪乃ちゃんもやりたいならすればいいのにぃ」

 

雪乃「そ、そんなことしないわよ!帰るわよ姉さん!」

 

陽乃「はーい。またね、比企谷くん」

 

八幡「……今度は普通に挨拶してください」

 

陽乃「それは無理かもね♪」

 

雪乃「姉さん!」

 

陽乃「あん。こわーい」

 

八幡(……さらりと凄いことを言われてた気がする)

 

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現状

 

八幡「ただいま」

 

小町「おかえりー。何かお疲れモードだね」

 

八幡「学校ある時点でお疲れだってたの」

 

小町「……ふーん。お兄ちゃん最近は学校も楽しんでると思ってたけど」

 

八幡「……そうか?」

 

小町「うん。結衣さんや雪乃さんと上手くいってるんだね」

 

八幡「……どうだろうな」

 

小町「ふーん」

 

八幡「……何だよ」

 

小町「べっつにぃ♪」

 

八幡(実際距離を測りかねてる。由比ヶ浜とも、雪ノ下とも……そして雪ノ下さんともだ)

 

八幡(雪ノ下と雪ノ下さんが同棲するようになってから、どうも距離感がおかしくなったように思う)

 

小町「お兄ちゃん。変わったよね」

 

八幡「……俺のどこが変わるってんだ。変わらないことに関しては最強だぞ」

 

小町「はいはーい。ごみぃちゃんだもんね」

 

八幡「おい」

 

小町「……変わったよ。小町は安心だよ」

 

八幡「何を勝手に納得して安心してるんだ。言っとくがこれといって変化はないんだからな」

 

小町「そういってる時点ですごい変化なの、お兄ちゃんわかってないよねぇ」

 

八幡「……」

 

小町「ま。小町も来年には総武だし、楽しみだなぁ」

 

八幡「俺はお前のためにもよりいっそう空気にならないとな」

 

小町「ほーんと、お兄ちゃんは変なこと気にしてるんだから」

 

八幡(当たり前だろ!小町に何かあったら川なんとかさんの弟を抹殺するまである)

 

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戸惑い

 

雪乃「……」

 

八幡「……」

 

雪乃「……紅茶、おかわりいるかしら?」

 

八幡「え……あー……頼む」

 

八幡(あの、これもう5杯目なんですが)

 

雪乃「そ、そう。少し待ってね」

 

八幡「……ああ、別に急ぐ必要もないか、な」

 

雪乃「ええ」

 

八幡(……最近、明らかに様子が変だ。変によそよそしい。常にこちらの様子を窺うようにしてる気がする)

 

雪乃「……」チラッ

 

八幡「……どうした」

 

雪乃「な、なんでもないわ。ただ、その、あまりジロジロ見ないでくれないかしら」

 

八幡「あ、ああ……悪い」

 

八幡(……由比ヶ浜にも一度聞いてみた方がいいかもな……)

 

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違い

 

陽乃「ねぇねぇ比企谷くん」

 

八幡「……何ですか」

 

陽乃「あれ。ご機嫌斜め?」

 

八幡「そりゃそうでしょう……」

 

陽乃「えー?何でなんで?お姉さんが相談に乗ってあげるよ」

 

八幡「……折角の休日に叩き起こされたんですが……しかも何故か貴女に」

 

八幡(目が覚めたら魔王とエンカウントとかそれRPGだと確実に無理ゲーのクソゲー認定だからね)

 

陽乃「雪乃ちゃんの家が退屈でねぇ」

 

八幡「……貴女は雪ノ下の監視役として雪ノ下と住むことになったのでは?」

 

陽乃「あらら。随分と棘のある言い方だね」

 

八幡「……」

 

陽乃「もー。そんな目で女の子を睨まないのぉ。駄目だぞぉ?」

 

八幡「生憎この目はデフォルトですよ」

 

陽乃「ふふふ。そんなに必死になっちゃって」

 

八幡「……」

 

陽乃「ぁー、やっぱりいいよ君、ゾクゾクする」

 

八幡「……」ゾクッ

 

陽乃「確かに私はお母さんに雪乃ちゃんを見張るようには言われたけど、私自身が雪乃ちゃんに何かをしようとは思ってないよ」

 

陽乃「だって……あの子は何もしないもの、何もない、空っぽなんだよ」

 

八幡「……そんな事は」

 

陽乃「ふふ。これ以上の詮索には答えないよ」

 

陽乃「ああ、それと、今日来た用件ね」

 

八幡「何ですか?」

 

陽乃「今度デートしようね。比企谷くん」

 

八幡「……改まって何ですか。言っておきますがお断りしますよ?」

 

陽乃「あらら。つめたーい。けど、君は必ず来るよ」

 

八幡「……」

 

陽乃「んじゃ、行こっか」

 

八幡「行くって……何処にですか」

 

陽乃「デート。買い物いこ!」

 

八幡「は?いやちょ、待ってくださ」

 

陽乃「待ちませーん。レッツゴー」

 

八幡「そもそも今度ってさっきは……手を離して」

 

陽乃「さぁ、さっきって何のことかなぁ!後、手を離すと比企谷くんは逃げるので許しませーん」

 

八幡「こ、こまちぃ110番をしてくれ」

 

陽乃「あ、小町ちゃんなら今頃お土産のケーキをお腹いっぱい食べてるよ」

 

八幡(何買収されてるの!お兄ちゃん最大の危機だよ?お兄ちゃんよりケーキ選ぶとかお兄ちゃん的にポイント超低いよ)

 

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目撃者

 

結衣「やっはろー!」

 

雪乃「こんにちは」

 

八幡「よう」

 

結衣「……ヒッキー」

 

八幡「改まってどうした」

 

八幡(……何でそんな真面目な顔をしてるんだ)

 

結衣「日曜日……何してた?」

 

八幡「……日曜日?家で寝て……ぁ」

 

八幡(……陽乃さんか……日曜日は陽乃さんに散々振り回された日だ)

 

結衣「……」

 

雪乃「……何があったの?」

 

結衣「……ヒッキーが」

 

八幡「……いや、まて、違う。誤解だ」

 

雪乃「黙りなさい比企谷くん。由比ヶ浜さん。続きを」

 

結衣「ヒッキーが陽乃さんとデートしてたよー!ゆきのーん!」

 

雪乃「……」ピシィ

 

八幡「だから違うって」

 

雪乃「日曜日……姉さんが居なかった日……」ブツブツ

 

雪乃「ふふふふふ。どういうことかしら?比企谷くん」

 

八幡「ちゃんと説明はするから話を冷静に聞いてくれ」

 

雪乃「あら、私は凄く冷静よ?ええ、どうして姉さんと比企谷くんが出会っていた ら私が冷静じゃなくなるのかしら?」

 

八幡「なら、その変なオーラをしまってくれ」

 

八幡(恨みますよ……陽乃さん)

 

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後輩

 

いろは「せんぱーい。お久しぶりでーす」

 

八幡「帰れ」

 

いろは「やん。相変わらずですねぇ。この先輩は」

 

八幡(やん。って何だよ。どこの時代の人間だお前は。むしろ次元すら飛び越えてるんじゃないだろうな。二次の世界にいけるとか天国だな。モブAとして強敵にやられる役辺りに適任だろう。やられちゃうのかよ)

 

いろは「おーい。先輩ー?聞いてますかぁ?」

 

八幡「話は聞いたから帰れ」

 

いろは「いや、まだ私何も話してませんから。部室行くんですよね。ご一緒しませんか」

 

八幡「ご一緒しません。お前はそのまま生徒会室に行ってこい」

 

いろは「えー。ごめんなさい。無理です」

 

八幡「……また厄介事か」スッ

 

いろは「いえいえ。ちょっとお茶を……じゃなくて雪乃先輩に相談がぁー」スッ

 

八幡「思いっきりお茶って言ってるからな。お前」

 

いろは「やだなー。そんなわけないじゃないですかー。それより先輩」

 

八幡「何だよ」

 

いろは「何も言わず私の鞄持ってくれるなんて何があったんです?」ニコニコ

 

八幡「……え」

 

八幡「……重い。返す」

 

いろは「えー!ついでですから持っていってくださいよー!」

 

八幡(ほんと、何であいつの荷物とか自然に持ってんの。馬鹿なの死ぬの?)

 

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日常

 

結衣「でさー!今日優美子がねー41のアイス三つも食べるのは食べ過ぎだーってね」

 

雪乃「それはお腹を壊すかもしれないからそう言ったんじゃないかしら」

 

結衣「でも、ダブルもトリプルも変わらないよー。ねぇ?ヒッキー」

 

八幡「いや、俺に振るなよ……まぁ、値段的にはお得なんじゃねーの……」

 

結衣「だよね!だよね!」

 

雪乃「由比ヶ浜さん……貴女……前少しお腹辺りが気になるって言ってたわよね?」

 

結衣「はぅ!?ゆ、ゆゆゆゆきのーん!それ秘密!」

 

雪乃「その時に自分が過剰摂取していたら止めてくれとも言っていたわよ」

 

結衣「気を付けるから!気を付けるからもうやめてぇ!許してゆきのん!そだ!今度ゆきのん一緒に食べに行こうよ!」

 

雪乃「え。いえ、この時期にアイスはちょっと……」

 

結衣「この時期だからだよ!暑いときにお鍋食べるのと同じだよ!」

 

八幡「おかしい……無茶苦茶な理論のはずなのに何となく筋が通ってるように見える……由比ヶ浜なのに」

 

結衣「それどういう意味だし!」

 

雪乃「通ってるように見えて通ってないと遠回しに言われてるのよ……由比ヶ浜さん」

 

結衣「ゆきのんフォローしてるようでしてないよ!?」

 

-----

 

唐突

 

結衣「お鍋食べたい!」

 

八幡「……また思い付きでとんでもないことを」

 

結衣「えー!いいじゃんー!皆で鍋囲もうよー」

 

八幡「あのなぁ……」

 

雪乃「……私は良いわよ?」

 

八幡(え。いいの?一番最初に拒否すると思ってたんだが)

 

結衣「やったー!ゆきのん大好き!」

 

雪乃「暑苦しいから離れて……」

 

結衣「やーだー」

 

雪乃「もう……」

 

八幡(……そういやよく二人で泊まったりとかしてるって言ってたな)

 

結衣「場所どうしよっか。あたしの家でする?」

 

八幡(雪ノ下の家には雪ノ下さんがいるからな……これは由比ヶ浜の気遣いだろう……だが)

 

雪乃「それだと、比企谷くんが行き辛いわよ。由比ヶ浜さん」

 

結衣「へ?」

 

八幡「……ぁー」

 

八幡(まさかこいつに代弁されるなんて……)

 

結衣「……ぁ、もしかしてヒッキー……」

 

八幡「まぁ、その」

 

八幡(女友達の家に上がり込んだりするところを見られたりしたら由比ヶ浜がどういう目で見られるかわからんしな)

 

結衣「うちのママ……苦手?」

 

八幡「いやまて、どうしてそうなる」

 

結衣「だってこの前も馴れ馴れしかったから……さ」

 

八幡「いや、別にあれぐらいは問題はないぞ」

 

結衣「ほんと!?よかったー」

 

八幡(おかしい。論点がずれてる。行くつもりがないと伝えるはずだったんだが)

 

結衣「じゃあ今度の休みとかどう?」

 

雪乃「私は構わないわ……貴方は?」チラッ

 

八幡(……何でそんな目で見るんだよ……やめてくれ)

 

八幡「……わかった」

 

結衣「やったー!」

 

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らしくない

 

八幡「……珍しいよな」

 

雪乃「あら、何がかしら」

 

八幡「……いや、お前にしては随分と簡単に了承したなと思っただけだ」

 

雪乃「……そうかしら?」

 

八幡(深読みのしすぎ……か)

 

雪乃「……」

 

八幡「しかし言い出しっぺの由比ヶ浜が遅刻とはどういうことだ」

 

雪乃「……由比ヶ浜さんは来ないわよ」

 

八幡「は?」

 

雪乃「鍋の種類は聞いているし、場所を借りるなら買い出しぐらいは私達がするべきと思ったのよ」

 

八幡「……まぁ、一理あるか」

 

雪乃「それに……彼女に食材の選択を委ねるとこう……何か恐ろしいものができあがりそうで」

 

八幡(その図は容易に想像できる……だが雪ノ下、お前はひとつ間違っている)

 

八幡「あいつの場合、食材がまともでもどうなるかわからんぞ」

 

雪乃「……否定しようと思ったけれどできないわね」

 

八幡「……お前が教えてやれば問題ないだろうけどな」

 

雪乃「言っておくけれど凄く大変なのよ」

 

八幡(一緒に作っても頭悩ませてるもんな)

 

八幡「……買い物、行こうぜ」

 

雪乃「そうね」

 

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お約束

 

八幡「そういえば何鍋になったんだ」

 

雪乃「由比ヶ浜さんの希望で寄せ鍋よ。お肉は……」

 

八幡「寄せ鍋ね……ベースは?」

 

雪乃「醤油らしいわ」

 

八幡「ふーん。つうか肉高いな」スッ

 

雪乃「そうね」スッ

 

八幡「……」

 

雪乃「……」

 

雪乃「ご、ごめんなさい」パッ

 

八幡「あ、いや……その……悪い」

 

雪乃「い、いえ……せ、セクハラね。訴えたら私の勝ちよ」

 

八幡「いや、待て、偶々手が当たったくらいで何を言っている」

 

雪乃「……わ、私は野菜を見てくるから比企谷くんこっちは任せたわ」

 

八幡「あ、おい………カゴ持ってないだろお前……」

 

八幡(……あんな顔もするんだな)

 

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逃走不可

 

八幡「……こんなもんか」

 

八幡(……そろそろ雪ノ下のとこに戻らないとな。野菜コーナーあっちだよな)トントン

 

八幡「……戻ってきたのか雪ノ下……!?」

 

陽乃「ひゃっはろー雪ノ下でーす」

 

八幡「……心臓に悪いです」

 

陽乃「およよ?何でなんでー?雪乃ちゃんを期待してたならごめんねぇ?」

 

八幡「……何かようですか?」

 

陽乃「あれ?何でここにー、とか言うのかと思ったのに。残念」

 

陽乃「そんな恐い顔しなくても邪魔したりしないよぉ?ただ雪乃ちゃんがあんまりにもソワソワしながら出ていったんできっと比企谷くんとデートだろうなぁって思って付けてきたの」

 

八幡「デートじゃないですよ」

 

陽乃「みたいだねぇ。でも一緒にスーパーで食材買ったりまるで夫婦ごっこみたいだったよ?」

 

八幡「そんなんじゃ……」

 

陽乃「うん。違うよね。だってあの子のは本当にごっこなんだもん」

 

八幡「……あの」

 

雪乃「比企谷く……姉さん」

 

陽乃「ありゃりゃ、見つかっちゃったー」

 

雪乃「どうして姉さんがここに」

 

陽乃「あはは。本当に雪乃ちゃんは思った通りのリアクションだなぁ。心配しなくても今日は邪魔する気ないよ」

 

雪乃「ここにいる時点で邪魔をされているのだけど?」

 

陽乃「雪乃ちゃんは手厳しいなぁー比企くん。今度お姉さんの手料理ご馳走してあげるから今日は雪乃ちゃんので我慢してねぇ」

 

雪乃「どういう意味かしら?」

 

陽乃「それじゃあまたね」

 

雪乃「ちょっと!姉さん!」

 

雪乃「……」ジロッ

 

八幡「いや、俺を睨むなよ」

 

八幡(ほんと……何しに来たんだ)

 

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尋問

 

雪乃「……」ムスッ

 

八幡(すげぇ不機嫌だよ……)

 

八幡「……野菜、どうしたんだよ」

 

雪乃「……貴方がカゴを持ってるんじゃない」

 

八幡「新しいカゴを取ればよかっただろうに」

 

雪乃「……それもそうね……何で貴方を待ってたのかしら」

 

八幡(待ってたのかよ)

 

八幡「……悪かったな。遅くなって」

 

雪乃「いえ、それはいいのだけど……姉さんと何をしていたの?」

 

八幡「……ちょっとした世間話だよ」

 

雪乃「……嘘をついてるわね」

 

八幡「いや、嘘ではないぞ」

 

雪乃「……信じられないわね」

 

八幡「ほら、さっさと野菜取りに行こうぜ」

 

雪乃「まだ話は……」

 

八幡「由比ヶ浜も待ってるぞ」

 

雪乃「……そう……ね」

 

八幡(……ごっこ遊び……か)

 

【そんなモノを本物とは言わない】

 

八幡(何時か彼女は俺達をそう評した……残酷なまでに真実を叩きつけたのだ)

 

八幡(それは決定的なまでに違うと。そしてそれは今も……)

 

八幡「……」

 

雪乃「……」

 

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成長

 

八幡「ん」スッ

 

雪乃「……?何かしら」

 

八幡「何って。袋だよ。重いだろ」

 

雪乃「……驚いたわ」

 

八幡「何が」

 

雪乃「いえ、貴方がそんな事を言い出すなんて思ってもいなかったから」

 

八幡「……むしろ荷物運びぐらいしか出来んがな」

 

雪乃「あら、何時も専業主夫になると言っているのに?」

 

八幡「それはまた別だ」

 

雪乃「……まさか貴方が女性のエスコートの仕方をしっているなんてね」

 

八幡「……あのなぁ。言っておくが俺は小町によってそこら辺は完備されてるんだよ」

 

雪乃「でもそれを発揮すると気持ち悪がられるんでしょ?」

 

八幡「おい。何でバレた。何お前エスパーなの」

 

雪乃「自覚がないようだから言っておくけれど貴方今そうとう気持ち悪いわよ」スッ

 

八幡「ただ荷物預けるぐらい素直に渡せないのか」スッ

 

雪乃「ふふ。だって気持ち悪いもの」

 

八幡「二度も言うなっての」

 

雪乃「……貴方がそういう事するのは年下の人だけかと思ったわ」

 

八幡「は?何で?」

 

雪乃「小町さんと……後は……」

 

八幡「……」

 

雪乃「……」

 

八幡「後は何だよ?」

 

雪乃「……いえ。何でもないわ。途中で落としたらだめよ」

 

八幡「落とすかよ」

 

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停滞

 

結衣「いらっしゃい!ゆきのん!ヒッキー!」

 

雪乃「こんにちは。由比ヶ浜さん」

 

八幡「……うす」

 

結衣「……って!ヒッキーそれ」

 

八幡「ん。食材だぞ」

 

結衣「え!?この後三人でって話じゃなかったっけ!?」

 

雪乃「場所を借りるだけと言うのも悪いし、わざわざまた出向く手間を考えたらこっちの方が効率がいいと思って」

 

結衣「気にしなくていいのにー。あ、だから昨日わざわざメールくれたの?」

 

雪乃「ええ」

 

結衣母「あらあら、こんにちはー。ヒッキーくん。ゆきのんちゃん」

 

結衣「ちょ!ママ!」

 

八幡「……こんにちは」

 

雪乃「お邪魔します」

 

結衣母「いいのよー。何もないけれどゆっくりしていってねぇ」

 

結衣「わかったから!ママはあっちいってて!後でお茶もとりいくから」

 

結衣母「ええー、折角ママが持っていこうとしたのにぃ」

 

結衣「余計なこと言うからだめぇ!」

 

八幡(ほんと……アットホームな家族だな)

 

八幡「……」チラッ

 

雪乃「……」

 

八幡(……望んでも掴めないものを見せられるのは……きっと残酷なものだ)

 

そこでふと思った

 

雪ノ下雪乃も、このような家族を望んでいたのだろうかと

 

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願い

 

結衣「え?泊まってかないの?」

 

雪乃「流石にそこまでお邪魔するのは……」

 

結衣「えー。たまにはいいじゃーん」

 

雪乃「……そう、かしら」

 

八幡(だから何でそこで俺を見る)

 

八幡「……陽乃さんに連絡して許可をもらえばいいんじゃないの」

 

結衣「うんうん!聞いてみようよ。あれだったらあたしもお願いするし!」

 

雪乃「……そうね。少し聞いてみるわ」

 

結衣「うん!」

 

雪乃「ちょっとごめんなさいね」

 

八幡「……」

 

結衣「ヒッキー」チョンチョン

 

八幡「……どうした」コソッ

 

結衣「ゆきのん……何か変じゃない?」

 

八幡「……かもな」

 

結衣「……だよね」

 

八幡「……一緒にいてやれ」

 

八幡(そういうのは俺ではなく由比ヶ浜の方が得意だ)

 

結衣「うん。任せて」

 

雪乃「了承は得たわ」

 

結衣「そっか!今夜はゆきのんと一緒だね!」

 

雪乃「ちょっと、由比ヶ浜さん苦しいわ」

 

結衣「ゆきのーん」

 

雪乃「顔をすりつけないで頂戴」

 

結衣「えへへー」

 

八幡「……んじゃ、俺は帰る」

 

結衣「え!もう?」

 

八幡「小町も待ってるしな」

 

結衣「むー。ヒッキーは小町ちゃん愛が深すぎるよ」

 

八幡「当たり前だ。愛してるまである」

 

結衣「そんな言い切られても困るよ……」

 

雪乃「……本当小町さんのときは思いきりがいいわね」

 

八幡「……ま、そういう訳なんで帰るな」

 

結衣「送ってく?」

 

八幡「玄関までで大丈夫だ。ご馳走さま」

 

結衣「気を付けてね?」

 

八幡「ああ」

 

雪乃「そうね。通報されないようにね」

 

八幡「されたことはないから安心してくれ」

 

 

八幡「……」

 

八幡(さて……と。これどうしようかな)

 

 

着信あり雪ノ下陽乃

 

 

八幡「……逃げよう」

 

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先手

 

八幡「……呼び出しの場所は駅前だったはずじゃ?ここ、俺の家の前なんですが」

 

陽乃「まぁ、君はそういう人だってわかってるからね」

 

八幡「……邪魔はしないんじゃなかったのでは?」

 

陽乃「あーん。比企谷くんは酷いなぁ。お姉さんは邪魔はしなかったよ?だって比企谷くんはちゃんと帰ってきたんだもん」

 

八幡(つまり雪ノ下達の邪魔をした訳じゃないと……)

 

八幡「……」

 

陽乃「小町ちゃんにも許可は貰ってるし、コーヒーでもどう?」

 

八幡「疲れたから寝たいんですけど」

 

陽乃「あらら。じゃあ私は比企谷くんの部屋でコーヒーを飲むことになるわけだ。いきなり部屋に連れ込むなんて比企谷くん大胆だね」

 

八幡「残念ながら今家のコーヒー豆切らしてるんで……帰ると言う選択はないんですか」

 

陽乃「ないね♪それにちゃーんと自前で持ってきてるよ」

 

八幡(……どう足掻いても無駄か)

 

八幡「……わかりましたよ」

 

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公園

 

陽乃「はい。比企谷くん。お姉さんからの餞別」

 

八幡「……どうも」

 

八幡(てっきり店にでも行くのかと思ったが……)

 

陽乃「……公園はよく遊んだ場所なのよ」

 

八幡「……」

 

陽乃「ほんと、よく私の後ろから追っかけてきてたわ。ずーっと……ずーっとね」

 

八幡「……そうですか」

 

【私も……あんな風になれたら】

 

八幡(……文化祭の時……確かに彼女はそう言った……その気持ちは今も変わっていないのかもしれない)

 

陽乃「最近は少し抵抗しようとしてるみたいだけどね」

 

八幡「……」

 

陽乃「でも、だめ。根本にあるものが、本質が変わっていない」

 

陽乃「結局今も誰かの後を見ている……それじゃあ駄目なんだよね。その誰かは……わかってるよね?」

 

八幡「……わかりませんよ」

 

陽乃「ふふ。嘘つき」

 

八幡「……今日は随分とお喋りですね」

 

八幡(普段の彼女は絶対にこんなことは言わないだろう)

 

陽乃「そう?比企谷くんと居ると楽しくってついね」

 

八幡「冗談でしょう」

 

陽乃「ふふふ。冗談であってほしい……の間違いじゃないかな?」

 

八幡「……少なくともそう言っている間は安心ですよ」

 

陽乃「ほんと君も似てるね……雪乃ちゃんに」

 

八幡「別人ですよ。俺とあいつは」

 

八幡(そう。俺とあいつは似ているようで似てはいないのだ。それを俺たちは一年をかけて認識したのだ)

 

陽乃「……その酷く歪な所とかそっくりだよ」

 

八幡「……」

 

陽乃「でも、私は好きだな。綺麗なものほどつまらないものってないものね」ニッコリ

 

八幡「……まぁ俺は綺麗とはかけ離れていますからね」

 

その微笑みは今まで見てきた含みのある微笑みとは全く別のものに見えた

 

雪ノ下陽乃の根本にあるものも本質もまだわからない

 

ただ、その時初めて彼女の何かに触れた気がした

 

【感のいい子供は嫌いだよ】

 

その言葉の真意は未だわからない

 

陽乃「……おいしい?」

 

八幡「……MAXコーヒーは最高ですね」

 

だけど彼女もきっと……手に入らないものを求めている……ずっと、昔から

 

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ブコメは突然に

 

戸塚「はちまーん」

 

八幡「ど、どうした戸塚」

 

八幡(ああ!トテトテと走ってくる戸塚可愛いな!今すぐスマホだして激写したい)

 

戸塚「八幡って映画興味ある?」

 

八幡(ま、まさか!これはあれか!あれなのか!いやもうあれしかないぞ)

 

八幡「も、もちろんだ。よく見るぞ」

 

戸塚「ほんと!?よかったぁ」

 

八幡(やっちゃうの?やれちゃうの?戸塚とデートできちゃうの?)

 

戸塚「実は……映画の試写会のペアチケットがあるんだけどね」

 

八幡「ああ、俺でよければ一緒に……」

 

戸塚「テニス部の練習試合で行けなくなったからよかったら貰ってくれないかな?」

八幡「……」

 

八幡(テニス部顧問恨むぞ。俺と戸塚のドキドキデートを練習試合で潰しやがって)

 

戸塚「……八幡?あ、もしかして予定とかあるかな?来週なんだけど」

 

八幡「あ、いや、何でもないぞ」

 

戸塚「ほんと!?じゃあこれ、楽しんできてね!」

 

八幡「え。あ、ちょ」

 

戸塚「じゃあ僕朝練があるから!」

 

八幡「……どうするんだよ。これ」

 

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昼休み

 

八幡「SF映画……か」

 

八幡(俺もこのタイトルは知っている。以前書籍で読んだこともあるし映画になるなら見てみたい……が)

 

八幡「ペア……か」

 

八幡(……仕方ないから材木座辺りに聞いてみるか)

 

材木座SF映画に興味だと?無論なくはない」

 

八幡「ああ、そう」

 

材木座「だがしかし我にはもっと崇高なものがだな似合うのだ」

 

八幡「アニメね」

 

材木座「流石我が友だ!八幡!」

 

八幡「じゃあいいや」

 

材木座「え。ちょ。八幡?え?これで我の出番終わり?」

 

八幡「いや、だってSF興味ないって言ってるし」

 

材木座「何を言うか!我も物書きの端くれ!興味のないジャンル等ありはしない!」

 

八幡「じゃあ読んだことのあるSF作品あげてくれ。アニメは抜きでな」

 

材木座「ぬぐぅ!お、落ち着け、我が拳!す、スプリットフィンガァァァ」

 

八幡「そんな技はないし、そんなSFタイトルも存在しない」

 

材木座「はぅ!」

 

八幡「……創作頑張ってくれ」

 

材木座「八幡!?はちまーん!」

 

結衣「何やってんの?ヒッキー」

 

八幡「……お前こそ何やってんだ」

 

結衣「じゃん負けして買い出しだけど」

 

八幡「……ああ、それで。つか、多いな」

 

結衣「あー、これ自分の昼も入ってるし」

 

八幡「……そうか」

 

結衣「うん!それじゃ、あたし行くね」

 

八幡「ああ……由比ヶ浜

 

結衣「へ?何?」

 

八幡「……ぁー……いや、何でもない。悪い」

 

結衣「……?わかったぁ。また後でね」

 

八幡「ああ」

 

八幡(……由比ヶ浜を誘おうとも思ったが……あの約束を果たすのに戸塚から貰ったチケットを使うのは何か違う気がした)

 

八幡「……待てよ」

 

八幡(由比ヶ浜と雪ノ下に渡せば解決なんじゃないか。別に俺は書籍で結末は知っているから見なくてもいいし……雪ノ下も恐らく知っている作家の作品だし楽しめるだろ)

 

八幡「……絶対由比ヶ浜途中で寝そうだけどな」

 

八幡「……」

 

八幡(……雪ノ下にも並ぶ読書家はもう一人いるんだけどな……)

 

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相性

 

いろは「せーんぱい」

 

八幡「……」

 

いろは「せんぱーい?」

 

八幡「……」

 

いろは「とうとう頭だけじゃなく耳まで腐りましたか」

 

八幡「おい。別に頭は腐ってないから」

 

いろは「ほらやっぱり聞こえてた」

 

八幡「先輩なんてのは他にもいくらでもいるだろ」

 

いろは「あれ、じゃあ腐ってる自覚はあるんですか」

 

八幡「頭は腐ってないからな。少なくともお前よりかはましだ」

 

いろは「へー?確かに先輩賢いオーラでてますけどそれ基本負のオーラですからね」

 

八幡「何それ強そうじゃん」

 

いろは「いやぁ……褒めてないんですけどね」

 

八幡「その心底引いた顔するのやめろ。ほれで何のようだよ」

 

いろは「いえいえ。今日先輩をお借りしようと思って」

 

八幡「雪ノ下なら部室だぞ」

 

いろは「やだなぁ。雪ノ下先輩じゃないですよ?」

 

八幡「……じゃあ由比ヶ浜だな」

 

いろは「いえいえ。結衣先輩でもないですよ?」

 

八幡「……そうか。平塚先生か」

 

いろは「いや、先輩って年所じゃないですし」

 

八幡「おい。平塚先生が聞いてたら何されるかわからないぞ」

 

いろは「大丈夫です。その時被害に会うのはきっと先輩です」

 

八幡「いや、その理論はおかしい」

 

いろは「という訳で今日の放課後迎えにいきますね」

 

八幡「どういう意味か全くわからないから来ないでくれ」

 

いろは「お断りします♪」

 

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嫉妬

 

八幡「……うーす」

 

結衣「やっはろー!」

 

いろは「先輩おそーい」

 

八幡「……何で出向いてるの」

 

いろは「いや、先輩絶対逃げますし」

 

雪乃「こんにちは」

 

結衣「あれ?いろはちゃんいらっしゃいー」

 

いろは「どうもー。お邪魔してまーす」

 

結衣「邪魔なんてしてないよー」

 

いろは「そうですかねぇー。いやぁ紅茶までご馳走になってすいません」

 

雪乃「二人の分もいれるわ……一色さんはおかわりはいるかしら?」

 

いろは「あ、いいんですかー!ありがとうございますー」

 

結衣「それで、今日はどうしたのー?」

 

いろは「ああ、はい。それよりも」

 

結衣「?」

 

いろは「……先輩と結衣先輩って仲良いですよね」

 

雪乃「……」ピクッ

 

結衣「え!?えええ!?急にどうしたの!?」

 

いろは「いえ、今だって自然に二人揃って来てましたし、まったく違和感なかったですよ?」

 

八幡「同じクラスだからたまたま一緒にきたんだよ」

 

雪乃「そう言えば……いつの間にかよく一緒に来るようになってたわね」ジー

 

結衣「あ、あははー偶然だよ?」

 

八幡(いや、まぁ……あの選挙の時からの流れでいつの間にかそれが当たり前になったんだが……流石に言えんよな)

 

八幡「……そもそも授業が終わるタイミングも同じだし、由比ヶ浜があまり三浦と喋らずにこっち来るなら普通にありえるだろ」

 

いろは「……それもそうですかね」

 

雪乃「……」ジー

 

八幡(ふぇぇ……無言の圧力が恐いよぅ……いや、まじで止めてくれませんか)

 

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困った時の……

 

八幡「……一色のやつ本当にこき使いやがって」

 

八幡(最近あいつに流されまくってるよな……いや、小町的何かを感じるせいなんだけどね……小町?)

 

八幡「小町と行けば解決じゃん」

 

八幡(合格祝いはまだかとせがまれてたし丁度いい。俺は金を使わなくてすむ、小町は映画見れるまさにWIN-WINの関係だ)

 

八幡(そもそも何で最初にその選択が頭に浮かばなかったんだよ)

 

八幡「よし、善は急げだな」

 

小町「へ?映画?」

 

八幡「ああ、偶然チケットが手にはいってな」

 

小町「……お兄ちゃんまさかそれ結衣さんや雪乃さんから貰ったんじゃないよね?」

 

八幡「え……何でそんなジト目されるんですか……可愛いからやめろ?」

 

小町「えへ。ありがとー!……じゃなくてね」

 

八幡「……何故その二人が出たかはわからんが貰った訳じゃない」

 

八幡(その二人からはだが)

 

小町「ふーん……!」ピコーン

 

八幡(あ、これ面倒なやつだ)

 

小町「ぁー!小町来週は大志くんに誘われてたんだったー」

 

八幡「おいこら、ちょっと待て今なんていった!」

 

小町「へ?大志くんと遊びの誘いを……」

 

八幡(何て言うことだ!やはり大志は今すぐ消さなければ!戸塚には悪いがここは小町の監視を!)

 

小町「おーい、お兄ちゃーん」

 

八幡「何処で何時に待ち合わせだ。まさか二人きりとか言う訳じゃないだろうな」

 

小町「何でお兄ちゃんにそんなこと言わなきゃいけないのさぁー。それよりも」

 

八幡「それよりもじゃない……最優先事項だ」

 

小町「ああ、もうめんどくさいなぁー。これ、小町は無理だけど結衣さんや雪乃さんを誘っていきなよ」

 

八幡「……悪いが俺もついさっき来週は用事ができたんだ」

 

小町「ぁー、もう。じゃあお兄ちゃんが二人をちゃんと誘えば来週は断るよ」

 

八幡「よし!本当だろうな!」

 

小町「うんうん。ホントホントー」

 

 

八幡「……やってしまった……」

 

八幡(そもそもあの二人を誘うのが条件ってそれどうなんだよ)

 

八幡「やはり大志を社会的に抹殺した方が……」

 

八幡(……そういえばアイツはうちに受かったのか?)

 

八幡「……まぁ、小町に近づくならば絶対に許さないノートに新たなページが書き加えられるだけだけど」

 

八幡(今度情報収集のために川なんとかさんと接触してみるか?)

 

八幡「……やっぱやめとこ」

 

八幡(絶対に睨まれるし……)

 

八幡(さて、本当に困ったぞ。戸塚には悪いがこのチケットをあの二人に渡す方が手っ取り早いんだが……)

 

八幡「……それだと小町がなぁ」

 

八幡「……」

 

それは多分言い訳だ

 

俺は今二人との距離を詰めるのを恐れている

 

何かが決定的に変わってしまう気がして、その現実から目を逸らしている

 

由比ヶ浜の理想

雪ノ下の理想

俺の理想

 

それらはきっと大きくズレているのだから

 

……それを恐いと思っている自分がいる

 

俺は何時からこんなにも弱くなったのだろうか

 

 

理性の化物だなんてそんなものは嘘っぱちだ

 

 

八幡「……明日の事は明日の俺に任せよう」

 

そんな思考停止どころか放棄をするまで、自分は弱っていたのだ

 

 

囁き

 

陽乃「ひゃっはろー。雪乃ちゃん迎えに来たよー」

 

結衣「こ、こんにちは」

 

雪乃「姉さん……わざわざ学校まで来ないでと何度も」

 

陽乃「しょうがないでしょー。お母さんの命令なんだから」チラッ

 

八幡「……どうも」

 

陽乃「……うん」ニコッ

 

雪乃「……比企谷くん?何か姉さんと暗躍してるのかしら?」

 

八幡「いや、何でだよ」

 

雪乃「……」ジー

 

陽乃「ふふふー、雪乃ちゃんは焼き餅妬いてるんだよ」

 

八幡「は、はい?」

 

雪乃「そんなことある訳がないわ。それと、今すぐ彼から離れなさい」

 

陽乃「ほらー。ムキになっちゃって」

 

雪乃「なってないわ」

 

陽乃「子供みたいな事ばかりしてると、昔みたいになっちゃうよ?」

 

雪乃「っ……!」

 

結衣「……は、陽乃さん!」

 

陽乃「ん?何かなー?」

 

結衣「……き、今日泊まりに行ってもいいですか!」

 

八幡「……はい?」

 

雪乃「……」

 

陽乃「……」

 

八幡(……由比ヶ浜の突発的すぎる発言に俺や雪ノ下は勿論、あの雪ノ下さんまでが呆けていた……由比ヶ浜お前のそれは才能だわ)

 

陽乃「♪」

 

雪乃「……」

 

八幡(由比ヶ浜の提案は結果的に通ってしまった。何故か俺まで付き添うことになったのは想定外すぎるが)

 

結衣「……」

 

八幡「……お前、何であんな提案したわけ」

 

結衣「だ、だって、ゆきのん一瞬様子が変になったし……あれ以上言い争いさせたらいけない気がして……でも、ゆきのんを一人にさせたくなくて……それで、咄嗟に」

 

八幡「……明日普通に学校だぞ」

 

結衣「それは、大丈夫だよ、前もそんなことあったし」

 

八幡「そうですか」

 

八幡(由比ヶ浜なりに考えての発言ではあったわけか……)

 

結衣「……さっきのゆきのん……あの時と同じ顔してた」

 

八幡「……あの時って?」

 

結衣「……サキサキに御両親の事を言われたときと……」

 

八幡「……よく覚えてるな、かなり昔のこと」

 

結衣「……忘れられないよ」

 

陽乃「おーい、お二人さん。なーに二人きりの世界に入っちゃってるのかなぁ?着いたよ?」

 

結衣「な、ななな、なってませんから!」

 

雪乃「マンションの前で騒ぐのは迷惑よ」

 

八幡「いや、それ何処でも迷惑だからな」

 

雪乃「……それもそうね」

 

結衣「フォローしてよゆきのん!?」

 

八幡「それじゃあな」

 

結衣「え?」

 

八幡「……え?」

 

結衣「な、何でそれじゃあになるの?」

 

八幡「いや、俺はこれで帰るつもりだったんだが……」

 

陽乃「折角ここまで来たんだからあがっていきなよ。ね?雪乃ちゃん」

 

雪乃「……そうね。ここまで来て貰っておいてお茶も出さないと言うのはいくら比企谷くんでも不憫ね」

 

八幡「別に気にしなくても」

 

結衣「ヒッキー」

 

八幡「……」

 

結衣「……ね?」

 

八幡「……わかったよ」

 

八幡(変なことにならなければいいんだけどな)

 

雪乃「どうぞ」

 

結衣「お邪魔しまーす!」

 

八幡「……」

 

八幡(この家に来るのも何度目だろうか……そう何度もお邪魔したことがある訳じゃないがその全てに理由があった)

 

八幡(……こんな風に気楽に理由も無しにこの先に踏み込んでいいのだろうか)

 

陽乃「……クスッ」

 

八幡「……なんすか?」

 

陽乃「……めんどくさい事を考えてるでしょ」

 

八幡「……別に」

 

陽乃「ほんとに比企谷くんは比企谷くんだなぁ」

 

クスクスと笑いながら陽乃さんはこちらを見る

その視線がどうもくすぐったかった

 

八幡「……当たり前でしょう」

 

陽乃「……理由ならあるよ」

 

八幡「……はい?」

 

陽乃「比企谷くんは私のお客さん」

 

……だから、この敷居を跨ぐのに理由はいらない

 

そう彼女は言っているのだろうか

 

八幡「……だから、自分は何も気にしてませんよ」スッ

 

陽乃「ふふふ。いらっしゃい。比企谷くん」

 

八幡「……お邪魔します」

 

結衣「……ものが増えたねー」

 

雪乃「……そうね。姉さんが随分と持ってきたから」

 

陽乃「えー?その猫の炬燵とか雪乃ちゃん凄く気に入ってくれたのに」

 

雪乃「……」プイッ

 

陽乃「あー!はぐらかそーとしてる」

 

雪乃「そんなことはないわ」

 

陽乃「それに雪乃ちゃんこっそりとパンさんの……」

 

雪乃「姉さん!」

 

結衣「……こうしてると仲のいい姉妹……だよね?」コソッ

 

八幡「……どうだろうな」

 

この二人の関係を考えると……この光景が取り繕った偽物にも見える

 

だけど……この光景こそ二人が求めた本当の関係だったのかも知れない

 

八幡「……俺には」

 

結衣「……え?」

 

八幡「……いや」

 

少なくとも今のこの光景は偽物のごっこ遊びなんだろう

 

少なくとも……今は……

 

結衣「あんまりこの時間面白いテレビないよねー」

 

雪乃「……面白いテレビ?」

 

結衣「へ?えーっとバラエティとか」

 

陽乃「雪乃ちゃんテレビはニュースと動物系しか見ないもんねぇ」

 

雪乃「べ、別にそんなことは」チラッ

 

八幡「……ぁー俺もバラエティとかはあんまり見ないぞ」

 

八幡(実際には小町がよくかけてるんだが、そんなにまじまじと見ることはあまりない)

 

結衣「ヒッキーはアニメとかだもんね」

 

八幡「その言い方、俺以外のやつに言うと傷つけるかもしれんぞ」

 

八幡(ほんと、比企谷くんってアニメしかみないよねー!とか言ってくる子やちょっと芸能人の名前言っただけで凄く驚く子は何でなんですかね?)

 

結衣「ご、ごめんね?」

 

八幡「いや、俺は傷ついてないし」

 

結衣「そう?……ぁ、このCM最近よくやってるよね」

 

陽乃「そういえば今後映画化するんだってね。小説の方は読んだから展開は知ってるけど」

 

雪乃「……私も読んだわ」

 

陽乃「と言うか雪乃ちゃんの本棚にあったから借りたんだけどねぇー」

 

雪乃「やっぱりなくなってたのは姉さんのせいなのね」

 

結衣「ふぇー、ゆきのんこういうの読むんだ」

 

雪乃「……たまにね」

 

結衣「ヒッキーは?」

 

八幡「……あ、ああ。俺も読んではいる」

 

結衣「ええ……知らないのあたしだけ……」トホホ

 

結衣「……面白い?」

 

八幡「ん……まぁ、そこそこには」

 

結衣「ぅー……気になるなぁ。ゆきのんは見に行ったりする?」

 

雪乃「そうね。でも内容も知っているしわざわざお金を払ってまで行く必要は感じないわね」

 

陽乃「雪乃ちゃん固いなぁ。私は映画も好きだから見たいかなぁ」

 

その映画は偶然にも戸塚に貰ったチケットの映画だった

 

八幡(……三枚あればそのまま出したんだがなぁ)

 

生憎チケットは二枚しかないのだ

 

わざわざ今持ち出す必要は何処にもないだろう

 

八幡(……ほんと、これどうしたもんかな)

 

雪乃「……夕飯作るわね」

 

結衣「あ!あたしも手伝う」

 

八幡「……じゃあ俺は帰る」

 

陽乃「ほいほーい、比企谷くんはここに座ってる」

 

八幡「……いや、だから」

 

陽乃「今夜は陽乃さんが全力でご馳走してあげるから♪」

 

八幡「……そんなわけには」

 

陽乃「今度は私がご馳走するって言ったでしょー?」

 

八幡「……それは」チラッ

 

雪乃「……姉さんが買いすぎたせいで丁度食材が余ってるから貴方も……その……食べていきなさい」

 

陽乃「あっれぇー?そんなこと言っちゃうのー?」ニヤニヤ

 

結衣「……ゆきのん意地っ張りだなぁ」ニコニコ

 

雪乃「そ!そんなことないわよ!」

 

八幡「……」

 

雪乃「……だから……その」チラッ

 

八幡「……わかったよ」

 

雪乃「……ええ」ホッ

 

陽乃「……ご飯おいしかった?」ニコニコ

 

八幡「……まぁ、はい」

 

陽乃「雪乃ちゃんとどっちがよかった?」

 

八幡「え」

 

雪乃「……」ピクッ

 

結衣「あたしも作りましたからね!?」

 

陽乃「あははー。ごめんごめん。でも聞いてみたいよね?」

 

雪乃「……そうね。貴方の感想を聞かせてくれないかしら?」

 

八幡「……いや、その」

 

結衣「あたしも……感想……聞きたいかも」

 

八幡(何時もの空気読みは何処にいったんですか由比ヶ浜さん……)

 

陽乃「さぁ、どうかな?」ニコニコ

 

八幡「……いや、その……」

 

全体的評価でいけば間違いなく陽乃さんが一番旨かった

 

雪ノ下の王道的な味に対し彼女はどの一品も何か手が加えられていた

 

だが、それは味の好みの問題であり、やはり万人に旨いと言われるのは雪ノ下のような品でもある

 

由比ヶ浜だって味はともかく、今までの彼女から考えると恐ろしく上達しているのが目に見えているし、そのためにかなりの時間を費やしたのだとわかる

 

そういった努力を感じるのは由比ヶ浜だろう

 

と、いうかこんなこと言ったら気持ち悪がられるのが目に見えてる、というかこんなこと考えてる時点で気持ち悪い

 

皆旨いでいいだろ、いいじゃん

 

雪乃「……」ジー

 

結衣「……」ソワソワ

 

陽乃「……」ニコニコ

 

八幡「……ぁー」

 

何なんだこの空気、どうしてこうなった

 

八幡「……どの品も旨かったです」

 

陽乃「……えー?そういうんじゃないんだけどなぁ」

 

結衣「美味しい……美味しい……

えへへ」

 

雪乃「……はぁ。比企谷くんらしいわね」

 

陽乃「あれれ。簡単に引き下がるね」

 

雪乃「……次は私のが一番と言わせるだけよ」

 

陽乃「およよ。雪乃ちゃんだいたーん」

 

雪乃「次は負けないわ」

 

八幡(俺帰っていいかなぁ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

陽乃「姉妹丼ってどう?」雪乃「だめよ 」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1441699443/