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陽乃「ふふ、比企谷君の初めて、もらっちゃった♪」【俺ガイルss/アニメss】

 

雪乃「比企谷君を更生させましょう」

 

八幡「はぁ?」

 

雪乃「比企谷君はそもそもその腐った性根を叩き直すために、奉仕部に入ったのだったわね」

 

八幡「一応名目上はそうだな」

 

雪乃「だから具体的にいろいろしてみることにするわ」

 

八幡「ちょっと待て。いろいろとは具体的に何だ」

 

雪乃「細かいことは気にしてはいけないわ」

 

八幡「おい」

 

雪乃「あなたにも協力を頼むわ、由比ヶ浜さん」

 

結衣「えっ、あたしも?」

 

雪乃「比企谷君のためと思って、お願いできるかしら」

 

結衣「ううん、全然いいよ!」

 

八幡「おい」

 

雪乃「由比ヶ浜さん、ちょっと耳を貸して」

 

雪乃(私たちが八幡にキスするしかないわ)

結衣「…………」ポッ

 

八幡「おい、なんなんだよ」

 

結衣「えっと…これもヒッキーのためだし、いいよね」

 

雪乃「そうね。それにこれをすれば比企谷君の荒みきった心も多少は良くなるはずだもの」

 

八幡「だから何の話をしているんだ」

 

結衣「でも、そしたら先にしたほうがヒッキーの初めてを取っちゃうことになるね」

 

雪乃「私としてはこんな男とその……スなんてしたくないのだけれど、しなければならないのならば初めては私が欲しいわ」

 

結衣「あたしも……その……初めてが欲しいな」

 

八幡「……」アセダラダラ

 

 

陽乃「やっはろー?」

 

八幡・雪乃・結衣「「「!?!?」」」

 

雪乃「なんで姉さんがここに!?」

 

陽乃「比企谷君のファーストキス。お姉さんが奪っちゃうねー」

 

 

陽乃「……っていないね」

 

結衣「あれっ!? いつのまにいなくなったの!?」

 

雪乃「まさか存在の薄さのせいで見失うなんて……」

 

陽乃「まぁ……」

 

雪乃「なにかしら?」

 

陽乃「んー、なんでもないよー」

 

陽乃(本当は逃げるの見えてたんだけどねー)

 

陽乃(どうせならこんなところじゃないほうがいいから見逃してあげちゃった♪)

 

陽乃(そこに鞄も何も全部置いてあるから家には帰れないし)

 

陽乃(ふふふ♪)

 

――

――――

 

八幡「はぁ……はぁ……」

 

八幡(本当ならこのまま帰っちまいたいが、持ち物もろもろを部室に置いてきちまったからそれもむずい……)

 

八幡「くそっ、どうなってやがる……」

 

八幡「てかここは……」

 

八幡in the forest

 

八幡(…………)

 

八幡(落ち着け八幡。ここは学校の裏庭とかのはず――)

 

陽乃「見間違いなんかじゃないよ」

 

八幡「!?」

 

陽乃「うふふ♪」

 

八幡「雪ノ下さん……どうして……」

 

陽乃「不思議かな? 比企谷君」

 

八幡「…………」

 

八幡「雪ノ下さん……。あなたは……」

 

陽乃「ズルを、したんだよ」

 

八幡「ズル?」

 

陽乃「うん、ズル」

 

八幡「ズルって一体何を……」

 

陽乃「別にー? ただ比企谷君とキスする相手を私にしちゃっただけだよ」

 

陽乃「雪乃ちゃんとがはまちゃんの二択という『ルール』を破って、ね」

 

八幡「そんなことができるんですか?」

 

陽乃「別にできなくはないよ。でも、『ルール』破った人間には、『罰』がある」

 

八幡「罰……?」

 

陽乃「そう。将棋で二回連続で打っちゃったら負けだし、麻雀でもフリテンで満貫払いでしょ」

 

陽乃「それと同じ、『罰』だよ」

 

八幡「罰ってなんすか。てか、ならなんでわざわざそんなことを」

 

陽乃「そもそも私がなんとも思っていない相手にここまですると思う? それは今日に限らず今まででも」

 

八幡「……ただからかって遊んでるだけなんじゃないんすか」

 

陽乃「んー、まぁ始めはそうだったけどね。今はちょっと違うよ」

 

陽乃「初めて会った時のこと、覚えてる?」

 

八幡「ららぽに行ったときっすよね」

 

陽乃「うん、そう。私、君みたいな子に会うの、初めてだったからね、あれからちょっと興味が出たんだ」

 

八幡「はぁ……」

 

陽乃「比企谷君ってからかうと面白かったし最初は遊びのつもりだったんだ」

 

陽乃「でも、雪乃ちゃんや静ちゃんやめぐりや隼人たちから比企谷君の話を聞いて、君にちょっとだけ惹かれていった」

 

八幡「一体どんな話をしたんですかね……」

 

陽乃「比企谷君が奉仕部でやらかしたこととかは大体知ってるよ。この千葉村でのこともね♪」

 

八幡「やらかしたって……、まぁ、間違ってないんで否定はしないっすけど……」

 

陽乃「でも、一番は文化祭の準備と本番の時かな」

 

八幡「…………」

 

陽乃「あの状況であんな馬鹿なことを考えたとしても、それを実行する人はなかなかいないよ」クスクス

 

八幡「……あれが一番、効率よかっただけっすよ」

 

陽乃「それでも、ね」

 

八幡(そう言って陽乃さんは微笑みを浮かべる)

 

陽乃「それに、あの屋上でのことも聞いた」

 

八幡「…………」

 

陽乃「きっと、あの時なんだろうな。私がそうなっちゃったのは」

 

八幡(スッと俺を見つめる。その目からはいつものような恐怖を感じない)

 

陽乃「比企谷君、私ね……」

 

八幡(強化外骨格のような外面は、もうなかった)

 

陽乃「比企谷君のこと、好きなんだ」

 

八幡「…………」

 

八幡「…………」カァッ

 

陽乃「……相変わらずかわいいな、比企谷君は」クスッ

 

八幡「……ドッキリとかは…………」

 

陽乃「ないよ? それは比企谷君が一番わかってるんじゃないかな?」

 

八幡「……わかんないっすよ」

 

陽乃「そっか。まぁ今までの行いもあるし仕方ないかなー」

 

八幡(その言葉に俺は何も返せなかった)

 

陽乃「うん、しょうがない」

 

八幡(自嘲気味に愚痴を漏らすと、陽乃さんは一歩、俺のもとに踏み込んできた)

 

陽乃「これはね、私のわがまま」

 

八幡(顔をズイと近づけられる。あまりにも唐突すぎて後退することすらできない)

 

陽乃「……ごめんね」

 

――。

 

八幡(陽乃さんの唇が俺の唇に触れる。やわらかい感触につつみこまれた)

 

八幡(陽乃さんは目を閉じていて、その閉じたまぶたの隙間から涙があふれてきた)

 

八幡(涙……?)

 

陽乃「…………」スッ

 

八幡(陽乃さんの唇が離れる)

 

陽乃「ふふ、比企谷君の初めて、もらっちゃった♪」

 

八幡「陽乃さん……」

 

陽乃「名前」

 

八幡「えっ?」

 

陽乃「下の名前で初めて呼んでくれたね」

 

八幡「あ……」

 

陽乃「……ありがと」

 

八幡(涙でボロボロになりながらも、笑ってそう言ってくれる陽乃さんは――)

 

八幡(――とても、綺麗だった)

 

――――!

 

八幡(刹那、強烈な何かが身体中を通り抜けた)

 

八幡「!?」

 

陽乃「そうか……もう、終わっちゃったもんね……」

 

八幡「えっ……?」

 

陽乃「私がズルをしたって言ったよね」

 

八幡「そう、でしたね」

 

陽乃「これが、その『罰』」

 

八幡「……その、罰って?」

 

陽乃「これから君はね、私のことを忘れちゃうんだ」

 

陽乃「今のことだけじゃない。これまでのことも、全部」

 

陽乃「君の中から私は消える」

 

陽乃「ううん、それも違うかな。『比企谷君と私が出会った』という事実そのものが消えちゃうんだ」

 

八幡「なんですかそれ……!」

 

陽乃「『罰』ってね、受ける本人にとって一番つらいものになるの。だから、比企谷君が忘れちゃっても、他の誰もが覚えていなくても、私だけは忘れられずにい続ける」

 

陽乃「それが、『ルール』を破った『罰』なんだよ」

 

八幡「そんな……」

 

八幡(身体に入り込んだ何かが記憶を消し始める。俺の中の陽乃さんに関する記憶がどんどんあやふやになる)

 

陽乃「自分勝手な女の子でごめんね……」

 

八幡「どうしてそこまでして……」

 

陽乃「私は比企谷君には選ばれないからね」

 

八幡「選ばれない?」

 

陽乃「そう、私は君に選ばれない。比企谷君が選ぶのはあの二人のどちらかだから」

 

八幡「選ぶって……俺にそんな権限ないっすよ」

 

陽乃「そう思うかもしれないけどね。お姉さんには何となくわかっちゃうんだー」

 

八幡「…………」

 

陽乃「私の恋は叶わない。それでもせめて、こんな風に気持ちを伝えたかった」

 

陽乃「だから、こんなものに頼った」

 

陽乃「それで比企谷君との今までとこれからを捨てることになったとしても、どうせ結ばれないなら、記憶なんてあってもなくても一緒だしね」

 

陽乃「それに、雪乃ちゃんからまた取っちゃうなんてできないし」ボソッ

 

八幡「えっ?」

 

陽乃「ううん、今のは何でもないよー」

 

陽乃「もう、私のことを忘れ始めてるんじゃないかな」

 

八幡「そんなわけないでしょう」

 

陽乃「そうかな。じゃあ、文化祭で雪乃ちゃんたちとライブをした時、私はなんの楽器だったでしょう?」

 

八幡「そんなの覚えてるに決まってるじゃないですか。……あれ?」

 

八幡(言葉が、詰まる。俺は、思い出せなかった)

 

陽乃「……ほらね」

 

八幡「違います。今のはただの――」

 

陽乃「じゃあ、私は誰のお姉ちゃんなのかな?」

 

八幡「……!」

 

八幡(それすらも記憶がぼんやりとしていて、上手く思い出せない。この人が誰だったのか、それすらも曖昧になる)

 

陽乃「そっか。もうそんなところまで忘れちゃったか」

 

八幡(悲しそうに笑う陽乃さんの姿はとても弱々しい。もうこの人が具体的に俺にどう関わっていたのかも思い出せない)

 

八幡(それでも、この人がいつも強く、畏怖の対象であったというイメージだけは残っていた)

 

八幡(だからそんな姿を見せることから、それほどまでに精神的にきているのだということもわかった)

 

陽乃「どうしてこんなことしちゃったんだろ。いつもの私なら絶対にしないのになー」

 

陽乃「……なんてね。その答えだって全部わかってるよ」

 

八幡「……なんですか?」

 

陽乃「それくらい、比企谷君を好きになっちゃったんだよ。それだけかな♪」

 

陽乃「それ……だ……け……っ」

 

八幡「……!」

 

八幡(もう、どうしようもなかった。いつもの俺なら絶対にこんなことをしない。もしかしたら小町くらいにはするかもしれないが)

 

陽乃「比企谷……君……?」

 

八幡(俺はそのか弱い一人の女の子の身体を強く抱きしめた)

 

八幡「……すいません」

 

陽乃「なんで比企谷君が謝るのかな」

 

八幡「それは……」

 

陽乃「でも、私が嬉しいから別にいいよ」

 

八幡「そうですか」

 

八幡(ふと、大切な何かが崩れ落ちた、そんな気がした)

 

陽○「比企谷君は優しいな、本当に」

 

八幡「そんなこと、ないですよ」

 

陽○「ううん、そうだよ。だから今までいろんな人を助けてこられたんだから」

 

陽○「でも、これからは自分や他の人のことも、もう少し考えないとだめだよ。ま、私は嫌いじゃないけどね」

 

八幡「……うす」

 

○○「うん、わかったならよろしい!」

 

○○「もう、終わりかな」

 

八幡「…………」

 

○○「名前も、忘れられちゃったみたいだし」

 

八幡「……すいません」

 

○○「私が勝手にしたことだから謝らない」

 

八幡「…………」

 

八幡(何も言えない。こういう時に使うべき言葉を俺は一つも知らなかった)

 

八幡(ふと、また唇に柔らかい感触)

 

――――。

 

八幡(さっきよりも長いキスをして、その顔は離れた)

 

○○「どうせなら一回も二回も変わらないよね」

 

八幡(クスッとその人は笑う)

 

陽乃「バイバイ、比企谷君」

 

――

――――

 

陽乃(雪ノ下陽乃比企谷八幡と出会ったという事実が消えた世界を歩く)

 

陽乃(私は、一つだけ嘘をついた)

 

陽乃『どうしてこんなことしちゃったんだろ。いつもの私なら絶対にしないのになー』

 

陽乃『……なんてね。その答えだって全部わかってるよ』

 

八幡『……なんですか?』

 

陽乃『それくらい、比企谷君を好きになっちゃったんだよ。それだけかな♪』

 

陽乃(本当はそれだけじゃなかった)

 

陽乃(私は理由が欲しかった。比企谷君を諦める決定的な理由)

 

陽乃(私と彼との間を完璧に断裂させる何かが)

 

陽乃(そうでもしないと私はきっと諦めきれない。ずっと想いは心の中に残り続けてしまう)

 

陽乃「……やっぱりやりすぎちゃったかな」

 

陽乃(後悔したって仕方ない。こんな風にモヤモヤしているのなら、一体何のためにあんなことをしたのか、わからなくなってしまう)

 

陽乃「……大学にでも行こうかな」

 

陽乃(行けば知り合いが誰かしらいるだろうし、暇つぶしにはちょうどいい)

 

陽乃(きっと、気晴らしにも)

 

陽乃「……あっ」

 

陽乃(こんなことってあり得るのかな)

 

陽乃(あんな風に別れたすぐ後に姿を見かけるなんて)

 

陽乃(比企谷君はいつもと変わらずにその腐った目を携えて、街の中を歩いていた)

 

陽乃(人ごみに紛れて気づかれないようにその横を通り過ぎる)

 

陽乃(……って、そんなことする意味はないんだっけ)

 

陽乃(通り過ぎる一瞬だけ横顔が見える)

 

陽乃(その表情にまた少しだけドキッとして、そして切なくなる)

 

陽乃「やっぱりあんなこと……、いや、ダメダメ」

 

陽乃(いつか隼人に言われたことがあった)

 

陽乃(私は好きなものをかまいすぎて殺すか、嫌いなものを徹底的につぶすことしかしない、と)

 

陽乃(その言葉を借りると、私はいつか比企谷君を殺してしまうのだろう)

 

陽乃(……それでも)

 

陽乃「ねぇ」

 

陽乃(そう、声をかけた)

 

陽乃(注意して聞かない限り、街の喧騒にかき消されてしまうくらい小さな声で)

 

八幡「…………」

 

陽乃(彼はゆっくりと振り返った)

 

陽乃「あ……」

 

八幡「……?」

 

陽乃「え、えーっと……」

 

陽乃(まさか聞こえるなんて思っていなかった。万一聞かれたとしても反応されないように名前は呼ばなかったのに)

 

八幡「あの……なんですか?」

 

陽乃「あー……、な、なんていうか、ちょっとねー」

 

八幡「……?」

 

陽乃「それよりもちょっと変なこと聞くけど」

 

八幡「はい……?」

 

陽乃「私のこと……覚えてるかな……?」

 

八幡「えっ。……すいません、どこかで会ったでしょうか?」

 

陽乃「……っ!」

 

陽乃(ズキッと胸に痛みが走った。わかっていたのに、それでも涙がこぼれそうになる)

 

陽乃(こうなるのを望んでいたのは他でもない自分なのに、矛盾している)

 

八幡「あの……大丈夫ですか……?」

 

陽乃「……うん、もうね」

 

陽乃(『罰』はもう受けた。あとはもう、私が去るだけ)

 

陽乃「ごめんね。人違いだったみたい」

 

陽乃(もう、こんなことはよそう。早く忘れられるようにしないと――)

 

八幡「…………ぷっ」

 

陽乃(いま私……笑われた……?)

 

八幡「ぷぷっ……、くく……っ」

 

陽乃「……?」

 

八幡「……俺、前にある人にこう言われたことがあるんですよ」

 

八幡「『君は理性の化け物だね』って」

 

陽乃「……え?」

 

八幡「本当に頭が良くて勘もいいのに、肝心なところだけ抜けているんですね」

 

八幡「雪ノ下さんみたいな人、忘れられるわけないじゃないですか」

 

陽乃「う……そ……。どうして……?」

 

八幡「わからないですけど、現に今、俺は雪ノ下さんのことを覚えてますよ」

 

陽乃「だってあの時、比企谷君は私のこと……!」

 

八幡「まぁ、あの時は本当に忘れましたけど……。気づいたら思い出してました」

 

陽乃「気づいたらって……」

 

陽乃(ん? ということは最初の時点で比企谷君は私のことを知ってたんだよね? ということは……)

 

陽乃「……比企谷君のいじわる」

 

八幡「そこは、まぁ……、今までのお返しってことで許してください」

 

陽乃「いやだー、許してあげなーい」

 

八幡「えー、それはちょっとないんじゃないですかね……」

 

陽乃「……なんてね♪ 可愛いお姉ちゃんのこと覚えてたから、許してあげる♪」

 

陽乃(言葉とは裏腹に心の中は嬉しいという感情でいっぱいになっていた)

 

陽乃(好きな人が自分のことを覚えていてくれた。それがどうしようもないくらいに、嬉しい)

 

八幡「ですか。雪ノ下さんに恨まれたら報復が怖いんで助かります」

 

陽乃「あっ、でも条件付きね」

 

八幡「えっ? なんか嫌な予感しかしないんですけど……」

 

陽乃「別に大したことじゃないよー?」

 

陽乃「これから私のことを『陽乃さん』って呼ぶこと」

 

八幡「それは無理ですよ……」

 

陽乃「でもあの時には呼んでくれたじゃーん」

 

八幡「あの時はあの時ですよ」

 

陽乃「ちぇー。ケチだなー」

 

陽乃(……あれ、これってもしかして、比企谷君あの時のことも全部……?)

 

陽乃「あのー比企谷君」

 

八幡「はい?」

 

陽乃「まさか……千葉村でのことも……覚えてたり……?」

 

八幡「ん? そりゃもちろん――」

 

八幡「…………」

 

八幡「…………」カァァッ

 

陽乃「あ」

 

八幡「……俺、恥ずかしいんでもう帰ってもいいっすかね」

 

陽乃「私のほうがよっぽど恥ずかしいからね!?」

 

陽乃(あー、本当にあの時の私はどうかしてたー! 泣きながら告白なんて私のキャラじゃないーー!!)

 

八幡「もうあのことはなかったことに――」

 

陽乃「それはダメだよ?」

 

八幡「ですよね……」

 

陽乃(私は、まちがっていた。あんな強引な終りに意味なんてない)

 

八幡「で、どうするんですか?」

 

陽乃(それにいくらあの二人が比企谷君に近しいからと言って、それで私が諦める理由にはならない)

 

陽乃「そうだねー。とりあえずそこらへんの喫茶店にでも入る?」

 

陽乃(欲しいものは何がなんでも手に入れる。それが私のはずだ)

 

八幡「それ、拒否権は――」

 

陽乃「もちろんないよ?」

 

八幡「ですよね……」

 

陽乃(雪乃ちゃんを泣かせたくないならそうならないようにすればいい。私なら、それもできるだろう)

 

陽乃(きっと私が懸念していたことはみんな解決できる。だって私は、雪ノ下陽乃だから)

 

陽乃「じゃあ、行こう?」

 

陽乃(私のより大きくてゴツゴツした手を握る)

 

八幡「雪ノ下さん!? これはちょっと恥ずかし――」

 

陽乃「えー? だってキスまでした仲でしょー?」

 

八幡「普通そういうことこんなところで言いますか!?」

 

陽乃「まぁいいからいいからー♪」

 

陽乃(ようやくここにたどり着けた私の笑顔は、今までよりも輝いていると思う)

 

陽乃(いつか、私が望む未来。それが来る日を信じて)

 

陽乃(私はアスファルトの道を強く蹴った)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元スレ

雪乃「安価で比企谷君を更生させましょう」 八幡「はぁ?」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1431185306/