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八幡「雪乃…俺はお前のことが…好きだ…」 雪乃「…なかなかよく録れてるわね」3/3【俺ガイルss/アニメss】

 

――――…部室にて

 

結衣「やっはろー…あれ?ヒッキーは?」

 

雪乃「彼なら先程平塚先生に連行されたわ」

 

結衣「あ、はは。そうなんだ」

 

「(ゆきのんと二人っきり…)」

 

「(なんかゆきのんがヒッキーのこと好きなのかなーとか考えると気まずい…)」

 

「(聞いた方がいいのかなぁ…)」

 

「(でもゆきのんこの前も凄い毒舌だったし)」

 

「(…)」

 

「(も、もしかしてこれがツンデレ!)」

 

「(この前雑誌に書いてあったけど…何時もはツンツンで時々デレデレ)」

 

「(…でもゆきのんがデレデレしてるのはみたことないや)」

 

「(となるとゆきのんはツンツン…いや、ツンツンもしてないや)」

 

「(ちなみにヒッキーはゆきのんのことどう思ってるんだろーなー…)」

 

「(よくゆきのんのこと『嫌な奴』とかいってるけど)」

 

「(ヒッキーもゆきのんも本音でいっつもぶつかってるけどそういうところは分かんないなー)」

 

「(…思い切って聞いてみるべきかな)」

 

「(で、でもそれで関係が変わるとかやだし)」

 

「(…ゆきのんはそんなことしないかなぁ)」

 

「(きっと『何を言っているの由比ヶ浜さん。あまり人をからかうのはよくないわよ?冗談にも程度というものがあるの』…とかいうだけかもじゃん)」

 

「(聞かないでいるとあたしずっともやもやしてそうだし…)」

 

「(聞くっきゃない!当たってくじけろ…じゃなくて砕けろ!)」

 

結衣「あのさ…ゆきのん」

 

雪乃「えぇ」

 

結衣「ゆきのんってさ…ヒッキーのことどー思ってる?」

 

雪乃「急にどうしたの?具合が悪いのなら保健室にいったほうがいわよ」

 

結衣「いあ、そういうことじゃなくて。ただどー思ってるのかなーなんて」

 

雪乃「(どうしたのかしら)」

 

「そうね…簡単に言うと目がどろどろとした人間としての欠陥品。かしら」

 

結衣「(やっぱり毒舌だ)」

 

「(ってことは本当に好きじゃないのかなぁ…)」

 

「(でもゆきのんって好きな人いても素直には言わなそうだし)」

 

「(も、もっとたんとーちょくにゅーに聞けば…)」

 

「あ、あのさ。ゆきのんは好きな男の人とかいるの?」

 

雪乃「…」

 

「(今日は由比ヶ浜さんの様子が少し何時もとは違う気がするのだけど…)」

 

「(それにしても好きな異性…)」

 

「(…)」

 

「い、いないわよ」

 

結衣「(一瞬どもった!)」

 

「(ってことは好きな人いるのかなぁ)」

 

「(でもゆきのんが誰かを好きになるなんて想像できない…)」

 

雪乃「(これ以上同じような質問が繰り返されるのも面倒だし、私が質問をする側に回ろうかしら)」

 

「ちなみに由比ヶ浜さんは好きな異性はいるのかしら」

 

結衣「えっあたし?!」

 

「その…あたしはいるといえばいるというか」

 

「(ゆきのんもやっぱり興味あるのかっ。意外だなー)」

 

「(ってゆきのんとヒッキーの間柄を確かめるんだった!)」

 

「(流石ゆきのん…忘れるところだった)」

 

「(もっとつっこまなきゃだめか…)」

 

八幡「(…平塚先生に解放されたわけだが)」

 

「(俺のいない間にガールズトークが繰り広げられていた)」

 

「(すごい入りにくい)」

 

結衣 「あのさ…ヒッキーてモテるのかな?」

 

雪乃「…正気で言っているのかしら?あんな劣等生物に靡く女子がいるわけないじゃない」

 

八幡「(おい、女子同士のきゃっきゃした内緒話じゃないのかよ)」

 

「(なんで蚊帳の外の俺に矛先むいてんだよ)」

 

結衣「はは…だよねー」

 

八幡「(認めちゃうのかよ!)」

 

結衣「で、でも良いところもあったり?するかも」

 

八幡「(おぉっ!由比ヶ浜は良いことを言う。もっと俺を褒めろ!)」

 

雪乃「そうね、無駄にしゃべらないところかは。自分の声が人に不快感を与えることを自分で理解しているのね」

 

八幡「(結果的にけなしてるだろ。ってかけなすつもりで最初ちょっと褒める雰囲気だしただろ)」

 

「(なにこの鞭と鞭)」

 

結衣「いや、まー…」

 

八幡「(頑張れ由比ヶ浜!お前なら出来る!もっと良いところあるはずだろ!ほら、えっと、顔…とか)」

 

結衣「でもほら。彩ちゃんもヒッキーと良い友達みたいだし」

 

八幡「(おい!俺のいいところはどうした!もう友達を褒める段階に至ってしまったか!…もうちょっと頑張れよ)」

 

「(他にも色々あるだろ…ほら、可愛い妹がいる。とか…あれ?俺自身は何処へ?)」

 

雪乃「そうね。…戸塚君には少々失礼だけど、彼のどこに褒める点があるのか…ソクラテスでも分からないでしょうね」

 

八幡「(哲人持ち出すなよ。多分彼なら俺の長所を見抜けただろうし)」

 

「(ほら、無知の知みたいに…無長所が長所!というわけである)」

 

結衣「そくらてす?」

 

雪乃「ソクラテスというのは古代ギリシャの…(ry」

 

八幡「(あれ、何時の間にか歴史の授業になっていた)」

 

「(やはり雪ノ下とではガールズトークなんて成立しないのだろう)」

 

「(さて、そろそろ入るか)」ガラッ

 

結衣「…で、でもさ。あたし…ヒッキーのこと少しかっこいいなーとか思ったりしたりして」

 

八幡「‼」

 

八幡「(慌てるな、俺よ。今由比ヶ浜はなんといった?)」

 

「(俺の記憶が正しければ、こいつは俺のことをものすごくカッコいいといった。記憶間違いじゃなければ)」

 

「(無論その点に関してはうなずける。俺はカッコいい…言われたことはなかったが)」

 

「(だからちょっとおバカな事で有名な由比ヶ浜の口が滑る、なんてこともないとはいえない)」

 

「(…)」

 

「(ふぅ。ちょっと落ち着いてきたところで…)」

 

「(マジかよっ!)」

 

「(マジでリアルで俺カッコいいって言われなかった?聞いてた?聞いてましたか皆さん)」

 

「(もうすこしで俺のカッコいい談義になりそうだったよ!部屋に入るタイミング間違えちゃったよ!)」

 

「(しかし流石の俺もまさかソクラテスから俺がかっこいいという話になるとは…)」

 

結衣「ふぇっ、ヒッキーッ?!」

 

「(も、もしかして今のきかれた?!)」カァァッ

 

「(ウソッ?!マジで?!どうしよっ!)」

 

「(な、なんか言わなきゃ)」

 

「い、いまのチョーウソ!チョージョーダン!もうマジで!あり得ないからカッコいいとか!マジでキモイから!」

 

八幡「(すごい言われようだな。もう少し手加減してくれてもばちは当たらないと思うぞ?)」

 

「…」

 

「(にしても褒められたことがないからどう対応すればいいのかがわからない)」

 

雪乃「(い、今由比ヶ浜さんは比企谷君のことをかっこいいといったのかしら)」

 

「(まさか由比ヶ浜さんの口からそのような言葉が出るなんて)」

 

「(もしかしたら由比ヶ浜さんは比企谷君に特別な感情を…)」

 

「(伏兵ね。無論私の仮定にすぎないのだけれど)」

 

「(でも今由比ヶ浜さんは必死に否定しているし)」

 

「(でもおそらくそれは照れ隠しよね)」

 

「(となるとやはり。)」

 

結衣「(うぅーあぁーどーしよ)」

 

「(もぅチョー恥ずいし)」

 

「(なんかヒッキーもポカンって感じだし、ゆきのんはなんか考え始めるし…)」

 

「(すごい気まずい…)」

 

八幡「(俺は今この状況でどうすべきなのか。正解は定かではない)」

 

「(最良の方法として、多くのラノベや漫画の主人公のように電波の受信精度をぐんと下げる必殺技…)」

 

「(『え、今なんて言った?良く聞こえなかったんだけど』を発動させることができる)」

 

「(しかしもう既にあの発言から時間もたっていることだし…発動のタイミングを逃してしまった)」

 

「(他にはだろー俺超かっくいいだろ、とかナルシストを演じることもできる)」

 

「(そうすれば由比ヶ浜の発言も軽いものになるから、特に問題なく和やかな日常へと戻れる)」

 

「(無論雪ノ下がいることで和やかなんて夢のまた夢…のさらにまた夢なのかもしれないが)」

 

「(どうする。ここは葉山っぽく『そんなことないさ』とか爽やかに言ってみるか?)」

 

「(あーでも俺今ミント味のガムとか持ち合わせてないから無理だ)」

 

「(葉山の声は元からミント味だが俺は道具に頼らなければならない)」

 

「(…マジでどうしよ)」

 

結衣「(な、なんかいわなきゃだよね)」

 

「(…)」

 

「(今…なのかな)」

 

「(絶対今の聞かれちゃってるわけだし)」

 

「あのさヒッキー…」

 

八幡「(由比ヶ浜が少々顔を赤らめ、うつむきがちに…)」

 

「(こ、これは!)」

 

「(『女:あのね… 男:うん。ドキドキ 女:チャックが開いてるよ! 男:えぇーっ』)」

 

「(といった使い古されたオチへのフラグ!)」

 

「(しかし俺のチャックはしまっている)」

 

「(となると他の皆がずっこけるようなオチはなんだ?)」

 

「(服に値札が付いてるとか、顔に落書きされてるとか…)」

 

「(しかし今の俺にはどれも当てはまらない…よね?)」

 

「(もしかして俺顔に落書きされてる?…急に不安になってきた)」

 

「(マジかよー。もしかして休み時間に寝た振りのつもりが本当に寝ちゃった時か)」

 

「(すると俺凄く恥ずかしいぞ)」

 

「(にしてもそしたら凄いなこの二人。笑わないでたえるとか)」

 

雪乃「(もしかして由比ヶ浜さん…)」

 

結衣「あたしヒッキーのこと…好きなんだよね」

 

八幡「やっぱり顔に落g…あれ?」

 

「(ど、どいうことなんだこれは)」

 

「(はたから見れば今俺は青春のど真ん中にいるんじゃないだろうか)」

 

「(え、だって今の告白ですよね?)」

 

「(がしかし、リアルで俺に告白イベントが起きるなんてあり得ない…)」

 

「(これもまたいつかの『あの、本気にしないでくれる。罰ゲームだし』という展開に違いない)」

 

「(由比ヶ浜は時々雪ノ下とそういったゲームをしてるそうだし)」

 

「(あっぶね、もう少しであの日のトラウマを再放送するところだった)」

 

「(今朝思い知ったのを忘れたか八幡。女の行動は知略だ)」

 

「(…にしても心臓がバクバクいってやがる。俺の体よ…この正直者めっ)」

 

「(今こそ俺は『なんて言った?』を発動すればいいのだ)」

 

「(いくら部室が静かだろうとそれは関係ない。これは主人公だけに許された…)」

 

「(…俺って主人公?)」

 

「(うぬぼれすぎたぁっ!)」

 

「(主人公でもなくハーレムなんて夢にすら見れない俺があんな高等スキルを使用してうまくいくはずがない)」

 

「(そうとなると俺はどうやってこの場面を切り抜ける?)」

 

「(…いや、よくよく考えてみれば俺自身がどうにかして切り抜ける必要は最初から皆無じゃないか)」

 

「(俺はただ立ち尽くしたまま、ちょっと照れたような演技でもしながら『罰ゲームでしたっ』の台詞を待っていればいいだけなのだ)」

 

「(一体何を慌てていたのだ)」

 

結衣「いやっ、急になんだこいつ、っとか思うかもしんないけど」

 

「その…結構本気で」

 

「入学式の日に犬助けてくれた時からなんとなく気になり始めてたりして」

 

「い、一年生の時はなんか恥ずかしくて、しかもヒッキーなんか孤立してたから近寄りにくくて」

 

「でも二年生なって同じクラスになったから話してみようとか思ってて…」

 

「奉仕部のおかげで結構仲良くなれた気もして…すごい嬉しかった」

 

八幡「(…シリアストーンに巻き込まれるんじゃない八幡。過去のイベントを思い出せ)」

 

雪乃「…」

 

結衣「でさ、中々伝えられなかったんだけど。いいきっかけかなーって。たはは」

 

「いつも自分を犠牲にして皆を助けるヒッキーかっこいいなーって。私には絶対無理だなって」

 

八幡「(それは褒めすぎだ。俺には失うものがないから出来る。それだけの話だ)」

 

「(にしても流石というべきか、中々の演技だ。俺の中の『偽告白のリアル度ランキング』でも楽々TOP10に入る)」

 

「(…本当の告白なんじゃないかと勘違いしそうだ)」

 

結衣「…ということです。な、なんか恥ずいね」

 

八幡「(さぁこい。残るは一つの決め台詞だ)」

 

結衣「…ということで。あたしはヒッキーのことが好きです」

 

八幡「…」

 

結衣「…」

 

八幡「(中々こないぞ。俺が反応を示すまで待つつもりなのか?)」

 

雪乃「…」

 

八幡「(…やはり俺が慌てふためくのを待っているのか)」

 

「(ではここで逆襲にでようではないか)」

 

「よーろしくお願いしまぁすッ!」シュバッ

 

「(どうだ!ここまで潔く頭を下げながら受け入れられたらいっそ清々しいだろう)」

 

「(慌てふためいても笑われ、断っても生意気だといわれ、ためらいがちに承諾しても爆笑されるのだ)」

 

「(故にこの奥義『相手が呆気にとられるほどの清々しさ』こそこの状況において最善のオプションなのだ)」

 

雪乃「!」

 

「(ま、まさか受け入れるなんて)」

 

「(比企谷君の性格を考慮すると必ず断ると思っていたのに…どうしましょう)」

 

「(早急に手を打たなければ由比ヶ浜さんと比企谷君がカップルになって…)」

 

「(部室で接吻などをするようになって…)」

 

「(そ、そんなの絶対に駄目よ!)」

 

「(ど、どすればいいのかしら…)」

 

結衣「え、お願いしますって…えぇっ!」

 

雪乃「…」

 

「ちょっと待って」

 

八幡「(…もしかして脅迫発動か?にしてはタイミングが悪いが)」

 

雪乃「その…由比ヶ浜さんと比企谷君の交際を認めるわけにはいかないわ」

 

結衣「(…ってことはゆきのんやっぱり)」

 

八幡「(ここで頑固親父の登場か?)」

 

「(ここで場をかき乱すとは…不確定要素の投入で俺を混乱させるつもりか!)」

 

「(…ならば!)」

 

「何故ですか雪ノ下さん!うちの家訓は『来るものは拒まず、去る者は追わず』なんです!」

 

「滅多にないこんなチャンス、無駄にはできません!」

 

「(流石の雪ノ下も俺のこの態度は予想外だろう…)」

 

雪乃「チャンスの点なら別に問題はないわ」

 

結衣「…」

 

「(なんかヒッキーの態度もおかしいけど…)」

 

「(ライバルになるかもしれないけどゆきのんの背中を押すべきかなぁ…)」

 

「なんで?」

 

雪乃「その…部員同士の交際というのは…」

 

結衣「(素直じゃない!)」

 

「いいじゃん。ゆきのんには迷惑かけないからっ」

 

雪乃「駄目よ…だって」

 

「その…」

 

「私だって」

 

「…」

 

「比企谷君のことが…好きなのだもの」カァッ

 

八幡「(!)」

 

「(ま、まさかそうくるとは)」

 

「(さ、流石。メンタルが揺らぎに揺らぎまくっている…)」

 

「(まさかあの雪ノ下に告白されるとは…形だけとはいえその…どきどきするといいますか)」

 

「(普通に照れるといいますか…)」

 

結衣「(やっぱりそうだったんだ!)」

 

「(…正直ゆきのんがライバルじゃ大変かもしれないけど)」

 

「(あたしまけないもん!)」

 

雪乃「勿論であった頃は本当に嫌いだったのだけれど…」

 

「徐々に貴方という人を理解してゆくうちに…好きに…なってたのよ」

 

八幡「(言い淀む雪ノ下がここまで可愛いとは…戸塚といい勝負だ)」

 

雪乃「だ、だから由比ヶ浜さんと比企谷君の交際なんて…嫌なのよ」

 

「分かる…かしら?」ジーッ

 

八幡「(そ、そんな目で見つめるな!すんげー可愛い)」

 

「(抱きしめてビンタされるよくある展開になりそうだ!)」

 

雪乃「貴方には話してなかったけど…ビデオの内容は貴方のプロポーズなの」

 

八幡「(実は知っちゃってるけど)」

 

雪乃「それだってその…」

 

「貴方のことが好きだから…やったのよ…」

 

八幡「うっ」

 

「(お、抑えるんだ俺。理性を保つんだっ!)」

 

「(もしかしたら雪ノ下の真なる目的は俺に雪ノ下を襲わせ、裁判を起こし、俺を刑務所に送ることかもしれない)」

 

「(可愛いよ。だけど我慢だ八幡!)」

 

雪乃「私の気持ち…分かってくれるかしら?」

 

デビル八幡「(もー襲っちゃえよ。案外受け入れてもらえるかもよ?大体抱きつくくらい大したことねーよ)」

 

「(それにあいつがあーいってんだから後のためのいいわけだって沢山あるだろ?)」

 

「(滅多にあるチャンスじゃねぇぞ?お前が自分以外の生物に抱きつけるのなんて)」

 

八幡「(生物って…俺動物にも嫌われてんの?そりゃカマクラはなついてくれないけどさ)」

 

デビル八幡「(運が良ければちょっとHなことだってできるかもよ?)」

 

「(さっさとやっちゃえよ)」

 

エンジェル八幡「(落ち着きなさい)」

 

八幡「(おぉエンジェル。俺を正解へと導いてくれ)」

 

エンジェル八幡「(由比ヶ浜さんだって告白してきたわけですから、二人とも抱いてしまったらいいじゃないですか)」

 

「(無論抱くというのはハグという事ですよ?ふふふ)」

 

八幡「(そーだった。俺のエンジェルとっくの昔に堕ちて悪魔よりも悪魔だった)」

 

「(ふふふじゃねーよ)」

 

八幡「(マジでどういうつもりなんだラブコメの神よ…)」

 

「(とうとう俺の不遇具合が可哀そう過ぎて泣いちゃったか?)」

 

「(今までも時々パンツを見せてくれたり戸塚を降臨させてくれたりしていたけど…)」

 

「(ここまでとなると)」

 

「(こんな急にラブコメ王道ルートに方向急転換されても俺はそこまで順応能力が高くない)」

 

「(正直言って混乱しすぎてエンジェルとデビルが喧嘩を始めてるくらいだ)」

 

「(そして問題なのはどちらが勝っても俺は理性をなくして女の子に抱きついちゃうってこと)」

 

「(…三年で卒業できなくなるかもしれない)」

 

――――…

 

陽乃「あ、ちょっと放送室貸してねーッ」

 

めぐり「え?陽乃先輩?」

 

――――…

 

結衣「(な、なんかヒッキーすごい揺らいでる!)」

 

「(ま、負けられないし!)」

 

「あ、あたしだってヒッキーのことチョー好きだから!」

 

雪乃「比企谷君…」テクテク

 

「大好きよ」ギュッ

 

八幡「(しゃ、シャツの端を持って上目づかいは反則だろ!)」

 

「(反則技のせいかLv.5の『超』よりもLv.4の『大』の方が破壊力が高い)」

 

雪乃「だから私と…その…」

 

「付き会ってk…」

 

ガガーッ!

 

陽乃:えーマイクのテスト中

 

雪乃「…姉さん?」

 

結衣「へ?」

 

八幡「ん?」

 

陽乃:放課後を楽しく過ごすためのミュージックをかけたいと思いまーす

 

タイトルは…『ぼっちのプロポーズ』っ!

 

もう抱腹絶倒間違いなしだから、開けたスペースに移動することを推奨するわ

 

腹筋がなくてモテない男子諸君は必見…じゃなくて必聴!

 

あ、でもお腹がつる危険性があるから、気をつけてねっ♪

 

八幡「…もしや!」

 

雪乃「まさか…」

 

陽乃:では行きまーす

 

…ザザッ…雪乃…俺と…け、け、けけ、結婚してくれ!…   

 

八幡「なぁっ!」

 

雪乃「…」カァッ

 

結衣「ヒッキー…サプライズプロポーズだ!」

 

八幡「ちげーよ!お前ビデオのこと知ってるだろ!」

 

「…これ全校放送だよな」

 

「(あのアマっ…何しちゃってくれてんだ)」

 

陽乃:はい。

 

どうだったかな?

 

こんな暑い日にはぴったりの一曲だったと思うなー

 

だってものすごく寒いじゃない、この一曲

 

(我が妹ながら)

 

ちなみにこの曲を歌ったのは…

 

八幡「(それだけは言わないでくれ!)」

 

「(それさえ言わなければ今の液体窒素といい勝負をするんではないかという寒さの台詞を言ったのが俺だと言うことはばれない!)」

 

「(なぜなら校内のほとんどの人間は俺の声を知らないから!)」

 

「(悲しい理由だが真理だ…)」

 

陽乃:H・Hさん。

 

皆も自分の周りのH・Hさんを探してみてねーっ♪

 

八幡「(けしかけるな!もーまじでお願いします!)」

 

「(しかし校内のほとんどの人間が俺の名前を知らない!)」

 

「(今日からエイト幡ってなのろ)」

 

八幡「(悪は絶対に許さない!このエイトマンが!…なんつって)」

 

「(駄目だ、現実と向き合いたくがない故に想像および妄想が膨らんでゆく)」

 

「(これが夢オチだったらどれだけ良かったことか)」

 

「(非難轟々だろうけど)」

 

「(どうしよ、引きこもっちゃおっかな高校二年にして)」

 

「(そして引きこもり高校生とか書いちゃおっかな)」

 

――――…

 

陽乃「(ごめんねー比企谷君)」

 

「(ちょっとやりすぎちゃったかな?)」

 

「(でもまぁ比企谷君なら大丈夫か)」

 

「(名前だって公表しなかったし)」

 

「(あー楽しかった)」

 

「(本当なら奉仕部の皆のリアクションを見てから帰りたいんだけど…)」

 

「(顔出したら怒られちゃうからなー)」

 

――――…

 

八幡「(…さらば、うららかな高校生活よ)」

 

「(それとも葉山に全ての罪をかぶってもらうという手も…)」

 

「(ほら、あいつなら何しても笑顔一つで許してもらえそうだし。主に女子達に)」

 

「(女子さえ封じ込めれば大した影響はない)」

 

「(俺は最強ボッチだ。中学のころと同じような失敗を繰り返すはずがない)」

 

「(どうにかしてでも悲劇を再現させるわけにはいかない)」

 

雪乃「安心して比企谷君。これからは私が…貴方のことを守るから」

 

結衣「あ、あたしだって!」

 

「ほら、世界が敵になってもあたしは味方的な?世界の中心で愛を叫ぶ的な?」

 

八幡「(まだ続いていたのか)」

 

「(それよりも惨劇の回避方法を…)」

 

「(まず第一の方法は…雪ノ下と本当に付き合う)」

 

「(そうすれば万が一にも告白の主が俺だと言う事が気付かれても)」

 

「(俺は嘲笑されるどころか褒めたたえられるだろう)」

 

「(…さて、次の案は)」

 

「(…あれ?もう終わり?もうちょっと頑張ってよ俺)」

 

八幡「(いや、希望を捨ててはいけない。考えるんだ)」

 

「(…)」

 

雪乃「あら、由比ヶ浜さん。貴方に比企谷君が守れるのかしら?」

 

「知性、運動能力、人望、財力…全てにおいて私のほうが優れていると思うのだけれど…」

 

結衣「あ、あたしだって…少しくらいは…りょ、料理とか練習してうまくなってきてるし!」

 

「他には…」

 

八幡「(由比ヶ浜にだって雪ノ下よりも優れているところはあるさ…おっぱいとか)」

 

「(ってなにをしているんだ。今は桃色な妄想に浸る時ではない)」

 

「(…もう二度と喋らない…とか。…いや、俺が哀れ過ぎる)」

 

「(他には…もし『あのさぁ「結婚してくれ」っていったの比企谷だよな』)」

 

「(とか言われたら『は?結婚じゃくて決闘っていったんだぜ?』)」

 

「(と誤魔化す。…それはそれで変か。『女子に決闘とかサイテー』とか言われるかもしれないし)」

 

「(あ、俺が散々使用されてきた奥義『罰ゲームでしたぁ!』を俺が使うと言う手もある!)」

 

「(…駄目か。そんな和気藹藹とゲームをするような友達がいない。すぐにぼろが出る)」

 

八幡「(陽乃さんを連れてきて『さっきの告白は袴田博士によるものでした!』とかいわせる)」

 

「(…のは無理だな。彼女を俺が動かせるわけがない)」

 

「(くそっ!このままじゃバッドエンドしか待ってねぇ!諦めたらその時点て試合終了だろ!)」

 

「(…うん。今の台詞中々主人公っぽかった。努力して勝利して友情をはぐくんでそうだ)」

 

「(でもこの台詞言ってるのって主人公じゃないか…)」

 

「(ん、そうだ。また体が入れ替ったこと全校生徒に伝えれば…)」

 

「(うん、これも噂好きの友達が必要だから俺には無理)」

 

「(八方塞じゃねぇかよ)」

 

結衣「それにほら!気持ちとかも大事だし!」

 

雪乃「その点でも貴方に負けているつもりはないわ」

 

結衣「だってあたしヒッキーのことは…結構前から気になってたし」

 

雪乃「時間なんて関係ないわ。大切なのは今の気持ちなのよ」

 

結衣「今だって好きだし!」

 

雪乃「その点では私だって同じよ。貴方以上に、といってもいいと思うわ」

 

結衣「そ、そんなの分かんないじゃん!」

 

雪乃「あら?では貴方は彼の為に何ができる?」

 

結衣「なんでも!」

 

八幡「(どうする俺。俺が何かしらの方法をとらなければ終わらないぞ)」

 

「(しかし絶体絶命の状況でどうする?)」

 

結衣「ゆきのんだって今までは毒舌ばっかだったじゃん!」

 

雪乃「私なりの…照れ隠しよ」

 

由比ヶ浜さんだって時折比企谷君の心をえぐるじゃない」

 

結衣「わ、わざとじゃないもん!」

 

八幡「(とするとお前は天性の地雷処理班だなおい)」

 

「(…あー駄目だ。すごい勢いで自分の思考がそれてゆく)」

 

平塚「比企谷っ!」ガラッ

 

八幡「うぉぅっ」

 

「どうしたんですか?」

 

平塚「今の放送…君の声だったよな」

 

八幡「(面倒くさいが一から説明するしかないだろうな)」

 

「(すでに全校放送されてるんだからいまさら弱点の存在を隠したってしょうがない)」

 

「これこれしかじかなんですよ」

 

平塚「そ…そうか」

 

「…心臓に悪いからやめたまえ」

 

八幡「だから俺じゃないですって」

 

平塚「ところで…お前たちを何をやってるんだ?」

 

結衣「先生…」

 

雪乃「今由比ヶ浜さんに私の方が比企谷君の…その、恋人としてふさわしいことを証明しているんです」

 

平塚「…」

 

「ちょっと待て。状況がうまく飲み込めない」

 

「比企谷…お前雪ノ下に催眠術でもかけたのか?いくら人ごいしくなったとしてもこれは見過ごせないな」

 

八幡「は?別に俺は何もやってないというか、こいつらが遊んでるだけというか…」

 

「それよりも今俺は忙しいんですよ」

 

「(そうか、平塚先生は俺の声だと気づいてしまったか)」

 

平塚「その、君たちは急にどうしたんだ?」

 

結衣「その…さっきヒッキーに告白したらゆきのんも告白して…」

 

平塚「告白…だと?なんだその甘酸っぱい響は。そんなワードが私の日常に…いや、私は関係ないか」

 

平塚「そうか…告白か…」

 

「(こ、このまま比企谷はどちらかと付き合うのだろうか…)」

 

「」オホン

 

「お、お前ら。少し落ち着いて比企谷を再度見つめなおしたらどうだ?」

 

「奴の希望としては将来は専業主夫というわけだが…君たちはそれでいいのか?」

 

結衣「まだ具体的なこととか良く分かんないけど…うん」

 

雪乃「そのようなことは既に考慮してあります」

 

「その上で私は…好き…なんです」

 

平塚「うっ」

 

「(思いのほか二人とも本気のようだな)」

 

「し、しかしだな奉仕部内での交際というのは…なぁ?」

 

「高校生では…少し早すぎないか?もう少し経済力とかをつけてからの方が色々と都合も…」

 

雪乃「先生…そのような曖昧模糊な説明では言いたいことが分からないのですけど」

 

平塚「いや、つまりだな」

 

「ほら、勝負も決着がついていないわけだろ?」

 

「だから交際というのは少し…」

 

結衣「勝負?あたしそんなことしてないけど…つまりあたしは関係ない?」

 

平塚「いや、その由比ヶ浜も一応奉仕部の一員なんだろ?」

 

「とするとなぁ…あまり推奨はできないな」

 

雪乃「先生…反対の意図は汲み取れましたが」

 

「理由が明確じゃないので却下します」

 

平塚「却下…か」

 

「い、いやでもな、ほら、専業主夫などを希望している比企谷には君たちはあまりふさわしくないんじゃないか?」

 

「既に経済力もあるような年上の女性の方がふさわしいと私は思うんだが」

 

雪乃「別に彼が専業主夫になると決まったわけじゃありませんし」

 

「勿論彼の希望としてはそうなのかもしれませんが、人は変われないという事はありません」

 

「私が…変えて見せます」

 

結衣「あ、あたしだって!」

 

平塚「そ、それは立派な志だな」

 

「…」

 

「って待て。」

 

「考えても見ろ。もし恋の悩みを抱えた生徒が奉仕部を訪れた際にお前らがいちゃいちゃしているのを見たら…」

 

「きっと深いショックを受けるんじゃないか?」

 

雪乃「それは…あり得ますけど」

 

平塚「そ、そうだろ?」

 

「となるとやはり奉仕部内交際というのは…」

 

雪乃「分かりました。あまり気は進みませんが、校内では極力いちゃつかないようにします」

 

結衣「な、なんかゆきのんがもう付き合ってるみたいな感じになってるけど違うからね!」

 

平塚「…」

 

「…いや、なら付き合わなくても」

 

沙希「比企谷っ」ガラッ

 

八幡「うぉっ…」

 

沙希「今の告白って…あんただよな…」

 

八幡「(何、俺の声ってそんな特徴的なの)」

 

「(殺気は誰にもばれないと思ってたけど実は全校生徒に一発でばれてる感じ?)」

 

「(いやーこまるなー有名人って…いやマジで)」

 

「いや、だからな、俺じゃないんだって」

 

「体が入れ替わった時があったろ?これこれしかじかで…」

 

沙希「そ、そういうことか」

 

「そんなことなら早く言え」

 

八幡「(言っただろ今。これより早くなんてあり得ないだろ)」

 

平塚「お、おぉ川崎」

 

「お前も一言いってくれないか?」

 

沙希「…何をですか?」

 

平塚「実はこいつらが比企谷の取り合いをしてるんだ」

 

沙希「取り合いって…はぁっ?!」

 

平塚「すでに告白もしたらしい」

 

沙希「告白っ…」

 

「あ、あんた達さぁ。よ、良く考えろよ?」

 

雪乃「既に熟考したわ」

 

結衣「あたしだって本気だもん」

 

沙希「…で、でもよ。ほら、あいつあんな奴だぞ?」

 

雪乃「あんなって抽象的ね。何にせよ、貴方よりは比企谷君について知っている自信があるわ」

 

平塚「そ、それだったら私も知ってるぞ?」

 

沙希「で、でも。…なんだ?雪ノ下が付き合うなんて他の奴らが色々と…」

 

雪乃「他人の事情なんて気にしていて話しょうがないわ」

 

「これは私と比企谷君の問題なのだもの」

 

沙希「そ、そりゃそうかもしんないけど…」

 

雪乃「平塚先生はまだ奉仕部の顧問だからわかるとしても」

 

「貴方がこの問題にかかわってくる理由なんてないはずよ」

 

「平塚先生に無理強いされたのなら、遠慮せずに帰っていいわよ」

 

沙希「いや、別に関係なくはないというか…」

 

雪乃「あら、どうしてかしら?」

 

沙希「いや、別にそれといった理由があるわけじゃないけど…」

 

結衣「(こ…これはもしや!)」

 

雪乃「なら平塚先生の言葉に縛られることもないわ」

 

沙希「いや、なんだ。比企谷が誰かと付き合うのは…あたしもその…」

 

結衣「(や、やっぱり)」

 

「(ヒッキーと川崎さんって何時の間にか仲良くなってたんだ!)」

 

沙希「少し嫌だというか…」

 

平塚「ん?」

 

雪乃「…それは…どうしてかしら?」

 

沙希「だから…」

 

結衣「…」

 

沙希「あたしも…比企谷のことが少し気になると言うか…」カァッ

 

平塚「!」

 

「(まさか川崎も伏兵だったとは…)」

 

雪乃「…それは、いいかえると貴方も比企谷君のことが好きという事かしら?」

 

沙希「ん…まぁ。そんな感じ…」カァッ

 

結衣「(や、やっぱり)」

 

「(うぅ、ライバルがどんどん増えてく…)」

 

「(しかもなんか勝てそうじゃないし!)」

 

「(でもあきらめちゃだめ!)」

 

雪乃「(まさか川崎さんも比企谷君のことを…)」

 

「(彼という人間を本当に理解している人がこれほどにもいるなんて…正直いって予想外だわ)」

 

「(それでも比企谷君を譲るわけにはいかないわ)」

 

平塚「(ど、どうする)」

 

「(消火しようと水をまいたら誤って油をまいていたようだ)」

 

「(しかし川崎までもを惚れさせるとは…)」

 

「(何時の間にそんな男になっていたんだ…)」

 

「(意外だ。まさしく意外だ。この点に関しては全く心配していなかったがゆえに気づくのが遅れてしまった)」

 

「お、お前ら。まだ高校生だぞ?」

 

雪乃「別に高校生で交際をするなんて特別なことでもないでしょう」

 

「幼稚園生でも『○○ちゃんと付き合ってる』なんてませた子供もいるようですし」

 

平塚「し、しかしだな。奉仕部がやっぱり…」

 

沙希「ってことは奉仕部に入ってないあたしなら問題ないってことですよね」

 

平塚「(…開き直ったな。先程までとは態度がガラリと変わった。くっ)」

 

雪乃「あら川崎さん…積極的ね」

 

沙希「う、うっさいっ!」カァッ

 

「(あーもぅあたしなんであんなこと言っちゃったんだろ)」

 

「(でも雪ノ下とかが比企谷と付き合いはじめるとか…ないし)」

 

平塚「(どうすれば鎮火できるんだこれは)」

 

「(流石に比企谷意外の生徒を殴るわけにもいかないしな…)」

 

八幡「(なんか言い争っているようだが。俺は俺では青春を謳歌出来るかがかかってるってので忙しい)」

 

「(いや、そりゃどの道ぼっちキングな俺に青春を謳歌なんて出来ないわけだけどさ)」

 

「(自分でキングって名乗ってるし。しかし傲慢でも謙遜でもない)」

 

「(それよりも川なんとかさんまでもが声が俺のものであることに気付くとは)」

 

平塚「お前ら、お、落ち着くんだ」

 

「休戦状態に入る、というのはどうだろう」

 

結衣「せっかく今告白したのに…後戻りできない的な?」

 

平塚「もうそろそろで学校も終わるし…な?」

 

雪乃「ならもう少しでこの二人も諦めるでしょう」

 

沙希「はぁ?諦めるとかあり得ないし」

 

平塚「(い、勢いが強すぎる…)」

 

平塚「(も、もしこの三人の中の一人と比企谷が付き合う事になったら)」

 

「(公衆の面前でキスとかするわけで…)」

 

「(無論私の前でもおかまいなく…)」

 

「(…)」

 

「(そ、それはいかん!私の私情どうこうではなく倫理的にというか…)」

 

「(一般常識的にというか)」

 

「(やはりどうにかしてこの三人を落ち着かせなければ)」

 

「(そして出来れば比企谷を諦めさせたいわけだが)」

 

「(それは中々難しいだろうな)」

 

「(比企谷を蔑むのもためらわれるし)」

 

「(乙女の恋心とは無敵だと聞くし)」

 

「(ま、私だって乙女を卒業したつもりはさらさらないがな)」

 

「(…)」

 

「(今のは少し空しかったか…)」

 

平塚「おいお前ら。少しは落ち着け」

 

「一番大切なことを見失ってはいないか?」

 

「比企谷の気持ちだよ」

 

「無論君たちの気持ちも等しく大切だともいえるが…」

 

「もし比企谷が君達三人には全く興味がないとするならばこの話し合いは全く無意味という事になるじゃないか」

 

雪乃「それはそうですね」

 

沙希「まさか先生が恋愛を語るなんて…」

 

平塚「…少々失礼だな」

 

「無論私だって恋愛は語るさ」

 

「君たちは知らないだろうがこれでも私は数々の修羅場をくぐりぬけて来た女なんだぞ?」

 

「私も昔は中々の悪女だった…若気の至りという奴かな」

 

「恋愛にはもう飽き飽きしたといってもいい」

 

「だから結婚できないんじゃなくてあえて今はしないんだ」

 

「分かるか?」

 

雪乃「結局辿り着きたかった結論はそれですか?」

 

平塚「いや…少し話がそれた」

 

結衣「で、でもさっき最初に告白した時ヒッキーあたしに『よろしくおねがいします』って」

 

平塚「(そんなこと言ったのかあいつは)」

 

「し、しかし今では条件が違うだろう?」

 

「雪ノ下も川崎も告白したんだ。あいつの心だって揺れているかもしれん」

 

「だから議論を始める前にあいつにこの四人中の誰かと付き合う気があるのかを確認したほうがいいんじゃないか」

 

「(おそらく比企谷は首を横に振るだろう)」

 

「(そうすれば万事解決だ)」

 

「(うんうん)」

 

雪乃「…三人ですよね?」

 

平塚「お、おぉっと!た、単なる数え間違いだ。ひ、比企谷まで頭数に入れてしまった。いやー…はは」

 

結衣「(ヒッキーは誰が好きなんだろう)」

 

「(そういう話しは全然したことないから分かんないや)」

 

平塚「(しかしもし比企谷がこの中の一人にひそかに思いを寄せていたとしたらどうする)」

 

「(瞬時にカップルが成立してしまうではないか)」

 

「(それはまずい)」

 

「(し、しかし比企谷が私を…)」

 

「(な、何を考えてるんだ私は。生徒と教師だぞ。全く、最近疲れがたまっているせいだな)」

 

「(となると…質問そのものを先延ばしにする必要がありそうだ)」

 

平塚「しかしどうやら比企谷はシンキングタイムにはいっているようだから…」

 

「質問をするのは後日に、という事でどうだろう」

 

雪乃「別に今でもいいと思うんですが」

 

平塚「いや、結論に急ぎ過ぎると言うのも良くない」

 

「いったん心を落ち着けてからの方が良いだろう」

 

「最低でもこの中の二人はショックを受けることになるだろう…」

 

「故にその準備期間を用意した方がいいんじゃないか?」

 

「果報は寝て待てというじゃないか」

 

結衣「(もしヒッキーがゆきのんか川崎さんを選んだら…)」

 

沙希「(ま、待てよ)」

 

「(もし比企谷があたしを選んだとしたら…その…付き合うわけだよな)」

 

「…」カァッ

 

「(べ、別にすぐ付き合わなくても問題はないよな)」

 

「(と、友達からみたいのもあるわけだし…ん、これは振る時の台詞か…)」

 

八幡「(ふむ。この調子だと材木座や戸塚も俺の声だと言う事に気付いている可能性がある)」

 

「(も、もしかしたら葉山グループの面々も!)」

 

「(…あいつら簡単に情報漏洩しそうだし)」

 

雪乃「今きいてしまったほうがこれ以上の諍いや口論も未然に防げるわけですし…」

 

「善は急げ、ですよ先生」

 

平塚「そりゃ急いださ」

 

「しかし…急いだが故の失敗というのもあるのだよ雪ノ下」

 

「一度逃してしまうと次は中々こないぞ」

 

雪乃「…何の話をしてるんですか?」

 

結衣「ゆきのんは…怖くないの?」

 

雪乃「先程も言ったと思うけど…人は不変ではないの」

 

「もし比企谷君が私を選ばなかったとしてもそれが終わり、というわけではないわ」

 

結衣「…ゆきのんはやっぱりかっこいいね」

 

平塚「特にこちらが焦りを見せると余計に遠のいてゆくらしいぞ」

 

「焦りは禁物だ」

 

「こうして気長に煙草でも吹かしながら待っていたほうが良いという事だ」

 

「しかし一向にその気配がないのは…おかしい」

 

雪乃「…先程から先生の話は少しずれている気がするんですが」

 

雪乃「これ以上話していても埒があかなそうなので、私が代表して彼に尋ねてきます」

 

平塚「…」

 

「(これ以上雪ノ下に何を言っても無駄だろうな…)」

 

「(後は比企谷が想像通りの答えをしてくれることを祈るしかない!)」

 

結衣「(なんか怖いなぁ)」ドキドキ

 

沙希「…」

 

雪乃「比企谷君?」

 

八幡「(そろそろ材木座あたりが来そうな予感だが)」

 

雪乃「比企谷君」

 

八幡「…なんだよ。ドッキリ大成功か?隠しカメラはどこだ?」

 

雪乃「…一体何のことを言いているのかしら」

 

「それよりも比企谷君」

 

八幡「(材木座来ないかなー…)」

 

雪乃「あなた、好きな女性とかいるの?」

 

八幡「好き嫌いはするなと…」

 

雪乃「では気になる女性でもいいわ」

 

「それとも大好きな女性とか」

 

「いくら好き嫌いをしないにせよ程度の違いはあるでしょ?」

 

八幡「うぐっ」

 

「(こういう恋愛トークは日ごろから避けて来たのだが…)」

 

「(だってどう転んでも俺損しかしない気がするし)」

 

「(しかし今日の雪ノ下はなんか強気だし…答えるまで解放してくれそうにない)」

 

「(『いねーし』とか言っても『もし誰かと付き合わないと死ぬとしたら?』とかそういうこっちが困る質問もあるし)」

 

「(まったくマジで困るよねあーいうの。最近は会話に参加してないから全く聞かないけど)」

 

「(『はぁ?付き合うなら死んだ方がましだし』なんて常套句もあるけど…)」

 

「(相手が雪ノ下だと『じゃぁ死になさい』なんて言われかねない)」

 

「(そしてその後の精神への猛攻で本当に死んじゃう気がする)」

 

「(一番無難な答えはなんだろうか)」

 

「(…ここで正直に答えるが案外妥当なのかもしれない)」

 

「(そうすればこの話題は終わるし、今後も同じような会話は行われないだろう)」

 

「(八幡よ…男を見せるときじゃないのか!)」

 

「(正直に言う時が来たのではないか!)」

 

「(…)」ゴクリ

 

「えっとだな…」

 

雪乃「…」

 

結衣「…」

 

沙希「…」

 

平塚「…」

 

雪乃「…」

 

結衣「…」

 

沙希「…」

 

平塚「…」

 

彩加「八幡!」ガラッ

 

八幡「戸塚…」

 

彩加「今放送聞いたんだけど…八幡は雪ノ下さんと付き合うの?」

 

八幡「(こ、これは必死で弁明せねば!戸塚が離れていいたら俺は死ぬ!)」

 

「違うんだ戸塚!俺はただあの女魔王雪ノ下の計略にはまってだな…」

 

「これこれしかじか」

 

彩加「そ、そうなんだ。びっくりしたー」

 

「八幡と雪ノ下さんが付きあうのかと思った…そしたら八幡僕とは遊んでくれなくなるのかなーって」

 

八幡「(恥ずかしがりながらの上目づかい…俺はもう死んでもいい)」

 

八幡「(おい俺よ。こんな状況にいてこのままでいいのか!)」

 

「(ここで何もしないなどというチョイスを選択するなど…男としてあり得ない)」

 

「(…ってことで)」

 

「よし。と、戸塚。今日の放課後どこか遊びに行かないか?」

 

「(うわー凄いドキドキする。これがデートに誘う、というやつか)」

 

「(もうホントに不性動脈。おそらく鉄砲水顔負けの勢いで血液が噴出されているに違いない)」

 

彩加「え…うんっ。いいよ」ニコッ

 

八幡「(おぉ、頭の中で実況が『GOAAAAAAL』と叫び続けている)」

 

「(国民栄誉賞受賞しちゃうんじゃない俺。その勢いで政治家とかになっちゃう?)」

 

「(俺は決めた。戸塚の為になら主夫を捨ててサラリーマンでも公務員にでもなってやる!)」

 

「(まさかぼっちを自称しちゃってる俺にこんな感情が芽生えるなんて…思ってもいなかった)」

 

「(あーもーだって凄い可愛い。そのうち一家に一台戸塚の時代がくるんじゃないだろうか)」

 

「(無論戸塚が唯一無二の存在で在る今はだれにも渡さないがな)」

 

「(動物園のふれあい広場なんか戸塚一人の足元にも及ばないな)」

 

キーンコーンカーンコーン

 

八幡「ん、学校も終わったことだし…行くか」

 

彩加「うんっ」

 

八幡「(俺は細かいことは気にしない器の大きな人間になろう…うん)」

 

「(細かいことを気にしていたら埒があかない)」

 

「じゃっ」ガラッ

 

結衣「帰っちゃった…ってゆーか帰る直前になんかヒッキーが爽やかっぽく笑ってた!」

 

雪乃「…」

 

沙希「…」

 

平塚「(さ、流石は比企谷。想像以下の男だった)」

 

「(しかしこれでこいつらも諦めがつくだろう)」

 

雪乃「…彼の戸塚君への依存度の高さは問題ね」

 

沙希「あ…あぁ」

 

結衣「で、でもほら。彩ちゃんは男の子でしょ?」

 

雪乃「でもあの男が戸塚君と『男友達』として付き合っているのかどうかは分からないわ」

 

「…少し矯正の必要があるかもしれないわね」

 

「もしかしたら過去のトラウマから女子と深くかかわることを避けているのかもしれないし…」

 

沙希「つまりはどうすればいいんだ?」

 

雪乃「…そうね。簡単にいえば…誘惑かしら」

 

「彼から女性への恐怖心を取り除かないと」

 

沙希「(…その恐怖心の少しはあんたが関与してる気がするんだが)」

 

平塚「(…話が変な方向へと進んでいる気がするが)」

 

雪乃「ということで」

 

「しばしの間、彼に女性を受け入れる覚悟が出来るまで同盟を組まない?」

 

「現時点での目的は同じなんだから」

 

結衣「いいよ。まずはそれが大事だよね」

 

沙希「気はそんなにのらないけど…まぁいいよ」

 

平塚「(な、なんだこの展開。少年誌の熱い展開に見えないこともないが…向かっている先が比企谷籠絡だぞ!)」

 

「(どうすればいいんだ)」アワワ

 

雪乃「ではこれから頑張りましょう」

 

結衣「うんっ」

 

沙希「あぁ」

 

平塚「…」

 

 

 

 

 

 

比企谷「女子達の人格が入れ替わる…だと?」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1372782298/