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大志「姉ちゃんに何の不満があるんすか!?」 京華「はーちゃんも許さないよ!!」【俺ガイルss/アニメss】

 

大志「姉ちゃんが嫁イビリされてるって聞いたんすけど」

 

八幡「え?」

 

八幡(『姉ちゃんに内緒で話がある』と大志から連絡があったのは今朝のことだ。休日だったので午後に会う約束をし、待ち合わせの喫茶店で合流するなり言われたのはそんな言葉だった)

 

八幡「え、え? 嫁イビリ? てことはウチの親にか?」

 

大志「姉ちゃんに何の不満があるんすか!? あんな日本一美人で完璧な女性他にいないっすよ!」

 

京華「事と次第によってははーちゃんも許さないよ。世界一美人のさーちゃんを悲しませるなんて」

 

八幡「落ち着けシスコンども。あと宇宙一可愛いのは小町だから」

 

大志「お兄さん、ブーメラン頭に刺さってますよ」

 

八幡「ばっかお前これは髪の毛だよ小町とお揃いだろ」

 

 

八幡「で、何だって? 沙希が嫁イビリされてるって?」

 

大志「まあはっきりそう聞いたわけじゃないんすけど、この前それを臭わすような言動がありまして」

 

八幡「マジか…………すまん、正直心当たりが全然ない。時々俺の実家に二人で行ってるけどそんな様子はないぞ? いや、四六時中一緒にいるわけではないんだが」

 

八幡(そもそもイビる理由がないよな。よく聞くのは溺愛してる息子を取られたからってのだが、どう贔屓目に見たって俺は溺愛されてないし)

 

八幡「その、沙希が何て言ってたのか聞いていいか? 俺自身知らぬ間にあいつを傷付けていたかもしれんし」

 

大志「はい。この前ウチに俺や姉ちゃんが集まった時なんすけど」

 

八幡「ああ、俺が出張で一泊いなかった日だな」

 

大志「その時にですね…………」

 

大志『どうしたのさ姉ちゃん。今日は珍しくずいぶん飲むじゃない。何かあったの?』

 

沙希『大志…………』

 

大志『もうみんな寝ちゃってるし俺でよかったら話聞くよ。お兄さんや親に言いづらくても俺に言えることだったらだけどさ』

 

沙希『うん…………あいつの実家のことなんだけどさ…………』

 

大志『お兄さんの? まさか嫁イビリされてるとか? なーんて…………』

 

沙希『う…………』

 

大志『え、まさか…………』

 

沙希『ち、違う! そんなんじゃないって! あたしのためを思ってくれてのことだから!』

 

大志『いや待って。それよく言い訳に使われるフレーズだよね?』

 

沙希『そ、そうじゃないって! あいつの実家じゃあたしがしたいことをさせてくれないし、子供出来ないのもプレッシャーに感じてるけど、あたしが勝手にそう思っているだけだから……………………』

 

大志『それ駄目なやつじゃん! お兄さんは知ってんの?』

 

沙希『ううん、あいつには心配かけたくないし…………それに、本当にいい人たちだからさ…………』

 

大志『でも!』

 

沙希『ごめん、あたしもう寝るね。今の話は忘れて』スタスタ

 

大志『あ…………』

 

大志「…………ってことがありました」

 

八幡「マジか…………」

 

大志「姉ちゃんは酔ってる時の記憶ってあんま残らないから次の日からはケロっとしてましたけど、俺はどうにも忘れられなくて。で、京華と相談してお兄さんに話を聞こうってことに」

 

京華「わかった? 反省した? じゃあ今から一発入れるよ」

 

八幡「待てやめろ。喫茶店でいい歳した大人が女子高生にぶたれてわんわん泣く姿を見たいのか? 警察を呼ばれた上に俺が捕まるぞ? その振り上げた拳を下ろすんだ」

 

京華「そりゃ見たくないけど…………」

 

大志「というか今の感じだとお兄さんは何も知らないみたいですしね。今度からちょっと注意していてほしいんですけど…………」

 

八幡「いや、こういうのは早めに解決した方がいいだろ。今から俺んち行くぞ。沙希に直接聞く」

 

大志「え」

 

八幡「あいつの問題は俺の問題だ。聞いた以上知らんぷりはできないからな」

 

京華「はー、お熱いことです」

 

大志「でもお兄さんには言うなって釘刺されてるんすよね」

 

八幡「それは沙希の様子がおかしいことに気付いた俺が無理矢理聞き出したことにする。いや、気付かなかった俺が何を言ってんだって感じだがな」

 

大志「姉ちゃんは今家にいるんですか?」

 

八幡「ああ。家の掃除をするからって。せっかくの休日なのに、あいつ身体を動かしてないと落ち着かないらしい」

 

京華「あー、さーちゃんて昔から家事したりみんなの世話したりで忙しかったもんね。ホントいい姉を持って幸せです」

 

八幡「んじゃ行くか」

 

八幡(俺は注文していたコーヒーを一気に飲み干し、伝票を掴む)

 

 

大志「姉ちゃんごめん。突然来ちゃって」

 

沙希「いいよ別に。もう掃除も終わったし夕飯作るまでは暇だから。でもどうしたの?」

 

八幡「ちょっとお前に話、というか聞きたいことがあってな」

 

沙希「何さ改まって」

 

八幡(沙希が俺達の分のお茶を淹れ、ソファーに座ったところで話を切り出す)

 

八幡「お前、俺に隠してることないか?」

 

沙希「…………!!?」

 

八幡「個人的な秘密じゃなくて、俺達二人にも関わることだ。その表情は心当たりがあるみたいだな」

 

八幡(やっぱり俺の実家の連中に何か言われたのか…………)

 

沙希「…………ごめん」

 

八幡「別に怒ってない。でも悩みがあるなら相談くらいはしてくれよ。こう見えても人助けの経験はそれなりにあるんだぜ」

 

京華「まるで自分からやってるみたいな言い方だけどそれ奉仕部だよね。大体は依頼じゃない」

 

八幡「うっせ。で、話してくれるか?」

 

沙希「でも、もう過ぎちゃったことだし…………」

 

八幡「いや、今からでも遅くないだろ。これから改善していけば」

 

沙希「改善て…………今更意味ないでしょ。もうみんなあんたを見ちゃった後なんだし」

 

八幡「…………」

 

沙希「?」

 

八幡「すまん。話が噛み合ってないと思う。お前は何の事を言ってるんだ?」

 

沙希「え? 近所の奥さん達にあたしがあんたのことをべた褒めしまくったから実物を見て拍子抜けされたって話じゃないの?」

 

八幡「全然違う何それ怖い」

 

大志「姉ちゃん、お兄さんの事をのろけるのまだやめてないんだ…………」

 

京華「昔から散々聞かされたもんねー」

 

八幡「ちょっと待って初耳。ちっとも知らなかったんだけど」

 

大志「そりゃ本人には言わないっすよ」

 

沙希「あ、なんだ違うの?」

 

八幡「そうじゃなくてほら、俺の実家関係で」

 

沙希「う…………」

 

八幡(沙希は表情を曇らせる。今度こそビンゴのようだ)

 

沙希「ごめん。でもあたしのことはいいから」

 

八幡「そういうわけにはいくか。俺とお前は何だ? 夫婦だろ。悩み事だってなんだって分かち合うものなんだよ」

 

沙希「うん、ごめん…………勝手なことしちゃって…………これからは相談するね」

 

八幡「おう。じゃ、これからどう対応するか考えるか」

 

沙希「えっ?」

 

八幡「えっ?」

 

京華「…………なんかまた噛み合ってなくない?」

 

沙希「もしかして…………あんたの昇進祝いに食べた高級肉、実家からの差し入れって言ったけど実はあたしのお金で買ったのがバレたって話じゃないの?」

 

八幡「違う! でもそんなことしててくれたのかありがとう!」

 

大志「てか姉ちゃん、何でわざわざそんなことを…………」

 

沙希「だ、だって、あたしがあたしの手でお祝いしてあげたくて…………でも八幡なら高いお金出したら絶対自分も払うって言うし」

 

京華「はいはいごちそうさまごちそうさま。もうのろけはお腹一杯だから」

 

大志「というかもうぶっちゃけて聞きましょうよ。変なすれ違いはまどろっこしいっす」

 

八幡「だな…………沙希、お前ウチの実家に不満があるだろ」

 

沙希「!? な、何でそれを……あっ」

 

八幡(沙希は慌てて口を塞ぐがもう遅い)

 

八幡「大志から無理に聞き出した。この前自分ちに帰った時の記憶はあるか?」

 

沙希「え……あ…………あ、あれは違うの! 誤解だって!」

 

八幡「誤解って…………どういうことだ?」

 

沙希「えっとね、あんたんちに行くとさ…………」

 

 

比企谷母『よく来てくれたわね沙希ちゃん。ご飯食べて行くでしょ? 今日はちょっと豪勢にしちゃうから』

 

沙希『あ、て、手伝います』

 

比企谷母『いいのよゆっくりしてて。いつも手の掛かる八幡の世話をしてくれてるんだから』

 

沙希『でも』

 

比企谷母『いいからいいから。あっちで男共の相手をしてあげて』

 

沙希『は、はい』

 

 

沙希「…………って感じで」

 

八幡「あー、沙希が来るときってメシがやたら豪勢になるもんな」

 

沙希「で、リビングであんたとお義父さんとお話とかしてるとさ…………」

 

 

比企谷父『しかし沙希くんは相変わらず美人だね。大丈夫か八幡、ちゃんと愛想を尽かされないようにしてるか?』

 

八幡『本人たちの前で聞くなよ…………まあ努力はしてるつもりだ』

 

沙希『いえ、その、とてもよくしてもらってますから』

 

比企谷父『はは、そいつはよかった。そうそう、この前旅行先で美味い干物を見つけたんだ。そのまま食べてもいいし、沙希くんなら上手く料理できるだろう。用意しとくから持って帰ってくれ』

 

八幡『お、サンキュー』

 

沙希『ありがとうございます。な、何か作ったら持って伺いますので』

 

比企谷父『あー、いいよいいよ。二人で食べてくれ』

 

比企谷母『ご飯できたわよー』

 

八幡『お、んじゃ運んでくるか』

 

沙希『あ、あたしも…………』

 

比企谷父『いい、いい。沙希くんは座っててくれ』

 

沙希『で、でも』

 

比企谷父『男は家事をしないからこういう時に手伝っとかないと母さんにどやされるんだ。それにいつも手の掛かる八幡の世話をしてくれてるんだからウチに来たときくらいはゆっくりしてくれ』

 

 

沙希「…………みたいな」

 

八幡「ええー…………俺ってそんなに手が掛かるかあ…………?」

 

京華「いや、突っ込みどころはそこじゃないでしょ!」

 

大志「いい人じゃん! ご両親ともめっちゃいい人じゃん!」

 

沙希「だ、だから言ったでしょ。本当にいい人たちだって」

 

京華「じゃあ『したいことをさせてくれない』ってのは…………」

 

沙希「人に任せっぱなしで自分は何もしないってのは落ち着かなくて…………何か手伝おうとしても断られるし、あたしを気遣ってくれてるんだからあまり強く言えないし…………」

 

八幡「何だそりゃ…………あ、でも子供出来ないことにプレッシャー掛かるってのは? それに関しては何か言われたのか?」

 

沙希「う、うん。お義母さんと二人になった時のことなんだけど…………」

 

 

比企谷母『はい、お茶が入ったわよ』

 

沙希『あ、ありがとうございます…………その、ごめんなさいお義母さん』

 

比企谷母『あら、どうしたの突然』

 

沙希『その、なかなか子供出来なくて…………一応不妊検査もして問題はないって言われてるんですが…………』

 

比企谷母『まあ、そんなこと気にしてたの? いいのよ別に。今どき子無し夫婦なんて珍しくもないでしょ。そもそもうちは跡取りがどうのっていうような大した家柄じゃないんだし』

 

沙希『で、でも』

 

比企谷母『それにあなたにはもう充分なものを受け取っているからね』

 

沙希『え?』

 

比企谷母『八幡のお嫁に来てくれたことよ』

 

沙希『あ…………』

 

比企谷母『あの子は色々ひねくれてたからね、一生独身なんじゃないかと思ってたくらいだし。あなたみたいな子が来てくれたんだからそれで充分よ。これからも八幡をよろしくね』

 

 

沙希「…………という会話がね」

 

大志「全然問題ないじゃん! 何が不満なの!?」

 

沙希「だ、だって、そんないい人なんだから尚更孫の顔を見せてあげたいって思うじゃない…………」

 

京華「つまりさーちゃんが勝手にプレッシャー感じてるだけなんだね」

 

大志「なんだよ全く…………」

 

沙希「だ、だから大志にはあの事は忘れてって言ったでしょ。あたしが一人で空回りしてるだけなんだから」

 

八幡「沙希、こういうのは授かり物なんだからお前が気に病む必要はないさ。そりゃ子供出来たらいいとは思うけど、ずっとお前と二人きりというのもそれはそれで悪くないし」

 

沙希「八幡…………」

 

八幡「だろ?」

 

沙希「…………うん」

 

京華「もしもーし」

 

大志「見つめ合って二人の世界に入ってるけど俺達の存在を忘れてませんかー?」

 

八幡「なんだまだいたのかお前ら。もう問題は解決したんだしさっさと帰れ。俺達は今からイチャイチャするんだ」

 

大志「ひどっ!」

 

京華「もう怒った! 今日は夕御飯もここで食べてくから!」

 

八幡「ちっ」

 

沙希「ふふっ」

 

 

八幡「でも実際大丈夫か? 最近体調良くないときあっただろ?」

 

大志「え、そうなの?」

 

沙希「うん。勝手にプレッシャー感じて一人でストレス溜めちゃってたからね……ちょっと生理不順になっちゃってるし…………でももう大丈夫。今日の話をしてすっきりしたから」

 

京華「身体には気を付けてね、本当に」

 

沙希「ん、わかってる。じゃ、そろそろ夕御飯の支度でも…………うっ!」

 

八幡(立ち上がったところで突然沙希は口元を押さえ、台所に駆けていった。吐き気か!?)

 

八幡「だ、大丈夫か沙希!? やっぱり体調良くないのか? 病院行くか?」

 

沙希「八幡、その、気のせいかもしれないけど…………」

 

八幡「何だ、どうした!?」

 

沙希「あ、あたし、今、酸っぱいものが欲しい気がする…………」

 

八幡「え…………」

 

大志「それって」

 

京華「まさか」

 

 

八幡(休日もやってる近所の産婦人科で見てもらったところ、やはり沙希は妊娠していた。それを両の実家に知らせるとクリスマスと正月と誕生日が一気に来たような大騒ぎになってしまった)

 

八幡(おかげで土日はちっともゆっくりできなかったがそんなのは些細なことだ)

 

沙希「みんなすっごい喜んでくれたね」

 

八幡「ま、一番嬉しいのは俺だけどな。これからは特に体調に気を遣ってくれよ」

 

沙希「うん。この前お酒飲んじゃったけど大丈夫かな…………」

 

八幡「医者に相談してそれくらいなら平気って言われたんだろ? 気にする方が身体には毒だぜ」

 

沙希「そうだね…………ね、八幡」

 

八幡「何だ、沙希」

 

八幡(沙希はしばらく俺を見つめたあと、すっと目を閉じる。俺は顔を寄せてそっと唇を合わせた)

 

八幡「愛してるぜ、沙希」

 

沙希「愛してるよ、八幡」

 

 

 

 

 

 

 

 

大志「姉ちゃんが嫁イビリされてるって聞いたんすけど」八幡「え?」

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