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風太郎「い、いつも自分でしてるのか? 」三玖「……してるよ///」1/2【五等分の花嫁ss/アニメss】

 

らいは「おにーちゃん!朝だよ!起きてー!ご飯できたよー」 

 

違和感に気がついたのは朝起きてからだ。 

 

風太郎「らいは。顔に0って書いてあるぞ」 

 

らいは「ゼロ?」 

 

風太郎「ああ。デカデカと大きな字で」 

 

らいは「お父さん、本当?」 

 

勇也「あ?何も書いてねぇよ。勉強しすぎて目ぇ悪くなったんじゃねーか」 

 

おかしい。目をこする。 

 

らいはの顔に書いてあった数字はだんだん薄くなっていった。 

 

らいは「お兄ちゃん、寝ぼけてる?」 

 

風太郎「いや、確かにゼロ……おなにーの回数がゼロって顔に」 

 

らいは「おなにー?」 

 

勇也「ぶっ!何言ってんだ風太郎!」 

 

らいは「?」 

 

風太郎「あ、いや、忘れてくれ」 

 

 

親父から拳骨を食らったのはガキの頃以来だった。 

 

風太郎「手加減を知らねえんだから……クソオヤジ」 

 

タンコブが出来た頭を撫でながら、俺は学校へ向かった。 

 

寝ぼけていたのだろうか。らいはの顔に確かに、1週間の自慰回数が浮かび上がっていた。 

 

ガラガラヘビの鮮やかな縞模様が誰に教わらずとも危険だと認識できるように、俺はあの数字の意味をなにかに教わる事なく、直感的に知っていた。 

 

まだ夢うつつだ。馬鹿なことは忘れよう。どうやら、定期テストの勉強で根を詰めすぎたらしい。ここのところ、睡眠時間が平均3時間を切っている。 

 

一花「おっはー。フータロー君、顔色悪いけど大丈夫?」 

 

通学路でばったり一花と会った。 

 

風太郎「ん?」 

 

またあのときの感覚だ。らいはの顔に、数字が浮かんできた時と同じだ。 

 

一花の顔に数字がゆっくりと浮かび上がってきた。 

 

 

風太郎「8回!?」 

 

一花「え?何が?」 

 

風太郎(1週間で8回はかなり多いんじゃないか?1日1回以上……こいつ、なんて時間の無駄使いをしていやがる) 

 

一花「さっきから私の顔ジロジロみて、どうしたの?見惚れちゃった?あはは」 

 

風太郎「いや、何でもない。忘れてくれ。時に一花。お前、昨日はちゃんと勉強したよな。勉強したノートみせてみろ」 

 

一花「うっ。いやー、アッチの方が忙しくて。ごめんっ!今日はちゃんとやるからっ」 

 

風太郎「アッチってどっちだ!?」 

 

一花「最近また仕事が忙しくて……えへへ、また新しい映画に出れることになったんだ」 

 

風太郎「労働基準法では未成年者の労働は22時までと決まっているんだが。夜はたっぷり時間があるだろ」 

 

一花「もーっ、たまには休んでもいいじゃん」 

 

風太郎「家帰ってからナニした!教えろ!」 

 

一花「相変わらずノー・デリカシーの名を欲しいままにする質問だね・・・」 

 

風太郎「勉強しなきゃダメだ!定期試験2週間前だぞ!直前に追い込まれて勉強するより、日頃からの習慣づけが大事なんだ」クドクド 

 

一花「はいはい」 

 

風太郎(反省の色が見えないな) 

 

風太郎(もしかして、こいつらが成績悪いのは、己の快楽に耽っているからじゃないか?) 

 

風太郎(そうならば他の姉妹も確認しなければ!) 

 

風太郎「悪い、一花!急いで学校へ行くぞ!」 

 

風太郎(もしかしたら、これがこいつらの成績改善につながるヒントになるかもしれん!) 

 

一花「ちょっとまってよー!フータロー君、突然どうしたの!?」 

 

 

風太郎「はぁーっ、はーっ……急ぎすぎた……」 

 

風太郎(一花とはどこかではぐれたようだ) 

 

四葉「あれ?上杉さんも朝練ですか?汗だくで走って来たんですねっ!」 

 

校門の近くで、ランニングする四葉とばったり遭遇した。 

 

風太郎「あ?お前、何やってるんだ?」 

 

四葉「何って、駅伝の練習……はっ」 

 

風太郎「お前!あれだけ、テスト前は部活をするなと言ったのに!また赤点だぞ!」 

 

四葉「ご、ごめんなさ~い、上杉さん!べ、勉強はちゃんとしていますから!ご安心を!文武両道、質実剛健、それが最上級学年の中野四葉であります!」 

 

風太郎「本当に勉強しているんだろうな?」 

 

四葉「信じてくださいっ!この真っ直ぐな瞳を!」キラキラ 

 

風太郎「うーむ」 

 

四葉の顔をじっと見つめると、ゆっくり数字が浮かび上がってきた。 

 

風太郎(3回か。一花よりは少ないが) 

 

四葉「どうかしましたか?」キョトン 

 

風太郎(実際のところどうなんだ?女子高生の平均回数がわからないから断定できないが) 

 

風太郎(赤点すれすれの奴が部活とバイトをしながら、さらに[田島「チ○コ破裂するっ!」]をしている余裕はあるのか?勉強時間は確保出来ているのか?) 

 

四葉「上杉さん?怖い顔してますよー?」 

 

風太郎「四葉。昨日の夜はナニしていた?」 

 

四葉「昨日の夜……」ポワポンポワ~ン 

 

四葉「っ……///いくら、上杉さんにも言えないことくらいありますっ!私にだってプライバシーありますから!」 

 

風太郎「勉強はしなかったんだな?(威圧)」 

 

四葉「勉強も、しました!」 

 

風太郎「何時間した。答えろ」 

 

四葉「ええっと。0.1時間……くらい」 

 

風太郎「このアホー!たった6分で何が学べるんだ!」 

 

四葉「継続は力なりぃ……」 

 

風太郎(ダメだこいつ。だが、まだわからない。3回。もっとデータを集めて平均を出さねば) 

 

四葉「それじゃ、上杉さん、また教室で!」ドヒューン 

 

風太郎「くそっ!まだ説教は終わっていないぞっ!四葉ー!」

 

二乃「朝っぱら何大声出してるのよ」 

 

風太郎「二乃か……ちょうどいいところにいた」 

 

二乃「あら?そんなに私に会いたかった訳?昨日の夜も一緒だったじゃない、フー君っ」 

 

風太郎「一緒だったのはバイトが終わるまでだ。あの後帰ってからちゃんと勉強したんだろうな」 

 

二乃「んー、どうだったかしら」 

 

風太郎(信じているぞ、二乃!) 

 

二乃「ん?じっと見つめないでよ、照れるわ///」 

 

風太郎「3回。四葉と同じか」 

 

二乃「何が同じなの?」 

 

風太郎「いや、こっちの話だ。お前らの成績にも関係する問題だが」 

 

二乃「?」 

 

風太郎(3回くらいが平均値なのか?一花は飛び抜けてるが……成績は一花の方がいいから、回数と成績は相関しないのか?) 

 

二乃「ちょっと、今日のあんた変よ」 

 

風太郎「時に二乃。お前昨日の夜」 

 

二乃「ん?」 

 

風太郎(そういえばこいつ俺の事好きなんだよな) 

 

風太郎(落ち着け、上杉風太郎。くそっ、あの告白さえなけりゃ、二乃になら聞けたかもしれないのにっ!) 

 

二乃「昨日の夜もあんたの事考えていたわよ」 

 

風太郎「……は?」 

 

風太郎(それはどういう意味だ、二乃……) 

 

二乃「好きな人の事、考えるの当然じゃない。あんたはどうなのよ?」 

 

風太郎「いや、俺は……昨日は勉強してたから」 

 

二乃「はぁー(クソデカため息)。勉強中もたまには私達の事、考えなさいよ。 

 

いつものお礼を考えていたんだから……ほら、毎日貧相な白米ばかり食べてるあんたのために、お弁当作ってあげたわよ」 

 

風太郎「二乃様神様仏様!食費がらいはの文房具代に回せるぜ…!」 

 

二乃「それじゃ、今日はお昼ご飯、二人で一緒に食べましょ」

 

三玖「ちょっと待った」 

 

二乃「げっ!その顔は……三玖!」 

 

三玖「私だって……フータローの事考えていた。お弁当作ってきたんだから」 

 

二乃「珍しく早起きしていると思ったら……チッ」 

 

三玖「抜け駆け禁止。お昼ごはん、みんなで食べよ?」 

 

風太郎「サンキュー三玖。これで夕食分も食いだめできる……って、お前ら、弁当作ってる暇あったら勉強をしろ!」 

 

三玖「うっ」 

 

風太郎(三玖はもう心配ないと思うが。回数と成績の相関を確認せねば) 

 

風太郎「ゼロ!ゼロ!圧倒的ゼロ……!信じていたぞ、三玖!」ガシッ 

 

三玖「ちょっと、フータロー。突然、顔、近い……」 

 

二乃「こら、離れなさいよ、フータロー!」 

 

風太郎「俺は今、モーレツに感動している!お前が一番(ナンバーワン)だ、三玖!」 

 

三玖「えっ……それって……告白///」 

 

風太郎(快楽を貪ることなく、ただひたすら勉学に励む姿美しい) 

 

風太郎(やっぱり三玖が俺の一番の生徒だ!他の姉妹の手本となるべき姿だ!) 

 

二乃「告白じゃないっ…!ノーカン!今のノーカンよ!」 

 

風太郎「黙れ週3回の女!」 

 

二乃「はぁ!?」 

 

風太郎「少しは三玖の姿勢を見習うんだな」 

 

三玖「私が一番……私が一番……」ポワ~ン 

 

二乃「今日のあんたなんかおかしいわよ!三玖も早くコッチの世界に戻ってきて!」 

 

ぎゃーぎゃー 

 

五月「うるさいですね、朝から」 

 

風太郎「最後は五月か」 

 

風太郎(こいつは少し心配だ) 

 

風太郎(一見真面目に見えて、姉妹の中で一番欲望に弱そうだ) 

 

風太郎(食欲が強い奴は性欲も強いと聞いたことがある) 

 

風太郎(だが、逆に、性欲を食欲で代償している可能性もある) 

 

風太郎(適度な食事は脳にブドウ糖を補給するという意味で、見習うべきところだが) 

 

五月「どうしたんですか?そんな真剣な顔して」 

 

風太郎「信じているぞ、五月!」 

 

ここまで一花が週8回。二乃と四葉が週3回。三玖は週0回! 

 

このデータは今後の家庭教師の上でとても参考になる。 

 

五月は成績は5人の中では中くらいだ。それでも、勉強や夢へ向かう姿勢は、尊敬できるところがある。 

 

不器用だが、だからこそ報われてほしいとずっと応援しているんだ。 

 

そんな五月が、欲望に溺れるはずがない。そう信じたい俺がいた。 

 

 

風太郎「ぐわぁ~~~!8回!やはり肉まんおばけは自制心がなかったぁー!」ガックリ 

 

五月「に、肉…!!知りません、あなたのことなんて!」パシーン 

 

三玖「私が一番。フータローの一番」ブツブツ 

 

一花「あれー?みんな集まってどうしたの?」 

 

二乃「今日はそっとしてあげましょう、一花。勉強病の発作よ……」 

 

一花「たまには息抜きしなくちゃダメだよ、フータロー君。お姉さんが手伝ってあげよっか?」 

 

風太郎「お前は息抜きしすぎだ、アホ」 

 

一花「ひどい!」 

 

五月「根の詰め過ぎは良くないと教えてくれたのはあなたじゃないですか」 

 

風太郎「適度があるだろ、適度が!週8回は多すぎィ!」 

 

二乃「さっきからなんの回数よ、それ」 

 

風太郎「あ、いや、何でもない」 

 

一花「私も8回って言われたけど」 

 

二乃「私は3回。三玖は0回。四葉は何回だったのかしら?」 

 

風太郎「四葉は週3回だ」 

 

三玖「回数が少ないほうが、フータローが喜ぶ。私が一番」 

 

一花「なになに~?気になるな~?」 

 

風太郎「この回数は今後の家庭教師の上で参考にするぞ。それじゃあ各自、授業に集中し、2周間後に控えた定期試験に向けて勉強に励むように!」 

 

一同「はーい」

 

 

風太郎(なんとか成績向上のために、あの回数を利用したい。三玖はいいとして、他の4人はテスト前なのに自覚がなさすぎる!) 

 

風太郎(特に一花と五月。1日1回以上している日がある計算になる。そんなにしていれば、成績に悪影響を及ぼしているのは間違いない) 

 

風太郎(この点は指導する必要があるな) 

 

風太郎(そして週3回組の二乃と四葉。週3回……難しいところだ。もしかしたら、ストレス解消で成績向上につながっている可能性もあるが) 

 

風太郎(やはり勉強時間を圧迫しているのは間違いない。この点、詳細に確認する必要がある。場合によっては指導しなければ) 

 

風太郎(最後は三玖。0回というのは素晴らしい数字だ。しかし、逆に不安になる。他の4人があんなに励んでいるのに、一人だけ禁欲していて大丈夫か?) 

 

風太郎(ストレスは溜まっていないのか?逆にストレスが成績を下げる原因になったりするからな) 

 

風太郎(デリケートな問題だけに、慎重な対応が必要だ。さて、早速、今日から彼女たちの個別指導に当たろう。) 

 

 

風太郎(まずは三玖の指導からだ) 

 

三玖は俺と二乃がバイトしているレストランの向かいのクソパン屋で働いている。 

 

彼女が就職してからなぜか売上が下がったらしいが、理由はわからない。 

 

俺は彼女と二人きりで話すために、店の前で仕事が終わるのを待った。 

 

三玖「あれ?フータロー?お店の前でどうしたの?」 

 

風太郎「偶然だな。俺も仕事終わったとこだ」 

 

三玖「二乃は?」 

 

風太郎「今日は休みだ。一緒に帰らない?」 

 

三玖「うん。いいよ」 

 

三玖は小動物のように俺のそばにぴったりと寄り添ってきた。 

 

情緒が不安定な五つ子達の中で、三玖は一番安定しており、出会った当初は気まずさがあったものの、早々に優秀な生徒になってくれた。 

 

俺が五つ子の家庭教師としてなんとかここまでやってこれたのは三玖という協力者の力が大きい。 

 

二乃や五月と違って、不満を口にしない三玖だが、俺は逆に心配になる。 

 

彼女だって人間だ。不満を中に溜め込んでいてもおかしくはない。それがいつか大爆発して、悲劇の引き金にならないとも限らない。 

 

彼女の内に秘めた不満を引き出し、ストレスを解消して成績向上につなげる。これは家庭教師の仕事だ。 

 

風太郎「あのさ三玖…」 

 

風太郎「なにか悩みはあるか?」 

 

三玖「どうして?」 

 

三玖は怪訝そうに俺を見ている。 

 

風太郎「パン屋のバイトも大変だろ。慣れないうちは俺もバイトだけで精一杯だった。勉強してる余裕もなかったのに、お前は勉強も頑張っている。」 

 

三玖「……///」 

 

風太郎「すごいと思うぞ。他の姉妹は勉強やバイト以外のこともやってるし」 

 

三玖「勉強やバイト以外のこと?」 

 

風太郎「なんでもない。で、そんな優秀なお前を見ていると少し心配になってな。悩みとかを溜め込んでしまってるんじゃないかと」 

 

三玖「フータロー……私のこと、見てくれてたんだ///」 

 

風太郎「そりゃ、一応お前のパートナーだから」 

 

三玖「……うれしい///」 

 

しばらく俺たちは無言で帰路を歩いた。三玖は俺の腕を 

 

肝心の悩みを聞き出せないのがもどかしいが、ここは口下手な三玖が自分の言葉で悩みを打ち明けてくれるのを辛抱強く待った。 

 

三玖「悩み、あるよ」 

 

家が近くなったところで、彼女が口を開いた。 

 

三玖「聞いてくれる?フータロー。絶対、笑わない?」 

 

風太郎「ああ、絶対に笑わん」 

 

三玖「……好きな人がいるんだ」 

 

風太郎「……は?」 

 

風太郎(定期テスト前の大事な時期に恋愛にうつつを抜かすとは馬鹿なやつだ) 

 

風太郎(……と、彼女たちに出会う前の俺なら一蹴しただろう) 

 

風太郎(だが、彼女たちと出会って、俺は人を好きになるという真剣さを、以前ほど馬鹿に出来なくなっていた) 

 

風太郎(とはいえ、三玖に好きな人がいるとは……) 

 

風太郎(誰だ?クソパン屋のバイト仲間か?それともクラスの奴か?) 

 

風太郎(どこの誰か知らないけど、そいつのせいで三玖が赤点とったら潰すぞ……ガキが)イライラ 

 

三玖「フータロー?顔険しいけど、大丈夫?」 

 

風太郎「そうか?」ピキピキ 

 

三玖「安心して。勉強は集中して頑張っているから」 

 

風太郎「お前に関してはその点は心配していない。でも、誰なんだ?好きな人って」 

 

三玖「知りたい?」 

 

三玖は真剣な眼差しで俺を見つめてきた。 

 

風太郎「あ、いや。言いたくないなら言わなくていい」 

 

聞くのが怖かった。 

 

三玖「もし、次の定期試験で、私が姉妹の中で1番だったら、教えてあげる」 

 

三玖「そしてフータローにお願い。もし、私が1番だったら。私のお願いを何でも1つ叶えてほしい」 

 

三玖「それくらい、いいよね?」 

 

三玖が俺の手をぎゅっと握りしめてきた。 

 

勉強の結果で何かを与えるというやり方は好きじゃない。テストの結果それ自体が、彼女たち自身の見返りだからだ。 

 

しかし、努力に報いるのも家庭教師の仕事だ。成績向上のためには飴と鞭をうまく使い分ける必要もある。 

 

だが、俺はこのときの三玖のお願いに、ただならぬ迫力を感じた。 

 

引き受ければ逃げることは出来ない。そのまま、心の臓を握りつぶされてしまうのではないかというくらいの気迫だ。 

 

どんな無理難題をふっかけられる?もしかして、家庭教師代をタダにしろって話か? 

 

俺の本能が警告を発している。 

 

風太郎「何でもって何だ?世界一の金持ちにしろとか、金銀財宝をよこせとか、そういう願いはちょっと」 

 

三玖「大丈夫。お金関係じゃないから」 

 

風太郎(ということは家庭教師代の話じゃないな) 

 

風太郎「法律違反も出来ないぞ?殺したい奴がいても俺は手を貸せない」 

 

三玖「それは自分でやるから大丈夫」 

 

風太郎「今の俺にできることか?」 

 

三玖「うん。今のフータローに出来ること」 

 

風太郎「それなら……まあ。予算は1万円以内だぞ。俺の全財産だ。五月御用達の高級レストランで奢りは出来ないからな!」 

 

三玖「約束してくれる?」 

 

風太郎「ああ。約束するよ。お前が姉妹の中で1番だったら、願いを叶えてやる。俺の全力で」 

 

三玖「やった」 

 

 

この時、自慰にも耽らず、禁欲的に勉強している三玖が願う事を叶えてやりたいという気持ちが、俺の中の本能の警告を上回った。 

 

だが、俺はこのときの三玖の表情に底知れない不安を感じずにはいられなかった。 

 

果たしてどんな無理難題を押し付けられることやら。 

 

 

風太郎「三玖は勉強を以前よりも頑張っているみたいだな」 

 

風太郎「好きな人がいるという悩みは心配だが、自慰もしていないようだし、それで駄目になることはないだろう」 

 

風太郎「問題は、他の姉妹か」 

 

風太郎「さて、次は誰を指導するか」 

 

 

風太郎(五月は週8回か。澄ました顔してこいつもやることやってるんだな) 

 

風太郎(別に性欲自体を否定する気はない。問題は、大事な定期テスト前に、勉強時間を削って自慰に耽っているという事なのだ) 

 

風太郎(逆に、それだけストレスが溜まっているという事であるなら、これは大きな問題だ) 

 

五月「ミートスパゲティカツカレー親子丼セット頼んでいいですか?」 

 

風太郎(前言撤回!こいつは食欲も性欲も強いだけだー!) 

 

五月「いやー、奢りっていいですね。上杉さんが突然、ファミレスに誘って来た時はどんな裏があるのか心配しましたが」 

 

五月「食べて栄養つけないと頭回りませんよ。で、今日はなんですか?」モグモグ 

 

五月「貧乏な上杉さんが奢ってくれるというというのなら、よほど大きな頼み事なんでしょう?」モグモグ 

 

風太郎「頼み事というよりは、勉強の指導なんだが。それに誘ったが、奢りじゃない」 

 

五月「ええっ!?男の人にサシで晩ご飯誘われたら、大体は奢りだって……一花が言って///あわわっ、勝手に勘違いしてすみませんっ」 

 

風太郎(ひどい勘違いだ……だが、指導失敗した時は奢りにしてごまかそう)

 

五月「……上杉さんの注文、水だけですよね……カツカレーのカツでも食べます…?(断腸の思い)」 

 

風太郎「いや、念の為、今日は水だけでいい。そんなことより五月。今日誘った訳はだな……お前の抱えているある問題を解決したくて」 

 

風太郎(図書館や学校で話せる話題じゃないし、他の姉妹がいたらややこしくなるからな。なんとかこいつ一人切り離して話したかった) 

 

五月「私の……問題ですか」 

 

風太郎「ああ。心当たりはあるか?」 

 

五月「もしかして、体重……あっ、いえ、体重は大丈夫ですよ!女子高生の±2SD以内には入っていますからっ……///」 

 

風太郎(志が低すぎませんかね) 

 

風太郎「正直俺はお前の体重が何kgであろうと興味はない。体重と一緒に偏差値も+2SDをオーバーしてくれるのならな。俺はお前に惚れるぞ」 

 

風太郎「8回。この数字に見覚えはあるかね、五月君」 

 

五月「8回……?これまで次郎系ラーメンを完飲した数……ですか?」 

 

風太郎「一旦食の話から離れてくれ。この回数が多ければ多いほど、お前のテストの点数が下がるんだ」 

 

風太郎(とは言っても直接自慰の回数とは伝えにくい。なんとかうまく指導して、自慰の回数を減らす方向に誘導しなければ) 

 

五月「それは確かに問題だと思いますが……見に覚えがありません」 

 

風太郎「そうだな、五月」 

 

風太郎「三玖が最近、お前の風呂が長いとボヤいていたぞ」 

 

五月「三玖が?」 

 

風太郎「三玖だけじゃない。二乃や四葉も言っていた。一花は……お前と同じくらい長いだろうけど」 

 

五月「お風呂が長い…?」 

 

風太郎(察してくれ、五月!お前、どうせ風呂でヤッてんだろ?引っ越してから個室なくなったよなぁ?流石に姉妹と一緒に寝ている寝室ではしないだろ?) 

 

五月「それと私の問題とナニが関係……8回……」 

 

五月「意味がわかりません。そんなにお風呂長いほうじゃないと思いますが」モグモグ 

 

風太郎(駄目だ。こいつ察しが悪すぎる…) 

 

五月「チェーン店ですが美味しいですね、たまにはファミレスのご飯も。ごちそうさまでした。上杉さん、これから私はデザートを頼もうと思いますが構いませんね?」 

 

風太郎「まだ食うのか…」 

 

五月「このデラックスパフェ、特盛で」 

 

風太郎(クソ。時間がかかるほど、失敗したときのリスク(奢り代金)がかさんでいく……!次が俺の財布的に最後のチャンスだ…) 

 

風太郎(なんとか、五月に回数が多いことを伝えねば) 

 

風太郎「あのな、五月」 

 

風太郎「昨日の夜、寝る前に何をした?」 

 

五月「何をって決まっているじゃないですか」 

 

風太郎「勉強はもちろんしたと思うがそれ以外で」 

 

五月「勉強以外、ですか」 

 

五月「……」 

 

五月は少し考え込んだ。 

 

五月「はて?勉強以外した記憶は特にありませんが」カタカタ 

 

スプーンを持つ手が震えている。 

 

五月「当たり前じゃないですか!テスト前ですから。勉強に集中していますよ、私は!」カタカタ 

 

こいつ、黒だ。 

 

この反応、絶対に疚しい事をしている。 

 

ここはもう少し、追い詰めてみるか…… 

 

風太郎「これで赤点だったら、みんな悲しむぞ」 

 

風太郎「勉強に集中せず、自分の快楽を優先した結果」 

 

風太郎「五月は落第。お前の場合、お前一人の問題じゃない」 

 

風太郎「一花も二乃も三玖も四葉も一緒に留年なんだぞ」 

 

風太郎「その原因が、お前の自堕落な行いだったとみんなが知ったらどう思うかな?」 

 

五月「あの、その……ああぅ……ごめんなさい」 

 

五月のパフェを食べる手が止まった。顔を真赤にして、己の行いを悔やんでいる様子だ。 

 

これで指導は成功だ!流石に反省して、次のテストまでは自重するだろう。 

 

風太郎「わかればいいんだ。これからは勉強に邁進するように」 

 

五月「はい……ですが、上杉さん、あなたはどうしているのですか?」 

 

風太郎「ん?」 

 

 

五月「私だって……別に楽しくてしている訳じゃないのですが……どうしてもしたくなる時はあるじゃないですか」 

 

五月「ですから……昨日はそういう日だったので……つい」 

 

五月「そういえば以前、一花から聞いたのですが……男の子は一日平均三回はしないと大変なことになると」 

 

五月「本当にそうなんですか?そんなにやったら馬鹿になりますよね?上杉さんは馬鹿じゃないから我慢しているんですよね?」 

 

五月「後学のために教えて頂きたいのですが、上杉さんは週何回くらいなんですか?」 

 

風太郎(まずい。思ったより深入りしてしまったっ……!勝利を確信した瞬間、思わぬ反撃を喰らったっ……!) 

 

五月「……」ジーッ 

 

風太郎(ここで流石に五月よりしていると答えたらあまりにもバツが悪い) 

 

風太郎(していないと答えるのがベターか?しかし、それはそれで心配される可能性もある……!常識的な範囲内で……嘘をついてみるか) 

 

風太郎(というか、俺友達いないから、周りが週何回なのかわからん……) 

 

風太郎(というか、一日3回が平均って一花情報は本当か?一花はナニを知っているんだ) 

 

風太郎「五月。周りに絶対言うなよ。約束だぞ」 

 

五月「はい。約束します」 

 

風太郎「俺の場合は週1回だな」 

 

五月「週1回、ですか……」 

 

風太郎(とりあえず無難な数字で置きにいったが) 

 

風太郎(100回とかありえない数ではぐらかした方が良かったかもな) 

 

風太郎(逆に無駄なリアル感が出ちまった……) 

 

風太郎「ほら、パフェ食えよ、五月。まだ残ってんだろ。早く帰って勉強しようぜ」 

 

五月「上杉さん……大丈夫ですか?」 

 

五月「私達に勉強を教えているせいで、する時間がないんじゃ」 

 

風太郎「いや、それはお前が心配する問題じゃないというか、俺個人の問題だし」 

 

風太郎(くそーッ!嘘をついたせいで心が痛いぜ!) 

 

五月「ですが、上杉さんは私の回数を心配してくれていたんですよね?」 

 

風太郎(追い詰めていたと思ったらいつの間にか追い詰められていたのは俺だった…?) 

 

五月「私にだって、あなたの事を心配する権利があります。パートナーですから」 

 

五月「それで、いつもはどこでしているんですか?らいはちゃんと暮らしていると難しいですよね?どういう工夫をしているんですか?」 

 

五月「あと男の人は、気持ちを高めるために……本とか、ビデオとかを使うんですよね?そこのところ、どうしているんですか?」 

 

五月「道具とか使っているんですか?した後に賢者になるって本当ですか?」 

 

風太郎「五月。興味津津なのはわかった。だが」 

 

店長「あのー、お客様。そういったお話はできれば、プライベートな空間でして頂きたく……他のお客様から苦情もありますので」 

 

五月「……///」ボッ 

 

食いかけのパフェを残して俺たちは逃げるように店を出た。 

 

 

五月「それでは、私も上杉さんを見習って勉強をがんばります」 

 

五月「上杉さんもどうかご自愛下さい」 

 

五月「もし、私にお手伝い出来ることがあれば……力になりますから」 

 

最後に意味のわからないことを言っていたが、なんとか五月の指導を成功させる事ができた。 

 

 

風太郎「ふぅ。この手の話で1番怒りそうだった五月をなんとか乗り切った……」 

 

風太郎「自信がついてきたぞ」 

 

風太郎「次は誰の指導をするか」 

  

 

一花「突然、こんな人気のないところに呼び出して何の用かな?」 

 

放課後、一花を校舎裏に一人呼び出した。 

 

風太郎「大事な話があるんだ」 

 

一花「愛の告白とかーーなんちゃって」 

 

風太郎「……」 

 

一花(まさか、だよね。フータロー君に限ってそんな事ないと思うけど)ドキドキ 

 

一花(そんな真剣な表情されたら、期待しちゃうよ)ドキドキ 

 

風太郎「俺たちを裏切っていないか?」 

 

一花「え?」 

 

一花の顔から血の気が引いたのがわかった。 

 

図星だ。勉強を疎かにして自慰に耽る、己の行いを恥じろ! 

 

一花「えっ……嘘。どういうこと、かな」 

 

一花は落ち着きなく、左耳のピアスを弄っている。 

 

風太郎「胸に手を当ててよく考えるんだ。俺と、他の姉妹。特に三玖を裏切っただろ」 

 

三玖は勉強に集中するという約束を守って、禁欲的に勉強している。 

 

そんな妹をこの姉は裏切り、夜な夜な時間を浪費して快楽を貪っているのだ。 

 

これを裏切りといわずして、なんと言う? 

 

一花「あっ、その……それは違くて」オロオロ 

 

一花「いつから、気がついたの……三玖はこの事、知ってるの?」 

 

風太郎「三玖は知らないだろう。俺も気がついたのは最近だ」 

 

一花「お願いっ……謝るからっ……他の子達には内緒にしてっ」 

 

一花(バレてた、バレてた、バレてた……!三玖のフリして、三玖の想いを踏みにじった事……!) 

 

一花(どうして?完璧な変装だったのに。このこと、三玖にバレたら全部終わる……三玖じゃなくても、多分、姉妹の誰も私の事、許さない) 

 

一花は涙目になって俺にすがりついてきた。あの一花が、ここまで動揺するとは想定外だった。 

 

内緒にするまでもなく、三玖以外の4人も同じ事をヤッているのだが…… 

 

長女故に、一花は五月よりも責任感と罪悪感が強いようだ。 

 

風太郎「他の姉妹に言えないような事、するなよ」 

 

一花「ごめんなさい……お願いだから、他の子には言わないで……」 

 

一花「何でもするからっ!三玖にだけは……言わないで……」 

 

一花は涙目になっていた。 

 

風太郎「何でもする覚悟があるんだな、一花」 

 

一花「……はい」 

 

ここはしっかり一花を教育しなくてはいけない。 

 

風太郎「そんな反省しているお前には……」 

 

一花「ううっ……ごめんっ……三玖……ごめんっ」ポロポロ 

 

風太郎「じゃじゃじゃ~ん!各教科1冊ずつの新しい問題集(手作り)だァー!」 

 

風太郎「合計5冊!内容は今のお前たちのレベルよりワンランク上だがな」 

 

風太郎「テスト範囲分を頑張って俺が手書きで写したんだぞ」 

 

風太郎「これをテスト2日前までに解いて俺に提出すること!」 

 

一花「……ん?」 

 

風太郎「言っておくが、今のお前じゃコレを完璧にこなそうと思ったら、それはもう寝る間も惜しんで取り組まないといけない」 

 

風太郎「だが、お前は寝る時間を削る前に、削る事が出来る時間があるはずだ」 

 

一花「あれ?フータロー君。どういうこと、かな?」 

 

風太郎「みなまで言うな。お前が反省しているのは十分にわかった」 

 

風太郎「何でもやるという覚悟を示したなら結果を残せッ!それが三玖へ唯一報いる道だ」 

 

一花(フータロー君はそう言い残して私に問題集を渡してクールに去っていった) 

 

一花(どうやら私が最も恐れていた事が起きた訳じゃないみたい) 

 

一花(結局、彼が何を思って私だけに問題集を追加で渡したのかは最後までわからなかった) 

 

一花(でも、その問題集の圧倒的なボリュームにげんなりしつつも) 

 

一花(私のために夜な夜な時間をかけて写してくれたであろう問題集の匂いを嗅ぐと) 

 

一花(ほんのり彼の汗の香りがして) 

 

一花「……」ムラムラ 

 

一花(今晩1回で最後。今晩だけだから。今晩スッキリしたら、次のテストまで我慢するぞー!) 

 

 

風太郎「一花への問題集作成で寝不足だ……でもその甲斐あって、一花はやる気を出して勉強に励んでいるみたいだな」 

 

風太郎「さて。残りは週3回組だ」 

 

風太郎「二乃と四葉、どっちから指導しようか」 

 

 

二乃「何?話って」ワクワク 

 

バイト終わりに二乃を厨房に呼び出した。 

 

奇しくもあの期末試験の打ち上げの時、二乃から予想だにしなかった想いを打ち明けられた場所だ。 

 

バイト終わりに大事な話がある、と伝えたら、二乃はその日の仕事はあまり手についていなかったようだ。 

 

彼女は週3回。バイトも一生懸命こなして、店長からの信頼は既に俺より厚いかもしれない。さらに、二乃は自分の手入れにも時間をかけている。 

 

そんな彼女に勉強を十分する時間は残っているのだろうか。夜更かしは美容の天敵とか言って1番寝ているのも二乃だ。 

 

自慰は美容の天敵ではないのか。少なくとも勉強の天敵なのは間違いないが。 

 

二乃「つまらない話だったら許さないから」 

 

目を爛々と輝かせながら、二乃はそう釘を指してきた。 

 

二乃の好感度は高そうだから、多少の無茶で自慰を辞めさせることも出来るかもしれない。 

 

他の姉妹だと、セクハラ騒ぎになってしまうリスクもあったが、ここは思う存分攻めるべきだ。 

 

風太郎「オ○ニーしすぎると馬鹿になるぞ」 

 

二乃「……え?」 

 

風太郎「いや、行為自体を否定する訳じゃないんだが」 

 

風太郎「テスト前に週3回もやるのはいかがなものかと思うんだ」 

 

風太郎「せめてテスト終わってからにしようぜ。三玖も勉強を頑張っているから」 

 

風太郎「お前より回数が多い一花や五月も今は心を改めて勉強に集中している」 

 

風太郎「そんな中、お前は取り残されてるんだぞ」 

 

風太郎「何も赤点を回避するだけが勉強じゃない。30点という赤点ラインは低すぎるしな」 

 

風太郎「お前も将来やりたいことをする時に、実はここで勉強を頑張っていたのが何かに生きるかもしれない」 

 

風太郎「赤点回避だけを目標にするんじゃなくて、より高い点数を目指そうぜ」 

 

風太郎「俺は……勉強する子が好きだからよ……」 

 

二乃「えっと、ごめん。フータロー、なにか心配してくれているのは伝わってきたわ」 

 

二乃「でもなんのことかしら?」 

 

風太郎「ええっ!?」 

 

二乃「心あたりがないんだけど。というか、最初、換気扇の風が強かったかしら?聞き取れなかったわ」 

 

風太郎(くそっ……!お前、いつから難聴になったんだよ!この歳で補聴器が必要なのか?) 

 

二乃「……」 

 

風太郎(このままじゃ指導失敗だ……どうする。どうする俺?) 

 

二乃「……」 

 

二乃はじっと俺の目を見つめていた。 

 

聞かれていなくてむしろ良かったのかもしれない。もしこれが二乃の耳に届いていたら、俺達の関係はもう元には戻らない可能性もある。 

 

よくよく考えたら、二乃は俺に幻滅するかもしれない。 

 

当然だ。突然、同級生の男に「自慰するな」「お前は週3回もしているんだろ?」なんて言われて気持ちがいい女の子がいるはずがない。 

 

それでも俺が踏み込んだのは、二乃が俺の事を好きだという保証があったからだ。 

 

だが、二乃が一方的に俺の事を好きだというだけで、俺達は別に付き合っているわけでもないし、心を通わせているわけでもない。 

 

そんな男から突然、土足で個人の触れられたくない領分にズカズカと踏み入られて気持ちがいい女がいるか? 

 

いるはずがない。二乃に聞かれなくて正解だ…… 

 

 

風太郎「オ○ニーしすぎると馬鹿になるぞって言ったんだよ!」 

 

二乃「は…?え?何?」 

 

風太郎(だがそんなの関係ねぇ!二乃が勉強に集中して、次のテストで良い点を取るッ!それが今の俺の望みであり、全てだ!) 

 

風太郎(その結果二乃に嫌われようが、俺は一向に構わん) 

 

風太郎(我が心と行動に一点の曇りなし!) 

 

風太郎「お前、オ○ニー週3回しているんだろ?知ってるんだぞ、俺」 

 

二乃「……」 

 

二乃「……その、さっきから何の話?お、おな?って何?」 

 

風太郎「……は?」

 

風太郎(このアマ、カマトトぶってるんじゃあねぇぞ!) 

 

しぶとい。さすが二乃。自分の非は最後まで認めないつもりか。 

 

風太郎「何度でも言うぞ。オナニーは馬鹿になるから我慢しろ」 

 

だが、覚悟を決めた今日の俺は例えるなら暴走機関車ッ!最後まで指導を完遂する計画に変更はないッ! 

 

二乃「だから、その、お、オナニーって何よ」 

 

風太郎「……え?知らないの?」 

 

二乃「……」 

 

風太郎「……」 

 

二乃「知らなきゃまずいの?」 

 

風太郎「ちょっと待て。お前、週3回しているよな?それは事実だろ?」 

 

二乃「……してないわよ。そもそもそれが何なのかわからないわ」 

 

風太郎「え?本当に、オナニー知らないの?」 

 

二乃「……そんなに言うなら教えなさいよ。それが、何なのか」 

 

風太郎「そ、それは……気持ちよくなることで……勉強の邪魔になることで……」モゴモゴ 

 

二乃「意味わからないわ。フータローにも教えられないことあるのねっ。勉強になったわ。それじゃあ、今日はここまで。バイバーイ」 

 

風太郎「待て、二乃!」ガシッ 

 

二乃「きゃっ」 

 

俺は立ち去ろうとする二乃の肩を掴んだ。 

 

だめだ。ここで帰られたら指導失敗になる。それに家庭教師として、教えるという行為から逃げる訳にはいかない。 

 

風太郎「教えてやる。耳の穴広げてよく聞けよ」 

 

二乃「……」ゴクッ 

 

二乃にオナニーとはなにか、しっかりと言葉で伝える必要がある。 

 

風太郎「一人で気持ちよくなることだ」 

 

二乃「……どうやって気持ちよくなるのよ」 

 

風太郎「方法は……性器や乳房を自分でイジることだ」 

 

二乃「……ッ///」 

 

風太郎「ただそれだけではない。物理的な刺激のみで得られる快感には限度がある」 

 

風太郎「好きな人の事を思って快感を得ること。それがオナニーだ」 

 

風太郎「お前は夜な夜な、自分で自分の性器を弄って、好きな人の事を思って一人で気持ちよくなってるんだよ!」 

 

風太郎「本来勉強するべき時間を使ってなァ!」 

 

風太郎「言い逃れできるか?認めろ!自分が、オナニーをしていた事を!」 

 

二乃「……っ……あー、もう認めるわよっ。あんたの事を想って一人でシてたこと」 

 

風太郎(そういやこいつ俺の事好きだったんだな……) 

 

二乃「これでも最近控えてたんだから……バカ」 

 

風太郎(じゃあテスト前は週何回やってんだこいつ。こいつらが馬鹿な原因はやはりオナニーのしすぎではないのか) 

 

二乃「で、あんたはどうなの?」 

 

風太郎「ん?」 

 

二乃「……あんただって男なんだからシてるんでしょ」 

 

風太郎「……」 

 

二乃「好きな人の事を思って快感を得ることって言ったわよね」 

 

風太郎「……」 

 

二乃「あんたは誰の事を思ってしてるのかしら?教えなさいよ!私だって教えたんだから!」 

 

風太郎「二乃、顔真っ赤だぞ」 

 

二乃「うるさいっ!」 

 

二乃「これだけは教えて。私の事を思ってしたこと、ある?」 

 

風太郎(正直に認めた二乃に対して、俺も誠意を持って答えることにしよう) 

 

風太郎「俺はお前の事を思ってしたことは」 

 

店長「ちょっと二人ともーそろそろ鍵閉めるから帰ってくれよー」 

 

風太郎・二乃「ビクッ」 

 

店長「ほら、帰った帰った。神聖な厨房で青春をおっぱじめられたらこっちも困るんでな」 

 

二乃「今日のところはこれくらいにしておいてあげるわ」 

 

二乃「もし、次のテストで、私があんたを満足させる点数。姉妹で1番高得点とったら、さっきの続き教えなさいよ」 

 

二乃「もしイエスなら、あんたも私の事好きってことでいいわよね?」 

 

二乃「もしノーなら……無理矢理でも私でさせてやるんだから」 

 

二乃「覚悟しててね、フー君♪」 

 

 

風太郎「さて、最後は四葉だな」 

 

風太郎「あいつ自慰なんて知りませんって顔して、やることしっかりやってるんだなぁ」 

 

風太郎(と、感慨に耽っている場合じゃない。最後の指導だ。気合を入れて取り組まねば) 

 

風太郎(だが、素直なあいつのことだ。俺の指導はきちんと聞いてくれるだろう) 

 

 

 

定期試験1週間前になって、流石に四葉も部活を休んで勉強を頑張っているようだ。 

 

だが、俺の目はごまかせない。 

 

四葉はまだ深いところで勉強を舐めている。 

 

なんとかテスト前までに自慰をやめさせたいところだ。 

 

四葉「上杉さん、最近疲れてませんかー?」 

 

風太郎「大丈夫だ、問題ない」 

 

確かに疲れているのは事実だ。想像以上にこの仕事は俺の勉強への負担を強めている。 

 

風太郎「俺のことより、四葉のことだ」 

 

自慰をやめさせねば。 

 

四葉「私のことなんてお気になさらずに!」 

 

風太郎「だが」 

 

四葉「そんなことより私が、上杉さんの悩み、聞いちゃいますよ!たまにはお役に立たせてくださいよっ」 

 

風太郎「今の俺の悩みはお前なんだがな」 

 

四葉「あはは……面目ない。でも上杉さん、無理してませんか?心配ですよ」 

 

風太郎「え…」

 

四葉「私に出来ることなら、上杉さんのお悩み、解決しちゃいますよ?」 

 

四葉はそう言って身を寄せてきた。 

 

他の姉妹は各々のアルバイトで不在にしており、特別成績の悪い四葉のために、彼女の家でマンツーマンで勉強を教えていた。 

 

四葉の匂いがする距離だ。五つ子の中でも、最初から四葉は距離が近かった。 

 

しかし香水もせず、小学生の頃からの下着を履いているお子様な四葉は、らいはのような妹に近い感じだ。 

 

彼女から女を感じることなど、なかったはずだ。 

 

だが…… 

 

四葉「色々溜まってませんか?」 

 

風太郎「うっ……」 

 

三玖が禁欲をしていると知って、他の姉妹にも禁欲を説いた手前、俺だけがするわけにもいかず、当然ずっと我慢しているのだが…… 

 

そのせいか、お子様の四葉とはいえ、この距離は危険だ。 

 

嫌でもノートの端に四葉の胸が見え、匂いが脳を揺さぶってくる。 

 

四葉「……」ジーッ 

 

風太郎「俺を見ている暇があったら勉強しろ」 

 

そう言って突き放すのが精一杯。 

 

今の俺の精神状態では、まともに四葉の指導ができそうもない。 

 

四葉「上杉さんのためなら、私、何でもしちゃいますよ。教えてください。お悩み」 

 

四葉の天使の囁きに俺はつい本音を打ち明けてしまった…… 

 

風太郎「最近、見えてはいけないものが見えてしまうんだ」 

 

最初は、らいはの顔に浮かんだ数字だった。 

 

それから五つ子の顔に数字が浮かんだ。 

 

1週間の自慰の数。ばかげている。 

 

だが、俺はその数字に吐き気を常に感じていた。 

 

澄ました顔をして、授業を受け、勉強して、バイトをして生活している彼女たちの裏の顔。 

 

生々しくて、爛れた夜の顔が、あの数字を見ているとずっと透けてくる。 

 

そんな中、俺は三玖のゼロという数字に救われたのだ。 

 

ゼロという数字は透明だった。数が多ければ多いほど、自己主張が強く、凝視できないほど艶やかな色をする。 

 

五月、一花、二乃。彼女たちを指導して透明にすることが、俺には必要だった。 

 

成績のために指導したというのは嘘っぱちだ! 

 

俺は、俺のエゴのために、彼女たちに自慰を禁じた。 

 

そして、最後に残った四葉。 

 

お前の顔にも数字が見える。 

 

週3回。別に自慰をすることは悪いことじゃあないさ。 

 

3回くらいなら健全だ。8回だって別に悪い数じゃない。俺だって暇な時はそれくらいするさ。 

 

だが、その数がお前の顔にずっと浮かんでいるせいで、俺は夜も眠れない。 

 

ずっとお前らの痴態が脳にこびりついて、いくら勉強をしても消せないんだ。

 

四葉「ゲゲッ、上杉さん、夜な夜な私達のどんな姿を想像していたんですか…!」 

 

風太郎「想像したくてした訳じゃねーよ!でもその数字を見ると……嫌でも浮かんでくるんだ!」 

 

四葉「……そういうとき、どうやって解消してるんですか?」 

 

風太郎「何度も何度も打ち消そうと勉強したが、さっぱりだ。最近じゃ寝不足で逆にケアレスミスが増えている」 

 

風太郎「くそっ……このままじゃ、次のテストでまた点数が下がってしまう」 

 

風太郎「どうすりゃいいんだよ……」 

 

四葉「上杉さん、私いい方法を思いついたんですけど」 

 

風太郎「本当か!」 

 

四葉「最後にしたのいつですか?」

 

風太郎「何を?」 

 

四葉「ナニをですよ」 

 

風太郎「……え?」 

 

そういえばずいぶんしていない。テスト前は常に禁欲しているが、今回の定期試験は1ヶ月以上前から集中勉強期間に入っていた。 

 

ゾーンに入った俺は自慰などしている暇はないのだ。 

 

四葉「溜め過ぎじゃないですか?健全な男子高校生はそれこそ1日3回はしないと病気になるって聞いた事があります!」 

 

四葉「上杉さんのそれは、多分、我慢し過ぎによる病気だと思うんですよね」 

 

四葉「一回、スッキリしたら、どうでしょうか?」 

 

風太郎「だが……家にはらいはもいるし……」 

 

四葉「今してもいいですよ」 

 

風太郎「…は?」 

 

四葉「手伝ってあげるっていったでしょ?」 

 

風太郎「……」ゴクッ 

 

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